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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】尿石除去及び防止用薬剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/26 20060101AFI20221017BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20221017BHJP
   C11D 17/00 20060101ALI20221017BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20221017BHJP
   C02F 5/08 20060101ALI20221017BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C11D7/26
C11D7/08
C11D17/00
C11D17/06
C02F5/08 C
C02F5/10 610A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019569070
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002338
(87)【国際公開番号】W WO2019151119
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2018018439
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】亀ヶ谷 直幸
(72)【発明者】
【氏名】笠原 富規
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-094695(JP,A)
【文献】特開平07-026300(JP,A)
【文献】特開平07-109499(JP,A)
【文献】特開2008-013611(JP,A)
【文献】特開平08-206688(JP,A)
【文献】特開平08-081695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
C02F 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1層、及び使用時には第1層よりも下側にあり、スルファミン酸を60~100質量%含有する第2層の少なくとも2層からなり、使用中に、第2層が完全に崩壊又は溶解した時点で第1層の少なくとも一部が残存する、固形のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤。
【請求項2】
請求項に記載のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤を、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器に収納してなる、トイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット。
【請求項3】
固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1剤及びスルファミン酸を60~100質量%含有する第2剤の少なくとも2種の固形剤を含み、使用開始時には第1剤が第2剤の上にあることが直接又は間接に表示され、かつ、使用中に、第2剤が完全に崩壊又は溶解した時点で第1剤の少なくとも一部が残存することを特徴とする、トイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット。
【請求項4】
さらに、第1剤及び第2剤を収納するための容器であって、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器を含むことを特徴とする、請求項に記載のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット。
【請求項5】
固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1剤、及び、スルファミン酸を60~100質量%含有する第2剤の少なくとも2種の固形剤が、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器に、使用開始時には第1剤が第2剤の上にある状態となるように、収納されてなり、使用中に、第2剤が完全に崩壊又は溶解した時点で第1剤の少なくとも一部が残存する、トイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット。
【請求項6】
請求項に記載のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤、又は、少なくとも、固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1剤と、スルファミン酸を60~100質量%含有する第2剤とを、使用開始時には第1剤が第2剤の上にある状態となるようにセットとしたものを、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器に収納し、使用中に、第2層が完全に崩壊又は溶解した時点で第1層の少なくとも一部が残存するようにして、便器内で使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体カルボン酸を主成分とする第1層、及びスルファミン酸を主成分とする第2層の少なくとも2層からなる、尿石除去及び防止用薬剤に関する。本発明の尿石除去及び防止用薬剤は、水洗式又は水洗設備のない男子用トイレに適用することができる。本願は、2018年2月5日に出願された日本国特許出願第2018-018439号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
