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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】金属性構築材料粒状物
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/14 20220101AFI20221017BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20221017BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20221017BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221017BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221017BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221017BHJP
【FI】
B22F1/14
B22F3/10 C
B22F3/16
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y70/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019539170
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2017030209
(87)【国際公開番号】W WO2018199995
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】カスパーチク,ヴラデク
(72)【発明者】
【氏名】モンロー,マイケル,ジー
(72)【発明者】
【氏名】ホルロイド,ジョナサン
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】土屋 知久
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190322(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194678(WO,A1)
【文献】特表2006-521264(JP,A)
【文献】特開2011-179051(JP,A)
【文献】特開2015-180763(JP,A)
【文献】特開2018-90841(JP,A)
【文献】特表2018-536770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00-8/00
B33Y10/00-99/00
B29C64/00-64/40
B29C67/00-67/08
B28B1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化流体を用いる3次元(3D)印刷用金属性構築材料粒状物であって:
各々が1μmから20μmの範囲の一次金属粒子径を有する複数の一次金属粒子、ここで一次金属粒子は非形状記憶金属粒子であり、構築材料粒状物は形状記憶金属粒子を含まず;および
複数の一次金属粒子を一体に凝集させる一時的バインダーを含み、ここで一時的バインダーは、金属性構築材料粒状物を一次金属粒子のスラリーへと崩壊させるために少なくとも部分的にパターン化流体に溶解する、
各々が10μmから200μmの範囲の粒子径を有する金属性構築材料粒状物。
【請求項2】
一時的バインダーの量が、粒状物中の複数の一次金属粒子の重量%に基づいて、0.01重量%から4.0重量%の範囲にある、請求項1に規定の3次元(3D)印刷用金属性構築材料粒状物。
【請求項3】
一時的バインダーが、ポリアクリレート、糖、糖アルコール、糖ポリマーまたはオリゴマー、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、カルボキシルまたはスルホン部分を含有する水溶性ポリマー、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして
非形状記憶金属粒子が、鉄、ステンレス鋼、鋼鉄、銅、ブロンズ、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銀、金、白金、チタン、ニッケル、コバルト、これらの金属のいずれかの非形状記憶合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1または2に規定の金属性構築材料粒状物。
【請求項4】
3次元(3D)印刷方法であって:
各々が10μmから200μmの範囲の粒子径を有する金属性構築材料粒状物を適用し、金属性構築材料粒状物の各々がパターン化流体に少なくとも部分的に可溶な一時的バインダーによって一体に凝集された、各々が1μmから20μmの範囲の一次金属粒子径を有する複数の一次金属粒子からなり;そして
パターン化流体を金属性構築材料粒状物の少なくとも一部上に選択的に適用して一時的バインダーを溶解させてパターン化グリーン部品の層を形成し、この層が金属性構築材料粒状物から崩壊した一次金属粒子のスラリーを含有することを含む方法。
【請求項5】
一時的バインダーが、ポリアクリレート、糖、糖アルコール、糖ポリマーまたはオリゴマー、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、カルボキシルまたはスルホン部分を含有する水溶性ポリマー、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に規定の方法。
【請求項6】
一時的バインダーが、ポリアクリレート、糖、糖アルコール、糖ポリマーまたはオリゴマー、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、カルボキシルまたはスルホン部分を含有する水溶性ポリマー、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;
一次金属粒子が、鉄、ステンレス鋼、鋼鉄、銅、ブロンズ、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銀、金、白金、チタン、ニッケル、コバルト、これらの金属のいずれかの非形状記憶合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非形状記憶金属粒子であり;そして
一時的バインダーが、一次金属粒子の重量%に基づいて、0.01重量%から4.0重量%の範囲の量で存在する、請求項4または5に規定の方法。
【請求項7】
金属性構築材料粒状物の適用およびパターン化流体の選択的適用を繰り返してパターン化グリーン部品を生成し;そして
パターン化グリーン部品を加熱して一次金属粒子を焼結して金属部品を形成することをさらに含み、ここでパターン化グリーン部品を加熱することが:
パターン化グリーン部品を稠密化温度に加熱して稠密化グリーン部品を生成し;
稠密化グリーン部品を一時的バインダーの熱分解温度に加熱して一時的バインダーを除去し、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品を生成し;そして
少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品を焼結温度に加熱して一次金属粒子を焼結して金属部品を形成することを含む、請求項4から6のいずれかに規定の方法。
【請求項8】
稠密化温度が50℃から250℃の範囲にあり;
熱分解温度が250℃から600℃の範囲にあり;そして
焼結温度が600℃から1800℃の範囲にある、請求項7に規定の方法。
【請求項9】
焼結温度が一次金属粒子の固相線温度未満であり、そして少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品を焼結温度に加熱することが3時間未満または3時間の焼結期間にわたって行われる、請求項7または8に規定の方法。
【請求項10】
金属性構築材料粒状物の適用、パターン化流体の選択的適用、金属性構築材料粒状物の適用およびパターン化流体の選択的適用の繰り返し、およびパターン化グリーン部品の稠密化温度への加熱が構築領域プラットフォーム上で達成され;そして
パターン化グリーン部品を稠密化温度に加熱した後、方法がさらに:
稠密化グリーン部品を構築領域プラットフォームから取り出し;そして
稠密化グリーン部品を加熱機構内に置くことを含む、請求項7から9のいずれかに規定の方法。
【請求項11】
稠密化グリーン部品を熱分解温度に加熱すること、および少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品を焼結温度に加熱することが、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、またはこれらの組み合わせを含有する環境下に達成される、請求項7から10のいずれかに規定の方法。
【請求項12】
金属性構築材料粒状物を適用するに先立って、方法がさらに:
一次金属粒子を一時的バインダーを含有する混合物中に分散し;そして
分散された一次金属粒子を含有する混合物を噴霧乾燥して金属性構築材料粒状物を生成することを含む、請求項4から11のいずれかに規定の方法。
【請求項13】
パターン化流体が水からなる、請求項4から12のいずれかに規定の方法。
【請求項14】
々が10μmから200μmの範囲の粒子径を有する金属性構築材料粒状物の供給物
構築材料分配器;
パターン化流体の供給物;
パターン化流体を選択的に分配するアプリケータ;
コントローラ;および
一時的なコンピュータ可読媒体を含む、3次元(3D)印刷システムであって:
金属性構築材料粒状物の各々はパターン化流体に少なくとも部分的に可溶な一時的バインダーによって一体に凝集された各々が1μmから20μmの範囲の一次金属粒子径を有する複数の一次金属粒子からなり、
非一時的なコンピュータ可読媒体はコントローラに、構築材料分配器を使用して金属性構築材料粒状物を分配させ;そしてアプリケータを使用してパターン化流体を金属性構築材料粒状物の少なくとも一部の上に、一次的バインダーを溶解させてパターン化グリーン部品の層を形成するために、選択的に分配させる、コンピュータが実行可能な命令を格納しており、
パターン化グリーン部品の層は金属性構築材料粒状物から崩壊した一次金属粒子のスラリーを含有する、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
3次元(3D)印刷は、デジタルモデルから3次元固体部品を作成するために使用される、付加印刷プロセスであってよい。3D印刷はしばしば、製品のラピッドプロトタイピング、金型の作成、金型マスターの作成、および短期的な製造に用いられている。幾つかの3D印刷技術は付加的プロセスであると考えられるが、それはそれらが、連続する材料層の適用を伴うためである。これは、多くの場合に材料の除去に依拠して最終的な部品を作成する、伝統的な機械加工プロセスとは異なっている。幾つかの3D印刷方法は、化学的なバインダーまたは接着剤を使用して、構築材料を一体に結合させる。他の3D印刷方法は、構築材料の少なくとも部分的な硬化または融合または溶融を伴う。一部の材料については、少なくとも部分的な溶融は、熱補助式の押し出しを使用して達成されてよく、また他の材料(例えば重合性材料)については、硬化または融合は、例えば紫外光または赤外光を使用して達成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかとなるが、そこでは同様の参照番号は、同一ではないとしても類似している部品に対応している。簡潔にするために、先に説明された機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関しては、記載される場合も記載されない場合もある。
【0003】
図1は、本願に開示される例示的な3D印刷システムの単純化された概略的な等角図である。
【0004】
図2は、本願に開示される金属性構築材料粒状物の例の概略表示である。
【0005】
