(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】保持装置、飛行体、および搬送システム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20221017BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20221017BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221017BHJP
B64D 1/22 20060101ALI20221017BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B25J15/06 B
B25J13/08 A
B64C39/02
B64D1/22
B64C27/08
(21)【出願番号】P 2020209325
(22)【出願日】2020-12-17
(62)【分割の表示】P 2018046000の分割
【原出願日】2018-03-13
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳也
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】奈良 康平
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-300822(JP,A)
【文献】特開2001-211000(JP,A)
【文献】特開平07-285087(JP,A)
【文献】特開2017-038873(JP,A)
【文献】実開平05-081830(JP,U)
【文献】特開2017-193330(JP,A)
【文献】特開2010-005769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0060464(US,A1)
【文献】特開2013-135341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
B25J 13/08
B64C 39/02
B64D 1/22
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を吸着し、空洞を有する吸着部と、
前記吸着部に連通し、前記吸着部に前記物体を吸着させるように前記吸着部内部の気体を吸引する吸引装置と、
前記空洞を通って入射する光を検出し、前記物体からの光量を検出する光量センサと、
前記光量センサにより取得された光量に基づいて、前記吸着部の吸着状態を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記光量センサにより検出された光量に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御
し、
前記光量センサは、前記吸着部の前記物体への接近時には前記吸着部と前記物体との近接検出に使用され、前記吸着部による前記物体への吸着時または保持中には前記吸着部の吸着状態の判定に使用される、
保持装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記光量センサによる光量の検出の結果が所定の条件を満たす場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
物体を吸着し、空洞を有する吸着部と、
前記吸着部に連通し、前記吸着部に前記物体を吸着させるように前記吸着部内部の気体を吸引する吸引装置と、
前記空洞を通って入射する光を検出し、前記物体からの光量を検出する光量センサと、
前記光量センサにより取得された光量に基づいて、前記吸着部の吸着状態を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記光量センサにより検出された光量に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
保持装置であって、
前記光量センサは、前記物体からの光量を二次元的に検出し、
前記制御装置は、前記光量センサにより検出された二次元的な光量分布に基づいて前記物体が前記吸着部に近接しているか否かを判定するとともに、前記物体が前記吸着部に近接していると判定した場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する
、
保持装置。
【請求項4】
前記吸着部と前記吸着部を支持した支持部材とを含む吸着ユニットを備え、
前記光量センサは、前記吸着ユニットの内部に配置されている、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項5】
前記光量センサは、画像センサである、
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項6】
物体を吸着し、空洞を有する吸着部と、
前記吸着部に連通し、前記吸着部に前記物体を吸着させるように前記吸着部内部の気体を吸引する吸引装置と、
前記空洞を通って入射する光を検出し、前記物体からの光量を検出する光量センサと、
前記光量センサにより取得された光量に基づいて、前記吸着部の吸着状態を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記光量センサにより検出された光量に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
保持装置であって、
前記光量センサは、画像センサであり、
前記制御装置は、前記画像センサにより取得された画像における前記物体および前記物体の表面の特徴部の少なくとも一方の大きさの変化に基づいて前記物体までの距離を見積もり、前記距離が距離閾値以下である場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する
、
保持装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記吸着部の移動速度が第1の速度である場合に前記距離閾値を第1の値に設定し、前記吸着部の移動速度が前記第1の速度より速い第2の速度である場合に前記距離閾値を前記第1の値より大きな第2の値に設定する、
請求項6に記載の保持装置。
【請求項8】
加速度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記加速度センサから出力される信号に基づいて前記距離閾値を設定する、
請求項7に記載の保持装置。
【請求項9】
物体を吸着し、空洞を有する吸着部と、
前記吸着部に連通し、前記吸着部に前記物体を吸着させるように前記吸着部内部の気体を吸引する吸引装置と、
前記空洞を通って入射する光を検出し、前記物体からの光量を検出する光量センサと、
前記光量センサにより取得された光量に基づいて、前記吸着部の吸着状態を判定する制御装置と、
を備え、
前記光量センサは、画像センサであり、
前記吸着部と前記吸着部を支持した支持部材とを含む吸着ユニットと、
前記画像センサの全体が前記吸着ユニットの内部に位置する第1位置と、前記画像センサの少なくとも一部が前記吸着ユニットの外部に位置する第2位置との間で前記画像センサを移動させるアクチュエータと、
を備えた、
保持装置。
【請求項10】
物体を吸着し、空洞を有する吸着部と、
前記吸着部に連通し、前記吸着部に前記物体を吸着させるように前記吸着部内部の気体を吸引する吸引装置と、
前記空洞を通って入射する光を検出し、前記物体からの光量を検出する光量センサと、
前記光量センサにより取得された光量に基づいて、前記吸着部の吸着状態を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記光量センサにより検出された光量に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
保持装置であって、
前記物体が前記吸着部に近接していることを検出する近接センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記光量センサによる検出の結果にかかわらず、前記近接センサにより検出された情報に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する
、
保持装置。
【請求項11】
前記吸着部と前記吸着部を支持した支持部材とを含む吸着ユニットを備え、
前記近接センサは、前記吸着ユニットの内部に配置されている
請求項10に記載の保持装置。
【請求項12】
照明装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記照明装置が光を照射している状態で前記光量センサにより取得された光量の検出の結果が所定の条件を満たす場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項13】
前記光量センサは、前記吸着部が物体に吸着する方向に対して略直交する平面内で前記吸着部の略中央に配置されている、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項14】
前記吸引装置と前記吸着部との間の流路と大気圧空間とを連通させる第1の状態と、前記流路と前記大気圧空間との連通を遮断する第2の状態との間で切替可能な切替弁と、
前記吸引装置および前記切替弁を駆動する駆動装置と、
前記流路内の前記気体の圧力を検出する圧力センサと、
をさらに備えた、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記圧力センサによって検出された圧力が第1の圧力閾値よりも低い場合に前記吸引装置の駆動を停止し、前記圧力センサによって検出された圧力が第2の圧力閾値よりも高い場合に前記吸引装置の駆動を開始し、前記第2の圧力閾値は、前記第1の圧力閾値と略等しいまたは前記第1の圧力閾値より高い、
請求項14に記載の保持装置。
【請求項16】
前記吸着部を支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記吸着部および前記吸引装置と連通する空気穴を有し、
前記光量センサは、前記空気穴に対して前記吸引装置の方へ離間して配置されている、
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項17】
前記支持部材に対して前記光量センサを支持した弾性部材をさらに備えた、
請求項16に記載の保持装置。
【請求項18】
物体を吸着し、空洞を有する吸着部と、
前記吸着部に連通し、前記吸着部に前記物体を吸着させるように前記吸着部内部の気体を吸引する吸引装置と、
前記空洞を通って入射する光を検出し、前記物体からの光量を検出する光量センサと、
前記光量センサにより取得された光量に基づいて、前記吸着部の吸着状態を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記光量センサにより検出された光量に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御
し、
前記光量センサは、前記吸着部の前記物体への接近時には前記吸着部と前記物体との近接検出に使用され、前記吸着部による前記物体への吸着時または保持中には前記吸着部の吸着状態の判定に使用される、
飛行体。
【請求項19】
物体を吸着し、空洞を有する吸着部と、前記吸着部に連通し、前記吸着部に前記物体を吸着させるように前記吸着部内部の気体を吸引する吸引装置と、前記空洞を通って入射する光を検出し、前記物体からの光量を検出する光量センサと、前記光量センサにより取得された光量に基づいて、前記吸着部の吸着状態を判定する制御装置と、を有する保持装置と、
前記保持装置を移動させる移動機構と、
前記物体を認識する認識装置と、
前記認識装置からの出力に基づいて前記移動機構を制御する移動機構制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記光量センサにより検出された光量に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御
し、
