(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタックおよびIC-単セル複合体
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0247 20160101AFI20221017BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20221017BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20221017BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221017BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/0206
H01M8/2465
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
(21)【出願番号】P 2020129958
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 法之
(72)【発明者】
【氏名】八木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山本 享史
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153672(JP,A)
【文献】特開2005-174716(JP,A)
【文献】特開2020-009744(JP,A)
【文献】特開2013-033621(JP,A)
【文献】特開2006-172964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
前記第1の方向に貫通する第1のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第1のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記単セルの周縁部と接続されており、前記空気極に面する空気室と、前記燃料極に面する燃料室とを区画するセル側セパレータと、
前記第1の方向に貫通し、前記燃料室と前記空気室との少なくとも一方を構成するフレーム貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記フレーム貫通孔を取り囲む部分が前記セル側セパレータの外周部と接続されているフレーム部材と、
を備える電気化学反応単位が、前記第1の方向に複数並べて配置される電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第1の特定断面において、
前記セル側セパレータは、
前記第1の方向に直交する第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第1の直線部と、
前記第2の方向における前記第1の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第2の直線部と、
前記第1の直線部と前記第2の直線部とを連結しており、前記第1の直線部と前記第2の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第1の底部を有する第1の連結部と、
を備え、
前記第1の直線部と前記第1の連結部との境界部分、および前記第1の連結部と前記第2の直線部との境界部分が湾曲しており、
以下の式(1)を満たす、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
2.2≦L1/L2≦4.3 ・・・(1)
L1:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L2:前記第2の方向における前記第1の底部の長さ
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の特定断面において、
前記セル側セパレータのうち、前記第1の直線部と前記第1の連結部との境界部分、および前記第1の連結部と前記第2の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記電気化学反応単位は、
前記単セルと前記第1の方向に対向するインターコネクタ部材と、
前記第1の方向に貫通する第2のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第2のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記インターコネクタ部材の周縁部と接続されており、前記空気極に面する空気室と、前記燃料極に面する燃料室とを区画するIC側セパレータと、
を備え、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第2の特定断面において、
前記IC側セパレータは、
前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第3の直線部と、
前記第2の方向における前記第3の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第4の直線部と、
前記第3の直線部と前記第4の直線部とを連結しており、前記第3の直線部と前記第4の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第2の底部を有する第2の連結部と、
を備え、
以下の式(2)を満たす、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
L3/L4≦4.3 ・・・(2)
L3:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L4:前記第2の方向における前記第2の底部の長さ
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第2の特定断面において、
前記IC側セパレータのうち、前記第3の直線部と前記第2の連結部との境界部分、および前記第2の連結部と前記第4の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
前記第1の方向に貫通する第1のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第1のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記単セルの周縁部と接続されているセル側セパレータと、
前記第1の方向に貫通するフレーム貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記フレーム貫通孔を取り囲む部分が前記セル側セパレータの外周部と接続されているフレーム部材と、
を備えるIC-単セル複合体において、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第1の特定断面において、
前記セル側セパレータは、
前記第1の方向に直交する第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第1の直線部と、
前記第2の方向における前記第1の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第2の直線部と、
前記第1の直線部と前記第2の直線部とを連結しており、前記第1の直線部と前記第2の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第1の底部を有する第1の連結部と、
を備え、
前記第1の直線部と前記第1の連結部との境界部分、および前記第1の連結部と前記第2の直線部との境界部分が湾曲しており、
以下の式(1)を満たす、
ことを特徴とするIC-単セル複合体。
2.2≦L1/L2≦4.3 ・・・(1)
L1:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L2:前記第2の方向における前記第1の底部の長さ
【請求項6】
請求項5に記載のIC-単セル複合体において、
前記第1の特定断面において、
前記セル側セパレータのうち、前記第1の直線部と前記第1の連結部との境界部分、および前記第1の連結部と前記第2の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している、
ことを特徴とするIC-単セル複合体。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のIC-単セル複合体において、
