(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】セマフォリン-4D抗体とエピジェネティック調節剤の組み合わせを用いたがんの処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221017BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221017BHJP
A61K 31/4406 20060101ALI20221017BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61P35/00 ZNA
A61P35/04
A61P35/02
A61K31/4406
A61K31/7068
(21)【出願番号】P 2019551607
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 US2018022414
(87)【国際公開番号】W WO2018175179
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-09
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504455148
【氏名又は名称】バクシネックス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】エバンス エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】スミス アーネスト エス.
(72)【発明者】
【氏名】ザウダラー モーリス
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528195(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010879(WO,A1)
【文献】PLoS ONE,2012年,Vol.7, Issue 1, e30815,pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
A61K 31/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合し、且つSEMA4Dとその受容体との相互作用を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片を含み、有効量の、エンチノスタット(ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメート)、アザシチジン、およびその任意の組み合わせから選択されるエピジェネティック調節剤と併用される、
がんの処置のための薬学的組成物。
【請求項2】
担体、賦形剤、またはその任意の組み合わせをさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
抗体またはその断片が、VH CDR1~3を含む可変重鎖(VH)とVL CDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含み、VH CDR1~3がそれぞれ、SEQ ID NO:2、3、および4を含み、VL CDR1~3がそれぞれ、SEQ ID NO:6、7、および8を含む、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
VHおよびVLが、それぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5、またはSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10を含む、請求項3記載の薬学的組成物。
【請求項5】
エピジェネティック調節剤が、エンチノスタット(ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメート)である、請求項1~4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
エピジェネティック調節剤がアザシチジンである、請求項1~4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項7】
(a)有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、VHアミノ酸配列SEQ ID NO:1およびVLアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片、ならびに
(b)有効量のHDACiエンチノスタット
を含む、
がんの処置のための薬学的組成物。
【請求項8】
(a)有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、VHアミノ酸配列SEQ ID NO:1およびVLアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片、ならびに
(b)有効量のDNMTiアザシチジン
を含む、
がんの処置のための薬学的組成物。
【請求項9】
受容体が、プレキシン-B1、プレキシン-B2、またはCD72である、請求項1~6のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項10】
抗体またはその抗原結合断片が、SEMA4Dを介したプレキシン-B1シグナル伝達を阻害する、請求項1~9のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項11】
がんが、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、その任意の転移、またはその任意の組み合わせを含む、請求項
1~10のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
固形腫瘍が、扁平上皮がん、腺がん、基底細胞がん、腎細胞がん、乳管がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、胃がん、膵臓がん、神経内分泌がん、グリア芽細胞腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、脳がん、肝がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんもしくは子宮がん、食道がん、唾液腺がん、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、頭頚部がん、その任意の転移、またはその任意の組み合わせを含む、請求項
11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
血液悪性腫瘍が、白血病、リンパ腫、骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせを含む、請求項
11記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2017年3月20日に出願された米国仮特許出願番号62/473,731の恩典を主張する。
【0002】
配列表の記載
本願と共に出願された、ASCIIテキストファイル(名前:58008_172854_Seq-List_ST25.txt;サイズ:5936バイト;作成日: 2018年2月28日)の電子的に出願された配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
セマフォリン4D(SEMA4D)はCD100とも知られ、セマフォリン遺伝子ファミリーに属する膜貫通タンパク質である。SEMA4Dはホモ二量体として細胞表面に発現しているが、細胞が活性化されるとタンパク質切断を経て細胞表面から放出されて、このタンパク質の可溶型であるsSEMA4Dを生じることができる。sSEMA4Dも生物学的に活性である。Suzuki et al., Nature Rev. Immunol. 3:159-167 (2003)(非特許文献1); Kikutani et al., Nature Immunol. 9:17-23 (2008)(非特許文献2)を参照されたい。
【0004】
SEMA4Dは、脾臓、胸腺およびリンパ節を含むリンパ器官において、ならびに脳および腎臓などの非リンパ器官において、高レベルで発現している。リンパ器官では、SEMA4Dは休止T細胞の表面で大量発現しているが、休止B細胞および抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞(DC)では弱くしか発現していない。しかしながら、これらの細胞では様々な免疫学的刺激によって活性化された後にSEMA4D発現はアップレギュレートされる。細胞活性化によって免疫細胞からの可溶性SEMA4Dの放出も増加する。SEMA4Dは、ある特定のがんの発達に結び付けられており(Ch’ng et al., Cancer 110:164-72 (2007)(非特許文献3); Campos et al., Oncology Letters 5:1527-35 (2013)(非特許文献4); Kato et al., Cancer Sci. 102:2029-37 (2011)(非特許文献5))、いくつかの報告から、この影響の機構の1つが腫瘍血管形成の促進におけるSEMA4Dの役割だと示唆されている(Conrotto et al., Blood 105:4321-4329 (2005)(非特許文献6). Basile et al., J Biol. Chem. 282: 34888-34895 (2007)(非特許文献7); Sierra et.al. J. Exp. Med. 205:1673 (2008)(非特許文献8); Zhou et al., Angiogenesis 15:391-407 (2012)(非特許文献9))。腫瘍の成長および転移は、腫瘍細胞、間質および免疫浸潤物、ならびに内皮細胞および脈管構造の間での複雑なクロストークプロセスを伴う。SEMA4Dは多様な腫瘍タイプにおいて過剰発現しており、腫瘍微小環境に動員された炎症細胞によっても産生される。最近の研究から、SEMA4Dは腫瘍間質を構成する様々な細胞タイプの移動、生存、分化および組織化において役割を果たすことが示唆されている(Evans et al., Cancer Immunol. Res. 3:689-701 (2015)(非特許文献10))。
【0005】
がん細胞は、ゲノムDNA配列を変えることなくエピジェネティック機構を介して遺伝子発現を改変することによって宿主免疫認識を回避するように順応することができる。エピジェネティック機構は主にゲノムDNAメチル化の変化とヒストンの翻訳後修飾を中心に置いており、これにより、例えば、クロマチン構造が変化し、DNAが転写に利用できるようになる。これらのエピジェネティック機構を介して、がん細胞は、増殖および免疫回避を促進する、変化した遺伝性の遺伝子発現プロファイルを確立することができる。例えば、Maio, et al., Clin. Cancer Res. 21:4040-4047 (2015)(非特許文献11)を参照されたい。
【0006】
細胞は、堅く詰まっておらず、かつ転写活性のあるクロマチンをもたらす、コアヒストンのリジン残基をアセチル化するヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)と、凝縮しており、かつ転写抑制されたクロマチンをもたらす、リジン残基からアセチル基を除去するヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を介して、ヒストンを取り囲むDNAのコイル化および非コイル化を制御することができる。腫瘍細胞によってHAT/HDAC活性が調節されると、腫瘍細胞において遺伝子発現の広範囲にわたるエピジェネティック調節が起こり、腫瘍細胞は患者の免疫系による監視から逃れることが可能になる。例えば、Maio, et al., Clin. Cancer Res. 21:4040-4047 (2015)を参照されたい。
【0007】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi(本明細書では単数および複数の両方で用いられる))は、がん治療剤として現れた。HDACiは、ヒストンおよび/または転写因子などの非ヒストンタンパク質のアセチル化/脱アセチルの調節を介して様々な遺伝子を活性化および/または抑制して広範囲にわたる転写変化を誘導することで腫瘍細胞増殖を阻害することができる。Chueh, A.C., et al, Antioxidants & Redox Signaling 23:66-84 (2015)(非特許文献12)。HDACiは細胞の増殖および生存、例えば、細胞周期、分化、およびがん細胞のアポトーシスを妨害することができる。HDACiはまた腫瘍細胞による免疫原性および抗原提示を強化することができ、HDACiと免疫療法を組み合わせる理由を提供する(Gameiro SR et al., Oncotarget 7:7390-7402 (2016)(非特許文献13))。現在、数種類の化合物が固形がんおよび血液がんの潜在的な治療法として単独療法として、および細胞傷害剤と分化剤の組み合わせとして初期臨床開発中である。例えば、Mottamal, M., et al., Molecules 20:3898-3941 (2015)(非特許文献14)を参照されたい。
【0008】
ゲノムDNAのメチル化は、広範囲にわたって特徴付けられたエピジェネティック修飾である。DNAがメチル化されると転写が休止し、それによって遺伝子サイレンシングが起こる。Gravina G. L., et al., Mol. Cancer 9:305-320 (2010)(非特許文献15)。メチル化は、シトシン残基の5’炭素へのメチル基付加を触媒するDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)によって促進される。同文献。高度メチル化DNAは腫瘍および他のがん細胞においてよく見られる。現在、様々なDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTi(本明細書では単数および複数の両方で用いられる))が様々ながんの治療薬として使用されているか、または試験されている。これらには、デオキシリボヌクレオシド類似体、例えば、アザシチジン、ならびに非ヌクレオシド類似体、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび低分子酵素阻害剤が含まれる。同文献。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Suzuki et al., Nature Rev. Immunol. 3:159-167 (2003)
【文献】Kikutani et al., Nature Immunol. 9:17-23 (2008)
【文献】Ch’ng et al., Cancer 110:164-72 (2007)
【文献】Campos et al., Oncology Letters 5:1527-35 (2013)
【文献】Kato et al., Cancer Sci. 102:2029-37 (2011)
【文献】Conrotto et al., Blood 105:4321-4329 (2005)
【文献】Basile et al., J Biol. Chem. 282: 34888-34895 (2007)
【文献】Sierra et.al. J. Exp. Med. 205:1673 (2008)
【文献】Zhou et al., Angiogenesis 15:391-407 (2012)
【文献】Evans et al., Cancer Immunol. Res. 3:689-701 (2015)
【文献】Maio, et al., Clin. Cancer Res. 21:4040-4047 (2015)
【文献】Chueh, A.C., et al, Antioxidants & Redox Signaling 23:66-84 (2015)
【文献】Gameiro SR et al., Oncotarget 7:7390-7402 (2016
【文献】Mottamal, M., et al., Molecules 20:3898-3941 (2015)
【文献】Gravina G. L., et al., Mol. Cancer 9:305-320 (2010)
【発明の概要】
【0010】
概要
本開示は、がんを有する対象において悪性細胞増殖を阻害する、遅延させる、または低減するための方法であって、有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片と、有効量のエピジェネティック調節剤とを含む併用療法を対象に投与する工程を含む、方法を提供する。提供される方法によれば、抗SEMA4D抗体またはその断片は、SEMA4Dとその受容体、例えば、プレキシン-B1、プレキシン-B2、またはCD72との相互作用を阻害することができる。例えば、提供される方法によれば、抗SEMA4D抗体またはその断片は、SEMA4Dを介したプレキシン-B1シグナル伝達を阻害することができる。
【0011】
ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体またはその断片は、VH CDR1~3を含む可変重鎖(VH)とVL CDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含み、VH CDR1~3が、それぞれ、アミノ酸配列SEQ ID NO:2、3、および4を含み、VL CDR1~3がそれぞれ、アミノ酸配列SEQ ID NO:6、7、および8を含む。ある特定の局面において、VHおよびVLのアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5、またはSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10を含む。
【0012】
ある特定の局面において、エピジェネティック調節剤は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)、またはその任意の組み合わせを含んでもよい。
【0013】
ある特定の局面において、エピジェネティック調節剤はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)を含んでもよい。ある特定の局面において、HDACは、クラスI HDAC、クラスIIA HDAC、クラスIIB HDAC、クラスIV HDAC、もしくはその任意の組み合わせでもよく、またはHDACは亜鉛含有触媒ドメインを含んでもよい。ある特定の局面において、HDACiはHDACの亜鉛含有触媒ドメインに結合することができる。ある特定の局面において、HDACiは、ヒドロキサム酸またはその塩、環式テトラペプチド、デプシペプチド、ベンズアミド、求電子性ケトン、脂肪族系酸もしくはその塩、またはその任意の組み合わせからなる群より選択される化学部分を含んでもよい。例えば、ある特定の局面において、HDACiは、ボリノスタット、ロミデプシン、シダミド(Chidamide)、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸もしくはその塩、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット(Pracinostat)、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、ケベトリン(Kevetrin)、CUDC-101、AR-42、テフィノスタット(CHR-2845)、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ACY-241、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグでもよい。ある特定の局面において、HDACiは、エンチノスタット(ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメート)である。
【0014】
ある特定の局面において、エピジェネティック調節剤はDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)を含んでもよい。ある特定の局面において、DNMTは、DNMT1、DNMT-3a、DNMT-3b、またはその任意の組み合わせでもよい。ある特定の局面において、DNMTiは、ヌクレオシド類似体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子酵素阻害剤、またはその任意の組み合わせでもよい。例えば、ある特定の局面において、DNMTiは、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、SGI-110、没食子酸エピガロカテキン、MG98、RG108、プロカインアミド、ヒドララジン、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグでもよい。ある特定の局面において、DNMTiはアザシチジンである。
【0015】
提供される方法の特定の局面において、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片は、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むVHとアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むVLとを含み、エピジェネティック調節剤はHDACiエンチノスタットを含む。提供される方法の別の特定の局面において、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片は、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むVHとアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むVLとを含み、エピジェネティック調節剤はDNMTiアザシチジンを含む。
【0016】
提供される方法によれば、前記抗体またはその抗原結合断片とエピジェネティック調節剤は別々に投与されてもよく、同時に投与されてもよい。
【0017】
提供される方法のある特定の局面において、併用療法の投与は、前記抗体もしくはその断片またはエピジェネティック調節剤の単独の投与と比べて高い治療効力をもたらし得る。例えば、ある特定の局面において、高い治療効力は相加効果、例えば、相乗効果よりも大きい。
【0018】
提供される方法のある特定の局面において、処置されるがんは、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、その任意の転移、またはその任意の組み合わせでもよい。ある特定の局面において、固形腫瘍は、例えば、肉腫、がん腫、黒色腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせでもよい。さらに具体的には、固形腫瘍は、例えば、扁平上皮がん、腺がん、基底細胞がん、腎細胞がん、乳管がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、胃がん、膵臓がん、神経内分泌がん、グリア芽細胞腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、脳がん、肝がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんもしくは子宮がん、食道がん、唾液腺がん、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、頭頚部がん、その任意の転移、またはその任意の組み合わせでもよい。
【0019】
提供される方法のある特定の局面において、処置されるがんは、血液悪性腫瘍またはその転移でもよい。ある特定の局面において、血液悪性腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせでもよい。
【0020】
