(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】再生情報管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20221017BHJP
【FI】
G06Q10/00 400
(21)【出願番号】P 2020527140
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2018024893
(87)【国際公開番号】W WO2020003509
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510048875
【氏名又は名称】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN EUROPE N.V.
【住所又は居所原語表記】Zandvoordestraat 300,Oostende 8400,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 忠史
(72)【発明者】
【氏名】清木場 卓
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕未
【審査官】岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-302337(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0161574(US,A1)
【文献】特開2009-215224(JP,A)
【文献】特開2015-125672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生させる再生装置を少なくとも有する再生システム、から得られる再生情報をネットワーク経由で送信する通信装置と、
前記再生情報を、前記再生システムを識別する再生システムIDに関連付けて記憶する記憶部を有する管理装置と、
を備
え、
前記通信装置は、再生される冷媒の種類に関する情報を前記再生情報として前記管理装置に送信する、
再生情報管理システム。
【請求項2】
回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生させる再生装置を少なくとも有する再生システム、から得られる再生情報をネットワーク経由で送信する通信装置と、
前記再生情報を、前記再生システムを識別する再生システムIDに関連付けて記憶する記憶部を有する管理装置と、
を備え、
前記通信装置は、前記再生情報を前記管理装置に送信し、
前記再生装置は、圧縮機及び/又は回収された冷媒から油を除去する静電式分離装置を有しており、
前記再生情報は、前記圧縮機の使用時間に関する情報、前記圧縮機の印加電圧に関する情報、前記圧縮機の印加電流に関する情報、前記静電式分離装置の使用時間に関する情報、前記静電式分離装置の印加電圧に関する情報、及び前記静電式分離装置の印加電流に関する情報、の少なくとも一つを含む、
再生情報管理システム。
【請求項3】
回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生させる再生装置を少なくとも有する再生システム、から得られる再生情報をネットワーク経由で送信する通信装置と、
前記再生情報を、前記再生システムを識別する再生システムIDに関連付けて記憶する記憶部を有する管理装置と、
を備え、
前記通信装置は、前記再生情報を前記管理装置に送信し、
前記再生装置は、回収された冷媒から水分を除去するフィルタドライヤを有しており、
前記再生情報は、前記フィルタドライヤを交換する必要があるか否か、及び/又は前記フィルタドライヤが交換されたか否かを示すフィルタ交換情報を含む、
再生情報管理システム。
【請求項4】
回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生させる再生装置を少なくとも有する再生システム、から得られる再生情報をネットワーク経由で送信する通信装置と、
前記再生情報を、前記再生システムを識別する再生システムIDに関連付けて記憶する記憶部を有する管理装置と、
を備え、
前記通信装置は、前記再生情報を前記管理装置に送信し、
前記再生システムは、さらに、前記再生装置で再生した冷媒の油・水分・酸分のうちの少なくとも1つの量が適正であるか否かを検査する検査装置を有しており、
前記再生情報は、前記検査装置による検査結果を含む、
再生情報管理システム。
【請求項5】
回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生させる再生装置を少なくとも有する再生システム、から得られる再生情報をネットワーク経由で送信する通信装置と、
前記再生情報を、前記再生システムを識別する再生システムIDに関連付けて記憶する記憶部を有する管理装置と、