前記光量センサは、前記吸着部の前記物体への接近時には前記吸着部と前記物体との近接検出に使用され、前記吸着部による前記物体への吸着時または保持中には前記吸着部の吸着状態の判定に使用される、
搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、保持装置、飛行体、および搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
吸引装置および吸着部を備える保持装置が知られている。
ところで、保持装置は、吸着保持動作の信頼性の向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、吸着保持動作の信頼性の向上を図ることができる保持装置、飛行体、および搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の保持装置は、吸引装置と、吸着部と、光量センサと、制御装置と、を持つ。前記吸引装置は、気体を吸引する。前記吸着部は、前記吸引装置に連通し、前記吸引装置の吸引により物体を吸着する。前記光量センサは、前記物体からの光量を二次元的に検出する。前記制御装置は、前記光量センサにより検出された情報に基づいて前記吸引装置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】
図2で示された保持装置のF5-F5線に沿う断面図。
【
図6】第1の実施形態の支持部材および画像センサ基板を示す斜視図。
【
図7】第1の実施形態の画像センサを用いた吸着パッドと物体との近接判定の一例を示す図。
【
図8】第1の実施形態の保持装置のシステム構成を示すブロック図。
【
図9】第1の実施形態の保持装置のシステム構成の詳細を示すブロック図。
【
図10】第1の実施形態の保持装置の動作例を示す図。
【
図11】第1の実施形態の飛行体による物体への接近から物体の保持までの動作フローを示すフローチャート。
【
図12】第1の実施形態の飛行体による物体の運搬から解放までの動作フローを示すフローチャート。
【
図13】第1の実施形態の画像センサの第1例を示す図。
【
図14】第1の実施形態の画像センサの第2例を示す図。
【
図15】第1の実施形態の画像センサの第3例を示す図。
【
図16】第1の実施形態の画像センサの第4例を示す図。
【
図18】第3の実施形態の保持装置のシステム構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の保持装置、飛行体、および搬送システムを、図面を参照して説明する。
【0008】
図面全体を通して同一または類似の構成要素に同一の参照符号を付して、重ねての説明を省略する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る保持装置(保持機構ともいう)20を用いた搬送システム(物体移載システムともいう)1の一例を示す概略図である。
図1に示すように、搬送システム1は、飛行体10、認識装置12、飛行体制御装置14、および搬送装置16を備える。「搬送システム」または「物体移載システム」とは、物体Pを移動させるシステムを広く意味する。飛行体10は、「移動機構」の一例である。飛行体制御装置14は、「移動機構制御装置」の一例である。
【0010】
搬送システム1は、積載領域18に載置された複数の物体Pを認識装置12により認識する。飛行体制御装置14は、認識装置12による認識の結果に基づいて飛行体10を制御する。これにより、飛行体10が、移載対象の物体Pを保持し、物体Pを搬送装置16上に運ぶ。逆に、飛行体10は、搬送装置16から積載領域18へ物体Pを移載するように制御されてもよい。物体Pは、荷物、物品、ワーク、対象物、または移動対象物などと呼ばれてもよい。物体Pは、例えば、段ボール箱などに入れられた製品、パッケージされた製品、製品そのものなどであり得る。
【0011】
まず、飛行体10について説明する。
飛行体10は、三次元空間上を自由に移動可能である。飛行体10には、物体Pを保持するように構成された保持装置20を有する。保持装置20は、物体Pを保持可能な少なくとも1つの保持部を有する。保持装置20は、保持部が飛行体10に対して外側を向くように配置される。保持部は、例えば、吸着により物体Pを保持する吸着パッドを含む。また、保持部は、電磁石が発生する磁力により物体Pを磁気吸着するタイプであってもよい。保持装置20については、後に詳細に説明する。
【0012】
飛行体10は、飛行するために回転翼(またはプロペラ)を備える。飛行体10は、例えば、一定の高度を保つホバリングをすることができる。回転翼の回転関節部は、例えば、モータ、エンコーダおよび減速機などを含む。関節部は、1軸方向の回転に限定されず、2軸方向の回転が可能でもよい。飛行体10は、モータの駆動により自身を三次元空間上の任意の位置に移動可能である。これにより、飛行体10に設けられた保持装置20を移動させることが可能である。飛行体10は、例えば、いわゆるドローンである。飛行体10は、有線式でも無線式でもよい。飛行体10が無線式である場合、飛行体10には、通常、飛行のための電力源としてバッテリーが搭載される。
【0013】
次に、認識装置12について説明する。
認識装置12は、積載領域18に載置された複数の物体Pを認識する。認識装置12は、外部画像センサ12a、および外部画像センサ12aに接続された計算機12bを備える。「画像センサ」とは、対象からの光(例えば反射光で、可視光に限定されない)に基づいて対象の画像を取得するセンサを意味する。外部画像センサ12aは、例えば、積載領域18に載置された複数の物体Pに対して直上または斜め上方に位置する。外部画像センサ12aは、位置が固定されていてもよく、移動可能であってもよい。外部画像センサ12aとして、距離画像センサまたは赤外線ドットパターン投影方式カメラなどの三次元位置計測可能なカメラを利用することができる。赤外線ドットパターン投影方式カメラは、赤外線のドットパターンを対象物に投影し、その状態で積載領域18に載置された物体Pの赤外線画像を撮影する。赤外線画像を解析することで物体Pの3次元情報を得ることが可能である。赤外線ドットパターン投影方式カメラは、カラー画像またはモノクロ画像を撮影することができてもよい。また、外部画像センサ12aは、赤外線ドットパターン投影方式カメラに加えて、カラー画像またはモノクロ画像を取得するカメラなどの光学センサを含んでいてもよい。画像は、例えば、jpg、gif、pngやbmpなどの一般的に用いられている形式の画像データとして取得されてもよい。
【0014】
図1に示される例では、3つの外部画像センサ12aが設けられているが、外部画像センサ12aは、1つでもよく、2つでもよく、4つ以上であってもよい。また、外部画像センサ12aの少なくとも1つは、飛行体10に配置されていてもよい。飛行体10に配置されている外部画像センサ12aによって取得された画像は、有線または無線で計算機12bへ送信される。
【0015】
計算機12bは、外部画像センサ12aから出力される画像データに基づいて物体Pの3次元位置姿勢を算出する。「3次元位置姿勢」とは、物体Pの3次元空間上の位置および向きを意味し、物体Pの形状に関する情報を含んでもよい。算出された位置姿勢を示す位置姿勢情報は、飛行体制御装置14へ出力される。飛行体制御装置14は、位置姿勢情報に基づいて飛行体10を制御する。計算機12bは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、および補助記憶装置を備える。計算機12bの機能、例えば、物体Pの3次元位置姿勢を算出する機能は、例えば、CPUのような1つ以上のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される。なお、計算機12bの機能の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェア(例えば、回路部;circuitry)を用いて実現されてもよい。
【0016】
次に、搬送装置16について説明する。
搬送装置16は、飛行体10により搬送装置16上に移載された物体Pを搬送する。搬送装置16は、例えば、ベルトコンベア16aおよび搬送制御装置16bを備える。ベルトコンベア16aは、所定の方向に並べた複数のローラと、複数のローラに巻き付けたベルトと、を含む。ベルトコンベア16aは、複数のローラを回転することによりベルトを駆動し、物体Pを搬送する。搬送装置16は、ベルトコンベア16aの代替として、ローラコンベアまたはソータを備えていてもよい。
【0017】
搬送制御装置16bは、ベルトコンベア16aの駆動を制御する。搬送制御装置16bは、例えば、搬送速度および搬送方向を制御する。搬送制御装置16bは、例えば、CPU、メモリおよび補助記憶装置を備えたコンピュータである。搬送制御装置16bは、予め設定されたプログラムをCPUのようなプロセッサにより実行し、プログラムに従ってベルトコンベア16aの動作を制御する。なお、ベルトコンベア16aの動作は、作業者が搬送制御装置16bを手動で操作することにより制御されてもよい。
【0018】
積載領域18は、物体Pが積載または載置される箇所である。積載領域18は、カゴ台車、スチール台車、ボックスパレット、パレット、または棚などであってもよい。
【0019】
次に、
図2から
図5を参照して保持装置20について説明する。
図2から
図4は、それぞれ保持装置20を示す斜視図、正面図、および側面図である。
図5は、
図2のF5-F5線に沿う保持装置20の断面図である。
図2から
図4に示すように、保持装置20は、筐体22、支持部材24、吸着パッド(吸盤ともいう)26、吸引装置28、圧力センサ30、切替弁32、画像センサ基板34、および画像センサ36を備える。この例では、画像センサ36の数は1つであるが、2つ以上であってもよい。また、吸着パッド26は、複数設けられていてもよい。保持装置20は、制御装置や電源部を内包することにより、自律的に単独で動作可能であってよい。吸着パッド26は、「吸着部」の一例である。画像センサ36は、「光量センサ」の一例である。「光量センサ」とは、入射光の光量を検出するセンサであり、カメラなどの画像センサを含む。画像センサ36は、光量を二次元的に検出することができる。ここで、「二次元的に検出する」とは、互いに交差する2つの空間的方向によって規定される平面内において、各方向において少なくとも2点で検出を行うことを意味する。例えば、一般的なカメラでの撮影は二次元的な光量分布の検出を行うことに該当する。画像センサ36による画像撮影は、「光量の二次元的な検出」の一例である。
【0020】
筐体22は、長さ方向Xに延びる直方体形の形状を有し、吸引装置28に加えて、後述する制御装置60や電源部62などの要素を収容する。なお、筐体22の形状は直方体形に限定されず、円筒形状など内容物を収容することが可能な立体形状であればよい。筐体22の一側には、飛行体10の本体部に取り付ける取付部38が設けられている。
【0021】
支持部材24は、取付部38と反対側で筐体22に設けられて長さ方向Xに延びた円筒状の部材である。支持部材24の先端には吸着パッド26が取り付けられている。
図5に示されるように、支持部材24の先端部24aでは、支持部材24の内径が小さくなっており、空気穴24bが形成されている。ここで、「空気穴」とは、当該穴の両側の間で(ここでは、筐体22の内部と外部との間で)空気などの流体が通過可能な穴を意味する。また、支持部材24の先端部24aでは、支持部材24の外縁24cが長さ方向Xに突出し、吸着パッド26を取り囲む。さらに、吸着パッド26を支持部材24に固定するために、リング状の吸着パッド固定部材40が設けられている。吸着パッド26は、支持部材24と吸着パッド固定部材40とに挟まれて支持部材24に対して固定される。なお、支持部材24の形状は、円筒形に限定されない。空気穴24bの形状も、円形に限定されない。また、筐体22と支持部材24との接続部の周りには、リング状の照明装置42が設けられている。照明装置42は、吸着パッド26の外部に配置され、筐体22から支持部材24および吸着パッド26へ向かって(または物体Pに向かって)光を照射する。照明装置42は、例えばLED(Light Emitting Diode)または蛍光灯である。なお、照明装置42の位置は、上記例に限定されず、筐体22上もしくは支持部材24上の任意の場所または飛行体10に設けられてもよい。
