(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】最適化中のOAR及び標的目標に対する調整メカニズム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
A61N5/10 P
(21)【出願番号】P 2020505274
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2018070777
(87)【国際公開番号】W WO2019025460
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-28
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブズドゥセク カール アントニン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-522128(JP,A)
【文献】特表2015-532869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療計画方法を実施するためにコンピュータによって読取り可能及び実行可能な命令を格納する非一時的記憶媒体であって、前記放射線治療計画方法が、
複数の最適化ループを実施するステップであって、各最適化ループが、
計画画像中に定義された関心領域を有する患者の前記計画画像によって表される患者体内における線量分布を計算することであって、前記線量分布は、パラメータ化された放射線治療計画を実行する放射線送達デバイスモデルによって表される放射線送達デバイスによって送達されるものである、ことと、
オブジェクト関数に対する重みを決定することであって、各オブジェクト関数は、前記計画画像中で定義された関心領域に対する計算された前記線量分布と対応する目標とのコンプライアンスを定量化し、前記重みは、前記オブジェクト関数に対するオブジェクト関数値目標から決定される、ことと、
前記オブジェクト関数に対して決定された前記重みによって重み付けされた前記オブジェクト関数の重み付き合計を含む合成オブジェクト関数に対してそれぞれ、前記患者体内における計算された前記線量分布を最適化するように、前記パラメータ化された放射線治療計画のパラメータを調節することによって、最適化された線量分布を生成することと、を含む、
最適化ループを実施するステップを有し、
少なくとも1つの最適化ループが、少なくとも1つのオブジェクト関数値目標を更新することを更に含み、更新された前記少なくとも1つのオブジェクト関数値目標が、少なくとも実施される次の最適化ループで使用され、
前記放射線治療計画方法が、
前記複数の最適化ループのうち最後に実施される最適化ループによって生成される、前記最適化された線量分布に対応する調節された前記パラメータを含む、前記パラメータ化された放射線治療計画を含む最適化された放射線治療計画を、非一時的放射線治療計画記憶装置に格納するステップ
を更に有する、非一時的記憶媒体。
【請求項2】
前記更新することが、前記最適化ループによって生成された前記最適化された線量分布に対する前記オブジェクト関数のオブジェクト関数値に基づいて、前記少なくとも1つのオブジェクト関数値目標を自動的に更新することを含む、請求項1に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項3】
前記少なくとも1つのオブジェクト関数値目標を前記自動的に更新することが、前記最適化ループによって生成された前記最適化された線量分布に対応する前記オブジェクト関数の前記オブジェクト関数値に関数的に依存する乗数によって、前記オブジェクト関数値目標をスケーリングすることを含む、請求項2に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項4】
前記患者の前記計画画像中に定義される前記関心領域が、照射されるべき少なくとも1つの標的関心領域と、照射を受けないように少なくとも部分的に温存されるべき少なくとも1つのリスク臓器関心領域とを含み、
最初に実施される最適化ループに関して、前記合成オブジェクト関数が、前記標的関心領域の対応する目標とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数のみの重み付き合計を含み、
前記最初に実施される最適化ループの後に実施される前記最適化ループに関して、前記合成オブジェクト関数が、前記標的関心領域の対応する目標とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数と前記リスク臓器関心領域の対応する目標とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数との重み付き合計を含み、
前記最初に実施される最適化ループが、前記最初に実施される最適化ループによって生成される前記最適化された線量分布に関する前記合成オブジェクト関数の値に基づいて、少なくとも2番目に実施される最適化ループで使用される、前記オブジェクト関数値目標を自動的に更新することを更に含む、請求項1に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項5】
各最適化ループにおける前記オブジェクト関数に対する前記重みを決定することが、前記最適化ループが前記パラメータ化された放射線治療計画の前記パラメータを調節する前に、前記オブジェクト関数に対する前記オブジェクト関数値目標と計算された前記線量分布に対する前記オブジェクト関数のオブジェクト関数値との比に関数的に依存するスケーリング係数によって、各オブジェクト関数に対する現在の重みをスケーリングすることを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項6】
少なくとも1つのオブジェクト関数が、計算された前記線量分布と標的関心領域に対する処方線量とのコンプライアンスを定量化し、少なくとも1つの最適化ループが、前記標的関心領域の適用範囲の測定基準を決定することと、前記標的関心領域の適用範囲の決定された前記測定基準と前記標的関心領域の所望の適用範囲との比較に基づいて、前記標的関心領域に対する前記処方線量とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数を調節することとを更に含
み、
前記標的関心領域の適用範囲の前記測定基準が、前記標的関心領域の指定されたボリューム適用範囲における処方パーセンテージであり、前記調節することが、前記標的関心領域の前記指定されたボリューム適用範囲における決定された前記処方パーセンテージが、前記標的関心領域の前記指定されたボリューム適用範囲における前記所望の処方パーセンテージよりも少ない場合、前記標的関心領域に対する前記処方線量とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数の標的線量を増加させることを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項7】
少なくとも1つの最適化ループが、前記オブジェクト関数に対する前記オブジェクト関数値目標と、前記最適化ループによって生成される前記最適化された線量分布に対する前記オブジェクト関数のオブジェクト関数値とに基づいて、少なくとも1つのオブジェクト関数を再公式化又は調節することを更に含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項8】
前記オブジェクト関数が、
関心領域に対する最小線量目標とのコンプライアンスを定量化する、最小線量オブジェクト関数、
関心領域に対する最大線量目標とのコンプライアンスを定量化する、最大線量オブジェクト関数、
関心領域のボリュームの所与の部分に対する最小線量目標とのコンプライアンスを定量化する、所与のボリュームに対する最小線量オブジェクト関数、及び、
関心領域のボリュームの所与の部分に対する最大線量目標とのコンプライアンスを定量化する、所与のボリュームに対する最大線量オブジェクト関数のうち、少なくとも2つを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項9】