を備え、
前記通信装置は、前記再生情報を前記管理装置に送信し、
前記再生システムは、さらに、前記再生装置で再生した冷媒の重量を測定する重量測定装置を有しており、
前記再生情報は、再生した冷媒の重量に関する情報を含む、
再生情報管理システム。
【請求項6】
回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生させる再生装置を少なくとも有する再生システム、から得られる再生情報をネットワーク経由で送信する通信装置と、
前記再生情報を、前記再生システムを識別する再生システムIDに関連付けて記憶する記憶部を有する管理装置と、
を備え、
前記通信装置は、前記再生情報を前記管理装置に送信し、
前記再生システムは、さらに、前記再生装置で再生した冷媒の組成を分析する組成分析装置を有しており、
前記再生情報は、再生した冷媒の組成に関する情報を含む、
再生情報管理システム。
【請求項7】
前記通信装置は、前記再生装置が冷媒を再生する再生運転の開始時から完了時までの間に、及び/又は前記再生運転の完了時から所定時間経過後に前記再生情報を送信する、
請求項1
から6のいずれか1項に記載の再生情報管理システム。
【請求項8】
前記管理装置は、
前記圧縮機の使用時間に関する情報、並びに、前記圧縮機の印加電圧に関する情報及び/又は前記圧縮機の印加電流に関する情報に基づいて前記
圧縮機の劣化状態を診断する、又は、
前記静電式分離装置の使用時間に関する情報、並びに、前記静電式分離装置の印加電圧に関する情報及び/又は前記静電式分離装置の印加電流に関する情報に基づいて前記静電式分離装置の劣化状態を診断する、診断
部をさらに備える、
請求項
2に記載の再生情報管理システム。
【請求項9】
前記再生情報は、前記フィルタドライヤの使用時間を含み、
前記管理装置は、前記フィルタドライヤの使用時間に基づいてフィルタの劣化度合いを診断する、診断部をさらに備える、
請求項3に記載の再生情報管理システム。
【請求項10】
前記再生システムが、前記診断部及び前記記憶部を備えている、
請求項
8又は9に記載の再生情報管理システム。
【請求項11】
前記通信装置は、前記再生装置とは別個に設けられた、任意の情報入力機器から構成される、
請求項1から10のいずれか1項に記載の再生情報管理システム。
【請求項12】
前記通信装置は前記再生装置に組み込まれており、前記再生装置が前記管理装置に前記再生情報を送信する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の再生情報管理システム。
【請求項13】
前記通信装置は、
再生される冷媒を格納する再生シリンダを識別する再生シリンダID、冷媒を再生する再生作業者の氏名、及び前記再生作業者を識別する再生作業者IDの少なくとも一つを前記再生システムIDに関連付けて入力情報として受け付け、
前記入力情報を前記管理装置に送信する、
請求項1から12のいずれか1項に記載の再生情報管理システム。
【請求項14】
前記管理装置は、前記入力情報に関連付けて、前記再生システムにより冷媒が再生されたことを証明する再生証明書を出力する出力部、
をさらに備える、
請求項13に記載の再生情報管理システム。
【請求項15】
前記記憶部は、複数の
前記再生システムから送信される
前記再生情報を記憶する、
請求項1から14のいずれか1項に記載の再生情報管理システム。
【請求項16】
前記再生システムは、前記再生情報が表示された画像データを出力するものであり、
前記通信装置は、前記画像データの入力を受け付けるものであり、
前記管理装置は、前記画像データから前記再生情報を取得するものである、
請求項1から15のいずれか1項に記載の再生情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
再生情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済みのフロンを回収し、冷凍機油や水分等の不純物を除去して再利用することが行なわれている(例えば、特許文献1(特許5048554号)参照)。また、近年では、フロンガスの利用に関する規制が強まるにつれて、フロンガスを再利用することへの要求が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フロンガスの再利用は利用者の判断で行われる。そのため、フロンガスを冷媒として利用するエアコン等の製品が市場に投入された後に、フロンガスがどの程度再利用されているかを把握できなくなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の再生情報管理システムは、通信装置及び管理装置を備える。通信装置は、再生システムから得られる再生情報をネットワーク経由で送信する。ここで、再生システムは、回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生させる再生装置を有する。また、管理装置は、再生情報を、再生システムを識別する再生システムIDに関連付けて記憶する記憶部を有する。このような構成により、管理装置において、回収された冷媒がどの程度再生されているのかを的確に把握できる。
