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特許7159206蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンの使用
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/06 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
D01F1/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019560270
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 FR2018051091
(87)【国際公開番号】W WO2018202996
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】1753837
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518241953
【氏名又は名称】クライム・サイエンス・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コジモ・プレーテ
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス・デポウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・マランジュ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/155695(WO,A1)
【文献】特開2016-119458(JP,A)
【文献】特表2005-521798(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105862451(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0215598(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
D01F 1/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーから本質的に構成される合成蛍光繊維の製造のための、4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物の使用であって、
前記ポリマーが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアミド、ポリアラミド、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シアノアクリレート、コロホニウム樹脂、松脂、光重合性樹脂又はその混合物から選択され、
蛍光化合物が、ポリマーマトリクスのコアに組み込まれ、
蛍光化合物が、式I:
【化1】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、C1~C4アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R5はC1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルであり;
R6及びR6’は、ハロゲン、C1~C4アルキル、C2~C4アルキニル、C2~C4アルケニル又はアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよい]
の化合物から選択される、使用。
【請求項2】
4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物が、
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
【表1F】
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリマーが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド及びその混合物から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
合成蛍光繊維の製造方法であって、以下の工程:
- ポリマーを用意する工程と、
- 請求項1又は2に規定の4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物を用意する工程と、
- 前記ポリマーに前記化合物を組み込んで均一混合物を得る工程と、
- 組み込み工程で得られた均一混合物から合成蛍光繊維を得る工程と
を含む、製造方法。
【請求項5】
ポリマーが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド及びその混合物から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
組み込み工程が押出によって行われることを特徴とする、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
合成蛍光繊維を製造する工程が、溶融ルート経由で行われることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
製品へのセキュリティの提供、及び特に身分証明書又は信用文書、又はテキスタイル製品へのセキュリティの提供のための、請求項4から7のいずれか一項に規定されたようにして得られる蛍光繊維の、使用。
【請求項9】
製品中の装飾的及び/又は審美的な要素としての、請求項4から7のいずれか一項に規定されたようにして得られる蛍光繊維の使用。
【請求項10】
4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物を含む、ポリマーから本質的に構成される合成蛍光繊維であって、
前記ポリマーが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアミド、ポリアラミド、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シアノアクリレート、コロホニウム樹脂、松脂、光重合性樹脂又はその混合物から選択され、
前記化合物が、ポリマーマトリクスのコアに組み込まれ、
前記化合物が、式I:
【化2】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、C1~C4アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R5はC1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルであり;
R6及びR6’は、ハロゲン、C1~C4アルキル、C2~C4アルキニル、C2~C4アルケニル又はアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよい]
