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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】飛行装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 17/80 20060101AFI20221017BHJP
   B64D 17/62 20060101ALI20221017BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B64D17/80
B64D17/62
B64C39/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019564731
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2019000488
(87)【国際公開番号】W WO2019139073
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018002535
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】持田 佳広
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205707374(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0019672(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106986(US,A1)
【文献】米国特許第05673873(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102582836(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105691606(CN,A)
【文献】再公表特許第2018/190319(JP,A1)
【文献】特開2018-193055(JP,A)
【文献】特表2020-508924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/80
B64D 17/62
B64D 19/00
B64D 25/00
B64C 3/56
B64C 27/00
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体ユニットと、
前記機体ユニットに接続され、揚力を発生する揚力発生部と、
前記揚力発生部を制御する飛行制御部と、
飛行時の異常を検出する異常検出部と、
パラシュートと、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部とを有するパラシュート装置と、
前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記パラシュートを前記パラシュート収容部から射出する落下制御部と、を備え
前記パラシュート装置は、前記パラシュートに連結された小型飛翔体を更に有し、
前記落下制御部は、前記小型飛翔体を前記パラシュート収容部から射出して、前記パラシュートを射出し、
前記パラシュート装置を複数有し、
前記落下制御部は、複数の前記パラシュート装置のそれぞれの前記小型飛翔体を、時間をずらして射出し、
前記落下制御部は、前記機体ユニットの地上から最も遠い位置に配置された前記パラシュート装置の前記小型飛翔体を優先して射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項2】
請求項に記載の飛行装置において、
前記機体ユニットの傾きを検出するセンサ部を更に備え、
前記落下制御部は、前記センサ部の検出結果に基づいて、前記小型飛翔体が射出されていない前記パラシュート装置のうち前記機体ユニットの地上から最も遠い位置に配置された前記パラシュート装置を選択し、選択した前記パラシュート装置の前記小型飛翔体を最初に射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項3】
請求項に記載の飛行装置において、
前記落下制御部は、最初に前記小型飛翔体を射出した前記パラシュート装置と前記機体ユニットの中心部を挟んで対向して配置された前記パラシュート装置の前記小型飛翔体を、前記最初に射出した前記小型飛翔体の次に射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項4】
請求項に記載の飛行装置において、
前記落下制御部は、最初に前記小型飛翔体を射出した前記パラシュート装置と隣り合う前記パラシュート装置から一方向に順次、前記小型飛翔体を射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項5】
請求項に記載の飛行装置において、
前記落下制御部は、2番目に前記小型飛翔体を射出した前記パラシュート装置と隣り合う前記パラシュート装置から一方向に順次、前記小型飛翔体を射出する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項6】
請求項乃至の何れか一項に記載の飛行装置において、
開閉自在な抵抗翼を更に備え、
前記落下制御部は、前記異常検出部による異常の検出に応じて前記抵抗翼を開く
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項7】
請求項に記載の飛行装置において、
前記抵抗翼は、前記落下制御部からの制御により開閉自在である
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項8】
請求項乃至の何れか一項に記載の飛行装置において、
前記小型飛翔体は、
ガスを発生させるガス発生装置と、
前記ガス発生装置を収容するとともに、前記ガス発生装置から発生した前記ガスを放出する複数のガス放出孔が形成されたガス放出室を内部に有するハウジングと、
前記ハウジングの前記ガス放出孔にそれぞれ連結され、前記ハウジングの軸線に対して傾斜して設けられた複数のノズルと、を有する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項9】
機体ユニットと、
前記機体ユニットに接続され、揚力を発生する揚力発生部と、
前記揚力発生部を制御する飛行制御部と、
飛行時の異常を検出する異常検出部と、
パラシュートと、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部とを有するパラシュート装置と、
前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記パラシュートを前記パラシュート収容部から射出する落下制御部と、を備え、
前記パラシュート装置は、前記パラシュートに連結された小型飛翔体を更に有し、
前記落下制御部は、前記小型飛翔体を前記パラシュート収容部から射出して、前記パラシュートを射出し、
前記小型飛翔体は、
ガスを発生させるガス発生装置と、
前記ガス発生装置を収容するとともに、前記ガス発生装置から発生した前記ガスを放出する複数のガス放出孔が形成されたガス放出室を内部に有するハウジングと、
前記ハウジングの前記ガス放出孔にそれぞれ連結され、前記ハウジングの軸線に対して傾斜して設けられた複数のノズルと、を有する
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の飛行装置において、
前記パラシュートは、
傘体と、
前記傘体と前記機体ユニットとを連結する吊索と、
前記傘体において、前記傘体の頂点部と前記傘体の縁部との間に延在する棒状の弾性部材と、を含む
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項11】
請求項10に記載の飛行装置において、
前記パラシュート装置は、
前記小型飛翔体と前記傘体とを連結するワイヤと、
前記傘体の展開を制御する開傘制御装置と、を更に含み、
前記開傘制御装置は、前記ワイヤの引張力が所定レベルより低い状態において前記弾性部材に圧縮荷重を加えて変形させ、前記ワイヤの引張力が所定レベルを超えた場合に、前記弾性部材の圧縮荷重を取り除く
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の飛行装置において、
報知装置を更に備え、
前記落下制御部は、前記異常検出部による異常の検出に応じて前記報知装置を制御して、危険な状態であることを外部に報知する
ことを特徴とする飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行装置に関し、例えば、遠隔操作および自律飛行が可能な、人が搭乗しないマルチロータの回転翼機型の飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作および自律飛行が可能な、人が搭乗しないマルチロータの回転翼機型の飛行装置(以下、単に「回転翼機」とも称する。)の産業分野への実用化が検討されている。例えば、運送業において、回転翼機(所謂ドローン)による荷物の輸送が検討されている。
【0003】
