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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】樹状細胞効力アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20221017BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20221017BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221017BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20221017BHJP
【FI】
G01N33/53 K
G01N33/53 P
G01N33/533
C12Q1/02
C12N5/0784
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020513569
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2017072254
(87)【国際公開番号】W WO2019048026
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-05-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) 公開日: 2017年8月31日 (2) オンラインによる公開:https://static1.squarespace.com/static/56dee71e555986fb3ae583e2/t/59a6925649fc2b18455f8e51/1504088674182/Scientific+Abstracts.pdf 123~124頁における“A181/樹状細胞(DC)ワクチンの免疫モニタリング:DC側からのワクチンの可能性の調査” (3) 会議の名前と場所:2017年9月6日から9日にドイツで開催された第3回CRI-CIMT-EATI-AACR国際癌免疫療法会議 (4) 公開者: メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハー (5) 公開された発明の内容: メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハーは、第3回CRI-CIMT-EATI-AACR 国際癌免疫療法会議の小冊子に、ジュディス エクル、イザベル レーマー、クリスティアンヌ ガイガー、及びドロレス シェンデルによって発明された“A181/樹状細胞(DC)ワクチンの免疫モニタリング:DC側からのワクチンの可能性の調査”を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】517419917
【氏名又は名称】メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】シェンデル,ドロレス
(72)【発明者】
【氏名】エクル,ジュディス
(72)【発明者】
【氏名】ガイガー,クリスティアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】レーマー,イザベル
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536330(JP,A)
【文献】特表2016-504912(JP,A)
【文献】Kvistborg P、外4名,Fast generation of dendritic cells,CELLULAR IMMUNOLOGY,2009年01月01日,Vol.260,No.1,Page.56-62
【文献】Veronique Lam Isong,In vitro generation of human monocyte-derived dendritic cells within 48 hours: functional characterisation and optimal activation in view of cellular-based immunotherapy,The degree of Doctor of at the Faculty of Medicine,LMU,Munich,Germany,ドイツ,2012年12月07日,https://d-nb.info/1028737939/34 ( 2018-03-05)
【文献】Kvistborg P、外4名,Fast generation of dendritic cells,CELLULAR IMMUNOLOGY,2009年01月01日,Vol.260,No.1,Page.56-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/02
C12N 5/0784
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞の効力を決定する方法であって、
(a)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストとのインキュベーションによってインビトロで樹状細胞を刺激するステップと、
(b)(a)の前記樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップと、ここで、該測定は、単一細胞レベルにおいて行われる、
(c)IL-12およびIL-10の分泌プロファイルに基づく前記樹状細胞の効力の分類のステップと、ここで、1を超える、IL-10分泌に対するIL-12分泌の比率を示す樹状細胞が、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞として分類される、
を含み、
T細胞を活性化する高い能力を有する前記樹状細胞が、T細胞を、Th1/Tc1表現型へと極性化する、前記方法。
【請求項2】
前記TLR7/8アゴニストが、4-アミノ-2-エトキシメチル-α,α-ジメチル-1H-イミダゾール[4,5-c]キノリン-1-エタノール(R848)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
T細胞およびNK細胞を活性化する高い能力を有する前記樹状細胞が、高いCD80発現レベル、高いCD86発現レベル、低いCD14発現レベル、および低いB7H1発現レベルの表現型を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記Th1/Tc1表現型が、前記T細胞によるIFNγの分泌と、全くないかまたは低いIL-4の発現とによって特徴付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
NK細胞を活性化する高い能力を有する前記樹状細胞が、NK細胞を活性化して、高レベルのCD69を発現させ、IFNγを分泌させる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
樹状細胞の効力を決定する方法であって、