【0005】
第2観点の再生情報管理システムは、第1観点の再生情報管理システムであって、通信装置が、再生される冷媒の種類に関する情報をさらに送信する。このような構成により、管理装置において、再生される冷媒の種類を管理できる。
【0006】
第3観点の再生情報管理システムは、第1観点又は第2観点の再生情報管理システムであって、通信装置が、再生装置が冷媒を再生する再生運転の開始時から完了時までの間に、及び/又は再生運転の完了時から所定時間経過後に再生情報を送信する。このような構成により、管理装置において、再生装置が稼働したことを認識できる。
【0007】
第4観点の再生情報管理システムは、第1観点から第3観点のいずれかの再生情報管理システムであって、再生情報が、圧縮機の印加電圧若しくは印加電流に関する情報、又は、静電式分離装置への印加電圧若しくは印加電流に関する情報の少なくとも一つを含んでいる。ただし、ここでは、再生装置が、圧縮機及び/又は回収された冷媒から油を除去する静電式分離装置を有している。このような構成により、管理装置において、圧縮機及び/又は静電式分離装置が稼働しているか否かを認識できる。
【0008】
第5観点の再生情報管理システムは、第1観点から第4観点のいずれかの再生情報管理システムであって、再生情報が、フィルタドライヤを交換する必要があるか否か、及び/又はフィルタドライヤが交換されたか否かを示すフィルタ交換情報を含んでいる。ただし、ここでは、再生装置が、回収された冷媒から水分を除去するフィルタドライヤを有している。このような構成により、管理装置において、フィルタドライヤの交換の必要性及び再生される冷媒の品質を管理できる。
【0009】
第6観点の再生情報管理システムは、第1観点から第5観点のいずれかの再生情報管理システムであって、再生情報が検査装置による検査結果を含んでいる。ただし、ここでは、再生システムが、再生装置で再生した冷媒の油・水分・酸分のうちの少なくとも1つの量が適正であるか否かを検査する検査装置をさらに有している。このような構成により、管理装置において、再生した冷媒の品質を管理できる。
【0010】
第7観点の再生情報管理システムは、第1観点から第6観点のいずれかの再生情報管理システムであって、再生情報が再生した冷媒の重量に関する情報を含む。ただし、ここでは、再生システムが、再生装置で再生した冷媒の重量を測定する重量測定装置をさらに有している。このような構成により、管理装置において、再生した冷媒の量を管理できる。
【0011】
第8観点の再生情報管理システムは、第1観点から第7観点のいずれかの再生情報管理システムであって、再生情報が、再生した冷媒の組成に関する情報を含んでいる。ただし、ここでは、再生システムが、再生装置で再生した冷媒の組成を分析する組成分析装置をさらに有している。このような構成により、管理装置において、再生した冷媒の組成を管理できる。
【0012】
第9観点の再生情報管理システムは、第1観点から第8観点のいずれかの再生情報管理システムであって、管理装置が、再生情報に基づいて再生装置の劣化状態を診断する診断部をさらに備える。このような構成により、管理装置において、再生装置の劣化状態を判定できる。
【0013】
第10観点の再生情報管理システムは、第1観点から第9観点のいずれかの再生情報管理システムであって、通信装置が、再生装置とは別個に設けられた、任意の情報入力機器から構成される。このような構成により、再生装置に通信機能を組み込む必要がなく、システムを簡易に実現できる。
【0014】
第11観点の再生情報管理システムは、第1観点から第9観点のいずれかの再生情報管理システムであって、通信装置は再生装置に組み込まれており、再生装置が管理装置に再生情報を送信する。これにより、システム利用者の利便性を高めることができる。
【0015】
第12観点の再生情報管理システムは、第1観点から第11観点のいずれかの再生情報管理システムであって、通信装置が、再生される冷媒を格納する再生シリンダを識別する再生シリンダID、冷媒を再生する再生作業者の氏名、又は再生作業者を識別する再生作業者IDの少なくとも一つを前記再生システムDに関連付けて入力情報として受け付ける。そして、通信装置は、入力情報を管理装置に送信する。このような構成により、再生作業に関する入力情報を再生情報に関連付けて管理できる。
【0016】
第13観点の再生情報管理システムは、第1観点から第12観点のいずれかの再生情報管理システムであって、管理装置は、入力情報に関連付けて、再生システムにより冷媒が再生されたことを証明する再生証明書を出力する出力部を更に備える。このような構成により、再生作業に関する再生証明書を発行できる。