輸送用の回転翼機は、GPS(Global Positioning System)信号等によって自己の位置を特定しながら飛行する自立飛行機能を備えている。しかしながら、何らかの原因で回転翼機に異常が発生した場合、自立飛行ができなくなり、回転翼機の落下等の事故が発生するおそれがある。そのため、回転翼機の安全性の向上が望まれている。
【0004】
回転翼機の安全性を向上させる従来技術として、例えば特許文献1に、回転翼機が飛行方向の異常を検出した場合に、自立飛行を停止してユーザの操作による手動飛行に切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-136879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、今後、輸送用の回転翼機は、より大きな荷物を輸送できるように機体の大型化が進むと予想される。例えば、現在検討されている輸送用の回転翼機の最大積載量は30kg程度であるが、積載重量の増大化等の要求から、回転翼機の機体の重量を150kg以上にする必要がある。
【0007】
このような大型の回転翼機が何らかの原因で制御不能に陥って落下した場合、これまでの回転翼機に比べて、人や構造物に甚大な被害を与える虞が高い。そのため、回転翼機の大型化を図る場合には、これまで以上に安全性を重視する必要があると本願発明者は考えた。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、飛行装置の落下時の安全性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係る飛行装置は、機体ユニットと、前記機体ユニットに接続され、揚力を発生する揚力発生部と、前記揚力発生部を制御する飛行制御部と、飛行時の異常を検出する異常検出部と、パラシュートと、前記パラシュートに連結された小型飛翔体と、前記パラシュートと前記小型飛翔体とを収容するパラシュート収容部とを有するパラシュート装置と、前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記小型飛翔体を前記パラシュート収容部から射出する落下制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、飛行装置の落下時の安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る飛行装置の外観を模式的に示す図である。
図2A】実施の形態1に係る飛行装置が備える揚力発生部の個数の一例を示す図である。
図2B】実施の形態1に係る飛行装置が備える揚力発生部の個数の一例を示す図である。
図2C】実施の形態1に係る飛行装置が備える揚力発生部の個数の一例を示す図である。
図2D】実施の形態1に係る飛行装置が備える揚力発生部の個数の一例を示す図である。
図3】実施の形態1に係る揚力発生部の構成を模式的に示す図である。
図4】実施の形態1に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図5A】実施の形態1に係る小型飛翔体の構成を模式的に示す図である。
図5B】実施の形態1に係る小型飛翔体の構成を模式的に示す図である。
図6】パラシュートが開いた状態の実施の形態1に係るパラシュート装置を模式的に示す図である。
図7】実施の形態1に係る飛行装置の機能ブロック図である。
図8A】実施の形態1に係る飛行装置におけるパラシュートの開傘順序の一例を示す図である。
図8B】実施の形態1に係る飛行装置におけるパラシュートの開傘順序の一例を示す図である。
図8C】実施の形態1に係る飛行装置におけるパラシュートの開傘順序の一例を示す図である。
図8D】実施の形態1に係る飛行装置におけるパラシュートの開傘順序の一例を示す図である。
図9】実施の形態1に係る飛行装置による落下準備処理の流れを示すフローチャートである。
図10】パラシュート開傘制御(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。
図11】パラシュートが開いた状態の、実施の形態1に係る飛行装置を模式的に示す図である。
図12A】小型飛翔体の射出時の機体ユニットの状態を模式的に示す図である。
図12B】小型飛翔体の射出時の機体ユニットの状態を模式的に示す図である。
図13】本発明の実施の形態2に係る飛行装置の外観を模式的に示す図である。
図14A】実施の形態2に係る飛行装置の抵抗翼の構成を模式的に示す図である。
図14B】実施の形態2に係る飛行装置の抵抗翼の構成を模式的に示す図である。
図15】実施の形態2に係る飛行装置の機能ブロック図である。
図16】実施の形態2に係る飛行装置による落下準備処理の流れを示すフローチャートである。
図17】パラシュートおよび抵抗翼が開いた状態の、実施の形態2に係る飛行装置を模式的に示す図である。
図18A】第1の変形例に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図18B】パラシュートが開いた状態の、第1の変形例に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図19A】第2の変形例に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図19B】パラシュートが開いた状態の、第2の変形例に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図20A】第2の変形例に係るパラシュート装置の開傘制御装置による開傘制御を説明するための図である。
図20B】第2の変形例に係るパラシュート装置の開傘制御装置による開傘制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る飛行装置(1,1A)は、機体ユニット(2,2A)と、前記機体ユニットに接続され、揚力を発生する揚力発生部(3_1~3_n)と、前記揚力発生部を制御する飛行制御部(14)と、飛行時の異常を検出する異常検出部(15)と、パラシュート(41,41A)と前記パラシュートを収容するパラシュート収容部(42)とを有するパラシュート装置(4,4_1~4_m,4A,4B)と、前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記パラシュートを前記パラシュート収容部から射出する落下制御部(16,16A)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記飛行装置において、前記パラシュート装置は、前記パラシュートに連結された小型飛翔体(40)を更に有し、前記落下制御部は、前記小型飛翔体を前記パラシュート収容部から射出して、前記パラシュートを射出してもよい。
【0015】
〔3〕上記飛行装置において、前記パラシュート収容部を複数有し、前記落下制御部は、複数の前記パラシュート装置のそれぞれの前記小型飛翔体を、時間をずらして射出してもよい。
【0016】
〔4〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、前記機体ユニットの地上から最も遠い位置に配置された前記パラシュート装置の前記小型飛翔体を優先して射出してもよい。
【0017】
〔5〕上記飛行装置において、前記機体ユニットの傾きを検出するセンサ部(12)を更に備え、前記落下制御部は、前記センサ部の検出結果に基づいて、前記小型飛翔体が射出されていない前記パラシュート装置のうち前記機体ユニットの地上から最も遠い位置に配置された前記パラシュート装置を選択し、選択した前記パラシュート装置の前記小型飛翔体を最初に射出してもよい。
【0018】
〔6〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、最初に前記小型飛翔体を射出した前記パラシュート装置と前記機体ユニットの中心部を挟んで対向して配置された前記パラシュート装置の前記小型飛翔体を、前記最初に射出した前記小型飛翔体の次に射出してもよい。
【0019】
〔7〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、最初に前記小型飛翔体を射出した前記パラシュート装置と隣り合う前記パラシュート装置から一方向に順次、前記小型飛翔体を射出してもよい。
【0020】
〔8〕上記飛行装置において、前記落下制御部は、2番目に前記小型飛翔体を射出した前記パラシュート装置と隣り合う前記パラシュート装置から一方向に順次、前記小型飛翔体を射出してもよい。
【0021】
〔9〕上記飛行装置(1A)において、開閉自在な抵抗翼(7)を更に備え、前記落下制御部は、前記異常検出部による異常の検出に応じて前記抵抗翼を開いてもよい。
【0022】
〔10〕上記飛行装置において、前記抵抗翼は、前記落下制御部からの制御により折り畳み可能であってもよい。
【0023】
〔11〕上記飛行装置において、前記小型飛翔体は、ガスを発生させるガス発生装置(401)と、前記ガス発生装置を収容するとともに、前記ガス発生装置から発生した前記ガスを放出する複数のガス放出孔(404)が形成されたガス放出室(402)を内部に有するハウジング(400)と、前記ハウジングの前記ガス放出孔にそれぞれ連結され、前記ハウジングの軸線に対して傾斜して設けられた複数のノズル(405)とを有してもよい。
【0024】