トイレ排水管、特に、男子用トイレの排水管には、尿の分解により生成するカルシウム系化合物や有機物の混合物が固着した尿石と称されるスケールが生成し、尿および洗浄水の流れを悪化させ、はなはだしい場合には排水管を閉塞し、トイレは使用不能の状態となる。また、尿石中の有機物は、細菌により腐敗し悪臭を発生する。
【0003】
従来、便器およびトイレ排水管に固着したスケールを除去する方法として、薬剤により洗浄する方法が行われている。
スケール除去用薬剤としては、液状の酸を主成分とする製品が多く用いられているが、スルファミン酸を主成分とする製品も用いられている。スルファミン酸は、水易溶性で、カルシウムと難溶性塩を形成せず、比較的強い酸でありながら、金属製品を腐食する心配が少ないという利点がある。しかしスルファミン酸は水溶液では徐々に加水分解するため、液状品は保存性に問題があり、多くは粉末状あるいは固形薬剤として使用されている。
特に、洗浄には手間がかかり、一般のトイレで実施するのは困難であることから、固形薬剤を便器や排水管のトラップ内に設置し、流水等により自動的にスルファミン酸を溶出させ、尿石を除去する方法が注目されている。とはいえ固形薬剤では、固形化のためにはスルファミン酸以外の成分を含む方が、製造や保存に関しては優れている一方、それらの成分によっては、スルファミン酸が尿石除去に十分な濃度で溶出しにくいことがあるという問題があるため、固形薬剤の処方に関して種々検討がなされている。
たとえば、特許文献1には、粒度を調整したスルファミン酸粉末と、ショ糖脂肪酸エステル粉末とから成形されてなるスケール除去剤が記載されている。この剤は、水中で崩壊しないという効果を有し、小便器のトラップ内での使用に適したものである。
【0004】
また別に、スケールを新たに沈着させないことを目的とする、スケール防止方法としては、薬剤を洗浄水配管の途中に注入する方法、固形薬剤を男子用トイレの便器内に設置する方法などが行われている。
たとえば、特許文献2には、固形スケール防止剤に含有し得る固体酸としてスルファミン酸が挙げられている。
しかし、スルファミン酸は水に対する溶解速度が速いため、これをスケール防止剤に使用すると、効果の持続期間が短縮し、一般にスケール防止剤には適していない。スケール防止剤の主成分としては、安息香酸、フマル酸等に代表される、水溶性が高過ぎない有機酸が多く用いられている。なお、スケール防止を主効果とする薬剤がスケール除去剤と称して販売される例もあり、使用に際して注意を要する。
特許文献3には、スルファミン酸とオキシカルボン酸とを必須成分として含有する固形洗浄剤が記載されているが、これはスケール除去剤であって、スケール防止剤として使用することは示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-26300号公報
【文献】特開平8-206688号公報
【文献】特開2000-63890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トイレ及びトイレ排水管の尿石の除去及び防止を目的とする固形薬剤を用いて、洗浄等の煩雑な管理を要せず、トイレ便器内に設置するだけで尿石の除去及び防止の両効果を発揮させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、固体カルボン酸を主要成分とする上層と、スルファミン酸を主要成分とする下層、の少なくとも2層からなる、固形の尿石除去及び防止用薬剤を、便器内に設置すれば、速効的な尿石の除去と、その後の持続的な尿石固着防止を、ともに行うことが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1層、及び使用時には第1層よりも下側にあり、スルファミン酸を60~100質量%含有する第2層の少なくとも2層からなる、固形のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤、
(2)使用中に、第2層が完全に崩壊又は溶解した時点で第1層の少なくとも一部が残存していることを特徴とする、(1)に記載のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤、
(3)(1)又は(2)に記載のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤を、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器に収納してなる、トイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット、
(4)固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1剤及びスルファミン酸を60~100質量%含有する第2剤の少なくとも2種の固形剤を含み、使用開始時には第1剤が第2剤の上にあることが直接又は間接に表示されたことを特徴とする、トイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット、
(5)さらに、第1剤及び第2剤を収納するための容器であって、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器を含むことを特徴とする、(4)に記載のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット、
(6)固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1剤、及び、スルファミン酸を60~100質量%含有する第2剤の少なくとも2種の固形剤が、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器に、使用開始時には第1剤が第2剤の上にある状態となるように、収納されてなる、トイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット、及び、
(7)(1)又は(2)に記載のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤、又は、少なくとも、固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1剤と、スルファミン酸を60~100質量%含有する第2剤とを、使用開始時には第1剤が第2剤の上にある状態となるようにセットとしたものを、非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器に収納して、便器内で使用する方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤は、便器内に設置するだけで、排水管内の尿石を除去し、しかもその後長期にわたり、尿石の固着を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)少なくとも2層からなるトイレ用尿石除去及び防止用薬剤
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤は、固形の薬剤であって、固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する第1層、及び、使用時には第1層よりも下側にあり、スルファミン酸を60~100質量%含有する第2層、の少なくとも2層からなる薬剤である。
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤は、少なくとも使用開始時には、第1層よりも下に第2層がある状態で使用することにより、速効的な尿石の除去と、その後の尿石固着の防止を、ともに行うことができる。
【0011】
第1層は、固体カルボン酸を60~99.9質量%含有する。第1層の固体カルボン酸含有量は、75~99.5質量%であることが好ましい。
固体カルボン酸は、常温で固体であるカルボン酸を指し、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、イソフタル酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、フマル酸、アジピン酸、サリチル酸、プラシジル酸、ヒドロケイ皮酸、安息香酸等が例示される。これらの固体カルボン酸は、1種単独または2種以上の混合物として使用できる。
第1層の成分としては、主成分である固体カルボン酸の他に、賦形剤、結合剤、滑沢剤、溶解速度調整剤、界面活性剤、顔料などの着色料、香料、腐食防止剤、殺菌剤、イオン封鎖剤等の添加剤が使用される。
第1層は、使用時に最上層であることが好ましいが、第1層より上に別の最上層があってもよい。これにより、保存中の破損や吸湿を防止できる可能性がある。この最上層は、水中で第1層よりも容易に崩壊または溶解することが好ましい。例えば、次項に記載の第2層とは別の最下層と同じ成分組成からなる最上層を設けることができ、また最上層と最下層を兼ねて、第1層及び第2層を含む薬剤全体を該成分組成の層で被覆することもできる。
【0012】
第2層は、スルファミン酸を60~100質量%含有する。第2層のスルファミン酸含有量は、80質量%以上であることが好ましい。このスルファミン酸は、水の存在下では早期に崩壊または溶解することが好ましく、特許文献1に記載されているように水中で崩壊しにくい効果を有することはむしろ好ましくない。
第2層の成分としては、主成分であるスルファミン酸の他に、賦形剤、結合剤、滑沢剤、溶解速度調整剤、界面活性剤、顔料などの着色料、香料、腐食防止剤、殺菌剤、イオン封鎖剤等の添加剤を使用することもできる。またこれらの成分を使用せず、スルファミン酸のみで第2層を形成してもよい。
第2層は、使用時に最下層であることが好ましいが、このことは必須ではなく、第2層より下に別の最下層があってもよい。このような最下層により、保存中の破損や吸湿を防止できる可能性がある。ただし、この最下層は水中で第2層よりも容易に崩壊または溶解して、第2層が露出することを必要とする。また例えば、前記の別の最上層と同じ成分組成からなる最下層を設けることができ、また最上層と最下層を兼ねて、第1層及び第2層を含む薬剤全体を該成分組成の層で被覆することもできる。
【0013】
製造を容易にし、あるいは保存性を高める目的で、第1層と第2層との間に、それらとは別の、単一または複数の中間層を設けてもよい。中間層は、水中で、第2層が完全に崩壊又は溶解する時点まで、本発明の薬剤の形状を保持させるために、第2層よりも容易に崩壊または溶解しないものであることが好ましい。
【0014】
第1層と第2層が共にスルファミン酸と固体カルボン酸を同程度の量で含有する薬剤を用いると、早期に全体が崩壊するため尿石除去効果はあってもその後の尿石防止効果がなくなったり、逆に溶解しにくいため尿石除去効果がなくなったりして、尿石除去効果と尿石防止効果を共に発揮させることはできない。
第2層は、第1層より下にあれば、注水時以外でも常に水と接しやすい環境にあるため崩壊しやすく、確実な尿石除去効果が得られる。第1層と第2層が上下逆転していても、尿石除去効果がないわけではないが、スルファミン酸が溶解しにくく、また第2層が崩壊してもそれが直ちに排水管に流入するとは限らないので、確実な尿石除去効果は得にくい。
上述のように、本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤は、まず速効的に尿石除去効果を発揮し、その後長期にわたり尿石防止効果を発揮することを目的とする。従って、使用中には、第2層が完全に崩壊又は溶解した時点でも、第1層の少なくとも一部が残存していることが好ましく、第1層の90体積%以上が残存していることがより好ましい。
以上の効果を発揮するためには、少なくとも使用開始時には、第1層のすべてが第2層よりも上にある必要がある。
【0015】
(製造方法)
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤の製造方法は、特に限定されず、打錠成形、溶融成形等が例示されるが、本発明は位置によって組成を異にする固形薬剤であることから、打錠成形を用いる方法が容易であり好ましい。
打錠成形は、具体的には、
i)打錠用の臼に第2層原末を充填し、その上に第1層原末を充填した後、全層を同時に打錠する方法、
ii)打錠用の臼に第2層原末を充填して打錠後、その上に第1層原末を充填して打錠する方法(層ごとに打錠する方法)等がある。
第1層と第2層の間に中間層を使用する場合、第2層の下にさらに別の層を使用する場合、第1層の上にさらに別の層を使用する場合も、上記i)又はii)に準じて行うことができる。
【0016】
(使用方法、そのための対策)
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤は、本発明の効果を奏するために、第2層より上に第1層がある状態で使用する必要がある。従って、薬剤が非意図的に上下逆転することがないようにする必要がある。「非意図的に上下逆転する」とは、具体的には例えば、使用者が薬剤設置時に誤って上下逆に設置する、あるいは使用中に水流の衝撃等で上下が逆転する、といったことである。
薬剤が非意図的に上下逆転することがないようにする手段としては、本発明の効果を阻害することがない限り特に制限はない。
誤って上下逆に設置することを防ぐためには、薬剤の上下が容易に確認可能であることが好ましい。このためには、例えば、第1層と第2層とを異なる色で着色し、薬剤のパッケージ、説明書等を参照することで容易に上下を確認できるようにする方法がある。
使用中に上下が逆転することを防ぐためには、例えば、薬剤を扁平な形状とする方法がある。
【0017】
さらに、本発明の尿石除去及び防止用薬剤を、非意図的に上下反転することのない形状を有する容器に収納し、そのまま便器内に設置できる状態で供給することが好ましい。具体的には、例えば、該容器を扁平な形状、若しくは便器内の排水口等の構造物に嵌合する形状とし、かつ薬剤も容器内部で非意図的に上下反転することのない形状とすることができる。さらに、容器の上側に美的意匠を施し、あるいは容器の上側を特に突出させて上下逆では安定に設置できないようにする等の方法で、設置者が無意識に上下逆に設置することを防ぐこともできる。
このような容器を使用する場合には、薬剤に上方から注水されるように、少なくとも容器の上部及び下部に単一または複数の貫通孔を有する必要がある。上部の貫通孔は、前記の美的意匠を兼ねてもよい。
【0018】
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤の形状は、以上の効果を奏し得る限り、特に限定されない。特に、上方から見た場合の形状は、製造又は保存上の困難がない限り、上記以外の溶解性等に対する効果や、意匠性を考慮して、どのような形状としてもよい。例えば、円形、楕円形、三角形、矩形等の形状とすることができ、上下方向に貫通孔を設けたドーナツ状とすることもでき、中央部に凹みを設け、あるいは突出部を設ける等、表面に凹凸を設けてもよい。
【0019】
(2)トイレ用尿石除去及び防止用薬剤セット
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤セットは、以下のいずれかの態様を有するものである。
【0020】
(トイレ用尿石除去及び防止用薬剤とその容器とからなるセット)
本態様は、本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤を、前記「使用方法、そのための対策」の項に記載された容器に収納してなるセットである。
【0021】
(トイレ用尿石除去用薬剤とトイレ用尿石防止用薬剤とからなるセット)
本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤と同じ効果は、以上に記載された単一の固形剤でなくても、少なくとも、前記第1層と同じ組成を有するトイレ用尿石防止剤である第1剤と、前記第2層と同じ組成を有するトイレ用尿石除去剤である第2剤との少なくとも2種の固形剤を、使用開始時には第2剤の上に第1剤がある状態で使用することにより、奏することができる。従って、少なくとも前記第1剤と第2剤とを含み、かつ以下(1)及び(2)の少なくともいずれかの特徴を有するセットも、本発明の技術的範囲に属するものである。
(1)その使用方法として、使用開始時には第1剤が第2剤の上にあることが直接又は間接に表示されている。
(2)非意図的に上下反転することのない形状を有し、かつ少なくとも上部及び下部に貫通孔を有する容器に、使用開始時には第1剤が第2剤の上にある状態となるように、第1剤と第2剤の少なくとも2種の固形剤が収納されている。
第1剤及び第2剤の形状は、いずれも「本発明のトイレ用尿石除去及び防止用薬剤の形状」として記載したものと同様に例示されるが、さらに、第2剤が崩壊又は溶解する前に第1剤が滑落することがないよう、扁平な形状を有することが好ましく、また両剤は上方から見て同様の形状及び断面積を有していることが好ましい。使用中には、第2剤が完全に崩壊又は溶解した時点でも、第1剤の少なくとも一部が残存していることが好ましく、第1剤の90体積%以上が残存していることがより好ましい。
なお、もし必要であれば、第1剤と第2剤との間に、それらとは別の、単一または複数の固形剤を挟んだ状態で設置してもよい。これらの別の固形剤は、第1剤及び第2剤の機能に影響しないよう、第1剤より先に完全に崩壊又は溶解するものであって、かつ当該別の固形剤が崩壊又は溶解しても第1剤が滑落することがないものであることが好ましい。
【0022】
前記特徴(1)の表示の方法は特に限定されず、以下のような方法が挙げられる。
・直接的な表示方法:セット中に使用方法の表示があり、それに記載された文字・図等からなる情報を認識した設置者が直ちに使用方法を知ることが可能な表示方法。より具体的には、第1剤及び第2剤を包含する包装材上に前記使用方法が表示されている方法、前記使用方法を表示した書面が第1剤及び第2剤と同梱されている方法がある。
・間接的な表示方法:以上のいずれかと同じ態様の表示が、別の表示を参照すべきことを表示しており、かつ当該別の表示に前記使用方法が直接的に表示されている方法。前記別の表示としては、設置者に配布される説明書、配布又は掲示される広告、一般公衆又は指定された顧客等がアクセス可能なウェブページ、あるいは、セット中に下述のような容器が含まれておらず、使用には当該容器が必要であることが直接的に表示されている場合において、当該容器/当該容器の包装材/若しくは当該容器との同梱物にある使用方法の表示、等が挙げられる。また以上の使用方法の表示は、単に使用方法のみの表示である必要はなく、本セットに関する仕様、成分、注意事項等の説明と共になされていてもよい。
【0023】
(トイレ用尿石除去用薬剤、トイレ用尿石防止用薬剤、及びその容器からなるセット)
本態様は、前記特徴(1)に加え、容器を包含しているセットである。これは前記「トイレ用尿石除去用薬剤とトイレ用尿石防止用薬剤とからなるセット」に、さらに前記「使用方法、そのための対策」の項に記載された容器を加えてなり、前記表示には、さらに使用開始時には第1剤が第2剤の上にある状態になるように、第1剤と第2剤が該容器に収納されることが直接または間接に表示されたセットである。該容器は、非意図的に上下反転することのない形状を有すること、及び、少なくとも上部及び下部に貫通孔を有することが必要である。またそれに加え、第2剤が崩壊又は溶解する前に第1剤が滑落することを防止できる形状及び/又は内径を有していることが好ましい。例えば、容器が、第1剤および第2剤の直径よりもわずかに大きい内径を有するものとすることができる。表示の具体的態様は上記と同様である。
【0024】
(トイレ用尿石除去及び防止用薬剤を容器に収納してなるセット)
本態様は、前記特徴(2)を有するセットである。本態様では、そのまま便器内に設置できる状態で供給することができるため、上記の「使用開始時には第1剤が第2剤の上にあること」の表示は必須ではないが、必要であれば、容器の設置のしかた等の使用方法が直接又は間接に表示されていてもよい。
【実施例
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、下記実施例により何ら限定されるものではない。
【0026】
以下の原末を各層の原料として用いた。「部」は質量部を表す。
(第1層原末)
安息香酸(フレーク) 99.0部
ステアリン酸カルシウム 0.5部
腐食防止剤 0.5部
顔料(クロモフタルブルー) 0.0015部
以上を混合して原末とした。
(第2層原末)
スルファミン酸 100部
【0027】
直径47mmの円形の臼に、第2層原末を50g充填し、充填面を水平にし、その上に第1層原末を20g充填した。これにハンドプレス機の杵で、圧力100kg重をかけ、10秒間保持し、杵を抜いて錠剤を取り出した。
得られた錠剤は、直径47mm、厚み約25mm(第1層約10mm、第2層約15mm)の錠剤であり、第1層のみ着色しており、上下が容易に識別できるものであった。また外観に割れや欠けは認められず、杵と臼への付着も発生しなかった。
【0028】
(試験例)
以上で得られた錠剤1個を、小便器のトラップ蓋上に設置した。その後該小便器に、1プッシュ毎に約1Lの水(約20℃)を通水し、通水後に小便器トラップ内(全水量は約235mL)から水約70mLを採取して、pH測定を行った。以上の操作を反復した。またpH測定後の各採取水に、予め重量を測定した大理石(模擬尿石、試験前の重量0.04~0.08g程度)を室温で3時間水没させた後、該大理石を水道水で1分間洗浄し、50℃の乾燥機で15時間乾燥させ、重量を測定した。試験前後の大理石重量の差から溶解量を算出した。なお、大理石を用いる溶解試験法は、尿石の主成分が大理石と共通する硬質の炭酸カルシウムであることから従来採用されている方法であり、例えば特表2001-518969に記載されている。
以上のpHおよび大理石溶解量は、以下の通りであった。なお、錠剤の外観を観察すると、プッシュ回数13回目では下層が残っていたが、15回目には下層はほぼ消失していた。
【0029】
【表1】
【0030】
以上の結果から、本実施例の錠剤は、プッシュ回数14回目までpHを特に低くすることで尿石除去効果を発揮させ、その後も尿石防止効果が発揮される程度にpHを低くする効果があることが示された。またこれから、第1層と第2層が別の錠剤(各、第1剤と第2剤)であっても、第1剤と第2剤とが同じ上下関係で設置されている限り、同様の効果があることは容易に推定される。