前記パラメータ化された放射線治療計画の前記パラメータが、
マルチリーフコリメータ設定、
ビームレット重み、及び、
1つ又は複数のビームアークパラメータのうち、少なくとも1つを含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項10】
放射線治療計画を策定するコンピュータの作動方法であって、
前記コンピュータ
が、複数の最適化ループを実施するステップを含み、各最適化ループ
は、
前記コンピュータが、オブジェクト関数に対する少なくともオブジェクト関数値目標から、前記オブジェクト関数に対する重みを決定するステップであって、各オブジェクト関数が、患者の計画画像中に定義される関心領域)に関して、対応する目標との線量分布コンプライアンスを定量化する、ステップと、
前記コンピュータが、前記計画画像によって表される前記患者の体内の線量分布を計算するステップであって、前記線量分布が、パラメータ化された放射線治療計画を実行する放射線送達デバイスモデルによって表される、放射線送達デバイスによって送達されるものである、ステップと、
前記コンピュータが、決定された前記重みによって重み付けされた前記オブジェクト関数の重み付き合計を含む合成オブジェクト関数に対してそれぞれ、前記患者の体内における計算された前記線量分布を最適化するため、前記パラメータ化された放射線治療計画のパラメータを調節することによって、最適化された線量分布を生成するステップとを有し、
少なくとも1つの最適化ループ
は、
前記コンピュータが、少なくとも1つのオブジェクト関数の前記オブジェクト関数値目標を更新するステップを更に含み、更新された前記オブジェクト関数値目標が、少なくとも前記次に実施される最適化ループで使用される
、方法。
【請求項11】
少なくとも1つのオブジェクト関数の前記オブジェクト関数値目標を更新する前記ステップ
は、
前記コンピュータが、前記最適化ループによって生成される前記最適化された線量分布に対する前記オブジェクト関数のオブジェクト関数値に基づいて、前記オブジェクト関数値目標を自動的に更新するステップを有する、請求項
10に記載
の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのオブジェクト関数の前記オブジェクト関数値目標を更新する前記ステップ
は、
前記コンピュータが、前記オブジェクト関数値目標と前記最適化ループによって生成される前記最適化された線量分布に対する前記オブジェクト関数のオブジェクト関数値との比に関数的に依存するスケーリング係数によって、前記オブジェクト関数値目標をスケーリングするステップを更に有する、請求項
10に記載
の方法。
【請求項13】
前記患者の前記計画画像中に定義される前記関心領域が、照射されるべき少なくとも1つの標的関心領域と、照射を受けないように少なくとも部分的に温存されるべき少なくとも1つのリスク臓器関心領域とを含み、
最初に実施される最適化ループに関して、前記合成オブジェクト関数が、標的関心領域の対応する目標とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数のみの重み付き合計を含み、
前記最初に実施される最適化ループの後に実施される前記最適化ループに関して、前記合成オブジェクト関数が、標的関心領域の対応する目標とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数とリスク臓器関心領域の対応する目標とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数との重み付き合計を含み、
前記最初に実施される最適化ループ
は、
前記コンピュータが、前記最初に実施される最適化ループによって生成される前記最適化された線量分布に関する前記合成オブジェクト関数の値に基づいて、前記オブジェクト関数の前記オブジェクト関数値目標を自動的に更新するステップであって、更新された前記オブジェクト関数の前記オブジェクト関数値目標が、少なくとも2番目に実施される最適化ループで使用される、ステップを更に有する、請求項
10に記載
の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのオブジェクト関数が、計算された前記線量分布と標的関心領域に対する処方線量とのコンプライアンスを定量化し、少なくとも1つの最適化ループ
は、
前記コンピュータが、前記標的関心領域の指定されたボリューム適用範囲における処方パーセンテージを決定するステップと、
前記コンピュータが、決定された前記処方パーセンテージと前記標的関心領域の前記指定されたボリューム適用範囲における所望の処方パーセンテージとの比較に基づいて、前記標的関心領域に対する前記処方線量とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数を調節するステップとを更に有
し、
計算された前記線量分布と前記標的関心領域に対する前記処方線量とのコンプライアンスを定量化する前記オブジェクト関数が、前記標的関心領域における標的線量からの偏差にペナルティを科し、前記標的線量は最初に前記処方線量に等しく設定され、
前記標的関心領域の前記指定されたボリューム適用範囲において、決定された前記処方パーセンテージが所望の処方パーセンテージよりも少ない場合、前記調節するステップが前記標的線量を増加させる、請求項
10から
13のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項15】
各最適化ループにおける前記オブジェクト関数に対する前記重みを決定するステップが、前記最適化ループが前記パラメータ化された放射線治療計画の前記パラメータを調節する前に、
前記コンピュータが、前記オブジェクト関数に対する前記オブジェクト関数値目標と計算された前記線量分布に対する前記オブジェクト関数のオブジェクト関数値との比に関数的に依存するスケーリング係数によって、各オブジェクト関数に対する現在の重みをスケーリングするステップを有する、請求項
10から
14のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項16】
電子プロセッサと、
複数の最適化ループを実施するステップを有する放射線治療計画方法を実施するために、前記電子プロセッサによって読取り可能及び実行可能な命令を格納する非一時的記憶媒体とを備え、各最適化ループが、
計画画像によって表される患者の体内の線量分布を計算することであって、前記線量分布が、パラメータ化された放射線治療計画を実行する放射線送達デバイスモデルによって表される、放射線送達デバイスによって送達されるものである、ことと、
標的関心領域に対する標的線量とのコンプライアンスを定量化するオブジェクト関数を含むオブジェクト関数の重み付き合計を含む合成オブジェクト関数に対してそれぞれ、前記患者の体内における計算された前記線量分布を最適化するため、前記パラメータ化された放射線治療計画のパラメータを調節することによって、最適化された線量分布を生成することであって、前記標的線量は最初に処方線量に設定される、こととを含み、
少なくとも1つの最適化ループが、前記標的関心領域の適用範囲の測定基準と前記標的関心領域の所望の適用範囲との比較に基づいて、前記標的線量を更新することを更に含み、前記更新された標的線量が、少なくとも前記次に実施される最適化ループで使用される、放射線治療計画デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、概して、放射線治療の分野、逆変調放射線治療計画の分野、変調回転放射線治療の分野などに関する。
【背景技術】
【0002】