図3Aから図3Fは、本願に開示される3D印刷方法の例を使用した、パターン化グリーン部品、稠密化グリーン部品、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品、および3D金属部品の形成を示す概略的な部分断面図である。
【0006】
図4は、本願に開示される3D印刷方法の例を示す流れ図である。
【0007】
図5Aおよび図5Bは、例示的な構築材料粒状物を例示的な水性パターン化流体と接触させた場合に形成される、例示的な構築材料粒状物(図5A)および一次金属粒子のスラリー層(図5B)の、200×(即ち200倍)の倍率における、スケールバーを100μmとした顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
3次元(3D)印刷の幾つかの例では、パターン化剤(液体機能剤/材料としても知られている)が構築材料の層に対して選択的に適用され、次いで構築材料の別の層がその上に適用される。パターン化剤はこの構築材料の別の層に対して適用されてよく、そしてこれらのプロセスは繰り返してよく、最終的に形成される3D部品のグリーン部品(グリーン体とも称される)が形成される。パターン化剤は、グリーン部品の構築材料粒子を一体に保持するバインダーを含んでよい。グリーン部品は次いで、電磁放射線および/または熱に対して曝露されてよく、構築材料グリーン部品中の構築材料が焼結されて3D部品が形成される。
【0009】
構築材料が十分に制御された均一性をもって薄い層へと拡延する性質を有することは、形成される3D部品の精度および品質に影響を及ぼしうる。5μmから10μmよりも小さな大きさの構築材料粒子は、粒子間のファンデルワールス吸引力が強いことに起因して、不規則な形状の塊を形成しやすい。この構築材料の塊は、それが薄い層へと拡延する性質を低下させ、不精確な形状、変動する構造特性、構造的欠陥、および/または変動する外観特性を有する3D部品をもたらしうる。少なくとも10μmの大きさを有し、球形に近い形状を有する構築材料粒子は、十分に拡延する傾向がある。
【0010】
しかしながら、構築材料、特に金属性構築材料であってそのように大きな粒径を有するものは、高密度の焼結部品を作成する場合に、処理上の課題を提示しうる。大きな金属粒子を用いて高密度の部品を達成するためには、処理条件は厳密に制御されるが、これはプロセスを不十分に、および/または困難なものにしうる。このことは部分的には、金属粒子が非常に高い溶融温度を有しがちであり(例えば600℃を超える、そして多くの場合には1000℃を上回る)という事実、そしてより高い目標焼結密度は金属粒子の溶融温度に近い精確な焼結温度を保つことに対応しているという事実に起因しうる。例えば、理論密度の90%を超える焼結密度を得るために、平均径約30μmの合金鋼の粒子を焼結することは、その粒子を、粒子の溶融温度の約2℃下から、粒子の溶融温度の約5℃上の範囲の焼結温度に加熱することを含んでよい。この例では、合金鋼の粒子の溶融温度は、約1350℃から約1450℃の範囲にあってよい。このように、大きな金属粒子(例えば30μmまたはそれよりも大きな粒径を有する)を用いて高密度(例えば理論密度の90%を超える)を有する金属部品を形成することは、1000℃を超えるものであってよい焼結温度を、±1℃の精度で数時間にわたって維持することを包含しうる。
【0011】
より大きな金属粒子を焼結して高密度の部品を達成することはまた、より長い焼結時間にわたって焼結を行うことを含みがちである。焼結は拡散に基づくプロセスであり、故にしたがって、焼結速度は一次粒子径に依存している。大多数の金属材料について、焼結速度は材料の粒径に対して2乗から4乗の範囲で反比例する。かくして構築材料の粒径が30μmから3μmへと減少すると、その焼結速度は10倍から10倍に加速されることになる。より高速の焼結時間は、より小さな粒子径および良好な機械的性質を備えた金属部品を生成しうる。かくして、より短い焼結時間を有することが望ましくあり得る。
【0012】
このように、より小さな粒径(例えば15μmまたはそれ未満)を有する金属粒子を用いると、高密度の金属部品(所望の機械的/構造的性質を有する)をより低い焼結温度で形成することが可能となりうるものであり、温度制御パラメータはより緩やかになり(すなわち、温度処理ウィンドウはより広くなる)、焼結時間はより短くなり、これらはエネルギーの節減および/またはコストの削減をもたらしうる。
【0013】
一例として、一次構築材料粒子の大きさを低減させること(例えば約15μm未満、そして場合によっては約10μm未満の粒径へと)は、金属粒子の溶融温度より約10℃下から溶融温度より約50℃下の範囲の焼結温度において、約1時間から約2時間の範囲の焼結時間にわたって焼結を行うことにより、高密度の焼結状態(例えば、理論密度の90%またはそれを超える密度、場合によっては95%またはそれを超える密度)を有する3D部品を達成することを可能にしてよい。別の例として、約2μmから約5μmの範囲の粒径を有する一次金属粒子は、金属粒子の溶融温度より約50℃下から金属粒子の溶融温度より約200℃下の範囲の焼結温度において、約30分間から約1時間の範囲の焼結時間にわたって焼結を行うことにより、高密度の焼結状態(例えば、理論密度の95%またはそれを超える密度)を達成するために使用してよい。これらの例では、焼結の間の温度は所与の範囲(そして使用される金属および/または合金に依存する)内の任意の温度に変動してよく、高密度が達成可能である。かくして、本願に開示の例においては、精密な±1℃の温度制御は不要になる。
【0014】
本願に開示する方法およびシステムの例は、粒子状構築材料を用いる。構築材料粒状物のそれぞれは、一次金属粒子と、一次金属粒子を相互に一体に保持する一時的バインダー(少なくとも部分的にパターン化流体に可溶である)から構成されている。構築材料粒状物は、拡げ延ばし(拡延)に際して十分に制御された均一性を有する薄層を形成することができるように、十分な大きさ(例えば、≧10μm)を有する。
【0015】
本願で使用するところでは、用語「一時的バインダー」は、構築材料粒状物においては存在するが、3D印刷プロセスの間に除去され、したがって最終的な3D部品には存在しないバインダーを指している。加えて、構築材料粒状物の一時的バインダーは、印刷時に使用されるパターン化流体中に少なくとも部分的に可溶であるように選択される。一時的バインダーの溶解は、構築材料粒状物を物理的に分解させ、一次金属粒子の粘稠なスラリーの層へと変換させる。このスラリーは一次金属粒子からなる、適度な構造的均一性をもつ層であり、バインダーの溶解および再分散、液体の蒸発、および毛管力の結果として稠密化が可能であり、稠密化グリーン部品を形成する。稠密化グリーン部品は、パターン化流体でパターン化されなかった構築材料粒状物から、稠密化グリーン部品の構造に悪影響を及ぼすことなしに取り出すことができる。取り出された稠密化グリーン部品は次いで、熱分解脱バインダーを受けて少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品が製造され、そしてこの少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品は次いで、焼結されて最終的な3D部品/オブジェクトが形成される。一次金属粒子は十分に小さくて(例えば≦10μmから≦15μm)迅速に焼結され(例えばその粒子についての目標温度において約10分間から約4時間以内)、高い焼結密度(理論密度の>90%から>95%)および良好な機械的強度でもって3D部品が製造される。
【0016】
本願で使用するところでは、用語「パターン化グリーン部品」は、最終の3D印刷部品を表す形状を有し、また一次金属粒子のスラリー、溶解したバインダー、およびパターン化流体を含む、中間部品を指している。スラリーは、パターン化流体でパターン化された構築材料粒状物中の、バインダーの溶解によって形成される。パターン化グリーン部品において、一次金属粒子は、一次金属粒子とパターン化流体との間の引力、および/または一次金属粒子の間に再分散された一時的バインダーによって、一体に弱く結合されている場合もあり、またされていない場合もある。場合によっては、パターン化グリーン部品の機械的強度は、それを取り扱ったり構築材料プラットフォームから取り出したりできない程度のものである。さらに、パターン化流体でパターン化されていない構築材料粒状物は、それがパターン化グリーン部品に隣接したりパターン化グリーン部品を取り囲んだりしている場合でも、パターン化グリーン部品の一部とは見なされないことが理解されるべきである。
【0017】
本願で使用するところでは、用語「稠密化グリーン部品」は、パターン化流体が少なくとも実質的に蒸発されてなる、パターン化グリーン部品を指している。パターン化流体の少なくとも実質的な蒸発は、毛管圧密化に基づく部品の稠密化をもたらしうる。パターン化流体の少なくとも実質的な蒸発はまた、一時的バインダー稠密化グリーン部品の一次金属粒子に再結合することを可能にしてよい。換言すれば、「稠密化グリーン部品」は中間部品であり、形状は最終的な3D印刷部品を表し、一時的バインダーによって相互に再結合された一次金属粒子を含んでいる。パターン化グリーン部品と比較すると、稠密化グリーン部品の機械的強度はより大きく、場合によっては、稠密化グリーン部品は取り扱いが可能であったり、または構築材料プラットフォームから取り出したりすることが可能である。
【0018】
用語「グリーン」は、パターン化グリーン部品または稠密化グリーン部品を参照している場合には、色を示唆するものではなく、その部品がまだ完全に処理されていないことを示すものであることが理解されよう。
【0019】
本願で使用するところでは、用語「少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品」は、加熱プロセスに曝露された稠密化グリーン部品を指しており、この加熱プロセスは一時的バインダーの熱分解を開始させ、かくして一時的バインダーは少なくとも部分的に除去される。場合によっては、バインダーの揮発性有機成分またはバインダーの熱分解により生成された揮発性有機成分は完全に除去され、非常に僅かな量の、熱分解されたバインダー由来の不揮発性残渣が残存してよい。この僅かな量の不揮発性残渣は、一般には当初のバインダー量の<2重量%であり、場合によっては当初のバインダー量の<0.1重量%である。他の場合には、熱分解されたバインダー(すべての生成物および残渣を含む)は完全に除去される。換言すれば、「少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品」は、最終の3D印刷部品を表す形状を有し、i)弱い焼結(すなわち、部品の形状を保持することが可能な、粒子相互間の低レベルのネッキング)、またはii)残存する少量の不揮発性バインダー残渣、および/またはiii)iおよびiiの組み合わせの結果として一体に結合された一次金属粒子を含む、中間部品を指している。
【0020】
用語「グレー」は、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品を参照している場合には、色を示唆するのではなく、その部品がまだ完全には処理されていないことを示すものであることが理解されよう。
【0021】
少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品は、稠密化グリーン部品と同様の、またはそれよりも大きな多孔度を有してよいが(一時的バインダーの除去に基づいて)、しかしこの多孔度は、3D印刷部品への遷移の間に、少なくとも実質的に排除される。
【0022】
本願で使用するところでは、用語「3D印刷部品」、「3D部品」、「金属3D部品」、または「金属部品」は、完成された焼結部品を指している。
【0023】
さて図1を参照すると、3D印刷システム10の例が示されている。理解されるように、この3D印刷システム10は付加的な部材を含んでいてよく、またここに記載する部材の幾つかは除去および/または修正してよい。さらにまた、図1に示された3D印刷システム10の部材は縮尺通りに描かれていない場合があり、したがって3D印刷システム10は、図示のものと異なる寸法および/または構成を有する場合がある。
【0024】