さらに、
前記単セルと前記第1の方向に対向するインターコネクタ部材と、
前記第1の方向に貫通する第2のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第2のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記インターコネクタ部材の周縁部と接続されているIC側セパレータと、
を備え、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第2の特定断面において、
前記IC側セパレータは、
前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第3の直線部と、
前記第2の方向における前記第3の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第4の直線部と、
前記第3の直線部と前記第4の直線部とを連結しており、前記第3の直線部と前記第4の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第2の底部を有する第2の連結部と、
を備え、
以下の式(2)を満たす、
ことを特徴とするIC-単セル複合体。
L3/L4≦4.3 ・・・(2)
L3:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L4:前記第2の方向における前記第2の底部の長さ
【請求項8】
請求項7に記載のIC-単セル複合体において、
前記第2の特定断面において、
前記IC側セパレータのうち、前記第3の直線部と前記第2の連結部との境界部分、および前記第2の連結部と前記第4の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している、
ことを特徴とするIC-単セル複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池発電単位(以下、「発電単位」という)は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という)、セル側セパレータと、フレーム部材とを備える。単セルは、電解質層と、電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。また、SOFCは、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に並んで配置された燃料電池スタックの形態で利用される。
【0003】
セル側セパレータには、第1の方向に貫通する貫通孔であるセパレータ貫通孔が形成されている。セル側セパレータのうち、第1の方向視でセパレータ貫通孔を取り囲む部分は、単セルの周縁部と接続されている。フレーム部材には、第1の方向に貫通するフレーム貫通孔が形成されている。フレーム貫通孔は、空気極に面する空気室と、燃料極に面する燃料室とを構成する。フレーム部材のうち、第1の方向視でフレーム貫通孔を取り囲む部分は、セル側セパレータの外周部と接続されている。セル側セパレータは、空気室と燃料室とを区画する。
【0004】
従来の燃料電池スタックとして、燃料電池スタックにおける第1の方向に平行な断面(以下、「特定断面」という。)において、セル側セパレータは、単セルに接続されている第1の部分と、フレーム部材に接続されている第2の部分と、第1の部分と第2の部分とを連結しており、第1の部分と第2の部分との両方に対して第1の方向に突出している連結部とを備え、連結部の全体が湾曲した形状をなしているものが知られている(例えば特許文献1)。この燃料電池スタックにおいては、セル側セパレータが上記の連結部を備えることにより、燃料電池スタックの発電運転時の熱サイクル等によって単セルに荷重がかかった場合に、セル側セパレータの連結部が当該荷重の方向に撓むことにより、単セルに生じる応力を緩和することができ、ひいては単セルに生じる応力に起因する単セルの変形や割れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の燃料電池スタックでは、特定断面(第1の方向に平行な断面)において、セル側セパレータの連結部は、その全体が湾曲した形状をなしている。そのため、この燃料電池スタックでは、例えば燃料電池スタックが熱サイクルに晒されたときに、セル側セパレータの連結部にひずみが蓄積しやすいことにより、セル側セパレータに疲労破壊が生じる恐れがある。
【0007】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の問題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応スタックにも共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、前記第1の方向に複数並べて配置される電気化学反応単位を備える。電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記第1の方向に貫通する第1のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第1のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記単セルの周縁部と接続されており、前記空気極に面する空気室と、前記燃料極に面する燃料室とを区画するセル側セパレータと、前記第1の方向に貫通し、前記燃料室または前記空気室を構成するフレーム貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記フレーム貫通孔を取り囲む部分が前記セル側セパレータの外周部と接続されているフレーム部材と、を備える。前記電気化学反応セルスタックにおける、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第1の特定断面において、前記セル側セパレータは、前記第1の方向に直交する第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第1の直線部と、前記第2の方向における前記第1の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第2の直線部と、前記第1の直線部と前記第2の直線部とを連結しており、前記第1の直線部と前記第2の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第1の底部を有する第1の連結部と、を備え、以下の式(1)を満たす。
L1/L2≦4.3 ・・・(1)
L1:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L2:前記第2の方向における前記第1の底部の長さ
【0011】
本電気化学反応セルスタックでは、式:L1/L2≦4.3を満たしていることにより、式:L1/L2≦4.3を満たしていない構成と比較して、上記電気化学反応セルスタックが熱サイクルに晒されたときに、前記第1の連結部にひずみが蓄積することが抑制される。そのため、本電気化学反応セルスタックによれば、前記第1の連結部にひずみが蓄積することに起因して前記セル側セパレータに疲労破壊が生じることを抑制することができる。
【0012】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の特定断面において、前記セル側セパレータのうち、前記第1の直線部と前記第1の連結部との境界部分、および前記第1の連結部と前記第2の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、このような構成であることにより、上記の各境界部分(前記第1の直線部と前記第1の連結部との境界部分、および前記第1の連結部と前記第2の直線部との境界部分)が屈曲している構成と比較して、上記の各境界部分にひずみが蓄積することが抑制され、ひいては、前記第1の連結部にひずみが蓄積することに起因して前記セル側セパレータに疲労破壊が生じることをより効果的に抑制することができる。
