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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】エアバッグ用基布およびエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/235 20060101AFI20221017BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B60R21/235
D03D1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020510833
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012634
(87)【国際公開番号】W WO2019189044
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2018067365
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小寺 翔太
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱谷 剛士
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-186858(JP,A)
【文献】特開2017-081490(JP,A)
【文献】特開2011-168131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/235
D03D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ用基布であって、
ポリエチレンテレフタレートを主原料とする糸から構成される織物であって、
前記織物を構成する糸の総繊度が280~500dtexであり、
前記糸の単繊維繊度が1.0~3.9dtexであり、
カバーファクターが、2400~2800であり、
前記基布1枚の厚さD1と前記基布10枚を重ねた状態での厚さD10とから以下の式Aによって算出されるD値が0.9以下である、エアバッグ用基布。
D=D10/(D1×10) (A)
【請求項2】
前記糸の単繊維直径が、18μm以下である、請求項1に記載のエアバック用基布。
【請求項3】
前記織物の織密度は、経糸および緯糸がともに57~72本/2.54cmである、請求項1または2に記載のエアバッグ用基布。
【請求項4】
少なくとも、請求項1から3のいずれかに記載のエアバッグ用基布により形成された、エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時の乗員保護装置として普及しているエアバッグに用いられる織物に関し、特にノンコートエアバッグ用織物およびそれから得られるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突した時の衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、車両へのエアバッグ装置搭載が普及している。従来は、インフレーターから放出されるガスがバッグ内より漏れ出さないように、樹脂材料によりコーティングされた織物が主流であったが、燃費改善等の要求から軽量であること、ステアリングホイールデザインの流行などからコンパクトに収納できることが要求されており、ノンコート織物の採用が広がっている。
【0003】
ところが、ノンコート織物はコーティングされた織物と比較して基布表面や縫製部からの通気度が高いことが課題である。また、ほつれが発生しやすいことから、一般的なナイフを用いた裁断は不向きで、レーザーを用いて溶融裁断する必要があり、複数枚の基布を一度に裁断することが難しい。
【0004】
例えば、特許文献1には、海島型複合紡糸によって得られる複合繊維糸条から繊維構造物とした後に極細繊維化を行うことで、低通気性を有する織物を得る技術が開示されている。しかし、海島複合糸を原糸として使用することから原糸コストが高く、脱海加工が必要なことから製造コストも高い。さらに、脱海が不十分な場合には難燃性が低下する可能性があり、エアバッグ用織物としては不向きである。
【0005】
また、特許文献2には、合成繊維織物における耳部のみを部分熱処理して中央部と耳部の熱収縮率差を小さくし、織物耳部のたるみを抑えることで、レーザー裁断時に生地全幅に渡って精度よく裁断出来る基布が開示されている。しかし、当文献においては1枚ずつ裁断することを前提としており、複数枚の裁断については議論されておらず、一度に複数枚を裁断するには不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-258940号公報