〔12〕上記飛行装置において、前記パラシュート(41A)は、傘体(410)と、前記傘体と前記機体ユニットとを連結する吊索(411)と、前記傘体において、前記傘体の頂点部と前記傘体の縁部との間に延在する棒状の弾性部材(412)と、を含んでもよい。
【0025】
〔13〕上記飛行装置において、前記パラシュート装置(4B)は、前記小型飛翔体と前記傘体とを連結するワイヤ(43)と、前記傘体の展開を制御する開傘制御装置(44)と、を更に含み、前記開傘制御装置は、前記ワイヤの引張力が所定レベルより低い状態において前記弾性部材に圧縮荷重を加えて変形させ、前記ワイヤの引張力が所定レベルを超えた場合に、前記弾性部材の圧縮荷重を取り除いてもよい。
【0026】
〔14〕上記飛行装置において、報知装置(5)を更に備え、前記落下制御部は、前記異常検出部による異常の検出に応じて前記報知装置を制御して、危険な状態であることを外部に報知してもよい。
【0027】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0028】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の実施の形態1に係る飛行装置の外観を模式的に示す図である。
図1に示される飛行装置1は、例えば、3つ以上のロータを搭載したマルチロータの回転翼機型の飛行装置であり、所謂ドローンである。
【0029】
図1に示すように、飛行装置1は、機体ユニット2、揚力発生部3_1~3_n(nは3以上の整数)、パラシュート装置4_1~4_m(mは3以上の整数)、報知装置5、およびアーム部6を備えている。
【0030】
機体ユニット2は、飛行装置1の本体部分であり、後述するように、飛行装置1の飛行を制御するための各種機能部を収容している。なお、図1において、一例として円柱状の機体ユニット2を図示しているが、機体ユニット2の形状は特に制限されない。
【0031】
揚力発生部3_1~3_nは、揚力を発生するロータである。なお、以下の説明において、各揚力発生部3_1~3_nを特に区別しない場合には、単に、「揚力発生部3」と表記する。
【0032】
飛行装置1が備える揚力発生部3の個数は特に制限されないが、3つ以上であることが好ましい。例えば、図2A図2Dに示すように、飛行装置1は、3つの揚力発生部3を備えるトライコプター、4つの揚力発生部3を備えるクワッドコプター、6つの揚力発生部を備えるヘキサコプター、および8つの揚力発生部3を有するオクトコプターの何れであってもよい。
【0033】
なお、図1では、一例として、飛行装置1が4つ(n=4)の揚力発生部3_1~3_4を搭載したクワッドコプターである場合を図示している。
【0034】
図3は、揚力発生部3の構成を模式的に示す図である。
揚力発生部3は、例えば、プロペラ35と、プロペラ35を回転させるモータ31とを筒状の筐体32に収容した構造を有している。図3に示すように、筒状の筐体32の開口部320A,320Bには、プロペラ35との接触を防止するための保護網33が設けられている。保護網33は、例えば金属材料(ステンレス鋼等)から構成されている。
【0035】
アーム部6は、機体ユニット2と各揚力発生部3とを連結するための構造体である。アーム部6は、機体ユニット2から突出して形成されている。各アーム部6の先端には、揚力発生部3がそれぞれ取り付けられている。
【0036】
パラシュート装置4_1~4_mは、飛行装置1の落下時の落下速度を緩やかにするための装置である。以下の説明において、各パラシュート装置4_1~4_mを特に区別しない場合には、単に、「パラシュート装置4」と表記する。
【0037】
飛行装置1が備えるパラシュート装置4の個数は特に制限されないが、落下時の機体の安定性を考慮すると、3つ以上であることが好ましい。例えば、図3に示すように、揚力発生部3と同数のパラシュート装置4を飛行装置1に設けてもよい。
【0038】
なお、図1では、一例として、飛行装置1が4つのパラシュート装置4_1~4_4(m=4)を搭載した場合を図示している。
【0039】
パラシュート装置4_1~4_mは、機体ユニット2の中心部Oを囲む形態で機体ユニット2に設置されている。mが偶数の場合、各パラシュート収容部42は、他の一つのパラシュート収容部42と中心部Oを挟んで互いに対向して配置されていることが好ましい。
例えば、飛行装置1が4つのパラシュート装置4_1~4_4を備えている場合、図1および図2Bに示すように、パラシュート装置4_1とパラシュート装置4_3とは、中心部Oを挟んで互いに対向して配置され、パラシュート装置4_2とパラシュート装置4_4とは、中心部Oを挟んで互いに対向して配置されている。図2Cおよび図2Dに示すように、m=6,8の場合も同様である。
【0040】
図4は、パラシュート装置4の構成を模式的に示す図である。
パラシュート装置4は、パラシュート収容部42、パラシュート41、および小型飛翔体40を有している。
【0041】
パラシュート収容部42は、例えば筒状の金属材料(例えばステンレス鋼)から構成されている。図4に示すように、筒状のパラシュート収容部42の内部には、パラシュート41および小型飛翔体40が収容されている。
【0042】
パラシュート収容部42は、機体ユニット2に設けられている。例えば、各パラシュート収容部42は、それぞれのパラシュート収容部42の軸線が鉛直方向と平行になるように、機体ユニット2に設けられている。パラシュート収容部42が設けられる機体ユニット2上の位置は、機体ユニット2の上面(飛行装置1の飛行時において地面と反対側の面)でもよいし、機体ユニット2の側面でもよい。なお、図1では、一例として、パラシュート収容部42を機体ユニット2の側面に設ける場合を図示している。
【0043】
パラシュート41は、傘体(キャノピー)410と、傘体410と機体ユニット2(パラシュート収容部42)とを連結する吊索411とを含む。傘体410は、ワイヤ43によって小型飛翔体40と連結されている。傘体410は、例えば図4に示すように、折り畳まれた状態でパラシュート収容部42に収容されている。
【0044】
飛行装置1を低速で落下させるために必要な傘体410の直径Dは、例えば下記式(1)によって算出することができる。ここで、mは飛行装置1の総重量、vは飛行装置1の落下速度、ρは空気密度、Cdは抵抗係数である。
【0045】
【数1】
【0046】
例えば、飛行装置1の総重量m=250〔kg〕、抵抗係数Cd=0.9、空気密度ρ=1.3kg/mとしたとき、飛行装置1の落下速度vを5〔m/s〕とするために必要な傘体410の直径Dは、式(1)より、19.5〔m〕と算出される。
【0047】
小型飛翔体40は、パラシュート41をパラシュート収容部42の外部に放出するための装置であり、ガスを噴射することによって推力を得る。
【0048】
図5Aおよび図5Bは、小型飛翔体40の構成を模式的に示す図である。図5Aには、小型飛翔体40の外観を示す斜視図が示され、図5Bには、小型飛翔体40の断面形状が示されている。
図5A図5Bに示すように、小型飛翔体40は、ハウジング400、ガス発生装置401、およびノズル405を有している。
【0049】
ガス発生装置401は、小型飛翔体40をパラシュート収容部42の外部に射出するための推力の基になるガスを発生する装置である。ガス発生装置401は、ガスを発生させる装置であり、例えば、点火薬、ガス発生剤、および点火制御部(図示せず)を有する。
【0050】
点火制御部は、後述する落下制御部16からの点火信号に応じて、点火薬を点火してガス発生剤を化学的に反応させることにより、ガスを発生させる。
【0051】
ハウジング400は、ガス発生装置401を収容する筐体である。例えば、ハウジング400は、全体視ドーム形状を有している。ハウジング400は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)や金属材料等によって構成されている。
【0052】
図5Bに示すように、ハウジング400の内部には、ガス発生装置401から発生したガスの圧力を調整して放出するガス放出室402が形成されている。
ガス放出室402には、ガス発生装置401から発生したガスを導入するガス導入孔403と、導入したガスを放出する複数のガス放出孔404とが形成されている。本実施の形態では、一例として、小型飛翔体40のガス放出室402に3つのガス放出孔404が形成されているものとして説明するが、ガス放出室402に形成されるガス放出孔404の個数に特に制限はない。
【0053】
ノズル405は、ガス放出室402内のガスを外部に噴射するための部品である。ノズル405は、例えば円筒形状を有し、対応するガス放出孔404とそれぞれ連通して設けられている。
【0054】
ノズル405は、ハウジング400の軸線Pに対して傾斜して設けられることが好ましい。すなわち、ノズル405を、各ノズル405の噴射口の軸線Qとハウジング400の軸線Pとが非平行となるように、ハウジング400のガス放出孔404に連通させて設けることが好ましい。
【0055】
例えば、3つのノズル405は、その噴射口の向きが互いに60度ずつずれるように配置されている。
ここで、ノズル405は筒状であればよく、図5A図5Bに示される形状に限定されない。例えば、各ノズル405は円筒を湾曲した形状を有し、その噴射口の向きが互いに60度ずつずれるように配置されていてもよい。
【0056】
小型飛翔体40において、点火制御部が後述する落下制御部16からの点火信号に応じてガス発生剤を点火した場合、ガス発生剤から発生したガスがガス導入孔403を介してガス放出室402に充満する。ガス放出室402内のガスは、圧縮されてガス放出孔404を通してノズル405から外部に放出される。これにより、小型飛翔体40が推力を得て、パラシュート収容部42から外部に射出する。