【0022】
吸着パッド26は、上記のとおり支持部材24に取り付けられる。吸着パッド26は、変形が可能なベローズ(蛇腹)形状を有する。ここで、「ベローズ形状」とは、山折りと谷折りとが交互に繰り返されることにより伸縮可能に形成されたひだ付きの筒状の形状を意味する。なお、吸着パッド26の形状はベローズ形状に限定されず、物体Pの吸着が可能な任意の形状であってよい。吸着パッド26は、物体Pの一面に吸着し、物体Pを保持することができる。吸着パッド26は、物体Pの吸着時に変形することができる。吸着パッド26は、空気などが通過可能な空洞26aを内部に有し、支持部材24の空気穴24bを通じて筐体22内部の吸引装置28に連通する。なお、本実施形態では、吸着パッド26と支持部材24とを合わせて「吸着ユニット27」と称する。また、吸着パッド26の空洞26aと、支持部材24の空気穴24bとを合わせて「空洞部27a」と称する。
【0023】
吸引装置28は、筐体22の内部に設けられる。吸引装置28は、吸引装置28から支持部材24の方へ延びる第1チューブ50と支持部材24の空気穴24bとを介して吸着パッド26と連通する。第1チューブ50は、支持部材24が設けられた筐体22の一面まで延びており、吸引装置28と吸着パッド26との間に流体(例えば気体)が流れる流路を形成する。吸引装置28としては、例えば、真空ポンプが使用され得る。あるいは、加圧装置と真空発生器を組み合わせて負圧を発生させる吸引装置などが使用されてもよい。保持装置20を飛行体10に搭載することを考慮すると、吸引装置28は小型であることが望ましい。第1チューブ50は、吸引装置28による吸引によってつぶれないことが望ましい。
【0024】
圧力センサ30は、第1チューブ50に取り付けられている。圧力センサ30は、第1チューブ50の内部の気体の圧力を検出する。
【0025】
切替弁32は、第1チューブ50から分岐して筐体22の側面まで延びた第2チューブ52の内部(例えば第2チューブ52の先端)に設けられている。第2チューブ52は、吸引装置28と大気圧空間との間に気体が流れる流路を形成する。言い換えれば、吸着パッド26に接続される第1チューブ50と切替弁32に接続される第2チューブ52とは、合流して吸引装置28に接続される。吸着パッド26に接続される第1チューブ50と切替弁32に接続される第2チューブ52とは、吸引装置28内で連通している。切替弁32は、後述する切替弁駆動回路66により、弁が完全に開放されて第2チューブ52の内部と大気圧空間とが連通する開状態と、弁が完全に閉鎖されて第2チューブ52の内部と大気圧空間とが連通しない閉状態と、の間で切り替えられる。切替弁32は、開状態および閉状態以外に、開状態と閉状態との間の弁が部分的に開放された状態で保持されることができてもよい。切替弁32としては、例えば、電磁ソレノイドと遮断板部材とを組み合わせたものや電磁回転モータと流路遮断板部材を組み合わせたものが使用され得るが、開状態と閉状態とを切り替える弁の機能を果たすことができるものであれば任意の機構が使用されてよい。
【0026】
画像センサ基板34は、画像センサ36の回路基板である。画像センサ基板34は、複数の弾性部材44を介して支持部材24に支持される。画像センサ基板34の主面(検出表面ともいう)上には、画像センサ36が搭載される。画像センサ基板34は、吸着パッド26の後ろ側に配置される。ここで、「吸着パッドの後ろ側に配置される」とは、吸引方向において吸着パッド26の下流に配置されることを意味する。すなわち、画像センサ基板34は、支持部材24の内部に配置される。ただし、画像センサ基板34は、吸引方向において支持部材24の上流で吸着パッド26の内部に配置されてもよい。言い換えると、画像センサ基板34および画像センサ36は、筐体22、支持部材24、吸着パッド26、および物体Pにより形成されることになる密閉空間の内部に位置する。すなわち、画像センサ基板34および画像センサ36は、吸着ユニット27の内部に位置する。より具体的には、画像センサ基板34および画像センサ36は、吸着ユニット27の空洞部27aに配置される。画像センサ基板34は、例えば長方形状であるが、吸着パッド26と吸引装置28との間の流路が確保される限り、任意の形状であってよい。画像センサ基板34の主面は、吸着パッド26側を向いている。弾性部材44は、弾性材料(例えばゴム)から成る4本の支柱であり、画像センサ基板34を支持部材24に接続する。なお、弾性部材44の数や構成はこれに限定されない。
【0027】
画像センサ36は、画像センサ基板34上に搭載される。画像センサ基板34および画像センサ36は、画像センサ36が吸着パッド26の空洞26aを通して外部から視認できる位置に設けられている。すなわち、画像センサ36は、吸着パッド26の空洞26aを通して吸着パッド26の外部を撮影することのできる位置に設けられている。画像センサ36は、例えば、パッシブ型の画像センサ(例えばカメラ)である。ここで、「パッシブ型のセンサ」とは、対象物への能動的な働きかけ(例えば対象への光照射)を行わず、対象物からの信号(例えば対象物からの反射光)などを読み取るセンサを意味する。画像センサ36は、例えば、CCD素子やCMOS素子などの光を読み取る極小サイズの素子の集合体と、入射光を集光するレンズとを含む。撮影対象物からの光がレンズなどの光学系を通して素子上に像を結ぶ。画像センサ36は、各素子上に結像した光の光量を検出し、電気信号に変換することができる。画像センサ36は、この電気信号に基づいて画像データを生成する。また、例えば、得られた画像中の画像の明るさの不連続な変化を特定することにより、画像中の特徴部分が抽出され得る。具体的には、画像中の対象物のエッジなどを検出することにより、対象物の大きさ、面積、位置、重心などの特徴量を算出することが可能である。また、同様の画像処理により、対象物の表面上の特徴部(例えば模様や印字、ラベル、テープ、突起部、凹部など)の大きさや位置なども抽出することが可能である。このように、画像センサ36により取得された画像データに基づき、対象物の特徴量を非接触で測定することが可能である。なお、こうした画像処理は、画像センサ36が行ってもよく、後述する制御装置60などが行ってもよい。
【0028】
画像センサ36は、物体Pが吸着パッド26に近接していることを検出するために使用され得る。吸着パッド26および画像センサ36は、画像センサ基板34の主面側に位置しており、画像センサ36への物体Pの接近は、吸着パッド26への物体Pの接近と見なすことができる。なお、画像センサ36の配置は、
図5に示される例に限定されるものではなく、種々の形態を取り得る。
【0029】
図6に画像センサ36の配置例を示す。画像センサ36が画像センサ基板34は、画角を確保するために、吸着パッド26の吸着方向に対して略直交する平面内で吸着パッド26の中央に設置されることが望ましい。
図6では、画像センサ基板34は、吸着パッド26内の流路上に設置されている。画像センサ基板34が流路を塞がないように、画像センサ基板34の四隅が弾性部材44により支持され、空気穴24bを有する支持部材24と画像センサ基板34との間に距離が設けられている。吸引装置28により外環境から吸着パッド26内部へ吸引された空気は、空気穴24bを通過した後、空気穴24bと画像センサ基板34との間の空間から弾性部材44の間を通過して吸引装置28の方へ向かう。なお、画像センサ基板34の固定方法は、
図6に示す構成に限定されず、流路が確保される任意の構成であってよい。また、吸着パッド26の内部に配置された画像センサ36からの配線などが吸着パッド26の外部に延びる場合、例えば、吸着パッド26内部(負圧が印加される閉空間)と外部(大気)とを連通させるような貫通孔が支持部材24に設けられる。当該貫通孔に配線などが通されることにより、配線などが吸着パッド26の内部から外部へ延びることができる。このような場合、貫通孔からの空気漏れを防止するために、接着剤などを塗布して貫通孔を埋めることが望ましい。
【0030】
図7は、画像センサ36を用いた吸着パッド26と物体Pとの近接判定の一例を示す。
図7中の(a)は、吸着パッド26が物体Pから離れている状態を示し、
図7中の(b)は、
図7中の(a)に示す状態において吸着パッド26内部の画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
図7中の(c)は、吸着パッド26が物体Pに接近している状態を示し、
図7中の(d)は、
図7中の(c)に示す状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
図7中の(e)は、吸着パッド26が物体Pに接触している状態を示し、
図7中の(f)は、
図7中の(e)に示す状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
【0031】
図7に示すように、吸着パッド26が物体Pに接近するにつれて、画像センサ36の画角内で物体Pの占める面積の割合が増加する。すなわち、画像センサ36により取得された画像全体に占める物体Pの面積の割合が増加する。これに基づき、吸着パッド26と物体Pとの間の距離を見積もることが可能である。
具体的には、様々な大きさの物体Pに対して、物体Pの上空に飛行体10が位置している場合の、吸着パッド26と物体Pとの高さ方向の距離と、画像センサ36の画像全体に占める物体Pの面積の割合との対応を列挙した参照テーブルが予め作成される。この参照テーブルは、制御装置60または保持装置20に予め記憶される。実際の移載時には、移載対象である物体Pの大きさが認識装置12により見積もられる。制御装置60は、認識装置12により見積もられた物体Pの大きさと、画像センサ36の画像全体に占める物体Pの面積の割合とに基づき、参照テーブルを参照して吸着パッド26と物体Pとの距離を見積もることができる。
あるいは、第1タイミングにおいて認識装置12により取得された吸着パッド26と物体Pとの間の距離に関する情報と、略同じ第1タイミングにおける画像センサ36の画像とが対応付けられる。また、第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて認識装置12により取得された吸着パッド26と物体Pとの間の距離に関する情報と、略同じ第2タイミングにおける画像センサ36の画像とが対応付けられる。制御装置60は、これら2つの対応関係に基づき、吸着パッド26と物体Pとの間の距離と画像センサ36の画像全体に占める物体Pの面積の割合との関係を推定することができる。制御装置60は、このように推定された関係に基づき(例えば外挿または内挿により)、任意のタイミングにおける画像センサ36の画像全体に占める物体Pの面積の割合から吸着パッド26と物体Pとの間の距離を見積もることができる。
なお、物体P全体の面積に代えて、物体Pの全部または一部の大きさ(例えば長さや幅)の変化、または物体Pの表面上の特徴部の大きさの変化に基づき、吸着パッド26と物体Pとの間の距離が見積もられてもよい。
【0032】
また、吸着パッド26が物体Pに吸着した際に、吸着パッド26内部が閉空間となり外光が吸着パッド26により減衰または遮断されるため、画像センサ36により検出される光量は吸着前後で変化する。このため、画像センサ36により検出された光量の変化に基づいて、吸着パッド26と物体Pとの吸着状態を判定することができる。画像センサ36の有する光検出素子が受光した光量が第1の光量閾値以上である場合、吸着パッド26は物体Pに吸着していない状態であると判定され得る。画像センサ36の光検出素子が受光した光量が第2の光量閾値以下である場合、吸着パッド26は物体Pに吸着している状態であると判定され得る。第2の光量閾値は、第1の光量閾値と略等しいまたは第1の光量閾値より小さい。
さらに、吸着パッド26により物体Pが保持されている場合において、物体Pの保持状態が変化すると、吸着パッド26内部の画像センサ36により検出された光量が変化し得る。例えば、画像センサ36により検出された光量が変化して第1の光量閾値以上になった場合、吸着パッド26が保持している物体Pは存在しないと判定され得る。この場合、物体Pが落下したと判定することが可能である。このようにして、物体Pの運搬中における物体Pの落下を検知することも可能である。また、例えば、画像センサ36により検出された光量の時間変化が大きい場合にも、物体Pの保持状態に何らかの変化が生じたと判定することが可能である。
