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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】線状物の3次元計測方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20221017BHJP
   G06T 7/593 20170101ALI20221017BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20221017BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G06T7/593
G06T7/90 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019530556
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2018026797
(87)【国際公開番号】W WO2019017360
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017141350
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淳一
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0371391(US,A1)
【文献】特開2012-013514(JP,A)
【文献】特開2009-187412(JP,A)
【文献】特開2001-174227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G06T 7/593
G06T 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状物の3次元計測方法であって、
実際の計測環境において実際に前記線状物を撮像した画像の色に基づいて、前記線状物の種類毎に色との対応を記録した色テーブルを作成する工程と、
前記線状物のカラー画像であって、異なる視点から撮像された第1画像および第2画像を取得する工程と、
前記第1画像上で、前記色テーブルを参照して、特定の色の前記線状物を第1線像として抽出する第1抽出工程と、
前記第2画像上で、前記色テーブルを参照して、前記特定の色の前記線状物を第2線像として抽出する第2抽出工程と、
前記第1線像上で着目点を選択する工程と、
前記着目点に対応するエピポーラ線を前記第2画像上に求める工程と、
前記第2画像上で前記第2線像と前記エピポーラ線との交点を求めて、前記着目点の対応点とする工程と、
を有する線状物の3次元計測方法。
【請求項2】
前記色テーブルは、前記線状物の1種類に対して複数の色を記録する、
請求項1に記載の線状物の3次元計測方法。
【請求項3】
前記色テーブルは、前記線状物と同色であると判断する色の範囲を記録する、
請求項1に記載の線状物の3次元計測方法。
【請求項4】
前記色テーブルは、前記線状物に対応する色をCIELAB表色系を用いて記録する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の線状物の3次元計測方法。
【請求項5】
前記第1抽出工程が前記第1線像の細線化操作を含み、
前記第2抽出工程が前記第2線像の細線化操作を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の線状物の3次元計測方法。
【請求項6】
前記線状物が互いに異なる色の線状物である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の線状物の3次元計測方法。
【請求項7】
前記線状物が互いに異なる色の被覆を有するケーブルである、
請求項6に記載の線状物の3次元計測方法。
【請求項8】
ステレオカメラと記憶部と演算部とを有する線状物の3次元計測装置であって、
前記ステレオカメラは、いずれもがカラーカメラである第1カメラおよび第2カメラを有し、
前記記憶部は、実際の計測環境において実際に前記線状物を撮像した画像の色に基づいて作成され、前記線状物の種類毎に色との対応を記録した色テーブルを記憶し、
前記演算部は、
前記第1カメラが撮像する第1画像上で、前記色テーブルを参照して、特定の色の線状物を第1線像として抽出し、
前記第2カメラが撮像する第2画像上で、前記色テーブルを参照して、前記特定の色の前記線状物を第2線像として抽出し、
前記第1線像上に着目点を選択し、
前記着目点に対応するエピポーラ線を前記第2画像上で求め、
前記第2画像上で前記第2線像と前記エピポーラ線との交点を求めて、前記着目点の対応点とする、
線状物の3次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーやケーブル等の線状物に対して、ステレオ方式で形状を計測する3次元計測方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2台のカメラの視差を利用して3次元位置を計測する方法としてステレオ方式の3次元計測方法が従来より利用されている。これは、視点の異なる2つの画像上で計測したい点の対応点を求め、各画像上の対応点および2台のカメラの位置関係から3角測量の原理によって、計測点の3次元位置を算出する方法である。このステレオ方式では、各画像上の対応点を見つけるマッチング処理が最も情報処理の負荷が重く、コストがかかるプロセスである。そのため、マッチング処理の改良を目的として、種々の方法が提案されている。