【0013】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、前記電気化学反応単位は、前記単セルと前記第1の方向に対向するインターコネクタ部材と、前記第1の方向に貫通する第2のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第2のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記インターコネクタ部材の周縁部と接続されており、前記空気極に面する空気室と、前記燃料極に面する燃料室とを区画するIC側セパレータと、を備える。前記電気化学反応セルスタックにおける、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第2の特定断面において、前記IC側セパレータは、前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第3の直線部と、前記第2の方向における前記第3の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第4の直線部と、前記第3の直線部と前記第4の直線部とを連結しており、前記第3の直線部と前記第4の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第2の底部を有する第2の連結部と、を備え、以下の式(2)を満たす構成としてもよい。
L3/L4≦4.3 ・・・(2)
L3:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L4:前記第2の方向における前記第2の底部の長さ
【0014】
本電気化学反応セルスタックでは、式:L3/L4≦4.3を満たしていることにより、式:L3/L4≦4.3を満たしていない構成と比較して、上記電気化学反応セルスタックが熱サイクルに晒されたときに、前記第2の連結部にひずみが蓄積することが抑制される。そのため、本電気化学反応セルスタックによれば、前記第2の連結部にひずみが蓄積することに起因して前記IC側セパレータに疲労破壊が生じることを抑制することができる。
【0015】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第2の特定断面において、前記IC側セパレータのうち、前記第3の直線部と前記第2の連結部との境界部分、および前記第2の連結部と前記第4の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、このような構成であることにより、上記の各境界部分(前記第3の直線部と前記第2の連結部との境界部分、および前記第2の連結部と前記第4の直線部との境界部分)が屈曲している構成と比較して、上記の各境界部分にひずみが蓄積することが抑制され、ひいては、前記第2の連結部にひずみが蓄積することに起因して前記IC側セパレータに疲労破壊が生じることをより効果的に抑制することができる。
【0016】
(5)本明細書に開示されるIC-単セル複合体は、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記第1の方向に貫通する第1のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第1のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記単セルの周縁部と接続されているセル側セパレータと、前記第1の方向に貫通するフレーム貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記フレーム貫通孔を取り囲む部分が前記セル側セパレータの外周部と接続されているフレーム部材と、を備えるIC-単セル複合体において、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第1の特定断面において、前記セル側セパレータは、前記第1の方向に直交する第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第1の直線部と、前記第2の方向における前記第1の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第2の直線部と、前記第1の直線部と前記第2の直線部とを連結しており、前記第1の直線部と前記第2の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第1の底部を有する第1の連結部と、を備え、以下の式(1)を満たす。
L1/L2≦4.3 ・・・(1)
L1:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L2:前記第2の方向における前記第1の底部の長さ
【0017】
本IC-単セル複合体によれば、上記(1)に記載されている電気化学反応セルスタックによって得られる効果と同様の効果が得られる。
【0018】
(6)上記IC-単セル複合体において、前記第1の特定断面において、前記セル側セパレータのうち、前記第1の直線部と前記第1の連結部との境界部分、および前記第1の連結部と前記第2の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している構成としてもよい。本IC-単セル複合体によれば、上記(2)に記載されている電気化学反応セルスタックによって得られる効果と同様の効果が得られる。
【0019】
(7)上記IC-単セル複合体において、さらに、前記単セルと前記第1の方向に対向するインターコネクタ部材と、前記第1の方向に貫通する第2のセパレータ貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で前記第2のセパレータ貫通孔を取り囲む部分が前記インターコネクタ部材の周縁部と接続されているIC側セパレータと、を備え、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面である第2の特定断面において、前記IC側セパレータは、前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第3の直線部と、前記第2の方向における前記第3の直線部と前記フレーム部材との間に位置し、前記第2の方向に延びている第4の直線部と、前記第3の直線部と前記第4の直線部とを連結しており、前記第3の直線部と前記第4の直線部との両方に対して前記第1の方向に突出し、第2の底部を有する第2の連結部と、を備え、以下の式(2)を満たす構成としてもよい。
L3/L4≦4.3 ・・・(2)
L3:前記第2の方向における前記単セルと前記フレーム部材との間の長さ
L4:前記第2の方向における前記第2の底部の長さ
【0020】
本IC-単セル複合体によれば、上記(3)に記載されている電気化学反応セルスタックによって得られる効果と同様の効果が得られる。
【0021】
(8)上記IC-単セル複合体において、前記第2の特定断面において、前記IC側セパレータのうち、前記第3の直線部と前記第2の連結部との境界部分、および前記第2の連結部と前記第4の直線部との境界部分は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している構成としてもよい。本IC-単セル複合体によれば、上記(4)に記載されている電気化学反応セルスタックによって得られる効果と同様の効果が得られる。
【0022】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、複数の電気化学反応単位(燃料電池発電単位または電解セル単位)を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
【
図4】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図5】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【
図6】
図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【
図7】
図4のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【
図8】セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180の詳細構成を示すXZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
A.本実施形態:
A-1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1(および後述する
図6,
図7)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1(および後述する
図6,