ある特定の局面において、本明細書において提供される方法は、さらなるがん療法、例えば、外科手術、化学療法、放射線療法、がんワクチン、免疫賦活剤、養子T細胞、または抗体療法の投与、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、調節性T細胞(Treg)モジュレーターの投与、およびその組み合わせをさらに含んでもよい。
【0021】
さらに、本開示は、有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片と有効量のエピジェネティック調節剤含む薬学的組成物を提供する。ある特定の局面において、薬学的組成物は、担体、賦形剤、またはその任意の組み合わせをさらに含んでもよい。
【0022】
ある特定の局面において、提供される組成物の抗体またはその断片は、VH CDR1~3を含む可変重鎖(VH)とVL CDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含んでもよく、VH CDR1~3は、それぞれ、SEQ ID NO:2、3、および4を含み、VL CDR1~3はそれぞれ、SEQ ID NO:6、7、および8を含む。ある特定の局面において、提供される組成物の抗体またはその断片はVHおよびVLを含んでもよく、VHおよびVLは、それぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5、またはSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10を含む。
【0023】
ある特定の局面において、提供される薬学的組成物の中に含まれるエピジェネティック調節剤は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)、またはその任意の組み合わせを含んでもよい。
【0024】
前記組成物がHDACiを含む場合、HDACiは、例えば、ボリノスタット、ロミデプシン、シダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸もしくはその塩、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、テフィノスタット(CHR-2845)、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ACY-241、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグでもよい。ある特定の局面において、HDACiは、エンチノスタット(ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメート)でもよい。
【0025】
前記組成物がDNMTiを含む場合、DNMTiは、例えば、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、SGI-110、没食子酸エピガロカテキン、MG98、RG108、プロカインアミド、ヒドララジン、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグでもよい。ある特定の局面において、DNMTiはアザシチジンでもよい。
【0026】
特定の局面において、本開示は、有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片と有効量のHDACiエンチノスタットを含み、前記抗体またはその断片がVHアミノ酸配列SEQ ID NO:1およびVLアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む、薬学的組成物を提供する。別の特定の局面において、本開示は、有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片と有効量のDNMTiアザシチジンを含み、前記抗体またはその断片がVHアミノ酸配列SEQ ID NO:1およびVLアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む、薬学的組成物を提供する。
[本発明1001]
がんを有する対象において悪性細胞増殖を阻害する、遅延させる、または低減するための方法であって、有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片と、有効量のエピジェネティック調節剤とを含む併用療法を対象に投与する工程を含む、前記方法。
[本発明1002]
抗体またはその断片が、SEMA4Dとその受容体との相互作用を阻害する、本発明1001の方法。
[本発明1003]
受容体が、プレキシン-B1、プレキシン-B2、またはCD72である、本発明1002の方法。
[本発明1004]
抗体またはその断片が、SEMA4Dを介したプレキシン-B1シグナル伝達を阻害する、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
抗体またはその断片が、VH CDR1~3を含む可変重鎖(VH)とVL CDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含み、VH CDR1~3がそれぞれ、SEQ ID NO:2、3、および4を含み、VL CDR1~3が、それぞれ、SEQ ID NO:6、7、および8を含む、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
VHおよびVLがそれぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5を含むか、またはSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10を含む、本発明1005の方法。
[本発明1007]
エピジェネティック調節剤が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)、またはその任意の組み合わせを含む、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
エピジェネティック調節剤が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)を含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
HDACが、クラスI HDAC、クラスIIA HDAC、クラスIIB HDAC、クラスIV HDAC、もしくはその任意の組み合わせを含むか、またはHDACが亜鉛含有触媒ドメインを含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
HDACiが、HDACの亜鉛含有触媒ドメインに結合することができる、本発明1009の方法。
[本発明1011]
HDACiが、ヒドロキサム酸もしくはその塩、環式テトラペプチド、デプシペプチド、ベンズアミド、求電子性ケトン、脂肪族系酸もしくはその塩、またはその任意の組み合わせからなる群より選択される化学部分を含む、本発明1008~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
HDACiが、ボリノスタット、ロミデプシン、シダミド(Chidamide)、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸もしくはその塩、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット(Pracinostat)、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、ケベトリン(Kevetrin)、CUDC-101、AR-42、テフィノスタット(CHR-2845)、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ACY-241、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグを含む、本発明1008~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
HDACiが、エンチノスタット(ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメート)である、本発明1012の方法。
[本発明1014]
エピジェネティック調節剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)を含む、本発明1007の方法。
[本発明1015]
DNMTが、DNMT1、DNMT-3a、DNMT-3b、またはその任意の組み合わせを含む、本発明1014の方法。
[本発明1016]
DNMTiが、ヌクレオシド類似体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子酵素阻害剤、またはその任意の組み合わせである、本発明1014または1015の方法。
[本発明1017]
DNMTiが、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、SGI-110、没食子酸エピガロカテキン、MG98、RG108、プロカインアミド、ヒドララジン、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグを含む、本発明1014~1016のいずれかの方法。
[本発明1018]
DNMTiがアザシチジンである、本発明1017の方法。
[本発明1019]
抗体またはその抗原結合断片およびエピジェネティック調節剤が、別々に、または同時に投与される、本発明1001~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
併用療法の投与が、抗体もしくはその断片またはエピジェネティック調節剤の単独の投与と比べて高い治療効力をもたらす、本発明1001~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
高い治療効力が相加効果よりも大きい、本発明1020の方法。
[本発明1022]
がんが、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、その任意の転移、またはその任意の組み合わせを含む、本発明1001~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
がんが、固形腫瘍またはその転移である、本発明1022の方法。
[本発明1024]
固形腫瘍が、肉腫、がん腫、黒色腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせである、本発明1023の方法。
[本発明1025]
固形腫瘍が、扁平上皮がん、腺がん、基底細胞がん、腎細胞がん、乳管がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、胃がん、膵臓がん、神経内分泌がん、グリア芽細胞腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、脳がん、肝がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんもしくは子宮がん、食道がん、唾液腺がん、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、頭頚部がん、その任意の転移、またはその任意の組み合わせである、本発明1024の方法。
[本発明1026]
がんが、血液悪性腫瘍またはその転移である、本発明1022の方法。
[本発明1027]
血液悪性腫瘍が、白血病、リンパ腫、骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせである、本発明1026の方法。
[本発明1028]
さらなるがん療法の投与をさらに含む、本発明1001~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
さらなる療法が、外科手術、化学療法、放射線療法、がんワクチン、免疫賦活剤、養子T細胞、もしくは抗体療法の投与、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、調節性T細胞(Treg)モジュレーターの投与、およびその組み合わせを含む、本発明1028の方法。
[本発明1030]
(a)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片が、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むVHとアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むVLとを含み、かつ
(b)エピジェネティック調節剤がHDACiエンチノスタットを含む、
本発明1001~1013または1019~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
(a)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片が、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むVHとアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むVLとを含み、かつ
(b)エピジェネティック調節剤がDNMTiアザシチジンを含む、
本発明1001~1007または1014~1029のいずれかの方法。
[本発明1032]
有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片と、有効量のエピジェネティック調節剤とを含む、薬学的組成物。
[本発明1033]
担体、賦形剤、またはその任意の組み合わせをさらに含む、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1034]
抗体またはその断片が、VH CDR1~3を含む可変重鎖(VH)とVL CDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含み、VH CDR1~3がそれぞれ、SEQ ID NO:2、3、および4を含み、VL CDR1~3がそれぞれ、SEQ ID NO:6、7、および8を含む、本発明1032または1033の薬学的組成物。
[本発明1035]
VHおよびVLが、それぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5、またはSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10を含む、本発明1034の薬学的組成物。
[本発明1036]
エピジェネティック調節剤が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)、またはその任意の組み合わせを含む、本発明1032~1035のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1037]
エピジェネティック調節剤が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)を含む、本発明1036の薬学的組成物。
[本発明1038]
HDACiが、ボリノスタット、ロミデプシン、シダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸もしくはその塩、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、テフィノスタット(CHR-2845)、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ACY-241、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグを含む、本発明1037の薬学的組成物。
[本発明1039]
HDACiが、エンチノスタット(ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメート)である、本発明1038の薬学的組成物。
[本発明1040]
エピジェネティック調節剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)を含む、本発明1036の薬学的組成物。
[本発明1041]
DNMTiが、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、SGI-110、没食子酸エピガロカテキン、MG98、RG108、プロカインアミド、ヒドララジン、その任意の組み合わせ、またはその任意の塩、結晶、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、異性体、もしくはプロドラッグを含む、本発明1040の薬学的組成物。
[本発明1042]
DNMTiがアザシチジンである、本発明1041の薬学的組成物。
[本発明1043]
(a)有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、VHアミノ酸配列SEQ ID NO:1およびVLアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片、ならびに
(b)有効量のHDACiエンチノスタット
を含む、薬学的組成物。
[本発明1044]
(a)有効量の、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であって、VHアミノ酸配列SEQ ID NO:1およびVLアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片、ならびに
(b)有効量のDNMTiアザシチジン
を含む、薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1および2における併用療法実験のための実験デザインを示す。
【
図2A】実施例1における様々な処置について平均腫瘍量を経時的に示す。
【
図2B】実施例1における様々な処置についてパーセント生存率を経時的に示す。統計的有意性を、マンテル・コックスログランク検定(Mantel Cox Log Rank test)を用いて決定した。Prismは、結果を、P>0.05では有意でない(ns)、0.01<P≦0.05では有意(「
*」で表した)、0.001<P≦0.01では非常に有意(「
**」)、P≦0.001(「
***」)またはP≦0.0001(「
****」)では極めて有意だと報告する。
【
図2C】実施例1における様々な処置について完全腫瘍退縮(腫瘍量<50mm
3)のパーセントを示した棒グラフである。統計的有意性を、フィッシャー直接検定を用いて決定した。Prismは、結果を、P>0.05では有意でない(ns)、0.01<P≦0.05では有意(「
*」で表した)、0.001<P≦0.01では非常に有意(「
**」)、P≦0.001(「
***」)、またはP≦0.0001(「
****」)では極めて有意だと報告する。
【
図2D】腫瘍が退縮の前に少なくとも100mm
3を超えていたかどうかについて層別化した
図2Cと同じデータを示す。
【
図3A】実施例2における様々な処置について平均腫瘍量を経時的に示す。統計的有意性を2元配置ANOVAを用いて決定した。Prismは、結果を、P>0.05では有意でない(ns)、0.01<P≦0.05では有意(「
*」で表した)、0.001<P≦0.01では非常に有意(「
**」)だと報告する。
【
図3B】実施例2における個々の対照動物の腫瘍量を経時的に示す。
【
図3C】実施例2における抗SEMA4D抗体で処置した個々の動物の腫瘍量を経時的に示す。
【
図3D】実施例2におけるエンチノスタット(ENT)と対照抗体で処置した個々の動物の腫瘍量を経時的に示す。
【
図3E】実施例2におけるENTと抗SEMA4D抗体で処置した個々の動物の腫瘍量を経時的に示す。
【
図3F】実施例2における様々な処置についてパーセント生存率を経時的に示す。統計的有意性を、マンテル・コックスログランク検定を用いて決定した。Prismは、結果を、0.01<P≦0.05では有意(「
*」で表した)、0.001<P≦0.01では非常に有意(「
**」)だと報告する。
【
図4】実施例3における併用療法実験のための実験デザインを示す。
【
図5A】実施例3における様々な処置について平均腫瘍量を経時的に示す。統計的有意性を2元配置ANOVAを用いて決定した。
**P≦0.01。
【
図5B】実施例3における様々な処置についてパーセント生存率を経時的に示す。統計的有意性を、マンテル・コックスログランク検定を用いて決定した。Prismは、結果を、P>0.05では有意でない、またはP≦0.01では非常に有意(「
**」)だと報告する。
【
図5C】実施例3における様々な処置について完全腫瘍退縮(腫瘍量<50mm
3)のパーセントを示した棒グラフである。統計的有意性を、フィッシャー直接検定を用いて決定した。Prismは、結果を、P≦0.05では有意(「
*」で表した)、P≦0.01では非常に有意(「
**」)だと報告する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体の1つまたは複数を指すことに留意しなければならない。例えば、「1つの(a)結合分子」は1つまたは複数の結合分子を表していると理解される。従って、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は本明細書において同義に用いることができる。
【0029】
さらに、「および/または」は、本明細書において使用する場合、2つの指定された特徴または成分をそれぞれ、他方と共に、または他方を伴わずに明確に開示すると解釈される。従って、「および/または」という用語は、本明細書において「Aおよび/またはB」などの句において用いられる時、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(のみ)、および「B」(のみ)を含むことが意図される。同様に、「および/または」という用語は、「A、B、および/またはC」などの句において用いられる時、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(のみ);B(のみ);ならびにC(のみ)をそれぞれ包含することが意図される。
【0030】
特に定義のない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、本開示が関連する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、本開示で使用する用語の多くの総合的な辞書を当業者に提供する。
【0031】
単位、接頭辞、および記号は国際単位系(SI)に認められている形式で表される。数の範囲は、その範囲を規定している数字を含む。特に定めのない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に書かれる。本明細書において提供される標題は、本明細書全体を参照することによって持つことができる本開示の様々な局面の限定ではない。従って、すぐ下で定義される用語は、本明細書全体を参照することによってさらに詳細に定義される。
【0032】
態様が「を含む(comprising)」という言葉を用いて説明されている場合は必ず、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」で説明される類似の態様も提供される。
【0033】
アミノ酸は、IUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)により勧告された、一般に知られている三文字記号または一文字記号によって本明細書において言及される。同様に、ヌクレオチドは、一般に受け入れられている一文字暗号によって言及される。
【0034】
本明細書で使用する「がん」および「がんの」という用語は、細胞集団が無秩序な細胞増殖によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはこれを説明する。がんは、例えば、固形の腫瘍または悪性腫瘍として分類されてもよく、血液のがんまたは悪性腫瘍として分類されてもよい。両タイプとも転移として、離れた場所に移動することができる。固形腫瘍は、例えば、肉腫、がん腫、黒色腫、またはその転移として分類されてもよい。