【0003】
ステレオ方式による線状物の3次元計測に関して、特許文献1には、半導体パッケージの外部リードの形状計測方法として、一方の画像における外部リード像上に計測サンプリング点を取り、他方の画像におけるエピポーラ・ライン(エピポーラ線)と外部リード像の交点を計測サンプリング点の対応点とすることが記載されている。なお、エピポーラ線とは一方の画像の視点と計測点を結ぶ直線を他方の画像上に投影した直線をいい、その計測点は必ず他方の画像上のエピポーラ線上に投影されている。また、特許文献2には、多数の線状物を2台のカメラで撮像し、2つの画像中の輝線の傾きと輝線間の距離を特徴として照合することにより、対応点を決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-026640
【文献】特開平2-309202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、同様の線状物が画面内に複数存在した場合、エピポーラ線との交点が複数検出され、対応点を一意に決定できないという問題があった。特許文献2に記載された方法では、複数の輝線に対して特徴の不一致度を計算する必要があり高速な処理には向かないことや、特徴が同程度の直線同士を誤認識する可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記を考慮してなされたものであり、線状物に対して、高速なマッチング処理を実現できる3次元計測方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の線状物の3次元計測方法は、ステレオ方式による線状物の3次元計測方法において、線状物のカラー画像であって、互いに異なる視点から撮像された第1画像および第2画像を取得する工程と、前記第1画像上で特定の色の前記線状物を第1線像として抽出する第1抽出工程と、前記第2画像上で前記特定の色の前記線状物を第2線像として抽出する第2抽出工程と、前記第1線像上に着目点を選択する工程と、前記着目点に対応するエピポーラ線を前記第2画像上で求める工程と、前記第2画像上で前記第2線像と前記エピポーラ線との交点を求めて、前記着目点の対応点とする工程とを有する。そして、第1画像上の着目点の座標と、第2画像上の対応点の座標を基に、着目点(対応点)の3次元座標を算出することができる。
【0008】
この方法により、多数の線状物が混在する場合でも、計測しようとする線状物をまず色で抽出することで、高速なマッチング処理が可能となる。
【0009】
好ましくは、上記線状物の3次元計測方法は、前記線状物の種類毎に色との対応を記録した色テーブルを予め作成する工程をさらに有し、前記特定の色は抽出しようとする前記線状物の種類に応じて前記色テーブルを参照して決定される。これにより、計測する線状物の指定が容易になるし、抽出する色を変えながら複数の線状物を順次指定することが容易になる。
【0010】
さらに好ましくは、前記色テーブルは、実際の計測環境において、実際に前記線状物を撮像した画像の色に基づいて作成される。第1および第2画像上の線状物の色は、計測環境における照明の種類や配置、線状物の光沢度や向きなど、種々の要因によって変化する。実際の計測条件下で線状物の画像が取り得る範囲の色を色テーブルに記録しておくことで、線状物を抽出する際の誤認識を減らすことができる。
【0011】
好ましくは、前記第1抽出工程が前記第1線像の細線化操作を含み、前記第2抽出工程が前記第2線像の細線化操作を含む。これにより、以後の画像処理が容易になるし、対応点等をより正確に求めることができる。
【0012】
好ましくは、前記線状物が互いに異なる色の線状物である。さらに好ましくは、前記線状物が互いに異なる色の被膜を有するケーブルである。本発明の3次元計測方法は、このような色分けされた線状物が多数混在する中から、特定の線状物に着目して3次元計測を行うのに適している。例えば、ワイヤーハーネスの各ケーブルをロボットハンドで順次ピッキングする場合のロボットビジョンとして好適である。また、電線等の柔軟な線状物は振動などによって形や位置が変化しやすいので、ロボット等でハンドリングするにはその変形を追跡し続ける必要があり、特に高速な処理が要求されるからである。
【0013】
本発明の線状物の3次元計測装置は、ステレオカメラと演算部とを有する線状物の3次元計測装置である。そして、前記ステレオカメラは、いずれもがカラーカメラである第1カメラおよび第2カメラを有する。そして、前記演算部は、前記第1カメラが撮像する第1画像上で特定の色の線状物を第1線像として抽出し、前記第2カメラが撮像する第2画像上で前記特定の色の前記線状物を第2線像として抽出し、前記第1線像上に着目点を選択し、前記着目点に対応するエピポーラ線を前記第2画像上で求め、前記第2画像上で前記第2線像と前記エピポーラ線との交点を求めて、前記着目点の対応点とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の線状物の3次元計測方法または装置によれば、多数の線状物が混在する場合でも、計測しようとする線状物をまず色で抽出する。これによりマッチング処理の負荷が軽減され、高速なマッチング処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である3次元計測装置の機能ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態である3次元計測方法を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態である3次元計測方法の工程フロー図である。