図7)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。なお、上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0025】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、「発電単位」という)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
【0026】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0027】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、
図2および
図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0028】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、空気が使用される。また、本実施形態では、酸化剤ガス導入マニホールド161への酸化剤ガスOGの導入のために、ブロワ(図示せず)が用いられる。また、酸化剤ガスOGが酸化剤ガス導入マニホールド161に導入される前に、熱交換(例えば、燃料電池スタック100から排出された酸化剤オフガスOOGと燃料オフガスFOGとを燃焼させたときに発生する熱との熱交換)を利用して、酸化剤ガスOGの予加熱が行われるとしてもよい。
【0029】
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0030】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0031】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0032】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、
図6は、
図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、
図7は、
図4のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0033】
図4および
図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セル側セパレータ120と、IC側セパレータ180と、空気極側フレーム部材130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム部材140と、燃料極側集電体144と、一対のインターコネクタ部材150とを備えている。セル側セパレータ120、IC側セパレータ180、空気極側フレーム部材130、燃料極側フレーム部材140におけるZ軸回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。なお、本実施形態における単セル110と、セル側セパレータ120と、IC側セパレータ180と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム部材140と、燃料極側集電体144と、インターコネクタ部材150とを備える複合体は、特許請求の範囲におけるIC-単セル複合体に相当し、燃料極側フレーム部材140は、特許請求の範囲におけるフレーム部材に相当する。
【0034】
インターコネクタ部材150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ部材150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ部材150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ部材150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ部材150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ部材150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ部材150を備えていない(
図2および
図3参照)。なお、発電単位102を構成するインターコネクタ部材150は、当該発電単位102を構成する単セル110と上下方向に対向している。
【0035】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、平板型の単セルであり、また、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0036】
電解質層112は、上下方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、上下方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、上下方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。
【0037】
セル側セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の第1のセパレータ貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、ステンレス等の金属材料により形成されている。セル側セパレータ120は、セル側セパレータ120における第1のセパレータ貫通孔121を取り囲む部分である第1の貫通孔周囲部122(
図8参照)を有する。第1の貫通孔周囲部122の表面の内の下方向側の表面は、単セル110を構成する電解質層112における空気極114に対向する側(上側)の表面の周縁部に対向している。セル側セパレータ120は、第1の貫通孔周囲部122に配置されたロウ材(例えばAgロウ)を含む第1の接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。従って、第1の貫通孔周囲部122は、単セル110の周縁部と接続されている。セル側セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における空気室166から燃料室176へのガスのリークが抑制される。
【0038】
第1の接合部124に対して空気室166側には、ガラスを含む第1のガラスシール部125が配置されている。第1のガラスシール部125は、セル側セパレータ120の第1の貫通孔周囲部122の表面と、単セル110(本実施形態では単セル110を構成する電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。第1のガラスシール部125により、空気室166と燃料室176との間のガスリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0039】
IC側セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の第2のセパレータ貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、ステンレス等の金属材料により形成されている。IC側セパレータ180により、燃料室176と、隣接する他の単セル110の空気極114に面する空気室166とが区画され、インターコネクタ部材150の周縁部における空気室166から燃料室176へのガスのリークが抑制される。
【0040】
IC側セパレータ180は、IC側セパレータ180における第2のセパレータ貫通孔181を取り囲む部分である第2の貫通孔周囲部182(
図8参照)を有する。IC側セパレータ180は、第2の貫通孔周囲部182における下方向側の表面において、インターコネクタ部材150の周縁部における上方向側の表面と、溶接により接合されている。従って、IC側セパレータ180のうち、上下方向視で第2のセパレータ貫通孔181を取り囲む第2の貫通孔周囲部182は、インターコネクタ部材150の周縁部と接続されている。本実施形態では、上述したようにIC側セパレータ180が溶接により接合されていることにより、空気室166と燃料室176との間のガスリーク(クロスリーク)がより効果的に抑制される。
【0041】
図4~