【0035】
「増殖性障害」および「増殖性疾患」という用語は、がんなどの異常細胞増殖に関連する障害を指す。
【0036】
本明細書で使用する「腫瘍」および「新生物」とは、良性(非がん性)か悪性(がん性)のどちらでも、前がん病変部を含む、過剰な細胞の成長または増殖に起因する任意の組織塊を指す。ある特定の態様において、本明細書に記載の腫瘍は、SEMA4D受容体、例えば、プレキシン-B1、プレキシン-B2、および/もしくはCD72を発現する、ならびに/またはSEMA4Dを発現することができる。
【0037】
「転移(metastasis)」、「転移(metastases)」、「転移の」という用語、および本明細書で使用する他の文法上の相当語句は、発生した場所(例えば、原発腫瘍)から身体の他の領域に広がるか、または移動し、新たな場所に同様のがん病変部を生じるがん細胞を指す。「転移の」または「転移性の」細胞とは、隣り合っている細胞との付着性接触を失い、血流またはリンパ液を介して疾患の原発部位から移動して、隣り合っている身体構造に進入した細胞である。これらの用語はまた、原発腫瘍からのがん細胞の剥離、循環への腫瘍細胞の血管内異物侵入、その生存および遠く離れた場所への移動、循環から新たな場所への付着および血管外漏出、ならびに遠く離れた場所での微小コロニー形成(microcolonization)、ならびに遠く離れた場所での腫瘍の成長および発達を含むが、これに限定されない転移プロセスも指す。
【0038】
このような固形腫瘍の例には、例えば、扁平上皮がん、腺がん、基底細胞がん、腎細胞がん、乳管がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、胃がん、膵臓がん、神経内分泌がん、グリア芽細胞腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、脳がん、肝がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、食道がん、唾液腺がん、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、頭頚部がん、その任意の転移、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。
【0039】
血液がんまたは血液悪性腫瘍の例には、白血病、リンパ腫、骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0040】
ある特定の態様では、本明細書において提供される方法を介して処置しやすいがんには、肉腫、乳がん、卵巣がん、子宮頚がん、頭頚部がん、NSCLC、食道がん、胃がん、腎臓がん、肝臓がん、膀胱がん、結腸直腸がん、および膵臓がんが含まれるが、これに限定されない。ある特定の態様において、本明細書において提供される方法を介して処置しやすいがんまたは腫瘍細胞は、SEMA4Dに対するプレキシン-B1、プレキシン-B2、またはCD72受容体を発現する。
【0041】
本明細書で使用する「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を含むことが意図され、アミド結合(ペプチド結合とも知られる)によって直線的に連結した単量体(アミノ酸)で構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は2つ以上のアミノ酸からなる任意の鎖を指し、特定の長さの産物を指さない。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つ以上のアミノ酸からなる鎖を指すために用いられる他の任意の用語は「ポリペプチド」の定義の中に含まれ、「ポリペプチド」という用語はこれらの用語のいずれかの代わりに、または同義に使用することができる。「ポリペプチド」という用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すことも意図される。発現後修飾にはグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、または非天然アミノ酸による修飾が含まれるが、それに限定されるわけではない。ポリペプチドは生物学的供給源に由来してもよく、組換え技術によって産生されてもよいが、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されるとは限らない。ポリペプチドは化学合成を含む任意のやり方で作製することができる。
【0042】
本明細書において開示されるポリペプチドは、約3以上、5以上、10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1,000以上、または2,000以上アミノ酸のサイズのポリペプチドでもよい。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有してもよいが、必ずしも、このような構造を有するとは限らない。規定の三次元構造を有するポリペプチドは折り畳まれていると言われ、規定の三次元構造を有さず、多くの異なるコンホメーションをとることができるポリペプチドは折り畳まれていないと言われる。本明細書で使用する糖タンパク質という用語は、アミノ酸、例えば、セリンまたはアスパラギンの酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介してタンパク質に取り付けられた少なくとも1つの炭水化物部分と結合しているタンパク質を指す。
【0043】
「単離された」ポリペプチド、またはその断片、変種もしくは誘導体とは、天然環境にはないポリペプチドを意味する。特定のレベルの精製は必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、その自然または天然の環境から取り出されていてもよい。組換えにより産生され、宿主細胞内で発現されたポリペプチドおよびタンパク質は、本明細書において開示されるように単離されているとみなされ、同様に、任意の適切な技法によって分離されている、分画されている、または部分的もしくは実質的に精製されている自然のポリペプチドまたは組換えポリペプチドも単離されているとみなされる。
【0044】
本明細書で使用する「非天然ポリペプチド」という用語または任意の文法上の変化は、裁判官または行政機関もしくは司法機関によって「天然」だと決定もしくは解釈されるか、または決定もしくは解釈される可能性がある形態のポリペプチドを明確に除外するが、その形態のポリペプチドしか除外しない、条件付きの定義である。
【0045】
本明細書において開示される他のポリペプチドは、前述のポリペプチドの断片、誘導体、類似体、または変種、およびその任意の組み合わせである。本明細書において開示される「断片」、「変種」、「誘導体」、および「類似体」という用語は、対応する天然の抗体またはポリペプチドの特性の少なくとも一部を保持している、例えば、抗原に特異的に結合する、任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片には、例えば、本明細書の他の箇所で議論される特異的抗体断片に加えてタンパク質分解断片ならびに欠失断片が含まれる。変種、例えば、ポリペプチドの変種には、上記の断片が含まれ、アミノ酸置換、欠失、または挿入によりアミノ酸配列が変化したポリペプチドも含まれる。ある特定の局面において、変種は非天然でもよい。非天然変種は、当技術分野において公知の変異誘発法を用いて生成することができる。変種ポリペプチドは保存的または非保存的なアミノ酸置換、欠失、または付加を含んでもよい。誘導体は、元々のポリペプチドでは見られない、さらなる特徴を示すように変えられているポリペプチドである。例として融合タンパク質が含まれる。変種ポリペプチドはまた本明細書において「ポリペプチド類似体」とも呼ばれることもある。本明細書で使用する、ポリペプチドの「誘導体」はまた、官能基側鎖の反応によって1つまたは複数のアミノ酸が化学的に誘導体化された本ポリペプチドも指す。20種類の標準アミノ酸のうちの1種類または複数種の誘導体を含有するペプチドも「誘導体」として含まれる。例えば、プロリンの代わりに4-ヒドロキシプロリンが用いられてもよく、リジンの代わりに5-ヒドロキシリジンが用いられてもよく、ヒスチジンの代わりに3-メチルヒスチジンが用いられてもよく、セリンの代わりにホモセリンが用いられてもよく、リジンの代わりにオルニチンが用いられてもよい。
【0046】
「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸が、類似側鎖を有する別のアミノ酸と交換される置換である。塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似側鎖を有するアミノ酸のファミリーが当技術分野において定義されている。例えば、チロシンをフェニルアラニンで置換するのは保存的置換である。ある特定の態様において、本開示のポリペプチドおよび抗体の配列中に保存的置換があっても、そのアミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体と、結合分子が結合する抗原との結合は阻害されない。抗原結合を無くさない、ヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を特定する方法は当技術分野において周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1 187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10):879-884 (1999);およびBurks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:.412-417 (1997)を参照されたい)。
【0047】
「ポリヌクレオチド」という用語は1つの核酸ならびに複数の核酸を含むことが意図され、単離された核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは従来のホスホジエステル結合を含んでもよく、従来にはない結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見出されるアミド結合)を含んでもよい。「核酸」または「核酸配列」という用語は、ポリヌクレオチドに存在する、任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えば、DNA断片またはRNA断片を指す。
【0048】
「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、天然環境から分離された任意の形の核酸またはポリヌクレオチドと意図される。例えば、ゲル精製されたポリヌクレオチド、またはベクターに含まれる、ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは「単離された」とみなされるだろう。また、クローニング用制限部位を有するように操作されているポリヌクレオチドセグメント、例えば、PCR産物は「単離された」とみなされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞内で維持されている組換えポリヌクレオチド、または緩衝液もしくは食塩水などの非天然溶液中にある(部分的もしくは実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたRNA分子には、ポリヌクレオチドのインビボRNA転写物またはインビトロRNA転写物が含まれ、この場合、上記の転写物は天然では見出されるものではない。さらに、単離されたポリヌクレオチドまたは核酸には、合成により生成されたこのような分子が含まれる。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターなどの調節エレメントでもよく、これを含んでもよい。
【0049】
本明細書で使用する「非天然ポリヌクレオチド」という用語またはその任意の文法上の変化は、裁判官または行政機関もしくは司法機関によって「天然」だと決定もしくは解釈されるか、または決定もしくは解釈される可能性がある形態の核酸またはポリヌクレオチドを明確に除外するが、その形態の核酸またはポリヌクレオチドしか除外しない、条件付きの定義である。
【0050】
本明細書で使用する「コード領域」とは、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸部分である。「停止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部とみなされることがある。だが、いかなる隣接配列も、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコード領域の一部でない。2種類以上のコード領域が1つのポリヌクレオチド構築物に、例えば、1つのベクターに存在してもよく、別々のポリヌクレオチド構築物に、例えば、別々の(異なる)ベクターに存在してもよい。さらに、任意のベクターが1つのコード領域を含有してもよく、2種類以上のコード領域を含有してもよい。例えば、1個のベクターが、別々に、免疫グロブリン重鎖可変領域と免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードしてもよい。さらに、ベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、別のコード領域と融合された状態で、または融合されていない状態で異種コード領域を含んでもよい。異種コード領域には、分泌シグナルペプチドまたは異種機能ドメインなどの特殊なエレメントまたはモチーフをコードする異種コード領域が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0051】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、通常、1つまたは複数のコード領域と機能的に結合した、プロモーターおよび/または他の転写制御エレメントもしくは翻訳制御エレメントを含んでもよい。機能的な結合とは、遺伝子産物の発現を調節配列の影響下または制御下に置くように、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドのコード領域が1つまたは複数の調節配列と結合している時の結合である。プロモーター機能が誘導されることで望ましい遺伝子産物をコードするmRNAが転写されるのであれば、かつ2つのDNA断片間の連結の内容が、発現調節配列が遺伝子産物の発現を誘導する能力を妨げない、またはDNA鋳型が転写される能力を妨げないのであれば、2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域と、それに結合しているプロモーター)は「機能的に結合している」。従って、プロモーターが、ポリペプチドをコードする核酸を転写することができれば、プロモーター領域はその核酸と機能的に結合しているだろう。プロモーターは、予め決められた細胞で、かなりのDNA転写を誘導する細胞特異的プロモーターでもよい。細胞特異的転写を誘導するために、プロモーターに加えて、他の転写制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルを前記ポリヌクレオチドと機能的に結合することができる。
【0052】
様々な転写制御領域が当業者に公知である。これらには、サイトメガロウイルスに由来するプロモーターおよびエンハンサーセグメント(例えば、最初期プロモーターとイントロン-A)、シミアンウイルス40(例えば、初期プロモーター)、ならびにレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)などがあるが、それに限定されない脊椎動物細胞において機能する転写制御領域が含まれるが、それに限定されるわけではない。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、およびウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来する転写制御領域、ならびに真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列が含まれる。さらなる適切な転写制御領域には、組織特異的なプロモーターおよびエンハンサーならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導されるプロモーター)が含まれる。
【0053】
同様に、様々な翻訳制御エレメントは当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンおよび終結コドン、ならびにピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム挿入部位、すなわちIRES。CITE配列とも呼ばれる)が含まれるが、これに限定されない。
【0054】
他の態様において、ポリヌクレオチドは、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、またはリボソームRNAの形をしたRNAでもよい。
【0055】
ポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を誘導する分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードする、さらなるコード領域と結合されてもよい。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質には、粗面小胞体を通る成長中のタンパク質鎖の輸送が開始したら成熟タンパク質から切断されるシグナルペプチド配列または分泌リーダー配列がある。当業者であれば、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドには、ポリペプチドのN末端にシグナルペプチドが融合しており、シグナルペプチドは完全な、または「完全長」ポリペプチドから切断されて、分泌型または「成熟」型のポリペプチドとなることを知っている。ある特定の態様において、天然シグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖シグナルペプチドもしくは軽鎖シグナルペプチド、または機能的に結合しているポリペプチドの分泌を誘導する能力を保持している、その配列の機能誘導体が用いられる。または、異種哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能誘導体が用いられてもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノゲンアクチベーター(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列と置換されてもよい。
【0056】
ある特定の結合分子、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体が、本明細書において開示される。フルサイズの抗体について具体的に言及していなければ、「結合分子」という用語は、フルサイズの抗体ならびにこのような抗体の抗原結合サブユニット、断片、変種、類似体、または誘導体、例えば、抗体分子と同様に抗原に結合するが、異なるスキャフォールドを用いる操作された抗体分子または断片を含む。
【0057】
本明細書で使用する「結合分子」という用語は、最も広い意味では、受容体、例えば、エピトープまたは抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。本明細書においてさらに説明されるように、結合分子は、本明細書に記載の1つまたは複数の「抗原結合ドメイン」を含んでもよい。結合分子の非限定的な例は、抗体、または抗原特異的結合を保持しているその断片である。
【0058】
本明細書で使用する「結合ドメイン」または「抗原結合ドメイン」という用語は、エピトープに特異的に結合するのに必要かつ十分な結合分子領域を指す。例えば、抗体の「Fv」、例えば、可変重鎖および可変軽鎖は、2つの別々のポリペプチドサブユニットであっても単鎖であっても「結合ドメイン」とみなされる。他の結合ドメインには、ラクダ科の動物種に由来する抗体の可変重鎖(VHH)、またはフィブロネクチンスキャフォールドの中に発現される6つの免疫グロブリン相補性決定領域(CDR)が含まれるが、それに限定されるわけではない。本明細書に記載の「結合分子」は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、またはそれより多い「抗原結合ドメイン」を含んでもよい。
【0059】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は本明細書において同義に使用することができる。抗体(または本明細書において開示される、その断片、変種もしくは誘導体)は、少なくとも重鎖可変ドメインを含むか(ラクダ科の動物種の場合)、または少なくとも重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含む。脊椎動物系における免疫グロブリン基本構造はかなりよく理解されている。例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照されたい。特に定めのない限り、「抗体」という用語は、抗体の小さな抗原結合断片から、フルサイズの抗体、例えば、2本の完全な重鎖と2本の完全な軽鎖を含むIgG抗体、4本の完全な重鎖と4本の完全な軽鎖と、任意でJ鎖および/もしくは分泌成分を含むIgA抗体、または10本もしくは12本の完全な重鎖と10本もしくは12本の完全な軽鎖を含み、任意でJ鎖を含むIgM抗体に及ぶ、どんなものでも含む。
【0060】
下記でさらに詳細に議論するように「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる様々な広範囲のクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)と分類され、これらの中にはいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4またはα1~α2)があると理解する。抗体の「クラス」を、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEと決めるのは、この鎖がどういったものであるかということである。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2などははっきり特徴付けられており、機能の専門化を付与することが知られている。本開示を考慮すれば、これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変バージョンは当業者であれば容易に認めることができ、従って、本開示の範囲内である。
【0061】
軽鎖はカッパまたはラムダ(κ、λ)と分類される。それぞれの重鎖クラスはκ軽鎖またはλ軽鎖と結合することができる。一般的に、軽鎖および重鎖は互いに共有結合しており、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作された宿主細胞によって産生された時には、2本の重鎖の「テール」部分はジスルフィド共有結合または非共有結合によって互いに結合している。重鎖のアミノ酸配列は、Y立体配置の二またに分かれた末端にあるN末端から、各鎖の底部にあるC末端まで延びている。ある特定の抗体、例えば、IgG抗体の基本構造は、本明細書では「H2L2」構造とも呼ぶ「Y」構造を形成するようにジスルフィド結合を介して共有結合によりつながった、2つの重鎖サブユニットと2つの軽鎖サブユニットを含む。
【0062】