【0033】
なお、本実施形態では画像センサ36が1つだけ設けられているが、より広い視野を実現するために、または物体Pの立体視を可能にするために、2つ以上の画像センサが設けられてもよい。
【0034】
次に、
図8を参照して、保持装置20の制御について説明する。
図8は、保持装置20の制御系を示すブロック図である。保持装置20は、制御装置(制御部ともいう)60、電源部62、DCDCコンバータ64、切替弁駆動回路(切替弁ドライバ回路)66、および吸引装置駆動回路(吸引装置ドライバ回路)68をさらに備える。これらは、筐体22の内部に収容される。なお、これらは筐体22の外部に配置されてもよい。
【0035】
制御装置60は、吸引装置28および切替弁32を制御する。具体的には、制御装置60は、吸引装置28の駆動および停止を選択的に指示する駆動指令を吸引装置駆動回路68へ送信する。同様に、制御装置60は、切替弁32の開状態と閉状態との切替などを指示する駆動指令を切替弁駆動回路66へ送信する。
【0036】
大気から流路に気体を供給して吸着パッド26内部の圧力を大気圧と略等しくするためには、制御装置60は、切替弁32を開状態にし、第1チューブ50内部と大気圧空間とを連通させる。一方、吸着パッド26に気体を吸引させるためには、制御装置60は、切替弁32を閉状態にする。この状態で、吸引装置28は、第1チューブ50を通じて吸着パッド26から気体を吸引する。
【0037】
制御装置60は、第1チューブ50に設けられた圧力センサ30によって検出された圧力に基づいて、吸引装置28による吸引を継続するかどうかを決定する。例えば、圧力センサ30により検出された第1チューブ50内部の圧力が第1の圧力閾値よりも低い場合、制御装置60は、第1チューブ50内部の圧力が十分に低いと判定して、吸引装置28の駆動を停止することができる。さらに、制御装置60は、圧力センサ30によって検出された圧力に基づいて、吸着パッド26による物体Pの保持が成功したか否かを判定する。例えば、保持動作が行われた後に、圧力センサ30により検出された圧力が第2の圧力閾値よりも高い場合、または保持動作の前後における圧力の変化が圧力変化閾値以下であった場合、制御装置60は、物体Pの保持が失敗したと判定することができる。ここで、第1の圧力閾値は、第2の圧力閾値と略等しいまたは第1の圧力閾値より高い。なお、圧力センサ30の代わりに、または圧力センサ30に加えて、流量センサが設けられていてもよい。流量センサは、第1チューブ50内部の気体の流量を検出し、制御装置60は、流量センサによって検出された流量に基づいて、吸引装置28による吸引を継続するかどうかを決定してもよい。
【0038】
制御装置60は、圧力センサ30からのセンサ信号や、吸引装置28および切替弁32の駆動状態を表す情報などを上位コントローラ70に無線または有線で送信する。上位コントローラ70は、例えば、飛行体制御装置14および/または飛行体10内の制御装置60を含む。保持装置20は、IoT(Internet of Things)デバイスとして利用されてもよい。
【0039】
電源部62は、例えば、充電式バッテリーである。電源部62は、制御装置60、圧力センサ30、切替弁駆動回路66、および吸引装置駆動回路68に電力を供給する。DCDCコンバータ64は、電源部62から供給される電力を変圧する。圧力センサ30、切替弁駆動回路66、および吸引装置駆動回路68は、DCDCコンバータ64を介して電源部62から電力を供給される。電源部62は、保持装置20が飛行体10と共有してもよく、保持装置20専用の電源部62が設けられてもよい。
【0040】
次に、
図9を参照して、制御装置60による保持装置20の制御についてより詳細に説明する。
図9は、制御装置60による保持装置20の制御の詳細を示すブロック図である。
図9に示すように、制御装置60は、コマンド生成部74、動作モード格納部76、目標指令値生成部78、駆動制御部80、判定部82、および信号処理部84を含む。制御装置60は、入力部72からの入力を受け付けるとともに、駆動部86への出力を行う。駆動部86は、
図8に示した切替弁駆動回路66および吸引装置駆動回路68を含む。
【0041】
入力部72は、動作命令をコマンド生成部74に送る。コマンド生成部74は、動作命令に応じて各作業プロセスで必要となる動作手順を動作コマンドとして生成する。コマンド生成部74は、実行される動作コマンドに応じた動作モード情報を動作モード格納部76に送る。動作モード格納部76は、動作モード情報を格納する。動作モード格納部76は、移載対象となる物体Pの形状、重量、柔軟性などの属性データをさらに格納する。動作モードは、例えば、切替弁32を開状態にする動作、切替弁32を閉状態にする動作、吸引装置28を駆動する動作、および吸引装置28の駆動を停止する動作などである。また、画像センサ36の検出結果に基づいて生成される動作コマンドが変更されてもよい。例えば、物体Pが他の物体と混在している場合に吸着パッド26が誤って他の物体Pを吸着することなどを抑止するために、画像センサ36により取得された画像と予め登録された物体Pの画像とがある程度一致している場合に吸着動作が開始されるようにコマンド生成部74が動作コマンドを生成してもよい。
【0042】
入力部72からの動作命令は、保持装置20の一連の動作に関する命令であり、例えばプログラムの形態で制御装置60において保持される。動作命令は、入力部72によりパネル表示された命令コマンドを作業者がタッチすることで生成されてもよいし、作業者の音声により生成されてもよい。入力部72は、飛行体10と一体であってもよいし、有線または無線で飛行体10に命令を送信できるものでもよい。
【0043】
目標指令値生成部78は、コマンド生成部74から切替弁32または吸引装置28に対する動作コマンドを受け取る。目標指令値生成部78は、切替弁32または吸引装置28の目標値を算出し、切替弁32または吸引装置28の駆動に関する目標指令値を生成する。
【0044】
駆動制御部80は、目標指令値生成部78から切替弁32または吸引装置28の目標指令値を受け取り、目標指令値に応じて切替弁32または吸引装置28を駆動するための駆動指示を生成する。
【0045】
駆動部86は、駆動制御部80から切替弁32または吸引装置28の駆動指示を受け取り、切替弁32または吸引装置28の駆動出力を生成する。切替弁32は、駆動部86から駆動出力を受け取り、供給される気体の量や特性(負圧側と連通、大気圧と連通)を調整する。
【0046】
吸引装置28は、駆動部86から駆動出力を受け取り、駆動出力に従って吸引を開始または停止する。
【0047】
圧力センサ30は、吸着パッド26の吸引動作をセンシングし、センサ信号を生成する。センサ信号は、例えば電圧信号である。画像センサ36は、画像センサ36に入射した光の強度および波長などをセンシングし、これらに基づく画像データに対応するセンサ信号を生成する。センサ信号は、例えば電圧信号である。なお、本実施形態では、画像センサ36により取得された画像データなどに基づいて制御装置60が吸着パッド26と物体Pとの距離の見積もりや吸着パッド26と物体Pとの近接判定を行うが、制御装置60の代わりに画像センサ36がこのような見積もりや判定を行ってもよい。
【0048】
信号処理部84は、圧力センサ30、および画像センサ36からセンサ信号を受け取り、センサ信号に対して信号増幅およびアナログデジタル変換などを含む信号処理を行う。
【0049】
判定部82は、信号処理部84から変換されたセンサ信号を受け取る。判定部82は、センサ信号に応じて、気体供給の調整の必要性や物体Pの保持の有無を判定する。判定部82は、判定結果に応じて、コマンド生成部74から動作モード情報を受け取る。判定部82は、動作モード情報に対応する切替弁32の動作を動作モード格納部76から抽出する。判定部82は、切替弁32の開状態と閉状態との切替えなどのコマンドを生成する。判定部82は、コマンド生成部74に対して目標値を修正する戻り値コマンドを生成する。戻り値コマンドにより、コマンド生成部74は、現状の動作に適した対応処理動作を実行でき、保持装置20の動作の信頼性および確実性を確保する。
【0050】
上述した制御装置60の機能の一部または全部は、飛行体制御装置14により実現されてもよく、飛行体10内の制御装置60により実現されてもよい。
【0051】
次に、
図10を参照して、保持装置20の動作例を説明する。
図10は、保持装置20の動作例を示す図である。
図10中の(a)は、吸着パッド26が物体Pに接近する途中の状態を示し、
図10中の(b)は、吸着パッド26が物体Pに接触している状態を示し、
図10中の(c)は、吸着パッド26が物体Pを保持および運搬している状態を示す。
図10において、物体Pは、移載対象の物体であり、積載台B上に載置されている。
【0052】
(1)接近
飛行体10が、物体Pに向けて移動する。具体的には、飛行体10は、物体Pの上方に移動し、その後に下降する。保持装置20の画像センサ36により取得された画像に基づき物体Pの接近が検出されると、制御装置60は、物体Pを素早く吸着するために、吸引装置28を予め駆動して吸着パッド26内部の真空引きを開始する。制御装置60は、画像センサ36からの画像に基づいて見積もられた吸着パッド26から物体Pまでの距離が距離閾値未満になった場合に、吸引装置28を駆動する。
【0053】
距離閾値は、画像センサ36の画像内で物体Pの占める面積の変化から算出され得る。例えば、距離閾値は、物体Pが吸着パッド26の吸着面に接触する直前に吸引装置28の駆動が開始されるように設定される。距離閾値は、例えば、10cmから1m程度である。距離閾値は、例えば、吸着パッド26が物体Pに接触する1秒前から2秒前に吸引装置28が駆動されるように設定される。距離閾値は、可変値であってもよく、可変値でなくてもよい。例えば、距離閾値は、飛行体10の移動速度、すなわち、吸着パッド26の移動速度に応じて調整され得る。具体的には、距離閾値は、飛行体10の移動速度が速い場合には大きい値に設定され、飛行体10の移動速度が遅い場合には小さい値に設定される。距離閾値は、移動速度に対して連続的に調整されてもよく、移動速度に対して段階的に調整されてもよい。飛行体10の移動速度は、上位コントローラ70から取得してもよく、第3の実施形態で後述するように保持装置20内に設けられた加速度センサ94から出力されるセンサ信号に基づいて算出されてもよい。
【0054】
(2)接触・吸着
制御装置60は、画像センサ36からのセンサ信号に基づいて吸着パッド26への物体Pの接触を検知し、吸着動作を継続するとともに、圧力をモニタリングする。例えば、画像センサ36により取得される画像の明るさが一定値を下回った場合、制御装置60は、吸着パッド26に物体Pが接触したと判定することができる。制御装置60は、圧力が所定の圧力閾値(予め設定された真空度)より低くなった場合に、吸引装置28の駆動を停止してもよい。通気性のない物体Pを吸着する場合は、吸引装置28の駆動を停止しても吸着パッド26の真空度が維持される時間は長い。一方、通気性のある物体Pを吸着する場合は、吸引装置28の駆動を停止すると吸着パッド26内部に空気が進入するので、吸着パッド26の真空度が維持される時間は短い。このため、制御装置60は、圧力をモニタリングしながら吸引装置28を断続的に駆動する。
【0055】
(3)運搬
制御装置60は、真空度をモニタリングして吸引装置28を断続的に駆動しながら、物体Pを運搬するために飛行体10の移動を制御する。例えば、飛行体10は、上昇し、その後に横方向に移動する。制御装置60は、必要に応じて、画像センサ36および圧力センサ30から出力されるセンサ信号を含む情報を上位コントローラ70に送信する。上位コントローラ70は、保持装置20から受け取った情報に基づいて保持状態を確認する。上位コントローラ70は、移載作業全体のスケジュール管理や飛行体10の動作管理などを行う。
【0056】
(4)解放
飛行体10が物体Pを目的地(例えば
図1に示した搬送装置16)まで運搬すると、制御装置60は、切替弁32を開き、大気圧空間と吸着パッド26を連通させる。これにより、吸着パッド26内の真空が破壊され、物体Pは吸着パッド26から解放される。このとき、吸引装置28は停止している。物体Pが解放されたか否かは、必要に応じて、画像センサ36および圧力センサ30から出力されるセンサ信号に基づいて判定され得る。例えば、画像センサ36により取得される画像の明るさが一定値を上回った場合、または圧力センサ30により取得される圧力が一定値(例えば大気圧程度の値)まで増加した場合、制御装置60は、物体Pが解放されたと判定することができる。