【0017】
第14観点の再生情報管理システムは、第1観点から第13観点のいずれかの再生情報管理システムであって、記憶部が、複数の再生システムから送信される再生情報を記憶する。このような構成により、管理装置が、複数の再生システムの情報を管理できる。
【0018】
第15観点の再生情報管理システムは、第1観点から第14観点のいずれかの再生情報管理システムであって、再生システムが、再生情報が表示された画像データを出力する。また、通信装置が画像データの入力を受け付ける。また、管理装置が、画像データから再生情報を取得する。このような構成により、システム利用者の利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】冷媒の回収及び再生を説明するための模式図である。
【
図2】再生システム10の構成を説明するための模式図である。
【
図3】再生情報管理システム1の構成を説明するための模式図である。
【
図4】記憶部32に記憶される情報を説明するための模式図である。
【
図5】記憶部32に記憶される情報を説明するための模式図である。
【
図6】再生システム10による「再生処理」を説明するためのフローチャートである。
【
図7】再生情報管理システム1による「再生証明書の発行」を説明するためのフローチャートである。
【
図8】再生情報管理システム1による「再生装置の診断」を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1)冷媒の回収及び再生
図1は冷媒の回収及び再生の概念を説明するための模式図である。
【0021】
一般的に、フロンガスを冷媒として利用する冷媒利用装置3が市場に投入されると、最終的にその冷媒利用装置3が保有する冷媒は回収シリンダ51に回収される。そして、回収シリンダ51に回収された冷媒は、再生システム10により再生されたり、化学プラント等で破壊されたりする。
【0022】
詳しくは、再生システム10による「再生(recycle)」とは、成分調整せずに冷媒を再利用可能な状態にするこという。冷媒の成分調整を行なう場合も再生(reclaim, reclamation)ということがあるが、本開示における再生(recycle)とは区別されるものである。また、「再生された冷媒」は、回収された冷媒のうち、油などの不純物が除去されたものを意味する。一方、回収された冷媒のうち成分調整が必要なものは、化学プラント等に移送されて、精留分離されたり破壊されたりする。なお、再生された冷媒の組成検査が必要か否かは冷媒の種類により異なる。例えば、単一組成及び擬共沸冷媒であれば組成検査は必ずしも必要とするものではない。
【0023】
(2)再生システム及び再生情報管理システムの構成
(2-1)再生システムの構成
再生システム10は、回収された冷媒から少なくとも油を除去して冷媒を再生するものである。なお、「回収された冷媒」は、回収と同時に再生される冷媒であってもよい。すなわち、回収された冷媒は、冷媒利用装置3の冷媒回路から回収されつつ、そのまま再生システム10に導入されるものでもよい。
【0024】
このような再生システム10は、
図2に示すように、再生装置11、検査装置12、組成分析装置13、及び重量測定装置14により構成される。なお、再生システム10から得られる再生情報は後述する再生情報管理システム1に適時送信される。
【0025】
再生装置11は、圧縮機11a、静電式分離装置11b、フィルタドライヤ11cを有する。再生装置11は、圧縮機11a及び/又は静電式分離装置11bを含む冷媒回路を用いて、冷媒から主に油を除去するものである。また、再生装置11は、フィルタドライヤ11cを用いて、冷媒から主に水分を除去するものである。
【0026】
検査装置12は、冷媒の油・水分・酸分の少なくとも一つの量が適正であるか否かを検査するものである。例えば、検査装置12は、冷媒を接触することで色合いが変化する検査用紙を有しており、この検査用紙を用いて検査が行われる。
【0027】
組成分析装置13は、冷媒の組成を分析するものである。また、組成分析装置13は分析結果をレシートなどに印字して出力する機能を有している。
【0028】
重量測定装置14は、冷媒の重量を測定するものである。
【0029】
(2-2)再生情報管理システムの構成
再生情報管理システム1は、再生システム10から得られる情報を管理するものであり、
図3に示すように、通信装置20及び管理装置30を備える。
【0030】
通信装置20は、冷媒の再生を行なう際に再生作業者5により利用され、後述する再生情報及びその他の入力情報をネットワーク経由で管理装置30に送信する。ここでは、通信装置20は、再生システム10とは別個に設けられた、スマートデバイス又はパソコンなどの任意の情報入力機器に、再生情報送信プログラムが組み込まれることで実現される。なお、通信装置20は、再生装置11が冷媒を再生する再生運転の開始時から完了時までの間に、及び/又は再生運転の完了時から所定時間経過後に再生情報を送信する。