軽鎖および重鎖は両方とも構造および機能に相同性のある領域に分けられる。機能上、「定常」および「可変」という用語が用いられる。これに関して、可変軽鎖部分の可変ドメイン(VL)および可変重鎖部分の可変ドメイン(VH)が抗原認識および特異性を決定すると理解される。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2、またはCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などの生物学的特性を付与する。きまりによって、定常領域ドメインのナンバリングは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から離れるにつれて大きくなる。N末端部分は可変領域であり、C末端部分には定常領域がある。CH3(またはIgMの場合にはCH4)およびCLドメインは、実際には、それぞれ、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を構成する。
【0063】
前記のように、可変領域(すなわち「結合ドメイン」)があると、結合分子は抗原にあるエピトープを選択的に認識し、抗原にあるエピトープに特異的に結合することが可能になる。すなわち、結合分子、例えば、抗体のVLドメインおよびVHドメインまたは相補性決定領域(CDR)のサブセットが一緒になって、三次元抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。さらに具体的には、抗原結合部位は、VH鎖およびVL鎖のそれぞれにある3つのCDRによって規定される。ある抗体は、もっと大きな構造を形成する。例えば、IgAは、2つのH2L2単位、J鎖、および分泌成分を含む分子を形成することができ、これらは全てジスルフィド結合を介して共有結合している。IgMは、5個または6個のH2L2単位と、任意でJ鎖がジスルフィド結合を介して共有結合している五量体分子または六量体分子を形成することができる。
【0064】
抗体抗原結合ドメインに存在する6つの「相補性決定領域」すなわち「CDR」は、抗体が水環境内で三次元立体配置をとる時に結合ドメインを形成するように特異的に配置されている、隣接しない短いアミノ酸配列である。結合ドメインにある残りのアミノ酸は「フレームワーク」領域と呼ばれ、分子内の変化が「CDR」より少ない。フレームワーク領域は主にβシートコンホメーションをとり、CDRは、βシート構造をつなぐループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。従って、フレームワーク領域は、非共有結合性の鎖間相互作用によってCDRを正しい方向に配置する足場を形成するように働く。配置されたCDRによって形成される結合ドメインは、免疫反応性抗原上にあるエピトープに相補的な表面を規定する。この相補的な表面は、抗体とそのコグネイトエピトープとの非共有結合を促進する。CDRを構成するアミノ酸と、フレームワーク領域を構成するアミノ酸はそれぞれ、様々な異なるやり方で規定されているので(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983);およびChothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987)を参照されたい)、当業者は、所定の重鎖可変領域または軽鎖可変領域についてCDRを構成するアミノ酸と、フレームワーク領域を構成するアミノ酸を容易に特定することができる。
【0065】
当技術分野において用いられる、および/または受け入れられている用語に2つ以上の定義がある場合、本明細書で使用する用語の定義は、はっきりと反対のことが述べられている場合を除いて、このような全ての意味を含むことが意図される。具体例は、「相補性決定領域」(「CDR」)という用語が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの可変領域の中に見られる隣接しない抗原結合部位について述べるために用いられることである。これらの特定の領域は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって説明されている。KabatおよびChothiaの定義は、互いに比較した時にアミノ酸の重複またはサブセットを含む。とは言うものの、抗体またはその変種のCDRを言うために一方の定義(または当業者に公知の他の定義)を用いても、特に定めのない限り、本明細書において定義および使用されるような用語の範囲の中にあると意図される。前記で引用された各参考文献によって定義されたCDRを含む適切なアミノ酸残基を、比較として以下の表1に示した。ある特定のCDRを含む正確なアミノ酸番号は、CDRの配列およびサイズに応じて異なる。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列があれば、どのアミノ酸が特定のCDRを構成するか日常的に決定することができる。
【0066】
(表1)CDR定義
1
1表1における全てのCDR定義のナンバリングは、Kabatら(以下を参照されたい)によって示されたナンバリング法によるものである。
【0067】
Kabatらはまた、どの抗体にも適用可能な可変ドメイン配列のナンバリングシステムも定めた。当業者は、配列そのものの他にどの実験データにも頼ることなく、この「Kabatナンバリング」システムを任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書で使用する「Kabatナンバリング」は、Kabat et al. U.S. Dept. of Health and Human Services, 「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)に記載のナンバリングシステムを指す。しかしながら、Kabatナンバリングシステムの使用が明確に述べられていない限り、本開示では全アミノ酸配列に連続ナンバリング(consecutive numbering)が用いられる。
【0068】
結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab'、およびF(ab')2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VLドメインもしくはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって作製された断片が含まれるが、これに限定されない。ScFv分子は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。本開示に含まれる免疫グロブリンまたは抗体分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子でよい。
【0069】
「特異的に結合する」とは、一般的に、結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合し、かつその結合が、抗原結合ドメインとエピトープとの間でいくらかの相補性を必要とすることを意味する。この定義によれば、結合分子は、その抗原結合ドメインを介して、エピトープに結合した時に、ランダムな無関係のエピトープに結合するより容易にエピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、ある特定の結合分子がある特定のエピトープに結合する相対親和性を評するために本明細書において用いられる。例えば、結合分子「A」は、ある特定のエピトープに対して結合分子「B」より高い特異性を有すると考えられてもよく、結合分子「A」は、関連エピトープ「D」より高い親和性でエピトープ「C」に結合すると言われてもよい。
【0070】
本明細書において開示される結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体は、5X10-2sec-1、10-2sec-1、5X10-3sec-1、10-3sec-1、5X10-4sec-1、10-4sec-1、5X10-5sec-1、または10-5sec-1、5X10-6sec-1、10-6sec-1、5X10-7sec-1、または10-7sec-1より小さいか、またはそれに等しいオフレート(k(off))で標的抗原に結合すると言うことができる。
【0071】
結合分子、例えば、本明細書において開示される抗体、または抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、103M-1sec-1、5X103M-1sec-1、104M-1sec-1、5X104M-1sec-1、105M-1sec-1、5X105M-1sec-1、106M-1sec-1、または5X106M-1sec-1、または107M-1sec-1より大きいか、またはそれに等しいオンレート(k(on))で標的抗原に結合すると言うことができる。
【0072】
結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体は、参照抗体または抗原結合断片と、ある特定のエピトープとの結合を、ある程度、ブロックする程度に、ある特定のエピトープに優先的に結合すれば、参照抗体または抗原結合断片と、ある特定のエピトープとの結合を競合阻害すると言われる。競合阻害は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイによって決定することができる。結合分子は、参照抗体または抗原結合断片とある特定のエピトープとの結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%まで競合阻害すると言うことができる。
【0073】
本明細書で使用する「親和性」という用語は、個々のエピトープと1つまたは複数の結合ドメイン、例えば、免疫グロブリン分子の1つまたは複数の結合ドメインとの結合の強度の尺度を指す。例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)27-28頁を参照されたい。本明細書で使用する「アビディティ」という用語は、結合ドメイン集団と抗原との複合体の全安定性を指す。例えば、Harlowの29-34頁を参照されたい。アビディティは、集団内にある個々の結合ドメインと特定のエピトープとの親和性に関連し、免疫グロブリンおよび抗原の給合価とも関連している。例えば、二価モノクローナル抗体と、ポリマーなどの高反復エピトープ構造を有する抗原との相互作用は高アビディティの相互作用だろう。二価モノクローナル抗体と、細胞表面に高密度で存在する受容体の間の相互作用も高アビディティの相互作用だろう。
【0074】
本明細書において開示される結合分子、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体はまた、交差反応性の点でも説明または指定することができる。本明細書で使用する「交差反応性」という用語は、ある抗原に特異的な結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体が第2の抗原と反応する能力を指す。これは、2つの異なる抗原性物質間の関連性を示す尺度である。従って、結合分子は、その形成を誘導したエピトープ以外のエピトープに結合するのであれば交差反応性である。交差反応性エピトープは、一般的に、誘導エピトープと同じ相補的な構造特徴の多くを含み、場合によってはオリジナルより良好に実際に適合することがある。
【0075】
結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体はまた、抗原に対する結合親和性の点でも説明または指定することができる。例えば、結合分子は、5x10-2M、10-2M、5x10-3M、10-3M、5x10-4M、10-4M、5x10-5M、10-5M、5x10-6M、10-6M、5x10-7M、10-7M、5x10-8M、10-8M、5x10-9M、10-9M、5x10-10M、10-10M、5x10-11M、10-11M、5x10-12M、10-12M、5x10-13M、10-13M、5x10-14M、10-14M、5x10-15M、または10-15Mより大きくない解離定数またはKDで抗原に結合することができる。
【0076】
単鎖抗体または他の結合ドメインを含む抗体断片は単独で存在してもよく、以下:ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、もしくはCH4ドメイン、J鎖、または分泌成分の1つまたは複数と組み合わされて存在してもよい。可変領域と、ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3、もしくはCH4ドメイン、J鎖、または分泌成分の1つまたは複数との任意の組み合わせを含んでもよい抗原結合断片も含まれる。結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物に由来してもよい。前記抗体は、ヒト抗体、マウス抗体、ロバ抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、モルモット抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、ウマ抗体、またはニワトリ抗体でもよい。別の態様において、可変領域は、起源が軟骨魚(condricthoid)でもよい(例えば、サメに由来してもよい)。本明細書で使用する「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体、または下記と、例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記載のように1種類もしくは複数種のヒト免疫グロブリンを遺伝子導入され、場合によっては、内因性免疫グロブリンを発現し、場合によっては発現しない動物から単離された抗体を含む。
【0077】
本明細書で使用する「重鎖サブユニット」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖サブユニットを含む結合分子、例えば、抗体は、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、ヒンジの上部領域、中央領域、および/もしくは下部領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはその変種もしくは断片のうち少なくとも1つを含む。例えば、結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体は、VHドメインに加えて、CH1ドメイン;CH1ドメイン、ヒンジ、およびCH2ドメイン;CH1ドメインおよびCH3ドメイン;CH1ドメイン、ヒンジ、およびCH3ドメイン;またはCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含んでもよい。ある特定の局面において、結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体は、VHドメインに加えて、CH3ドメインおよびCH4ドメイン;またはCH3ドメイン、CH4ドメイン、およびJ鎖を含んでもよい。さらに、本開示において使用するための結合分子は、ある特定の定常領域部分、例えば、CH2ドメインの全てまたは一部を欠いてもよい。これらのドメイン(例えば、重鎖サブユニット)は、元々の免疫グロブリン分子に由来するアミノ酸配列の点で異なるように改変することができると当業者に理解される。
【0078】
結合分子、例えば、抗体またはその断片の重鎖サブユニットは、様々な免疫グロブリン分子に由来するドメインを含んでもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖サブユニットが、IgG1分子に由来するCH1ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域を含んでもよい。別の例では、重鎖サブユニットは、一部がIgG1分子に由来し、一部がIgG3分子に由来するヒンジ領域を含んでもよい。別の例では、重鎖サブユニットが、一部がIgG1分子に由来し、一部がIgG4分子に由来するキメラヒンジを含んでもよい。
【0079】
本明細書で使用する「軽鎖サブユニット」という用語は、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。軽鎖サブユニットは、VLまたはCL(例えば、CκまたはCλ)ドメインの少なくとも1つを含む。
【0080】
結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、これらが認識するか、または特異的に結合する、エピトープまたは抗原部分の点で説明または指定することができる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的抗原部分は「エピトープ」、すなわち「抗原決定基」である。標的抗原は1つのエピトープまたは少なくとも2つのエピトープを含んでもよく、抗原のサイズ、コンホメーション、およびタイプに応じて任意の数のエピトープを含んでもよい。
【0081】
前記で示したように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元立体配置が周知である。本明細書で使用する「VHドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は免疫グロブリン重鎖の最初の(最もアミノ末端側にある)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインはVHドメインに隣接しており、典型的な免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側にある。
【0082】
本明細書で使用する「CH2ドメイン」という用語は、例えば、従来のナンバリングの手法を用いてIgG抗体の約アミノ酸244~アミノ酸360(アミノ酸244~360、Kabatナンバリングシステム;およびアミノ酸231~340、EUナンバリングシステム;Kabat EA et al.前掲書を参照されたい)に及ぶ重鎖分子部分を含む。CH3ドメインはCH2ドメインからIgG分子のC末端に及んでおり、約108個のアミノ酸を含む。ある特定の免疫グロブリンクラス、例えば、IgMはCH4領域をさらに含む。
【0083】
本明細書で使用する「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインとCH2ドメインをつなぐ重鎖分子部分を含む。このヒンジ領域は約25個の残基を含み、可動性があり、従って、2つのN末端抗原結合領域は独立して動くことができる。
【0084】
本明細書で使用する「ジスルフィド結合」という用語は、2個の硫黄原子間で形成された共有結合を含む。アミノ酸システインは、ジスルフィド結合を形成するか、もう1つのチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ある特定のIgG分子において、CH1領域およびCL領域はジスルフィド結合によって連結され、2本の重鎖は、Kabatナンバリングシステムを用いた場合、239および242に対応する位置(位置226または229、EUナンバリングシステム)にある2個のジスルフィド結合によって連結されている。
【0085】
本明細書で使用する「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性領域または免疫反応性部位が第1の種から得られているか、または由来し、定常領域が第2の種から得られている(インタクトでもよく、部分的なものでもよく、改変されてもよい)抗体を指す。一部の態様において、標的結合領域または標的結合部位は非ヒト供給源に由来し(例えば、マウスまたは霊長類)、定常領域はヒトである。
【0086】
「多重特異性抗体」または「二重特異性抗体」という用語は、1つの抗体分子の中に2つ以上の異なるエピトープに対する結合ドメインを有する抗体を指す。古典的な抗体構造に加えて、2つの特異性を有する他の結合分子を構築することができる。二重特異性抗体または多重特異性抗体によるエピトープ結合は同時でもよく、連続してもよい。トリオーマおよびハイブリッドハイブリドーマは、二重特異性抗体を分泌することができる細胞株の2つの例である。二重特異性抗体はまた組換え手段でも構築することができる(Strohlein and Heiss, Future Oncol. 6:1387-94 (2010); Mabry and Snavely, IDrugs. 13:543-9 (2010))。二重特異性抗体はダイアボディでもよい。
【0087】
本明細書で使用する「操作された抗体」とは、重鎖もしくは軽鎖またはその両方にある可変ドメインが、CDRまたはフレームワーク領域の1つまたは複数のアミノ酸の少なくとも部分的置換によって変えられている抗体を指す。ある特定の局面において、既知の特異性の抗体に由来する全てのCDRを異種抗体のフレームワーク領域に移植することができる。代わりのCDRが、フレームワーク領域が得られた抗体と同じクラスさらにはサブクラスの抗体に由来してもよいが、CDRはまた、異なるクラスの抗体から、例えば、異なる種に由来する抗体に由来してもよい。既知の特異性の非ヒト抗体に由来する1つまたは複数の「ドナー」CDRがヒト重鎖フレームワーク領域または軽鎖フレームワーク領域に移植されている操作された抗体は本明細書では「ヒト化抗体」と呼ばれる。ある特定の局面において、CDRの全てが、ドナー可変ドメインに由来する完全なCDRと交換されるわけではないが、それでもなお、ドナーの抗原結合能力をレシピエント可変ドメインに移すことができる。例えば、米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号に示された説明を考えると、日常的な実験を行うことで、または試行錯誤して試験することで、機能的な操作された抗体またはヒト化抗体を得ることは当業者の能力の十分に範囲内である。
【0088】
本明細書で使用する「操作された」という用語は、合成手段による(例えば、組換え法、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的結合もしくは化学的結合またはこれらの技法の何らかの組み合わせによる)核酸またはポリペプチド分子の操作を含む。
【0089】
本明細書で使用する「連結された」、「融合された」、もしくは「融合」という用語または他の文法上の相当語句は同義に用いることができる。これらの用語は、化学的結合または組換え手段を含むどんな手段であっても、2つ以上の要素または成分を一緒に結び付けることを指す。「インフレーム融合」は、2つ以上のポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)を結び付けて、元々のORFの翻訳読み枠を維持するように、連続したさらに長いORFを形成することを指す。従って、組換え融合タンパク質は、元々のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する1つのタンパク質である(これらのセグメントは、通常、天然では、このようにつながっていない)。従って、読み枠は融合セグメント全体を通して連続しているが、セグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的または空間的に分離されてもよい。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドはインフレームで融合しているが、「融合された」CDRが連続したポリペプチドの一部として同時翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域またはさらなるCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって分離することができる。
【0090】
ポリペプチドの文脈において、「直鎖配列」または「配列」は、配列内で互いに隣接するアミノ酸がポリペプチドの一次構造において連続している、アミノ末端からカルボキシル末端方向へのポリペプチド内のアミノ酸の順序である。ポリペプチドの別の部分に対して「アミノ末端側」または「N末端側」のポリペプチド部分は、連続したポリペプチド鎖の中で先にくる部分である。同様に、ポリペプチドの別の部分に対して「カルボキシ末端側」または「C末端側」のポリペプチド部分は、連続したポリペプチド鎖の中で後にくる部分である。例えば、典型的な抗体では、可変ドメインは定常領域の「N末端側」にあり、定常領域は可変ドメインの「C末端側」にある。
【0091】