【文献】特開平11-48893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低通気性に優れ、かつ、レーザーを使用した裁断性にも優れたエアバッグ用基布、及び、エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアバッグ用基布は、ポリエチレンテレフタレートを主原料とする糸から構成される織物であって、前記織物を構成する糸の総繊度が280~500dtexであり、単繊維繊度が1.0~3.9dtexであり、カバーファクターが、2400~2800であり、前記基布1枚の厚さD1と前記基布10枚を重ね状態での厚さD10とから以下の式(A)により算出されるD値が0.9以下であることを特徴とする。
D=D10/(D1×10) (A)
【0009】
上記エアバッグ用基布においては、前記糸の単繊維直径を、18μm以下とすることができる。
【0010】
上記エアバッグ用基布において、前記織物の織密度は、経糸および緯糸がともに57~72本/2.54cmとすることができる。
【0011】
本発明に係るエアバッグは、少なくとも、上述したいずれかのエアバッグ用基布により形成されている。
【発明の効果】
【0012】
低通気性に優れ、かつ、レーザーを使用した裁断性にも優れたエアバッグ用基布、及び、エアバッグを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例で使用する生布通気度測定装置の概略図
図2】実施例で使用する縫い目開き量評価用サンプルの概略図
図3】実施例で使用する裁断性テスト用サンプルの概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリエチレンテレフタレートを主原料とする糸から構成される織物であって、織物を構成する糸の総繊度が280~500dtexであり、単繊維繊度が1.0~3.9dtexであり、カバーファクターが、2400~2800であり、基布1枚の厚さD1と基布10枚を重ねた状態での厚さD10とから算出されるD値が0.9以下であることを特徴とする。ここでD値は以下の式Aによって算出される。
式A・・・D=D10/(D1×10)
【0015】
この基布は、ポリエチレンテレフタレートを主原料とする糸から構成されることが肝要である。ポリエチレンテレフタレートを主原料とすることで、レーザー照射時に素早く溶融させることが可能となり、レーザー裁断性に優れた基布を得る事が出来る。
【0016】
また織物を構成する糸は、その総繊度が500dtex以下であることが肝要である。糸の総繊度が500dtex以下であると、裁断時に過大なエネルギーを必要とせず、レーザー裁断性に優れた基布を得る事が出来る。その一方で、総繊度が高くなると、繊維の剛性が高くなる傾向にあり、これによって、織物の表面の凹凸が大きくなり、且つ織物の表面(特に、織り糸のうねりの頂点付近)が変形しがたくなると考えられる。その結果、後述するD値は高くなると考えられる。また、エアバッグ求められる強度が得られる点から、総繊度は280dtex以上であることが好ましい。
【0017】
また、織物を構成する糸の単繊維繊度は、1.0~3.9dtexの範囲であることが肝要である。単繊維繊度が3.9dtex以下であれば、裁断時にレーザーの照射面から遠い位置にあるフィラメントが十分に溶融しないことが原因で起こる裁断不良を防止することが出来る。また、単繊維繊度が小さいほど、次に説明するD値を小さくすることができる。これにより、レーザー光のエネルギーロスが低減され、裁断性が向上すると考えられる。一方、単繊維繊度が1.0dtex以上であれば、製織の際に影響を及ぼす毛羽の発生を抑える事が出来る。
【0018】
また、基布の裁断性を向上するために、基布1枚の厚さであるD1を10倍した値と基布を10枚重ねた際の厚みD10の比であるD値が0.9以下であることが肝要である。ここで、厚みの測定は、JIS L 1096 8.4 A法に準じて測定する。また、D10を測定するときには、すべての基布の経糸方向を揃えて基布を重ね、この状態で測定を行う。そして、D値を0.9以下とすることで、重ねて裁断する際の基布間の空隙が少なくなり、レーザー光のエネルギーがロスすることなく一番下に重ねた基布まで到達することが可能となる。また、基布1枚の厚さは、特には限定されないが、裁断性の観点からも、例えば、0.31mm以下が好ましく、0.30mm以下がより好ましく、0.29mm以下がさらに好ましい。一方、下限としては、例えば、0.04mm以上であることが好ましく、基布の厚みをこのような範囲にすると、上述したD値を得やすくなる。
【0019】
また、D値が高い場合、繊維が硬いことや、織られた糸のうねりが大きい(織物の表面の凹凸が大きい)ことが影響している可能性もある。これによって、通気性が高くなる可能性がある。その一方で、D値が低いと、通気性が低くなる可能性がある。
【0020】
このようなD値を達成するには、上記のように基布の厚み、基布の表面の凹凸を小さくするなどが必要となる。そのためには、糸の単繊維繊度を小さくするほか、糸の単繊維直径を小さくすることもD値を小さくすることに寄与すると考えられる。単繊維直径は、糸の単繊維繊度と比重によって得られる値であり、例えば、円形断面糸の場合、以下の式により求められる。具体的には、単繊維直径は、例えば、18μm以下であることが好ましく、16μm以下であることがさらに好ましい。