【0031】
管理装置30は、通信装置20から送信される再生情報を管理するものであり、通信部31、記憶部32、処理部33、及び出力部34を有する。
【0032】
通信部31は、ネットワークカード等により実現され、ネットワーク上の外部装置と通信する機能を有している。
【0033】
記憶部32は、ROM,RAM等の任意の記憶装置により構成され、通信装置20から受信した再生情報を記憶する。また、記憶部32は、複数の再生システムから送信される再生情報を記憶する。具体的に、記憶部32は、
図4に示すように、再生システム10を識別する再生システムID及び再生作業が行われた作業日時に関連付けて再生情報を記憶する。
【0034】
「再生情報」としては、圧縮機11aの使用時間、圧縮機11aの印加電圧、圧縮機11aの印加電流、静電式分離装置11bの使用時間、静電式分離装置11bへの印加電圧、静電式分離装置11bへの印加電流、フィルタドライヤ11cを交換する必要があるか否か、及び/又はフィルタドライヤ11cが交換されたか否かを示すフィルタ交換情報、フィルタドライヤ11cの使用時間、検査装置12の検査結果、組成分析装置13の分析結果、及び、重量測定装置14の測定結果等が挙げられる。他にも、再生情報として、再生装置11内の冷媒系統温度等が挙げられる。ただし、再生される冷媒を管理するためには、再生装置11の動作確認ができる情報が最低限記憶されていればよく、先に列挙した再生情報のうちの少なくともいずれか1つであってもよい。例えば、圧縮機11aの印加電圧又は印加電流の情報だけであっても再生作業が適切に行われたと判断することが可能である。
【0035】
また、記憶部32は、再生作業者5により通信装置20に入力された入力情報を取得し、取得した入力情報を再生システムID及び作業日時に関連付けて記憶する。再生作業者5による「入力情報」としては、
図5に示すように、再生される冷媒を格納する再生シリンダ52を識別する再生シリンダID、冷媒を再生する再生作業者5の氏名、又は再生作業者5を識別する再生作業者ID等が挙げられる。ただし、再生される冷媒が特定されるものであれば、これらの情報は必ずしも必要なわけではない。例えば、再生シリンダ52が再生シリンダIDにより特定されるのであれば、再生作業者5の特定が不要な場合もある。また、再生作業者5の氏名及び再生作業者IDは、再生作業者5により常時入力することが要求されるものではない。再生作業者IDと再生作業者5の氏名とが関連付けられた後は再生作業者IDの入力により再生作業者5の氏名の入力は不要となる。
【0036】
処理部33は、管理装置30における情報処理を実行する。ここでは、処理部33(診断部)は、再生情報に基づいて再生装置11の劣化状態を診断する処理を行なう。また、処理部33は、再生作業者5により送信された入力情報に関連付けて、再生システム10により冷媒が再生されたことを証明する再生証明書のデータを生成する。なお、処理部33の各機能は、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)等に記憶装置(ROM,RAM等)に記憶されたプログラムが読み込まれることにより実現される。ただし、これに限らず、処理部33は、LSI(Large Scale Integration),ASIC(Application Specific Integrated Circuit),FPGA(Field-Programmable Gate Array)などを用いてハードウェアとして実現されるものでもよい。
【0037】
出力部34は、任意の出力装置により構成され、管理装置30における各種情報を出力するものである。ここでは、処理部33により生成された再生証明書のデータに基づいて、出力部34により再生証明書が出力される。なお、再生証明書のデータは、通信部31等を介して通信装置20に送信されてもよい。この場合、再生証明書は、通信装置20に接続された任意の出力装置から出力される。例えば、PDF形式の電子データで生成された再生証明書が、通信装置20に接続されたプリンタ等から出力される。なお、再生証明書は、紙媒体に出力されて取り扱われるものでもよいし、電子データの形式で取り扱われるものでもよい。
【0038】
(3)再生システム及び再生情報管理システムにおける動作
(3-1)冷媒の再生処理
図6は再生システム10による「再生処理」を説明するためのフローチャートである。
【0039】
冷媒を利用する冷媒利用装置3から回収された冷媒は、再生装置11を用いて再生される。具体的には、使用済みの冷媒が格納された回収シリンダ51から、使用済みの冷媒が再生作業者5に移送される。再生作業者5は、回収シリンダ51内に格納された冷媒を、再生装置11を用いて再生する。なお、これに限らず、冷媒利用装置3の冷媒回路から冷媒を回収しつつ、そのまま再生装置11に導入して冷媒を再生してもよい。
【0040】