の化合物から選択される、合成蛍光繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテキスタイルの分野に関し、より詳しくは蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物の使用に関し、それを得る方法及びその使用、特に製品へのセキュリティの提供のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、偽造及び偽物が、多くの部門で顕著に、特に高付加価値を有するものに増加しつつある。ますます多くの製品が偽造されがちで、看過される部門があるようには見えない。
【0003】
これに関連して、効果的に偽造を根絶するための新規な手段を絶えず提供することが必要であり、この偽造が信用文書、例えば銀行券又は身分証明書にも影響し得るとすれば、なおさらである。
【0004】
製品、特に信用文書又は身分証明書へのセキュリティの提供の分野において、様々な会社が、身分証明書、ヘルスカード又は運転免許証等のポリカーボネートカード部材に情報を挿入することを可能にし得る、例えばホログラム又はレーザエッチングによって視覚的な認証解決策を提供している。欧州特許出願公開第0 708 935号はこのようにホログラフィーの保護層組立体について記述している。この組立体は、保護ニスによって形成された少なくとも1つの層を有する支持フィルム、回折する微構造を有する反射又は透明層、及び最後に粘着層から構成される。組立体が文書に転写されたなら、前記文書へのセキュリティの提供が得られる。
【0005】
その後、国際公開第2010/086522号において、この方式は、様々な層の分離をより困難にするために穿孔を追加することによって改善された。しかし、組み立ててまたここで穿孔することが必要な複数の部品によって組立体が構成されることが残り、そのことは技術的な制約だけでなく時間及び費用の制約も意味している。
【0006】
情報技術革命とともに、身分証明書又は信用文書へのセキュリティの提供も、チップ等の電子素子の組み込みによって強化され、このようにして偽造をより困難にしている。
【0007】
一般に、製品又は文書は、検出に使用される手段に応じて、3つのセキュリティレベルに分類され得るセキュリティ要素によってセキュリティが与えられる。
【0008】
したがって、レベル1のセキュリティ要素は、五感の少なくとも1つによって、又は対比させるバックグラウンドによって検出することができる要素である。このレベルは、特に、縄編み模様、虹色印刷、ホログラム、光学的に可変なインク、マーカー、変更可能レーザイメージ又は多重レーザイメージ等の光学的可変性デバイスを含んでいる。
【0009】
レベル2のセキュリティ要素は、紫外線ランプ、凸レンズ又は携帯電話フラシュライト等の簡単な設備によって検出することができる要素である。このレベルは、微視的な印刷、蛍光インク、及びまた蛍光繊維又はウエハ等の検出可能要素を含んでいる。
【0010】
最後に、レベル3のセキュリティ要素は、精巧な設備、例えば分光蛍光計又は電子顕微鏡によって検出することができる要素である。このカテゴリーは、特に肉眼では検出できないナノ彫刻された顔料、生体認証チップ及びまた蛍光マーカーを含んでいる(タガント)。
【0011】
なお、一般に、製品は、ことによると異なるレベルのものであるいくつかのセキュリティ要素を組み込んでもよい。
【0012】
信用文書又は身分証明書の分野において、セキュリティ要素は普通に存在し、これは特にセキュリティスレッドに関係する。
【0013】
一般に市場で利用可能なセキュリティスレッドは、検出の容易さの点から制約を持ち得る、レベル2及び/又はレベル3のセキュリティ要素である。
【0014】
セキュリティスレッドは、セキュリティが与えようとする文書に組み込まれ、いくつかのカテゴリーに分類することができる:
- 日光又は人工光で目に見えるスレッド、
- 日光又は人工光で目に見えて、紫外線、赤外線又はX線の下で蛍光を示すスレッド、
- 日光又は人工光で目に見えないが、紫外線、赤外線又はX線の下で蛍光を示すスレッド。用語「日光又は人工光で目に見えないスレッド」は、蛍光を与える、それらが受けた処理の前に持っていた色と同一の色を、日光又は人工光において有するスレッドを指すものとして理解されなければならない。例えば、これは、白色紙パルプに組み込まれた白っぽいセキュリティスレッドの事例である。これらのスレッドは、その場合、紙と同じ色を有するので、目に見えないか又は識別不可能であるが、しかし、紫外線、赤外線又はX線によって、前記スレッドは、特定色の蛍光を発する。
【0015】
セキュリティスレッドは一般に、染料が表面に組み込まれたスレッドである。欧州特許出願公開第0 169 750号は、例えば、原子番号57~71のランタニドについて記述し、その中にそれぞれ原子番号39及び90のイットリウム及びトリウムが含まれてもよい。ランタニド、イットリウム又はトリウムのルミネッセントキレート化合物は、染色プロセス経由で既に押出され細かく切られたスレッドに組み込まれる。
【0016】
染色プロセスは、溶媒の存在下で染料の浴に材料を浸漬する方法によって行われてもよい。しかしながら、この技法では、材料にコアでセキュリティを直接与えることはできず、性能において制約のある結果となり得る。
【0017】
これを改善するために、染料の組み込みは、特に合成スレッドについて、ポリマーバルクにおいて直接行われてもよい。しかし、材料の形成に関連した制約、特に押出紡糸プロセスにおいて使用される高温は、使用されてもよい蛍光染料の数を劇的に減らす。
【0018】
更により効率的なセキュリティ要素を開発する進行中の必要性を満たすために、信用文書又は身分証明書の直観的、迅速で効率的な制御を得るように、特にレベル2及びレベル3での、しかしまた特に有利にはレベル1での認証を許可することができる選択肢を利用可能にすることは有利である。有利には、代替解決策は、また、セキュリティの提供を可能にするための多くの他の製品、例えばテキスタイル製品に使用することができるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】欧州特許出願公開第0 708 935号
【文献】国際公開第2010/086522号
【文献】欧州特許出願公開第0 169 750号
【非特許文献】
【0020】
【文献】A. Treibs等、Justus Liebigs Ann. Chem. 1968、718、208頁
【文献】Chem. Eur. J.、2009、15、5823頁
【文献】J. Phys. Chem. C、2009、113、11844頁
【文献】Chem. Eur. J.、2011、17、3069頁
【文献】J. Phys. Chem. C、2013、117、5373頁
【文献】A. Loudet等、Chem. Rev. 2007、107、4891-4932頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者等は、本発明者等だけで、容易に検出できて、特に、広い製品系列、身分証明書又は信用文書だけでなくテキスタイル等の製品にもセキュリティを提供するのを可能する、先に記述した3つのセキュリティレベルで検出することができる繊維を製造するために、このように特にセキュリティを提供する分野での使用を可能にする特別の蛍光化合物を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の第1の主題は、蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの蛍光化合物の使用であって、前記蛍光化合物が式I:
【0023】
【化1】