本明細書で使用する「発現」という用語は、遺伝子が、生化学的因子、例えば、ポリペプチドを産生するプロセスを指す。このプロセスは、遺伝子ノックダウンならびに一過的発現および安定発現を含むが、それに限定されるわけではない、細胞内での遺伝子の機能的存在の任意の現れを含む。「発現」は、遺伝子からメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、およびこのようなmRNAからポリペプチドへの翻訳を含むが、それに限定されるわけではない。望ましい最終産物が生化学的因子であれば、発現は、この生化学的因子および任意の前駆体の生成を含む。遺伝子発現によって「遺伝子産物」が産生される。本明細書で使用する遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって生成されるメッセンジャーRNAでもよく、転写物から翻訳されたポリペプチドでもよい。さらに、本明細書に記載の遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化が加えられた核酸、または翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの結合、タンパク質切断などが加えられたポリペプチドを含む。
【0092】
本明細書で使用する「エピジェネティック修飾」という用語は、DNA配列に変化を加えることなく染色体を変えることに起因する、安定して遺伝する表現型を指す。エピジェネティック修飾は、場合によっては、疾患または障害、例えば、がんを引き起こすことがある。Berger, SL, et al., Genes Dev. 23:781-783 (2009)。エピジェネティック修飾は、典型的には、分化、増殖、および/またはアポトーシスなどの細胞プロセスを制御する遺伝子を過剰発現および/または抑制することができるクロマチン構造変化を伴う。このような修飾は、例えば、DNAメチル化およびヒストンアセチル化を伴うことがある。例えば、Gnyska, A., et al., Anticancer Res. 33:2989-2996 (2013)を参照されたい。
【0093】
本明細書で使用する「エピジェネティック調節剤」という用語は、疾患を引き起こすエピジェネティック修飾に影響を及ぼし、例えば、ブロックし、低減し、逆転し、または軽減し、それによって、疾患、例えば、がんを処置することができる薬剤、例えば、治療剤を指す。例示的なエピジェネティック調節剤には、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTi)およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)が含まれる。様々なHDACiおよびDNMTiが、ある特定のがんの治療薬として認可されているか、またはある特定のがんの治療薬として試験されている。例示的な薬剤が本明細書の他の箇所で開示される。
【0094】
本明細書で使用する「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」または「HDAC阻害剤」または「HDACi」という用語は、インビボ、インビトロ、またはその両方でヒストンの脱アセチルを阻害することができる化合物を指す。HDACは少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。少なくとも1つのヒストンの脱アセチルを阻害した結果として、アセチル化ヒストンが増加し、アセチル化ヒストンの蓄積はHDAC活性を評価するための生物学的マーカーとなり得る。
【0095】
本明細書で使用する「DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤」または「DNMT阻害剤」または「DNMTi」という用語は、インビボ、インビトロ、またはその両方でDNA高度メチル化および/またはDNAメチルトランスフェラーゼ(「DNMT」)過剰発現を阻害することができる化合物を指す。DNMT過剰発現および/またはDNMT活性を阻害した結果として、DNMTiは、腫瘍抑制遺伝子などの異常に発現抑制された遺伝子の発現を回復することができる。
【0096】
本明細書で使用する「抗SEMA4D結合分子」という用語は、SEMA4Dに特異的に結合する分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体を指す。フルサイズの抗体、例えば、天然抗体について具体的に言及していない限り、「抗SEMA4D抗体」という用語は、フルサイズの抗体ならびに抗原結合断片ならびにこのような抗体の抗原結合断片、変種、類似体または誘導体、例えば、天然抗体または免疫グロブリン分子または操作された抗体分子または抗体分子と同じように抗原に結合する断片を含む。
【0097】
「処置する」または「処置」または「処置するために」または「軽減する」または「軽減するために」などの用語は、診断された既存の病理学的な状態または障害を治癒する、減速する、その症状を和らげる、および/またはその進行を止めるか、もしくは遅らせる治療的措置を指す。「予防する」、「予防」、「回避する」、「抑止」などの用語は、診断されていない、標的とされた病理学的な状態または障害の発症を阻止する予防的措置または防止的措置を指す。従って、「処置を必要とする」は、障害が既にある人;障害にかかりやすい人;および障害を予防しようとする人を含んでもよい。
【0098】
「治療的有効量」という用語は、対象または哺乳動物において疾患または障害を「処置する」のに有効な抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機低分子、または他の薬物の量を指す。がんの場合、治療的有効量の薬物は、がん細胞の数を低減する;がん細胞分裂を遅延させる、もしくは止める、腫瘍サイズの増加を低減する、もしくは遅延させる;例えば、軟部組織および骨へのがんの拡大を含む、末梢臓器へのがん細胞浸潤を阻害する、例えば、抑制する、遅延させる、阻止する、止める、遅らせる、もしくは逆転させる;腫瘍の転移を阻害する、例えば、抑制する、遅延させる、阻止する、縮小する、止める、遅らせる、もしくは逆転させる;腫瘍成長を阻害する、例えば、抑制する、遅延させる、阻止する、止める、遅らせる、もしくは逆転させる;がんに関連する症状の1つもしくは複数をある程度、緩和する、罹患率および死亡率を下げる;生活の質を改善することが可能であるか、またはこのような効果の組み合わせが可能である。薬物が増殖を阻止する、および/または既存のがん細胞を死滅させるのであれば、細胞分裂停止性および/または細胞傷害性と呼ばれることがある。
【0099】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後、または療法が望まれる任意の対象、特に、哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、家畜(domestic animal)、家畜(farm animal)、および動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ブタ、ウシ、クマなどが含まれる。
【0100】
本明細書で使用する「療法から利益を得ると思われる対象」および「処置を必要とする動物」などの句は、本明細書に記載の療法、例えば、1つまたは複数の抗原結合ドメインを含む抗体と、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせとの組み合わせの投与から利益を得ると思われる対象、例えば、哺乳動物対象を含む。
【0101】
「免疫調節療法」または「免疫療法」という用語は、対象において免疫応答を誘導および/または増強することによって対象において疾患または障害に影響を及ぼす処置を指す。免疫調節療法には、がんワクチン、免疫賦活性剤、養子T細胞、または抗体療法、および免疫チェックポイント遮断が含まれる(Lizee et al. Ann. Rev. Med. 64:71-90 (2013))。
【0102】
「免疫調節剤」という用語は免疫療法の活性薬剤を指す。免疫調節剤には、多様な組換え調製物、合成調製物、および天然調製物が含まれる。免疫調節剤の例には、インターロイキン、例えば、IL-2、IL-7、IL-12;サイトカイン、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン;様々なケモカイン、例えば、CXCL13、CCL26、CXCL7;免疫チェックポイント遮断アンタゴニスト、例えば、抗CTLA-4、抗PD-1、または抗PD-L1(PD-1リガンド)、抗LAG3、抗TIM3、抗B7-H3、合成シトシンリン酸-グアノシン(cytosine phosphate-guanosine)(CpG)オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン;および調節性T細胞(Treg)のモジュレーター、例えば、シクロホスファミドが含まれるが、これに限定されない。
【0103】
標的ポリペプチドの説明-SEMA4D
本明細書で使用する「セマフォリン-4D」、「SEMA4D」、および「SEMA4Dポリペプチド」という用語は同義に用いられ、「SEMA4D」および「Sema4D」も同様に用いられる。ある特定の態様において、SEMA4Dは細胞表面に発現しているか、または細胞によって分泌される。別の態様において、SEMA4Dは膜に結合している。別の態様において、SEMA4Dは可溶性であり、例えば、sSEMA4Dである。別の態様において、SEMA4Dは、フルサイズのSEMA4Dもしくはその断片またはSEMA4D変種ポリペプチドを含んでもよく、SEMA4DまたはSEMA4D変種ポリペプチドの断片はフルサイズのSEMA4Dのいくつかの、または全ての機能特性を保持している。
【0104】
フルサイズのヒトSEMA4Dタンパク質は、2本の150kDaポリペプチド鎖からなるホモ二量体膜貫通タンパク質である。SEMA4Dは細胞表面受容体のセマフォリンファミリーに属し、CD100とも呼ばれる。ヒトおよびマウスSEMA4D/Sema4Dは両方とも膜貫通型からタンパク分解によって切断され120kDa可溶型を生じ、これにより2種類のSema4Dアイソフォームを生じ得る(Kumanogoh et al., J. Cell Science 116:3464 (2003))。セマフォリンは、ニューロンと、その適切な標的との間の正確な接続を確立するのに重要な役割を果たす軸索ガイダンス因子と当初、定義された、可溶性タンパク質と膜結合タンパク質からなる。構造について考えられたクラスIVセマフォリンであるSEMA4Dは、アミノ末端シグナル配列と、それに続く、17個の保存されたシステイン残基を含有する特徴的な「Sema」ドメイン、Ig様ドメイン、リジンリッチ領域、疎水性膜貫通領域、および細胞質テールからなる。
【0105】
SEMA4Dポリペプチドは、約13アミノ酸のシグナル配列と、それに続く、約512アミノ酸のセマフォリンドメイン、約65アミノ酸の免疫グロブリン様(Ig様)ドメイン、104アミノ酸のリジンリッチ領域、約19アミノ酸の疎水性膜貫通領域、および110アミノ酸の細胞質テールを含む。細胞質テールにあるチロシンリン酸化のコンセンサス部位から、SEMA4Dとチロシンキナーゼとの予測された結合が裏付けられる(Schlossman et al., Eds. (1995) Leucocyte Typing V (Oxford University Press, Oxford)。
【0106】
SEMA4Dは、少なくとも3種類の機能的受容体であるプレキシン-B1、プレキシン-B2、およびCD72を有することが知られている。プレキシン-B1は非リンパ系組織において発現しており、SEMA4Dに対する高親和性(1nM)受容体であることが示されている(Tamagnone et al., Cell 99:71-80 (1999))。プレキシン-B1シグナル伝達のSEMA4D刺激は、ニューロンの成長円錐崩壊を誘導し、オリゴデンドロサイトの突起伸張(process extension)崩壊およびアポトーシスを誘導することが示されている(Giraudon et al., J. Immunol. 172:1246-1255 (2004); Giraudon et al., NeuroMolecular Med. 7:207-216 (2005))。SEMA4Dと結合した後に、プレキシン-B1シグナル伝達はR-Ras不活性化を媒介し、それにより、インテグリンを介した細胞外マトリックスへの付着が減少し、RhoAが活性化され、細胞骨格が再編成されることで細胞が崩壊する(Kruger et al., Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6:789-800 (2005); Pasterkamp, TRENDS in Cell Biology 15:61-64 (2005))。プレキシン-B2はSEMA4Dに対して中間の親和性を有し、最近の報告から、プレキシン-B2はケラチノサイト上で発現し、SEMA4D陽性γδT細胞を活性化して上皮修復に寄与することが分かっている(Witherden et al., Immunity;37:314-25 (2012))。
【0107】
リンパ系組織において、CD72は低親和性(300nM)SEMA4D受容体として利用される(Kumanogoh et al., Immunity 13:621-631 (2000))。B細胞および抗原提示細胞(APC)はCD72を発現し、抗CD72抗体は、CD40によって誘導されるB細胞応答の強化およびCD23のB細胞脱落(shedding)などのsSEMA4Dと同じ作用の多くを有する。CD72は、多くの抑制性受容体と結合することができるチロシンホスファターゼSHP-1を動員することによって負のB細胞応答制御因子として作用すると考えられている。SEMA4DとCD72が相互作用するとSHP-1が解離し、この負の活性化シグナルは消失する。SEMA4DはインビトロでT細胞刺激ならびにB細胞の凝集および生存を促進することが示されている。SEMA4D発現細胞またはsSEMA4Dを添加すると、インビトロでは、CD40によって誘導されるB細胞増殖および免疫グロブリン産生が強化され、インビボ抗体応答が促進される(Ishida et al., Inter. Immunol. 15:1027-1034 (2003); Kumanogoh and H. Kukutani, Trends in Immunol. 22:670-676 (2001))。sSEMA4Dは、補助刺激分子のアップレギュレーションおよびIL-12分泌の増加を含めて、CD40によって誘導されるDC成熟が強化される。さらに、sSEMA4Dは免疫細胞遊走を阻害することができ、これは抗SEMA4Dマウス遮断抗体を添加することによって逆転することができる(Elhabazi et al., J. Immunol. 166:4341-4347 (2001); Delaire et al., J. Immunol. 166:4348-4354 (2001))。
【0108】
Sema4Dは、脾臓、胸腺、およびリンパ節を含むリンパ器官において、ならびに脳、心臓、および腎臓を含む非リンパ器官において高レベルで発現している。リンパ器官では、Sema4Dは休止T細胞の表面で大量発現しているが、休止B細胞および抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞(DC)では弱く発現しているだけである。
【0109】
細胞が活性化されるとSEMA4Dの表面発現が増加し、可溶性SEMA4D(sSEMA4D)が生成される。SEMA4Dの発現パターンから、SEMA4Dは免疫系において重要な生理学的役割ならびに病理学的役割を果たすことが示唆される。SEMA4Dは、B細胞の活性化、凝集、および生存を促進する;CD40によって誘導される増殖および抗体産生を強化する;T細胞依存性抗原に対する抗体応答を強化する;T細胞増殖を増加させる;樹状細胞成熟およびT細胞刺激能力を強化することが示されており、脱髄および軸索変性に直接結び付けられている(Shi et al., Immunity 13:633-642 (2000); Kumanogoh et al., J. Immunol. 169:1175-1181 (2002);およびWatanabe et al., J. Immunol. 167:4321-4328 (2001))。
【0110】
抗SEMA4D抗体
SEMA4Dに結合する抗体は当技術分野において説明されている。例えば、米国特許出願公開番号2008/0219971A1、US2010/0285036A1、およびUS2006/0233793A1、国際特許出願WO93/14125、WO2008/100995、およびWO2010/129917、ならびにHerold et al., Int. Immunol. 7: 1-8(1995)を参照されたい。これらのそれぞれが、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0111】
本開示は、概して、対象、例えば、ヒトがん患者において腫瘍の成長または転移を阻害する、遅延させる、または低減する方法であって、SEMA4Dに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と有効量のエピジェネティック調節剤、例えば、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(HDACi)、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤(DNMTi)、またはその任意の組み合わせの投与を含む、方法に関する。HDACiおよびDNMTiは本明細書の他の箇所で詳細に説明される。ある特定の態様において、抗SEMA4D抗体は、SEMA4Dと、その受容体、例えば、プレキシン-B1、プレキシン-B2、および/またはCD72の1つまたは複数との相互作用をブロックする。ある特定の態様において、がん細胞はプレキシン-B1および/またはプレキシン-B2を発現する。これらの特性を有する抗SEMA4D抗体は、本明細書において提供される方法において使用することができる。使用することができる抗体には、US2010/0285036A1およびUS2008/0219971A1において十分に説明される、MAb VX15/2503、67、76、2282およびその抗原結合断片、変種、または誘導体が含まれるが、これに限定されない。本明細書において提供される方法において使用することができる、さらなる抗体には、US2006/0233793A1に記載のBD16抗体ならびにその抗原結合断片、変種もしくは誘導体;またはUS2008/0219971A1に記載のようなMAb 301、MAb 1893、MAb 657、MAb 1807、MAb 1656、MAb 1808、Mab 59、MAb 2191、MAb 2274、MAb 2275、MAb 2276、MAb 2277、MAb 2278、MAb 2279、MAb 2280、MAb 2281、MAb 2282、MAb 2283、MAb 2284、およびMAb 2285のいずれか、ならびにその任意の断片、変種もしくは誘導体が含まれる。ある特定の態様において、本明細書において提供される方法において使用するための抗SEMA4D抗体は、ヒトSEMA4Dに結合するか、マウスSEMA4Dに結合するか、またはヒトSEMA4DとマウスSEMA4Dの両方に結合する。前述の抗体、および/または前述の抗体のいずれかの結合または活性を競合阻害する抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗体も有用である。
【0112】
ある特定の態様において、本明細書において提供される方法において有用な、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、参照抗SEMA4D抗体分子、例えば、前記の抗SEMA4D抗体分子のアミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。さらなる態様において、結合分子は、参照抗体と少なくとも約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性を共有する。
【0113】
ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、SEMA4Dと、その受容体、例えば、プレキシン-B1、プレキシン-B2、またはCD72との相互作用を阻害することができる。ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、SEMA4Dを介したプレキシン-B1シグナル伝達を阻害することができる。
【0114】
ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含む可変重鎖領域(VH)およびアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む可変軽鎖領域(VL)を含む参照抗体がSEMA4Dと結合しないように競合阻害する。ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むVHおよびアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むVLを含む参照抗体と同じSEMA4Dエピトープに結合する。ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体のVHは3つの相補性決定領域(CDR) HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、VLは3つのCDR LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、かつCDRは、CDRの1つまたは複数にある少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個の保存的1アミノ酸置換を除いて、それぞれ、アミノ酸配列SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、およびSEQ ID NO:8を含む。ある特定の局面において、CDRは、それぞれ、アミノ酸配列SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、およびSEQ ID NO:8を含む。
【0115】
ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体のVHは、SEQ ID NO:1と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%同一のアミノ酸配列を含み、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体のVLは、SEQ ID NO:5と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%同一のアミノ酸配列を含む。またはVHは、SEQ ID NO:9と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%同一のアミノ酸配列を含み、VLは、SEQ ID NO:10と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の局面において、VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含み、VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含む。または、VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:9を含み、VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含む。
【0116】
本明細書において提供される方法において使用するために、本明細書に記載の抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体をコードするポリペプチド、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、このようなポリヌクレオチドをコードするベクター、およびこのようなベクターまたはポリヌクレオチドを含む宿主細胞も含まれ、これらは全て、本明細書に記載の方法において使用するための、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体を生成するためのものである。