【0057】
このとき、上述したようにノズル405がハウジング400の軸線Pに対して傾斜して設けられている場合には、ガスがハウジング400の軸線Pに対して斜めに噴射されるので、小型飛翔体40は回転しながら飛翔する。これにより、小型飛翔体40をパラシュート収容部42の軸線方向に直線的に射出することが可能となる。
【0058】
図6は、パラシュート41が開いた状態のパラシュート装置4を模式的に示す図である。
図6に示すように、後述する落下制御部16からの制御により小型飛翔体40がパラシュート収容部42から射出されると、パラシュート41が、ワイヤ43を介して小型飛翔体40によって引っ張られてパラシュート収容部42から射出される。その後、小型飛翔体40によって更に引っ張られたパラシュート41は、畳まれた状態の傘体410の内部に空気が入り込むことによって傘体410が広がる。これにより、パラシュート41が開傘する。
【0059】
報知装置5は、飛行装置1の外部に危険な状態を報知するための装置である。報知装置5は、例えば、LED等から成る光源や、音声発生装置(アンプおよびスピーカ等)を含んで構成されている。報知装置5は、異常検出部15による異常の検出に応じて、飛行装置1が危険な状態であることを光や音声によって外部に報知する。
【0060】
なお、報知装置5は、機体ユニット2の外部に露出していてもよいし、光源からの光やスピーカからの音声を外部に出力可能な形態で機体ユニット2の内部に収容されていてもよい。
【0061】
次に、機体ユニット2に収容されている各機能部について説明する。
図7は、実施の形態1に係る飛行装置1の機能ブロック図である。
同図に示されるように、機体ユニット2は、電源部11、センサ部12、モータ駆動部13_1~13_n(nは2以上の整数)、飛行制御部14、異常検出部15、落下制御部16、通信部17、および記憶部18を含む。
【0062】
これらの機能部のうち、飛行制御部14、異常検出部15、および落下制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等を含むマイクロコントローラ等のプログラム処理装置によるプログラム処理とハードウェアとの協働によって実現される。
【0063】
電源部11は、バッテリ22と電源回路23とを含む。バッテリ22は、例えば二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)である。電源回路23は、バッテリ22の出力電圧に基づいて電源電圧を生成し、上記機能部を実現する各ハードウェアに供給する回路である。電源回路23は、例えば、複数のレギュレータ回路を含み、上記ハードウェア毎に必要な電源電圧を生成する。
【0064】
センサ部12は、飛行装置1の状態を検知する機能部である。センサ部12は、飛行装置1の機体の傾きを検出する。具体的には、センサ部12は、角速度センサ24と、加速度センサ25と、磁気センサ26と、角度算出部27とを有している。
【0065】
角速度センサ24は、角速度(回転速度)を検出するセンサであり、例えば、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて角速度を検出する3軸ジャイロセンサである。
【0066】
加速度センサ25は、加速度を検出するセンサであり、例えば、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて角速度を検出する3軸加速度センサである。
【0067】
磁気センサ26は、地磁気を検出するセンサであり、例えば、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて方位(絶対方向)を検出する3軸地磁気センサ(電子コンパス)である。
【0068】
角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて、飛行装置1の機体の傾きとして、地面(水平方向)に対する機体の角度を算出する。
【0069】
例えば、角度算出部27は、角速度センサ24の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよいし、角速度センサ24および加速度センサ25の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよい。なお、角速度センサ24や加速度センサ25の検出結果を用いた角度の算出方法は、公知の計算式を用いればよい。
【0070】
また、角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて算出した角度を、磁気センサ26の検出結果に基づいて補正してもよい。
【0071】
なお、センサ部12は、上述した角速度センサ24、加速度センサ25、および磁気センサ26に加えて、例えば、気圧センサ、超音波センサ、GPS受信機、およびカメラ等を含んでもよい。
【0072】
通信部17は、送信機やサーバ等の外部装置9と通信を行うための機能部である。通信部17と外部装置9との通信は、例えば、ISMバンド(2.4GHz帯)の無線通信によって実現される。通信部17は、例えば、アンテナおよびRF(Radio Frequency)回路等によって構成されている。
【0073】
通信部17は、外部装置9から飛行装置1の操作情報を受信して飛行制御部14に出力するとともに、センサ部12によって計測された各種の計測データ等を外部装置9へ送信する。また、通信部17は、異常検出部15によって異常が検出された場合に、飛行装置1に異常が発生したことを示す情報を外部装置9に送信する。更に、通信部17は、後述する落下制御処理によって飛行装置1が地上に落下した場合に、飛行装置1が落下したことを示す情報を外部装置9に送信する。
【0074】
モータ駆動部13_1~13_nは、揚力発生部3毎に設けられ、飛行制御部14からの指示に応じて、モータ31を駆動する機能部である。
【0075】
なお、以下の説明において、各モータ駆動部13_1~13_nを特に区別しない場合には、単に、「モータ駆動部13」と表記する。
【0076】
モータ駆動部13は、飛行制御部14から指示された回転数でモータ31が回転するように、モータ31を駆動する。モータ駆動部13は、例えばESC(Electronic Speed Controller)である。
【0077】
飛行制御部14は、飛行装置1が安定して飛行するように揚力発生部3を制御する機能部である。具体的に、飛行制御部14は、通信部17を介して受信した外部装置9からの操作情報(上昇や下降、前進や後退等の指示)と、センサ部12の検出結果とに基づいて、機体が安定した状態で所望の方向に飛行するように、各揚力発生部3のモータ31の適切な回転数を演算し、算出した回転数を各モータ駆動部13に指示する。
【0078】
例えば、飛行制御部14は、風等の外部からの影響で急に機体の姿勢が乱された場合に機体が水平になるように、角速度センサ24の検出結果に基づいて各揚力発生部3のモータ31の適切な回転数を演算し、算出した回転数を各モータ駆動部13に指示する。
【0079】
また、例えば、飛行制御部14は、飛行装置1のホバリング時に飛行装置1のドリフトを防止するように、加速度センサ25の検出結果に基づいて各揚力発生部3のモータ31の適切な回転数を演算し、算出した回転数を各モータ駆動部13に指示する。
【0080】
また、飛行制御部14は、通信部17を介して外部装置9との間でデータの送受信を行う。
【0081】
記憶部18は、飛行装置1の動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部であり、フラッシュメモリおよびROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。
【0082】
記憶部18に記憶される上記パラメータとして、各パラシュート装置4(パラシュート収容部42)の機体ユニット2上の位置を表す座標情報30と、後述する残容量閾値28および傾き閾値29とを例示することができる。
【0083】
異常検出部15は、飛行時の異常を検出する機能部である。具体的に、異常検出部15は、センサ部12の検出結果と、バッテリ22の状態と、揚力発生部3の動作状態とを監視し、飛行装置1が異常状態であるか否かを判定する。
【0084】
ここで、異常状態とは、飛行装置1の自律飛行が不可能になるおそれのある状態を言う。例えば、揚力発生部3が故障したこと、バッテリ22の残容量が所定の閾値よりも低下したこと、および機体(機体ユニット2)が異常に傾いたこと、の少なくとも一つが発生した状態を言う。
【0085】
異常検出部15は、揚力発生部3の故障、例えば、飛行制御部14が指示した回転数でモータ31が回転しないこと、プロペラ35が回転しないこと、およびプロペラ35の破損等を検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0086】
また、異常検出部15は、バッテリ22の残容量が所定の閾値(以下、「残容量閾値」とも称する。)28よりも低下したことを検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