【0057】
次に、
図11および
図12を参照して、飛行体10による動作例について動作フローを用いてさらに詳細に説明する。
図11は、飛行体10による物体Pへの接近から物体Pの保持までの動作フローを示す。まず、飛行体10は、飛行体制御装置14の制御のもと、目標位置へ移動する(S101)。飛行体制御装置14は、認識装置12によって生成される物体Pの位置姿勢情報に基づいて、飛行体10の移動を制御する。なお、作業者が、目視により物体Pを確認し、物体Pの位置姿勢情報を入力してもよい。
【0058】
飛行体10は、目標位置へ移動した後、物体Pに接近する(S102)。これに伴い、保持装置20の吸着パッド26が物体Pに接近する。次いで、制御装置60が、吸着パッド26が十分に物体Pに近接しているか否かを判定する(S103)。具体的には、制御装置60は、画像センサ36からのセンサ信号に基づいて、物体Pまでの距離が距離閾値以下になったか否かを判定する。吸着パッド26が十分に物体Pに近接していないと判定された場合(S103:NO)、S102に戻り、制御装置60は、物体Pにさらに接近するように飛行体10に指示する。
【0059】
制御装置60が、吸着パッド26が十分に物体Pに近接したと判定した場合(S103:YES)、制御装置60は、吸引装置28を駆動する(S104)。次いで、制御装置60は、吸着パッド26の真空度が目標の圧力値に到達したか否かを判定する(S105)。吸着パッド26の真空度が目標の圧力値に到達したと判定された場合(S105:YES)、飛行体10は、飛行体制御装置14の制御のもと、物体Pの運搬を開始する。吸着パッド26の真空度が目標の圧力値に到達していないと判定された場合(S105:NO)、制御装置60は、物体Pにさらに接近するように飛行体10に指示する(S102)。
【0060】
なお、制御装置60は、吸着パッド26が物体Pに接触したと判定した場合に初めて吸引装置28を駆動してもよい。この場合において、圧力センサ30により検出された吸着パッド26内部の圧力が目標の圧力値に到達していないと判定された場合、飛行体制御装置14は、物体Pから離れて上昇して位置を補正するように飛行体10に指示する。その後、飛行体制御装置14は、再度物体Pに接近するように飛行体10に指示する。
【0061】
図12は、飛行体10による物体Pの運搬から解放までの動作フローを示す。飛行体10は、飛行体制御装置14の制御のもと、吸着パッド26により物体Pを保持した状態で積載台Bから離脱する(S201)。飛行体10が物体Pを保持したまま移動している間、制御装置60は、吸引装置28を断続的に駆動する(S202)。これにより、吸着パッド26内部の圧力が目標の圧力値以下に保たれる。その後、飛行体10が目標位置に移動する(S203)と、物体Pの解放動作が行われる(S204)。例えば、制御装置60は、吸引装置28を停止させ、切替弁32を開く。次いで、制御装置60は、圧力センサ30からのセンサ信号に基づいて、吸着パッド26内部の圧力が目標の圧力値に到達したか否かを判定する(S205)。吸着パッド26内部の圧力が目標の圧力値に到達していないと判定された場合(S205:NO)、飛行体制御装置14は、吸着パッド26内部の圧力が目標の圧力値に到達するまで飛行体10を移動させない。吸着パッド26の真空度が目標の圧力値まで下がったこと(すなわち、吸着パッド26内部の圧力が目標の圧力値以上になったこと)が確認された場合(S205:YES)、飛行体制御装置14が飛行体10を移動させる(S206)。なお、解放動作の確実性をより向上させるために、物体Pが解放されたか否かは、圧力センサ30からのセンサ信号に加えて、画像センサ36からのセンサ信号に基づいて判定されてもよい。例えば、画像センサ36により取得される画像の明るさが一定値を上回った場合、制御装置60は、物体Pが吸着パッド26から解放されたと判定することができる。
【0062】
次に、
図13から
図16を参照して、画像センサ36の応用例について説明する。
図13は、画像センサ36の一応用例を示す。
図13中の(a)は、保持装置20の長さ方向Xが鉛直方向に略一致する状態において、吸着パッド26が積載台Bに載置された物体Pを上方から吸着しようとしている様子を示す。
図13中の(b)は、
図13中の(a)の状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
図13中の(c)は、保持装置20の吸着面が物体Pの被吸着面と略平行となるように吸着パッド26が傾けられている状態において、吸着パッド26が積載台Bに載置された物体Pを上方から吸着しようとしている様子を示す。
図13中の(d)は、
図13中の(c)の状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
【0063】
図13において、物体Pは、積載台Bに対して傾斜している。このように、吸着パッド26の吸着面の位置姿勢と物体Pの被吸着面の位置姿勢との間に差異がある場合、吸着パッド26の吸着面が物体Pの被吸着面に隙間なく接触するように、飛行体制御装置14は、吸着パッド26の位置姿勢を物体Pの位置姿勢に応じて補正しながら接近するように飛行体10に指示することができる。具体的には、
図13中の(a)のように保持装置20の長さ方向Xが鉛直方向に略一致する状態において、画像センサ36により取得される画像は、
図13中の(b)のように、物体PのエッジEを含む。この場合、制御装置60は、物体Pの被吸着面が吸着パッド26の吸着面に対して傾いていると判定することができる。飛行体制御装置14は、
図13中の(c)および
図13中の(d)に示すように、画像センサ36から見てこのようなエッジEが見えなくなるまで吸着パッド26を鉛直方向に対して傾けるように飛行体10に指示することができる。このように傾けられた吸着パッド26の吸着面は、物体Pの被吸着面に対して略平行になり得る。ここで、吸着パッド26の傾斜動作は、飛行体10自体が傾くことにより行われてもよく、吸着パッド26を飛行体10に対して回動させるように構成された回動機構により行われてもよい。なお、物体PのエッジEの代わりに、例えば、画像センサ36により取得される画像において物体Pの2つの長辺S,Sが互いに略平行でない場合に、制御装置60は、物体Pの被吸着面が吸着パッド26の吸着面に対して傾いていると判定してもよい。あるいは、画像センサ36の被写界深度が狭い状態で、物体Pの被吸着面の複数の部分に対して焦点合わせを行うことにより、物体Pの被吸着面が吸着パッド26の吸着面に対して傾いているか否かを判定してもよい。また、こうした判定は、物体Pの表面上の特徴部に基づいて行われてもよい。さらに、搬送システム1では、認識装置12の外部画像センサ12aなどを用いた画像認識処理などにより移載される物体Pの外形情報が取得されるので、上記の判定は、画像センサ36により取得される画像に加えて、当該外形情報に基づいて行われてもよい。
【0064】
図14は、画像センサ36の一応用例を示す。
図14中の(a)は、物体Pの角部分に対して吸着を行う吸着パッド26の側面図である。
図14中の(b)は、
図14中の(a)の状態における吸着パッド26および物体Pの底面図である。
図14中の(c)は、
図14中の(a)の状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
図14中の(a)および
図14中の(b)に示すように、物体Pの上面は、吸着パッド26の吸着面より十分に広い。このため、保持装置20が物体Pを適切な位置で保持していれば、画像センサ36の画像は物体Pで占められるはずである。しかしながら、
図14中の(a)および
図14中の(b)に示されるように吸着パッド26の一部のみが物体Pに接触し吸着パッド26の残りの部分が宙に浮いている状態では、画像センサ36の画像は物体Pで占められない(
図14中の(c)参照)。制御装置60は、画像センサ36の光検出素子が受光した光量が所定の光量閾値以上である場合、保持装置20が物体Pを適切な位置で保持していないと判定することができる。この場合、飛行体制御装置14は、保持動作をやり直すように飛行体10に指示する。また、物体Pの保持中に画像センサ36により検出された物体Pと、認識装置12の外部画像センサ12aなどの画像認識処理などにより事前に検出された移載対象の物体Pとの間に相違がある場合に、制御装置60は、保持装置20が誤った物体(すなわち、移載対象の物体Pとは異なる物体)を保持していると判定することができる。例えば、移載対象の物体Pが細長い物体であることが認識装置12により事前に認識されていた場合において、画像センサ36からの画像が、細長い物体ではなく画像全体を占める物体を写している場合、制御装置60は、保持装置20が誤って別の物体を保持している可能性があると判定することができる。
【0065】
図15は、画像センサ36の一応用例を示す。
図15中の(a)は、凸部を有する物体Pに対して吸着を行う吸着パッド26の側面図である。
図15中の(b)は、
図15中の(a)の状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
図15中の(a)に示すように、物体Pの上面に凸部が形成されていることにより、吸着パッド26の吸着面と物体Pの被吸着面との間に隙間が生じている。このような場合、隙間から空気が吸着パッド26内部へ流入し、吸着パッド26内部の真空度が上がらないため、吸着力は低下する傾向にある。
図15中の(b)に示すように、隙間から外光(例えば、照明装置42による光または自然光)が吸着パッド26内部に入射することにより、画像センサ36により取得される画像では、光量分布(明暗度分布ともいう)に偏りが生じる。ここで、「光量分布」とは、画像における各画素の光量の大小を示す分布を意味する。「光量分布の偏り」とは、光量分布が不均一であることを意味し、例えば、画像の中心に関してまたは中心を通る直線に関して光量分布が非対称である場合などがある。このような光量分布の偏りが所定の範囲内である場合、制御装置60は、吸着パッド26の吸着面と物体Pの被吸着面との間に隙間が存在しないと判定して吸引装置28を駆動することができる。一方、このような光量分布の偏りが所定の範囲を超えている場合、制御装置60は、吸着パッド26の吸着面と物体Pの被吸着面との間に隙間が存在すると判定することができる。この場合、飛行体制御装置14は、物体Pから離れて上昇して位置を補正するように飛行体10に指示する。その後、飛行体制御装置14は、再度物体Pに接近して、隙間が生じないような場所で吸着を行うように飛行体10に指示する。
【0066】
図16は、画像センサ36の一応用例を示す。
図16中の(a)は、物体Pの重心が吸着パッド26の近傍に位置している状態において、物体Pに対して吸着を行う吸着パッド26の側面図である。
図16中の(b)は、
図16中の(a)の状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
図16中の(c)は、物体Pの重心が吸着パッド26の位置と大きくずれている状態において、物体Pに対して吸着を行う吸着パッド26の側面図である。
図16中の(d)は、
図16中の(c)の状態において画像センサ36により取得される画像の概略図を示す。
図16中の(a)では、物体Pが略水平に保持装置20に保持されている。一方、
図16中の(b)では、物体Pが水平面に対して傾いた状態で保持装置20に保持されている。
ベローズ形状の吸着パッド26では、物体Pを保持している状態で吸着パッド26が収縮する。吸着パッド26の素材がシリコン素材など透光性の材質である場合、吸着時の吸着パッド26内部は一定の明るさに保たれる。