【0024】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、C1~C4アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R5はC1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルであり;
R6及びR6’は、ハロゲン、C1~C4アルキル、C2~C4アルキニル、C2~C4アルケニル及びアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよい]
の化合物から選択される、使用に関する。
【0025】
本発明による蛍光化合物は、蛍光繊維の製造に特に有利であり、合成蛍光繊維及び天然蛍光繊維両方を製造するためのそれらの使用を可能にする良好な特性を有することが分かる。本発明による繊維は、このように有利には身分証明書又は信用文書等の製品又はテキスタイルへのセキュリティの提供を意図することができるが、しかしそれだけではない。具体的には、その識別を保証しセキュリティ提供をそれにするために、それらも他の材料又は製品に組み込まれてもよい。更に、蛍光特性の力で、本発明による繊維は、審美的特性が改善された物体の製造について装飾的、審美的な分野において全く特別な用途を見つけることができる。
【0026】
本発明の第2及び第3の主題は、それぞれ4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの蛍光化合物から合成蛍光繊維及び天然蛍光繊維の製造方法に関する。
【0027】
本発明の第4の主題は、製品へのセキュリティの提供、特に信用文書又は身分証明書、又はテキスタイル製品へのセキュリティの提供のための、先に記述された蛍光繊維の使用に関する。本発明による蛍光繊維は、信用文書、又はテキスタイル製品へのセキュリティの提供のための特に革新的な解決法であり、また特に、迅速で効率的な認証の真の保証となるレベル1のセキュリティを得ることを可能にすることが分かる。
【0028】
本発明の第5の主題は、製品の装飾的及び/又は審美的な要素としての、先に記述された蛍光繊維の使用に関する。具体的には、蛍光特性の力で、本発明による繊維は、それらを組み込む製品に改善された視覚的な特性を与える。
【0029】
最後に、本発明の第6の主題は、下に定義されるような4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの蛍光化合物を含む蛍光繊維に関する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
したがって、本発明の第1の主題は、蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの蛍光化合物の使用であって、前記蛍光化合物が、式I:
【0031】
【化2】
【0032】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、C1~C4アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキシル及びフェロセンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリール基は、アリール、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記アリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよく;
R5はC1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルであり;
R6及びR6’は、ハロゲン、C1~C4アルキル、C2~C4アルキニル、C2~C4アルケニル及びアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよい]
の化合物から選択される、使用に関する。
【0033】
式Iの好ましい蛍光化合物は、R1、R2、R2’、R3、R3’、R4、R4’、R5、R6及びR6’の中からの1個又は複数が以下のように定義されるものである:
R1は、メチル、フルオロ、ヒドロキシル、アセチル及びメタクリレートから、好ましくはメチル、フルオロ、ヒドロキシル及びアセチルから、より好ましくはメチル又はフルオロから選択される1個又は複数の基で置換されたフェニルであり;
R2及びR2’は、水素及びメチルから独立して選択され;
R3及びR3’ は、水素、C1~C3アルキル、ビニル、アリール、ヘテロアリール、アダマンチルから独立して選択され、前記ビニル及びアリールは、フェニル、C1~C2アルキルから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記フェニルは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、ブロモ、ニトロ、ジメチルアミン、好ましくは水素、メチル、エチル、n-プロピル、ビニル、アリール、ヘテロアリール、アダマンチルから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記ビニル及びアリールは、フェニル、C1~C2アルキルから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記フェニルは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、ブロモ、ニトロ、ジメチルアミンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、より好ましくは、R3及びR3’は、エチル、n-プロピル、メチル、ビニル、フェニル、フェナントリル、ナフチル、ピレニル、チオフェニル、ベンゾフリルから独立して選択され、前記ビニル、アリール及びナフチルは、1個又は複数のメチル、ヒドロキシル、ブロモ、ニトロ及びジメチルアミノで置換されていてもよく;
R4及びR4’は、メチル、ビニル、アリール、ヘテロアリール、アダマンチルから独立して選択され、前記ビニル及びアリールは、フェニル、C1~C2アルキルから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、前記フェニルは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、ブロモ、ニトロ、ジメチルアミンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、好ましくは、R4及びR4’は、メチル、ビニル、フェニル、フェナントリル、ナフチル、ピレニル、チオフェニル、ベンゾフリルから独立して選択され、前記ビニル、アリール及びナフチルは、1個又は複数のメチル、ヒドロキシル、ブロモ、ニトロ及びジメチルアミノで置換されていてもよく;
R5はメチル又はエテニルであり;
R6及びR6’は、フルオロ、C1~C4アルキル、C2~C4アルキニル、C2~C4アルケニル又はアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシル、R5COO-及びハロゲンから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく;好ましくは、R6及びR6’はフルオロである。
【0034】
【表1A】
【0035】
【表1B】
【0036】
【表1C】
【0037】
【表1D】
【0038】