再生装置11の再生運転を行なう前提として、再生作業者5が、回収シリンダ51及び再生シリンダ52を再生装置11に接続する。その後、回収シリンダ51に格納された使用済み冷媒が再生装置11に移動する。再生装置11では、主に圧縮機11a及び静電式分離装置11bの機能により、回収された冷媒から油が除去される(S1)。また、主にフィルタドライヤ11cにより、水分・酸分が除去される(S2,S3)。そして、油・水分・酸分が除去された冷媒が再生シリンダ52に移されて格納される。
【0041】
次に、再生作業者5は、再生シリンダ52内の冷媒に対して、検査装置12、組成分析装置13、及び重量測定装置14を用いて検査等を行なう(S4)。
【0042】
そして、検査の結果、再生シリンダ52に格納された冷媒が適正である場合、再生シリンダ52に格納された冷媒が再使用可能なものとして認められる(S4-Yes,S5)。
【0043】
一方、検査の結果、再生シリンダ52に格納された冷媒が適正でない場合、再生シリンダ52に格納された冷媒は再使用できないものとして判断される(S4-No,S6)。再使用できないと判断された場合は、再生シリンダ52が化学プラント等に移送される。そして、化学プラント等において、冷媒の成分調整がされるか、冷媒が破壊されることになる。
【0044】
上述の再生処理が行なわれる際、再生作業者5により、通信装置20を介して管理装置30に再生情報が随時送信される。また、再生作業者5により、通信装置20の入力インタフェースに、再生される冷媒を格納する再生シリンダ52を識別する再生シリンダID、冷媒を再生する再生作業者5の氏名、又は再生作業者5を識別する再生作業者ID等が入力される。通信装置20に入力された入力情報は管理装置30に随時送信される。
【0045】
なお、ここでは、通信装置20により、再生装置11が冷媒を再生する再生運転の開始時から完了時までの間に、及び/又は再生運転の完了時から所定時間経過後に再生情報が管理装置30に送信される。
【0046】
(3-2)再生証明書の発行
図7は再生情報管理システム1による「再生証明書の発行」を説明するためのフローチャートである。
【0047】
再生情報管理システム1は、要求に応じて再生証明書を発行する。ここでいう「再生証明書」は、再生された冷媒が使用可能であることを保証するものであり、再生シリンダ52及び/又は再生作業者5と、再生システム10とを特定できる情報が反映された任意の形式で出力される情報である。
【0048】
具体的には、再生作業者5により通信装置20を介して再生証明書の発行要求が管理装置30に送信される(T1)。この際、再生シリンダID、再生作業者5の氏名、又は再生作業者IDの少なくとも一つが管理装置30に送信される。
【0049】
管理装置30は、このような再生証明書の発行要求を受信すると、再生システムID及び再生作業者ID等に関連する履歴情報を記憶部32から抽出する(T2)。
【0050】
続いて、管理装置30は、再生システムID及び再生作業者ID等に基づいて、履歴情報が再生証明書を発行するための基準を満たすか否かを判定する(T3)。再生証明書を発行するための基準は、冷媒の品質基準等に基づいて定められる。例えば再生後の冷媒に含まれる水分が所定値以下、蒸発残分が所定値以下、酸分が所定値以下であるときに冷媒の品質が一定基準を満たすと判定される。なお、これら品質基準を定めた法規として米国のAHR1700などがある。また、前述の品質基準のほか、再生証明書を発行する事業者等で独自の基準値を定めることも可能である。さらに、再生装置11等の劣化、汚れの状況を判断し、劣化や汚れがない(程度が小さい)ことを再生証明書を発行するための基準とすることもできる。
【0051】
そして、管理装置30は基準を満たすと判定した場合、再生証明書を作成して通信装置20に出力する(T3-Yes,T4)。一方、管理装置30は基準を満たさないと判定した場合、再生証明書を発行できない旨の通知を通信装置20に出力する(T3-No,T5)。
【0052】
(3-3)再生装置の診断
図8は再生情報管理システム1による「再生装置の診断」を説明するためのフローチャートである。
【0053】
再生情報管理システム1では、管理装置30が、適時、再生装置11の診断を行なう。例えば、再生作業者5等により通信装置20を介して、管理装置30の診断モードが設定されると、管理装置30が再生装置11の診断を行なう。
【0054】
管理装置30が診断モードのときに(U1-Yes)、通信装置20を介して再生情報を取得した場合(U2-Yes)、管理装置30は再生情報に基づいて再生装置11の診断を行なう(U3)。
【0055】
ここでは、管理装置30は、圧縮機11aの使用時間、並びに、印加電圧及び/又は印加電流に基づいて圧縮機11aの劣化度合いを診断する。また、管理装置30は、静電式分離装置11bの使用時間、並びに、印加電圧及び/又は印加電流に基づいて静電式分離装置11bの劣化度合いを診断する。また、管理装置30は、フィルタドライヤ11cの使用時間に基づいて、フィルタの劣化度合いを診断する。その他、管理装置30は、再生装置11内の冷媒系統温度等に基づいて、異常の有無を診断する。