強度変調放射線治療(IMRT)は、悪性腫瘍の標的治療に関して知られている技術である。IMRT技術としては、従来のIMRT、並びに強度変調陽子線治療(IMPT)、体積変調回転照射法(VMAT)、強度変調回転照射法(IMAT)などの変形例が挙げられる。放射線治療計画では、透過型コンピュータ断層撮影(CT)又は別の画像診断モダリティを使用して、計画画像が獲得される。線量測定士は、標的(例えば、照射すべきがん性腫瘍)、及び高い放射線量を受けないように(少なくともある程度は)温存すべきである1つ又は複数のリスク臓器(OAR)を輪郭描写する。様々な目標が公式化される。腫瘍又はOARの場合、いくつかの一般的な目標としては、最小線量(Min Dose)、最大線量(Max Dose)、所与のボリュームに対する最小線量(Min DVH)、及び/又は所与のボリュームに対する最大線量(Max DVH)のいくつかの組み合わせが挙げられる。DVH目標は、ROIボリュームのうち最大x%が指定の最小(又は最大)線量限界を超えることができると指定する。一例として、Min DVH目標は、ROIボリュームのうち最大30%が特定の最小線量を超えることができると指定する。標的に関しては、均一線量目標が別の共通の目標である。追加の又は他の目標、例えば、最大等価均一線量目標、又は正常組織障害発生確率(NTCP)タイプの目標が用いられてもよい。目標に加えて、1つ又は複数の厳密制約が最適化に課せられることがある。
【0003】
目標は対応するオブジェクト関数の形に公式化される。従来の公式化では、各オブジェクト関数は、対応する目標とのノンコンプライアンスの度合いを定量化する。したがって、目標が適用される標的又はOARの全てのボリューム要素に関して、対応する目標が満たされる場合、オブジェクト関数値(OFV)はちょうどゼロである。他方で、標的又はOARのボリューム要素のある部分に関して目標が満たされない場合、OFVはゼロよりも大きくなり、その大きさは目標が満たされない度合いを示す。30%のボリュームが指定された例示的なMin DVHでは、オブジェクト関数は、ボリューム要素の30%超過が指定の最小線量を超える度合いとして、ノンコンプライアンスを定量化する。合計ROIボリュームの30%未満が指定の最小線量を超える場合、オブジェクト関数はゼロの値に戻る(フルコンプライアンス)。
【0004】
オブジェクト関数は組み合わされて合成オブジェクト関数を形成する。追加の入力としては、標的及びOARを定義する計画画像及び輪郭、放射線治療を送達するように計画される放射線送達デバイスを表す放射線送達デバイスモデル、並びに放射線源及び/又はその患者周辺での移動の物理的に実現可能なパラメータとして、或いは物理的に実現可能なパラメータへと後で変換される「仮想」パラメータとしてパラメータが表現され得る、パラメータ化された放射線治療計画が挙げられる。例えば、IMRTの物理的に実現可能なパラメータは、制御点におけるマルチリーフコリメータ(MLC)設定、並びにVMAT、IMATなどのIMRT技術、又は放射線ビーム源が患者の周囲で移動する他の放射線治療技術の場合の、アークに沿ったビーム移動速度、並びに/或いはその他を含む。「仮想」パラメータが用いられる場合、例えば、放射線ビームの小面積セグメントを表す「ビームレット」の重量を含んでもよい。
【0005】
提供されるこれらの入力を用いて、線量最適化は、合成オブジェクト関数に合わせてそれぞれ送達される放射線線量分布を最適化するように、放射線治療計画のパラメータを調節するために実施される。結果として得られる放射線治療計画は、物理的に実現可能なパラメータ(ビームレットなどの仮想パラメータが線量最適化中に使用される場合)に変換され、放射線治療を実行する際に後で使用するため、非一時的記憶媒体に格納される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線治療計画は、数個から数十個の構成オブジェクト関数を組み合わせることによって形成される合成オブジェクト関数を最適化する、一般的に数十又は数百のパラメータの最適化を伴う、複雑なプロセスである。従来の放射線治療計画では、最適化は、手動のアドホック形式で行われ、線量測定士と(モデル化された)放射線送達デバイスを使用して達成できる物理的に実現可能な線量分布との間での「交渉」に至ることになる。一般的なワークフローでは、線量最適化が実施され、最適化された線量分布に対してOFVが計算される。OFVは、通常、標的及びOARの輪郭がレンダリング上に描かれた計画画像上に重畳される、三次元(3D)で描画された線量マップ、並びに/或いは様々な関心領域(ROI、例えば、標的及び様々なOARに対するもの)に関する線量ボリュームヒストグラム(DVH)プロット、並びに/或いはその他など、他の情報と共に、線量測定士に対して提示される。この情報に基づいて、線量測定士は、満たされていない、又は満たすのが困難と思われる目標を特定し、特定の目標を手動で調節(例えば、Max Dose若しくはMin Dose目標に対して指定された最大若しくは最小線量を調節、及び/又はMax DVH若しくはMin DVH目標の場合は所与のボリューム指定を調節)してから、線量最適化を再び実行してもよい。放射線治療計画最適化、その後のOFV及び他の情報の提示、並びにその後の手動調節という連続最適化ループは、線量測定士が容認できる線量分布を送達する放射線治療計画に到達するまで、恐らくは複数回以上繰り返される。
【0007】
より近年は、放射線治療計画プロセスの手動ループを自動化する、自動計画手法が開発されてきている。1つの手法では、実施される放射線治療のタイプに対してテンプレートが用いられる。テンプレートは、オブジェクト関数及び対応するOFV目標を指定する。OFV目標は、線量最適化/OFVの検証/手動調節の複数のループを実施した後に、線量測定士が一般的に(例えば、経験的に)落ち着くOFVである。OFV目標は定量的に、又は優先順位決定スキームを使用して、例えば、後でOFV目標に変換される「高」、「中」、若しくは「低」優先順位などの優先順位を各目標に割り当てて、指定されてもよい。最初の線量最適化後、目標は、OFV目標がどの程度良好に満たされたかに基づいて自動的に調節され、次に、OFV目標に合致するように線量最適化を調整するのに、複数の自動化ループにわたって線量最適化が繰り返される。調査研究では、自動計画は、放射線治療計画時間を、従来の手動ループを使用した場合の数時間から自動計画を使用した場合の数十分に低減するのに有望であることが実証されている。
【0008】
以下、新しい改善されたシステム、デバイス、及び方法について開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの開示される態様では、非一時的記憶媒体は、複数の最適化ループを実施することを含む放射線治療計画方法を実施するためにコンピュータによって読取り可能及び実行可能な命令を格納する。各最適化ループは、計画画像中に定義された関心領域(ROI)を有する患者の計画画像によって表された患者体内における線量分布を計算することであって、線量分布は、パラメータ化された放射線治療計画を実行する放射線送達デバイスモデルによって表される放射線送達デバイス(10)によって送達されるものである、ことと、計画画像中にオブジェクト関数に対する重みを決定することであって、各オブジェクト関数は、定義されたROIに対する計算された線量分布と対応する目標とのコンプライアンスを定量化し、重みは、オブジェクト関数に対するオブジェクト関数値(OFV)目標から決定される、ことと、オブジェクト関数に対して決定された重みによって重み付けされたオブジェクト関数の重み付き合計を含む合成オブジェクト関数に対してそれぞれ、患者体内における計算された線量分布を最適化するように、パラメータ化された放射線治療計画のパラメータを調節することによって、最適化された線量分布を生成することとを含む。少なくとも1つの最適化ループは、少なくとも1つのOFV目標を更新することを更に含み、更新された少なくとも1つのOFV目標は、少なくとも次に実施される最適化ループで使用される。最適化された放射線治療計画は、非一時的放射線治療計画記憶装置に格納される。最適化された放射線治療計画は、複数の最適化ループのうち最後に実施された最適化ループによって生成された、最適化された線量分布に対応する調節されたパラメータを含む、パラメータ化された放射線治療計画を含む。
【0010】