【表1E】
【0039】
【表1F】
【0040】
本発明において、用語「蛍光繊維」は、特別の化合物の導入によって、前記化合物がない状態においては得ることができないセキュリティの提供に特に有利な特異性を有する。典型的には、本発明との関連で特異性は特に蛍光に関係がある。
【0041】
「蛍光化合物」及び「4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物」という用語は、文脈が逆に推定できる場合以外は、同意語と見なされる。
【0042】
本発明において使用される場合、用語「繊維」は、「フィラメント」及び「ヤーン」という用語と同義であり、したがって、連続若しくは不連続のモノフィラメント又は撚りがなく絡み合っていないベースヤーンであるマルチフィラメントを含む。蛍光ヤーン又は蛍光繊維は、したがって交換可能な語である。
【0043】
本発明において、用語「製品」は、身分証明書又は信用文書だけでなく、繊維、例えばテキスタイル製品又はレザークラフト用品を特に含んでもよい任意の製品も意味する。好ましくは、本発明によれば、製品とは、身分証明書又は信用文書、又はテキスタイル製品である。
【0044】
また一般に、本発明において、不定冠詞「a」は、文脈が逆(1つの又は「ただ1つの」)を示す場合を除き、総称複数(「少なくとも1つの」又は「1個又は複数」を意味する)と見なされるべきである。したがって、例えば、本発明は、蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物の使用に関すると上に述べられる場合、4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの1種又は複数の化合物が使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0045】
本発明において使用される蛍光化合物の記述について、他の方法で示されない限り、使用される用語及び表現は、下記の定義に従って解釈されなければならない。
【0046】
用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。好ましいハロゲン基はフルオロ及びブロモであり、特にフルオロが好ましい。
【0047】
用語「アルキル」は、式CnH2n+1[式中、nは1以上の整数である]の直鎖状又は分岐炭水基を意味する。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分岐C1~C6アルキル基である。
【0048】
用語「アルケニル」は、1個又は複数の炭素-炭素二重結合を含む直鎖状又は分岐不飽和アルキル基を意味する。適切なアルケニル基は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、更により優先的には2又は3個の炭素原子を含む。アルケニル基の限定されない例は、エテニル(ビニル)、2-プロペニル(アリル)、2-ブテニル及び3-ブテニル、エテニルであり、2-プロペニルが好ましい。
【0049】
用語「アルキニル」は、1個又は複数の炭素-炭素三重結合を含む直鎖状又は分岐不飽和アルキル基を意味する。適切なアルキニル基は2~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、更により優先的には2又は3個の炭素原子を含む。アルキニル基の限定されない例は、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル及び3-ブチニル、エチニルであり、2-プロピニルが好ましい。
【0050】
用語「シクロアルキル」は、単独で又は別の基の一部として、3~12個の炭素原子、特に5~10個の炭素原子、とりわけ6~10個の炭素原子を含む、飽和の単環式、二環式、三環式炭化水素基を意味する。適切なシクロアルキル基は、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル及びアダマンチル、特にシクロヘキシル及びアダマンチルを含むがこれらに限定されない。好ましいシクロアルキル基は、シクロヘキシル、1-アダマンチル及び2-アダマンチルを含む。
【0051】
用語「アリール」は、芳香族ポリ不飽和炭化水素基を意味し、それは単環式(例えばフェニル)又は、多環式(例えばナフチル、アントラセニル、フェナントリル又はピレニル)である。好ましいアリール基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル及びピレニルを含む。
【0052】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の炭素原子が、酸素、窒素若しくは硫黄原子、又は-NHと置き換えられた、5~12個の炭素原子を含む芳香環であって、その窒素及び硫黄原子は酸化されていてもよく、その窒素原子は四級化されていてもよい芳香環、又は、各々典型的には5又は6個の原子を含みその少なくとも1つの環が芳香族である、2~3つの縮合環を含む環系であって、その少なくとも1つの芳香環の少なくとも1個の炭素原子が、酸素、窒素若しくは硫黄原子、又は-NHと置き換えられ、その窒素及び硫黄原子は酸化されていてもよく、その窒素原子は四級化されていてもよい環系を意味する。ヘテロアリール基の例には、フリル、チオフェニル、ピロリル、ピリジル及びベンゾフリルが挙げられる。
【0053】
4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物は蛍光染料であり、その最初の合成は、1968年(A. Treibs等、Justus Liebigs Ann. Chem. 1968、718、208頁)に公開された。その時以来、他のいくつかの合成が公開され(例えば: Chem. Eur. J.、2009、15、5823頁; J. Phys. Chem. C、2009、113、11844頁; Chem. Eur. J.、2011、17、3069頁; J. Phys. Chem. C、2013、117、5373頁)、多種の4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物が、例えばThermoFisher Scientific社(Waltham, MA USA)から市販されている。
【0054】
それらは注目すべき吸収及び発光特性を持ち、特に0.5~1の高い量子収量φを有する、比較的狭い励起及び蛍光発光帯を持ち、そのため高度の蛍光性になっている。更に、これらの化合物は良好な光安定性及びまた本質的な熱安定性を有する。具体的には、本発明による蛍光化合物は、一般に約300℃の温度まで安定である。この本質的な熱安定性によって、これらの蛍光化合物は、溶融形態のポリマーマトリクスに容易に組み込むことができ、あらゆる予想に反して、吸収及び蛍光発光での性能品質はポリマーマトリクスの中への組み込みによって害されない。
【0055】
蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物の使用は、特に注目すべきである。具体的には、このようにして得られた蛍光繊維には多くの応用分野、特にセキュリティ応用分野があり得る。
【0056】
有利には、蛍光繊維は製品へのセキュリティの提供に使用される。したがって、本発明による蛍光繊維の助けによってセキュリティが与えられる製品は、前記繊維を含む製品である。その結果、蛍光繊維の存在によって、製品は、吸収される色、及び蛍光繊維に含まれる蛍光化合物の特定の蛍光の独特の組み合わせによって認証することができる。したがって、真正の製品だけが正しい吸収及び蛍光発光特性の両方を持つ。