図16中の(b)のように物体Pが水平面に対して傾いている場合、吸着パッド26のベローズ形状において密になっている箇所と疎になっている箇所が生じる場合がある。この場合、ベローズ形状が密の箇所よりも疎の箇所からより多くの外光が吸着パッド26内部に入光するため、画像センサ36により取得される画像に光量分布の偏りが生じ得る。このため、物体Pを保持して持ち上げている状態で画像センサ36により取得される画像に光量分布の偏りが生じている場合、制御装置60は、保持されている物体Pが水平面に対して傾いていると判定することができる。また、制御装置60は、画像センサ36により検出された光量に基づいて、物体Pの傾斜の程度を算出することができる。この場合、傾斜した物体Pが外部環境と接触して破損するような事態を避けるために、飛行体制御装置14は、一旦物体Pから離れて位置を補正した後再度物体Pに対して吸着を行うように飛行体10に指示する。吸着位置の変更を行う場合、飛行体制御装置14は、ベローズ形状が疎になっている方向、すなわち光量分布で明るい方向(物体Pの重心に近い側)へ吸着パッド26が移動するように飛行体10に指示する。算出された光量分布に基づいて物体Pの保持動作が再度行われることにより、保持装置20が物体Pを安定して保持することが可能になる。なお、吸着パッド26には光量変化をより検出しやすいように模様(例えば縦線や格子線など)を施してもよい。なお、外光は、照明装置42による照明光でもよく、自然光でもよい。
【0067】
以上のような第1の実施形態の構成によれば、吸着保持動作の信頼性の向上を図ることができる。
【0068】
物流業界では通信販売市場の拡大により、荷物の取扱量が急増する一方、少子高齢化を背景に不足する労働力の確保が課題となっている。現在、大型物流センターの建設が盛んに進められている。物流企業各社は、様々な作業に自動化機器を導入し、物流システムの自動化に取り組んでいる。
【0069】
荷物を別の場所へ移動する移載作業(荷降ろし、デパレタイジング、ピッキングなどとも呼ばれる)を行う装置として、据置型のマニピュレータが知られている。このようなマニピュレータでは、作業範囲が限定される。また、移動台車とマニピュレータを組み合わせた移動マニピュレータ機器も想定されるが、平面領域以外の作業場所へ移動する場合には階段などの立体的な障害物を乗り越える必要があることや、通路移動時に周囲環境との接触を防止するために環境側の通路幅を拡大するなどの対策を講じる必要があることにより、やはり作業範囲が限定される。
【0070】
上記のような事情のもと、空中を広範囲にわたって自由に移動できる飛行体(例えばドローン)の活用が期待されている。移載作業を行う飛行体を実現するためには、飛行体に適用可能な物体保持機構が必要となる。
【0071】
本実施形態に係る保持装置20では、画像センサ36は物体Pからの光量を二次元的に検出することができるので、物体Pの位置姿勢の検出、物体Pの落下の検知、適切な吸着領域の検出、および物体Pが吸着されていない状態の検出を可能にする。また、光量を一次元的に検出するセンサを使用する場合と比較して、二次元検出を行う光量センサを使用する場合、物体Pの形状の情報も取得することができるので、吸着が失敗した場合などにその後の位置修正の方向の決定が容易である。また、一次元検出を行う光量センサでは、物体Pが穴やメッシュ構造を有する場合などに誤判定を行う場合があるが、二次元検出を行う光量センサを使用すると、このような物体Pについても対象認識をより正確に行うことが可能である。
【0072】
また、本実施形態に係る保持装置20は、吸引装置28および電源部62を含めてコンポーネント化されている。これにより、保持装置20は、飛行体10に容易に取り付けることができる。さらに、保持装置20は、画像センサ36を備え、画像センサ36からのセンサ信号に基づいて保持部が物体Pに接触する直前に自律的に吸着動作を開始する。これにより、省エネルギー化を実現できる。さらに、真空系への予期せぬゴミ詰まりを抑制し、耐久性を向上させることが可能となる。なお、本実施形態に係る保持装置20は、コンポーネント化されているため飛行体に限らず、マニピュレータや移動台車などにも容易に接続し、利用することが可能である。
【0073】
また、保持装置20が画像センサ36などを備えて一体型にコンポーネント化されている場合、センサ類の省配線化につながるとともに、チューブ配管長が短くなるため吸着動作の時間短縮が可能となる。吸引装置28は、吸着パッド26内部に加えて、チューブ内部全体からも気体を吸引する必要がある。チューブ配管長が短いと、その分吸引する必要のある体積が小さいため、吸着動作の時間短縮につながる。
【0074】
搬送システム1では、画像認識処理により飛行体10から最上段の物体Pの上面までの距離情報が取得され、飛行体10は当該距離情報に基づいて降下するよう制御される。しかし、距離情報に誤検出があった場合、特に実際の距離よりも大きな距離が検出された場合には、飛行体10の保持装置20(具体的には吸着パッド26)が物体Pを押し込んでしまい、物体Pの破損や変形を招くおそれがある。
【0075】
そこで上記のような構成を有する画像センサ36を吸着パッド26内部の画像センサ基板34上に設けることにより、吸着パッド26が物体Pに接触する前に飛行体10の下降を停止することが可能になる。また、画像センサ36で検出された画像に占める物体Pの面積割合の変化量から、飛行体10の下降量を見積もることが可能となる。これにより、保持装置20の過剰な押し込みによる物体Pの破損または変形を防止することができる。また、このような押し込みは保持装置20の吸着パッド26全体で均等に行われるので、画像センサ基板34に配置された少なくとも1つの画像センサ36を用いれば十分である。したがって、画像センサ36を画像センサ基板34の中央に少なくとも1つ配置することで、必要最小限のセンサで押し込み防止を図ることができる。
【0076】
本実施形態では、画像センサ基板34上に画像センサ36が配置されている。これにより、認識装置12による画像認識が失敗した場合に、吸着パッド26により物体Pを保持して持ち上げて、持ち上げた状態での画像センサ36の検出結果に基づいて物体Pとの吸着状態および傾斜を認識することが可能である。その結果、認識された物体Pの吸着情報および傾斜に基づいて吸着パッド26による適切な保持態様を設定することが可能となり、当該設定された態様で物体Pを再度保持することができる。このようにして、移載対象の物体Pの誤認識が生じた場合でも、物体Pの落下またはエラーによる運転停止などを発生させることなく、移載作業を継続して実行することが可能になる。
【0077】
本実施形態では、制御装置60は、画像センサ36による光量分布の検出の結果が所定の条件を満たす場合に吸引を行うように吸引装置28を制御する。このような構成によれば、光量分布に基づいて吸着の成否などを判定することができるので、吸着保持動作の信頼性を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、画像センサ36は、吸着パッド26の内部または後ろ側に配置されている。また、吸着パッド26が空洞26aを有し、画像センサ36は、空洞26aを通して外部から見える位置に配置されている。このような構成によれば、画像センサ36が保持装置20の内部から撮影を行うことが可能であるので、保持装置20の小型化が可能である。その結果、吸着動作の信頼性が向上し得る。
【0079】
また、本実施形態では、制御装置60は、画像センサ36により取得された情報に基づいて、物体Pが吸着パッド26に近接していることが検出された場合に吸引を行うように吸引装置28を制御する。このような構成によれば、さらなる省エネルギー化が可能となり、電源部62のバッテリーのさらなる節約が可能となる。
【0080】
また、本実施形態では、制御装置60は、画像センサ36により取得された画像における物体Pおよび物体Pの表面上の特徴部の少なくとも一方の大きさの変化に基づいて物体Pまでの距離を見積もり、制御装置60は、当該距離が距離閾値以下である場合に吸引を行うように吸引装置28を制御する。このような構成によれば、吸着パッド26が物体Pに接近して初めて吸引装置28が駆動されるため、電源部62のエネルギー消費を抑制することができる。このことは、飛行体10の稼働時間の向上につながる。
【0081】
また、本実施形態では、制御装置60は、吸着パッド26の移動速度が第1の速度である場合に距離閾値を第1の値に設定し、吸着パッド26の移動速度が第1の速度より速い第2の速度である場合に距離閾値を第1の値より大きな第2の値に設定する。このような構成によれば、さらなる省エネルギー化が可能となり、電源部62のバッテリーのさらなる節約が可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、吸着パッド26に照明光を照射する照明装置42をさらに備え、制御装置60は、照明装置42が光を照射している状態で画像センサ36により取得された光量分布の検出の結果が所定の条件を満たす場合に吸引を行うように吸引装置28を制御する。このような構成によれば、光量分布に基づく吸着の成否などの判定がより確実かつ容易になる。
【0083】
また、本実施形態では、画像センサ36は、吸着パッド26が物体Pに吸着する方向に対して略直交する平面内で吸着パッド26の中央に配置されている。このような構成によれば、光量分布に基づく吸着の成否などの判定がより確実かつ容易になる。
【0084】
また、本実施形態に係る保持装置20は、吸引装置28と吸着パッド26との間の流路と大気圧空間との連通が可能である第1の状態と流路と大気圧空間との連通が遮断された第2の状態と、を切り替える切替弁32と、吸引装置28および切替弁32を駆動する駆動装置と、流路の内部の気体の圧力を検出する圧力センサ30と、をさらに備える。このような構成によれば、吸着パッド26内部の圧力を検出することが可能であるので、画像センサ36による検出結果と併せて、保持状態などに関するより確実な情報を得ることができる。また、物体Pの運搬時に、吸着パッド26の真空度(圧力値)を基に吸引装置28の稼働状態の切り替えを実施することができる。このことも、電源部62のエネルギー消費の抑制につながる。
【0085】
また、本実施形態では、制御装置60は、圧力センサ30によって検出された圧力が第1の圧力閾値よりも低い場合に吸引装置28の駆動を停止し、圧力センサ30によって検出された圧力が第2の圧力閾値よりも高い場合に吸引装置28の駆動を開始し、第2の圧力閾値は、第1の圧力閾値と略等しいまたは第1の圧力閾値より高い。このような構成によれば、さらなる省エネルギー化が可能となり、電源部62のバッテリーのさらなる節約が可能となる。
【0086】
また、本実施形態に係る保持装置20は、吸着パッド26を支持する支持部材24をさらに備え、支持部材24は、吸着パッド26および吸引装置28と連通する空気穴24bを有し、画像センサ36は、支持部材24の空気穴24bに対して吸引装置28の方へ離間して配置されている。このような構成によれば、画像センサ36および画像センサ基板34が、吸着パッド26と吸引装置28との間の流路を塞がず、吸引装置28による空気の吸引がスムーズに行われ得る。
【0087】
また、本実施形態では、画像センサ36が支持部材24に対して弾性部材44により支持されている。このような構成によれば、飛行体10や保持装置20の振動に対して画像センサ36に防振特性を付与することが可能である。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、
図17を参照して、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、近接センサ90が設けられる点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0089】
図17は、第2の実施形態に係る保持装置20を示す図である。
図17中の(c)は、
図17中の(a)に示された保持装置20のF17C-F17C線に沿う断面を示す。
図17に示すように、近接センサ90は、吸着パッド26の内部に配置されている。言い換えると、近接センサ90は、筐体22、支持部材24、吸着パッド26、および物体Pにより形成されることになる密閉空間の内部に位置する。近接センサ90は、近接センサ基板92に搭載され、近接センサ基板92を介して筐体22に固定されている。近接センサ基板92は、例えば、リング状の部材である。近接センサ90は、支持部材24および吸着パッド26と同心の円周上に45度ずつ離れて8個配置されている。なお、近接センサ90は、1つでもよく、2つから7つでもよく、9つ以上であってもよい。例えば、近接センサ90が光電型のセンサである場合、近接センサ90は、近接センサ90が発する光が吸着パッド26の吸着面を含む平面と略鉛直に交わるように配置される。なお、近接センサ90の配置は、