別の開示される態様では、放射線治療計画方法が開示される。コンピュータを使用して、複数の最適化ループが実施される。各最適化ループは、オブジェクト関数に対する少なくともOFV目標から、オブジェクト関数に対する重みを決定することを含む。各オブジェクト関数は、患者の計画画像で定義されるROIに関して、対応する目標との線量分布コンプライアンスを定量化する。線量分布は、計画画像によって表される患者の体内に関して計算される。線量分布は、パラメータ化された放射線治療計画を実行する放射線送達デバイスモデルによって表される、放射線送達デバイスによって送達されるものである。最適化された線量分布は、決定された重みによって重み付けされたオブジェクト関数の重み付き合計を含む合成オブジェクト関数に対してそれぞれ、患者体内における計算された線量分布を最適化するため、パラメータ化された放射線治療計画のパラメータを調節することによって生成される。少なくとも1つの最適化ループは、少なくとも1つのオブジェクト関数のOFV目標を更新することを更に含み、更新されたOFV目標は、少なくとも次に実施される最適化ループで使用される。
【0011】
別の開示される態様では、放射線治療計画装置は、電子プロセッサと、複数の最適化ループを実行することを含む放射線治療計画方法を実施するのに、電子プロセッサによって読取り可能及び実行可能な命令を格納する、非一時的記憶媒体とを含む。各最適化ループは、計画画像によって表される患者体内における線量分布を計算することを含む。線量分布は、パラメータ化された放射線治療計画を実行する放射線送達デバイスモデルによって表される、放射線送達デバイスによって送達されるものである。最適化された線量分布は、オブジェクト関数の重み付き合計を含む合成オブジェクト関数に対してそれぞれ、患者体内における計算された線量分布を最適化するように、パラメータ化された放射線治療計画のパラメータを調節することによって生成される。合成オブジェクト関数は、標的関心領域(ROI)に対する標的線量とのコンプライアンスを定量化するオブジェクト関数を含む。標的線量は最初に処方線量に設定される。少なくとも1つの最適化ループは、標的ROIの適用範囲の測定基準と標的ROIの所望の適用範囲との比較に基づいて、標的線量を更新することを更に含み、更新された標的線量は、少なくとも次に実施される最適化ループで使用される。いくつかの実施形態では、適用範囲の測定基準は、標的ROIの指定のボリューム適用範囲における処方パーセンテージである。更新は、最適化された線量分布に対して決定された処方パーセンテージが、標的ROIの指定のボリューム適用範囲における所望の処方パーセンテージ未満である場合、標的線量を増加させることを含んでもよい。かかる更新は、例えば、標的線量Dtを(x%desired-x%actual)に比例する量だけ調節することを含んでもよく、x%actualは最適化された線量分布に対して決定される処方パーセンテージ、x%desiredは標的ROIの指定のボリューム適用範囲における所望の処方パーセンテージである。
【0012】
1つの利点は、目標の釣り合わせが改善された放射線治療計画の自動計画を提供する点にある。
【0013】
別の利点は、特定の患者に対する目標の釣り合わせが改善された放射線治療計画の自動計画を提供する点にある。
【0014】
別の利点は、困難又は不可能な対象目標に対する堅牢性が改善された放射線治療計画の自動計画を提供する点にある。
【0015】
所与の実施形態は、上述の利点を1つも提供しないか、又は上述の利点のうち1つ、2つ、それ以上、若しくは全てを提供し、並びに/或いは本開示を読んで理解することによって当業者には明白となるような、他の利点を提供する。
【0016】
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の組み合わせ、並びに様々なステップ及びステップの組み合わせの形をとる。図面は、単に好ましい実施形態を例証するためのものであり、本発明を限定するものと解釈すべきでない。別段の指示がない限り、図面は模式図であり、縮尺通りであること、又は様々な構成要素の相対寸法を例証するものと解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1のシステムによって適切に実施される放射線治療計画方法の1つの最適化ループ(n)を示す模式図である。
【
図3】第1の最適化ループが標的関心領域のオブジェクト関数に対してのみ線量分布を最適化する、放射線治療計画方法の実施形態の変形例を示す模式図である。
【
図4】標的適用範囲を改善するように処方線量が最適化ループ間で調節される、一実施形態を示す模式図である。
【
図5】最適化が最適化ループ間での標的線量調節を含まない、5400cGy、6000cGy、及び7000cGyの示される処方線量における、最適化された放射線治療計画(実線)及び所望の標的適用範囲を有する計画(破線)に対する累積線量体積ヒストグラム(DVH)プロットを示す図である。
【
図6】最適化が最適化ループ間での標的線量調節を含む、5400cGy、6000cGy、及び7000cGyの示される処方線量における、最適化された放射線治療計画(実線)及び所望の標的適用範囲を有する計画(破線)に対する累積線量体積ヒストグラム(DVH)プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
放射線治療計画の効率を改善する既存の自動計画の方策では、OFV目標は、計画される放射線治療のタイプに対するテンプレートの形で定義される。そのため、自動計画ループは、各最適化ループ後に、OFV目標により緊密に合致するように、目標を自動的に再公式化又は調節する。このように、連続最適化ループは、普通は線量測定士による面倒な目標の手動調節によって到達する様々な目標の間でバランスを達成するように、目標を調節する。したがって、自動計画の方策は、普通は線量測定士によって手動で実施される、様々な目標の間での交渉を自動化する。
【0019】
既存の自動計画の方策では、OFV目標は、計画されている放射線治療のタイプに対する固定のテンプレート値である。本明細書では、この方策は、患者間でのばらつきを適切に把握できないことがあることが認識される。例えば、異なる患者は、腫瘍と特定のOARとの間の重なり具合が異なることがある。そのような場合、重なりが大きいと、それらの患者におけるOARの温存を促すことができる度合いを制限することがあるので、これら2つのROIの重なりが大きい患者は、OARに対するより大きいOFV目標を適切に有してもよい。対照的に、重なりが小さいか又は重なりがないと、OARを温存する線量最適化の柔軟性が高くなるので、これら2つのROI間の重なりが小さいか又は重なりがない患者は、達成の可能性が高いOARに関するより小さいOFV目標を適切に有してもよい。
【0020】
より一般的には、自動計画が進行するにつれて、目標に対するOFV目標の達成が困難になるか、又は到達不可能にもなることがある。この場合、連続最適化ループは、その目標及び場合によっては他の目標を繰り返し再公式化することによって、OFV目標を満たすように努力し続けることになるが、それは成功しない。このプロセスは、依然として困難又は不可能なOFV目標は達成できないまま、標的に対する所望の線量を犠牲にするように、並びに/或いは臨界OARの温存を低減するように働くことがある。
【0021】
本明細書に開示するように、自動計画の最適化ループ間で1つ又は複数のOFV目標を調節できるようにすることによって、目標をそれらの理想値から外れて再公式化又は調節する必要がある度合いが低減される。更に、OFV目標は、オブジェクト関数に対して表示されるOFVと同じ定量化を用いるので、これらの値は既に線量測定士には分かっており、そのため線量測定士は、対応するROIに送達される線量に対してOFV目標の調節が及ぼす影響を容易に理解することができる。
【0022】
いくつかの開示される手動の実施形態では、ユーザインターフェースは、現在最適化されている線量分布に対する目標のOFVを、OFV目標と共に表示する。そのため、ユーザは所望に応じて、例えば、1つ又は複数の最適化ループ後に、特定のオブジェクト関数に対するOFVがOFV目標から遠いままであることに線量測定士が気づいた場合に、新しいOFV目標を入力することができる。
【0023】
いくつかの開示される自動化の実施形態では、OFV目標は、一番最近実行された最適化ループによって生成された、最適化された線量分布に対するオブジェクト関数のOFVに基づいて調節される。例えば、自動更新は、最適化ループによって生成される最適化された線量分布に対応するオブジェクト関数のOFVに関数的に依存する、例えば、目標を調節するために所望の減衰レベルを提供するように調整された指数で累乗された、OFV目標と現在のOFVとの比に依存する乗数によって、OFV目標をスケーリングすることを含んでもよい。