【数1】
【0021】
また、単繊維の断面形状は、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型などから選定すればよい。必要に応じて、これらの混繊、合糸、併用、混用(経糸と緯糸で異なる)などを用いればよく、紡糸工程、織物の製造工程、あるいは織物の物性などに支障のない範囲で適宜選定すればよい。
【0022】
織物のカバーファクターは2400以上であることが肝要であり、2450以上であることが好ましく、2500以上であることがさらに好ましい。カバーファクターを2400以上とすることで、織糸間の隙間が小さくなり、優れた低通気性を得ることが出来る。また、カバーファクターが2800以下であると織物の柔軟性を損ないにくく、良好な折り畳み性を得ることが出来、好ましい。また、カバーファクターが大きくなると、糸の絶対量が増えるため、織物の単位面積あたりの裁断に必要なエネルギが増加するため、裁断性は低下すると考えられる。この観点から、カバーファクターは、2600以下が好ましい。なお、本発明において、カバーファクター(CFともいう)は以下の式で算出される値である。
カバーファクター(CF)=織物の経密度×√経糸の総繊度+織物の緯密度×√緯糸の総繊度
【0023】
基布の織密度は、経糸および緯糸がともに57~72本/2.54cmであることが、製織性および通気性等の性能面で好ましい。特に、織密度が57本/2.54cm以上であると、エアバッグとしての通気性を低減できるので好ましい。この観点から、織密度の下限値は、60本/2.54cm以上であることがより好ましく、65本/2.54cm以上であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明のエアバッグは、上述した織物を所望の形状に裁断した少なくとも1枚の基布を接合することによって得られる。織物の裁断は、レーザー裁断機により行うことができる。この場合、織物を複数枚重ねたうえで、レーザー裁断機による裁断を行うことができる。特に、上記D値を充足する基布であれば、レーザー裁断機(Lectra社製FORCUS C10、出力=220W、速度24m/min)により、例えば、織物を3枚以上重ねて裁断を行うことができる。
エアバッグを構成する基布のすべてが、前記基布からなることが好ましい。また、エアバッグの仕様、形状および容量は、配置される部位、用途、収納スペース、乗員衝撃の吸収性能、インフレーターの出力などに応じて選定すればよい。さらに、要求性能に応じて補強布や吊り紐を追加してもよい。補強布や吊り紐は、上記基布と同じ基布からなることが好ましいが、上記基布とは異なるコート基布を選択しても良い。
【0025】
前記基布の接合、基布と補強布や吊り紐との接合、他の裁断基布同士の固定などは、主として縫製によって行われるが、部分的に接着や溶着などを併用したり、製織あるいは製編による接合法を用いたりしてもよく、エアバッグとしての堅牢性、展開時の耐衝撃性、乗員の衝撃吸収性能などを満足するものであればよい。
【0026】
裁断基布同士の縫合は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い方により行えばよい。また、縫い糸の太さは、700dtex(20番手相当)~2800dtex(0番手相当)、運針数は2~10針/cmとすればよい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目針間の距離を2mm~8mm程度とした多針型ミシンを用いればよいが、縫合部の距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。エアバッグ本体として複数枚の基布を用いる場合には、複数枚を重ねて縫合してもよいし、1枚ずつ縫合してもよい。
【0027】
縫合に使用する縫い糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46に代表されるポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
【0028】
さらに、必要に応じて、外周縫合部などの縫い目からのガス抜けを防ぐために、シール材、接着剤または粘着材などを、縫い目の上部および/または下部、縫い目の間、縫い代部などに塗布、散布または積層してもよい。
【実施例
【0029】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
<糸の総繊度>
JIS L 1013 8.3.1 B法に準じて測定した。
【0031】
<糸のフィラメント数>
JIS L 1013 8.4に準じて測定した。
【0032】
<単繊維繊度>
糸の総繊度を、糸のフィラメント数で除することで得た。
【0033】
<織物の織密度>
JIS L 1096 8.6.1 A法に準じて測定した。
【0034】
<D値>