(a)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストとのインキュベーションによってインビトロで樹状細胞を刺激するステップと、
(b)(a)の前記樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップと、ここで、該測定は、単一細胞レベルにおいて行われる、
(c)IL-12およびIL-10の分泌プロファイルに基づく前記樹状細胞の効力の分類のステップと、ここで、1を超える、IL-10分泌に対するIL-12分泌の比率を示す樹状細胞が、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞として分類される、
を含み、
NK細胞を活性化する高い能力を有する前記樹状細胞が、NK細胞を活性化して、高レベルのCD69を発現させ、IFNγを分泌させる、前記方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、
i)IL-10に対する一次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質と共に前記樹状細胞をインキュベートするステップと、
ii)前記一次結合性タンパク質への前記マーカータンパク質の結合を、二次結合性タンパク質によって検出するステップと
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記刺激が、前記樹状細胞への可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストの結合によってのみ生じる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
CD40Lが、細胞株によって前記樹状細胞に提示されない、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記樹状細胞が、異なる細胞株と共培養されない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
放射線照射ステップが適用されない、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記一次結合性タンパク質が抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記二次結合性タンパク質が抗体である、請求項7または12に記載の方法。
【請求項14】
前記二次結合性タンパク質が蛍光標識される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記樹状細胞が、成熟させた樹状細胞である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記成熟させた樹状細胞が、成熟化カクテルとのインキュベーションによって得られる、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCの効力を決定する方法であって、可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストとのインキュベーションによって樹状細胞を刺激するステップと、刺激された樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップとを含む方法に関する。それにより、樹状細胞がT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する高い能力を有するかどうかを決定することができる。本発明はまた、樹状細胞を刺激する方法であって、可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストで樹状細胞を刺激するステップを含む方法も包含する。
【背景技術】
【0002】
抗原負荷した樹状細胞は、無感作T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞をプライミングすることができ、結果として、抗腫瘍免疫療法または慢性ウイルス感染症の治療においてワクチンとして使用することができる。これらの腫瘍ワクチンは、細胞傷害性Tリンパ球を刺激することによって、疾患関連の抗原に対するT細胞応答の増加を引き起こす(Subkleweら)。臨床試験は、DCベースの免疫療法が安全であること、ならびにin vitroで修飾された樹状細胞の投与が特異免疫の増強につながることを示している。
【0003】
過去において、免疫モニタリングは、応答するT細胞の面だけに集中しており、免疫応答のDC側はほとんど見落とされていた。これは、一部には、分析のために関連DCの機能を決定することの困難さに起因し得る。癌免疫療法セッティングにおいてT細胞を最適に活性化するためには、DCによって3つのシグナルが提供されなければならない。第一に、TCRを惹起するために、適切な抗原が、MHC複合体によって適切な量において提示されなければならず(シグナル1);第二に、T細胞に対して促進的共刺激を提供するために、CD80/CD86のような共刺激分子の活性化が、DC表面上の負の調節分子より優勢にならなければならず(シグナル2)、第三に、T細胞をTh1/TC1方向に極性化するために、IL-10の不在下においてサイトカインIL-12の生物活性型が分泌されるべきである(シグナル3)。シグナル1およびシグナル2は、フローサイトメトリーを使用してモニターすることができる。シグナル3は、CD40/CD40L結合を介したDC-T細胞相互作用を模倣することによって測定することができる。
【0004】
しかしながら、投与のために作製された樹状細胞の品質は変わり得る。樹状細胞におけるこの変動は、T細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化するそれらの能力に影響を及ぼす。樹状細胞の品質は、その由来、分化および成熟状態に依存する。同じ成熟プロトコルおよび健常なドナーが使用された場合でさえ、T細胞活性化能力は、個々の間でかなり異なる。したがって、高い効力のワクチンとして使用される樹状細胞の適性をモニターする必要がある。
【0005】
信頼できるワクチン療法を提供するために、樹状細胞の効力を試験する方法が必要であるため、試験は、ロバストであり、費用対効果に優れ、適正製造規格(good manufacturing standard)(GMP)に従って実施できることが望ましい。
【0006】
DCワクチンの効力に対する標準的アッセイは、樹状細胞の表面でのCD80の上方調節である。このアッセイは、規制当局によって承認されるが、樹状細胞の真の機能性を反映はしない。CD80試験は、優れたT細胞およびNK活性化能力を示す、高IL-12分泌および低IL-10分泌を有する樹状細胞を、低IL-12および高IL-10を分泌するDC細胞と区別しない。
【0007】