【0024】
これらは単なる説明例である。開示するOFV目標を調節する方策には実質的な利点がある。いくつかの例示的実施形態のように、OFV目標を標的のみのOFVに基づいて、OARのOFVを標的OFVと釣り合わせて、ユーザが比を調節することを可能にする。標的のみのOFVは事例ごとに異なるので、OFV目標を調節することによって患者間での一貫したバランスが達成される。標的のみのOFVが小さい場合、固定のOFV目標は、標的適用範囲を犠牲にする標的に比べて比較的大きくなる。標的のみのOFVが大きい場合、OAR目標は比較的小さく、所望の温存が起こらないことがある。
【0025】
図1を参照すると、放射線治療計画及び送達システムが模式的に示されている。放射線治療は、治療放射線ビーム、例えば電子線、陽子線、高エネルギーX線などを用いる、任意のタイプの放射線治療であってもよい。放射線治療は、放射線ビーム源が、患者を部分的又は完全に包囲する軌道に沿った連続する固定位置間で段階的にされる、離散的な「ステップアンドシュート」方式を用いてもよい。或いは、放射線治療は、部分的又は全体的に包囲する軌道に沿って患者の周りでビームを回転させながら、放射線ビーム源が患者を継続的に照射する、体積変調回転照射法(VMAT)、強度変調回転照射法(IMAT)などの連続アーク放射線治療を用いてもよい。ビームの数は1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。継続的なアーク放射線治療の場合、治療セッションで実行されるアークの数は一般に、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。非限定例として、例示の放射線送達デバイス10は、患者を乗せて支持する治療台12を有する線形加速度計(リニアック)である。いくつかの実施形態では、治療台12は、3つの並進移動自由度と、任意に3つの回転移動自由度とを提供し、治療台位置設定は任意に、放射線送達デバイス10によって実行されるべきパラメータ化された放射線治療計画のパラメータである。例示のリニアック10は、放射線源14として役立つX線又はγ線発生器及び関連するハードウェアを活性化する、線形電子ビーム加速度計(図示されない内部構成要素)を含む。マルチリーフコリメータ(MLC)16は、放射線治療中に放射線ビームを整形するように設定することができる調節可能なリーフを備え、これらのMC設定も、パラメータ化された放射線治療計画のパラメータであることができる。いくつかの実施形態では、MLC16は選択されたコリメータ角度まで回転させることができ、それもやはり計画パラメータであってもよい。放射線源14は、回転アセンブリ18の回転を用いて、患者を包囲する(又は部分的に包囲する)軌道に沿って回転させることができる。様々な運動設定、例えば回転速度は、パラメータ化された放射線治療計画の更なるパラメータであってもよい。他の放射線送達デバイス設計では、放射線ビームは固定であってもよく、患者を回転させるか又は別の形で移動させて、制御された体積放射線送達を達成してもよい。更に他の実施形態では、患者及び(一般的には複数の)放射線ビームの両方が固定であって、複数のビームを使用して、制御された体積放射線適用範囲を提供してもよい。
【0026】
放射線送達デバイス10を使用して、放射線治療セッション(単一のセッション、又は分割された放射線治療レジメンを構成する複数のセッションのうち1つのセッションであってもよい)を実施する前に、患者の計画画像が最初に獲得される。本説明例では、これは、例示のコンピュータ断層撮影(CT)画像診断ガントリ22及び例示の陽電子放出断層撮影(PET)画像診断ガントリ24を含み、患者を一方及び/又は他方の画像診断ガントリ22、24へと移動させる共通の患者治療台26を備える、例示的なマルチモーダル画像診断デバイス20を使用して行われる。画像診断デバイス20は、非限定例として、Ingenuity(商標)飛行時間(TF)PET/CTスキャナ、Gemini(商標)TF PET/CTスキャナ、又はTruFlight(商標)TF PET/CTスキャナ(それぞれ、アイントホーフェン、オランダ(Eindhoven, the Netherlands)のコーニンクレッカフィリップス(Koninklijke Philips N.V.)から入手可能)であってもよい。単一の画像診断モダリティが、例えばCTのみが、計画画像を獲得するのに使用されてもよいことが注目されるべきである。追加の又は他の画像診断モダリティが、MR画像診断デバイスを使用して獲得される磁気共鳴(MR)画像、γ線カメラを使用して獲得される単一光子放射断層撮影(SPECT)画像、及び/又は他のものなどの、計画画像を獲得するのに用いられてもよい。計画画像は、画像診断デバイス20によって獲得される計画画像を使用して放射線治療計画を生成するため、ユーザインターフェース及び計算処理を提供するようにプログラミングされる、コンピュータ32(例えば、デスクトップコンピュータ、ネットワークサーバコンピュータ、それらの様々な組み合わせなど)を備える、放射線治療計画デバイス30によって処理される。ユーザとのインターフェースを容易にするため、コンピュータ32は、少なくとも1つのディスプレイ34(例えば、LCDディスプレイ、プラズマディスプレイなど)と、例示のキーボード36、マウス38、ディスプレイ34上のタッチ式オーバーレイ、及び/又はその他のものなど、1つ若しくは複数のユーザ入力デバイスとを含むか、或いはそれらに対するアクセスを有する。非一時的記憶媒体は、放射線治療計画デバイス30を実現するようにコンピュータ32をプログラミングするのに、コンピュータ32によって読取り可能及び実行可能な命令を格納する。非一時的記憶媒体(図示なし)は、コンピュータ32と一体(例えば、コンピュータのハードドライブ)であるか、又はコンピュータ32によってアクセス可能(例えば、病院データネットワーク、インターネット、若しくはそれらの何らかの組み合わせを介して、コンピュータに接続されたネットワークドライブ)であってもよい。より一般には、非一時的記憶媒体は、ハードディスク又は他の磁気記憶媒体、及び光学ディスク又は他の光学記憶媒体、ソリッドステートドライブ(SSD)又は他の電子記憶媒体、それらの様々な組み合わせなどであってもよい。
【0027】
コンピュータ32は、腫瘍専門医、放射線科医、又は他の医療専門家が、放射線治療によって照射すべき標的関心領域(ROI)を表現する2D及び/又は3D輪郭と、本明細書ではOARと呼ばれる、許容可能な放射線暴露が制御若しくは制限されるべき1つ又は複数のROIを表現する、1つ又は複数のリスク臓器(OAR)輪郭とを描画するのに用いることができる、輪郭描写グラフィカルユーザインターフェース(輪郭描写GUI)40を提供するようにプログラミングされる。輪郭描写GUI40は様々な既知の方式で動作することができる。例えば、ユーザは、マウス38若しくはタッチ画面などのポインティングデバイスを使用して、3D計画画像の様々な2Dスライスにおいて標的又はOARの周りに2D輪郭を手動で描いてもよく、コンピュータ32は、それらの2D輪郭の間を補間して、PTV又はOARを表現する3D輪郭(メッシュと呼ばれる場合がある)を生成するようにプログラミングされる。より自動化された方策では、ユーザは、PTV又はOARの境界点をマークする少数の目印を特定してもよく、コンピュータ32は、これらの目印を含む最初の3Dメッシュを定義し、次に、空間勾配などに基づいて特徴稜線を検出するメッシュフィッティング手法を使用して、最初のメッシュをPTV又はOARにフィットさせるようにプログラミングされる。完全に自動化された方策では、最初のメッシュは基準幾何学形状に基づいて自動的に生成されてもよく、フィッティングされたメッシュが最終調節(必要であれば)及び承認のためにユーザに提示される。これらは単なる説明例である。輪郭描写の出力は、標的及びOAR ROI 42が表現されている計画画像を含む。
【0028】