図4】ステレオカメラで撮像された(a)第1画像、(b)第2画像である。
図5】本発明の一実施形態である3次元計測方法の第1抽出工程の操作フロー図である。
図6】(a)第1線像が抽出された第1画像、(b)第2線像が抽出された第2画像である。
図7】(a)着目点が選択された第1画像、(b)エピポーラ線と第2線像との交点が求められた第2画像である。
図8】色テーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の線状物の3次元計測方法および装置の一実施形態を図に基づいて説明する。なお、以下において、線状物の3次元計測方法を単に「計測方法」と、線状物の3次元計測装置を単に「計測装置」ということがある。
【0017】
図1を参照して、本実施形態の計測装置10は、ステレオカメラ11、演算部15、記憶部16、入出力部17を備える。
【0018】
ステレオカメラ11は、第1カメラ12、第2カメラ13、カメラ制御部14からなる。第1カメラ12は、カラーの2次元画像である第1画像を撮像するカラーカメラである。第2カメラ13は、カラーの2次元画像である第2画像を撮像するカラーカメラであって、第1カメラに対する相対位置が固定されている。カメラ制御部14は、第1カメラおよび第2カメラを制御し、演算部15との通信を行う。カメラ制御部は、例えば、演算部から撮像指示を受信して第1カメラおよび第2カメラに撮像指示を送信し、第1画像および第2画像を演算部に転送する。
【0019】
演算部15は、カメラ制御部14との通信の他、ステレオカメラ11から受信した第1画像および第2画像を処理して線状物の3次元位置を算出する。記憶部16は、ステレオカメラが撮像した第1画像および第2画像、対象物の色テーブルを記憶する他、演算に必要な中間データや演算結果等を記憶する。入出力部17は、作業者からの指令を受け付けたり、作業者に対して計測結果を表示したりする。
【0020】
図2を参照して、本実施形態の計測方法では、電線21~23を第1カメラ12および第2カメラ13で撮像する。そして、電線21上のある点Pに対して、第1カメラによる第1画像30への投影点Qと、第2カメラによる第2画像40への投影点Rが得られれば、既知である第1カメラおよび第2カメラの位置情報を利用して、点Pの3次元位置を算出することができる。第1カメラおよび第2カメラの位置情報は、予め2つのカメラをキャリブレーションしておくことで取得できる。
【0021】
図2は白黒で描かれているが、計測対象である3本の電線21~23は色分けされており、互いに異なる色、例えば赤、青、黄などの被覆を有する。計測対象となる線状物は、線状の物体であれば特に限定されないが、好ましくは互いに異なる色の線状物であり、さらに好ましくは色分けされた電線や光ファイバー線のケーブルであり、特に好ましくはワイヤーハーネスのケーブルである。
【0022】
図3に本実施形態の計測方法のフロー図を示す。以下、各工程について説明する。
【0023】
まず、計測に先立って、色テーブルを作成する。色テーブルは、計測対象となり得る線状物の種類毎にその色を記録したテーブルである。図8に、電線の種類毎に、その色を赤緑青(RGB)の3原色の輝度で表した色テーブルを一例として示す。色テーブルは記憶部16に記憶される。
【0024】
計測時には、ステレオカメラ11で電線21~23を撮像する。電線21~23は第1カメラ12によって第1画像30に撮像される。それと同時に、電線21~23は第2カメラ13によって、第1カメラとは異なる視点から、第2画像40に撮像される。第1画像および第2画像は演算部15に転送され、記憶部16に記憶される。
【0025】
演算部は、ステレオカメラ11から第1画像30および第2画像40を取得する。このとき、図4(a)を参照して、第1画像30には3本の電線21~23の像31~33が写っている。同様に、図4(b)を参照して、第2画像40には3本の電線21~23の像41~43が写っている。
【0026】
次に演算部は、第1画像30上で、特定の電線21を第1線像として抽出する。図5を参照して、この第1線像を抽出する工程(第1抽出工程)は、色による抽出操作、二値化操作、ノイズ除去操作、細線化操作を含む。
【0027】
色による抽出操作では、演算部は計測しようとする電線21の色を色テーブルから取得して、第1画像30上でその特定の色の線状物21の像31だけを第1線像34として抽出する。具体的には、第1画像の各画素の色をその特定の色と比較して、両者が同じと判断される場合にはその画素を残し、両者が異なると判断される場合にはその画素を消去する。色が同じであるか異なるかの判断は、両者の差が所定の値以下であるか否かによって行うことができる。例えば、電線21に対応するRGB値を色テーブルから取得して、第1画像の各画素のRGB値をそれと比較し、RGBの各値の差が所定の値以下であれば、その画素は電線21と同じ色であると判断する。所定の値は、RGBの階調数や、異なる種類の電線間での色の違いの程度等を考慮して定めることができる。
【0028】
次に、第1画像30を二値化する。これは適当な閾値を用いて、各画素の値を0か1に置き換える操作である。二値化操作によって以後の画像処理が容易になる。二値化操作は色による抽出操作と同時に行ってもよい。同じ色と判定した画素を1とし、異なる色と判定した画素を0とすることで2値化できる。
【0029】