T細胞活性化を誘導するために、樹状細胞を活性化しなければならない。樹状細胞の効力を測定する標準的アッセイにおいて、樹状細胞は、放射線照射された、CD40Lを発現するL929マウス線維芽細胞と共にインキュベートされる。マウス線維芽細胞上において発現されるCD40Lと樹状細胞のCD40との相互作用を介して、樹状細胞は活性化される。このアプローチは不利であるが、それは、放射線照射されたマウス線維芽細胞と樹状細胞との共培養は、困難であり、手間がかかり、コストが高く、標準化が難しく、ならびにGMP規格を適用するのが困難であるからである。その上、放射線照射ユニットが必要である。
【0008】
サイトカインのための標準的な単一細胞アッセイは、細胞内染色およびフローサイトメトリーによる検出である。それは、1つのアッセイでのIL-12およびIl-10の検出を可能にする。このアプローチの問題は、細胞内染色は、実際の分泌を示さず、単に刺激の際に誘導された細胞内サイトカインのレベルを測定するということである。したがって、細胞内サイトカインの検出は、これらのサイトカインが細胞によって分泌されることを意味しない。サイトカインが、刺激の前に既に細胞内に貯蔵されている場合、実際の分泌の推論は可能ではない。測定されたレベルが著しく増加する場合にのみ、刺激によるサイトカインの上方調節を、間接的に推論することができる。分泌されたサイトカインの実際のレベルは検出されない。サイトカインのレベルが変化しない場合、サイトカインは増加していないのかもしれないし、または増加しているが、増加が細胞内のサイトカインの分解と同じくらいの速さであるため、増加を検出できないのかもしれない。通常、成熟DCは、長期間にわたってIL-10を貯蔵することができ、IL-10が分泌されても、それは、細胞内染色データ、例えば、フローサイトメトリーデータなどに反映されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、適正製造規格(GMP)に従って実施することができ、IL-12およびIL-10の分泌を直接測定する、ロバストで費用対効果に優れるシンプルな方式において、樹状細胞の効力を試験する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、DCの効力を決定する方法であって、(a)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストとのインキュベーションによって樹状細胞を刺激するステップと、(b)(a)の樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップとを含む方法に関する。
【0011】
この方法は、樹状細胞の効力の正確な予測を可能にするマーカーサイトカインIL-12およびIL-10の実際の分泌レベルを測定するため、T細胞およびNK細胞の免疫応答を誘発する樹状細胞の能力の正確な予測を可能にする。その上、その方法は、ロバストであり、シンプルで、費用対効果に優れる。
【0012】
「樹状細胞の効力」は、T細胞および/またはNK細胞を活性化する樹状細胞の能力を意味する。したがって、本発明との関連における高い効力を有する樹状細胞は、樹状細胞がT細胞および/またはNK細胞を活性化することができることを意味する。特に、本発明との関連における高い効力の樹状細胞は、T細胞を、T細胞によるIFNγの分泌と同細胞の全くないかまたは低いIL-4の発現とによって特徴付けられるTh1/Tc1表現型へと極性化し得、ならびに/あるいはNK細胞を活性化して、高レベルのCD69を発現させ、IFNγを分泌させ得る。
【0013】
好ましい実施形態において、測定は、単一細胞レベルにおいて行われる。先行技術において使用されるアッセイは、バルクの培養物中の細胞マーカーを測定するだけであり、したがって、不均一な細胞集団の正しい分析を提供することができない。結果からは、少数の細胞のみが多量のサイトカインを産生するのか、それとも多数の細胞が少量の所定の分析物質を産生するのかは、不明瞭である。さらに、細胞が同時に両方の分析物質を産生するかどうかを検出することは、可能ではない。
【0014】
不均一な樹状細胞集団の効力の状態を詳細に決定するために、単一細胞測定は有利である。
【0015】
好ましい実施形態において、TLR7/8アゴニストは、4-アミノ-2-エトキシメチル-α,α-ジメチル-1H-イミダゾール[4,5-c]キノリン-1-エタノール(R848)である。
【0016】
可溶性CD40LおよびR848の組み合わせを用いた樹状細胞のインキュベーションは、特に有利であるが、それは、成熟化条件が異なる樹状細胞、例えば、異なる成熟化カクテルと共にインキュベートされた樹状細胞に対する、CD40LをトランスフェクトしたL929細胞による刺激を模倣するからである。したがって、CD40LおよびR848の組み合わせは、普遍的な樹状細胞刺激組成物に相当する。
【0017】
方法はさらに、ステップ(c)IL-12およびIL-10の分泌プロファイルに基づく樹状細胞の効力の分類を含む。その結果、1を超える、IL-10分泌に対するIL-12分泌の比率を示す樹状細胞は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞として分類される。
【0018】
T細胞およびNK細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞は、高いCD80発現レベル、高いCD86発現レベル、低いCD14発現レベル、および低いB7H1発現レベルの表現型を有し得る。
【0019】
T細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞は、T細胞を、Th1/Tc1表現型へと極性化し得る。Th1/Tc1表現型は、T細胞によるIFNγの分泌と、全くないかまたは低いIL-4の発現とによって特徴付けられる。
【0020】
NK細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞は、NK細胞を活性化して、高レベルのCD69を発現させ、IFNγを分泌させ得る。
【0021】
特に、方法のステップ(b)は、
i)IL-10に対する一次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質と共に樹状細胞をインキュベートするステップと、
ii)一次結合性タンパク質へのマーカータンパク質の結合を、二次結合性タンパク質によって検出するステップと
を含む。
【0022】
典型的には、刺激は、樹状細胞へのCD40LおよびTLR7/8アゴニストの結合によってのみ生じる。
【0023】
本発明の方法では、CD40Lは、細胞株によって樹状細胞に提示されない。樹状細胞は、CD40Lの可溶型とのインキュベーションによって活性化されるため、樹状細胞を異なる細胞株、例えば、CD40Lを発現するL929マウス線維芽細胞などと共培養する必要はない。したがって、困難で、時間がかかり、標準化することが困難な細胞培養を避けることができる。その上、これは、L929マウス細胞が増殖し続けないことを確実にするために放射線照射ステップを適用する必要のないことを意味し、増殖し続けた場合、実質的に、L929細胞がヒト樹状細胞を過剰増殖することにつながり、アッセイの実施を不可能にする。したがって、本発明の方法の場合、全ての病院に存在するわけではない放射線照射ユニットを必要としない。
【0024】