図17に示される例に限定されるものではなく、種々の形態を取り得る。
【0090】
近接センサ基板92は、その主面(検出表面ともいう)上に近接センサ90を搭載する。近接センサ基板92は、吸着パッド固定部材40上に設けられる。近接センサ基板92は、リング状である。近接センサ90は、物体Pが近接センサ90に近接していることを検出する。吸着パッド26の吸着面および近接センサ90は、近接センサ基板92の主面側に位置しており、近接センサ90への物体Pの接近は、吸着パッド26への物体Pの接近と見なすことができる。
なお、近接センサ90および近接センサ基板92は、吸着パッド26の後ろ側に配置されてもよい。例えば、近接センサ90は、画像センサ36に隣接して設けられてもよい。この場合、近接センサ基板92が省略されて画像センサ基板34が近接センサ90用の基板を兼ねてもよい。
【0091】
近接センサ90として、例えば、距離センサを使用することができる。距離センサは、対象物までの距離を非接触で測定する。距離センサの例は、アクティブ型の光学距離測定センサ、反射型フォトセンサ、光TOF(Time-Of-Flight)型の光学距離測定センサなどを含む。ここで、「アクティブ型のセンサ」とは、対象物への能動的な働きかけ(例えば対象物への光照射)を行うセンサを意味する。
アクティブ型の光学距離測定センサは、LEDなどの光源から対象物に光を照射し、対象物における反射光を光検出素子で検出することで、対象物までの距離に応じた信号を出力する。アクティブ型の光学距離測定センサの例にPSD(Position Sensitive Detector)がある。PSDは、対象物までの距離を簡易に測定することができる光三角測量型の光学距離測定センサである。
【0092】
反射型フォトセンサは、LEDおよびフォトダイオードを備える。LEDは、アナログ回路から供給される駆動信号に基づいて所定の光量の検出光を射出する。対象物が反射型フォトセンサの近傍に位置している場合には、当該対象物によって検出光が反射される。対象物からの反射光はフォトダイオードによって検出される。フォトダイオードは、受光量(反射光の光強度)に対応する検出電流を発生する。反射光の強度は物体Pとフォトダイオードの距離が小さいほど大きくなるので、対象物との距離を表す検出信号を得ることができる。アナログ回路は、LEDの検出光の光量を一定に制御し、フォトダイオードから得られる検出電流に対応する検出信号を生成して、制御装置60に供給する。制御装置60は、受け取った検出信号に基づき物体Pとの距離を算出することができる。
【0093】
光TOF型の光学距離測定センサは、反射光が返ってくるまでの時間を計測して距離を測定する。TOF法は、光源から対象物に向けてパルス光を出射し、対象物で反射されたパルス光を光検出素子で検出することで、パルス光の出射タイミングと検出タイミングの時間差を測定する。この時間差(Δt)は、対象物までの距離dの2倍の距離(2×d)をパルス光が光速(=c)で飛行するのに要する時間であるため、d=(c×Δt)/2が成立する。時間差(Δt)は、光源からの出射パルスと検出パルスの位相差と言い換えることもできる。この位相差を検出すれば、対象物までの距離dを求めることができる。TOF法は、反射光の強さで距離を測定する方法よりも精密な距離測定を可能にする。さらに、対象物の表面状態の影響に強く、安定した測定が可能である。
【0094】
その他、近接センサ90として、対象物の有無を判定するセンサが使用されてもよい。このセンサの例に反射型の光電センサがある。この光電センサは、光源および光検出素子を備える。光電センサは、光源から対象物に対し赤外線などの光を投光し、その光が対象物で反射されて光量が減少した反射光を光検出素子で受光する。光電センサは、光検出素子で受光した光量が所定の光量閾値以上である場合に、光電センサから一定距離の範囲内に対象物が存在することを検出する。そして、対象物が光電センサから一定距離の範囲の外に離れると、対象物からの反射光の光量の減衰が大きくなって、光検出素子で受光した光量が所定の光量閾値未満となり、光電センサは、一定距離内に対象物が存在しないことを検出する。光電センサは、例えば、対象物が一定距離内に存在する間は検出信号を出力し、対象物が一定距離内に存在しない場合には検出信号を出力しない。
【0095】
なお、近接センサ90は、光電型のセンサに限らず、静電容量型や超音波型などの他のタイプのセンサであってもよい。
【0096】
近接センサ90は、吸着パッド26に吸着された物体Pの存在を検出する在荷センサとして使用され得る。近接センサ90は、吸着パッド26の先端より所定距離だけ離れた位置までの範囲の距離を計測することができる。そして、近接センサ90は、近接センサ基板92の主面から一定距離の範囲内に物体Pが存在するか否かを検出する。このような近接センサ90が近接センサ基板92の面内方向に分散して配置されることにより、近接センサ90からの距離情報に基づいて、吸着パッド26で保持した物体Pの外形情報(すなわち寸法や形状)を認識することが可能である。
【0097】
さらに、吸着パッド26により物体Pが保持されている間、当該物体Pの外形に対応する領域に位置する近接センサ90は物体Pの存在を検出する(すなわち、計測された距離が近距離となる)はずである。したがって、物体Pの保持中に全ての近接センサ90で物体Pが存在しないことを検出した(すなわち、計測された距離が遠距離となる)場合には、物体Pが落下したとみなすことができる。このようにして、物体Pの落下を検知することも可能である。
【0098】
搬送システム1では、画像認識処理などにより移載対象の物体Pの外形情報が取得されるので、飛行体制御装置14は、当該外形情報に基づいて、近接センサ90の検出結果(例えば、8つの近接センサ90のうちどの近接センサ90が物体Pの存在を検出する(すなわち、計測された距離が近距離となる)か)を予測することができる。例えば、
図14に示すように、積載台Bに載置された物体Pを保持する場合を想定する。ここでは、
図14に示すように、物体Pの上面は、吸着パッド26の吸着面より十分に広い。このため、保持装置20が物体Pを適切な位置で保持していれば、すべての近接センサ90で物体Pが検出されるはずである。しかしながら、
図14に示される状態では、近接センサ90のうち4分の3で物体Pが検出されない。制御装置60は、複数の近接センサ90の少なくとも一部が物体Pの存在を検出しない場合、保持装置20が物体Pを適切な位置で保持していないと判定することができる。また、物体Pの保持中における近接センサ90による実際の検出結果と、上記の飛行体制御装置14による近接センサ90の検出結果の予測との間に相違がある場合に、制御装置60は、保持装置20が誤った物体(すなわち、移載対象の物体Pとは異なる物体)を保持していると判定することができる。例えば、移載対象の物体Pが細長い物体であることが認識装置12により事前に認識されていた場合において、当該細長い物体に対応する、対向する1対の近接センサ90だけでなく全ての近接センサ90が物体の存在を検出した場合、制御装置60は、保持装置20が誤って別の物体を保持している可能性があると判定することができる。
【0099】
ベローズ形状の吸着パッド26では、物体Pを保持している時に吸着パッド26が収縮する。これにより、飛行体10が下降して近接センサ90と物体Pの上面とが所定の距離よりも近づいた場合に、吸着パッド26が物体Pをうまく吸着したと判定することが可能である。
【0100】
搬送システム1では、画像認識処理により飛行体10から最上段の物体Pの上面までの距離情報が取得され、飛行体制御装置14は、その距離情報に基づいて降下するように飛行体10を制御する。しかしながら、距離情報に誤検出があった場合、特に実際の距離よりも大きな距離が検出された場合には、飛行体10の保持装置20(具体的には吸着パッド26)が物体Pを押し込んでしまい、物体Pの破損や変形を招くおそれがある。
【0101】
そこで、上記のような構成を有する近接センサ90を吸着パッド26内部の近接センサ基板92上に設けることにより、近接センサ基板92が物体Pに近接する前に飛行体10の下降を停止することが可能になる。これにより、保持装置20の過剰な押し込みによる物体Pの破損または変形を防止することができる。また、このような押し込みは保持装置20の吸着パッド26全体で均等に行われるので、近接センサ基板92に配置された少なくとも1つの近接センサ90を用いれば十分である。したがって、近接センサ90を近接センサ基板92の輪郭に沿って少なくとも1つ配置することで、必要最小限のセンサで押し込み防止を図ることができる。
【0102】
また、近接センサ90は、吸着パッド26で吸着する物体Pのサイズオーバーの確認に用いることができる。
【0103】
以上のような第2の実施形態の構成によれば、近接センサ90は、物体Pの落下の検知、適切な吸着領域の検出、および吸着パッド26の過剰な押し込みの防止を可能にする。また、第1の実施形態の構成において画像センサ36による検出失敗や誤検出が発生した場合であっても、第2の実施形態の構成における近接センサ90で物体Pとの接触を検出することにより、物体Pを確実に検出することが可能になる。特に、物体Pが透明である場合など画像センサ36だけでは距離の検出が難しい場合に、近接センサ90は有用である。
【0104】
また、本実施形態では、近接センサ90は、吸着パッド26の内部に配置されている。このような構成によれば、保持装置20の小型化が可能である。その結果、吸着動作の信頼性が向上し得る。
【0105】
(第3の実施形態)
次に、
図18を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、加速度センサ94が設けられる点で、第2の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0106】
図18に示すように、第3の実施形態に係る保持装置20は、近接センサ90に加えて、加速度センサ94を有する。加速度センサ94は、制御装置60に接続されている。例えば、加速度センサ94は、筐体22内部に収容されている。加速度センサ94とは、加速度の測定を目的とした慣性センサである。加速度センサ94は、振動センサと異なり、直流(DC)の加速度を検出することが可能であるため、重力を検出することも可能である。加速度センサ94によって測定された加速度を表す加速度信号に対して適切な信号処理を行うことによって、傾きや動き、振動、衝撃といったさまざまな情報が得られる。これにより、飛行体10の移動速度や加速状態をモニタリングすることが可能となるため、吸引装置28の駆動タイミングを飛行体10の移動速度に応じて調整することが可能となる。より具体的には、加速状態に応じて近接センサ90または画像センサ36に関する距離閾値を変化させることにより、吸引装置28の駆動タイミングが調整される。例えば、加速度センサ94からの信号に基づいて飛行体10の移動速度が大きいと判定された場合、制御装置60は、物体Pの接近を検出するための距離閾値を大きな値に設定することにより、物体Pが吸着パッド26に接触する直前に吸引装置28を駆動することが可能である。逆に、加速度センサ94からの信号に基づいて飛行体10の移動速度が小さいと判定された場合、制御装置60は、上記の距離閾値を小さな値に設定することにより、物体Pが吸着パッド26に接触する直前に吸引装置28を駆動することが可能である。
【0107】
以上のような第3の実施形態の構成によれば、保持装置20に加速度センサ94が設けられていることにより、飛行体10の移動速度に応じて、吸引装置28の駆動タイミングが調整されるので、さらなる省エネルギー化を実現できるとともに、真空系への予期せぬゴミ詰まりを抑制し、耐久性をさらに向上させることが可能となる。
【0108】
(第4の実施形態)
次に、
図19中の(a)および
図19中の(b)を参照して、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、アクチュエータ96が設けられる点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0109】
図19は、第4の実施形態に係る保持装置20を示す。
図19中の(a)は、アクチュエータ96が伸びていない状態における保持装置20を示す断面図である。