3次元(3D)印刷システム10は一般に、構築材料粒状物16の供給部14と、構築材料粒状物16の各々が、パターン化流体26に少なくとも部分的に可溶な一時的バインダー29によって一体に凝集された複数の一次金属粒子28からなることと;構築材料分配器18と;パターン化流体26の供給部と;パターン化流体26を選択的に分配するアプリケータ24と;コントローラ32と;コントローラ32に:構築材料分配器18を用いて構築材料粒状物16を分配させ;そしてアプリケータ24を使用してパターン化流体26を構築材料粒状物16の少なくとも一部分40の上に選択的に配給するようにさせる(図3C参照)、コンピュータが実行可能な命令を格納している非一時的なコンピュータ可読媒体とを含んでいる。
【0025】
図1に示されているように、印刷システム10は、構築領域プラットフォーム12と、構築材料粒状物16を含有する構築材料供給部14と、構築材料分配器18とを含む。
【0026】
構築領域プラットフォーム12は、構築材料供給部14から構築材料粒状物16を受け取る。構築領域プラットフォーム12は印刷システム10と一体化されていてよく、または印刷システム10内へと別個に挿入可能な部品であってよい。例えば、構築領域プラットフォーム12は、印刷システム10とは別個に入手可能なモジュールであってよい。図示されている構築領域プラットフォーム12はまた一つの例であり、プラテン、製造/印刷ベッド、ガラス板、または別の構築表面といった、別の支持部材で置き換えてもよい。
【0027】
構築領域プラットフォーム12は、矢印20によって示されている方向に、例えばz軸に沿って移動されてよく、かくして構築材料粒状物16は、プラットフォーム12に対して、または先に形成されパターン化された構築材料粒状物16の層に対して分配されてよい(図3D参照)。一つの例では、構築材料粒状物粒子16が分配される場合、構築領域プラットフォーム12は、構築材料分配器18が構築材料粒状物粒子16をプラットフォーム12上に押し付けて、その上に構築材料粒状物16の層38を形成するのに十分なだけ、前進(例えば下方に)される(例えば、図3Aおよび図3B参照)ようにプログラムされてよい。構築領域プラットフォーム12はまた、例えば新たな部品が構築される場合には、元の位置へと戻されてよい。
【0028】
構築材料供給部14は、構築材料粒状物粒子16を構築材料分配器18と構築領域プラットフォーム12の間に位置決めするための、容器、ベッド、その他の表面であってよい。幾つかの例では、構築材料供給部14は表面を含んでいてよく、その上に対して構築材料粒状物粒子16が、例えば構築材料供給部14の上方に位置する構築材料源(図示せず)から供給されてよい。構築材料源の例には、ホッパー、オーガーコンベア、その他が含まれてよい。付加的に、または代替的に、構築材料供給部14は、構築材料粒状物粒子16を貯蔵位置から構築領域プラットフォーム12上へと、または先に形成された構築材料粒状物16の層上へと拡延される位置まで供給する、例えば移動させる機構(例えば供給ピストン)を含んでよい。
【0029】
構築材料分配器18は、矢印22によって示されている方向に、例えばy軸に沿って、構築材料供給部14を越え構築領域プラットフォーム12を横断して、構築材料粒状物16の層を構築領域プラットフォーム12の上に拡延するように移動されてよい。構築材料分配器18はまた、構築材料粒状物16の拡延に続いて、構築材料供給部14に隣接する位置まで戻されてよい。構築材料分配器18は、ブレード(例えばドクターブレード)、ローラー、ローラーとブレードの組み合わせ、および/または構築材料粒状物粒子16を構築領域プラットフォーム12上に拡延することのできる任意の他の装置であってよい。例えば、構築材料分配器18は逆回転するローラーであってよい。
【0030】
図2を手短に参照すると、金属性構築材料粒状物16の例が示されている。金属性構築材料粒状物16はそれぞれ、約1μmから約20μmまたは≦1μmから約15μmの範囲にある一次粒子径を有する複数の一次金属粒子28を含んでおり、そこにおいて一次金属粒子は非形状記憶金属粒子であり、また金属性構築材料粒状物16は形状記憶金属粒子を含んでおらず、そして一時的バインダー29が複数の一次金属粒子を一緒に凝集させている。幾つかの例では、構築材料粒状物16は一次金属粒子28および一時的バインダー29からなり、他の成分を含んでいない。他の幾つかの例では、構築材料粒状物16は一次金属粒子28と、一時的バインダー29と、そして界面活性剤/湿潤剤とからなり、他の成分を含んでいない。
【0031】
一つの例では、構築材料粒状物16は約10μmから約200μmの範囲にある平均粒子径を有している。別の例では、平均粒子径は約20μmから約150μmの範囲にある。用語「平均粒子径」は本願において、粒子状の構築材料16を記述するために使用されている。平均粒子径は一般に、粒子状構築材料16の直径または平均径を指しており、これは粒子の形態に応じて変動してよい。一つの例では、それぞれの構築材料粒状物16は実質的に球形の形態を有してよい。実質的に球形の粒状物16(すなわち球状またはほぼ球状)は、>0.84の真球度を有する。よって、<0.84の真球度を有する個々の粒状物16は全て、非球形(不規則形状)であると見なされる。実質的に球形の粒状物16の粒子径は、その最大径によって示されてよく、そして非球形粒状物16の粒子径はその有効径、つまり非球形粒状物16と同じ質量および密度を有する球体の直径によって示されてよい。一つの例では、構築材料粒状物16のそれぞれは、実質的に球形である。
【0032】
幾つかの例では、金属性構築材料粒状物16は図3Aから図3Eに示すように中空の中心を有している。他の例では、金属性構築材料粒状物16は図2に示されているように、中心が実質的に充填されている。
【0033】
一次金属粒子28は、任意の粒子状の、非形状記憶金属材料であってよい。本願で使用するところでは、「非形状記憶」とはi)個々の一次金属粒子28および/または一次金属粒子28の組み合わせ(例えば、同じ種類または異なる種類の複数の一次金属粒子28がそれぞれの構築材料粒状物16に使用されている)が形状記憶特性を示さず、またii)個々の一次金属粒子28および一次金属粒子28の組み合わせが、形状記憶特性を獲得することのできる合金ではなく、および/またはそのような合金を形成しない(例えば、特定の熱機械的処理を受けた後に)ことを意味している。換言すれば、個々の一次金属粒子28および一次金属粒子28の組み合わせは、形状記憶特性を獲得可能な比率で金属元素を有する合金ではなく、また金属元素が形状記憶特性を獲得可能な合金を形成することのできる比率で存在するものでもない。一次金属粒子28について記述される単独の金属元素および合金は、用語が明示的に使用されないとしても、非形状記憶であることが理解されよう。
【0034】
一つの例では、一次金属粒子28は粉体であってよい。別の例では、一次金属粒子28は、焼結温度(例えば約600℃から約1800℃の範囲の温度)に加熱された場合に、焼結されて連続体となり、金属部品52(例えば図3Fを参照)を形成する性質を有していてよい。「連続体」によって意味するところは、一次金属粒子28が一体に融合して、空隙が殆どまたは全くなく、所望とする最終的な金属部品52の条件に合致する十分な機械的強度を有する、単一の部品を形成することである。
【0035】
焼結温度の例について提示したが、この温度は部分的に、一次金属粒子28の組成および相(単数または複数)に応じて変動してよいことが理解されよう。
【0036】
一つの例では、一次金属粒子28は単一の元素からなる単相の金属材料である。この例では、焼結温度は、この単一元素の融点よりも低くてよい。
【0037】
別の例では、一次金属粒子28は二つまたはより多くの元素からなり、それらは単相金属の非形状記憶合金の形態または多相金属の非形状記憶合金の形態であってよい。これらの別の例においては、溶融は一般に、ある範囲の温度にわたって生ずる。幾つかの単相金属合金については、溶融は固相線温度(そこで溶融が開始される)のすぐ上で始まり、液相線温度(全ての固体が溶融する温度)を超えるまでは完了しない。他の単相金属合金については、溶融は包晶温度のすぐ上で開始される。包晶温度は、単相の固体が二相の固体に液体を加えた混合物へと変換される点によって定義され、そこでは包晶温度を超える固体は、包晶温度未満の固体とは異なる相である。一次金属粒子28が二つまたはより多くの相からなる場合(例えば、二つまたはより多くの元素から作成された多相合金)、溶融は一般に、共晶温度または包晶温度を超えた時点で始まる。共晶温度は、単相の液体が二相の固体へと完全に固化する温度によって定義される。一般に、単相金属合金の溶融または多相金属合金の溶融は、固相線温度、共晶温度、または包晶温度のすぐ上で開始され、液相線温度を超えるまでは完了しない。幾つかの例では、焼結は、固相線温度未満、包晶温度未満、または共晶温度未満で生じうる。他の例では、焼結は、固相線温度より上、包晶温度より上、または共晶温度より上で生ずる。固相線温度より上での焼結は、超固相線焼結として知られており、この技術は、より大きな一次金属粒子28を使用する場合、および/または高密度を達成しようとする場合に望ましいであろう。一つの例では、一次金属粒子28の組成は、一次金属粒子28の少なくとも40容量%が所望とする焼結温度よりも高い融点を持つ相(単数または複数)から作成されるように選択されてよい。隣接する粒子28の間における原子の移動性を許容するのに十分なエネルギーを提供するように、焼結温度は十分に高くてよいことが理解されよう。
【0038】
一次金属粒子28は単一の金属元素(例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、その他)から構成されていてよく、または一次金属粒子28は複数の金属元素から構成されていてよい。一次金属粒子28が複数の金属元素から構成されている場合は、それぞれの一次金属粒子28は非形状記憶合金であってよい。個々の粒状物16の幾つかにおいては、一次金属粒子28は同じ合金から形成されていてよく、または異なる合金から形成されていてよい。個々の粒状物16の他のものにおいては、一次金属粒子28は単一の金属元素の複数から形成されていてよく、または単一の元素および合金の組み合わせから形成されていてよい。幾つかの例では、複数の粒状物16が使用されてよく、その場合に異なる粒状物16は異なる一次金属粒子28(例えば、単一の金属元素および/または非形状記憶合金)を含んでいる。異なる一次金属粒子28の組み合わせが使用される場合には(それぞれの構築材料粒状物16内で異なってもよく、または複数の構築材料粒状物16相互の間で異なってもよい)、それらの異なる一次金属粒子28は焼結温度に加熱された場合に一体に焼結されて、金属部品52全体にわたる単一の合金を形成してよい。加えて、異なる一次金属粒子28の組み合わせが使用される場合には(それぞれの構築材料粒状物16内で異なってもよく、または複数の構築材料粒状物16相互の間で異なってもよい)、異なる一次金属粒子28は類似する溶融温度を有するように選択されてよく、および/または最終的な3D部品52の構造/組成に悪影響を及ぼさない焼結温度が選ばれるように選択されてよい。
【0039】
一次金属粒子28の幾つかの例には、鋼鉄、ステンレス鋼、ブロンズ、チタン(Ti)およびその非形状記憶合金、アルミニウム(Al)およびその非形状記憶合金、タングステン(W)およびその非形状記憶合金、モリブデン(Mo)およびその非形状記憶合金、ニッケル(Ni)およびその非形状記憶合金、コバルト(Co)およびその非形状記憶合金、鉄(Fe)およびその非形状記憶合金、ニッケルコバルト(NiCo)非形状記憶合金、金(Au)およびその非形状記憶合金、銀(Ag)およびその非形状記憶合金、白金(Pt)およびその非形状記憶合金、および銅(Cu)およびその非形状記憶合金が含まれる。幾つかの具体的な例に含まれるものとしては、AlSi10Mg、2xxxシリーズのアルミニウム、4xxxシリーズのアルミニウム、CoCr MP1、CoCr SP2、Maraging Steel MS1、ハステロイC、ハステロイX、ニッケル合金HX、インコネルIN625、SS GP1、SS 17-4PH、SS 316L、Ti6Al4V、およびTi-6Al-4V ELI7がある。幾つかの例示的な合金について提示してきたが、PbSnハンダ合金のような他の非形状記憶合金の構築材料を使用してよいことが理解されよう。上述したように、一次金属粒子28は、個々にまたは相互に組み合わさって、形状記憶特性を獲得することができる合金を形成することはない。形状記憶特性を獲得することができる(そして一次金属粒子28として使用されない)合金の例は、約55重量%から約60重量%のニッケルを含有するニッケルチタン合金である。一つの例では、一次金属粒子28は、鉄、鋼鉄、ステンレス鋼、銅、ブロンズ、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銀、金、白金、チタン、ニッケル、コバルト、これらの金属のいずれかの非形状記憶合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非形状記憶金属粒子である。