いくつかの実施形態において、IL-10およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質は、担体上に固定化される。それにより、担体は、IL-10およびIL-12に対する一次結合性タンパク質で一様にコーティングされ得る。これは、単一細胞レベルでのIL-10およびIL-12の分泌を測定することを可能にする。典型的には、担体は、マルチウェルプレートである。通常、一次結合性タンパク質は、抗体である。二次結合性タンパク質も抗体であり得る。二次結合性タンパク質は、検出ラベルによって標識され得る。典型的には、二次結合性タンパク質は、蛍光官能基またはラベルによって標識される。
【0025】
通常、本発明の方法において使用される樹状細胞は、成熟させた樹状細胞である。成熟させた樹状細胞は、本発明による方法によって刺激される場合、IL-10に対するIL-12の必要な比率においてそれらを発現する。樹状細胞の成熟化は、例えば、成熟化カクテルとのインキュベーションによって行われ得る。
【0026】
好ましくは、本発明の方法において使用される樹状細胞は、IL1β、TNFα、INFγ、TLR7/8アゴニスト、およびプロスタグランジンE2を含む成熟化カクテルによって成熟される。
【0027】
より好ましくは、本発明の方法において使用される樹状細胞は、以下のステップ:i)単球の提供と;ii)IL-4およびGM-CSFとのステップi)の単球のインキュベーションと;iii)IL1β、TNFα、INFγ、TLR7/8アゴニスト、およびプロスタグランジンE2を含む成熟化カクテルとの組み合わせにおけるIL-4およびGM-CSFとのステップii)の単球のインキュベーションとによって成熟される。
【0028】
ステップii)のインキュベーションは、少なくとも2日間継続し得る。ステップiii)のインキュベーションは、少なくとも12時間、好ましくは24時間継続し得る。
【0029】
本発明の別の態様は、樹状細胞を刺激する方法であって、
a)樹状細胞を提供するステップと、
b)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストで樹状細胞を刺激するステップと
を含む方法に関する。
【0030】
したがって、本発明は、樹状細胞を刺激するための可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストの使用に関する。
【0031】
本発明の別の態様は、
・TLR7/8アゴニスト
・可溶性CD40L
・IL-10に対して特異的な一次結合性タンパク質
・IL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質
・IL-10に対して特異的な二次結合性タンパク質、および
・IL-12に対して特異的な二次結合性タンパク質
を含むキットに関する。
【0032】
例えば、キットは、以下の成分:
(i)TLR7/8アゴニストおよびCD40Lを含む組成物、
(ii)IL-10に対して特異的な一次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質を含む組成物、ならびに
(iii)IL-10に対して特異的な二次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な二次結合性タンパク質を含む組成物
を含み得る。
【0033】
一次結合性タンパク質は、好ましくは抗体であり得、および/または二次結合性タンパク質は、抗体である。典型的には、TLR7/8アゴニストは、R848である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】DC刺激を示す図である。図1A:3つのシグナルが、最適なDC刺激のために必要である。DCは、T細胞の強力なアクチベーターであり、DCとT細胞との間の相互作用によってエフェクターT細胞の特性に影響を及ぼす。最適な活性化のために、3つのシグナルが、DCによって提供されなければならない。シグナル1:MHC/ペプチドおよび対応するTCRによる抗原提示シグナル2:CD28に会合する共刺激シグナルCD80/CD86の活性化シグナル3:活性化性サイトカイン、例えば、IL-12の分泌、および阻害性サイトカイン、例えば、IL-10の不在;出典De Koker、2011。図1B:従来のシグナル3アッセイでは、DCを、ヒトCD40Lを発現するマウス線維芽細胞の細胞株L929と24時間共培養する。培養上清中へと分泌されたサイトカインIL-12p70およびIL-10は、市販のサンドイッチELISA(例えば、R&Dsystems)によって決定される。アッセイは、放射線照射ユニットを必要とし、困難な細胞培養を発展させ、それにより、アッセイをGMP施設において利用することを困難にするため、不利である。さらに、アッセイは、単一細胞レベルに特有である。
図2】IL-10/IL-12ELISAにおける従来対樹状細胞のCD40L刺激の比較を示す図である。従来のシグナル3アッセイと比較した場合の、MDGカクテルによって成熟され、R848、IFN-γ、およびLPSとの様々な組み合わせにおいてDC40Lによって刺激されたDCにおけるIL-10/IL-12の分泌を示す(IL-10/IL-12ELISA)。
図3】IL-10/IL-12ELISAにおける従来対樹状細胞のCD40L刺激の比較を示す図である。Jonuleitで成熟されたDCによる同じ実験を示す。両方のアッセイにおいて、CD40L刺激は、IL-12分泌に関しては従来のシグナル2アッセイと同様の結果を示すが、CD40L刺激が単独で使用される場合、IL-10に対してはそうではない(IL-10/IL-12ELISA)。
図4】IL-10/IL-12ELISAにおける従来対樹状細胞のCD40L刺激の比較を示す図である。図4および5は、特に未成熟DC(iDC)およびJonuleit成熟DCにおける最適なIL-10分泌のための共刺激試薬としてR848が必要であることを示している。図4は、IL-10/IL-12ELISAデータを示す。
図5】IL-10/IL-12ELISAにおける従来対樹状細胞のCD40L刺激の比較を示す図である。図4および5は、特に未成熟DC(iDC)およびJonuleit成熟DCにおける最適なIL-10分泌のための共刺激試薬としてR848が必要であることを示している。図5は、本発明の方法によって実施されたデータを示す(ELISPOT シグナル3 CD40L)。
図6図6から8:フローサイトメトリーではなく二色IL-10/IL-12ELISPOTがELISAに匹敵する樹状細胞の効力を示すことを示す図である。IL-12およびIL-10に対する2種類の異なるドナーのELISPOTデータを示す。刺激は、20000細胞、およびR848を伴う1μlCD40L/100μl([v/v])の培地によって実施した。ドナー1は、高IL-10産生体であり、その一方で、ドナー2は、主にIL-12を産生する。
図7図6から8:フローサイトメトリーではなく二色IL-10/IL-12ELISPOTがELISAに匹敵する樹状細胞の効力を示すことを示す図である。従来のシグナル3アッセイでの同じドナーを示す。両方のアッセイは、非常に匹敵する結果を示している。二色IL-10/IL-12ELISPOTとは対照的に、細胞内IL-12およびIL-10のフローサイトメトリー分析は、IL-12分泌データのみに匹敵する結果を示しているが、IL-10に対してはそうではない。これは、おそらく細胞内IL-10貯蔵に起因する。