ここで、残容量閾値28は、例えば、飛行制御部14が指示した回転数でモータが回転できなくなる程度の容量値とすればよい。残容量閾値28は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0087】
また、異常検出部15は、飛行装置1の機体の異常な傾きを検出した場合に、飛行装置1が異常であると判定する。例えば、異常検出部15は、角度算出部27によって算出した角度が所定の閾値(以下、「傾き閾値」とも称する。)29を超えている状態が所定期間継続した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0088】
ここで、傾き閾値29は、例えば、飛行装置1が前後方向に移動するときの角度(ピッチ角)や飛行装置1が左右方向に移動するときの角度(ロール角)を予め実験により取得し、それらの角度よりも大きい値に設定すればよい。傾き閾値29は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0089】
落下制御部16は、飛行装置1の落下を制御するための機能部である。具体的に、落下制御部16は、異常検出部15によって飛行装置1が異常状態であると判定された場合に、飛行装置1を安全に落下させるための落下準備処理を実行する。
【0090】
落下制御部16は、落下準備処理として、異常検出部15による異常の検出に応じて報知装置5を制御して、危険な状態であることを外部に報知する。
【0091】
また、落下制御部16は、落下準備処理として、異常検出部15による異常の検出に応じて、モータ駆動部13を制御してモータ31の回転を停止させる。
【0092】
更に、落下制御部16は、落下準備処理として、異常検出部15による異常の検出に応じて、点火を指示する点火信号を射出すべき小型飛翔体40の点火制御部に出力することにより、その小型飛翔体40をパラシュート収容部42から射出してパラシュート41を開く。
【0093】
このとき、落下制御部16は、複数のパラシュート装置4_1~4_mのそれぞれの小型飛翔体40を時間をずらして射出するパラシュート開傘制御を行う。具体的に、落下制御部16は、パラシュート開傘制御として、機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置されたパラシュート装置4の小型飛翔体40を優先して射出する。
【0094】
より具体的には、落下制御部16は、先ず、センサ部12の検出結果に基づいて、小型飛翔体40が射出されていないパラシュート装置4のうち機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置されたパラシュート装置4を選択し、選択したパラシュート装置4の小型飛翔体40を最初に射出する。
【0095】
すなわち、落下制御部16は、記憶部18に記憶された各パラシュート装置4_1~4_mの座標情報30と、角度算出部27によって算出された角度とに基づいて、パラシュート装置4_1~4_mの中から機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置されているパラシュート装置4を選択し、選択したパラシュート装置4に点火信号を出力することにより、そのパラシュート装置4から小型飛翔体40を射出させる。
【0096】
次に、落下制御部16は、最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4の小型飛翔体40を、最初に射出した小型飛翔体40の次に射出する。
【0097】
すなわち、落下制御部16は、記憶部18に記憶された各パラシュート装置4_1~4_mの座標情報30に基づいて、最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4を選択し、選択したパラシュート装置4に点火信号を出力することにより、そのパラシュート装置4から2番目の小型飛翔体40を射出させる。
【0098】
その後、落下制御部16は、射出されていない残りの小型飛翔体40を順次射出する。
例えば、落下制御部16は、2番目に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と隣り合うパラシュート装置4から一方向に順次、小型飛翔体を射出する。
【0099】
より具体的には、落下制御部16は、2番目に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4を起点として、機体ユニット2の上面側から見て右回りまたは左回りの順に、3番目以降に射出する小型飛翔体40を選択して、点火信号を順次出力する。
【0100】
また、2番目の小型飛翔体40を射出する際に、最初に射出した小型飛翔体40を収容するパラシュート収容部42と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート収容部42が存在しない場合には、上述した3番目以降の小型飛翔体40を射出する場合と同様に、直前に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と隣り合うパラシュート装置4から一方向に順次、小型飛翔体40を射出すればよい。
【0101】
図8A図8Dは、実施の形態1に係る飛行装置1におけるパラシュートの開傘順序の一例を示す図である。
同図において、各パラシュート装置4の横に付された丸で囲まれた数字は、そのパラシュート装置4の小型飛翔体40が射出される順番を示している。
【0102】
先ず、第1の例として、図8Aに示すように、例えば3つのパラシュート装置4_1~4_3が設けられているトライコプターにおいて、最初にパラシュート装置4_2の小型飛翔体40が射出された場合を考える。
【0103】
この場合、最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_2と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4が存在しないため、落下制御部16は、最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_2から右回りに小型飛翔体40を順次射出する。すなわち、図8Aに示す例の場合、落下制御部16は、パラシュート装置4_2、パラシュート装置4_3、パラシュート装置4_1の順に小型飛翔体40を射出する。
【0104】
第2の例として、図8Bに示すように、例えば4つのパラシュート装置4_1~4_4が設けられているクワッドコプターにおいて、最初にパラシュート装置4_2の小型飛翔体40が射出された場合を考える。
【0105】
この場合、パラシュート装置4_4が最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_2と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されているため、落下制御部16は、パラシュート装置4_4の小型飛翔体40を2番目に射出する。その後、落下制御部16は、2番目に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_4を起点として、右回りに小型飛翔体40を順次射出する。すなわち、図8Bに示す例の場合、落下制御部16は、パラシュート装置4_2、パラシュート装置4_4、パラシュート装置4_1、パラシュート装置4_3の順に小型飛翔体40を射出する。
【0106】
第3の例として、図8Cに示すように、例えば6つのパラシュート装置4_1~4_6が設けられているヘキサコプターにおいて、最初にパラシュート装置4_3の小型飛翔体40が射出された場合を考える。
【0107】
この場合、パラシュート装置4_6が最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_3と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されているため、落下制御部16は、パラシュート装置4_6の小型飛翔体40を2番目に射出する。その後、落下制御部16は、2番目に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_6を起点として、右回りに小型飛翔体40を順次射出する。すなわち、図8Cに示す例の場合、落下制御部16は、パラシュート装置4_3、パラシュート装置4_6、パラシュート装置4_1、パラシュート装置4_2、パラシュート装置4_4、パラシュート装置4_5の順に小型飛翔体40を射出する。
【0108】
第4の例として、図8Dに示すように、例えば8つのパラシュート装置4_1~4_8が設けられているオクトコプターにおいて、最初にパラシュート装置4_4の小型飛翔体40が射出された場合を考える。
【0109】
この場合、パラシュート装置4_8が最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されているため、落下制御部16は、パラシュート装置4_8の小型飛翔体40を2番目に射出する。その後、落下制御部16は、2番目に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_8を起点として、右回りに小型飛翔体40を順次射出する。すなわち、図8Dに示す例の場合、落下制御部16は、パラシュート装置4_4、パラシュート装置4_8、パラシュート装置4_1、パラシュート装置4_2、パラシュート装置4_3、パラシュート装置4_5、パラシュート装置4_6、パラシュート装置4_7の順に小型飛翔体40を射出する。