【0056】
そして、管理装置30は、基準値と比較して再生装置11が劣化したと判断した場合、通信装置20に劣化に関する診断結果を出力する(U4-Yes,U5)。一方、管理装置30は、再生装置11に劣化が生じていないと判定した場合、その旨の通知を通信装置20に出力する(U4-No,U6)。
【0057】
なお、ステップU4において劣化が生じたと判定した場合にのみ通知を行ない、ステップU6の処理を省略するようにしてもよい。
【0058】
(4)特徴
(4-1)
以上説明したように、本実施形態に係る再生情報管理システム1では、管理装置30が、通信装置20を介して再生システム10から得られた再生情報を記憶するので、管理装置30において、回収された冷媒がどの程度再生しているのかを的確に把握できる。また、管理装置30の記憶部32は、複数の再生システムの再生情報を記憶しているので、複数の再生システムにおいて再生された冷媒を統合して管理できる。
【0059】
例えば、このような再生情報管理システム1を導入することで、管理装置30の管理者等は、再生作業者5に対して再生処理に対するインセンティブを付与するなどのサービスを円滑に行なうことが可能となる。
【0060】
(4-2)
また、再生情報管理システム1では、通信装置20が、再生される冷媒を格納する再生シリンダ52を識別する再生シリンダID、冷媒を再生する再生作業者5の氏名又は再生作業者5を識別する再生作業者IDの少なくとも一つを入力情報として受け付ける。そして、通信装置20は、この入力情報を管理装置30に送信する。このような構成により、管理装置30において、再生作業に関する入力情報を再生情報に関連付けて管理できる。なお、入力情報は、再生システムIDに関連付けられるものである。
【0061】
また、管理装置30は、入力情報に関連付けて、再生システム10により冷媒が再生されたことを証明する再生証明書を出力する出力部34を有しており、再生装置11の使用者は再生作業に関する再生証明書を取得できる。なお、再生証明書の発行履歴等は記憶部32に記録される。また、発行履歴から台帳が作成される。
【0062】
このような再生情報管理システム1を用いて再生証明書を発行することにより、再生した冷媒の品質に対する信用力を高めることができる。結果として、再生した冷媒の品質を維持しつつ、需要者に対して冷媒の再利用を促すことができる。例えば、法律規制によりフロン冷媒の排出量が制限されている場合でも、管理者から再生証明書を発行してもらうことで、冷媒利用事業者は自身のフロン冷媒の排出量が少ないことを証明できる。
【0063】
(4-3)
また、再生情報管理システム1では、管理装置30が、再生情報に基づいて再生装置11の劣化状態を診断する処理部33(診断部)を有しているので、管理装置30において、再生装置11の劣化状態を判定できる。このような構成により、再生作業者5又は管理装置30の管理者に診断結果を通知して、注意喚起を促すことができる。
【0064】
(4-4)
また、再生情報管理システム1では、通信装置20が、再生される冷媒の種類に関する情報を送信する。これにより、管理装置30において、再生される冷媒の種類を管理できる。例えば、冷媒が再生可能な種類であるか否かを判断することで、再生する冷媒と破壊等を要する冷媒との区別を管理できる。
【0065】
また、通信装置20は、再生装置11が冷媒を再生する再生運転の開始時から完了時までの間に、及び/又は再生運転の完了時から所定時間経過後に再生情報を送信する。これにより、管理装置において、再生装置11が稼働したこと認識できる。
【0066】
なお、通信装置20は、再生装置11とは別個に設けられた、任意の情報入力機器から構成される。このような構成により、再生装置11に通信機能を組み込む必要がなく、システムを簡易に実現できる。
【0067】
(4-5)
また、上述の再生装置11は、圧縮機11a及び/又は静電式分離装置11bを有している。そして、再生情報には、圧縮機11aの印加電圧若しくは印加電流に関する情報、又は、静電式分離装置11bへの印加電圧若しくは印加電流に関する情報の少なくとも一つが含まれる。それゆえ、管理装置30において、圧縮機11a及び/又は静電式分離装置11bが稼働しているか否かを認識することができる。結果として、回収された冷媒がどの程度再生しているのかを把握できる。
【0068】
さらに、再生装置11は、フィルタドライヤ11cを有している。そして、再生情報には、フィルタドライヤ11cを交換する必要があるか否か、及び/又はフィルタドライヤ11cが交換されたか否かを示すフィルタ交換情報が含まれる。それゆえ、管理装置30において、フィルタドライヤ11cの交換の必要性を認識することができる。結果として、再生される冷媒の品質を管理できる。なお、管理装置30は、再生情報を前回取得したときからの経過時間に基づいてフィルタ交換の必要性を判定することができる。