【0117】
本開示の抗SEMA4D抗体の適切な生物学的に活性な変種は本開示の方法において使用することができる。このような変種は親抗SEMA4D抗体の望ましい結合特性を保持している。抗体変種を作製する方法は一般的に当技術分野において利用可能である。
【0118】
変異誘発およびヌクレオチド配列変化のための方法は当技術分野において周知である。例えば、Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York); Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492 (1985); Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987); Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.);米国特許第4,873,192号; およびその中で引用された参考文献を参照されたい。これらは参照により本明細書に組み入れられる。関心対象のポリペプチドの生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Dayhoff et al. (1978) in Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.), 345-352頁のモデルの中に見つけることができる。Dayhoffらのモデルでは、適切な保存的アミノ酸置換を決定するためにポイントアクセプティッドミューテーション(Point Accepted Mutation)(PAM)アミノ酸類似性マトリクス(PAM250マトリクス)を用いる。ある特定の局面において、保存的置換、例えば、あるアミノ酸から類似の特性を有する別のアミノ酸への交換が用いられる。DayhoffらのモデルのPAM250マトリクスによって開示されるような保存的アミノ酸置換の例には、Gly←→Ala、Val←→Ile←→Leu、Asp←→Glu、Lys←→Arg、Asn←→Gln、およびPhe←→Trp←→Tyrが含まれるが、これに限定されない。
【0119】
抗SEMA4D結合分子、例えば、関心対象の抗体、またはその抗原結合断片、ポリペプチドの変種を構築する際には、変種が望ましい特性を有し続けるように、例えば、SEMA4D、例えば、ヒトSEMA4D、マウスSEMA4D、またはヒトSEMA4DとマウスSEMA4Dの両方に、例えば、細胞表面に発現しているSEMA4Dまたは細胞によって分泌されたSEMA4Dに特異的に結合することができ、かつ本明細書に記載のようにSEMA4Dブロッキング活性を有するように改変が加えられる。ある特定の局面において、変種ポリペプチドをコードするDNAにおいてなされる変異は読み枠を維持し、mRNA二次構造を生じ得る相補領域を作り出さない。EP特許出願公開第75,444号を参照されたい。
【0120】
抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の結合特異性を測定するための方法には、標準的な競合的結合アッセイ、T細胞またはB細胞による免疫グロブリン分泌をモニタリングためのアッセイ、T細胞増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、ELISAアッセイなどが含まれるが、これに限定されない。例えば、WO93/14125; Shi et al., Immunity 13:633-642 (2000); Kumanogoh et al., J. Immunol. 169:1175-1181 (2002); Watanabe et al., J. Immunol. 167:4321-4328 (2001); Wang et al., Blood 97:3498-3504 (2001);およびGiraudon et al., J. Immunol. 172:1246-1255 (2004)に開示されるようなアッセイを参照されたい。これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0121】
抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の抗血管新生能力を測定するための方法は当技術分野において周知である。
【0122】
本明細書において開示された定常領域、CDR、VHドメイン、またはVLドメインを含む任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドと少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、さらには約100%同一かどうかが本明細書において議論された時に、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)などがあるが、これに限定されない当技術分野において公知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて%同一性を求めることができる。BESTFITでは、2つの配列間の最も良い相同性セグメントを見つけるためにSmith and Waterman(1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489の局所相同性アルゴリズムを用いる。特定の配列が、例えば、本開示の参照配列と95%同一かどうかを決定するためにBESTFITまたは他の任意の配列アラインメントプログラムを使用した場合、パラメータは、もちろん、参照ポリペプチド配列の完全長にわたって同一性パーセントが計算され、参照配列におけるアミノ酸総数の5%までの相同性ギャップが許容されるように設定される。
【0123】
本開示の目的のために、パーセント配列同一性は、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用し、アフィンギャップ(affine gap)検索とギャップオープンペナルティ12およびギャップ延長ペナルティ2、BLOSUMマトリックス62を用いて求めることができる。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムはSmith and Waterman(1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489において開示されている。変種は、例えば、参照抗SEMA4D抗体(例えば、MAb VX15/2503、67、76、または2282)と、1~15アミノ酸残基と少ないアミノ酸残基分だけ、6~10アミノ酸残基などの1~10アミノ酸残基、5アミノ酸残基、4アミノ酸残基、3アミノ酸残基、2アミノ酸残基、さらには1アミノ酸残基と少ないアミノ酸残基分だけ異なってもよい。
【0124】
抗SEMA4D抗体の定常領域は、多くのやり方でエフェクター機能を変えるように変異することができる。例えば、米国特許第6,737,056B1および米国特許出願公開第2004/0132101A1号を参照されたい。これらは、Fc受容体との抗体結合を最適化するFc変異を開示している。
【0125】
本明細書において提供される方法において有用な、ある特定の抗SEMA4D抗体、またはその断片、変種、または誘導体において、Fc部分は、当技術分野において公知の技法を用いてエフェクター機能を弱めるように変異することができる。例えば、(点変異または他の手段によって)定常領域ドメインを欠失または不活性化することで、改変された循環抗体のFc受容体結合を弱め、それによって、腫瘍局在化を増大することができる。他の場合では、本開示と一致する、定常領域の改変は補体結合を緩和し、従って、血清半減期を短くする。定常領域のさらに他の改変を用いてジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を改変することができる。ジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を改変すると、抗原特異性または抗体可動性が増大することにより局在化が増大する。結果として生じた改変の生理学的プロファイル、バイオアベイラビリティ、および他の生化学的作用、例えば、腫瘍局在化、生体内分布、および血清半減期は、過度の実験なく、周知の免疫学的技法を用いて容易に測定および定量することができる。
【0126】
本明細書において提供される方法において使用するための抗SEMA4D抗体は、改変された誘導体、例えば、共有結合によって抗体とそのコグネイトエピトープとの特異的な結合が妨げられないように、任意のタイプの分子を抗体に共有結合することによって改変された誘導体を含む。例えば、限定されるわけではないが、抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との連結などによって改変されている抗体を含む。特異的な化学切断、アセチル化、ホルミル化などを含むが、これに限定されない公知の技法によって、非常に多くの化学修飾のうちどれでも行うことができる。さらに、誘導体は1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有してもよい。
【0127】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、電荷が似ている側鎖を有するアミノ酸残基と交換される置換である。電荷が似ている側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。または、変異は、例えば、飽和変異誘発によってコード配列の全てまたは一部に沿ってランダムに導入することができ、活性(例えば、抗SEMA4Dポリペプチドに結合する能力、SEMA4Dとその受容体との相互作用をブロックする能力、またはがん患者などの対象において転移を阻害する、遅延させるもしくは低減する能力)を保持している変異体を特定するために、結果として得られた変異体の生物学的活性をスクリーニングすることができる。
【0128】
例えば、抗体分子のフレームワーク領域にのみ、またはCDR領域にのみ変異を導入することは可能である。導入された変異はサイレントでもよく、ミスセンス中立変異、すなわち、抗体が抗原に結合する能力に影響を及ぼさないか、またはほとんど影響を及ぼさない変異でもよい。これらのタイプの変異はコドン使用頻度(codon usage)を最適化するのに有用なものでもよく、ハイブリドーマの抗体産生を最適化するのに有用なものでもよい。または、非ミスセンス中立変異によって、抗体が抗原に結合する能力を変えることができる。当業者であれば、抗原結合活性が変化しない、または結合活性が変化する(例えば、抗原結合活性が改善するか、または抗体特異性が変化する)などの望ましい特性を有する変異分子を設計および試験することができるだろう。変異誘発後に、コードされているタンパク質を日常的に発現することができ、コードされているタンパク質の機能的活性および/または生物学的活性(例えば、SEMA4Dポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに免疫特異的に結合する能力)を、本明細書に記載の技法を用いて、または当技術分野において公知の技法を日常的に改良することによって決定することができる。
【0129】
ある特定の態様において、本明細書において提供される方法において使用するための抗SEMA4D抗体は、少なくとも1つの最適化された相補性決定領域(CDR)を含む。「最適化されたCDR」とは、最適化されたCDRを含む抗SEMA4D抗体に付与される結合親和性および/または抗SEMA4D活性を改善するようにCDRが改変および最適化されていることを意味する。「抗SEMA4D活性」または「SEMA4Dブロッキング活性」は、SEMA4Dに関連する以下の活性の1つまたは複数:B細胞の活性化、凝集、および生存;CD40によって誘導される増殖および抗体産生;T細胞依存性抗原に対する抗体応答;T細胞または他の免疫細胞の増殖;樹状細胞の成熟;脱髄および軸索変性;多能性神経前駆体および/またはオリゴデンドロサイトのアポトーシス;内皮細胞遊走の誘導;自発的単球遊走の阻害;腫瘍細胞の増殖または転移、細胞表面プレキシンB1もしくは他の受容体への結合、または可溶性SEMA4DもしくはSEMA4D+細胞表面で発現しているSEMA4Dに関連した他の任意の活性の阻害、遅延、または低減を改変する活性を含んでもよい。特定の態様において、抗SEMA4D活性には、原発性腫瘍細胞増殖および腫瘍転移の阻害、遅延、もしくは低減と組み合わせた、または原発性腫瘍細胞増殖および腫瘍転移とは独立した腫瘍転移の阻害能力、遅延能力、または低減能力が含まれる。抗SEMA4D活性はまた、リンパ腫を含む、ある特定のタイプのがん、自己免疫疾患、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)炎症性疾患を含む炎症性疾患、移植片拒絶、ならびに浸潤性血管形成を含むが、これに限定されない、SEMA4D発現に関連する疾患の発生率または重篤度の減少にも起因し得る。マウス抗SEMA4D MAb BD16をベースとする最適化された抗体の例は米国特許出願公開番号2008/0219971A1、国際特許出願WO93/14125、およびHerold et al., Int. Immunol. 7: 1-8 (1995)に記載されている。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。改変は、抗SEMA4D抗体が、SEMA4D抗原に対する特異性を保持しており、改善された結合親和性および/または改善された抗SEMA4D活性を有するような、CDR内でのアミノ酸残基の交換を伴ってもよい。
【0130】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)
本明細書で使用する「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」、「HDAC阻害剤」、および「HDACi」という用語は同義に用いられ、単数のHDACiを指してもよく、複数のHDACiを指してもよい。
【0131】
ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)はヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンアセチルトランスフェラーゼは、堅く詰まっておらず、かつ転写活性のあるクロマチンをもたらす、コアヒストンのリジン残基をアセチル化して、遺伝子発現を引き起こす酵素である。その反対に、HDACは、ヌクレオソームコアヒストンのアミノ末端テールにあるリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素である。HDACは構造相同性に基づいて3つのクラスに分けることができる。クラスI HDAC(HDAC1、2、3、および8)は酵母RPD3遺伝子に関連する。クラスIIA(HDAC4、5、7、および9)は酵母Hda1遺伝子との類似性を有する。クラスIIIはサーチュインとも知られ、Sir2遺伝子に関連し、SIRT1-7を含む。クラスIVはHDAC11しか含まず、クラスIおよびIIの両方の特徴を共有する。例えば、Mottamal, M., et al., Molecules 20:3898-3941 (2015)を参照されたい。
【0132】
ある特定のHDAC阻害剤はHDACの亜鉛含有触媒ドメインに結合することによって作用する。これらは、亜鉛イオンに結合する化学部分に基づいて、またはチオール基と共に亜鉛イオンに結合する環式テトラペプチドとして分類することができる。例えば、Drummond、D.C., et al., Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 45:495-528 (2005)を参照されたい。これらには、ヒドロキサム酸(またはヒドロキサム酸塩)、例えば、トリコスタチンA;環式テトラペプチド(例えば、トラポキシンB)およびデプシペプチド;ベンズアミド;求電子性ケトン;および脂肪族系酸化合物(単鎖脂肪酸(SCFA)、例えば、フェニル酪酸およびバルプロ酸が含まれるが、それに限定されるわけではない。例えば、Porcu, M., and Chiarugi, A., Trends Pharmacolog. Sci. 26:94-103 (2005)を参照されたい。さらに具体的には、HDAC阻害剤には、ヒドロキサム酸ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、およびパノビノスタット(LBH589);ならびにベンズアミド:エンチノスタット(MS-275)、CI994、およびモセチノスタット(MGCD0103)が含まれるが、それに限定されるわけではない。サーチュインクラスIII HDACはNAD+に依存し、従って、ニコチンアミド、ならびにNAD誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン(naphthopyranone)、および2-ヒドロキシナフトアルデヒドによって阻害される。同文献。
【0133】
ヒストンデアセチラーゼの阻害、悪性細胞における最終分化、細胞増殖停止、および/もしくはアポトーシスの誘導、ならびに/または腫瘍における腫瘍細胞の分化、細胞増殖停止、および/もしくはアポトーシスの誘導において使用するためのHDAC阻害剤の非限定的な例を表2に列挙した。HDAC阻害剤は、本明細書に記載のHDAC阻害剤の任意の塩、結晶構造、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、立体異性体、構造異性体、およびプロドラッグを含むことが理解される。
【0134】
【0135】
ある特定の態様において、本明細書において提供される方法において有用なHDAC阻害剤には、エンチノスタット、ボリノスタット、ロミデプシン、シダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット、アベキシノスタット、プラシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、ケベトリン、CUDC-101、4SC-202、ACY-241、AR-42、テフィノスタット、CHR-3996、リコリノスタット(ACY-1215)、および/またはCD200745が含まれる。がん治療のためにFDAにより認可されたいくつかのHDAC阻害剤、ならびに現在、未解決の臨床試験中にあるHDAC阻害剤または臨床試験を終了したHDAC阻害剤を以下に列挙した。
【0136】
食品医薬品局(FDA)により認可されたHDAC阻害剤
ボリノスタットは、2006年10月に皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療薬として米国FDAにより承認された。ロミデプシン(商品名Istodax)は、2009年11月に皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)に対して米国FDAにより承認された。シダミドは、2015年に末梢T細胞リンパ腫(PTCL)に対して中国で認可された。パノビノスタット(商品名Farydak)は、2015年2月に多発性骨髄腫の治療薬として米国FDAにより承認された。ベリノスタット(PXD101)は、2014年に末梢T細胞リンパ腫の治療薬としてFDAにより承認された。
【0137】
非限定的な一局面において、HDAC阻害剤はエンチノスタット(ENT)である。エンチノスタットのIUPAC化学名は、ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメートである。ENTはSNDX-275およびMS-275としても知られ、クラスI HDACの阻害剤である(Syndax Pharmaceuticals)。ENTは、0.51μMおよび1.7μMのIC50でHDAC1およびHDAC3を阻害するベンズアミドヒストンデアセチラーゼ阻害剤である。ENTは、現在、様々ながんの治療剤として臨床試験を受けている。
【0138】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤
本明細書で使用する「DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤」、「DNMT阻害剤」、および「DNMTi」という用語は同義に使用することができ、単数のDNMTiを指してもよく、複数のDNMTiを指してもよい。
【0139】
DNAメチルトランスフェラーゼは、シトシン残基の5’炭素へのメチル基付加を触媒する。がん細胞において、腫瘍抑制遺伝子のサイレンシングは、DNMTを介したメチル化によって起こる。Gravina et al., Molecular Cancer 9:305-320 (2010)。DNMT1、DNMT-3a、およびDNMT-3bを含むDNMTのいくつかのアイソフォームが存在する。同文献。様々なDNMTiが特定されており、米国ではがん療法に2種類が認可されている。分子のクラスには、ヌクレオシド類似体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子酵素阻害剤、およびDNMTとDNAの相互作用をブロックする薬剤が含まれる。
【0140】
DNAメチルトランスフェラーゼの阻害、悪性細胞における最終分化、細胞増殖停止、および/もしくはアポトーシスの誘導、ならびに/または腫瘍内にある腫瘍細胞の分化、細胞増殖停止、および/もしくはアポトーシスの誘導において使用するためのDNMTiの非限定的な例を表3に列挙した。DNMTiは、本明細書に記載のDNMT阻害剤の任意の塩、結晶構造、非晶質構造、水和物、誘導体、代謝産物、立体異性体、構造異性体、およびプロドラッグを含むことが理解される。
【0141】
【0142】
ある特定の態様において、本明細書において提供される方法において有用なDNMT阻害剤には、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、SGI-110、没食子酸エピガロカテキン、MG98、RG108、プロカインアミド、および/またはヒドララジンが含まれる。がん治療のためにFDAにより認可されたいくつかのDNMT阻害剤、ならびに現在、未解決の臨床試験中にあるDNMT阻害剤または臨床試験を終了したDNMT阻害剤を以下に列挙した。
【0143】
食品医薬品局(FDA)により認可されたDNMTiおよび試験中のDNMTi
アザシチジンはVIDAZA(登録商標)として販売され、2004年5月19日に骨髄異形成症候群(MDS)の治療薬としてFDAにより認可され、進行固形腫瘍については臨床試験中である。アザシチジンは、前臨床黒色腫モデルおよび結腸がんモデルにおいて、インターフェロン(IFN)経路をアップレギュレートすることによって、およびウイルス抗原を抑制解除し、それにより、腫瘍の免疫原性を高め、有効なICP療法に対する感受性を高めることによって免疫チェックポイント阻害剤(ICP)活性を強化することが示されている(Li et al., Oncotarget 5:587 (2014)およびRoulois et al., Cell 162:961 (2015))。さらに、アザシチジンは、MDS、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄単球性白血病(CMML)にかかっている患者において腫瘍におけるがん精巣抗原(CTA)の発現をアップレギュレートし、それにより、CTAに対するT細胞活性を高めることが示された(Gang, AO. et al. Blood Cancer J. doi:10.1038/bcj.2014.14.(2014))。Juergens, RA.ら(Cancer Discov. 1:598-607 (2011))は難治性進行NSCLCにおいてアザシチジンおよびエンチノスタットを使用した。この試験からの6人の患者が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた追加試験に登録され(Wrangle, J., et al., Oncotarget 4:2067-2079 (2013))、5人の患者が応答を示した。blogs.biomedcentral.com/on-biology/2015/03/26/improving-lung-cancer-immunotherapy-using-epigenetic-approaches/(2017年5月16日に訪問)も参照されたい。