【0057】
したがって、本発明による蛍光繊維を含む製品は、4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物の唯一の存在によって上文に記述された3つのセキュリティレベルで認証されてもよい。発明者等の知る限りでは、これは、蛍光繊維がセキュリティのそのような多レベルの提供を初めて可能にする。
【0058】
具体的には、4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物はすべて可視範囲の吸収帯を持ち、肉眼によって知覚される色は、吸収される色に対する補色に相当する。例えば、約500-520nmに吸収する化合物は、緑/青に相当するが、肉眼にはオレンジ/赤の色に現われる。この特性は、したがって、レベル1のセキュリティ要素を得ることを可能にする。
【0059】
蛍光特性については、本発明による4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物はすべて、少なくとも紫外線(UV)範囲に励起帯を有し、可視範囲に発光帯を有する。それらは、したがって特に100nm~400nmの間で発するUVランプによって励起することができ、蛍光は、肉眼で検出することができ、レベル2のセキュリティ要素を得ることを可能にする。
【0060】
最後に、発光波長は、単一回路網低解像度分光蛍光計又は蛍光計(フォトダイオード又は光電子増倍管による検出)の助けによって求めることができ、本発明のレベル3のセキュリティによる蛍光繊維を与える。
【0061】
したがって、本発明による蛍光繊維でセキュリティが与えられる製品は、吸収及び蛍光の特性の組み合わせによって3つのレベルで検出できる。したがって、これに関連して、本発明による蛍光繊維は、セキュリティ要素と見なされてもよい。
【0062】
本発明において、認証は、そこに組み込まれる蛍光繊維の検出によって製品の真正なことの立証であることとして理解される。発色又は蛍光が存在するかしないかの検出は、このように考慮中の製品を認証すること又はしないことを可能にする。
【0063】
本発明の第1の実施形態によれば、蛍光化合物は合成蛍光繊維の製造のために使用される。
【0064】
合成繊維は、化合物の合成によって得ることができる合成材料から製造される繊維である。優先的には、合成繊維は本質的にポリマーで構成された繊維である。
【0065】
したがって、本発明において、合成蛍光繊維は、このようにポリマー(先に定義される蛍光化合物を組み込んだ前記ポリマー)で本質的に構成された蛍光繊維であってもよい。
【0066】
合成蛍光繊維の製造のための蛍光化合物の使用は有利であるが、それは、合成繊維の製造に通常使用されるポリマーに容易に前記化合物を組み込むことができ、とりわけ、当業者に知られている紡糸プロセスと完全に互換性をもつからである。
【0067】
用語「組み込まれた」は、1種又は複数の4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物が、全く分散体がなく均一混合物を形成するようにポリマーに密接に統合されることを意味する。ポリマー中への蛍光化合物の統合は、当業者に知られている技法による様々な方法で達成されてもよい。有利には、本発明者等には、組み込みが、ポリマーの性能品質又は実際の蛍光化合物の性能品質のいずれも害さなかったことが分かった。具体的には、本発明者等には、本発明に従って使用される蛍光化合物が、特に安定していて、組み込みプロセスが高温の使用を必要とする場合でさえ、それらがポリマーに組み込まれる場合、劣化しないと分かった。蛍光化合物は、したがって組み込みがポリマーの溶融を可能にする温度への加熱を必要とする場合でさえ、本発明との関連において典型的には310℃に達してもよい温度まで、それらの蛍光特性を維持する。
【0068】
ポリマーへの蛍光化合物の統合のための技法の例として、押出が挙げられる。この技法によれば、ポリマーは、押出に適している、例えば顆粒の形で押出機へ加えられてもよく、蛍光化合物は粉末の形で加えられてもよい。押出機出口では、蛍光化合物を組み込んだポリマーの混合物は、優先的には顆粒又は線材の形で回収される。
【0069】
合成蛍光繊維の製造に使用されるポリマーは、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(塩化ビニル),ポリアミド,ポリアラミド,エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シアノアクリレート、コロホニウム樹脂、松脂、光重合性樹脂又はその混合物から選択されてもよい。ポリマーは優先的に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、熱可塑性ポリウレタン及び光重合性樹脂、より好ましくはポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン及びその混合物から選択される。
【0070】
有利には、使用されるポリマーは、蛍光特性の最適な維持を可能にするようなUV安定化添加剤を含んでいない。
【0071】
この第1の実施形態によれば、したがって、蛍光化合物は、当業者に知られている技法に従って次に繊維を作ることができる均一混合物を得るために、ポリマーに統合されてもよい。
【0072】
具体的には、蛍光化合物がポリマーに統合されるので、得られた混合物は、繊維を得るために従来通りに使用される技法によって形成されてもよく、前記繊維は、ことによると織又は不織であるかについて優位性はない。優先的には、合成蛍光繊維は、溶融紡糸方法によって、押出紡糸プロセスによって製造される。
【0073】
溶融紡糸方法による繊維の製造は、最初に、押出機中でポリマーと蛍光化合物との混合物を溶かすことで構成される。その後、溶融した材料は、圧力下で多重ヘッドで構成された金型を通過する。金型出口では、フィラメントは空冷で延伸され、次いで支持体に巻きつけられる。一般に、サイジング製品が紡糸塔の底部で適用されてもよい。
【0074】
押出紡糸プロセスに従って得られる蛍光繊維の形は、特に金型ヘッドの形によって決定されてもよい。したがって、本発明によれば、合成蛍光繊維には特に円筒、三葉、八葉、中空、又は複式中空の形があってもよい。
【0075】
蛍光繊維の形の修正は、それが巨視的な規模で視覚効果を修正することを可能にするという意味で有利であり得る。具体的には、繊維の一部分の不連続性、又は光の屈折率は、光の透過を、したがって巨視的な規模で観察される効果を修正することができる。
【0076】
特定の実施形態によると、光の屈折率の不連続性は、蛍光化合物の統合に使用されるポリマーのものと異なる組織及び/又は特性を有するポリマー等の化合物を加えることにより達成されてもよい。この特定の実施形態によれば、その添加は、ポリマー及び蛍光化合物から先に得られた混合物と一緒に前記化合物を共押出しすることによって行われてもよく、その後、組立体を続いて金型に通して合成蛍光繊維を製造する。例として、蛍光化合物の統合に使用されたポリマーがポリプロピレンである場合、異なる組織及び/又は異なる特性を有するポリマーは、ポリカーボネートであってもよい。なおこの特定の実施形態によれば、蛍光化合物の統合に使用されるポリマーのものと異なる組織及び/又は特性を有する前記化合物の添加はまた、先に記述された押出機紡糸機出口で得られる合成蛍光繊維を直接使用して被覆することによって行われてもよい。屈折率の不連続性はまた、合成蛍光繊維中の金属配線等の金属化合物の存在によって達成されてもよい。そのような組立体は、前記金属配線のまわりの本発明による蛍光化合物を統合するポリマーを被覆することにより得ることができる。