計画GUI 44は、線量測定士がパラメータ化された放射線治療計画の最適化を選択しガイドするのに用いられる、ユーザとのインターフェースを提供する。計画GUI 44を介して、放射線科医は、使用されるべきデバイス構成において、放射線治療を送達するのに使用されるべき放射線送達デバイス10を表す、放射線送達デバイスモデル46を選択する。いくつかの構成設定は、最適化されるべき放射線治療計画のパラメータであってもよい。計画GUI 44はまた、線量測定士が最初のオブジェクト関数50及びオブジェクト関数値(OFV)目標52を選択又は構築するのに用いられる、ユーザとのインターフェースを提供する。いくつかの実施形態では、デバイスモデル46、既定のオブジェクト関数50、及び既定のOFV目標52は、計画されている放射線治療の特定のタイプ(例えば、照射される臓器及び一連の標準ROIによって指定される)に対するテンプレートをロードすることによってロードされる。テンプレートは、線量測定士がオブジェクト関数のパラメータ(例えば、最大若しくは最小線量値、及びDVH目標に対するボリュームパーセンテージ、最大等価均一線量目標、正常組織障害発生確率(NTCP)タイプの目標など)及びOFV目標を編集するのを可能にする、編集可能なフィールドを有するテーブル又はスプレッドシートとして、計画GUI 44を介して適切に表示される。好ましくは、テンプレートは、追加のオブジェクト関数の入力(例えば、テーブル若しくはスプレッドシートの新しい行として)、又は1つ若しくは複数の既定のオブジェクト関数の消去を可能にする。
【0029】
ROI 42、放射線送達デバイスモデル46、オブジェクト関数50、及びOFV目標52を有する計画画像は、(対応する)オブジェクト関数に対してOFV目標52から決定されたオブジェクト関数50の重み64によって重み付けされたオブジェクト関数50の重み付き合計を含む、合成オブジェクト関数62に対して線量分布60を最適化する、放射線治療計画オプティマイザ58に対する入力として役立つ。重み64を計算する1つの方策では、患者体内の線量分布60(ROI 42を含む計画画像によって表される)が最初に計算される。この最初の線量分布は、最初のパラメータ化された放射線治療計画を実行する放射線送達デバイスモデル46によって表される、放射線送達デバイス10によって送達されるであろうと算出される線量である。次に、オブジェクト関数50に対する重み64が、オブジェクト関数に対するOFV目標52と、最初の線量分布に対して計算されるオブジェクト関数50の実際のOFVとから決定される。オブジェクト関数に対する重み64の1つの適切な公式化は、そのオブジェクト関数に対するOFV目標とそのオブジェクト関数に対する実際のOFVとの比に基づいて、既定の重み値をスケーリングするものである。この比は、最初の線量分布がどの程度OFV目標に近づくかを反映する。利用可能なOFVがない場合、例えばOFVが最初に計算されない場合の第1の反復では、反復プロセスを開始するのに既定の重みが使用されてもよい。例えば、既定の重みはそれぞれ、低、中、高優先順位の目標それぞれに対応する3つの値のうち1つに設定することができる。
【0030】
最初の最適化ループに対して設定された重み64を用いて、放射線治療計画オプティマイザ58は、オブジェクト関数に対して決定された重み64によって重み付けされたオブジェクト関数50の重み付き合計を含む合成オブジェクト関数62に対してそれぞれ、患者体内における計算された線量分布60を最適化するように、パラメータ化された放射線治療計画のパラメータを調節することによって、最適化された線量分布の生成を進める。この最適化は、任意の適切な最適化アルゴリズム、例えば最小二乗による最小化などを使用することができる。目標とのフルコンプライアンスに対してゼロのOFV、及び大きさが増加する目標とのノンコンプライアンスに対して増加するOFVを生成する、例示のオブジェクト関数の場合、最適化は合成オブジェクト関数62を適切に最小化する。この最適化の出力は、最適化されている計算された線量分布60を伴う、オブジェクト関数50に対する一連のOFVである。
【0031】
従来の自動計画のように、線量最適化後、放射線治療計画デバイス30は、OFV目標52がどの程度良好に満たされたかに基づいて、オブジェクト関数50を自動的に調節(即ち、再公式化)するようにコンピュータ32がプログラミングされる、オブジェクト関数アップデータ66を含む。目標を再公式化するいくつかの方策が、例えば、2014年5月8日公開のWO2014/068435A2号に記載されている。該文献に記載されているいくつかの再公式化の方策では、現在のOFVは対応するOFV目標52に対して比較されてもよい。現在のOFVがOFV目標未満の場合、オブジェクト関数のパラメータ(例えば、最小若しくは最大線量、及び/又はDHV目標の場合はボリュームパーセンテージ)は、OFVをほぼOFV目標まで増加させるように修正される。対照的に、現在のOFVがOFV目標よりも大きい場合、オブジェクト関数のパラメータは、OFVをほぼOFV目標まで減少させるように修正される。オブジェクト関数のパラメータを修正することに加えて、高優先順位の構造に対してオブジェクト関数アップデータ66によって追加の線量目標を追加することができ、並びに/或いは、オブジェクト関数に対するOFV目標と現在のOFVとの比によって重みをスケーリングすることによって、既存の目標の重みを調節することができる。例えば、大きい重みの目標を、オブジェクト関数が良好に満たされていない高優先順位の構造に対して追加することができ、或いはホットスポット及び/又はコールドスポットを特定する(即ち、新しいROIとして定義する)ことができ、これらのスポットのオブジェクト関数を追加して、標的構造に対する線量分布の適合性を改善することができる。更に別の説明例として、標的構造外の線量漏れを特定することができ、特定された漏れを低減するのに、目標(及び対応するオブジェクト関数)を追加することができる。
【0032】
オブジェクト関数50を調節する(即ち、再公式化する)ことによって自動計画を自動的に提供する、オブジェクト関数アップデータ66を提供することに加えて、開示する放射線治療計画デバイス30は、OFV目標52を調節するようにコンピュータ32がプログラミングされる、OFV目標アップデータ70を更に含む。手動の方策では、OFV目標アップデータ70は、計画GUI44を起動することによって、放射線治療計画オプティマイザ58によって実施された最初の(若しくはより一般的には、直近の)最適化ループによって生成された、最適化された線量分布60に対するオブジェクト関数50のOFV目標及びOFVを表示し、コンピュータ32と動作可能に接続されたユーザ入力デバイス36、38を介して、自動計画の少なくとも次に実施される最適化ループで次に使用される、1つ又は複数のOFV目標に対する更新された値を受信するように動作する。
【0033】
自動化された方策では、OFV目標アップデータ70は、最初の(若しくはより一般的には、直近の)最適化ループによって生成された、最適化された線量分布60に対するオブジェクト関数50のOFVに基づいて、1つ又は複数のOFV目標を自動的に更新することによって動作する。1つの方策では、OFV目標52のうち1つ又は複数の自動更新は、最適化ループによって生成される最適化された線量分布に対応するオブジェクト関数のOFVに関数的に依存する乗数によって、OFV目標をスケーリングすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、オブジェクト関数アップデータ66及びOFV目標アップデータ70の動作の間に相関がある。例えば、1つの方策では、オブジェクト関数アップデータ66は、例えば標的が著しく劣化していること(1つの指標はオブジェクト関数値が大きいことである)により、調節が容認できないものであると判定されない限り、オブジェクト関数の最小(若しくは最大)線量パラメータを調節するように動作してもよい。オブジェクト関数の線量パラメータの調節が容認できないものであると見なされた場合、これはOFV目標が高すぎるかも知れないことの指標であり、したがって、OFV目標アップデータ70は、OFV目標をより釣り合った値に調節するように動作する。
【0034】