【0144】
デシタビンはDACOGEN(登録商標)として販売され、MDS治療薬として認可され、欧州ではAML治療薬としても認可され、AML臨床試験中である。SGI-110はAML治療薬として第II相臨床試験中である。MG98は進行固形腫瘍第I相臨床試験を終了した。ECGCは前立腺がん第II相臨床試験を終了した。
【0145】
非限定的な一局面において、DNMTiはアザシチジンである。アザシチジンはヌクレオシドシトシンの化学類似体である。アザシチジンは、活性の中でも特に、DNAに組み組み込まれて、DNMTと共有結合することでDNA低メチル化を引き起こし、DNA合成を阻止し、細胞傷害性およびトラップされたDNMTの分解をもたらすことができる。Stresemann, C., and Lyko, F., Int. J. Cancer 123:8-13 (2008)。
【0146】
治療用抗SEMA4D結合分子とエピジェネティック調節剤、例えば、HDACiおよび/またはDNMTiを用いた処置方法
本開示は、がんを有する対象に、有効量の、SEMA4Dに特異的に結合する単離された結合分子、例えば、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と、有効量のエピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせとを含む併用療法を投与することによって、がんを有する対象において悪性細胞増殖を阻害する、遅延させる、または低減するための方法を提供する。例示的な抗SEMA4D抗体および例示的なエピジェネティック調節剤は本明細書の他の箇所で詳細に説明される。ある特定の局面において、本明細書において提供される併用療法の投与は腫瘍または悪性細胞の増殖を部分的または完全に阻害してもよく、対象における腫瘍および悪性細胞の増殖の進行を遅延してもよく、対象における転移拡大を阻止してもよく、対象の腫瘍サイズを、例えば、外科的除去をもっと成功させるために縮小してもよく、対象における腫瘍脈管構造を減少してもよく、対象におけるプラスの治療応答の任意の組み合わせをもたらしてもよい。成し遂げることができる例示的な治療応答は本明細書において説明される。
【0147】
ある特定の局面において、併用療法の投与は、抗SEMA4D抗体もしくはその断片またはエピジェネティック調節剤の単独の投与と比べて高い治療効力をもたらすことができる。ある特定の局面において、改善された処置効力は相乗的であり、それぞれの個々の薬剤の相加的効力より大きい。ある特定の局面において、例えば、腫瘍成長遅延(tumor growth delay)(TGD)の増加、腫瘍退縮、例えば、完全腫瘍退縮の頻度の増加、または生存率の増加で測定した改善された処置効力は、単独投与された薬剤と比べて、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%、少なくとも600%、少なくとも650%、少なくとも700%、少なくとも750%、少なくとも800%、少なくとも850%、少なくとも900%、少なくとも950%、または少なくとも1000%である。ある特定の局面において、例えば、腫瘍成長遅延(TGD)の増加、腫瘍退縮、例えば、完全腫瘍退縮の頻度の増加、または生存率の増加で測定した改善された処置効力は、個々に投与された両薬剤の相加的効力と比べて、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%、少なくとも600%、少なくとも650%、少なくとも700%、少なくとも750%、少なくとも800%、少なくとも850%、少なくとも900%、少なくとも950%、または少なくとも1000%である。
【0148】
ある特定の局面において、抗SEMA4D抗体または断片は、VX15/2503、mAb 67、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体でもよい。例えば、前記抗体またはその断片は、VH CDR1~3を含む可変重鎖(VH)とVL CDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含み、VH CDR1~3が、それぞれ、SEQ ID NO:2、3、および4を含み、VL CDR1~3がそれぞれ、SEQ ID NO:6、7、および8を含んでもよい。または、VHおよびVLは、それぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5、またはSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:10を含む。
【0149】
ある特定の局面において、本明細書において提供される方法は、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と、クラスI、クラスIIA、クラスIIB、クラスIV HDAC、および/またはその任意の組み合わせであり得るHDACを阻害するHDACiの投与を含み、例えば、HDACは亜鉛含有触媒ドメインを含む。ある特定の局面において、HDACiは、HDACの亜鉛含有触媒ドメインに結合する部分を含んでもよい。例えば、ある特定の局面において、HDACiは、ヒドロキサム酸またはその塩、環式テトラペプチド、デプシペプチド、ベンズアミド、求電子性ケトン、および/または脂肪族系酸またはその塩などがあるが、これに限定されない化学部分の1つもしくは複数または化学部分の組み合わせを含んでもよい。本明細書において提供される処置方法において使用することができるHDACiの非限定的な例には、ボリノスタット、ロミデプシン、シダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸もしくはその塩、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、テフィノスタット(CHR-2845)、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ACY-241、および/またはその任意の組み合わせが含まれる。ある特定の局面において、HDACiは、エンチノスタット(ピリジン-3-イルメチルN-[[4-[(2-アミノフェニル)カルバモイル]フェニル]メチル]カルバメート)でもよい。
【0150】
ある特定の局面において、本明細書において提供される方法は、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と、DNMT1、DNMT-3a、DNMT-3b、および/またはその任意の組み合わせを阻害するDNMTiを含む。例えば、ある特定の局面において、DNMTiは、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、SGI-110、没食子酸エピガロカテキン、MG98、RG108、プロカインアミド、ヒドララジン、および/またはその任意の組み合わせなどがあるが、これに限定されない化学部分の1つもしくは複数または化学部分の組み合わせを含んでもよい。ある特定の局面において、DNMTiはアザシチジンでもよい。
【0151】
本明細書において提供される方法によれば、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、またはその任意の組み合わせは別々に投与されてもよく、同時に投与されてもよい。どちらの薬剤も他方の薬剤の前に投与することができる、または薬剤は、同時に、例えば、1種類の製剤の中に入れて投与することができる。さらに、投薬の経路、薬剤の製剤、および/または投薬の計画は同じでもよく、異なってもよい。
【0152】
本明細書において提供される方法によれば、抗SEMA4D結合分子、例えば、SEMA4Dに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその任意の組み合わせは、がんを有する対象に投与される。対象のがんは、新たに診断されてもよく、または、ある特定の局面では、前記投与は、もっと従来からあるがん処置の後に行われてもよい。ある特定の局面において、本明細書において提供される併用療法の投与は、ある特定のがんを非常に発症しやすい対象における予防的措置として用いられてもよく、以前に処置されたことがあるがんの再発を予防するために用いられてもよい。対象のがんは、例えば、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、その任意の転移、またはその任意の組み合わせでもよい。
【0153】
ある特定の局面において、対象のがんは、固形腫瘍またはその転移である。固形腫瘍は、例えば、肉腫、がん腫、黒色腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせでもよい。本明細書において提供される方法に従って処置することができる固形腫瘍の例には、扁平上皮がん、腺がん、基底細胞がん、腎細胞がん、乳管がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん、胃がん、膵臓がん、神経内分泌がん、グリア芽細胞腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、脳がん、肝がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんもしくは子宮がん、食道がん、唾液腺がん、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、頭頚部がん、その任意の転移、またはその任意の組み合わせが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0154】
ある特定の局面において、がんは、血液悪性腫瘍またはその転移である。本明細書において提供される方法に従って処置することができる血液悪性腫瘍の例には、白血病、リンパ腫、骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、その任意の転移、またはその任意の組み合わせが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0155】
ある特定の局面において、本明細書において提供されるがん処置方法は、さらなるがん療法の投与をさらに含んでもよい。さらなるがん療法は、本明細書において提供される併用療法の投与と同時に行われてもよく、本明細書において提供される併用療法の前に行われてもよく、本明細書において提供される併用療法の後に行われてもよい。ある特定の局面において、さらなる療法には、外科手術、化学療法、放射線療法、がんワクチンの投与、免疫賦活剤、養子T細胞、もしくは抗体療法の投与、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、調節性T細胞(Treg)モジュレーターの投与、またはこのような療法の組み合わせが含まれ得るが、それに限定されるわけではない。
【0156】
エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその任意の組み合わせと、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせの投与は様々な悪性腫瘍および非悪性腫瘍の処置に有用な可能性がある。「抗腫瘍活性」とは、悪性細胞の増殖または蓄積の速度が遅くなること、従って、既存の腫瘍の増殖速度が遅くなること、もしくは療法の間に生じる腫瘍の増殖速度が遅くなること、および/または既存の新生(腫瘍)細胞もしくは新たに形成した新生細胞が破壊されること、従って、療法の間に腫瘍の全体サイズが小さくなることを意味する。「抗腫瘍活性」はまた、腫瘍への免疫浸潤の促進、機能的な腫瘍特異的IFNγ分泌CD8+細胞傷害性T細胞へのシフト、Tエフェクター細胞とT調節細胞の比の増加、T細胞活性、浸潤の増加、および腫瘍抗原を交差提示し、腫瘍特異的T細胞を局所的に活性化する抗原提示細胞の活性化、腫瘍に関連する血管形成の低減、腫瘍進行の阻害、ならびに生存率の向上も含んでよい。例えば、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと、抗SEMA4D抗体を用いた療法は、ヒトにおけるSEMA4D発現細胞に関連するがんの処置に関連して有効な生理学的応答、例えば、腫瘍または悪性細胞の増殖および転移の阻害、遅延、または低減を誘発してもよい。
【0157】
ある特定の局面において、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその断片を用いた併用療法は、医用薬剤として、特に、がんの処置もしくは予防において使用するための医用薬剤として、または前がん性の状態もしくは病変部において使用するための医用薬剤として使用することができる。ある特定の局面において、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその断片を用いた併用療法は、SEMA4D過剰発現がんまたはSEMA4D発現細胞に関連するがんの処置に使用することができる。
【0158】
本明細書において提供される処置方法によれば、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと、本明細書の他の箇所で定義されるような、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の投与は、がんを有する対象またはがんに罹患する素因がある対象においてプラスの治療応答を促進するために使用することができる。がんに関する「プラスの治療応答」は、「抗腫瘍」活性に関連する疾患の改善を含むことが意図され、「抗腫瘍」活性とは、悪性細胞の増殖または蓄積の速度が遅くなること、従って、既存の腫瘍の増殖速度が遅くなること、もしくは療法の間に生じる腫瘍の増殖速度が遅くなること、および/または既存の新生(腫瘍)細胞もしくは新たに形成した新生細胞が破壊されること、従って、療法の間に腫瘍の全体サイズが小さくなることが意図される。このようなプラスの治療応答は投与経路に限定されない。本明細書において提供される方法は、がんを有する対象において腫瘍成長、悪性細胞増殖、および転移を阻害する、遅延させる、または低減することに向けられる。従って、非限定的な例として、疾患の改善は、腫瘍成長が低減したこと、または腫瘍が無いことと特徴付けることがでる。本明細書の他の箇所で説明するように、提供される併用療法の投与時に成し遂げられる治療応答は、エピジェネティック調節剤または抗SEMA4D結合分子を個々に投与した時に成し遂げられる対応する治療応答より大きい場合がある。ある特定の局面において、成し遂げられる治療応答は、2種類の薬剤の投与時に予想される相加的応答よりも大きい。言い換えると、成し遂げられる治療応答は相乗的である。ある特定の局面において、相乗的応答は、より効果的な処置、より迅速な処置をもたらす可能性があるか、または併用療法において、薬剤の投与量が低減した処置を可能にする可能性がある。
【0159】
薬学的組成物および投与方法
本開示は、有効量の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と有効量のエピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせを含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供する。前記組成物は、1種類もしくは複数種の薬学的に許容される担体もしくは賦形剤および/または1種類もしくは複数種のさらなる治療剤をさらに含んでもよい。さらなる治療剤の例は本明細書の他の箇所で開示される。このような薬学的組成物において使用するために適した抗SEMA4D結合分子およびエピジェネティック調節剤は本明細書において提供される。
【0160】
ある特定の局面において、薬学的組成物は、有効量の、VHおよびVLを含む抗SEMA4D抗体またはその抗原結合断片を含み、VHおよびVLは、MAb VX15/2503およびMAb 67に含まれるCDRアミノ酸配列、すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHCDR2、アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHCDR3、アミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むLCDR2、およびアミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むLCDR3を含む。ある特定の局面において、薬学的組成物は、有効量の、MAb VX15/2503のVHおよびVLアミノ酸配列、すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むVHとアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むVLとを含む抗SEMA4D抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0161】
ある特定の局面において、薬学的組成物は有効量のHDACiエンチノスタットを含む。ある特定の局面において、薬学的組成物は有効量のDNMTiアザチジンを含む。
【0162】
本明細書において提供される例示的な薬学的組成物は有効量のMAb VX15/2503と有効量のエンチノスタットを含む。本明細書において提供される別の例示的な薬学的組成物は、有効量のMAb VX15/2503と有効量のアザシチジンを含む。ある特定の局面において、提供される薬学的組成物に含まれる特定の薬剤の「有効量」は、個々の療法として有効だと思われる薬剤の量と異なってもよく、例えば、それより少なくてもよい。ある特定の局面において、本明細書において提供される薬学的組成物の治療効力は、個々に投与される、含まれる薬剤の相加効果よりも大きい。
【0163】
エピジェネティック調節剤と抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせの投与経路は、例えば、経口経路、吸入による非経口経路、または局所経路でもよい。本明細書で使用する非経口という用語は、例えば、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、または腟投与を含む。2種類の薬剤の投与方法は同じでもよく、異なってもよい。これらの全ての形の投与がはっきりと、本明細書において提供される方法の範囲内と意図されるが、投与の形の一例は注射用溶液、特に、静脈内または動脈内の注射用または点滴用の溶液である。注射に適切な薬学的組成物は、緩衝液(例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、またはクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、任意で、安定剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含んでもよい。しかしながら、本明細書における開示と適合した他の方法では、エピジェネティック調節剤および/または抗SEMA4D結合分子、例えば、前記抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体を有害細胞集団の部位に直接送達し、それによって、治療剤への罹患組織の曝露を高めることができる。
【0164】
エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと、抗SEMA4D結合分子、例えば、前記抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせを含む、本明細書において提供される併用療法を調製する方法、またはこれらを必要とする対象に投与する方法は当業者に周知であるか、当業者によって容易に決定される。
【0165】
本明細書において議論されるように、がんをインビボで処置するために、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせは薬学的に有効な量で投与することができる。これに関して、開示されるエピジェネティック調節剤および結合分子は、投与を容易にし、活性薬剤の安定性を促進するように処方できることが理解される。ある特定の態様において、本明細書において提供される方法に従う薬学的組成物は、薬学的に許容される、無毒で、無菌の担体、例えば、生理食塩水、無毒の緩衝液、防腐剤などを含む。本願の目的のために、エピジェネティック調節剤および結合分子の薬学的に有効な量とは、がん細胞における少なくとも1つのエピジェネティック修飾の活性に影響を及ぼすのに十分な量、例えば、ヒストンデアセチラーゼ活性またはDNAメチルトランスフェラーゼ活性を低減すのに十分な量、標的と効果的に結合し、利益、例えば、がんを有する対象における抗増殖作用、腫瘍および悪性細胞の増殖および転移の阻害、遅延、もしくは低減、さらなる腫瘍成長の阻止、腫瘍サイズの縮小、腫瘍脈管構造の減少、ならびにがん細胞数の減少を得るのに十分な量、ならびに/または疾患に関連する1つもしくは複数の症状の減少を観察できるのに十分な量である。
【0166】
本明細書において提供される方法において用いられる薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を含んでもよい。
【0167】
非経口投与用の調製物には、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれ得る。非水性溶媒の非限定的な例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、および注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。水性担体には、例えば、食塩水および緩衝化培地を含む、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョン、または懸濁液が含まれる。薬学的に許容される担体には、0.01~0.1M、例えば、0.05Mのリン酸緩衝液または0.8%食塩水が含まれるが、これに限定されない。他の一般的な非経口ビヒクルには、リン酸ナトリウム溶液、リンガー液デキストロース(Ringer's dextrose)、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液、または不揮発性油が含まれる。静脈内ビヒクルには、体液補充薬および栄養分補充薬、電解質補充薬、例えば、リンガー液デキストロースをベースとするものなどが含まれる。防腐剤および他の添加剤、例えば、殺菌剤、抗酸化物質、キレート剤、および希ガスなども存在してよい。
【0168】
注射使用に適した薬学的組成物の非限定的な例には、滅菌した水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌散剤が含まれる。このような場合、組成物は滅菌されていなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度まで液状であるべきである。組成物は、典型的には、製造および保管の条件下で安定になるように処方され、細菌および菌類などの微生物の汚染作用を防ぐように保存することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒でもよい。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合では必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって適切な流動性を維持することができる。本明細書において開示される治療方法において使用するために適した製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.) 16th ed.(1980)に記載されている。
【0169】
微生物の活動は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって阻止することができる。等張性薬剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることができる。注射用組成物の長期吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによって可能になる。