得られた基布の厚みをJIS L 1096 8.4 A法に準じて測定し、これをD1とした。さらに、基布を織糸のタテ糸方向を揃えて10枚重ね、この状態における厚みを同様の方法で測定し、これをD10とした。D1とD10から式AによってD値を算出した。
式A・・・D=D10/(D1×10)
【0035】
<基布の通気量>
得られた基布の20kPa差圧下における通気量を、図1に示される生布通気量測定機(京都精工(株)製 流量計6:(株)コスモ計器製DF2810P、層流管5:(株)コスモ計器製LF2-100L、圧力計8:(株)コスモ計器製DP-330BA)を用いて測定した。得られた織物を20cm×20cmで裁断したものをサンプルとし、加圧装置と接続された内径50mmの円筒状クランプ3aにリング状の留め具2で固定し、層流管5と接続された内径50mmの円筒状クランプ3bで挟んだ。その後、円筒状クランプ3a側より加圧し、圧力計8の表示が20kPaとなる様に圧力調整弁7を操作した。前記の状態においてサンプルを通過する通気量を層流管5によって検出し、20kPa差圧下における通気量とした。通気量が1.0L/cm2・min以下であれば、基布表面からの通気量が低いと言える。
【0036】
<縫い目開き量確認試験>
図2に示すようなサンプルを作製した。すなわち、幅70mm、長さ150mmの2枚の試験片を長さ方向が基布織糸の経糸方向となる様裁断し、長辺方向を揃えて重ね、縫代20mm、運針数3.5針/10mmで一方の短辺端を縫い糸(エアーバッグ用ミシン糸、繊度=1400dtex、グンゼ(株)製)を用い縫製した。縫製後、長辺端に沿って20mmの幅で、縫製していない短辺端から縫製部9まで切込み10を入れ、図2のような目開き量確認試験用サンプルとした。サンプルの中央帯部(幅30mmの部分)を、縫製部9を中心に広げ、その両端を測定装置((株)島津製作所製 AG-IS MO型)にクランプし、490Nの負荷をかけた。負荷をかけたままの状態で縫い目の広がり長さを計測し、記録した。同様に試験片の長さ方向が基布織糸の緯糸方向となる様裁断したものについても同様に計測を行った。縫い目広がり量の経緯平均が1.2mm未満であれば、縫製部からの通気量が少ないと言える。
【0037】
<裁断性テスト>
得られた基布を織糸のタテ糸方向を揃えて6枚重ねた。重ねた基布は、上から順に1枚目、2枚目・・・6枚目とした。このように6枚の基布を重ねた状態で、レーザー裁断機(Lectra社製FORCUS C10、出力=220W、速度24m/min)を使用して、図3に示す形状のパーツ11を裁断した。裁断後、1枚目から6枚目までの各裁断パーツの状態を確認し、完全に裁断されたものを5、裁断面の一部が融着して残っているものを4、裁断面の一部にフィラメント残りなどの切れ残りが認められるものを3、裁断ラインの一部が完全には溶融せず残っているものを2、裁断ラインが全長に渡り完全に溶融していないものを1、レーザーが到達していないものを0とした。1枚目から6枚目までの点数の合計が24以上のものを裁断性が非常に優れている、22以上のものを優れている、22未満のものを裁断性に劣る、とした。また、各基布の裁断面の評価としては、4以上であることが好ましく、3までが許容できる下限である。
【0038】
以下、実施例及び比較例と、その評価について、表1とともに説明する。
【0039】
[実施例1]
総繊度330dtex、フィラメント数144、単繊維繊度2.29dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに70本/2.54cm、D値が0.89であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は0.56L/cm2・min、縫い目開き量は0.88mmであることから、基布表面、縫い目いずれからもガス漏れの懸念が少なくエアバッグの気密性を得るために十分な性能を有していた。また、裁断性テストの結果は総点26と高く、5枚目まで十分に裁断できていることから、非常に裁断性に優れた基布であった。
【0040】
[実施例2]
総繊度470dtex、フィラメント数182、単繊維繊度2.58dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに57本/2.54cm、D値が0.87であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は0.68L/cm2・min、縫い目開き量は1.14mmであり、基布表面、縫い目いずれからもガス漏れの懸念が少なくエアバッグの気密性を得るために十分な性能を有していた。また、裁断性テストの結果は総点24と高く、4枚目まで十分に裁断できていることから、非常に裁断性に優れた基布であった。
【0041】
[実施例3]
総繊度470dtex、フィラメント数144、単繊維繊度3.26dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに57本/2.54cm、D値が0.86であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は0.79L/cm2・min、縫い目開き量は0.95mmであり、基布表面、縫い目いずれからもガス漏れの懸念が少なくエアバッグの気密性を得るために十分な性能を有していた。また、裁断性テストの結果は総点22であり、4枚目まで十分に裁断できていることから、裁断性に優れた基布であった。