【0069】
(4-6)
また、上述の再生システム10は、再生装置11で再生した冷媒の油・水分・酸分のうちの少なくとも1つの量が適正であるか否かを検査する検査装置12を有している。そして、再生情報には、検査装置12による検査結果が含まれるので、管理装置30は再生した冷媒の品質を管理することができる。
【0070】
さらに、再生システム10は、再生装置11で再生した冷媒の組成を分析する組成分析装置13を有している。そして、再生情報には、再生した冷媒の組成に関する情報が含まれるので、管理装置30は再生した冷媒の組成を管理することができる。例えば、再生した冷媒の組成が大幅に変形している場合、その冷媒は品質基準を満たさないと判断し、再利用しないように区分けして管理することができる。
【0071】
さらに、再生システム10は、再生装置11で再生した冷媒の重量を測定する重量測定装置14を有している。そして、再生情報には、再生した冷媒の重量に関する情報が含まれるので、管理装置30は再生した冷媒の量を管理することができる。
【0072】
(5)変形例
(5-1)変形例A
上述した再生情報管理システム1において、再生作業者5が画像データにより再生情報及び/又は入力情報を入力する構成を採用してもよい。具体的には、再生システム10が、再生情報等が表示された画像データを出力する。ここで、通信装置20が、内蔵された撮像装置により画像データの入力を受け付ける。そして、管理装置30が、画像データを解析して再生情報を取得する。このような構成により、システム利用者は再生情報等を画像データで取り込んで入力することができるので、システム利用者の利便性を高めることができる。例えば、検査装置12で用いられる検査用紙の色の変化を示す画像や、組成分析装置13から出力される分析結果のレシートの画像等をそのまま管理装置30に送信し、管理装置30において画像データから再生情報等を読み取る構成を実現できる。このような構成であれば、通信装置20におけるデータ入力作業を軽減することができ、システム利用者の利便性を高めることができる。
【0073】
(5-2)変形例B
上述した再生情報管理システム1では、通信装置20と再生システム10とを別個の構成としていたが、本実施形態に係る再生情報管理システムはこのような構成に限定されるものではない。
【0074】
例えば、通信装置20が再生装置11に組み込まれており、再生装置11が管理装置30に再生情報を送信する構成であってもよい。このような構成により、システム利用者が通信装置20にデータ入力をすることなく、再生装置11から管理装置30に再生情報を直接送信する構成を実現できる。これにより、システム利用者の利便性を高めることができる。
【0075】
(5-3)変形例C
上述した再生情報管理システム1では、再生システム10が、検査装置12、組成分析装置13、及び重量測定装置14を有する構成としたが、これらの装置の一部又は全部は必ずしも必要なものではなく適宜省略することが可能である。また、これらの装置を省略した場合は、それに対応して再生情報の内容も適宜省略される。
【0076】
(5-4)変形例D
上記説明では、管理装置30の処理部33(診断部)が、再生装置11の劣化状態を診断するものとしたが、このような診断機能を、再生システム10又は再生装置11が備えていてもよい。この場合、再生システム10又は再生装置11は診断に必要な情報を記憶する記憶部を有することになる。
【0077】
<他の実施形態>
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0078】
すなわち、本開示は、上記各実施形態そのままに限定されるものではない。本開示は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。また、本開示は、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の開示を形成できるものである。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素は削除してもよいものである。さらに、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよいものである。
【符号の説明】
【0079】
1 再生情報管理システム
3 冷媒利用装置
5 再生作業者
10 再生システム
11 再生装置
11a 圧縮機
11b 静電式分離装置
11c フィルタドライヤ
12 検査装置
13 組成分析装置
14 重量測定装置
20 通信装置
31 通信部
32 記憶部
33 処理部(診断部)
34 出力部
51 回収シリンダ
52 再生シリンダ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】