図6に示すように、空気極側フレーム部材130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の空気室用孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム部材130のうち、上下方向視で空気室用孔131を取り囲む部分は、セル側セパレータ120の表面の内の空気室166に面している側(上側)の表面の外周部と、IC側セパレータ180の表面の内の空気室166に面している側(下側)の表面の外周部とに接触している。空気極側フレーム部材130に形成された空気室用孔131によって、空気極114に面する空気室166が構成される。また、空気極側フレーム部材130によって、発電単位102に含まれる一対のIC側セパレータ180間が電気的に絶縁される。その結果、一対のインターコネクタ部材150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム部材130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0042】
図4、
図5および
図7に示すように、燃料極側フレーム部材140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の燃料室用孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム部材140のうち、上下方向視で燃料室用孔141を取り囲む部分は、セル側セパレータ120の表面の内の燃料室176に面している側(下側)の表面の外周部と、IC側セパレータ180の表面の内の燃料室176に面している側(上側)の表面の外周部とに接触している。燃料極側フレーム部材140に形成された燃料室用孔141によって、燃料極116に面する燃料室176が構成される。また、燃料極側フレーム部材140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0043】
図4および
図5に示すように、空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ部材150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ部材150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ部材150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。また、空気極側集電体134は、インターコネクタ部材150と一体の部材として構成されていてもよい。
【0044】
図4および
図5に示すように、燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ部材150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ部材150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ部材150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサ149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ部材150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0045】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0046】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ部材150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ部材150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0047】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3および
図5に示すように、燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0048】
なお、以下において、空気極側フレーム部材130と燃料極側フレーム部材140とからなる組み合わせを「フレーム部材200」といい、空気室用孔131と燃料室用孔141とからなる組み合わせを「フレーム貫通孔201」といい、フレーム部材200のうち、上下方向視でフレーム貫通孔201を取り囲む部分を「フレーム貫通孔周囲部202」という(
図8参照)。なお、フレーム部材200は、特許請求の範囲におけるフレーム部材に相当する。
【0049】
上述したように、空気極側フレーム部材130のうち、上下方向視で空気室用孔131を取り囲む部分は、セル側セパレータ120の表面の内の空気室166に面している側の表面の外周部と、IC側セパレータ180の表面の内の空気室166に面している側の表面の外周部とに接触している。また、燃料極側フレーム部材140のうち、上下方向視で燃料室用孔141を取り囲む部分は、セル側セパレータ120の表面の内の燃料室176に面している側の表面の外周部と、IC側セパレータ180の表面の内の燃料室176に面している側の表面の外周部とに接触している。以上のことから明らかなように、フレーム部材200のうち、上下方向視でフレーム貫通孔201を取り囲むフレーム貫通孔周囲部202は、セル側セパレータ120の外周部と接続されている。
【0050】
A-3.セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180の詳細構成:
図8は、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180の詳細構成を示す説明図である。
図8には、
図4のPx部の構成が拡大して示されている。
図4および
図8に示す燃料電池スタック100の断面は、上下方向視における単セル110の中心点PO(
図6または
図7参照)を通り、かつ、上下方向に平行な断面である。
図4に示す燃料電池スタック100の断面は、特許請求の範囲における第1の特定断面に相当し、第2の特定断面に相当する。
【0051】
本実施形態の燃料電池スタック100では、上下方向視における単セル110の中心点POを通り、かつ、上下方向に平行な任意の断面において、以下に示すセル側セパレータ120およびIC側セパレータ180の構成が採用されている。
図4および
図8に示す断面は、上下方向視における単セル110の中心点POを通り、かつ、上下方向に平行な任意の断面の一例である。
【0052】
A-3-1.セル側セパレータ120の詳細構成:
【0053】
図8に示すように、セル側セパレータ120は、第1の直線部126と、第2の直線部127と、第1の連結部128と、を備えている。セル側セパレータ120の厚さ(板厚、以下同様)T1は、0.3mm以下であり、例えば約0.1mmである。なお、第1の直線部126は、第1の貫通孔周囲部122を含んでいる。
【0054】
第1の直線部126は、上下方向に直交する方向であるX軸方向における単セル110とフレーム部材200との間に位置し、X軸方向に直線状に延びている。第1の直線部126は、なお、X軸方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
【0055】
第2の直線部127は、X軸方向における第1の直線部126とフレーム部材200との間に位置し、X軸方向に直線状に延びている。
【0056】
第1の連結部128は、第1の直線部126と第2の直線部127とを連結しており、第1の直線部126と第2の直線部127との両方に対して下方に突出している。第1の連結部128は、第1の直線部126および第2の直線部127の位置から下方に突出するように湾曲した形状を有している。すなわち、第1の連結部128における上側は凹部となっている。なお、第1の直線部126または第2の直線部127に対して第1の連結部128が突出している長さ(以下、「第1の連結部深さ」という。)H1は、0.2mm以上であり、例えば1mmである。第1の連結部128は、例えば、プレス加工により形成される。
【0057】
セル側セパレータ120が上述したように第1の直線部126と第2の直線部127との両方に対して下方に突出している第1の連結部128を備えることにより、燃料電池スタック100の発電運転時の熱サイクル等によって単セル110に荷重がかかった場合に、第1の連結部128が当該荷重の方向に撓むことにより、単セル110に生じる応力を緩和することができ、ひいては単セル110に生じる応力に起因する単セル110の変形や割れを抑制することができる。
【0058】
第1の連結部128の詳細構成は、以下の通りである。
【0059】
第1の連結部128は、第1の連結部128の突出方向(本実施形態では下方)の端に位置する第1の底部128aと、第1の底部128aと第1の直線部126とを接続する第1の接続部128bと、第1の底部128aと第2の直線部127とを接続する第2の接続部128cと、を有している。第1の底部128aは、第1の直線部126と第2の直線部127との両方に対して下方に位置している。