オブジェクト関数を調節(即ち、再公式化)し、OFV目標を調節した後、やはり重み64を計算し(今度は、更新されたOFV及び任意の更新されたOFV目標を使用する)、再計算された重み64を用いて、オブジェクト関数アップデータ66によって追加された任意の追加のオブジェクト関数を含むように、又はオブジェクト関数アップデータ66による任意のオブジェクト関数の除去を反映するように、合成オブジェクト関数62を更新することによって、次のループが実施される。線量分布60はやはり、今度は更新された合成オブジェクト関数62を使用し、次にやはりオブジェクト関数再公式化及びOFV目標調節によって最適化され、かかるループは一回又は複数回繰り返される。OFV目標は、オブジェクト関数パラメータ(重み、線量レベルなど)とは異なる割合で更新することができることにも留意されたい。例えば、OFV目標は2つのループ毎にのみ更新されてもよい。最終ループは、最終自動計画最適化パラメータを含むパラメータ化された放射線治療計画を出力し、その計画は、放射線治療計画記憶装置72(例えば、ハードディスクドライブ、又はSSD、又は他の非一時的記憶媒体)に格納される。スケジュールされた時間に、患者は放射線治療室を訪れ、放射線送達デバイス10に入れられ、デバイスは、最終自動計画最適化パラメータを含むパラメータ化された放射線治療計画を取得し、取得した最適化された放射線治療計画にしたがって放射線治療を患者に送達する。
【0035】
図1を引き続き参照し、更に
図2を参照して、
図2の最適化ループnとして任意に番号付けされた、放射線治療計画デバイス30によって実施される自動計画プロセスの1つの最適化ループの例示的実施形態について記載する。最適化ループnは、ループnに対するOFV目標52
nで開始される。OFV目標52
n=1が適切には計画GUI 44を介して線量測定士によって供給されるテンプレート及び/又は値によって提供される既定値である、n=1(最初の最適化ループ)でない限り、OFV目標52
nは、先行する最適化ループ(n-1)によって出力される。最適化ループnに対する重み64
n及び任意に線量レベルは、OFV目標52
n及び現在のOFVから計算される。次に、合成オブジェクト関数62
nが、重み64
nによって重み付けされたオブジェクト関数の重み付き合計として公式化される。動作80で、OFVが、直近の反復(n-1)によって出力される、現在のパラメータ化された放射線治療計画の線量分布60に対して計算される(或いは、n=1の場合、計画パラメータの初期値又は既定値を使用して、線量分布が動作80で初めて計算される)。動作82で、放射線治療計画オプティマイザ58は、現在の最適化ループnの合成オブジェクト関数62
nに対してそれぞれ、放射線治療計画のパラメータを最適化する。動作84で、OAR及び標的に関するオブジェクト関数値が更新され、動作86で、OFVが所望のバランスを外れている場合、OFV目標アップデータ70によって少なくとも1つのOFV目標が更新されて、次の最適化ループ(n+1)に入力されるOFV目標として役立つ、更新されたOFV目標52
n+1を生成する。(いくつかの最適化ループはOFV目標更新を含まないことがあることが想到されることに留意されたい)。
【0036】
次に
図3を参照すると、いくつかの実施形態では、最初の最適化ループ(n=1)は後に続くループ(n>1)とは異なるように扱われる。
図3に模式的に示される動作90は、第1の最適化ループ(n=1)を表す。動作92では、既定のOFV目標がテンプレートから読み取られ、並びに/或いはユーザは、例えば、計画GUI 44を介してテーブル又はスプレッドシートに提示されている既定のOFV目標を編集することによって、最初のループ(n=1)に対するOFV目標を供給する。動作94で、標的ROIオブジェクト関数のみを使用して線量最適化が実施される。つまり、
図3の実施形態の最初の最適化ループ90に対して、
図2の合成オブジェクト関数62
n=1は、計画画像42で定義される標的ROIに関する計算された線量分布と対応する目標とのコンプライアンスを定量化する、それらのオブジェクト関数のみの重み付き合計である。リマインダーとして、患者の計画画像で定義されるROIは、悪性腫瘍など、照射されるべき少なくとも1つの標的ROIと、照射を受けないように少なくとも部分的に温存されるべき少なくとも1つのリスク臓器(OAR)ROIとを含む。動作96で、標的ROIオブジェクト関数のOFVの合計として、合成OFVが計算される。動作98で、合成OFVに基づいてOFV目標が更新される。その後、動作96で、次及び後続の最適化ループ(ループn=2、ループn=3など)が、
図2を参照して上述したように、標的ROIオブジェクト関数及びOARオブジェクト関数の重み付き合計を含む、合成オブジェクト関数を用いて実施される。最初の最適化ループn=1の変形実現例90に関する論拠は、n=1ループにおけるOARを無視することによって、結果として得られる合成OFVが、標的に対して達成可能な「最良」の合成オブジェクト関数を表すことである。そのため、これによって、OARの間で割り振ることができる「温存」の量に対する測定基準が提供される。
【0037】
以下、
図3の方策の更に詳細な非限定例を提示する。最初の(n=1)最適化ループ90では、許可できる合成標的オブジェクト関数は、標的オブジェクト関数のみの線量最適化に基づいて決定される値である。この値は、後に続く最適化ループ100がOARの温存をより強く促すことができる、又は控える必要がある程度を決定するのに使用される。線形的手法など、この値を決定するのに使用することができる、多数の実現例がある。しかしながら、本説明例では次式が用いられる。
合成オブジェクト関数値目標=2×(2×targetToOAR)
mult×baselineTargetOFV (1)
式中、targetToOARはバランス因子であり、targetToOAR=1の限定された事例は完全OAR温存をもたらし、targetToOAR=0の限定された事例は標的ROIに対する優先順位を最大にする。baselineTargetOFVの項は、標的のみの最適化94を実行した後のオブジェクト関数値結果96である。指数因子multは、OAR温存の範囲を増加又は制限するのに使用される定数であり、いくつかの想到される実施形態では、8の値までハードコード化される。
【0038】
OFV目標更新動作98は、この説明例では次のように実施される。ここではofvGoalとして示される、各オブジェクト関数に対するOFV目標は、許可できる標的OFV及び現在の標的OFVの比(allowableTargetOFV/targetCompValue)に対してofvGoalを適合させることによって、動的モードで決定される。この比は、過剰補正を回避するように減衰し、次に次式のようにofvGoalを複数倍にすることができる。
乗数=allowableTargetOFV/targetCompValue
tuningDampening (2)
及び、
ofvGoal=ofvGoal×乗数 (3)
式(2)及び(3)に従って決定されたOFV目標を用いて、重み64(
図1を参照)を次式のように決定することができる。新しい(即ち、調節された)目標重みはadjWeightとして示される。重みは最終的に調整されるものであり、最適化に影響する。ofvGoalと現在のオブジェクト関数値との比に基づいて決定される。式(1)のような閾値の調節と同様に、説明例では、重みの過剰補償を回避する減衰パラメータがある。
重み×(ofvGoal/OFV)
weightDampening (4)
1つの説明例では、重みは100~10
-8の間で削減される。
【0039】
開示する方策は、連続する最適化ループ間における放射線治療計画の他の態様の改善にまで拡張することができる。
【0040】
例えば、別の態様では、計算された線量分布と処方線量とのコンプライアンスを定量化するオブジェクト関数の標的線量は、1つ又は複数の標的に対して所望の適用範囲パーセンテージ及び/又は処方パーセンテージを得るように、最適化ループの間で調節される。一般的に、腫瘍専門医又は放射線科医は、単位体積(若しくは質量)基準で、例えば生物学的効果比(RBE)のセンチグレイ(cGy)単位で、標的に送達されるべき放射線線量である処方線量を指定する。これは、標的ROI(即ち、標的)に対する計算された線量分布と処方線量とのコンプライアンスを定量化するオブジェクト関数として公式化され、放射線治療計画最適化は、標的のボリューム全体にわたってこの処方線量を得るように試み、また標的ボリューム全体にわたって均一性を強化する目標を含んでもよい。