【0077】
特定の実施形態によれば、合成蛍光繊維は、それらに特定の特性を与えるように意図される少なくとも1つの後処理を受けてもよい。そのような後処理は、例えばコーティング処理、汚れ耐性処理、耐火性処理又は仕上げ塗りであってもよい。
【0078】
本発明によって製造される合成蛍光繊維は、それらの番手を特徴とすることができ、その単位はTexであり、前記番手は繊維の1キロメーター当たりグラムの繊維の質量に相当する。2つのパラメーター、すなわち金型を出る材料の量を制御する押出ポンプの供給量及び様々な延伸ボビンの回転速度が、繊維の番手に影響を及ぼし得る。
【0079】
繊維の一次元質量(linear mass)(μ)は、押出機紡績機の特性、及び下式:
μ = ((dp.t.Vp)/Vs)×10000
[式中、一次元質量μはdtexで表現され、dpは溶解したポリマーの密度(g/cm3)、tはポンプの回転数、Vpはポンプの容積、Vsは最後の延伸ロールの速度(m/分)に相当する]
による機械の延伸速度から計算することができる。
【0080】
本発明による蛍光繊維は、0.1~10 000dtexの一次元質量μがあってもよい。したがって、前記蛍光繊維には、100~1000dtexの範囲の一次元質量μ、好ましくは100~700dtexの範囲の一次元質量μ、より好ましくは200~400dtexの範囲の一次元質量μがあってもよい。有利には、当業者は、セキュリティを与えようとする製品に応じて、合成蛍光繊維の一次元質量を適応させることができる。
【0081】
本発明による蛍光繊維の製造のための蛍光化合物の量は、吸光度と蛍光特性の検出を可能にするように適応させる。本発明による蛍光化合物は、それらが非常に少量に存在する場合にさえ特性の検出を可能にすることという利点を有する。
【0082】
第1の実施形態によれば、したがって、蛍光化合物が非常に少量のポリマーに組み込まれる場合でさえ、検出が可能になる。具体的には、ポリマーの全質量に対して0.01質量%~5質量%の範囲の量、優先的には、ポリマーの全質量に対して0.01質量%~2質量の範囲の量、更により優先的には、ポリマーの全質量に対して0.025質量%~0.1質量%の範囲の量の蛍光化合物が、検出に十分である。
【0083】
このように量が少ないので、特により高い濃度、例えば金型ヘッドの汚損で遭遇する実施上の問題の回避という利点を有する。
【0084】
本発明の第2の実施形態によれば、蛍光化合物は、天然蛍光繊維の製造のために使用される。
【0085】
本発明について、用語「天然蛍光繊維」は、先に記述された蛍光化合物の含浸によって蛍光性にされた天然繊維を意味する。
【0086】
本発明による蛍光化合物は、天然蛍光繊維を得るために、当業者に知られている任意の天然繊維を蛍光性にするのに使用されてもよい。天然繊維は、したがって、植物又は動物起原であってもよい。例として、特に綿、亜麻と麻の繊維、又は代替としてサイザル、ケナフ又はココナッツの繊維が挙げられる。
【0087】
本発明による蛍光化合物を使用する含浸による天然蛍光繊維の製造は、当業者に知られている技術によって行われてもよい。
【0088】
特定の実施形態によれば、天然蛍光繊維は、本発明による少なくとも1種の蛍光化合物を含む溶液で天然繊維をコーティングすることにより製造される。前記溶液は、例えば少なくとも1種の蛍光化合物を含み、樹脂を含んでもよい浸漬溶液又はニス浴であってもよい。
【0089】
その溶液は、有機、水性又は水性アルコール系溶液から得ることができる。例として、溶液は、酢酸エチル又はアセトンに基づいてもよい。蛍光化合物は、溶液の全質量に対して0.01質量%~5質量%の範囲の量、優先的には、0.01質量%~2質量%の範囲の量、更により優先的には、溶液の全質量に対して0.025質量%~0.1質量%の範囲の量で前記溶液中に存在する。
【0090】
特定の実施形態によれば、本発明による合成又は天然蛍光繊維は、撚りをかけたヤーンになるように加撚を受けてもよい。当業者に知られている用語によれば、撚りは、Z撚りでもS撚りでもよい。
【0091】
別の特定の実施形態によれば、合成又は天然蛍光繊維は、撚りをかけたマルチフィラメントの形をしていてもよい。
【0092】
別の特定の実施形態によれば、合成又は天然蛍光繊維は、マルチフィラメントの組立体の形をしていてもよい。この実施形態によれば、組立体は、本発明による合成又は天然の蛍光繊維に基づいたマルチフィラメント、及び対照をなすマルチフィラメント、例えば黒色、白色又はメタリックのマルチフィラメントを含んでもよい。なおこの実施形態によれば、組立体は、また、前記蛍光繊維に基づいたいくつかのマルチフィラメントであって、蛍光繊維の製造に使用される蛍光化合物の少なくとも性質が異なるマルチフィラメントを含んでもよい。
【0093】
本発明による合成又は天然蛍光繊維は特に有利であり、蛍光化合物によって、それらは、特に次の光学的効果を含む:
- 傾斜効果又はロッカー効果:この効果は、外部刺激なしで、蛍光化合物の存在によって、蛍光化合物の蛍光発光の方への、繊維の固有の色の変化に相当する。色のこの変化は、繊維、その断面積、及びその組立体の観測角度の関数である(減撚(downtwisting)、被覆等)。普通の観察の下では、知覚される色は、励起のないヤーンの色であるが、傾いた観察の下では、知覚される色は蛍光発光の色である。蛍光化合物の肉眼で知覚される色から、外部機器なしでのその蛍光発光へのこの鋭い色変化は、レベル1のセキュリティを構成する。
- オン/オフ効果:この効果は、特にLED又はUVタイプの光源を用いる蛍光化合物の蛍光の刺激に応える色変化の視覚化に相当する。これはレベル2のセキュリティを構成する。
- 独自のスペクトルの同一性効果:ポリマーマトリクスに含侵又は組み込まれた蛍光化合物は、特に非常に精細な吸収及び蛍光発光帯を有する独自のスペクトルの同一性を有する。したがって、蛍光繊維が文書又は製品に存在する場合、前記文書又は製品はセキュリティが与えられているとされ、また、その場合、分光光度計と分光蛍光計を用いる分析によって、前記文書又は製品の真正性を確実に識別すること可能である。これはレベル3のセキュリティを構成する。
【0094】
本発明による蛍光繊維は、それらの特異性に応じて、先に定義された3つのカテゴリー、すなわち日光又は人工光で目に見える繊維、日光又は人工光で目に見え、かつ紫外線、赤外線若しくはX線の下で蛍光を有する繊維、又はほかに、日光又は人工光で目に見えないが、紫外線、赤外線又はX線の下で蛍光を有する繊維に相当し得る。
【0095】
本発明において使用される蛍光化合物は、当業者に公知の方法に従って合成することができる。特にA. Loudet等の刊行物(Chem. Rev. 2007、107、4891-4932頁)を参照することができる。
【0096】
本発明の第2の主題は、合成蛍光繊維の製造方法であって、下記工程:
- ポリマーを用意する工程と、
- 上記式Iの4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物を用意する工程と、
- 均一混合物を得るように前記化合物を前記ポリマーに組み込む工程と、
- 組み込み工程において得られた均一混合物から蛍光繊維を得る工程と