【0040】
本願に開示する3D印刷方法(単数または複数)の開始時に粉体形状である、任意の非形状記憶金属粒子を一次金属粒子28として使用してよい。よって、一次金属粒子28の融点、固相線温度、共晶温度、および/または包晶温度は、3D印刷方法のパターン化工程が実行される環境の温度(例えば、約40℃)より高くあってよい。幾つかの例では、一次金属粒子28は、約850℃から約3500℃の範囲の融点を有してよい。他の例では、一次金属粒子28は、ある範囲の融点を有する合金、または単一の元素(単数または複数)および/または合金(単数または複数)の組み合わせであってよい。合金には、低いところでは-39℃(例えば水銀)、または30℃(例えばガリウム)、または157℃(インジウム)、その他といった融点を有する金属が含まれてよい。
【0041】
一つの例では、一次金属粒子28の粒径は約1μmから約20μmの範囲にある。別の例では、一次金属粒子径は約10μmから約15μmの範囲にある。さらに別の例では、一次金属粒子径は2μmから約5μmの範囲にある。一次金属粒子28の粒子径は一般に、金属粒子の直径または平均径を指しており、これは粒子の形態に応じて変動してよい。一つの例では、それぞれの一次金属粒子実質的に球形の形態を有してよい。実質的に球形の粒子(すなわち球状またはほぼ球状)は、>0.84の真球度を有する。よって、<0.84の真球度を有する個々の粒子は全て、非球形(不規則形状)であると見なされる。実質的に球形の一次金属粒子の粒径は、その最大径によって示されてよく、そして非球形の一次金属粒子の粒径はその有効径、つまり非球形粒子と同じ質量および密度を有する球体の直径によって示されてよい。
【0042】
一次金属粒子28は、同様の大きさを有する粒子または異なる大きさを有する粒子であってよい。図3Aに示された例では、一次金属粒子28は同様の大きさを有する粒子である。
【0043】
一時的バインダー29は、i)一次金属粒子28を一体に保持し、制限された取り扱い(例えば、構築材料粒状物16を層へと拡延する)に耐えるのに十分な機械的安定性を有する粒状物16を形成するのに十分な接着強度を有し、そしてii)パターン化流体26中に少なくとも部分的に可溶であって粒状物16が一次金属粒子28のスラリーへと変換させるようにする、任意の材料であってよい。
【0044】
一時的バインダー29の鍵となる一つの特性は、パターン化流体26中へのその溶解性である。パターン化流体26中への一時的バインダーの溶解性は、印刷環境温度に対応する温度で測定した場合に、0.5重量%よりも高くあるべきである。幾つかの例では、一時的バインダーの溶解性は2重量%よりも高い。幾つかの他の例では、一時的バインダーが有する溶解性は十分に高く、その上に噴射された量のパターン化流体26中に完全に溶解されてよい。パターン化流体26中における一時的バインダーの溶解性に上限はなく、溶解性が高いほど良好であることが理解されよう。
【0045】
一時的バインダー29は、規準iおよびiiに合致する低分子種または短鎖ポリマーであってよい。適切な一時的バインダー29の例には、ポリアクリレート、糖、糖アルコール、糖ポリマーまたはオリゴマー、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、カルボキシルまたはスルホン部分を含有する水溶性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせが含まれる。幾つかの具体的な例には、グルコース(C12)、スクロース(C122211)、フルクトース(C12)、2単位から20単位の範囲の鎖長を有するマルトデキストリン、ソルビトール(C14)、エリスリトール(C10)、マンニトール(C14)、ポリエチレングリコールおよび/またはそのコポリマー、ポリプロピレングリコールおよび/またはそのコポリマー、またはCARBOSPERSE登録商標K7028(短鎖ポリアクリル酸、分子量~2,300Da、Lubrizol社から入手可能)が含まれる。低分子量または中分子量のポリカルボン酸(例えば、5,000Da未満の分量を有する)は、比較的速く溶解しうる。より高分子量のポリカルボン酸(例えば、5,000Daより大きく10,000Daまでの分子量を有する)を使用してもよいが、溶解反応速度は遅くなりうることが理解されよう。一つの例では、一時的バインダーは、ポリアクリレート、糖、糖アルコール、糖ポリマーまたはオリゴマー、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、カルボキシルまたはスルホン部分を含有する水溶性ポリマー、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。別の例では、一時的バインダー29はポリアクリレートである。
【0046】
一つの例では、一時的バインダー29はそれぞれの粒状物16中に、各粒状物16中の一次金属粒子28の重量%に基づいて、約0.01重量%から約4.0重量%の範囲の量で存在する。別の例では、一時的バインダー29はそれぞれの粒状物16中に、各粒状物16中の一次金属粒子28の重量%に基づいて、約0.05重量%から約2重量%の範囲の量で存在する。
【0047】
上記したように、幾つかの例では、構築材料粒状物は一次金属粒子28および一時的バインダー29のみからなり、他の成分を有しない。一つの例として、一時的バインダー29は、ポリアクリレート、糖、糖アルコール、糖ポリマーまたはオリゴマー、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、カルボキシルまたはスルホン部分を含有する水溶性ポリマー、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして一次金属粒子は、鉄、ステンレス鋼、鋼鉄、銅、ブロンズ、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銀、金、白金、チタン、ニッケル、コバルト、これらの金属のいずれかの非形状記憶合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非形状記憶金属粒子である。
【0048】
他の例では、構築材料粒状物は、一次金属粒子28、一時的バインダー29、および界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数)からなる。
【0049】
界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数)は、パターン化流体26による粒状物16の濡れを促進させるために、そして粒状物16の一次金属粒子28スラリーへの崩壊を加速させるために、構築材料粒状物16中に含まれてよい。界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数)はまた、粒状物形成プロセスにおける分散助剤として作用してよい(すなわち、界面活性剤(単数または複数)は、噴霧乾燥または凍結噴霧を行ってその後混合物を凍結乾燥するのに先立って、一時的バインダー29を含有する混合物中において一次金属粒子28を分散させてよい)。構築材料粒状物16中では、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤を含む、多種多様の界面活性剤/湿潤剤を使用することができる。適切な界面活性剤/湿潤剤の例には、アセチレンジオールの化学的性質に基づく自己乳化性ノニオン性湿潤剤(例えば、Air Products and Chemicals社のSURFYNOL登録商標SEF)、ノニオン性フルオロ界面活性剤(例えば、以前はZONYL FSOとして知られていたDuPont社のCAPSTONE登録商標フルオロ界面活性剤)、およびこれらの組み合わせが含まれる。具体的な例では、界面活性剤はノニオン性のエトキシル化アセチレンジオール(例えば、Air Products and Chemicals社のSURFYNOL登録商標465)である。他の例では、界面活性剤はエトキシル化低発泡湿潤剤(例えば、Air Products and Chemicals社のSURFYNOL登録商標440またはSURFYNOL登録商標CT-111)またはエトキシル化湿潤剤および分子消泡剤(例えば、Air Products and Chemicals社のSURFYNOL登録商標420)である。さらに他の適切な界面活性剤には、ノニオン性湿潤剤および分子消泡剤(例えば、Air Products and Chemicals社のSURFYNOL登録商標104E)または水溶性ノニオン性界面活性剤(例えば、The Dow Chemical社のTERGITOLTMTMN-6)が含まれる。幾つかの例では、10未満の親水性-親油性バランス(HLB)を有する界面活性剤を用いることが望ましいであろう。
【0050】
界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数)が構築材料粒状物中に含まれる場合には、界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数)は、一次金属粒子28の合計の重量%に基づいて、約0.01重量%から約2重量%の範囲の量で存在してよい。一つの例では、界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数)は約0.02重量%から約1.0重量%の範囲の量で存在する。
【0051】
粒状物16は、噴霧乾燥、凍結噴霧およびその後の凍結乾燥、または任意の他の適切な湿式造粒技術といった、任意の適切な方法を介して製造してよい。
【0052】
幾つかの例では、構築材料粒状物16のそれぞれは約10μmから約200μmの範囲の粒子径を有し;そして一次金属粒子28の各々は約1μmから20μmの範囲の粒径を有する。
【0053】
幾つかの具体的な粒状物16の例では、一時的バインダー29は、ポリアクリレート、糖、糖アルコール、糖ポリマーまたはオリゴマー、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、カルボキシルまたはスルホン部分を含有する水溶性ポリマー、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルアルコキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;一次金属粒子28は、鉄、ステンレス鋼、鋼鉄、銅、ブロンズ、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銀、金、白金、チタン、ニッケル、コバルト、これらの金属のいずれかの非形状記憶合金、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非形状記憶金属粒子であり;そして一時的バインダー29は、一次金属粒子28の合計の重量%に基づいて、約0.01重量%から約4.0重量%の範囲の量で存在する。
【0054】
本願に開示される例においては、構築材料は他の成分なしに、構築材料粒状物16だけからなるものであってよい。
【0055】
図1に戻って参照すると、印刷システム10はまたアプリケータを含み、これは本願で開示するパターン化流体26を含んでいてよい。
【0056】