【0110】
次に、落下制御部16による落下準備処理の流れについて詳細に説明する。
図9は、実施の形態1に係る飛行装置1による落下準備処理の流れを示すフローチャートである。
【0111】
飛行装置1が飛行している状態において、落下制御部16は、異常検出部15によって異常状態が検出されたか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において、異常検出部15によって異常状態が検出されていない場合には、落下制御部16は、落下準備処理を開始せず、引き続き飛行装置1が安定して飛行するように制御を行いつつ、異常検出部15による異常の検出の有無を監視する。
【0112】
一方、ステップS1において、異常検出部15によって異常状態が検出された場合には、落下制御部16は、落下制御処理を開始する(ステップS2)。例えば、強風によって飛行装置1の機体(機体ユニット2)が傾き閾値29を超えて傾いた状態が所定期間継続した場合、異常検出部15は異常を検出したことを示す信号を落下制御部16に通知する。落下制御部16は、その信号を受信した場合に飛行装置1が落下するおそれがあると判定し、落下制御処理を開始する。
【0113】
落下制御処理において、先ず、落下制御部16は、報知装置5を制御して、飛行装置1が危険な状態であることを外部に報知する(ステップS3)。例えば、落下制御部16は、報知装置5を構成する光源を駆動して点滅する光を発生させる。また、落下制御部16は、報知装置5を構成する音声発生装置を駆動して警告音や退避を促すアナウンスを出力する。
【0114】
次に、落下制御部16は、モータ31を停止する(ステップS4)。具体的に、落下制御部16は、各モータ駆動部13_1~13_nに対してモータ31の停止を指示する。これにより、飛行装置1のモータ31が停止し、プロペラ35の回転が停止する。
【0115】
なお、モータ駆動部13_1~13_nへの指示は、落下制御部16からモータ駆動部13_1~13_nへ直接行ってもよいし、落下制御部16から飛行制御部14を介してモータ駆動部13_1~13_nへ間接的に行ってもよい。
【0116】
次に、落下制御部16は、パラシュート開傘制御を行う(ステップS5)。
図10は、パラシュート開傘制御(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。ここでは、図1の飛行装置1を例にとり、パラシュート開傘制御(ステップS5)の処理の流れについて説明する。
【0117】
ステップS5において、先ず、落下制御部16は、上述した手法により、機体ユニット2の最も地面から遠い位置に配置されたパラシュート装置4を選択し、選択したパラシュート装置4から小型飛翔体40を射出する(ステップS51)。ここでは、図1において、最初にパラシュート装置4_1から小型飛翔体40が射出されたとする。
【0118】
次に、落下制御部16は、記憶部18に記憶された各パラシュート装置4の座標情報30に基づいて、ステップS52で小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4が存在するか否かを判定する(ステップS52)。
【0119】
ステップS52において、ステップS51で小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4が存在しない場合には、後述するステップS54に移る。
【0120】
一方、ステップS52において、ステップS51で小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4が存在する場合には、そのパラシュート装置4から小型飛翔体40を射出する(ステップS53)。
上述の例の場合、パラシュート装置4_3が、ステップS51で小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4_1と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されているので、パラシュート装置4_3から2番目の小型飛翔体40を射出する。
【0121】
次に、落下制御部16は、直前に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と隣り合うパラシュート装置4から順に小型飛翔体40を射出する(ステップS54)。
上述の例の場合、直前のステップS53において、パラシュート装置4_3から2番目の小型飛翔体40を射出しているので、パラシュート装置4_3と隣り合うパラシュート装置4_4から一方向に順次、小型飛翔体40を射出する。この場合、パラシュート装置4_4から3番目の小型飛翔体40を射出し、パラシュート装置4_2から4番目の小型飛翔体40を射出する。
以上の処理手順により、パラシュート開傘制御(ステップS5)が行われる。
【0122】
図11は、パラシュート41が開いた状態の飛行装置1を模式的に示す図である。
例えば、図10のフローで説明した上述の順番で小型飛翔体40が射出された場合、パラシュート装置4_1、パラシュート装置4_3、パラシュート装置4_4、パラシュート装置4_2の順に小型飛翔体40が射出されてパラシュート41が開く。これにより、飛行装置1が地上へ向かってゆっくりと落下する。
【0123】
図9において、パラシュート開傘制御(ステップS5)の後、落下制御部16は、通信部17を介して飛行装置1が落下したことを外部装置9に通知する(ステップS6)。
外部装置9への通知は、落下制御処理の開始(ステップS2)の後であれば、どのタイミングで行ってもよい。例えば、飛行装置1が着陸した後に行ってもよいし、落下制御処理(ステップS2)の開始直後であってもよい。
【0124】
また、落下制御部16は、飛行装置1が落下したことを外部装置9に通知するとき、GPS受信機によって取得した落下場所の位置情報も一緒に、外部装置9に通知してもよい。
以上の手順により、飛行装置1の落下制御処理が行われる。
【0125】
以上、実施の形態1に係る飛行装置1によれば、落下制御部16が、異常検出部15による飛行時の異常の検出に応じて、パラシュート41に連結された小型飛翔体40をパラシュート収容部42から射出するので、飛行装置1の自律飛行が不可能な状態に陥った場合であっても、パラシュート41を開いて飛行装置1をゆっくりと落下させることができる。これにより、飛行装置1の落下時の安全性を向上させることが可能となる。
【0126】
また、実施の形態1に係る飛行装置1によれば、小型飛翔体40によってパラシュート41を牽引するので、パラシュート41を確実にパラシュート収容部42から射出することができる。
【0127】
また、実施の形態1に係る飛行装置1において、小型飛翔体40は、ハウジング400に形成されたガス放出孔404にそれぞれ連結され、ハウジング400の軸線Pに対して傾斜して設けられた複数のノズル405を有している。
【0128】
これによれば、上述したように、小型飛翔体40を回転させながら、パラシュート収容部42の軸線方向に直線的に射出することが可能となる。これにより、パラシュート41をより強い力で牽引することができるので、射出されたパラシュート41をより開き易い状態にすることが可能となる。
【0129】
また、実施の形態1に係る飛行装置1によれば、落下制御部16が、複数のパラシュート装置4のそれぞれの小型飛翔体40を時間をずらして射出するので、飛行装置1の落下速度をより緩やかにする制御が可能となる。
【0130】
具体的には、落下制御部16は、機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置されたパラシュート装置4の小型飛翔体40を優先して射出する。これによれば、パラシュート41が開く前に飛行装置1の機体を水平な状態に近づけることが可能となるので、落下中の飛行装置1の姿勢が安定し、飛行装置1の落下速度をより緩やかにすることが可能となる。
【0131】
より具体的には、落下制御部16は、センサ部12の検出結果に基づいて、小型飛翔体40が射出されていないパラシュート装置4のうち機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置されたパラシュート装置4を選択し、選択したパラシュート装置4の小型飛翔体40を最初に射出する。
【0132】
これによれば、図12Aに示すように、一つ目の小型飛翔体40を発射したときの反動により、小型飛翔体40の射出方向Sと反対方向の力Fが機体ユニット2の地上から最も遠い側に加わる。その結果、図12Bに示すように、機体ユニット2をより水平に近い状態にすることが可能となる。この状態において、二つ目の小型飛翔体40を射出した場合、その小型飛翔体40によって牽引されるパラシュート41を地上に対してより垂直な方向に打ち上げることができるので、二つ目の小型飛翔体40によって牽引されるパラシュート41が空気を孕み易くなり、そのパラシュート41をより早く開かせることが可能となる。その結果、機体ユニット2に加わっている地上に向かう方向の力を軽減し、飛行装置1の落下時間をより長くすることができるので、飛行装置1の落下時の安全性を更に向上させることが可能となる。
【0133】
また、落下制御部16は、最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4の小型飛翔体40を、最初に射出した小型飛翔体40の次に射出する。