図8図6から8:フローサイトメトリーではなく二色IL-10/IL-12ELISPOTがELISAに匹敵する樹状細胞の効力を示すことを示す図である。同じドナーの細胞のIL-12およびIL-10のELISAまたは対応する細胞内フローサイトメトリー(FACS)染色によって検出される、従来のシグナル3アッセイ後のIL-12およびIL-10分泌の比較を表す。FACSによって検出される細胞内染色結果は、特にIL-10に関して、ELISAによって検出される分泌に匹敵しない。これは、FACSは、細胞内に貯蔵された総IL-10を測定するが、その一方で、ELISAは、分泌されたIL-10を検出するという事実によって説明することができる。
図9】単一細胞IL-10/IL-12アッセイ(ELISPOT)を示す図である。上側の列において、第1の画像は、IL-12産生成熟樹状細胞(本発明者らのカクテルによって成熟させた)のスポットカウントを示しており、第2の画像は、同じウェルにおけるIL-10産生細胞のスポット数を示しており、第3の画像は、二重陽性細胞のスポットの数を示している。下側の第2列には、未成熟樹状細胞のそれぞれのデータが示されている(ヒトIL-10/IL-12二色ELISPOTキット(CTL);細胞数:20,000細胞/ウェル、1.1μl/110μlのCD40L+R848)。結果は、健康なドナーにおいて、未成熟DC(iDC)がIL-10の主要な供給源であることを明確に示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
いくつかの好ましい実施形態に関して本発明を詳細に説明する前に、以下の一般的定義を提供する。
【0036】
以下において例示的に説明される本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の要素、制限の不在下において、適切に実施され得る。
【0037】
本発明は、特定の実施形態に関して、およびある特定の図を参照しながら説明されるであろうが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0038】
用語「を含む(comprising)」が、本説明および特許請求の範囲において使用される場合、それは、他の要素を排除しない。本発明の目的のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「を含む(comprising of)」の好ましい実施形態であるとみなされる。以下において、群が、少なくともある特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示するとも理解される。
【0039】
本発明の目的のために、用語「得られる(obtained)」は、用語「得ることができる(obtainable)」の好ましい実施形態であるとみなされる。以下において、例えば、抗体が、特定の供給源から得ることができると定義される場合、これは、この供給源から得られる抗体を開示するとも理解される。
【0040】
単数名詞を示すときに不定冠詞または定冠詞、例えば、「a」、「an」、または「the」が使用される場合、これは、特に明記されない限り、複数のその名詞を包含する。本発明の文脈における用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、関心対象の特徴の技術的効果をさらに確実にすると当業者が理解するであろう正確さの区間を意味する。その用語は、典型的には、示された数値からの±10%、好ましくは±5%の偏位を示す。
【0041】
技術用語は、それらの常識によって使用される。ある特定の用語に、特定の意味が込められる場合、以下において、その用語が使用される文脈における用語の定義が与えられるであろう。
【0042】
概して、本発明は、DCの効力を決定する方法であって、(a)可溶性CD40Lおよび場合によりTLR7/8アゴニストとのインキュベーションによって樹状細胞を刺激するステップと、(b)(a)の樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップとを含む方法に関する。
【0043】
特に、本発明は、DCの効力を決定する方法であって、(a)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストとのインキュベーションによって樹状細胞を刺激するステップと、(b)(a)の樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップとを含む方法に関する。
【0044】
樹状細胞は、細胞表面においてCD40を発現する。CD40-CD-40L相互作用は、樹状細胞を刺激する。「可溶性CD40L」は、CD40L(CD154またはCD40リガンドとも命名される)と会合する膜の修飾型を意味する。用語「可溶性CD40L」は、その膜貫通ドメインを含まない、CD40Lの切除型を包含する。用語「可溶性CD40L」は、CD40Lオリゴマー、特に修飾されたCD40Lオリゴマー、例えば、Adiponectin/ACRP30/AdipoQのコラーゲンドメインによって人工的に結合された三量体CD40リガンド分子、例えば、MEGACD40L(Enzo Life Science GmbH、Lorrach、ドイツ)なども包含する。可溶性CD40Lは、CD40Lの自然な膜支援凝集を刺激することができ得る。CD40Lは、10ng/mlから100μg/ml、好ましくは1ng/mlから10μg/ml、例えば、1μg/mlなどの濃度において使用され得る。CD40Lを用いたインキュベーションは、少なくとも12時間、好ましくは12時間から48時間、より好ましくは約24時間継続し得る。
【0045】
TLR7/8は、Toll様受容体7/8とも命名される。好ましくは、TLR7/8アゴニストは、4-アミノ-2-エトキシメチル-α,α-ジメチル-1H-イミダゾール[4,5-c]キノリン-1-エタノール(R848)であり、これは、国際公開第00/47719号パンフレットに記載されており、Invivogen(サンディエゴ、USA)から入手可能である。TLR7/8アゴニスト、好ましくはR848は、0.2μg/mlから5μg/mlの間、好ましくは0.5μg/mlから2μg/ml、より好ましくは1μg/mlの濃度において使用され得る。TLR7/8アゴニスト、好ましくはR848を用いたインキュベーションは、少なくとも12時間、好ましくは12時間から48時間、より好ましくは約24時間継続され得る。
【0046】
TLR7/8アゴニストおよびCD40Lは、一緒に、または連続して、樹状細胞に加えられ得る。
【0047】
CD40LおよびTLR7/8アゴニストの組み合わせとのインキュベーションは特に有利であるが、それは、成熟化条件が異なる樹状細胞、例えば、異なる成熟化カクテルと共にインキュベートされた樹状細胞に対する、CD40LをトランスフェクトしたL929細胞による刺激を模倣するからである。したがって、CD40LおよびTLR7/8アゴニストは、普遍的な樹状細胞刺激組成物に相当する。