図19中の(a)は、アクチュエータ96が伸びている状態における保持装置20を示す断面図である。
図19に示すように、画像センサ36にアクチュエータ96が取り付けられている。アクチュエータ96は、支持部材24や吸着パッド26などに対して画像センサ36を直線状に移動させることにより、吸着パッド26の吸着面に対して画像センサ36を突出させることが可能である。すなわち、アクチュエータ96は、画像センサ36の全体が空洞部27a内に位置する第1位置と、画像センサ36の少なくとも一部が空洞部27aの外部に位置する第2位置との間で、空洞部27aを通じて画像センサ36を移動させることができる。アクチュエータ96としては、例えば空圧式や電動式のアクチュエータが使用され得る。空圧式アクチュエータは、
図19のベローズ形状の内部に空気を流入出することにより、画像センサ36の位置を変更することができる。また、空圧式アクチュエータとして、シリンダ型のアクチュエータなどが使用されてもよい。なお、空圧式アクチュエータは、吸引装置28により作動されてもよい。この場合、例えば、吸引装置28が吸着パッド26の吸引を行うモードと、吸引装置28が空圧式アクチュエータを作動させるモードとの切替えを行う弁機構(例えば電磁弁)が設けられ得る。電動式アクチュエータが使用される場合、例えば、電動式アクチュエータは、モータと送りねじとを組み合わせることにより直線運動を実現することができる。
【0110】
以上のような第4の実施形態の構成によれば、画像センサ36のレンズとして魚眼レンズや広角レンズを使用することが可能となる。これにより、広範囲の視野を確保することが可能となる。これにより、吸着パッド26外部の情報を得ることができるため、飛行体10が飛行している間の吸着パッド26と周囲環境との衝突を防止することが可能となる。また、保持装置20の移動(下方向または横方向への移動)中にその移動経路に障害物が存在する場合、突出した画像センサ36で当該障害物を検出し、衝突を防止することも可能である。
【0111】
飛行体10は、保持装置20を適用することが可能なロボットの一例である。上述した各実施形態に係る保持装置20は、マニピュレータや移動台車に適用することもできる。
【0112】
各実施形態では、吸着パッド26から物体Pまでの距離が距離閾値未満になった場合に吸引装置28が駆動されることを想定するが、このような距離にかかわらず、画像センサ36の画像全体に占める物体Pの面積の割合が一定以上になった場合に吸引装置28が駆動されてもよい。
【0113】
なお、各実施形態では、制御装置60における処理をCPU(中央演算処理装置)のような1つ以上のプロセッサを用いてメモリなどの外部記憶装置内のプログラムソフトで実現することを想定するが、CPUを用いないハードウェア(例えば、回路部;circuitry)によって実現してもよい。また、クラウドサーバを介して処理を実行してもよい。
【0114】
各実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した処理手順による効果と同様な効果を得ることも可能である。各実施形態に記述された指示は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD‐R、CD‐RW、DVD‐ROM、DVD±R、DVD±RW、Blu‐ray(登録商標)Discなど)、半導体メモリ、またはこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータまたは組み込みシステムが読み取り可能な記録媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピュータは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば上述した処理手順と同様な動作を実現することができる。もちろん、コンピュータがプログラムを取得する場合または読み込む場合はネットワークを通じて取得または読み込んでもよい。
【0115】
記録媒体からコンピュータや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークなどのMW(ミドルウェア)などが処理手順の一部を実行してもよい。さらに、各実施形態における記録媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネットなどにより伝達されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記録媒体も含まれる。また、記録媒体は1つに限られず、複数の媒体から処理が実行される場合も、記録媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0116】
なお、各実施形態におけるコンピュータまたは組み込みシステムは、記録媒体に記憶されたプログラムに基づき、各実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコンなどの1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステムなどの何れの構成であってもよい。また、各実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコンなども含み、プログラムによって全ての実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0117】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、光量を二次元的に検出する光量センサを持つことにより、吸着保持動作の信頼性の向上を図ることができる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0119】
以下に、本願原出願の特許出願時の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]気体を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置に連通し、前記吸引装置の吸引により物体を吸着する吸着部と、
前記物体からの光量を二次元的に検出する光量センサと、
前記光量センサにより検出された情報に基づいて前記吸引装置を制御する制御装置と、
を備えた保持装置。
[2]前記制御装置は、前記光量センサによる光量分布の検出の結果が所定の条件を満たす場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
[1]に記載の保持装置。
[3]前記制御装置は、前記光量センサにより検出された情報に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
[1]または[2]に記載の保持装置。
[4]前記吸着部と前記吸着部を支持した支持部材とを含む吸着ユニットを備え、
前記光量センサは、前記吸着ユニットの内部に配置されている、
[1]から[3]のうちいずれか1項に記載の保持装置。
[5]前記光量センサは、画像センサである、
[1]から[4]のうちいずれか1項に記載の保持装置。
[6]前記制御装置は、前記画像センサにより取得された画像における前記物体および前記物体の表面の特徴部の少なくとも一方の大きさの変化に基づいて前記物体までの距離を見積もり、前記距離が距離閾値以下である場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
[5]に記載の保持装置。
[7]前記制御装置は、前記吸着部の移動速度が第1の速度である場合に前記距離閾値を第1の値に設定し、前記吸着部の移動速度が前記第1の速度より速い第2の速度である場合に前記距離閾値を前記第1の値より大きな第2の値に設定する、
[6]に記載の保持装置。
[8]加速度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記加速度センサから出力される信号に基づいて前記距離閾値を設定する、
[7]に記載の保持装置。
[9]前記吸着部と前記吸着部を支持した支持部材とを含む吸着ユニットと、
前記画像センサの全体が前記吸着ユニットの内部に位置する第1位置と、前記画像センサの少なくとも一部が前記吸着ユニットの外部に位置する第2位置との間で前記画像センサを移動させるアクチュエータと、
を備えた、
[5]から[8]のうちいずれか1項に記載の保持装置。
[10]前記物体が前記吸着部に近接していることを検出する近接センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記光量センサによる検出の結果にかかわらず、前記近接センサにより検出された情報に基づき前記物体が前記吸着部に近接していることが検出された場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
[1]から[9]のいずれか1項に記載の保持装置。
[11]前記吸着部と前記吸着部を支持した支持部材とを含む吸着ユニットを備え、
前記近接センサは、前記吸着ユニットの内部に配置されている
[10]に記載の保持装置。
[12]照明装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記照明装置が光を照射している状態で前記光量センサにより取得された光量分布の検出の結果が所定の条件を満たす場合に吸引を行うように前記吸引装置を制御する、
[1]から[11]のいずれか1項に記載の保持装置。
[13]前記光量センサは、前記吸着部が物体に吸着する方向に対して略直交する平面内で前記吸着部の略中央に配置されている、
[1]から[12]のいずれか1項に記載の保持装置。
[14]前記吸引装置と前記吸着部との間の流路と大気圧空間とを連通させる第1の状態と、前記流路と前記大気圧空間との連通を遮断する第2の状態との間で切替可能な切替弁と、
前記吸引装置および前記切替弁を駆動する駆動装置と、
前記流路内の前記気体の圧力を検出する圧力センサと、
をさらに備えた、
[1]から[13]のいずれか1項に記載の保持装置。
[15]前記制御装置は、前記圧力センサによって検出された圧力が第1の圧力閾値よりも低い場合に前記吸引装置の駆動を停止し、前記圧力センサによって検出された圧力が第2の圧力閾値よりも高い場合に前記吸引装置の駆動を開始し、前記第2の圧力閾値は、前記第1の圧力閾値と略等しいまたは前記第1の圧力閾値より高い、
[14]に記載の保持装置。
[16]前記吸着部を支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記吸着部および前記吸引装置と連通する空気穴を有し、
前記光量センサは、前記空気穴に対して前記吸引装置の方へ離間して配置されている、
[1]から[15]のいずれか1項に記載の保持装置。
[17]前記支持部材に対して前記光量センサを支持した弾性部材をさらに備えた、
[16]に記載の保持装置。
[18]気体を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置に連通し、前記吸引装置の吸引により物体を吸着する吸着部と、
前記物体からの光量を二次元的に検出する光量センサと、
前記光量センサにより取得された情報に基づいて前記吸引装置を制御する制御装置と、
を備えた飛行体。
[19]気体を吸引する吸引装置と、前記吸引装置に連通し、前記吸引装置の吸引により物体を吸着する吸着部と、前記物体からの光量を二次元的に検出する光量センサと、前記光量センサにより取得された情報に基づいて前記吸引装置を制御する制御装置と、を有する保持装置と、
前記保持装置を移動させる移動機構と、
前記物体を認識する認識装置と、
前記認識装置からの出力に基づいて前記移動機構を制御する移動機構制御装置と、
を備えた搬送システム。
【符号の説明】
【0120】
1…搬送システム、10…飛行体(移動機構)、12…認識装置、14…飛行体制御装置(移動機構制御装置)、20…保持装置、24…支持部材、24b…空気穴、26…吸着パッド(吸着部)、27…吸着ユニット、28…吸引装置、30…圧力センサ、32…切替弁、36…画像センサ(光量センサ)、42…照明装置、44…弾性部材、60…制御装置(制御部)、90…近接センサ、94…加速度センサ、96…アクチュエータ。