【0134】
これによれば、偶数個のパラシュート収容部42が機体ユニット2の中心部Oを囲む形態で配置されている飛行装置において、以下に示す効果が期待できる。
【0135】
先ず、上述したように、最初の小型飛翔体40が射出されたとき、その反動によって機体ユニット2には機体ユニット2が水平になる方向に力が加わる。しかしながら、その力が大きい場合、機体ユニット2が反対側に傾くおそれがある。この場合に、最初に小型飛翔体40を射出したパラシュート装置4と機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート装置4の小型飛翔体40を2番目に射出することにより、2番目の小型飛翔体40の射出の反動によって機体ユニット2を水平な状態に戻す方向に力を加えることができる。これにより、落下中の飛行装置1の姿勢をより安定させることができるので、飛行装置1の落下時間を更に長くすることが可能となる。
このように、機体ユニット2の中心部Oを挟んで対向して配置されている一組のパラシュート収容部42を備えた飛行装置1において、落下時の安全性を更に向上させることが可能となる。
【0136】
また、実施の形態1に係る飛行装置1では、最初に小型飛翔体40を射出するパラシュート装置4を選択する場合に、センサ部12によって検出された機体ユニット2の傾きの情報を用いて機体ユニット2の地上から最も遠い位置に配置されたパラシュート装置4を選択する演算を行い、2番目以降に小型飛翔体40を射出するパラシュート装置4を、直前に射出したパラシュート装置4との位置関係に基づいて決定する。
【0137】
これによれば、落下制御部16(プログラム処理装置)によって実行される、2番目以降に小型飛翔体40を射出するパラシュート装置4を選択するための演算は、最初に小型飛翔体40を射出するパラシュート装置4を選択するための演算よりも負荷が小さくなるので、2番目以降に射出すべきパラシュート装置4をより短時間に決定することができる。これにより、2番目以降の小型飛翔体をより早く射出することが可能となり、全てのパラシュート41が開傘するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0138】
≪実施の形態2≫
図13は、本発明の実施の形態2に係る飛行装置の外観を模式的に示す図である。
図13に示される飛行装置1Aは、機体の落下を制御するための機能部として、パラシュート収容部42に加えて抵抗翼7を更に備える点において、実施の形態1に係る飛行装置1と相違し、その他の点においては、実施の形態2に係る飛行装置1と同様である。
【0139】
図13に示すように、飛行装置1Aは、複数の抵抗翼7を備えている。抵抗翼7は、例えば、各アーム部6の下面(飛行装置1Aの飛行時における地面側)または上面(飛行装置1Aの飛行時の地面と反対側)にそれぞれ設けられている。
【0140】
図14A図14Bは、抵抗翼7の構成を模式的に示す図である。
図14Aには、抵抗翼7が閉じているときの構成が示され、図14Bには、抵抗翼7が開いているときの構成が示されている。
【0141】
図14Aおよび図14Bに示すように、抵抗翼7は、翼部70、支持骨部71、可動骨部72、開閉制御部73、ばね部材74、および支持部材75を有する。
【0142】
支持骨部71は、抵抗翼7の各構成部品を支持するための部品であり、例えば金属材料から構成されている。
【0143】
翼部70は、飛行装置1Aの落下時に空気を受けるための部品である。翼部70は、折り畳み可能に構成されている。翼部70は、例えば、ナイロン生地(例えば、ウルトラシル(登録商標)ナイロン)やセルロースナノファイバー等から構成されている。
【0144】
翼部70は、支持骨部71を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。翼部70の形状は例えば、三角形状を有している。なお、翼部70は、落下時に効率よく空気を受けることができる形状を有していればよく、三角形状に限られない。例えば、翼部70の形状は扇形状であってもよい。翼部70の外周部分を構成する一つの辺は、支持骨部71に固定され、もう一つの辺は可動骨部72に固定されている。
【0145】
可動骨部72は、翼部70を開閉するための部品の一つである。支持部材75は、可動骨部72を支持骨部71に対して回動可能に支持する部品である。
【0146】
ばね部材74は、翼部70を開閉するための部品の一つである。ばね部材74は、例えば圧縮コイルばねである。ばね部材74の延在方向の一端は、支持骨部71に固定され、ばね部材74の延在方向の他端は、可動骨部72に固定されている。ばね部材74は、翼部70を閉じたときに圧縮荷重が加わるように配置されている。
【0147】
開閉制御部73は、翼部70を開閉するための部品の一つである。開閉制御部73は、落下制御部16Aからの制御信号に応じて、翼部70の開閉を制御する。開閉制御部73は、例えばソレノイドである。
【0148】
開閉制御部73は、飛行装置1Aの通常飛行時において、可動骨部72を支持骨部71に近づけた状態で固定する。これにより、翼部70が閉じた状態になるとともに、ばね部材74に圧縮荷重が加わる。
【0149】
開閉制御部73は、飛行装置1Aが飛行中に異常状態となり、落下制御部16Aから抵抗翼7の開翼を指示する制御信号が出力された場合に、可動骨部72の固定を解く。これにより、ばね部材74に圧縮荷重が取り除かれ、ばね部材74の弾性力によって可動骨部72が回動し、翼部70を開くことができる。
【0150】
図15は、実施の形態2に係る飛行装置1Aの機能ブロック図である。
落下制御部16Aは、異常検出部15による異常の検出に応じて、抵抗翼7を開く制御を行う。具体的に、落下制御部16Aは、異常検出部15によって異常が検出された場合に、抵抗翼7の開閉制御部73に対して抵抗翼7の開翼を指示する制御信号を出力する。
【0151】
図16は、実施の形態2に係る飛行装置1Aによる落下準備処理の流れを示すフローチャートである。
同図において、ステップS1からステップS4までの処理手順は、実施の形態1に係る飛行装置1による落下準備処理の流れと同様であるため、説明を省略する。なお、落下準備処理が開始される前の段階では、抵抗翼7の翼部70は、開閉制御部73によって閉じられているものとする。
【0152】
飛行装置1Aによる落下準備処理において、ステップS4でモータ31が停止した後、落下制御部16Aは、パラシュート開傘制御(ステップS5)を実行する。
【0153】
更に、落下制御部16Aは、抵抗翼7を展開する(ステップS5A)。具体的に、落下制御部16Aは、各抵抗翼7の開閉制御部73に対して、抵抗翼7の開翼を指示する制御信号を出力する。これにより、上述の原理により、各抵抗翼7が開く。
【0154】
抵抗翼7の展開は、パラシュート開傘制御(ステップS5)と並行して行ってもよいし、パラシュート開傘制御(ステップS5)を実行する前または後のタイミングで行ってもよい。
【0155】
図17は、パラシュート41および抵抗翼7が開いた状態の、実施の形態2に係る飛行装置1Aを模式的に示す図である。
図17に示すように、飛行装置1Aの落下する際にパラシュート41および抵抗翼7を開くことにより、パラシュート41および抵抗翼7が空気抵抗を受けるので、飛行装置1Aが地上へ向かってゆっくりと落下する。
【0156】
その後、実施の形態1に係る飛行装置1と同様に、落下制御部16Aは、外部装置9に飛行装置1Aが落下したことを通知する(ステップS6)。
【0157】
以上、実施の形態2に係る飛行装置1Aは、パラシュート収容部42に加えて開閉自在な抵抗翼7を更に備え、異常検出部15による異常の検出に応じて抵抗翼7を展開する制御を行う。これによれば、飛行装置1Aの落下中にパラシュート41のみならず抵抗翼7が空気抵抗を受けるので、飛行装置1Aの落下速度を更に遅くすることが可能となり、飛行装置1Aの落下時の安全性を向上させることが可能となる。
【0158】
≪パラシュート装置4の変形例≫
本発明の実施の形態1,2に係る飛行装置1,1Aのパラシュート装置4の変形例を以下に示す。
【0159】
(1)第1の変形例
図18Aおよび図18Bは、第1の変形例に係るパラシュート装置4Aの構成を模式的に示す図である。図18Aには、パラシュート41Aが射出される前のパラシュート装置4Aが示され、図18Bには、パラシュート41Aが射出された後の、パラシュートが開いた状態のパラシュート装置4Aが示されている。
【0160】
第1の変形例に係るパラシュート装置4Aのパラシュート41Aは、実施の形態1に係るパラシュート41と同様の構成要素に加えて、棒状の弾性部材412を更に有している。例えば、弾性部材412は、棒状の金属材料から構成されており、より好ましくは、棒状の形状記憶合金で構成されている。
【0161】
図18Bに示すように、弾性部材412は、傘体410の頂点部414から傘体410の縁部415に向かって設けられている。例えば、弾性部材412は、傘体410において、傘体410を構成するセル同士の継目413に沿って延在している。
【0162】
なお、弾性部材412は、頂点部414と縁部415との間に敷設されていればよく、頂点部414から縁部415までの全体に亘って設けなくてもよい。例えば、弾性部材412は、頂点部414から頂点部414と縁部415との中間点まで延在していてもよい。
【0163】