次に、第1画像30に対してノイズ除去操作を行う。上記色による抽出操作によって第1線像34が抽出されたが、第1画像にはカメラのショットノイズなどによる孤立した画素が残っている。また、1つの画素に対するRGB用の撮像素子の位置が実際にはわずかにずれていることから、電線の像31~33の輪郭部など、色が急峻に変化する部分で画像の色が乱れ、やはり孤立した画素が残っている可能性がある。このような画素を除去することによって、より正確な第1線像34が得られる。
【0030】
次に、第1線像34を細線化する。これは第1線像の連結性を保ちながら線幅を1に細める操作である。細線化操作の方法は、線幅の中心に位置する画素を選択するなど、公知の方法を用いることができる。これにより、以後の画像処理が容易になるし、対応点等をより正確に求めることができる。
【0031】
図6(a)に得られた第1線像34を示す。第1線像が抽出された第1画像30は記憶部16に記憶される。
【0032】
図3に戻って、第2画像40に対しても第1画像30と同様の操作を行い、第2線像44を抽出する(第2抽出工程)。図6(b)に第2線像44を示す。第2線像が抽出された第2画像は記憶部16に記憶される。
【0033】
図7(a)を参照して、次に演算部は、第1画像30の第1線像34上に着目点Qを選択する。点Qは電線21の点P(図2)の第1画像への投影点である。
【0034】
図7(b)を参照して、次に演算部は、第2画像40上で、第1画像30の着目点Qに対応するエピポーラ線45を求める。そして、第2線像44とエピポーラ線45との交点Rを求め、これを着目点Qに対応する点とする。点Rは電線21の点P(図2)の第2画像への投影点である。
【0035】
以上の工程により、図2に示した電線21の点Pに対して、第1画像30への投影点Qと、第2画像40への投影点Rが得られたので、演算部は点Pの3次元位置を算出する。
【0036】
次に、第1線像34上に新しい着目点を選択して、着目点選択以降の工程を繰り返す。次の着目点としては、前の着目点に連結された隣接点を選択することができる。このようにして着目点Qをずらしながら、すなわち点Pを電線21上で移動させながら3次元位置を求めることによって、電線21の3次元計測を行う。
【0037】
電線21について必要な情報が得られた時点で、上記繰り返し処理を終了する。引き続き他の電線、例えば電線22の3次元計測を行う場合は、電線22の色を色テーブルから取得して、第1カメラおよび第2カメラが撮像した当初の第1画像および第2画像に対して、第1抽出工程から後の工程を繰り返す。
【0038】
ここで、色テーブルについて、さらに詳しく説明する。
【0039】
図8に例示した色テーブルは、線状物の種類毎に1つのRGB値が記載されたものであったが、線状物1種類に対して複数のRGB値を記載しておき、いずれかのRGB値と同色と判定されれば、当該線状物であると判断してもよい。また、色はRGB以外の表色系で記録されていてもよい。例えば、国際照明委員会(CIE)が策定したCIELAB表色系に基づいてL、a、bで表現されていてもよい。ステレオカメラからの出力がRGB値であっても、表色系間の換算は容易である。
【0040】
また、上記実施形態では、画素のRGB値と色テーブルのRGB値との差が所定の値以下であれば、その画素の色とテーブルの色が同じであると判断したが、同色であると判断する色の範囲を色テーブルに記録しておいてもよい。色の範囲を記録する場合、Lの値で表現されていた方が、光量変化にロバストな閾値範囲を設定しやすく、より好ましい。例えば、L値の閾値範囲を広く取っておき、a値、b値の閾値範囲を狭くすることで、線状物の明るさが一定程度変化しても、他色のケーブルと混同せず同色であるとみなすことができる。
【0041】
また、色テーブルは、好ましくは、実際の計測環境において、実際に線状物を撮像したときの画像の色に基づいて作成される。具体的には、線状物を手やロボットハンドで持つなどして、第1または第2カメラの前で様々な位置・向きに動かしながら撮像し、画像からその線状物の色情報を取得する。第1および第2画像上の線状物の色は、計測環境における照明の種類や配置、線状物の光沢度や向きなど、種々の要因によって変化する。色テーブルに、実際の計測条件下で線状物の画像が撮り得る範囲の色を記録しておくことにより、線状物を抽出する際の誤認識を減らすことができる。
【0042】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、本発明の計測方法は、ケーブルの他、糸、色鉛筆・ボールペン替え芯等の筆記具、その他種々の線状物に適用可能である。
【0044】
また、例えば、上記実施形態における工程や操作は、それが可能である場合には、実行する順序を入れ替えたり、省略してもよい。
【0045】
また、例えば、本発明の計測方法は、ステレオ方式における公知のマッチング方法との併用を排除するものではない。多数の線状物の中に同色の線状物が複数ある場合には、計測対象物の形状その他の特徴に着目したマッチング方法を併用するメリットがある。
【符号の説明】
【0046】
10 線状物の3次元計測装置
11 ステレオカメラ
12 第1カメラ
13 第2カメラ
14 カメラ制御部
15 演算部
16 記憶部
17 入出力部
21~23 電線(線状物)
30 第1画像
31~33 第1画像上の電線21~23の像
34 第1線像
40 第2画像
41~43 第2画像上の電線21~23の像
44 第2線像
45 エピポーラ線
P 電線21上の点
Q 点Pの第1画像への投影(着目点)
R 点Pの第2画像への投影(対応点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8