を含む、製造方法に関する。
【0097】
4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物を組み込むのに適しているポリマーは、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアミド、ポリアラミド、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シアノアクリレート、コロホニウム樹脂剤、松脂、光重合性樹脂又はその混合物から選択されてもよい。優先的には、ポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、熱可塑性ポリウレタン及び 光重合性樹脂、より好ましくはポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン及びその混合物から選択される。
【0098】
蛍光化合物は、有利には、ポリマーへの組み込みに適している形で用意される。したがって、蛍光化合物は、粉末の形で用意されてもよい。
【0099】
前記ポリマーに前記蛍光化合物を組み込む工程は、全く分散体がない均一混合物を得る工程で構成される。この組み込み工程は、特に当業者に知られている方法、例えば押出によって行われてもよい。
【0100】
取り込み工程で得られた混合物から蛍光繊維を得る工程は、繊維の製造のために通常使用される技法によって行われてもよい。したがって、製造は溶融ルートによって行われてもよい。優先的に、製造工程は、押出紡糸プロセスによって溶融ルートによって行われる。押出溶融紡糸プロセスは、最初に押出機中でポリマー及び蛍光化合物の混合物を溶かすことで構成されてもよい。次いで、溶融した材料は多重ヘッドで構成される金型を圧力下で通過する。金型出口では、フィラメントは空冷され、延伸され、次に、支持体に巻きつけられる。一般に、サイジング製品は紡糸塔の底部品に適用されてもよい。
【0101】
本発明による方法の実施の間に、蛍光繊維中の蛍光化合物が、有利にはポリマーの全質量に対して0.01質量%~5質量%の範囲の量、優先的には、ポリマーの全質量に対して0.01質量%~2質量%の範囲の量、更により優先的には、ポリマーの全質量に対して0.025質量%~0.1質量%の範囲の量に相当するように、量は適応させられる。
【0102】
特定の実施形態によれば、本方法は、また合成蛍光繊維に特別の特性を与えるように意図される後処理工程を含んでいてもよい。そのような後処理工程は、例えばコーティング処理、汚れ耐性処理、耐火性処理又は仕上げ塗り工程であってもよい。
【0103】
有利には、合成蛍光繊維は、テキスタイル及び不織布の製造に使用されてもよい。テキスタイルは、特に織るか又は編むことにより得ることができる。不織布は、ある方向に分布した繊維又はランダムに分布した繊維のガーゼ、ウェブ、ラップ又はマットレスから構成された製造品であり、その内部凝集は、機械的、物理的若しくは化学的方法によって又はほかにはこれらの方法の組み合わせによって与えられる。内部凝集の一例は接着結合であってもよく、その結果、不織布のウェブを産出し、前記不織布ウェブは、その後繊維のマットを形成することができる。
【0104】
この実施形態によれば、蛍光繊維は、乾式ルート、溶融ルート、湿式ルート又はフラッシュ紡糸等の当業者に知られている技法に従って不織布に転換されてもよい。例として、乾式ルートによる不織布の形成は、特にカレンダー加工により、又は空気力学(エアレイド(airlaid))プロセスによって行われてもよい。溶融ルートの製造については、それは、押出(スピンボンド技術又はスパンボンド布)、又は押出ブローイング(溶融ブローン)によって行われてもよい。
【0105】
このようにして製造された合成蛍光繊維は、製品、及び特に信用文書及び/又は身分証明書への、また、合成繊維を含んでもよいテキスタイル及びまた任意の製品へのセキュリティ提供に極めて特別の応用を見いだしている。
【0106】
例えば、合成蛍光繊維は、銀行券、パスポート、身分証明書、織布若しくは不織布、又は繊維、例えばレザークラフト用品、カーペット、座席カバーを含んでもよい任意の材料又は製品へのセキュリティ提供のために使用することができる。
【0107】
本発明による合成蛍光繊維はこのように便利であり、それらが保持する蛍光特性(しかしそれだけではないが)によるセキュリティ提供の問題には特に有利である。具体的には、前記蛍光繊維が、それらを含む製品に、特にそれらが織布であろうと不織布であろうと、テキスタイル製品に特別の視覚的な特性を与え得るので、蛍光特性はまた、装飾及び審美を志向する応用分野で開発されてもよい。
【0108】
本発明の第3の主題は、天然蛍光繊維の製造方法であって、下記工程:
- 天然繊維を用意する工程と、
- 上記式Iの4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物を用意する工程と、
- 4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの前記化合物を含む含浸溶液を調製する工程と、
- 前記天然繊維に前記浸漬溶液を含浸する工程と、
- 天然蛍光繊維を回収する工程と
を含む、製造方法に関する。
【0109】
この製造プロセスによれば、天然繊維は当業者に知られている、ことによると植物又は動物起原の天然繊維であってもよい。例として、特に綿、亜麻及び麻繊維、又は代替としてサイザル、ケナフ又はココナッツの繊維が挙げられる。好ましくは、天然繊維は綿繊維である。
【0110】
含浸溶液を調製する工程は、天然繊維に蛍光化合物を含浸することができるように溶液を調製する工程で構成される。含浸溶液は、例えば少なくとも1種の蛍光化合物を含み、また樹脂を含んでもよい浸漬溶液又はニス浴であってもよい。含浸溶液は、有機、水性又は水性アルコール系溶液から得ることができる。例として、溶液は、酢酸エチル又はアセトンに基づいてもよい。
【0111】
蛍光化合物は、溶液の全質量に対して0.01質量%~5質量%の範囲の量、優先的には、0.01質量%~2質量%の範囲の量、更により優先的には、溶液の全質量に対して0.025質量%~0.1質量%の範囲の量で 前記溶液中に存在する。
【0112】
含浸工程は、例えば前もって調製された含浸溶液で天然繊維をコーティングすることにより行われてもよい。このように、コーティングする作業は、1~10分の間であってもよい時間、好ましくは2~5分の間の時間、含浸溶液に天然繊維を浸漬する工程で構成される。
【0113】
含浸工程の後、このようにして得られた天然蛍光繊維は回収され、含浸溶液の完全な乾燥を可能にするために開放大気中で放置されてもよい。
【0114】
特定の実施形態によれば、本方法は、また合成蛍光繊維に特別の特性を与えるように意図される後処理工程を含んでもよい。そのような後処理工程は、例えばコーティング処理、汚れ耐性処理、耐火性処理又は仕上げ塗り工程であってもよい。
【0115】
別の特定の実施形態によれば、天然蛍光繊維は先に記述されたようなテキスタイル及び不織布の製造に使用されてもよい。
【0116】
このようにして製造された天然蛍光繊維は、本発明による4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物の存在のために注目すべき蛍光特性を有し、テキスタイル、又は天然繊維を組み込んでもよいあらゆる製品へのセキュリティ提供に極めて特別の応用が見られる。本発明による天然蛍光繊維は、このように、それらが保持する蛍光特性(しかしそれだけではないが)によるセキュリティ提供の問題には特に有利である。具体的には、天然蛍光繊維が、それらを含む製品に、特にそれらが織布であろうと不織布であろうと無関係に、テキスタイル製品に特別の視覚的な特性を与えるので、蛍光特性はまた、装飾及び審美を志向する応用分野で開発されてもよい。