傘体410に設けられる弾性部材412の本数は、特に制限されないが、少なくとも3本であることが好ましい。3本以上の弾性部材412を設ける場合、各弾性部材412は、傘体10の周方向に沿って等間隔で配置することが好ましい。
【0164】
図18Aに示すように、パラシュート41Aが射出される前は、弾性部材412は、圧縮荷重が加えられた状態でパラシュート収容部42に収容されている。
一方、図18Bに示すように、パラシュート41Aがパラシュート収容部42から射出された場合、弾性部材412に加わっていた圧縮荷重が取り除かれる。これにより、弾性部材412の弾性力が傘体410の展開を補助し、傘体410を速やかに開かせることが可能となる。
【0165】
以上、第1の変形例に係るパラシュート装置4Aのパラシュート41Aによれば、傘体410の頂点部414と傘体410の縁部415との間に延在する棒状の弾性部材412により、傘体410をより早く開くことができる。これにより、飛行装置1Aの落下速度をより緩やかにすることが可能となり、飛行装置1Aの落下時の安全性を向上させることが可能となる。
【0166】
また、傘体410に弾性部材412の少なくとも3本設け、各弾性部材412を傘体10の縁部415の周方向に沿って等間隔で配置することにより、傘体410をより均等に広げることが可能となり、飛行装置1の落下速度を更に緩やかにすることが可能となる。
【0167】
(2)第2の変形例
図19Aおよび図19Bは、第2の変形例に係るパラシュート装置4Bの構成を模式的に示す図である。図19Aには、パラシュート41Bが射出される前のパラシュート装置4Bが示され、図19Bには、パラシュート41Bが射出された後の、パラシュートが開いた状態のパラシュート装置4Bが示されている。
【0168】
第2の変形例に係るパラシュート装置4Bのパラシュート41Bは、上述の第2の変形例に係るパラシュート装置4Aと同様の構成要素に加えて、傘体の展開を制御する開傘制御装置44を更に有している。
【0169】
開傘制御装置44は、小型飛翔体40が射出される前の状態において、すなわちパラシュート41Bがパラシュート収容部42に収容されている状態において、弾性部材412に圧縮荷重を加えて変形させている。具体的には、開傘制御装置44は、小型飛翔体40と傘体410とを連結するワイヤ43の引張力が所定レベルより低い場合には、弾性部材412に圧縮荷重を加えて変形させている。一方、ワイヤ43の引張力が所定レベルを超えた場合には、開傘制御装置44は、弾性部材412の圧縮荷重を取り除く。
【0170】
図20A図20Bは、開傘制御装置44による開傘制御を説明するため図である。
図20Aに示すように、小型飛翔体40の射出直後は、小型飛翔体40と傘体410とを連結するワイヤ43が十分に展張しておらず、ワイヤ43の引張力が所定レベルを超えていない。このとき、開傘制御装置44が弾性部材412に圧縮荷重を加えて変形させているため、傘体410は十分に開かない。
【0171】
その後、小型飛翔体40と傘体410とを連結するワイヤ43が十分に展張し、ワイヤ43の引張力が所定レベルを超えたとき、開傘制御装置44が弾性部材412に加えていた圧縮荷重を取り除く。これより、図20Bに示すように、弾性部材412の弾性力が傘体410の展開を補助し、傘体410を速やかに展開させることが可能となる。
【0172】
以上、第2の変形例に係るパラシュート装置4Bのパラシュート41Bによれば、開傘制御装置44が、小型飛翔体40と傘体410とを連結するワイヤ43の引張力が所定レベルより低い場合に弾性部材412に圧縮荷重を加えて変形させ、ワイヤ43の引張力が所定レベルを超えた場合に弾性部材412の圧縮荷重を取り除く。
【0173】
これによれば、パラシュート41Bがパラシュート収容部42から完全に射出された状態において傘体410を開くことができるので、例えばパラシュート41Bの一部がパラシュート収容部42内に残っているような射出途中の段階で傘体410が広がることを防止することができる。これにより、より確実にパラシュート41Bを開くことが可能となり、飛行装置1Aの落下時の安全性を向上させることが可能となる。
【0174】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0175】
例えば、実施の形態2において、抵抗翼7は、落下制御部16による制御によって開閉自在に構成されていてもよい。すなわち、落下制御部16は、抵抗翼7を開く制御だけでなく、抵抗翼7を閉じる制御も行ってもよい。これによれば、通常の飛行制御における揚力発生部3のプロペラ35の回転制御に加えて、抵抗翼7を開閉させることにより、飛行装置1の飛行状態をより安定させることが可能となる。
【0176】
また、上記実施の形態において、落下制御部16,16Aが、最初の小型飛翔体40を射出する場合のみ、センサ部12の検出結果に基づいて、機体ユニット2,2Aの地上から最も遠い位置に配置されたパラシュート収容部42を決定する処理を行う場合を例示したが、これに限られない。
例えば、落下制御部16,16Aは、小型飛翔体40の射出後に、小型飛翔体40を射出していない残りのパラシュート収容部42の中から地上から最も遠い位置に配置されたパラシュート収容部42を決定する処理を毎回行ってもよい。
【0177】
また、例えば、落下制御部16,16Aは、3番目以降に射出する小型飛翔体40についても、1番目および2番目の小型飛翔体40を決定する手法と同様の手法によって、決定してもよい。
具体的には、落下制御部16,16Aは、記憶部18に記憶された各パラシュート収容部42_1~4_nの座標情報30と、角度算出部27によって算出された角度とに基づいて、最も遠いパラシュート収容部42を決定し、そのパラシュート収容部42の小型飛翔体40を3番目に射出する。次に、落下制御部16,16Aは、座標情報30に基づいて、3番目に小型飛翔体40を射出したパラシュート収容部42と中心部Oを挟んで対向して配置されたパラシュート収容部42を選択し、そのパラシュート収容部42の小型飛翔体40を4番目に射出する。
【0178】
また、上記実施の形態において、通常状態での飛行を制御するための機能部としての飛行制御部14等と、異常発生時の落下制御を行うための機能部としての異常検出部15、落下制御部16、および記憶部18とが同一のバッテリ22からの電源供給によって動作する場合を例示したが、これに限られない。例えば、通常状態での飛行を制御するための機能部用のバッテリと、異常発生時の落下制御を行うための機能部用のバッテリとをそれぞれ別個に用意してもよい。これによれば、通常状態での飛行を制御するための機能部用のバッテリに異常が発生して電源供給が行えなくなった場合であっても、落下制御処理を実行することが可能となる。
【0179】
また、異常発生時の落下制御を行うための機能部は、上述した2つのバッテリからの電源供給が選択できるように構成されていてもよい。これによれば、一方のバッテリに異常が発生した場合でも他方のバッテリから電源供給を受けることができるので、落下制御処理を確実に実行することが可能となる。
【0180】
また、上記実施の形態において、機体ユニット2,2Aの下面にエアバッグなどの衝撃緩衝部材を設けてもよい。これによれば、飛行装置1,1Aの落下時の安全性を更に向上させることができる。
【0181】
また、上記実施の形態において、小型飛翔体40は、上述したガスを噴射する構造体ではなく、ドローグガン方式で射出される球体であってもよい。
【0182】
また、上記実施の形態では、小型飛翔体40が3つのノズル405を有する場合を例示したが、4つ以上のノズルを有していてもよい。例えば、小型飛翔体40が4つのノズル405を有し、その噴射口の向きが互いに90度(N角形の内角の和をNで除した値)ずつずれるように配置されていてもよいし、小型飛翔体40が5つのノズル405を有し、その噴射口の向きが互いに108度ずつずれるように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0183】
1,1A・・・飛行装置、2,2A・・・機体ユニット、3・・・揚力発生部、4,4A,4B・・・パラシュート装置、5・・・報知装置、6・・・アーム部、7・・・抵抗翼、9・・・外部装置、10・・・傘体、11・・・電源部、12・・・センサ部、13・・・モータ駆動部、14・・・飛行制御部、15・・・異常検出部、16,16A・・・落下制御部、17・・・通信部、18・・・記憶部、22・・・バッテリ、23・・・電源回路、24・・・角速度センサ、25・・・加速度センサ、26・・・磁気センサ、27・・・角度算出部、28・・・残容量閾値、29・・・傾き閾値、30・・・座標情報、31・・・モータ、32・・・筐体、33・・・保護網、35・・・プロペラ、40・・・小型飛翔体、41,41,41B・・・パラシュート、42・・・パラシュート収容部、43・・・ワイヤ、44・・・開傘制御装置、70・・・翼部、71・・・支持骨部、72・・・可動骨部、73・・・開閉制御部、74・・・ばね部材、75・・・支持部材、320A,320B・・・開口部、400・・・ハウジング、401・・・ガス発生装置、402・・・ガス放出室、403・・・ガス導入孔、404・・・ガス放出孔、405・・・ノズル、410・・・傘体(キャノピー)、411・・・吊索、412・・・弾性部材、413・・・継目、414・・・頂点部、415・・・縁部、O・・・中心部、P・・・軸線、Q・・・軸線。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B