【0042】
[実施例4]
総繊度330dtex、フィラメント数144、単繊維繊度2.29dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに67本/2.54cm、D値が0.88であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は0.81L/cm2・min、縫い目開き量は0.90mmであり、基布表面、縫い目いずれからもガス漏れの懸念が少なくエアバッグの気密性を得るために十分な性能を有していた。また、裁断性テストの結果は総点26と高く、5枚目まで十分に裁断できていることから、裁断性に優れた基布であった。なお、実施例1と比較すると、カバーファクターがやや低いため、通気性がやや高くなっている。
【0043】
[実施例5]
総繊度470dtex、フィラメント数182、単繊維繊度2.58dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに57本/2.54cm、D値が0.83であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は0.65L/cm2・min、縫い目開き量は1.18mmであり、基布表面、縫い目いずれからもガス漏れの懸念が少なくエアバッグの気密性を得るために十分な性能を有していた。また、裁断性テストの結果は総点25と高く、5枚目まで十分に裁断できていることから、裁断性に優れた基布であった。なお、実施例2と比較すると、D値が低くなっているため、通気性はやや低くなっている。
【0044】
[比較例1]
総繊度470dtex、フィラメント数182、単繊維繊度2.58dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに55本/2.54cm、D値が0.87であるエアバッグ用基布を得た。この基布の裁断性テストの結果は総点24と高く、4枚目まで十分に裁断できていることから、非常に裁断性に優れた基布であったが、通気量は1.48L/cm2・min、縫い目開き量は1.25mmであり、基布表面、縫い目いずれからもガス漏れの懸念が高くエアバッグの気密性を得るために不十分な性能であった。これは、カバーファクターが低いためと考えられる。
【0045】
[比較例2]
総繊度550dtex、フィラメント数144、単繊維繊度3.82dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに52本/2.54cm、D値が0.92であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は1.05L/cm2・min、縫い目開き量は1.04mmであり、基布表面からのガス漏れの懸念がやや高くエアバッグの気密性を得るために不十分な性能であった。これは、カバーファクターがやや低いためと考えられる。また、総繊度が高いことから、高密度で織ることが難しく、その結果、通気度が高くなっているとも考えられる。また、糸の単繊維直径が大きいことに起因して、D値が高いと考えられる。よって、裁断性テストの結果も総点21であり、裁断性に劣る基布であった。
[比較例3]
総繊度470dtex、フィラメント数144、単繊維繊度3.26dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに57本/2.54cm、D値が0.91であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は1.10L/cm2・min、縫い目開き量は0.93mmであり、カバーファクターは低くないものの、基布表面からのガス漏れの懸念がやや高くエアバッグの気密性を得るために不十分な性能であった。これは、糸の単繊維直径が大きいことに起因して、D値が高いためと考えられる。よって、裁断性テストの結果も総点21であり、裁断性に劣る基布であった。
【0046】
[比較例4]
総繊度470dtex、フィラメント数144、単繊維繊度3.26dtexのナイロン66糸を用いて平織物を作製し、精練-セットを行って、織密度が経緯ともに53本/2.54cm、D値が0.92であるエアバッグ用基布を得た。この基布の通気量は0.27L/cm2・min、縫い目開き量は1.19mmであり、基布表面、縫製部からのガス漏れの懸念が少なくエアバッグの気密性を得るために十分な性能であったが、裁断性テストの結果も総点16と非常に低くで、裁断性に劣る基布であった。これは、材料がナイロンであり、糸の単繊維直径が大きいことからD値が高いためと考えられる。
【0047】
【表1】
【符号の説明】
【0048】
1 通気度測定用サンプル
2 リング状留め具
3a、3b 円筒状クランプ
4 加圧装置
5 層流管
6 流量計
7 圧力調整弁
8 圧力計
9 縫製部
10 切込
11 裁断テスト用パーツ
図1
図2
図3