【0117】
本発明の第4の主題は、製品へのセキュリティ提供のための、特に身分証明書又は信用文書、又はテキスタイルへのセキュリティ提供のための、先に記述されるような蛍光繊維の使用に関する。本発明による蛍光繊維は、前記製品へのセキュリティ提供のための特に革新的な解決法を構成することが分かり、また特に迅速で効率的な認証の真の保証であるレベル1のセキュリティを得ることを可能にする。具体的には、製品は、吸収された色と、蛍光繊維の中に含まれている蛍光化合物の特有の蛍光の独特の組み合わせによって認証することができる。したがって、真正の製品だけが正しい吸収及び蛍光発光特性の両方を持つ。
【0118】
本発明による繊維の使用による製品へのセキュリティの提供は、製品のまさしくその材料へそれらを統合するために、前記蛍光繊維を製造プロセスに加えることにより前記製品の製造時に行われてもよい。代替案によれば、一旦製品が製造されてしまえば、セキュリティの提供も達成されてよく、この場合、蛍光繊維は、例えば前記製品の表面の少なくとも1つに接着結合によって付けられてもよい。
【0119】
本発明の第5の主題は、製品中の装飾的及び/又は審美的な要素として先に述べられた蛍光繊維の使用に関する。具体的には、蛍光特性の力で、本発明による繊維は、それらを組み込む製品に、改善された視覚的な特性を与える。
【0120】
蛍光繊維は、前記蛍光繊維を製造プロセスに加えることによって製品のまさしくその材料へそれらを統合するために、その製造時に製品に加えられてもよい。例えば、テキスタイル製品の場合には、所望の装飾的及び/又は審美的な外観を得るために、蛍光繊維は考慮しているテキスタイルの繊維で織ってあってもよい。
【0121】
代替案によれば、一旦製品が製造されて、繊維が加えられてもよく、また、この場合、蛍光繊維は、例えば前記製品の表面の少なくとも1つに接着結合によって付けられてもよい。
【0122】
最後に、本発明の第6の主題は先に定義された蛍光化合物を含む蛍光繊維に関する。
【0123】
本発明による蛍光繊維は、先に記述された合成蛍光繊維又は天然蛍光繊維であり、特に上記に記述された方法に従って得ることができる。
【0124】
本発明は、続く例の助けによって一層よく理解され、純粋に例証となるように意図され、決して保護範囲を限定するものではない。
【実施例
【0125】
合成蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物の使用
この実施例に関しては、使用するポリマーはポリプロピレンであり、選択する蛍光化合物は、式:C26H33BF2N2の2,8-ジエチル-1,3,5,7-テトラメチル-9-メシチルビピロメテンジフルオロボレートである。
【0126】
【化3】
【0127】
この蛍光化合物は526nmで吸収し、542nmで蛍光発光する。
【0128】
第1の混合物を、蛍光化合物の粉末及びポリプロピレンの顆粒の形で使用して調製する。混合は、Brabender社によって販売され、下記の特性を有するPlasti-Corder(登録商標)押出機によって行う:
- スクリュー直径:25mm
- スクリュー長さ:40D
- 速度範囲:0-150rpm
- 最大トルク:2×90Nm
- 充填部2
- 脱気部1
- 押出温度範囲:190℃~230℃
- 押出圧力:周囲圧力
蛍光化合物粉末の量は、ポリプロピレンの全質量に対して混合物中に0.5質量%の量が得られるように調節する。
【0129】
押出機出口では、蛍光化合物を組み込むポリプロピレン顆粒又は線材が得られる。その後、実際の合成蛍光繊維の形成が可能になるように前記顆粒又は線材を押出機紡績機設備へ導入する。
【0130】
押出機紡績機出口でポリプロピレンの全質量に対して0.1質量%の、繊維中の最終量の蛍光化合物を得るために、ポリプロピレンのみからできている顆粒を前記機械の混合機に加える。
【0131】
押出機紡績機の特性を下に示す:
- 機械モデル:Spin boy(登録商標)(Busschaert Engineering社)
- 加熱帯5(押出機->金型:190℃、195℃、200℃、205℃、207℃)
- スクリュー速度:21rpm
- 紡糸ポンプ:50rpm
- 第1のロールの速度:253m/分
- 第2のロールの速度:702m/分
- 第3のロールの速度:15m/分
【0132】
混合機出口では、金型を通して定量ポンプによって溶融した混合物を押し出し、蛍光フィラメントが得られる。その後、速度を増して回転するボビンを通ることにより冷却中にこれらのフィラメントを延伸し、その後、ボビンに巻きつける。
【0133】
紡糸の後、蛍光マルチフィラメントボビンはこのようにして得られる。このボビンは未加工であると言われ、この段階ではマルチフィラメントに撚りはかけない。
【0134】
その後、マルチフィラメントをZ撚り又はS撚りにしてもよく、又は、他のフィラメント、例えば対照をなすフィラメントと組み合わせてもよい。
【0135】
使用するポリプロピレンの密度が0.95g/cm3であるので、この実施例に従って得られるセキュリティスレッドの一次元質量μは、237dtexである。
【0136】
得られた合成蛍光繊維の分光分析は、ポリプロピレン中への蛍光化合物の組み込みが吸収及び蛍光発光の点でその性能品質を害さないことを示す。
【0137】
次いで、合成蛍光繊維は、製品、身分証明書又は信用文書、また、テキスタイルに対するセキュリティの提供に使用されてもよい。前記蛍光繊維はまた、製品中の装飾的及び/又は審美的な要素として使用されてもよい。
【0138】
天然蛍光繊維の製造のための4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンファミリーの化合物の使用
この実施例については、天然繊維は綿繊維であり、選択する蛍光化合物は、式:C26H33BF2N2の2,8-ジエチル-1,3,5,7-テトラメチル-9-メシチルビピロメテンジフルオロボレートである。
【0139】
【化4】
【0140】
この蛍光化合物は526nmで吸収し、542nmで蛍光発光する。
【0141】
綿繊維のコーティングにより天然蛍光繊維を得る。
【0142】
綿繊維を2~5分間含浸溶液中に浸す。この溶液は、この実施例によれば酢酸エチルに基づいたニス浴であって、ニス浴の全質量に対して、15%の樹脂及び濃度0.1質量%の蛍光化合物を含む。含浸溶液の調製については、酢酸エチルはアセトンと置き換えてもよい。
【0143】
その後、天然繊維を取り除き、乾かすために約5分間室温で放置して溶媒を蒸発させ、その後、ボビンにそれを巻きつけることができる。
【0144】
当業者の用語によれば、浸漬による天然繊維のコーティングを、巻いていない天然繊維を浸漬浴へ通すことによって、連続的に行ってもよい。その後、コーティング層の厚さは主として浸す時間及び繊維の出口速度に依存する。
【0145】
得られた天然蛍光繊維の分光分析は、繊維中への蛍光化合物の含浸が吸収及び蛍光発光の点でその性能品質を害さないことを示す。
【0146】
次いで、天然蛍光繊維は、製品、信用文書又は身分証明書、また、テキスタイルに対するセキュリティの提供に使用されてもよい。前記蛍光繊維はまた、製品中の装飾的及び/又は審美的な要素として使用されてもよい。