パターン化流体26は、構築材料粒状物16中の一時的バインダー29を少なくとも部分的に溶解することが可能である。幾つかの例では、パターン化流体26は、一時的バインダー29を完全に溶解することが可能である。パターン化流体26はまた相対的に揮発性であり、印刷プロセスの間に蒸発することができる。
【0057】
パターン化流体26は少なくとも部分的には、使用される一時的バインダー29に基づいて選択されてよい。幾つかの例では、パターン化流体26は水を含んでよい。一つの例では、パターン化流体26は水からなる(他の成分を含まない)。パターン化流体26が水を主成分または唯一の成分として含む場合、一時的バインダー29は水溶性である。
【0058】
他の例では、パターン化流体26は非水性溶媒であるか、非水性溶媒を含んでよい。非水性溶媒は、一時的バインダー29は非極性材料である場合に、パターン化流体26中に含有されてよい。非水性溶媒は、エタノール、アセトン、n-メチルピロリドン、および/または脂肪族炭化水素といった、非極性または中極性の一次溶媒であってよい。
【0059】
さらに別の例では、パターン化流体26は、酢酸エチルその他の相対的に揮発性の溶媒(すなわち印刷プロセスの間に少なくとも実質的に蒸発することのできる溶媒)を含んでいる。
【0060】
幾つかの例では、パターン化流体26は、稠密化/蒸発温度、熱分解温度、および/または焼結温度に到達する速度を増大させるために、放射線吸収剤を含んでよい。これらの例では、放射線吸収剤は、金属製3D部品の所望の性質に悪影響を及ぼさず、焼結された金属の構造を弱化させることのない、任意の赤外線吸収性着色剤であってよい。幾つかの場合、特に一次金属粒子がIR吸収性である場合には、パターン化流体26が何らかの放射線吸収剤を含まないことが望ましいであろう。一つの例では、パターン化流体26は放射線吸収剤として、金属ナノ粒子を含んでよい。
【0061】
放射線吸収剤がパターン化流体26中に含有される場合には、放射線吸収剤はパターン化流体26の合計重量%に基づいて、約0.1重量%から約20重量%の範囲の量で存在してよい。
【0062】
幾つかの例では、パターン化流体26はまた、共溶媒(単数または複数)、界面活性剤(単数または複数)、抗微生物剤(単数または複数)、および/または抗コゲーション剤(単数または複数)を含んでよい。
【0063】
適切な共溶媒の例には、2-ピロリジノン、N-メチルピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、1,6-ヘキサンジオールまたは他のジオール(例えば、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、その他)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、これらの類似物、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0064】
単独で使用される場合でも組み合わせて使用される場合でも、共溶媒(単数または複数)の合計量は、パターン化流体26の合計重量%の約1重量%から約80重量%の範囲にある。
【0065】
界面活性剤(単数または複数)は、パターン化流体26の濡れ特性および噴射性を改善するために使用されてよい。適切な界面活性剤の例には、構築材料粒状物16に関して先に列挙した界面活性剤の任意のものが含まれる。
【0066】
単独の界面活性剤が使用される場合でも、界面活性剤の組み合わせが使用される場合でも、パターン化流体26中の界面活性剤(単数または複数)の合計量は、パターン化流体26の合計重量%に基づいて約0.1重量%から約4重量%の範囲にあってよい。
【0067】
パターン化流体26はまた、抗微生物剤(単数または複数)を含んでよい。適切な抗微生物剤には、殺生物剤および抗菌剤が含まれる。例示的な抗微生物剤には、NUOSEPT登録商標(Ashland社)、UCARCIDETMまたはKORDEKTM(Dow Chemical社)、およびPROXEL登録商標(Arch Chemicals社)シリーズ、ACTICIDE登録商標M20(Thor社)、およびこれらの組み合わせが含まれてよい。
【0068】
一つの例では、パターン化流体26は抗微生物剤を合計量で、約0.1重量%から約1重量%の範囲で含んでよい。一つの例では、抗微生物剤は殺生物剤であり、パターン化流体26中に約0.32重量%(パターン化流体26の合計重量%に基づいて)の量で存在する。別の例では、抗微生物剤は殺生物剤であり、パターン化流体26中に約0.128重量%(パターン化流体26の合計重量%に基づいて)の量で存在する。
【0069】
抗コゲーション剤は、パターン化流体26中に含まれてよい。コゲーションとは、サーマルインクジェットプリントヘッドの加熱要素上への、乾燥したインク(例えばパターン化流体26)の堆積物を意味している。抗コゲーション剤(単数または複数)は、コゲーションの蓄積防止を補助するために含有される。適切な抗コゲーション剤の例には、オレス-3-リン酸(例えばCroda社からCRODAFOSTMO3AまたはCRODAFOSTMN-3酸として市販されている)、またはオレス-3-リン酸と低分子量(例えば<5000)のポリアクリル酸ポリマー(例えばLubrizol社からCARBOSPERSETMK-7028ポリアクリレートとして市販されている)の組み合わせが含まれる。
【0070】
単一の抗コゲーション剤を使用する場合も、抗コゲーション剤の組み合わせを使用する場合も、パターン化流体26中の抗コゲーション剤(単数または複数)の合計量は、パターン化流体26の合計重量%に基づいて、約0.1重量%から約5重量%の範囲にあってよい。
【0071】
アプリケータ24は、矢印30によって示された方向、例えばy軸に沿って、構築領域プラットフォーム12を横切って走査されてよい。アプリケータ24は例えば、サーマルインクジェットプリントヘッドまたは圧電インクジェットプリントヘッドなどのような、インクジェットアプリケータであってよく、構築領域プラットフォーム12の幅にわたって延在してよい。アプリケータ24は図1において単独のアプリケータとして示されているが、アプリケータ24は構築領域プラットフォーム12の幅にわたる複数のアプリケータを含んでよいことが理解されよう。加えて、複数のアプリケータ24は複数のプリントバー上に配置されてよい。アプリケータ24はまた、例えば、アプリケータ24が構築領域プラットフォーム12の幅にわたって延在しておらず、アプリケータ24がパターン化流体26を構築材料粒状物16の層の広い領域にわたって付着させることができない構成においては、x軸に沿って走査されてよい。アプリケータ24はかくして可動のXYステージまたは平行移動キャリッジ(いずれも図示されていない)に取り付けてよく、これらはアプリケータ24を構築領域プラットフォーム12に隣接して移動させて、本願に開示の方法(単数または複数)にしたがって構築領域プラットフォーム12上に形成された構築材料粒状物16の層の所定の領域に、パターン化流体26を付着させる。アプリケータ24は複数のノズル(図示せず)を含んでよく、それらを介してパターン化流体26が射出される。
【0072】
アプリケータ24は、約300ドット毎インチ(DPI)から約1200DPIの範囲の解像度で、パターン化流体26の液滴を分配してよい。他の例では、アプリケータ24はパターン化流体26の液滴をより高い、またはより低い解像度で分配してよい。液滴の速度は約2m/sから約24m/sの範囲にあってよく、発射周波数は約1kHzから約100kHzの範囲にあってよい。一つの例では、各々の液滴は約10ピコリットル(pl)毎液滴程度であってよいが、より大きな、またはより小さな液滴寸法を使用してよいことも考慮されている。例えば、液滴寸法は約1plから約400plの範囲にあってよい。幾つかの例では、アプリケータ24はパターン化流体26を可変の液滴寸法で分配可能である。
【0073】
上記した物理的要素のそれぞれは、印刷システム10のコントローラ32に関連して動作するように接続されてよい。コントローラ32は、生成される3Dオブジェクト/部品の3Dオブジェクトモデルに基づく印刷データを処理してよい。データ処理に応じて、コントローラ32は、構築領域プラットフォーム12、構築材料供給部14、構築材料分配器18、およびアプリケータ24の動作を制御してよい。一つの例として、コントローラ32はアクチュエータ(図示せず)を制御して、3D印刷システム10の部品の種々の動作を制御してよい。コントローラ32は、コンピューティングデバイス、半導体ベースのマイクロプロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または別のハードウェアデバイスであってよい。図示されてはいないが、コントローラ32は3D印刷システム10の部品に対して、通信線を介して接続されていてよい。
【0074】
コントローラ32は、プリンタのレジスタおよびメモリ内において物理(電子)量として表されてよいデータを操作および変換して、物理的な要素を制御し、3D部品52を生成する。したがって、コントローラ32はデータストア34と通信しているものとして描かれている。データストア34は、3D印刷システム10によって印刷される3D部品52に対応するデータを含んでいてよい。構築材料粒子16、パターン化流体26、その他の選択的な分配のためのデータは、形成すべき3D部品52のモデルから導出してよい。例えばデータは、アプリケータ24がパターン化流体26を付着させる、構築材料粒子16のそれぞれの層上の位置を含んでよい。一つの例では、コントローラ32はデータを使用してアプリケータ24を制御し、パターン化流体26を選択的に適用する。データストア34はまた、コントローラ32に、構築材料供給部14によって供給される構築材料粒子16の量、構築領域プラットフォーム12の動き、構築材料分配器18の動き、アプリケータ24の動き、その他を制御するようにさせる、機械読み取り可能な命令(非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されている)を含んでよい。
【0075】
図1に示されているように、印刷システム10はまた熱源36、36'を含んでよい。幾つかの例では、熱源36は在来の炉またはオーブン、マイクロ波、またはハイブリッド加熱(すなわち、在来の加熱およびマイクロ波加熱)が可能な装置を含んでいる。この種の熱源36は、印刷が完了した後に構築材料ケーキ(固形物)46(図3E参照)の全体を加熱するために、または稠密化グリーン部品44'を加熱するために、または稠密化グリーン部品44'が構築材料ケーキ46から取り出された後に少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50(図3F参照)を加熱するために、使用されてよい。幾つかの例では、パターン化は印刷システム10内で行われてよく、そして次いでパターン化グリーン部品44をその上に有する構築材料プラットフォーム12は、システム10から取り外されて熱源36内に置かれ、種々の加熱段階が行われてよい。他の例では、熱源36は、システム10と一体化された導電性ヒーターまたは放射性ヒーター(例えば、赤外線ランプ)であってよい。これらの別の種類の熱源36は、構築領域プラットフォーム12の下側に配置されてよく(例えば、プラットフォーム12の下側からの導電性加熱)または構築領域プラットフォーム12の上側に配置されてよい(例えば、構築材料層表面の放射性加熱)。これらの種類の加熱の組み合わせもまた使用されてよい。これらの別の種類の熱源36は、3D印刷プロセスの全体を通じて使用してよい。さらに別の例では、熱源36'は放射性加熱源(例えば、硬化ランプ)であってよく、層38の各々(図3C参照)をパターン化流体26が適用された後に加熱するように配置される。図1に示す例では、熱源36'はアプリケータ24の側部に取り付けられており、印刷および加熱が1回のパスで行われるようになっている。幾つかの例では、熱源36および熱源36'の両方が使用されてよい。
【0076】
さて図3Aから図3Fを参照すると、3D印刷方法の例が示されている。方法100の実行に先立ち、または方法100の一部として、コントローラ32はデータストア34中に格納された、印刷される3D部品52に対応するデータにアクセスしてよい。コントローラ32は、形成される構築材料粒子16の層の数を決定してよく、またアプリケータ24からのパターン化流体26が層のそれぞれに付着される個所を決定してよい。