【0048】
重要なことに、本発明は、樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定する。これは、培地中へと分泌されるIL-12およびIL-10分子を測定しており、それらは細胞内IL-12およびIL-10内容物ではないことを意味する。上記において細胞内内容物について既に説明したように、インターロイキンは、分泌されたレベルに必ずしも一致するわけではない。これは特に、IL-10に当てはまる。
【0049】
典型的には、樹状細胞は、IL-10一次結合性タンパク質およびIL-12一次結合性タンパク質でコーティングされた担体プレート上に播種され得る。CD40Lと場合によりTLR7/8アゴニストとを含有する刺激溶液は、樹状細胞を播種した後または播種する前に加えられ得る。インキュベーション時間の後、二次結合性タンパク質が加えられる。インキュベーション時間は、6時間から48時間、好ましくは12時間から36時間、最も好ましくは24時間であり得る。
【0050】
したがって、マーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌の測定は、マーカータンパク質の検出を媒介する、IL-10およびIL-12に対する特異的結合性タンパク質とのインキュベーションによるマーカータンパク質の検出を意味する。したがって、結合性タンパク質は、ラベル、例えば、蛍光ラベルなどによって、または特異的基質、例えば、IL-10に対する西洋ワサビペルオキシダーゼおよびIL-12に対するアルカリ性ホスファターゼなど)を使用するマーカータンパク質の検出を可能にする反応を促進する酵素によって修飾され得る。
【0051】
好ましい実施形態において、測定は、単一細胞レベルにおいて行われる。単一細胞レベルにおいてインターロイキン分泌を測定することが可能な任意の方法を適用することができる。したがって、この方法は、バルク培養物中のインターロイキン分泌、すなわち、細胞集団のインターロイキンの合計を測定するのではなく、細胞ごとに個別にインターロイキン分泌を測定する。上記において既に指摘しているように、これは有利であるが、それは、異なるインターロイキン分泌を示す複数の細胞を含む不均一な細胞集団のインターロイキン状況を、より詳細に分析することができるからである。
【0052】
したがって、好ましい実施形態は、DCの効力を決定する方法であって、(a)可溶性CD40LおよびR848とのインキュベーションによって樹状細胞を刺激するステップと、(b)(a)の樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップとを含み、
アッセイが単一細胞レベルにおいて行われる、方法に関する。
【0053】
方法はさらに、ステップ(c)IL-12およびIL-10の分泌プロファイルに基づく樹状細胞の効力の分類を含む。換言すると、方法は、ステップ(c)樹状細胞がT細胞および/またはNK細胞を活性化する高い能力を有するかどうかの分類を含む。その結果、1を超える、IL-10分泌に対するIL-12分泌の比率を示す樹状細胞は、T細胞およびNK細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞として分類される。好ましくは、5を超える、例えば、10を超える、20を超える、30を超える、40を超える、50を超える、60を超える、70を超える、80を超える、IL-10分泌に対するIL-12分泌の比率を示す樹状細胞は、T細胞および/またはNK細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞として分類される。IL-10に対するIL-12の比率は、典型的には、10,000未満、例えば、5,000未満、1,000未満、または500未満である。
【0054】
逆の場合も同様に、1を超える、IL-12分泌に対するIL-10分泌の比率を示す樹状細胞は、免疫応答を抑制する樹状細胞として分類される。
【0055】
好ましい実施形態は、DCの効力を決定する方法であって、(a)可溶性CD40LおよびR848とのインキュベーションによって樹状細胞を刺激するステップと、(b)(a)の樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップと、(c)樹状細胞がT細胞および/またはNK細胞を活性化する高い能力を有するかどうかの分類ステップとを含み、1を超えるIL-10分泌に対するIL-12分泌の比率を示す樹状細胞は、T細胞および/またはNK細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞として分類され;
アッセイが単一細胞レベルにおいて行われる、方法に関する。
【0056】
T細胞およびNK細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞は、高いCD80発現レベル、高いCD86発現レベル、低いCD14発現レベル、および低いB7H1発現レベルの表現型を有し得る(Lichteneggerら; Kenneth Murphy & Casey Weaver: Janeway's Immunobiology)。
【0057】
T細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞は、T細胞を、Th1/Tc1表現型へと極性化し得る。Th1/Tc1表現型は、T細胞によるIFNγの分泌と、全くないかまたは低いIL-4の発現とによって特徴付けられる。NK細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞は、NK細胞を活性化して、高レベルのCD69を発現させ、IFNγを分泌させ得る(Kenneth Murphy & Casey Weaver: Janeway's Immunobiology)。
【0058】
典型的には、刺激は、樹状細胞への可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストの結合によってのみ生じる。これは、樹状細胞を刺激するために、他の刺激、例えば、他の分子とのインキュベーションが必要ないことを意味する。特に、膜貫通タンパク質CD40Lが、細胞の膜に固定された膜貫通型、例えば、CD40Lを発現する放射線照射されたL929マウス線維芽細胞などにおいて、樹状細胞に提示されることは、必要ではない。したがって、方法が放射線照射ステップを含む必要はない。
【0059】
特に、方法のステップ(b)は、
i)IL-10に対する一次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質と共に樹状細胞をインキュベートするステップと、
ii)一次結合性タンパク質へのマーカータンパク質の結合を、二次結合性タンパク質によって検出するステップと
を含む。
【0060】
ステップii)の検出は、マーカータンパク質と一次結合性タンパク質との複合体への二次結合性タンパク質の結合によって行われ得る。あるいは、二次結合性タンパク質は、単独で、一次結合性タンパク質に結合し得る(一次結合性タンパク質との相互作用なしに)。この場合、ステップii)の前の洗浄ステップにより、一次結合性タンパク質に結合されていないマーカータンパク質が除去される。