【0060】
第1の底部128aに関し、燃料電池スタック100は以下の式(1)を満たしている。
L1/L2≦4.3 ・・・(1)
L1:X軸方向における単セル110とフレーム部材200との間の長さ
L2:X軸方向における第1の底部128aの長さ
【0061】
上記の「X軸方向(上下方向に直交する方向)における第1の底部128aの長さ」とは、セル側セパレータ120の第1の連結部128のうち、後述する境界部分B11(第1の底部128aと第1の接続部128bとの境界部分B11)と、境界部分B12(第1の底部128aと第2の接続部128cとの境界部分B12)と繋ぐ部分(
図8のRを参照)のX軸方向の長さ(
図8のL2を参照)を意味する。
【0062】
L1の値は、10(mm)以上、15(mm)以下である。L2の値は、3(mm)以上、8(mm)mmである。例えば、L1の値は13(mm)であり、L2の値は6(mm)であり、この場合、L1/L2の値は2.2である。
【0063】
また、セル側セパレータ120のうち、第1の直線部126と第1の連結部128との境界部分B1は、Y軸方向視においてX軸負方向に位置するほど下方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。ここで、セル側セパレータ120のうち、「ある部分αとある部分βとの境界部分γは、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している」とは、セル側セパレータ120の表面(空気室166に面する表面、または燃料室176に面する表面の少なくとも一方)のうち、部分αと部分βとの境界点γ0と、境界点γ0から単セル110の側に0.29mm離れた点γ1との間の部分は、曲率半径が0.8mm以上である曲線であり、かつ、境界点γ0と、境界点γ0から点γ1とは反対側に0.29mm離れた点γ2との間の部分は、曲率半径が0.8mm以上である曲線であることを意味する(以下同様)。なお、
図8のBp10は、セル側セパレータ120の表面のうち、第1の直線部126と第1の連結部128との境界点を示し、Bp11は、境界点Bp10から単セル110の側に0.29mm離れた点を示し、Bp12は、境界点Bp10から点Bp11とは反対側に0.29mm離れた点を示している。
【0064】
また、セル側セパレータ120のうち、第1の連結部128と第2の直線部127との境界部分B2は、Y軸方向視においてX軸正方向に位置するほど下方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0065】
また、セル側セパレータ120の第1の連結部128のうち、第1の底部128aと第1の接続部128bとの境界部分B11は、Y軸方向視においてX軸正方向に位置するほど上方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0066】
また、セル側セパレータ120の第1の連結部128のうち、第1の底部128aと第2の接続部128cとの境界部分B12は、Y軸方向視においてX軸負方向に位置するほど上方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0067】
なお、第1の直線部126と、第2の直線部127と、第1の連結部128とは、上下方向視で、第1のセパレータ貫通孔121を取り囲むように形成されている(
図6参照)。第2の直線部127は、上下方向視において第1の直線部126よりセル側セパレータ120の外周側に位置している。
【0068】
A-3-2.IC側セパレータ180の詳細構成:
図8に示すように、IC側セパレータ180は、第3の直線部186と、第4の直線部187と、第2の連結部188と、を備えている。IC側セパレータ180の詳細構成は、上述したセル側セパレータ120の詳細構成と基本的な構成は同様である。従って、基本的には、上述したセル側セパレータ120の詳細構成における「セル側セパレータ120」を「IC側セパレータ180」と読み替え、「第1の直線部126」を「第3の直線部186」と読み替え、「第2の直線部127」を「第4の直線部187」と読み替え、「第1の連結部128」を「第2の連結部188」と読み替えればよい。さらに、「第1の貫通孔周囲部122」を「第2の貫通孔周囲部182」と読み替え、「第1の連結部深さH1」を「第2の連結部深さH2」と読み替え、「第1の底部128a」を「第2の底部188a」と読み替えればよい。そのため、IC側セパレータ180の詳細構成についての説明は基本的には省略し、特徴的な構成についてのみ以下に述べる。
【0069】
第2の連結部188は、第3の直線部186と第4の直線部187とを連結しており、第3の直線部186と第4の直線部187との両方に対して下方に突出している。第2の連結部188は、第3の直線部186および第4の直線部187の位置から下方に突出するように湾曲した形状を有している。すなわち、第2の連結部188における上側は凹部となっている。
【0070】
第3の直線部186は、第2の連結部188の突出方向(本実施形態では下方)の端に位置する第2の底部188aと、第2の底部188aと第3の直線部186とを接続する第3の接続部188bと、第2の底部188aと第4の直線部187とを接続する第4の接続部188cと、を有している。第2の底部188aは、第3の直線部186と第4の直線部187との両方に対して下方に位置している。
【0071】
第2の底部188aに関し、燃料電池スタック100は以下の式(2)を満たしている。
L3/L4≦4.3 ・・・(2)
L3:X軸方向における単セル110とフレーム部材200との間の長さ
L4:X軸方向における第2の底部188aの長さ
【0072】
上記の「X軸方向における第2の底部188aの長さ」の意味は、上述した「X軸方向における第1の底部128aの長さ」の意味と同様の考え方により定義されるものである。すなわち、IC側セパレータ180の第2の連結部188のうち、後述する境界部分B13(第2の底部188aと第3の接続部188bとの境界部分B13)と、境界部分B14(第2の底部188aと第4の接続部188cとの境界部分B14)とを繋ぐ部分のX軸方向の長さを意味する。
【0073】
IC側セパレータ180のうち、第3の直線部186と第2の連結部188との境界部分B3は、Y軸方向視においてX軸負方向に位置するほど下方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0074】
IC側セパレータ180のうち、第2の連結部188と第4の直線部187との境界部分B4は、Y軸方向視においてX軸正方向に位置するほど下方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0075】
また、IC側セパレータ180の第2の連結部188のうち、第2の底部188aと第3の接続部188bとの境界部分B13は、Y軸方向視においてX軸正方向に位置するほど上方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0076】
また、IC側セパレータ180の第2の連結部188のうち、第2の底部188aと第4の接続部188cとの境界部分B14は、Y軸方向視においてX軸負方向に位置するほど上方となり、かつ、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0077】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、上下方向(Z軸方向)に並べて配置された複数の発電単位102を備えている。発電単位102は、単セル110と、セル側セパレータ120と、フレーム部材200(空気極側フレーム部材130および燃料極側フレーム部材140)と、を備えている。単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向に互いに対向する空気極114および燃料極116と、を含んでいる。セル側セパレータ120には、上下方向に貫通する第1のセパレータ貫通孔121が形成されている。セル側セパレータ120のうち、上下方向視で第1のセパレータ貫通孔121を取り囲む第1の貫通孔周囲部122は、単セル110の周縁部と接続されている。セル側セパレータ120は、空気極114に面する空気室166と、燃料極116に面する燃料室176とを区画する。フレーム部材200には、上下方向に貫通し、燃料室176と空気室166とを構成するフレーム貫通孔201が形成されている。フレーム部材200のうち、上下方向視でフレーム貫通孔201を取り囲むフレーム貫通孔周囲部202は、セル側セパレータ120の外周部と接続されている。燃料電池スタック100における上下方向に平行な断面(例えば、