【0077】
図3Aおよび図3Bに示されているように、方法100は、構築材料粒状物16を適用することを含む。図3Aにおいて、構築材料供給部14は構築材料粒子16を、構築領域プラットフォーム12上へと拡延する準備がされる位置へと供給してよい。図3Bにおいて、構築材料分配器18は、供給された構築材料粒子16を構築領域プラットフォーム12上に拡延してよい。コントローラ32(図3Bには示されていない)は構築材料供給制御データを処理し、これに応じて構築材料粒子16を適切に配置するよう構築材料供給部14を制御してよく、そして拡延器制御データを処理し、これに応じて構築材料分配器18を制御し、供給された構築材料粒子16を構築領域プラットフォーム12上に拡延して、その上に構築材料粒子16の層38を形成してよい。図3Bに示されているように、構築材料粒子16の一つの層38が適用されている。
【0078】
層38は、構築領域プラットフォーム12にわたって実質的に均一な厚さを有している。一つの例では、層38の厚さは約30μmから約300μmの範囲にあるが、より薄いまたはより厚い層もまた使用されてよい。例えば、層38の厚さは約20μmから約500μmの範囲にあってよい。層の厚さは、部品を微細に定義するため最小で粒子径の約2×であってよい。幾つかの例では、層の厚さは粒子径の約1.2×(すなわち、1.2倍)であってよい。
【0079】
図3Aから図3Fには示されていないが、方法100は、構築材料粒状物16を適用するに先立って、構築材料粒状物16を調製することを含んでよい。一つの例では、構築材料粒状物16を調製することは、一時的バインダー29を含む混合物中に一次金属粒子28を分散し;そして分散された一次金属粒子28を含む混合物を噴霧乾燥して、構築材料粒状物16を生成することを含んでよい。これらの例では、スラリーが生成されてよい。このスラリー(一時的バインダー29および一次金属粒子28を含有する)は次いで噴霧乾燥することにより、または、一時的バインダー29および一次金属粒子28を含有するスラリーに凍結噴霧とその後の凍結乾燥を行うことにより、乾燥した粒子状粉体へと変換されてよい。噴霧乾燥、または凍結噴霧とその後の凍結乾燥は、構築材料粒状物16を形成/生成させる。幾つかの例では、界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数)がまた、噴霧乾燥、または凍結噴霧とその後の凍結乾燥によって乾燥した粒子状粉体へと変換される混合物/スラリー中に含まれてよい。一時的バインダー29および一次金属粒子28(そして任意選択的に界面活性剤(単数または複数)/湿潤剤(単数または複数))を含有するスラリーまたは混合物を乾燥した粒子状粉体へと変換するために、他の適切な湿式造粒技術もまた使用されてよい。
【0080】
さて図3Cを参照すると、方法100は続いて、パターン化流体26を構築材料粒状物16の部分40に対して選択的に適用する。図3Cに示されているように、パターン化流体26はアプリケータ24から分配されてよい。アプリケータ24は、サーマルインクジェットプリントヘッド、圧電プリントヘッド、その他であってよく、そしてパターン化流体26の選択的適用は、関連するインクジェット印刷技術によって達成されてよい。したがって、パターン化流体26の選択的適用は、サーマルインクジェット印刷または圧電インクジェット印刷によって達成されてよい。
【0081】
コントローラ32はデータを処理してよく、これに応じてアプリケータ24を制御して(例えば、矢印30によって示された方向に)、パターン化グリーン部品44の一部分になる、そして究極的には焼結されて3D部品52を形成する、構築材料粒状物16の所定の部分(単数または複数)40上へとパターン化流体26を付着させる。アプリケータ24は、コントローラ32からコマンドを受け取り、そしてパターン化流体26を、形成される3D部品52の層についての断面パターンにしたがって付着させるようにプログラムされてよい。本願で使用するところでは、形成される3D部品52の層についての断面とは、構築領域プラットフォーム12の表面に平行な断面を指している。図3Cに示す例においては、アプリケータ24は3D部品52の最初の層となる、層38の部分(単数または複数)40上へと、パターン化流体26を選択的に適用する。一つの例として、形成される3D部品が立方体または円柱状に形成される場合には、パターン化流体26はそれぞれ、構築材料粒子16の層38の少なくとも一部分の上に、正方形パターンまたは円形パターン(上から見て)で付着される。図3Cに示す例では、パターン化流体26は正方形パターンでもって層38の部分40上に付着されているが、部分42上には付着されていない。
【0082】
上述したように、パターン化流体26は構築材料粒状物16中の一時的バインダー29を少なくとも部分的に溶解することができ、また相対的に揮発性であって、印刷プロセスの間に後から蒸発することができる。
【0083】
一時的バインダー29はパターン化流体26に少なくとも部分的に可溶であることから、パターン化流体26の選択的な適用は、一時的バインダー29を溶解させる。パターン化流体26が所望の部分(単数または複数)40に選択的に適用された場合、パターン化流体26は層38の内部に浸透し、パターン化流体26と接触した構築材料粒状物16の一時的バインダー29は、少なくとも部分的に溶解する。一時的バインダー29の少なくとも部分的な溶解は、構築材料粒状物16を弱化させ、一次金属粒子28のスラリーを形成する。
【0084】
パターン化された部分40にある構築材料または粒状物16の単位当たりに適用されるパターン化流体26の容量は、スラリーの形成を生じさせるのに十分なものであってよく、これはパターン化流体26の蒸発に際して、層38の部分40内において一次金属粒子28の稠密化を導くことができる。
【0085】
適用されたパターン化流体26を有しない構築材料粒状物16の部分42においては、粒状物16の一時的バインダー29は溶解されず、これらの部分42では一次金属粒子28のスラリーは形成されず、そしてこれらの部分42における一次金属粒子28はパターン化流体26の蒸発に際して稠密化されないことが理解されよう。従ってこれらの部分42は、パターン化グリーン部品44、稠密化グリーン部品44'、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50、または究極的に形成される金属部品52の一部にはならない。
【0086】
方法100は、パターン化流体26を少なくとも実質的に蒸発させることによって継続されてよい。パターン化流体26の少なくとも実質的な蒸発は、部分的な蒸発または完全な蒸発であってよいことが理解されよう。パターン化流体26の少なくとも実質的な蒸発は、残存するパターン化流体26の存在が金属部品52の所望の構造的一体性に悪影響を及ぼさない場合には、部分的な蒸発であってよい。こうした例では、パターン化流体26の少なくとも実質的な蒸発によって形成される稠密化グリーン部品44'は、残存量のパターン化流体26を含んでいてよいが、しかしパターン化流体26は脱バインダーに際して完全に除去される。パターン化流体26の(部分的または完全な)蒸発は、構築材料粒状物16の少なくとも部分40における複数の一次金属粒子28の稠密化を生じさせ、稠密化グリーン部品44'の層を形成させる。複数の一次金属粒子28の稠密化は、毛管圧密化に基づくものであってよい。
【0087】
パターン化流体26の蒸発は、パターン化グリーン部品44(図3E参照)が形成された後、またはパターン化グリーン部品44の層のそれぞれが形成されるに際して行われてよい。これらの例についてそれぞれ説明する。
【0088】
図3Aから図3Cにかけて示されたプロセスは、幾つかのパターン化された層を反復して構築し、パターン化グリーン部品44を形成するために、繰り返されてよい。図3Dは、パターン化流体26でパターン化された層38の上に、構築材料粒状物16の第2の層を形成する初期を示している。図3Dにおいては、構築材料粒状物16の層38の所定の部分(単数または複数)40上へのパターン化流体26の付着に続いて、コントローラ32はデータを処理してよく、これに応じて構築領域プラットフォーム12が矢印20によって示された方向へと相対的に僅かな距離だけ移動されるようにしてよい。換言すれば、構築領域プラットフォーム12は、構築材料粒状物16の次の層の形成を可能にするように降下されてよい。例えば、構築材料プラットフォーム12は、層38の高さに等しい距離だけ降下されてよい。加えて、構築領域プラットフォーム12の降下に続いて、コントローラ32は構築材料供給部14を制御して追加の構築材料粒状物16を供給してよく(例えば、エレベーター、オーガー、その他の作動を通じて)、そして構築材料分配器18を制御して、その追加の構築材料粒状物16により、先に形成された層38の表面上に構築材料粒子16の別の層を形成してよい。新たに形成された層は、パターン化流体26でパターン化してよい。
【0089】
新たな層を繰り返して形成しパターン化する(各々の層を硬化せずに)結果として、図3Eに示すように構築材料のケーキ46が形成されるが、これは構築材料粒状物16の層38のそれぞれの非パターン化部分42内に存在するパターン化グリーン部品44を含んでいる。パターン化グリーン部品44は、構築材料粒状物16から変換され、パターン化流体26、溶解された一時的バインダー29、および一次金属粒子28を含有する、構造的に一様なスラリーで充填された、ある容積の構築材料ケーキ46である。構築材料ケーキ46の残部は、パターン化されていない(元の、すなわち溶解されていない)構築材料粒状物16から構成されている。
【0090】
この3D印刷方法が行われる環境の温度(例えば、新たな層の形成およびパターン化に際しての構築領域プラットフォーム12の温度)は、パターン化流体26(またはパターン化流体26の主溶媒)の沸点より約5℃から約50℃低い。一つの例では、新たな層の形成およびパターン化に際しての構築領域プラットフォーム12の温度は、約50℃から約95℃の範囲にある。3D印刷環境温度の他の例は、約40℃から約50℃の範囲にあってよい。
【0091】
やはり図3Eに示されているように、構築材料ケーキ46は、矢印48によって示されるように、熱または熱を生成する放射線に曝露されてよい。適用される熱は、パターン化グリーン部品44からパターン化流体26を蒸発させ、そして稠密化グリーン部品44'を生成するのに十分なものであってよい。一つの例では、熱源36を使用して構築材料ケーキ46に熱を適用してよい。図3Eに示す例では、構築材料ケーキ46は、熱源36によって加熱されている間、構築領域プラットフォーム12上にとどまっていてよい。別の例では、構築領域プラットフォーム12は、その上の構築材料ケーキ46と共にアプリケータ24から取り外され、熱源36中に置かれてよい。前述した熱源36および/または36'の任意のものを使用してよい。
【0092】
図3Cに戻って参照すると、方法100の別の例において、パターン化流体26が層38に適用された後であって別の層が形成されるよりも前に、層38は、熱源36(例えば構築材料プラットフォーム12に一体化されている)または熱源36'を使用した加熱に曝露されてよい。熱源36、36'は層ごとに印刷を行う間にパターン化流体26を蒸発させるために使用され、また安定化された稠密化グリーン部品の層を生成させるために使用される。
【0093】
層ごとの例においては、構築材料粒状物16の適用、パターン化流体26の選択的適用、そしてパターン化流体26の少なくとも実質的な蒸発は、それぞれが構築領域プラットフォーム12上で達成される。次いでこの方法は、構築材料粒状物16の適用、パターン化流体26の選択的適用、およびパターン化流体26の蒸発を繰り返して、稠密化グリーン部品44'の複数の層を反復形成することを含んでいる。
【0094】