【0061】
いくつかの実施形態において、IL-10およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質は、担体上に固定化される。それにより、担体は、IL-10およびIL-12に対する一次結合性タンパク質で一様にコーティングされ得る。これは、単一細胞レベルでのIL-10およびIL-12の分泌を測定することを可能にする。典型的には、担体は、マルチウェルプレートである。通常、一次結合性タンパク質は、抗体である。二次結合性タンパク質も抗体であり得る。
【0062】
二次結合性タンパク質は、検出ラベルによって標識され得る。典型的には、二次結合性タンパク質は、蛍光標識されるか、またはマーカータンパク質の検出を可能にする反応を促進する酵素によって修飾される。
【0063】
通常、本発明の方法において使用される樹状細胞は、成熟させた樹状細胞である。成熟させた樹状細胞は、CD40L(およびTLR7/8アゴニスト)によって刺激される場合、IL-10に対するIL-12の必要な比率においてそれらを発現する。樹状細胞の成熟化は、例えば、成熟化カクテルとのインキュベーションによって行われ得る。
【0064】
典型的には、成熟樹状細胞は、以下のステップ:i)単球の提供と;ii)IL-4およびGM-CSFとのステップi)の単球のインキュベーションと;iii)成熟化カクテルとの組み合わせにおけるIL-4およびGM-CSFとのステップii)の単球のインキュベーションとを含む方法によって作製され得る。
【0065】
成熟化カクテルは、IL-β、TNF-α、IFN-γ、TLR7/8アゴニスト、PGE2およびTLR3アゴニスト、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される成分の少なくとも1つを含み得る。TLR7/8アゴニストは、R848またはCL075であり得る。TLR3アゴニストは、ポリ(I:C)であり得る。特定の実施形態において、成熟化カクテルは、IL1β、TNFα、INFγ、TLR7/8アゴニスト、およびプロスタグランジンE2の組み合わせを含み得る。TLR7/8アゴニストは、R848またはCL075であり得る。好ましくは、TLR7/8アゴニストは、R848である。
【0066】
成熟化カクテルは、1~50ng/mlのTNFα、1~50ng/mlのIL-1β、500~10,000U/mlのINFγ、0.2~5μg/mlのTLR7/8アゴニスト、および50~5,000ng/mlのプロスタグランジンE2PG、ならびに場合により10~50ng/mlのTLR3アゴニストを含み得;より好ましくは、カクテルは、10ng/mlのTNF-α、10ng/mlのIL-1β、5,000U/mlのIFNγ、1ug/mlのR848、および250ng/mlのプロスタグランジンE2を含み得る。
【0067】
ステップii)のインキュベーションは、3日間継続し得る。ステップiii)のインキュベーションは、少なくとも24時間継続し得る。
【0068】
あるいは、Jonuleitカクテルも使用することができる。Jonuleitカクテルは、Jonuleitらに記載されており、TNFα、IL-1β、IL-6、およびプロスタグランジンE2を含む。特に、Jonuleitカクテルは、10ng/mlのTNF-α、10ng/mlのIL-1β、15ng/mlのIL-6、および1000ng/mlのプロスタグランジンE2を含む。
【0069】
樹状細胞は、ドナー由来抗原提示細胞、例えば、樹状細胞へと成熟された単離された単球であり得る。成熟樹状細胞は、本発明の方法によって最適に刺激することができる。
【0070】
典型的には、樹状細胞は、自己細胞、すなわち、本発明の教示に従って治療される患者から得られ、同じ患者に再投与される、細胞である。例えば、単球は、患者から単離され、樹状細胞へと成熟され、所望の抗原を発現するように、本明細書において説明されるように処理され、次いで、同じ患者に投与される。
【0071】
当業者は、樹状細胞のための成熟化プロトコルを承知している。急性骨髄性白血病の免疫療法のために使用される樹状細胞の成熟化は、Subkleweらに開示されており、Burdekらには、樹状細胞のための3日成熟化プロトコルについて記載されている。
【0072】
単球は、例えば、末梢血単核細胞であり得る。
【0073】
本発明の別の態様は、樹状細胞を刺激する方法であって、
a)樹状細胞を提供するステップと、
b)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストで樹状細胞を刺激するステップと
を含む方法に関する。
【0074】
本発明の別の態様は、
・TLR7/8アゴニスト、
・可溶性CD40L、
・IL-10に対して特異的な一次結合性タンパク質、
・IL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質、
・IL-10に対して特異的な二次結合性タンパク質、および
・IL-12に対して特異的な二次結合性タンパク質
を含むキットに関する。
【0075】
マーカータンパク質(IL-12またはIL-10のどちらか)に対して特異的な二次結合性タンパク質は、マーカータンパク質と一次結合性タンパク質との複合体に結合し得るか、または(一次結合性タンパク質との相互作用なしに)一次結合性タンパク質に単独で結合し得る。
【0076】
例えば、キットは、以下の成分:
(i)TLR7/8アゴニストおよびCD40Lを含む組成物、
(ii)IL-10に対して特異的な一次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質を含む組成物、ならびに
(iii)IL-10に対して特異的な二次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な二次結合性タンパク質を含む組成物
を含み得る。
【0077】
一次結合性タンパク質は、好ましくは抗体であり得、および/または二次結合性タンパク質は、抗体である。典型的には、TLR7/8アゴニストは、R848である。
【0078】
用語「結合性タンパク質」は、抗体だけでなく、それらの結合性断片も包含するが、他の分子、例えば、非抗体タンパク質骨格タンパク質(non-antibody protein scaffold protein)およびアプタマーなども包含する。
【0079】
抗体は、それらの重鎖に基づいて5つの主要なクラス、IgM(μ)抗体、IgD(δ)抗体、IgG(y)抗体、IgA(α)抗体、およびIgE(ε)抗体に分類することができ、IgG抗体は、最も大きな割合を構成する。その上、免疫グロブリンは、それらの軽鎖に基づいて、アイソタイプκおよびλに分類することができる。
【0080】
実験
MDGカクテルまたはJonuleitカクテルを用いて成熟化され、CD40L単独で、ならびにR848/IFNγおよびLPSと組み合わせて刺激された樹状細胞