【0170】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性成分(例えば、単独で、または他の活性薬剤と組み合わせた、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせ)を、必要に応じて本明細書において列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒に溶解して組み込み、その後に、濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒および前記で列挙された成分に由来する必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに組込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の2つの非限定的な例は真空乾燥および凍結乾燥である。真空乾燥および凍結乾燥によって、活性成分と任意のさらなる望ましい成分の予め濾過滅菌された溶液から、活性成分と任意のさらなる望ましい成分の散剤が得られる。注射用の調製物は加工され、アンプル、バック、瓶、注射器、またはバイアルなどの容器に入れられ、当技術分野において公知の方法に従って無菌条件下で密封される。さらに、調製物はキットの形で包装および販売することができる。このような製造物品には、関連した組成物が、がんに罹患している対象またはがんの素因のある対象の処置に有用なことを示すラベルまたは添付文書があってもよい。
【0171】
非経口製剤は単一ボーラス量でもよく、注入液でもよく、または負荷ボーラス量の後に維持量が続いてもよい。これらの組成物は、特定の決まった間隔で、または変化する間隔で、例えば、1日に1回、または「必要に応じて」投与されてもよい。
【0172】
使用される、ある特定の薬学的組成物は、例えば、カプセル、錠剤、水性懸濁液、または溶液を含む許容可能な剤形にして経口投与することができる。ある特定の薬学的組成物はまた鼻用エアゾール剤または吸入によって投与することもできる。このような組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを高める吸収促進剤、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて食塩水に溶解した溶液として調製することができる。
【0173】
単一剤形を生成するために担体材料と共に組み合わされる、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体の量は、処置しようとする対象および特定の投与方法に応じて変化する。前記組成物は、単回投与、複数回投与として、または注入中に所定の期間にわたって投与することができる。望ましい最適の応答(例えば、治療応答または予防応答)が得られるように投与計画も調整することができる。
【0174】
本開示の範囲に合わせて、上述の処置方法に従って、治療効果を生じるのに十分な量のエピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせを、抗SEMA4D結合分子、例えば、前記抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体と組み合わせてヒトまたは他の動物対象に投与することができる。エピジェネティック調節剤と抗SEMA4D結合分子、例えば、前記抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせは、公知の技法に従って、前記抗体およびエピジェネティック調節剤と従来の薬学的に許容される担体または希釈剤とを組み合わせることによって調製された従来の剤形にして、このようなヒトまたは他の動物に投与することができる。薬学的に許容される担体または希釈剤の形および特徴は、組み合わされる活性成分の量、投与経路、および他の周知の変数によって決まることが当業者に認識される。さらに、当業者は、エピジェネティック調節剤および結合分子を含むカクテルを使用できることを理解する。
【0175】
「有効量」は、投与された時に、処置しようとする疾患を有する患者の処置に関してプラスの治療応答、例えば、がんを有する対象における抗増殖作用、さらなる腫瘍成長の阻止、腫瘍サイズの縮小、腫瘍脈管構造の減少、ならびにがん細胞数の減少、腫瘍および/もしくは悪性細胞の増殖および/もしくは転移の阻害、遅延、もしくは低減をもたらす、ならびに/または疾患に関連する1つもしくは複数の症状の減少を観察することができる、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせの量、ならびに抗SEMA4D結合分子、例えば、前記抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の量を意味する
【0176】
本明細書に記載の組成物の治療的有効用量、例えば、がんを有する対象における抗増殖作用、さらなる腫瘍成長の阻止、腫瘍サイズの縮小、腫瘍脈管構造の減少、がん細胞数の減少、腫瘍および/もしくは悪性細胞の増殖および/もしくは転移の阻害、遅延、もしくは低減、ならびに/または疾患に関連する1つもしくは複数の症状の減少を得るための本明細書に記載の組成物の治療的有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的段階、患者がヒトか他の動物かどうか、投与される他の薬物療法、および処置が予防的処置か治療的処置かどうかを含む多くの異なる要因に応じて変化することがある。ある特定の態様において、患者はヒトであるが、トランスジェニック動物を含む非ヒト動物も処置することができる。安全性および効力を最適化するために、処置投与量を、当業者に公知の日常的な方法を用いて滴定することができる。
【0177】
投与しようとする、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと抗SEMA4D結合分子の量は、本明細書において提供される本開示を考えれば、過度の実験なく当業者によって容易に求められる。投与方法、ならびにエピジェネティック調節剤および結合分子のそれぞれの量に影響を及ぼす要因には、疾患の重篤度、病歴、ならびに療法を受けている個体の年齢、身長、体重、健康状態、および身体状態が含まれるが、これに限定されない。同様に、投与しようとする、エピジェネティック調節剤および結合分子の量は、投与方法、および対象がこの薬剤の単回投与または複数回投与を受けるかどうかに左右される。
【0178】
がんを有する対象の処置のための医用薬剤の製造における、一部の局面では、少なくとも1つの他の療法による前処置をさらに含む、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変種もしくは誘導体の組み合わせの使用も提供される。「前処置された」または「前処置」とは、対象が、エピジェネティック調節剤と抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせを含む医用薬剤を受ける前に1つまたは複数の他の療法を受けたことがあることを(例えば、少なくとも1つの他のがん療法で処置されたことがあることを)意味する。「前処置された」または「前処置」は、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、例えば、エンチノスタットおよび/またはDNMTi、例えば、アザシチジンと、抗SEMA4D結合分子、例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体VX15/2503またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体を含む医用薬剤を用いた処置を開始する前、2年以内に、18ヶ月以内に、1年以内に、6ヶ月以内に、2ヶ月以内に、6週間以内に、1ヶ月以内に、4週間以内に、3週間以内に、2週間以内に、1週間以内に、6日以内に、5日以内に、4日以内に、3日以内に、2日以内に、または1日内でさえ少なくとも1つの他の療法で処置されたことがある対象を含む。対象は、前療法による前処置に対する反応者であったことは必要でない。従って、エピジェネティック調節剤と抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体の組み合わせを含む医用薬剤を与える対象は、前療法による前処置、または前処置が複数の療法を含む場合には前療法の1つもしくは複数に応答していてもよく、応答していなくてもよい。
【0179】
本明細書において提供される方法はまた、がんを有する対象を処置するための医用薬剤の製造における、エピジェネティック調節剤、例えば、HDACi、DNMTi、および/またはその組み合わせと、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体との組み合わせの使用であって、医用薬剤が、少なくとも1種類の他の療法でも処置されている対象において用いられる、使用も提供する。本明細書において開示される、利用可能な療法には、外科手術、放射線療法、がんワクチン、免疫賦活剤、養子T細胞、もしくは抗体療法の投与、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、調節性T細胞(Treg)モジュレーターの投与、またはその組み合わせが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0180】
本開示は、特に定めのない限り、当業者の技術の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来法を用いる。このような技法は文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press); Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY); D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II; Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis; Mullis et al. 米国特許第4,683,195号; Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization; Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation; Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986); Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning; the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory); Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155; Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London); Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV; Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986);およびAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)を参照されたい。
【0181】
抗体工学の一般原則は、Borrebaeck, ed. (1995) Antibody Engineering (2nd ed.; Oxford Univ. Press)に示されている。タンパク質工学の一般原則は、Rickwood et al., eds. (1995) Protein Engineering, A Practical Approach (IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng.)に示されている。抗体および抗体-ハプテン結合の一般原則は、Nisonoff (1984) Molecular Immunology (2nd ed.; Sinauer Associates, Sunderland, Mass.);およびSteward (1984) Antibodies, Their Structure and Function(Chapman and Hall, New York, N.Y.)に示されている。さらに、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York; Stites et al., eds. (1994) Basic and Clinical Immunology (8th ed; Appleton & Lange, Norwalk, Conn.)およびMishell and Shiigi (eds) (1980) Selected Methods in Cellular Immunology (W.H. Freeman and Co., NY)に記載のように、当技術分野において公知であり、具体的に説明されていない免疫学における標準方法に従うことができる。
【0182】
免疫学の一般原理を示した標準的な参考図書には、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York; Klein J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination (John Wiley & Sons, NY (1982)); Kennett et al., eds. (1980) Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses (Plenum Press, NY); Campbell (1984) 「Monoclonal Antibody Technology」 in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, ed. Burden et al., (Elsevier, Amsterdam); Goldsby et al., eds. (2000) Kuby Immunology (4th ed.; W.H. Freeman and Co., NY); Roitt et al. (2001) Immunology (6th ed.; London: Mosby); Abbas et al. (2005) Cellular and Molecular Immunology (5th ed.; Elsevier Health Sciences Division); Kontermann and Dubel (2001) Antibody Engineering (Springer Verlag); Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press); Lewin (2003) Genes VIII (Prentice Hall 2003); Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press); Dieffenbach and Dveksler (2003) PCR Primer (Cold Spring Harbor Press)が含まれる。
【0183】
上記で引用された全ての参考文献ならびに本明細書において引用された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0184】
以下の実施例は例示として提供され、限定として提供されない。
【実施例】
【0185】
実施例1:エンチノスタット(ENT)および抗SEMA4D抗体の投与は生存率を高め、腫瘍成長を有意に遅らせ、パーセント完全腫瘍退縮を増加させる
生存、腫瘍成長、および腫瘍退縮に対するENTと抗SEMA4D MAbの併用投与の効果を腫瘍マウスモデルにおいて試験した。Colon26細胞(500,000個の細胞)をBalb/cマウスに皮下移植した。マウスを、(1)対照Ig(10mg/kg、ip、毎週x5、2日目から開始)(n=20); (2)対照Ig(10mg/kg、ip、毎週x5、2日目から開始)+ENT(20mg/kg、3x/週x2週間。平均腫瘍量が約300mm
3になった時に開始した)(n=21); (3)抗SEMA4D/MAb 67(10mg/kg、IP、毎週x5週間、2日目から開始)(n=24);または (4)抗SEMA4D/MAb 67(10mg/kg、IP、毎週x5週間、2日目から開始)およびENT(20mg/kg、3x/週x2週間、平均腫瘍量が約300mm
3になった時に開始した)(n=26)で処置した(
図1に図示した実験デザイン)。処置時の腫瘍量は対照群および実験群の間でほぼ同じであった。カプラン・マイヤー生存分析を行って生存関数を評価した。腫瘍量変化を測定して腫瘍成長速度を求めた。完全腫瘍退縮の頻度は、無腫瘍マウスのパーセントを求めることによって評価した。パーセント完全退縮(%CR)はまた、退縮の前に少なくとも100mm
3を超えていた腫瘍でも層別化した。統計的有意性を、生存についてはマンテル・コックスログランク検定を用いて、腫瘍量については2元配置ANOVAを用いて、CRについてはフィッシャー直接検定を用いて決定した。Prismは、結果を、P>0.05では有意でない(ns)、0.01<P≦0.05では有意(「
*」で表した)、0.001<P≦0.01では非常に有意(「
**」)、P≦0.001では極めて有意(「
***」)、P≦0.0001では最も有意(「
****」)だと報告する。腫瘍を発達しなかったマウスまたは腫瘍量が700mm
3に達する前に腫瘍潰瘍化を発症したマウスを分析から除外した。
【0186】
腫瘍成長遅延に対する相乗効果は、いずれかの薬剤を単独投与した群:SEMA4D/MAb 67では107%TGDおよびENTでは214%TGDと比較して、ENTと抗SEMA4D/MAb 67の組み合わせを投与した群において認められた(782%の最大腫瘍成長遅延(TGD))(
図2A)。ENTと抗SEMA4D/MAb 67で処置したマウスはまた、ENTまたは抗SEMA4D/MAb 67で処置したマウスと比較して有意な生存改善も示した(p<0.05)(
図2B)。さらに、ENTと抗SEMA4D/MAb 67の併用処置は、特に、退縮の前に100mm
3を超えていた腫瘍の中では、単一薬剤と比較して完全腫瘍退縮の頻度を有意に高めた(62%
***) (
図2Cおよび
図2D)。これらの結果から、ENTと抗SEMA4D MAbを用いた処置は生存を改善し、腫瘍成長を低減し、大きな定着した腫瘍を退縮したことが分かる。
【0187】
実施例2:ENTおよび抗SEMA4D抗体の投与は生存率を高め、腫瘍成長を低減し、完全退縮の頻度を高める
Colon26細胞(500,000個の細胞)をBalb/cマウスに皮下移植した。マウスを、(1)対照Ig(10mg/kg、毎週x5週間、2日目から開始(n=12)); (2)対照Ig(10mg/kg、毎週x5週間、2日目から開始)およびENT(20mg/kg、3x/週間x2週間。平均腫瘍量が約250mm3になった時に開始した)(n=9); (3)抗SEMA4D/MAb 67(10mg/kg、IP、毎週x5週間、2日目から開始)(n=8);または (4)抗SEMA4D/MAb 67(10mg/kg、毎週x5週間、2日目から開始)およびENT(20mg/kg、3x/週間x2週間。平均腫瘍量が約250mm3になった時に開始した)(n=13)で処置した。処置時の腫瘍量は対照群および実験群の中でほぼ同じであった。各群について平均腫瘍量、カプラン・マイヤー生存曲線、および完全腫瘍退縮の頻度を示した。統計的有意性を、それぞれ、2元配置ANOVA、マンテル・コックスログランク検定、およびフィッシャー直接検定を用いて決定した。Prismは、結果を、P>0.05では有意でない(ns)、0.01<P≦0.05では有意(「*」で表した)、0.001<P≦0.01では非常に有意(「**」)、P≦0.001では極めて有意(「***」)だと報告する。腫瘍を発達しなかったマウスまたは腫瘍量が700mm3に達する前に腫瘍潰瘍化を発症したマウスを分析から除外した。
【0188】
ENTおよび抗SEMA4D/MAb 67を与えたマウスは最大705%のTGDを示したのに対して、抗SEMA4D/MAb 67で処置したマウスは119%の腫瘍成長遅延を示した(
図3A)。ENTと抗SEMA4D/MAb 67を用いたマウスの併用処置はまた、対照IgおよびENT処置群(25%
*)と比較して完全腫瘍退縮の頻度を高めた(62%
**)(
図3B~3D)。さらに、ENTと抗SEMA4D/MAb 67を与えたマウスは、対照Igで処置したマウス(P<0.001)、または対照IgとENTで処置したマウス(p<0.01)と比較して有意な生存改善を示した(
図3E)。これらの結果から、ENTと抗SEMA4D MAbを用いた併用処置は生存率を高め、腫瘍成長を減らし、腫瘍を根絶したことが証明される。
【0189】
実施例3:アザシチジン(AZA)および抗SEMA4D抗体の投与は生存率を高め、腫瘍成長を有意に遅らせ、パーセント完全腫瘍退縮を増加させる
生存、腫瘍成長、および腫瘍退縮に対するAZAおよび抗SEMA4D MAbの併用投与の効果を腫瘍マウスモデルにおいて試験した。Colon26細胞(500,000個の細胞)をBalb/cマウスに皮下移植した。マウスを、群1:対照Ig(10mg/kg、ip、毎週x4、2日目から開始(n=12));群2:抗SEMA4D/MAb 67(10mg/kg、ip、毎週x4、2日目から開始(N=8));群3:対照Ig(10mg/kg、ip、毎週x4、2日目から開始+AZA(0.8mg/kg、3x/週間X4用量。平均腫瘍量が約200mm
3になった時に22日目~24日目から開始(n=10));および群4:抗SEMA4D/MAb 67(10mg/kg、ip、毎週x4、2日目から開始+AZA(0.8mg/kg、3x/週間X4用量。平均腫瘍量が約200mm
3になった時に22日目~24日目から開始(n=9))で処置した。実験デザインを
図4に図示した)。マウスを、60日間、または腫瘍量が約1,500mm
3に達するまでモニタリングした。
【0190】
処置時の腫瘍量は対照群および実験群の間でほぼ同じであった。カプラン・マイヤー生存分析を行って生存関数を評価した。腫瘍量変化を測定して腫瘍成長速度を求めた。完全腫瘍退縮の頻度は無腫瘍マウスのパーセントを求めることによって評価した。統計的有意性を、生存についてはマンテル・コックスログランク検定を用いて、腫瘍量については2元配置ANOVAを用いて、完全腫瘍退縮についてはフィッシャー直接検定を用いて決定した。Prismは、結果を、P>0.05では有意でない、0.01<P≦0.05では有意(「*」で表した)、0.001<P≦0.01では非常に有意(「**」)だと報告する。腫瘍を発達しなかったマウスまたは腫瘍量が700mm3に達する前に腫瘍潰瘍化を発症したマウスを分析から除外した。
【0191】
AZAおよび抗SEMA4D/MAb 67を与えたマウスは最大705%のTGDを示したのに対して、抗SEMA4D/MAb 67で処置したマウスは119%の腫瘍成長遅延を示した(
図5A)。AZAおよび抗SEMA4D/MAb 67で処置したマウスはまた対照マウスと比較して有意な生存改善も示し(p<0.001)、単一薬剤である抗SEDMA4D/MAb 67と比較してほぼ有意な生存改善(p=0.0697)も示した(
図5B)。さらに、AZAと抗SEMA4D/MAb 67の併用処置によって完全腫瘍退縮の頻度は対照Ig(17%)と比較して78%まで有意に増加した(p<0.01)(
図5C)。これらの結果から、AZAと抗SEMA4D MAbを用いた処置は生存を改善し、腫瘍成長を低減し、大きな定着した腫瘍を退縮したことが分かる。
【0192】
本開示の広さおよび範囲は、上記の如何なる例示的な態様によっても限定されてはならず、添付の特許請求の範囲およびその均等物に従う場合にのみ規定されるべきである。
【0193】
【配列表】