加熱により稠密化グリーン部品の層を形成することは、パターン化流体26の蒸発は可能にするが、一時的バインダー29の熱分解または一次金属粒子28の焼結は可能にしない温度において行われてよい。適切な稠密化/蒸発温度の例は以下に提示する。この例では、図3Aから図3Cに示されたプロセス(層38の加熱を含む)を繰り返して、幾つかの稠密化層を反復構築して稠密化グリーン部品44'を生成してよい。層が別々に加熱される場合には、パターン化流体26が現在の層から下側の層へと浸透して、下側の層にある一時的バインダー29を再溶解し、パターン化流体26の蒸発に際して現在の層および下側の層の一時的バインダー29による結合を許容することに基づいて、層は相互に融合することができる。浸透は蒸発よりも迅速に生じてよく、かくしてパターン化流体26は、それが下側の層へと貫通する場合に溶解された一時的バインダー26を随伴してよく、それによって隣接する層を共に結合することが支援されてよい。稠密化グリーン部品44'は次いで、図3Fを参照して記述されるプロセスに供される。
【0095】
加熱により稠密化グリーン部品44'を形成することは、パターン化流体26を少なくとも部分的に蒸発させることのできる温度および時間にわたって行われてよく、これは毛管圧密化によりパターン化グリーン部品44(またはパターン化グリーン部品の層)の稠密化を生じさせてよく、そして稠密化グリーン部品44'(または稠密化グリーン部品の層)を形成させてよい。一つの例では、稠密化/蒸発温度は雰囲気温度より高くてよい。本願で使用するところでは、「雰囲気温度」は室温(例えば約18℃から約22℃の範囲にある)、または3D印刷方法が行われる環境の温度(例えば、新たな層の形成およびパターン化の間の構築領域プラットフォーム12の温度)を指すものであってよい。別の例では、稠密化/蒸発温度は一時的バインダー29が損傷を受ける(すなわち稠密化グリーン部品44'を結合することができなくなる)温度より低い。適切な一時的バインダー29の大多数について、稠密化/蒸発温度の上限は約180℃から約220℃の範囲にある。この温度しきい値より上では、一時的バインダー29は揮発種へと化学的に劣化してパターン化グリーン部品44を置き去りにし、かくしてその機能を果たさなくなる。パターン化流体26の大多数について、稠密化/蒸発温度は約50℃から約220℃の範囲にある。別の例として、稠密化/蒸発温度は約10℃から約100℃の範囲にあってよい。さらに別の例として、稠密化/蒸発温度は約70℃から約90℃の範囲にあってよい。
【0096】
稠密化/蒸発時間は、部分的には、稠密化/蒸発温度および/または使用されるパターン化流体26に依存してよい。例えば、より高い稠密化/蒸発温度および/またはより揮発性のパターン化流体26は、より短い稠密化/蒸発時間をもたらしてよく、そしてより低い稠密化/蒸発温度および/またはより揮発性でないパターン化流体26は、より長い稠密化/蒸発時間をもたらしてよい。蒸発、よって稠密化は、温度、湿度、および/または空気循環に依存して変動してよい。パターン化流体26の大多数について、稠密化/蒸発時間は層ごとに約1秒から約1分の範囲にある。一つの例では、稠密化/蒸発時間は約15秒間である。
【0097】
パターン化グリーン部品44は、約1℃/分から約10℃/分の速度で稠密化/蒸発温度に加熱されてよいが、より遅いまたはより速い速度を使用してよいことも考慮されている。加熱速度は部分的に:使用されるパターン化流体26、層38の大きさ(すなわち厚さおよび/または面積(x-y平面にわたる))、および/または3D部品52の特徴(例えば大きさ、壁厚、その他)の一つまたはより多くに依存してよい。一つの例では、パターン化グリーン部品44は約2.25℃/分の速度で稠密化/蒸発温度に加熱される。
【0098】
方法100の幾つかの例では、パターン化流体26は加熱なしに蒸発することが許容されてよい。例えば、より揮発性の溶媒は(例えばアセトン)は、室温において数秒で蒸発しうる。こうした例では、構築材料ケーキ46または個々のパターン化された層は、熱または熱を生成するための放射線に曝露されず、パターン化流体26は経時的に蒸発される。一つの例では、パターン化流体26は加熱なしに、約1秒から約1分の範囲の時間内に蒸発されてよい。
【0099】
パターン化流体26を少なくとも実質的に蒸発させること(加熱してまたは加熱なしに)は、毛管作用を通じて一次金属粒子28の稠密化を生じさせ、稠密化グリーン部品44'を形成させる。パターン化流体26の少なくとも実質的な蒸発はまた、一次金属粒子28を一時的バインダー29で再結合する結果をもたらす。
【0100】
安定化された稠密化グリーン部品44'は、取り扱い可能な機械的耐久性を示す。
【0101】
稠密化グリーン部品44'は次いで、構築材料ケーキ46から取り出されてよい。稠密化グリーン部品44'は任意の適切な手段によって取り出されてよい。一つの例では、稠密化グリーン部品44'は、稠密化グリーン部品44'をパターン化されていない構築材料粒子16から持ち上げることによって取り出されてよい。ピストンおよびバネを含む取り出し工具が使用されてよい。
【0102】
稠密化グリーン部品44'が構築材料ケーキ46から取り出された場合、稠密化グリーン部品44'は構築領域プラットフォーム12から取り外して、加熱機構内に置いてよい。加熱機構は熱源36であってよい。
【0103】
幾つかの例では、稠密化グリーン部品44'は洗浄して、パターン化されていない構築材料粒子16をその表面から除去するようにしてよい。一つの例では、稠密化グリーン部品44'はブラシおよび/またはエアジェットで洗浄してよい。
【0104】
稠密化グリーン部品44'の取り出しおよび/または洗浄の後、稠密化グリーン部品44'は加熱して一時的バインダー29を除去し、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50を図3Fに示すように生成してよい。次いで、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は焼結して、やはり図3Fに示すように最終の3D部品52を形成してよい。加熱による脱バインダーおよび加熱による焼結は、2つの異なる温度において行われ、そこでは脱バインダー温度は焼結温度よりも低い。脱バインダー加熱および焼結加熱の両方の段階が図3Fに概略的に示されており、そこでは熱または熱を生成するための放射が、熱源36から矢印46によって示されているようにして適用されてよい。
【0105】
加熱による脱バインダーは、一時的バインダー29を熱分解するのに十分な、熱分解温度において達成される。したがって、脱バインダーのための温度は、構築材料粒状物16の一時的バインダー29に依存する。一つの例では、熱分解温度は約250℃から約600℃の範囲にある。別の例では、熱分解温度は約280℃から約600℃、または約500℃の範囲にある。一時的バインダー29は、明確な熱分解機構(例えば、当初のバインダー29の<5重量%の不揮発性残渣、幾つかの場合には当初のバインダー29の<<1重量%の不揮発性残渣を残す)を有してよい。残渣の割合がより小さい(例えば、0%に近い)ことがより望ましい。脱バインダー段階の間に、一時的バインダー29はまず分解して低粘度の液相となる。この液体の蒸発に際して生成される毛管圧力は、一次金属粒子28を相互に引き寄せ、さらなる稠密化および少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50の形成をもたらす。
【0106】
何らかの理論に拘束されるものではないが、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50はその形状を、例えば:i)少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50が物理的に処理されていないことから僅かな量の応力しか受けていないこと、ii)一時的バインダー29の熱分解温度において一次金属粒子28相互間に生ずる低レベルのネッキング、および/またはiii)一時的バインダー29の除去によって生成され一次金属粒子28を一体に押し付ける毛管力、の1つまたはより多くに基づいて維持しうるものと考えられる。少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50はその形状を維持しうるが、一時的バインダー29は少なくとも実質的に除去され、そして一次金属粒子28はまだ焼結されていない。加熱による実質的にバインダーを含まないグレー部品50の形成は、焼結の初期段階を開始させてよく、その結果として形成されうる弱い結合は、最後の焼結の間に強化される。
【0107】
加熱による焼結は、残存する一次金属粒子28を焼結するのに十分な焼結温度において達成される。焼結温度は、一次金属粒子28の組成に大きく依存する。加熱/焼結の間、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は、一次金属粒子28の融点、または固相線温度、共晶温度、または包晶温度の約80%から約99.9%の範囲の温度に加熱されてよい。別の例では、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は、一次金属粒子28の融点、または固相線温度、共晶温度、または包晶温度の約90%から約95%の範囲の温度に加熱されてよい。さらに別の例では、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は、一次金属粒子28の融点、または固相線温度、共晶温度、または包晶温度の約60%から約90%の範囲の温度に加熱されてよい。さらに別の例では、焼結温度は一次金属粒子28の溶融温度(例えば固相線温度)より約10℃下から一次金属粒子28の溶融温度より約50℃下の範囲にあってよい。さらに別の例では、焼結温度は一次金属粒子28の溶融温度(例えば固相線温度)より約100℃下から一次金属粒子28の溶融温度より約200℃下の範囲にあってよい。焼結加熱温度はまた、粒径および焼結時間(すなわち、長い温度曝露時間)にも依存してよい。一つの例として、焼結温度は約600℃から約1800℃の範囲にあってよい。別の例では、この焼結温度は少なくとも900℃である。ブロンズについての例示的な焼結温度は約850℃であり、ステンレス鋼についての例示的な焼結温度は約1340℃である。これらの温度は焼結温度の例として提示されているものであるが、焼結加熱温度は使用される一次金属粒子28に依存しており、提示された例よりも高い場合もありまたは低い場合もあることが理解されよう。適切な温度での加熱は、一次金属粒子28を焼結および溶融して完成した3D部品52を形成するが、これは少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50に対してさらに稠密化されていてよい。例えば、焼結の結果として、密度は50%の密度から90%を超えるものとなってよく、そして幾つかの場合には理論的密度の100%に非常に近いものとなってよい。
【0108】
熱48が適用される時間の長さ(脱バインダーおよび焼結のそれぞれについて)、および部品44'、50が加熱される速度は、例えば:熱源または放射源36の特性、一時的バインダー29の特性、一次金属粒子28の特性(例えば、金属の種類、一次粒径、その他)、および/または3D部品52の特性(例えば、壁厚)の1つまたはより多くに依存してよい。
【0109】
稠密化グリーン部品44'は、熱分解温度において、約10分から約72時間の範囲の熱分解期間にわたって加熱されてよい。稠密化グリーン部品44'中の溶解した一時的バインダーの量は少ない(例えば一次金属粒子の合計重量%に基づいて約0.01重量%から約4.0重量%)から、熱分解期間は3時間またはそれ未満であってよい。一つの例では、熱分解期間は60分である。別の例では、熱分解期間は180分である。稠密化グリーン部品44'は熱分解温度に向けて、約0.5℃/分から約20℃/分の範囲の速度において加熱されてよい。加熱速度は部分的に:稠密化グリーン部品44'中の溶解した一時的バインダー29の量、稠密化グリーン部品44'の空隙率、および/または稠密化グリーン部品44'/3D部品52の特性(例えば、寸法、壁厚、その他)の1つまたはより多くに依存してよい。
【0110】