単球を、付着性単離によって単離した後、IL-4およびGMSCFを使用して3日間かけて樹状細胞を発生させた。その後、樹状細胞を、MDGカクテルとIL-4およびGMCSFとを用いて、24時間かけて成熟させた。Jonuleitカクテルの場合は、細胞を、IL-4およびGMSCFを使用して、6日間インキュベートした。次いで、細胞を、Jonuleitカクテル(ならびにIL-4およびGMCSF)を使用して、24時間インキュベートした。全てのアッセイに対して、凍結した樹状細胞を、アッセイの前日に解凍して、アッセイを開始するまでDC培地においてインキュベートして使用した。刺激は、96ウェルプレートにおいて24時間行われる。したがって、ウェルあたり11,000の樹状細胞を播種した。110μlのDC培地(1.5%ヒト血清を伴うVLERPMI1640)中における1.1μlのCD40L、1μg/mlのLPS、およびR848を加えた。
【0081】
Elisaアッセイを、それぞれ、DuoSet ELISA-Kit(R&D Systems,Inc、ミネアポリス、USA)のヒトIL-10、IL12p70のプロトコルに従って実施した。
【0082】
IL-10/IL-12Elispotアッセイ
IL-10/IL-12Elispotアッセイを、(C.T.L. Cellular technology Limited、クリーブランド、USA)のヒトIL-10/IL-12Double-Color ELISPOTキットのプロトコルに従って実施した。
【0083】
Jonuleitカクテル
10ng/mlのTNFα、10ng/mlのIL-1γ、15ng/mlのIL-6、および1,000ng/mlのプロスタグランジンE2(=PGE2)
【0084】
MDGカクテル
10ng/mlのTNF-α、10ng/mlのIL-1β、5,000U/mlのIFNγ、1μg/mlのR848、および250ng/mlプロスタグランジンE2
なお、本発明は、以下の態様をも含むものである。
<1> 樹状細胞の効力を決定する方法であって、
(a)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストとのインキュベーションによって樹状細胞を刺激するステップと、
(b)(a)の前記樹状細胞からのマーカータンパク質IL-10およびIL-12の分泌を測定するステップと
を含む方法。
<2> 前記測定が、単一細胞レベルにおいて行われる、上記1に記載の方法。
<3> 前記TLR7/8アゴニストが、4-アミノ-2-エトキシメチル-α,α-ジメチル-1H-イミダゾール[4,5-c]キノリン-1-エタノール(R848)である、上記1または2に記載の方法。
<4> さらに、
(c)IL-12およびIL-10の分泌プロファイルに基づく前記樹状細胞の効力の分類のステップを含む、上記1から3のいずれかに記載の方法。
<5> 1を超える、IL-10分泌に対するIL-12分泌の比率を示す樹状細胞が、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する高い能力を有する樹状細胞として分類される、上記1から4のいずれかに記載の方法。
<6> T細胞およびNK細胞を活性化する高い能力を有する前記樹状細胞が、高いCD80発現レベル、高いCD86発現レベル、低いCD14発現レベル、および低いB7H1発現レベルの表現型を有する、上記5に記載の方法。
<7> T細胞を活性化する高い能力を有する前記樹状細胞が、T細胞を、Th1/Tc1表現型へと極性化する、上記5または6に記載の方法。
<8> 前記Th1/Tc1表現型が、前記T細胞によるIFNγの分泌と、全くないかまたは低いIL-4の発現とによって特徴付けられる、上記7に記載の方法。
<9> NK細胞を活性化する高い能力を有する前記樹状細胞が、NK細胞を活性化して、高レベルのCD69を発現させ、IFNγを分泌させる、上記5から8に記載の方法。
<10> ステップ(b)が、
i)IL-10に対する一次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質と共に前記樹状細胞をインキュベートするステップと、
ii)前記一次結合性タンパク質への前記マーカータンパク質の結合を、二次結合性タンパク質によって検出するステップと
を含む、上記1から9のいずれかに記載の方法。
<11> 前記刺激が、前記樹状細胞への可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストの結合によってのみ生じる、上記1から10のいずれかに記載の方法。
<12> CD40Lが、細胞株によって前記樹状細胞に提示されない、上記1から11のいずれかに記載の方法。
<13> 前記樹状細胞が、異なる細胞株と共培養されない、上記1から12のいずれかに記載の方法。
<14> 放射線照射ステップが適用されない、上記1から13のいずれかに記載の方法。
<15> IL-10およびIL-12に対して特異的な前記一次結合性タンパク質が、担体上に固定化される、上記10から14に記載の方法。
<16> 前記担体が、IL-10およびIL-12に対する前記一次結合性タンパク質で一様にコーティングされる、上記15に記載の方法。
<17> 前記担体が、マルチウェルプレートである、上記15または16に記載の方法。
<18> 前記一次結合性タンパク質が抗体である、上記10から17のいずれかに記載の方法。
<19> 前記二次結合性タンパク質が抗体である、上記10から18のいずれかに記載の方法。
<20> 前記二次結合性タンパク質が蛍光標識される、上記10から19に記載の方法。
<21> 前記樹状細胞が、成熟させた樹状細胞である、上記1から20のいずれかに記載の方法。
<22> 前記樹状細胞の前記成熟化が、成熟化カクテルとのインキュベーションによって行われる、上記21に記載の方法。
<23> 樹状細胞を刺激する方法であって、
a)樹状細胞を提供するステップと、
b)可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストで前記樹状細胞を刺激するステップとを含む方法。
<24> 樹状細胞を刺激するための可溶性CD40LおよびTLR7/8アゴニストの使用。
<25> TLR7/8アゴニスト、
可溶性CD40L、
IL-10に対して特異的な一次結合性タンパク質、
IL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質、
IL-10に対して特異的な二次結合性タンパク質、および
IL-12に対して特異的な二次結合性タンパク質
を含むキット。
<26> (i)TLR7/8アゴニストおよびCD40Lを含む組成物、
(ii)IL-10に対して特異的な一次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な一次結合性タンパク質を含む組成物、ならびに
(iii)IL-10に対して特異的な二次結合性タンパク質およびIL-12に対して特異的な二次結合性タンパク質を含む組成物
を含む、上記25に記載のキット。
<27> 前記一次結合性タンパク質が抗体であり、および/または前記二次結合性タンパク質が抗体である、上記25または26に記載のキット。
<28> 前記TLR7/8アゴニストがR848である、上記23に記載の方法、上記24に記載の使用、上記25から27に記載のキット。
【0085】
参考文献
【表1】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9