【0041】
腫瘍専門医又は放射線科医は、標的のボリュームが良好にカバーされること、つまり標的ボリューム全体が処方線量に等しい、又は少なくともそれに近い線量を受けることを確保することにも関心がある。一般に、最適化を実施した後、送達された線量(単位体積当たり)、つまり少なくとも横軸(即ち、x座標)の線量値を受け取る標的ボリュームの部分の関数としての適用範囲パーセンテージのプロットである、ボリュームに対する累積線量体積ヒストグラム(累積DVH)が提供される。累積DVHは、理想的には、低い線量値に対して1の値を有し、累積DVHの横軸が処方線量に達する地点で明確な切捨てを示すべきである。他方で、横軸が処方線量に近づくにつれて1の累積DVH未満において徐々にロールオフされることは、最適化された放射線治療計画にしたがって、標的ボリュームの有意な部分が処方線量未満を受け取っていることを示す。実質的に処方線量未満を受け取る標的のこれらの部分は、放射線治療によって壊死する可能性が低く、腫瘍の有意な部分(一般的な標的ROI)が放射線治療を生き延びることがあるので、治療効果の低下に結び付く。
【0042】
標的の適用範囲は、処方パーセンテージ値を用いて定量的に表現される場合もある。これは、標的ボリューム全体が受け取る処方線量のパーセンテージである。換言すれば、処方パーセンテージは、適用範囲部分が1を下回って減少し始める、累積DVHの横軸に沿った線量値である。この公式化は、全ボリュームに対する処方パーセンテージ、即ち、標的ボリューム全体が受け取る処方線量のパーセンテージを表す。より一般には、処方パーセンテージは、ボリュームの何らかのより小さい部分に対して公式化されてもよく、例えば、処方パーセンテージは、標的ボリュームの少なくとも95%(より一般には、y%)が受け取る処方線量のパーセンテージである。この一般公式化は、適用範囲部分がy%を下回って減少する、累積DVHの横軸に沿った線量値に対応する。y%=100%の場合、全ボリュームに対する処方パーセンテージが得られることに留意されたい。標的の適用範囲の他の定量的測定基準も想到される。
【0043】
上述したように、最適化は、標的のボリューム全体にわたって処方線量を得るように試み、また、標的ボリューム全体にわたって均一性を強化する目標を含んでもよい。均一性の目標は、より大きい適用範囲の何らかの強化を提供してもよいが、例えば処方パーセンテージとして、又は他の何らかの定量的適用範囲測定基準として表される、所望の標的適用範囲が最適化された放射線治療計画によって達成されることは保証しない。この欠点に対処する通常の手法は、計画最適化を実施することであり、腫瘍専門医又は放射線科医は、プロットされた累積DVH及び(提供される場合は)処方パーセンテージを検証する。腫瘍専門医又は放射線科医がこれらのデータから、標的適用範囲が小さすぎると判定した場合、処方パラメータを使用して、処方線量の最適化後の再スケーリングが試みられる。複数の標的がある場合、(例えば、3つの)標的のうち1つの標的のみが望ましくない適用範囲を有することがあり、その場合、処方線量を再スケーリングするのが不可能なことがある。更に、処方線量を上方に再スケーリングすることによって、リスク臓器(OAR)の放射線暴露が多くなり、結果としてOARが容認できない高い線量を受け取る場合がある。それに加えて、場合によっては、再スケーリングは送達不能な放射線治療計画に結び付く場合がある。
【0044】
別の可能な方策は、処方パーセンテージ又は最小線量目標を合成オブジェクト関数に追加するものである。しかしながら、この方策は、目標が異なり、また場合によっては競合する複数の標的目標が使用される場合ほど効率的又は直感的ではない傾向がある。
【0045】
本明細書に開示する別の方策では、標的体積の標的線量目標は、通常通り処方線量で初期化されるが、例えば、標的ボリュームの部分(y%)又は全標的ボリューム(y%=100%)に対する処方パーセンテージとして表される、所望の標的適用範囲との合致の改善に向けて放射線治療計画最適化を促進する形で、最適化ループの間で調節される。換言すれば、最適化ループは、標的ROIの適用範囲の測定基準を決定することと、標的ROIの適用範囲の決定された測定基準と標的ROIの所望の適用範囲との比較に基づいて、処方線量を調節することとを含む。この方策は、標的(例えば、腫瘍)に対する処方線量は放射線治療の効率にとって重要であるが、容認できないほど少ない処方パーセンテージは腫瘍の部分が所望の壊死をもたらすのに十分に照射されないことに結び付き得るので、所望の処方パーセンテージを達成することもかなり重要である又は更にはより重要であるという認識に基づく。
【0046】
次に
図4を参照すると、
図1の電子プロセッサ32によって適切に実施される例示的な方策では、標的ボリューム(例えば、腫瘍)に対する標的線量(D
t)は、最初に、動作110で処方線量(D
prescription)に設定される。マルチループ最適化はまた、例えば、y%ボリューム適用範囲における所望の処方パーセンテージ(x%
desired)として表される、所望の処方パーセンテージ112を受け取る。上述したように、y%=100%の限定例を用いることが想到され、その場合、所望の処方パーセンテージ112は標的の全適用範囲に対するものである。
【0047】
動作114で、放射線治療計画のパラメータは、標的線量Dtに対応する標的線量目標を含み、また標的ボリューム全体にわたって線量均一性を強化する目標も含んでもよい、合成オブジェクト関数に対して最適化される。当然ながら、合成オブジェクト関数は、本明細書で考察する他の目標を含んでもよい。合成オブジェクト関数は、所望の処方パーセンテージ112を直接強化するいずれの目標も含まない。
【0048】
動作116で、累積DVHが標的に対して計算され、y%ボリューム適用範囲における実際の処方パーセンテージ(x%actual)が、最適化114によって出力される放射線治療計画に対して決定される。動作118で、線量調節(ΔD)が次式にしたがって計算される。
ΔD=(x%desired-x%actual)×Dprescription (5)
したがって、実際の処方パーセンテージ(x%actual)が所望の処方パーセンテージ(x%desired)よりも少ない場合、線量調節は正である。実際の処方パーセンテージが所望よりも多い場合(即ち、x%actual>x%desired)、線量調節は、式(5)を適用することによって得られる負の値であってもよく、又は代替実施形態では、x%actual>x%desiredの場合、動作118で、線量調節(ΔD)がゼロに設定される。式(5)の線量調節は単なる説明例であり、変形例の公式化も想到される。例えば、1未満の減衰因子値が補正を低減させ、1を超える値が補正を増加させる、減衰因子を組み込むことができる。
【0049】
動作120で、動作118からの線量調節ΔDが、次式にしたがって標的線量Dtを調節するのに適用される。
Dt←Dt+ΔD (6)
【0050】
図4には示されないが、最適化ループは、例えば、
図2を参照して本明細書に上述したように、オブジェクト関数値(OFV)目標の様々な調節を更に含んでもよいことが認識されるであろう。フロー矢印122によって
図4に模式的に示されるように、これらの調節後、プロセスフローは動作114に戻って、次の最適化ループの放射線治療計画最適化を実施する。
【0051】
図5及び
図6は、最適化が最適化ループ間での標的線量調節を含まない(
図5)、並びに最適化が最適化ループ間での標的線量調節を含む(
図6)、5400cGy、6000cGy、及び7000cGyの示される処方線量(D
prescription)における、最適化された放射線治療計画(実線)及び所望の標的適用範囲を有する計画(破線)に対する累積線量体積ヒストグラム(DVH)プロットを示している。
図5と
図6を比較することによって分かるように、標的線量調節(
図6)は、所望の標的適用範囲との合致の改善をもたらす。
【0052】
本発明について、好ましい実施形態を参照して記載してきた。上記の詳細な説明を読んで理解することによって修正及び変更が想起されるであろう。本発明は、添付の特許請求の範囲又はその等価物の範囲内にある限りにおいて、全てのかかる修正及び変更を含むと解釈されるものとする。