図4および
図8に示す断面。以下、「第1の特定断面」という。)において、セル側セパレータ120は、第1の直線部126と、第2の直線部127と、第1の連結部128と、を備えている。第1の直線部126は、上下方向に直交する方向(以下、第1の特定断面における当該方向を「第1の直交方向」という。)における単セル110とフレーム部材200との間に位置し、第1の直交方向に延びている。第2の直線部127は、第1の直交方向における第1の直線部126とフレーム部材200との間に位置し、第1の直交方向に延びている。第1の連結部128は、第1の直線部126と第2の直線部127とを連結しており、第1の直線部126と第2の直線部127との両方に対して下方に突出している。第1の連結部128は、第2の底部188aを有している。燃料電池スタック100は、式:L1/L2≦4.3を満たしている。L1は、第1の直交方向における単セル110とフレーム部材200との間の長さであり、L2は、第1の直交方向における第1の連結部128の第2の底部188aの長さである。
【0078】
本実施形態の燃料電池スタック100では、式:L1/L2≦4.3を満たしていることにより、式:L1/L2≦4.3を満たしていない構成と比較して、燃料電池スタック100が熱サイクルに晒されたときに、第1の連結部128にひずみが蓄積することが抑制される。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、第1の連結部128にひずみが蓄積することに起因してセル側セパレータ120に疲労破壊が生じることを抑制することができる。
【0079】
なお、セル側セパレータ120(第1の直線部126,第2の直線部127,第1の連結部128)の厚さT1が大きいほど、第1の連結部128に蓄積するひずみは大きくなる傾向がある。そのため、第1の連結部128にひずみが蓄積することに起因してセル側セパレータ120に疲労破壊が生じることを抑制する観点から、セル側セパレータ120の厚さT1は、上述したように0.3mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0080】
また、仮にL1/L2の値が4.3より大きい構成においては、燃料電池スタック100が熱サイクルに晒されたときに、セル側セパレータ120が非弾性変形(塑性変形またはクリープ変形)し、これにより空気室166または燃料室176におけるガス流路が閉塞または縮小するより、ガスの流配が阻害され、空気室166または燃料室176における圧損が増大する恐れがある。そのため、この構成においては、空気室166または燃料室176におけるガス流路が閉塞または縮小することにより、燃料電池スタック100の発電性能が低下する等の問題が生じる恐れがある。これに対し、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したように式:L1/L2≦4.3を満たしていることにより、セル側セパレータ120が非弾性変形することが抑制され、ひいては燃料電池スタック100の発電性能の低下等の問題が生じることを抑制することができる。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、発電性能を良好なものとすることができる。上記構成により当該効果が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、L1/L2≦4.3を満たすことにより、上述したように燃料電池スタック100が熱サイクルに晒されたときに第1の連結部128にひずみが蓄積することが抑制されることによるものと推測される。
【0081】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、第1の特定断面において、セル側セパレータ120のうち、第1の直線部126と第1の連結部128との境界部分B1、および第1の連結部128と第2の直線部127との境界部分B2は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0082】
本実施形態の燃料電池スタック100によれば、上記の境界部分B1,B2は曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲しているという構成であることにより、境界部分B1,B2が屈曲している構成と比較して、境界部分B1,B2にひずみが蓄積することが抑制され、ひいては、第1の連結部128にひずみが蓄積することに起因してセル側セパレータ120に疲労破壊が生じることをより効果的に抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、発電単位102は、単セル110と上下方向に対向するインターコネクタ部材150と、IC側セパレータ180と、を備えている。IC側セパレータ180には、上下方向に貫通する第2のセパレータ貫通孔181が形成されている。IC側セパレータ180のうち、上下方向視で第2のセパレータ貫通孔181を取り囲む第2の貫通孔周囲部182は、インターコネクタ部材150の周縁部と接続されている。IC側セパレータ180は、空気極114に面する空気室166と、燃料極116に面する燃料室176とを区画する。燃料電池スタック100における上下方向に平行な断面(例えば、
図4および
図8に示す断面。以下、「第2の特定断面」という。)において、IC側セパレータ180は、第3の直線部186と、第4の直線部187と、第2の連結部188と、を備えている。第3の直線部186は、第2の特定断面における上下方向に平行な断面(以下、「第2の直交方向」という。)における単セル110とフレーム部材200との間に位置し、第2の直交方向に延びている。第4の直線部187は、第2の直交方向における第3の直線部186とフレーム部材200との間に位置し、第2の直交方向に延びている。第2の連結部188は、第3の直線部186と第4の直線部187とを連結しており、第3の直線部186と第4の直線部187との両方に対して上下方向に突出している。第2の連結部188は、第2の底部188aを有している。燃料電池スタック100は、式:L3/L4≦4.3を満たしている。L3は、第2の直交方向における単セル110とフレーム部材200との間の長さであり、L4は、第2の直交方向における第2の連結部188の第2の底部188aの長さである。
【0084】
本実施形態の燃料電池スタック100では、式:L3/L4≦4.3を満たしていることにより、式:L3/L4≦4.3を満たしていない構成と比較して、燃料電池スタック100が熱サイクルに晒されたときに、第2の連結部188にひずみが蓄積することが抑制される。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、第2の連結部188にひずみが蓄積することに起因してIC側セパレータ180に疲労破壊が生じることを抑制することができる。
【0085】
なお、上述したセル側セパレータ120の厚さT1と同様に、IC側セパレータ180(第3の直線部186,第4の直線部187,第2の連結部188)の厚さT2が大きいほど、第2の連結部188に蓄積するひずみは大きくなる傾向がある。そのため、第2の連結部188にひずみが蓄積することに起因してIC側セパレータ180に疲労破壊が生じることを抑制する観点から、IC側セパレータ180の厚さT2は、上述したように0.3mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0086】
セル側セパレータ120が上述したように非弾性変形するのと同様に、仮にL3/L4の値が4.3より大きい構成においては、燃料電池スタック100が熱サイクルに晒されたときに、IC側セパレータ180が非弾性変形し、これにより空気室166または燃料室176におけるガス流路が閉塞され、ガスの流配が阻害されることにより、燃料電池スタック100の発電性能が低下する等の問題が生じる恐れがある。これに対し、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したように式:L3/L4≦4.3を満たしていることにより、IC側セパレータ180が非弾性変形することが抑制され、ひいては燃料電池スタック100の発電性能の低下等の問題が生じることをより効果的に抑制することができる。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、発電性能をより良好なものとすることができる。