少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は焼結温度において、約20分から約15時間の範囲の焼結期間にわたって加熱されてよい。一つの例では、焼結期間は30分である。別の例では、焼結期間は120分である。さらに別の例では、焼結期間は3時間未満または3時間である。少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は焼結温度に向けて、約1℃/分から約20℃/分の範囲の速度で加熱されてよい。一つの例では、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は焼結温度に向けて、約10℃/分から約20℃/分の範囲の速度で加熱される。より好ましい粒状構造または微細構造を生成するためには、焼結温度に向けた温度上昇率が高いことが望ましい場合がある。しかしながら幾つかの場合には、より低い上昇率が望ましい場合がある。したがって別の例では、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は焼結温度に向けて、約1℃/分から約5℃/分の範囲の速度で加熱される。さらに別の例では、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は焼結温度に向けて、約1.2℃/分の速度で加熱される。さらに別の例においては、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50は焼結温度に向けて、約2.5℃/分の速度で加熱される。
【0111】
一つの例では、焼結温度は一次金属粒子28の固相線温度未満であり;そして少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50の焼結温度への加熱は、3時間未満または3時間の焼結期間にわたって行われる。別の例では、約1時間から約2時間の範囲の焼結期間について、焼結温度は一次金属粒子28の溶融温度(例えば固相線温度)より約10℃下からから一次金属粒子28の溶融温度より約50℃下の範囲にある。さらに別の例では、約30分から約1時間の範囲の焼結期間について、焼結温度は一次金属粒子28の溶融温度(例えば固相線温度)より約100℃下からから一次金属粒子28の溶融温度より約200℃下の範囲にある。この幅広い温度処理ウィンドウおよび相対的に短い焼結時間は、少なくとも部分的に、粒状物16が、これらの処理条件に特に適した寸法を有する一次金属粒子28へと物理的に分解されているという事実に起因している。
【0112】
方法100の幾つかの例において、熱48(脱バインダーおよび焼結のそれぞれについて)は、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、またはこれらの組み合わせを含有する環境下に適用される。換言すれば、稠密化グリーン部品44'の熱分解温度に向けての加熱、および少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50の焼結温度に向けての加熱は、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、またはこれらの組み合わせを含有する環境下に達成される。脱バインダーは、不活性ガス、低反応性ガス、および/または還元性ガスを含有する環境下に達成してよく、それによって一時的バインダー29は熱分解され、代替的な反応が生じて少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50を生成し損なったり、および/または一次金属粒子28の酸化を防止できなかったりすることはない。焼結は、不活性ガス、低反応性ガス、および/または還元性ガスを含有する環境下に達成してよく、それによって一次金属粒子28は焼結され、代替的な反応(例えば、酸化反応)が生じて金属製3D部品52を生成し損なったりすることはない。不活性ガスの例には、アルゴンガス、ヘリウムガス、その他が含まれる。低反応性ガスの例には窒素ガスが含まれ、そして還元性ガスの例には水素ガス、一酸化炭素ガス、その他が含まれる。
【0113】
方法100の他の例において、熱48(脱バインダー(すなわち、稠密化グリーン部品44'の熱分解温度に向けての加熱)および焼結(すなわち、少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50の焼結温度に向けての加熱)のそれぞれについて)は、不活性ガス、低反応性ガス、還元性ガス、またはこれらの組み合わせに加えて炭素を含有する環境下に適用される。脱バインダーおよび焼結は炭素を含有する環境下に達成してよく、その環境下での酸素の分圧を低下させ、脱バインダーおよび焼結に際しての一次金属粒子28の酸化をさらに防止する。加熱環境下に設置してよい炭素の例には、グラファイトのロッドが含まれる。他の例では、グラファイト炉を使用してよい。
【0114】
方法100のさらに他の例において、熱48(脱バインダーおよび焼結のそれぞれについて)は、低いガス圧または真空環境において適用される。脱バインダーおよび焼結は、低いガス圧または真空環境において達成されてよく、それによって一時的バインダー29が熱分解され、および/または一次金属粒子28の酸化が防止される。さらにまた、低いガス圧または真空下における焼結は、より完全またはより速い空隙の崩壊、かくしてより高密度の部品を許容してよい。しかしながら真空は、一次金属粒子28(例えば、Cr)がその条件下で蒸発可能である場合には、焼結の際には使用されなくてよい。一つの例において、低い圧力環境は約1E-5torr(1×10-5torr)から約10torrの範囲の圧力である。
【0115】
方法100のさらに別の例において、熱48(脱バインダーおよび焼結のそれぞれについて)は、酸素を含有する環境といった環境下に適用されてよい。こうした例において、一次金属粒子28は低い反応性を有してよい。低い反応性を有してよい一次金属粒子28の例には、銀(Ag)、金(Au)、および白金(Pt)が含まれる。
【0116】
図示されてはいないが、図3Eおよび図3Fに示された動作は自動化されてよく、そしてコントローラ32がそれらの動作を制御してよい。
【0117】
3D印刷方法200の例が図4に示されている。図4に示された方法200の例は、例えば図3Aから図3F、およびそれらに対応する説明において、本願で詳細に説明されていることが理解されよう。
【0118】
参照番号202で示されているように、この方法200は、構築材料粒状物16を適用することを含んでおり、各々の構築材料粒状物16は、パターン化流体26中に少なくとも部分的に可溶な一時的バインダー29によって一体に凝集された、複数の一次金属粒子28からなっている。
【0119】
参照番号204で示されているように、方法200はさらに、構築材料粒状物16の少なくとも部分40上にパターン化流体26を選択的に適用して一時的バインダー29を溶解させ、パターン化グリーン部品44の層を形成することを含んでおり、この層は一次金属粒子28のスラリーを含んでいる。
【0120】
一つの例では、この方法200はさらに、構築材料粒状物16の適用およびパターン化流体26の選択的適用を繰り返してパターン化グリーン部品44を生成すること;およびパターン化グリーン部品44を加熱して一次金属粒子28を焼結し、金属部品52を形成することを含んでいる。
【0121】
方法200の別の例では、パターン化グリーン部品44を加熱することは:パターン化グリーン部品44を稠密化温度に加熱して稠密化グリーン部品44'を生成し;稠密化グリーン部品44'を一時的バインダー29の熱分解温度に加熱して一時的バインダー29を除去して少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50を生成し;そして少なくとも実質的にバインダーを含まないグレー部品50を焼結温度に加熱して一次金属粒子28を焼結して金属部品52を形成することを含んでいる。
【0122】
方法200の幾つかの例では、稠密化温度は約50℃から約250℃の範囲にあり;熱分解温度は約250℃から約600℃の範囲にあり;そして焼結温度は約600℃から約1800℃の範囲にある。
【0123】
方法200の幾つかの例では、構築材料粒状物16の適用、パターン化流体26の選択的適用、適用および選択的適用の繰り返し、およびパターン化グリーン部品44の稠密化温度への加熱は、構築領域プラットフォーム12上で達成され;そしてパターン化グリーン部品44を稠密化温度まで加熱した後に、この方法はさらに:構築領域プラットフォーム12から稠密化グリーン部品44'を取り出し;そして稠密化グリーン部品44'を加熱機構36中に置くことを含んでいる。
【0124】
本開示をさらに説明するために、本願における実施例を提示する。この実施例は説明の目的で提示されるものであり、本開示の範囲を制限するものとして解釈してはならないことが理解されよう。
【実施例
【0125】
構築材料粒状物の例を調製した。この例の構築材料粒状物に使用した一次金属粒子はステンレス鋼粉体粒子(SS 316L)であり、平均粒径は約15μmであった。この例の構築材料粒状物に使用した一時的バインダーはCARBOSPERSE登録商標K7028(短鎖ポリアクリル酸、M~2,300Da、Lubrizol社から入手可能)であった。またこの構築材料粒状物の例には、SURFYNOL登録商標465(Air Products and Chemicals社から入手可能なノニオン性エトキシル化アセチレンジオール)が界面活性剤として含有された。
【0126】
一次金属粒子、一時的バインダー、界面活性剤、および水の混合物を形成した。構築材料粒状物の例を形成するために使用した混合物の一般処方を、使用した各成分の重量%と共に表1に示す。
【表1】
【0127】
この混合物は、凍結造粒ユニット(Powderpro AB社から入手可能なLS-6)を使用し、混合物を液体窒素(N)中に噴霧することによって、凍結粒状物へと変換した。凍結粒状物は凍結乾燥によって、乾燥した粒子状粉体へと変換した。形成された粒状物は実質的に球形であり、30μmから150μmの範囲の粒子径を有していた。図5Aは200×(すなわち200倍)の倍率での光学顕微鏡像であり、スケールバーは100μmであって、形成された構築材料粒状物の例を示している。
【0128】
水性のパターン化流体の例を、構築材料粒状物の例の層に対して適用した。この構築材料粒状物の例は瞬時に、一次金属粒子および溶解したバインダーを含む流体のスラリーへと分散した。図5Bは200×(すなわち200倍)の倍率での光学顕微鏡像であり、スケールバーは100μmであって、構築材料粒状物の例が水性パターン化流体の例と接触した場合に形成されたスラリーを示している。
【0129】
明細書全体を通じて、「一つの例」、「別の例」、「例」、その他に対する参照は、その例に関して説明された特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)が、本願に記載の少なくとも一つの例に含まれており、他の例においては存在する場合も存在しない場合もあることを意味している。加えて、任意の例について記載した要素は、文脈が明らかに別のことを示しているのでない限り、種々の例において任意の適切な仕方で組み合わせてよいことが理解されよう。
【0130】
本願で提示する範囲は、記載した範囲およびその記載した範囲内の任意の値および部分範囲を含むことが理解されよう。例えば、約50℃から約250℃の範囲は、明確に記載された限界である約50℃から約250℃、ならびに65℃、135.5℃、155℃、180.85℃、222℃、その他のような個別の値、および約135℃から約230.5℃、約80.5℃から約170.7℃、約95℃から約191℃、その他のような部分範囲を含むように解釈されるべきである。さらにまた、値を記述するために「約」または記号「~」が用いられる場合、それは記載された値からの僅かな変動(+/-10%まで)を包含することを意味している。
【0131】
本願に開示の例を記述し特許請求するについて、「ある」、「一つの」および「その」といった単一形は、文脈が明らかに別のことを示しているのでない限り、複数の指示対象を含んでいる。
【0132】
以上においては幾つかの例について詳細に記載してきたが、開示された例を修正してよいことが理解されよう。したがって、以上の記載は非限定的なものと考えられるべきである。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5A
図5B