【0087】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、第2の特定断面において、セル側セパレータ120のうち、第3の直線部186と第2の連結部188との境界部分B3、および第2の連結部188と第4の直線部187との境界部分B4は、曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲している。
【0088】
本実施形態の燃料電池スタック100によれば、上記の境界部分B3,B4は曲率半径が0.8mm以上となるように湾曲しているという構成であることにより、境界部分B3,B4が屈曲している構成と比較して、境界部分B3,B4にひずみが蓄積することが抑制され、ひいては、第2の連結部188にひずみが蓄積することに起因してIC側セパレータ180に疲労破壊が生じることをより効果的に抑制することができる。
【0089】
A-5.性能評価:
次に、本実施形態の性能評価について説明する。各特性が互いに異なる複数の燃料電池スタック100のサンプルについてシミュレーションによる性能評価(セパレータの疲労破壊に対する耐久性に関する性能評価)を行った。
図9および
図10は、性能評価結果を示す説明図である。本性能評価では、複数の単セル110(発電単位102)を備える燃料電池スタック100を構成し、発電運転を行ったときのセル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみを測定した。
【0090】
図9には、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180の疲労破壊に対する耐久性についての評価の結果が示されている。
図9に示すように、本性能評価には、燃料電池スタック100の6個のサンプル(サンプルS1~S6)が用いられた。各サンプルは、L1の値が互いに同一であり、L2の値が互いに異なっており、そのため、L1/L2の値が互いに異なっている。
図10には、上述した運転条件で発電運転を行ったときにセル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの増加量を検証するシミュレーションの結果が示されている。
【0091】
図9の「ひずみの増加量(Δε)」欄に記載されている「大」は、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの量が大きいことを示すものであり、「小」は、当該ひずみの量が小さいことを示すものである。
【0092】
各サンプルについて、シミュレーションの結果、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの増加量がクライテリア以上であれば、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの量が過大であることによりセル側セパレータ120やIC側セパレータ180に疲労破壊が生じる危険性が高いと判断し、「×(不合格)」と評価した。また、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの増加量がクライテリア未満であれば、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの量が過大であることはないため、セル側セパレータ120やIC側セパレータ180に疲労破壊が生じる危険性が低いと判断し、「○(合格)」と評価した。
【0093】
図9に示すように、サンプルS1,S2では、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの量が「大」であったため、「×」と評価した。これに対し、サンプルS3~S6では、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの量が「小」であったため、「○」と評価した。ここで、サンプルS1,S2では、L1/L2の値が4.3よりも大きく、一方、サンプルS3~S6では、L1/L2の値が4.3以下である。以上の結果から、L1/L2の値が4.3以下である構成においては、L1/L2の値が4.3より大きい構成と比較してセル側セパレータ120およびIC側セパレータ180にひずみが蓄積することが抑制され、ひいては、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180にひずみが蓄積することに起因してセル側セパレータ120やIC側セパレータ180に疲労破壊が生じることを抑制することができることが確認された。なお、
図10に示すように、L2の値が大きいほど、セル側セパレータ120およびIC側セパレータ180に蓄積されるひずみの量は小さくなる傾向が確認された。
【0094】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0095】
例えば、上記実施形態の燃料電池スタック100では、上下方向視における単セル110の中心点POを通り、かつ、上下方向に平行な任意の断面において、上述したセル側セパレータ120およびIC側セパレータ180の構成が採用されているが、上下方向視における単セル110の中心点POを通り、かつ、上下方向に平行ないずれかの断面のみにおいて、上述したセル側セパレータ120およびIC側セパレータ180の構成が採用されてもよい。また、上記実施形態の燃料電池スタック100において、上述したセル側セパレータ120の構成と、上述したIC側セパレータ180の構成とが、互いに異なる断面において採用されてもよい。
【0096】
また、上記実施形態(または変型例、以下同様)において、第1の連結部128は、第1の直線部126と第2の直線部127との両方に対して上方に突出している構成であってもよい。この構成においても、第1の連結部128が下方に突出している構成における理由と同様の理由から、単セル110に生じる応力に起因する単セル110の変形や割れを抑制することができる。また、第2の連結部188は、第3の直線部186と第4の直線部187とを連結しており、第3の直線部186と第4の直線部187との両方に対して下方に突出している構成であってもよい。この構成においても、第2の連結部188が下方に突出している構成における理由と同様の理由から、単セル110に生じる応力に起因する単セル110の変形や割れを抑制することができる。
【0097】
また、上記実施形態において、フレーム部材200を構成する空気極側フレーム部材130と燃料極側フレーム部材140とが一体に形成されていてもよい。
【0098】
また、フレーム部材200は、フレーム貫通孔201が燃料室176と空気室166との一方のみを構成するものであってもよい。
【0099】
上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態において、空気極114と電解質層112との間に中間層が配置されていてもよい。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0100】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の構成を採用すると、セル側セパレータ120に疲労破壊が生じることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0101】
22:ボルト 22A:ボルト 22B:ボルト 22D:ボルト 22E:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セル側セパレータ 121:第1のセパレータ貫通孔 122:第1の貫通孔周囲部 124:第1の接合部 125:第1のガラスシール部 126:第1の直線部 127:第2の直線部 128:第1の連結部 128a:第1の底部 128b:第1の接続部 128c:第2の接続部 130:空気極側フレーム部材 131:空気室用孔 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム部材 141:燃料室用孔 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサ 150:インターコネクタ部材 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:IC側セパレータ 181:第2のセパレータ貫通孔 182:第2の貫通孔周囲部 186:第3の直線部 187:第4の直線部 188:第2の連結部 188a:第2の底部 188b:第3の接続部 188c:第4の接続部200:フレーム部材 201:フレーム貫通孔 202:フレーム貫通孔周囲部 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス