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特許7159327熱帯性果実植物における炭疽病の防除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】熱帯性果実植物における炭疽病の防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/44 20060101AFI20221017BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20221017BHJP
   A01N 43/88 20060101ALI20221017BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20221017BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A01N47/44
A01N25/04 102
A01N43/88
A01N59/20 Z
A01P3/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020540782
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019014525
(87)【国際公開番号】W WO2019147561
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】15/877,522
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518053987
【氏名又は名称】アリスタ ライフサイエンス インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】15401 Weston Parkway,Suite 150, Cary,North Carolina, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマエカース ラーラ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ムリーリョ フローレス
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104585185(CN,A)
【文献】高江州和子,沖縄県におけるマンゴー炭疽病の発生状況と防除法,アリスタ ライフサイエンス農薬ガイドNo.96/A,[online],2000年07月01日,[2022年5月12日検索], インターネット,<URL:https://arystalifescience.jp/guide/t_96a.php>
【文献】International Journal of Fruit Science,2013年,Vol.13,p.205-216
【文献】Plant Disease,2000年,Vol.84, No.6,p.600-611
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00-65/48
CAplus/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレトトリカム(Colletotrichum)属菌によって引き起こされる炭疽病にかかりやすいマンゴー、パパイア、またはアボカド植物、あるいはこれらの栽培品種を処理する方法であって、
a)前記マンゴー、パパイア、またはアボカド植物またはその部分もしくは生育場所を、農薬組成物と接触させるステップであって、
前記農薬組成物は、ドジンの施用量が150~2,000g/haとなる割合で、開花時または開花後早期に施用され、
前記農薬組成物は、下記成分:
ドジンと、
任意で、溶媒、界面活性剤、安定剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、増粘剤、不活性充填剤、およびこれらの1つまたは複数の組合せからなる群から選択される1つまたは複数の農学的に許容される助剤と、
任意で、ニームオイル、亜リン酸のモノおよびジカリウム塩、塩基性硫酸銅、硫酸銅五水和物、水酸化銅、マンコゼブ、クロロタロニル、ハーピンタンパク質、脂肪酸およびロジン酸の銅塩、アゾキシストロビン、バチルス・プミリス菌株QST、バチルス・スブチリスQST713、酸化第一銅、オオイタドリ、炭酸のモノカリウム塩、ホセチル-Al、メタラキシル、ストロビルリン、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の追加の殺真菌剤と
からなるステップと、
b)前記接触させるステップを、一定間隔で、1回または複数回、繰り返し、第1の一定間隔は7~15日であるステップと
を含み、
2回目の施用の7日後または14日後には、前記植物あるいは栽培品種の花、葉、または果実において、炭疽病による病害の低減が観察され、
前記コレトトリカム(Colletotrichum)属菌は、真菌コレトトリカム・グロエスポリオデス(Colletotrichum gloesporiodes)またはコレトトリカム・アクタツム(Colletotrichum acutatum)である、方法。
【請求項2】
前記ドジンは、フロアブル剤の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記農薬組成物は、200~1,600g/haの割合で施用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の追加の殺真菌剤は、ストロビルリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ストロビルリンは、フルオキサストロビンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記農薬組成物は、少なくとも2回施用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
マンゴー、パパイア、またはアボカドの果実の最後の処理は、前記マンゴー、パパイア、またはアボカド植物、もしくはこれらの栽培品種にドジンを施用することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1回目の施用は炭疽病に好都合な条件で実施され、前記条件は熱帯性の条件である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
開花前に、前記マンゴー、パパイア、またはアボカド植物、その部分、もしくは生育場所にオキシ塩化銅噴霧を施用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、熱帯性果実、熱帯性果実植物、および栽培品種において、コレトトリカム(Colletotrichum)属菌によって引き起こされる炭疽病の防除に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培品種が炭疽病と呼ぶものを集合的に引き起こす、数多くの真菌病原体が存在する。最も一般的な病原体の一部として、コレトトリカム属菌、フォーマ(Phoma)属菌、およびフィロスチクタ(Phyllosticta)属菌が挙げられる。炭疽病を引き起こすこの他の病原体としては、コニオスリウム(Coniothyrium)属菌、クリプトクリネ(Cryptocline)属菌、ディプロディア(Diplodia)属菌、グロエオスポリウム(Gloeosporium)属菌、グロメレラ(Glomerella)属菌、マクロフォーマ(Macrophoma)属菌、およびフィロスティクティナ(Phyllostictina)属菌が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0003】
数多くの多年生植物、熱帯性観葉植物、および観賞木が、炭疽病によって被害を受けうる。これらの病害に影響を受ける最も一般的な植物の一部としては、少し例を挙げただけでも、アンスリウム、アザレア、サボテンおよび多肉植物、ツバキ、シクラメン、ニシシギ、イチジク、ギボウシ、アジサイ、ルピナス、マンデビラ、ナンテン、ヤシ、スパティフィルム、およびヒメツルニチニチソウが挙げられる。葉斑の存在は作物および植物の外見および市販性を大幅に減じ、これらの病原体の幾つかによって発現されたさらに深刻な病徴は収穫損失をもたらすため、炭疽病は栽培品種にとって厄介でありうる。その結果、病害防除のための出費によって栽培コストが上昇することがあり、市場への出荷に多大な損失を生じることがある。
【0004】
真菌コレトトリカム・グロエスポリオデス(Colletotrichum gloesporiodes)は、無性時代の真菌である。コレトトリカム・グロエスポリオデスは、バナナ、アボカド、パパイア、コーヒー、パッションフルーツ、リンゴ、イチゴ、トウガラシなどを含む多くの熱帯性果実植物および栽培品種において、また収穫前および収穫後の両方において、数々の病害の原因となっている。収穫後の損害は、品質が低下するため、果実の輸出を限定する主な要因の1つである。
【0005】
マンゴーは、ウルシ科の植物に属する。この科の同族植物には、カシュー(カシューナットノキ(Anacardium occidentale))、ピスタチオ(Pistacia vera)、およびツタウルシ(トキシコデンドロン・ラディカンス(Toxicodendron radicans))が含まれる。数百種のマンゴー栽培品種が世界的に知られており、果実の大きさ、色、形状、香り、食感、および味はきわめて多様である。マンゴーからの炭疽病菌株は、この種菌の遺伝学的および病理学的に独特な個体群を含んでいる。この病原体のマンゴーの個体群は、マンゴーに対して常に優勢である。この個体群は、他の熱帯性果実作物ではみられず、この個体群からの個体はマンゴーに対してのみ病原性が高いという限りにおいては、限定的な宿主範囲を有する。よって、この病原体の個体群は、宿主特異的でありうる。
【0006】
炭疽病を引き起こしうる別の真菌種に、コレトトリカム・アクタツム(Colletotrichum acutatum)があり、これは、アボカド炭疽病、ならびに柑橘類、マンゴー、およびパパイア炭疽病を引き起こす。
【0007】
炭疽病の病徴は、きわめて多くの外観を呈し、感染を起こす真菌病原体および罹病する植物種によって様々である。観察される主要な病徴は、葉斑および葉枯れであるが、枝枯れ、苗腐敗(cutting rot)、および茎腐れとしても一般的に観察される。これらの病害は、診断が難しい場合もある。例えば、多くの場合、それらは葉斑または苗腐敗として、繁殖中に現れる。しかしながら、それらはまた、生産サイクルを通して伝播し、生産サイクルの後期に病徴および作物損害を生じることもある。場合によって、植物が繁殖した後2、3年経つまで病徴が生じないこともある。
【0008】
マンゴー植物では、炭疽病病徴は、葉、小枝、葉柄、花房(円錐花序)、および果実に生じる。葉では、病斑は、小さな角張った褐色から黒色の斑点として始まり、この斑点は、拡大して広範域の枯死を形成することがある。円錐花序での最初の病徴は、小さな黒色または濃褐色の斑点であり、これは、拡大し、合体し、果実がなる前に花を殺し、収量を大幅に低減させることがある。葉柄、小枝、および茎もまた感染しやすく、果実、葉、および花にみられる典型的な大型の黒色病斑を生じる。
【0009】
炭疽病に罹病した熟したマンゴーは、摘み取り前または後に、窪んだ、顕著な濃褐色から黒色の腐敗斑を発生させる。果実は、未熟なうちに木から落下することもある。果実の斑点もまた、合体し、果実の中深くへと広がって、果実を広範に腐敗させることがある。未熟果実の感染の多くは、熟すまで潜在的でほとんど目には見えない。よって、マンゴーは、収穫時に健全であるように見え、その後、熟すと、顕著な炭疽病の病徴を急速に発現する。果実における別のタイプの病徴としては、「涙じみ(tear stain)」病徴があり、これは、「ワニ皮(alligator skin)」効果を与える、表皮の表層割れと関連することもあれば関連しないこともある果実上の線状壊死領域であり、マンゴーの表皮に果肉にまで及ぶ広範で深い裂け目を発生させることもある。
【0010】
パパイア植物では、炭疽病は、パパイアの葉に感染することもあるが、果実の方がより深刻な影響を受ける。最初の病徴は小さな明色斑であり、それらは大きくなるに従って、窪みとなり、水浸状の外観を呈する。パパイアが熟し続けるに従って、また病害が進行するに従って、C.グロエスポリオデスのサーモンピンク色の心からの塊が、典型的には窪んだ病斑の中に同心輪紋模様を形成する。一般的な別の病徴は、輪郭のはっきりした赤褐色の不整形または円形のソト(sot)からなる「チョコレート斑点病斑」であり、果実が熟するに従いソトは急速に拡大し、大きな円形の窪んだ病斑を形成する。
【0011】
アボカド植物の場合、炭疽病は最も深刻な収穫後病害の1つであり、通常、降雨量が多い地域で発生する。一部のアボカド栽培品種では、この病害は、結実期を通して深刻な問題をもたらしうる。この病原体は、アボカドの葉および茎にも感染することがあり、地面上の死んだアボカド植物部分にコロニー形成することができる。アボカド感染の部位は、主に果実であるが、マンゴーに感染する炭疽病の形態とは異なり、C.グロエオスポリオイデス(C.gloeosporioides)はアボカドの花は攻撃しない。様々な大きさの病斑が、アボカド果実上のどこでも発生しうる。これらの病斑は、典型的には暗色であり、急速に大きさを拡大させ、外皮および果肉の両方に影響を与える。病徴は、収穫時には傷みがないと思われていた果実に急速に出現することもあり、場合によって、まだ木になっている間に未熟な果実に病徴が形成されることもあり、熟す前に病徴を発現している果実は、未熟なうちに落下することがある。
【0012】
炭疽病によってもたらされる最も甚大な被害の1つは、果樹園、輸送、倉庫、または市場における果実の被害である。この真菌は、圃場において発育期間中の果実に広がり、依然として潜在する一方で、果実は硬い硬度を有している。果実が熟し柔らかくなり始めると、直ちに、この真菌は果実の皮および果肉に広がり、果実を腐敗させる。輸送または保管中に、暗色の斑点が発生し、合体して果実の広範域に広がりうる。
【0013】
多湿な気象条件、湿潤な気象条件および温暖な気象条件は、圃場での炭疽病感染に好都合であり、温暖で湿潤の気温は、収穫後のマンゴー植物における炭疽病発生に好都合である。茎および果実における病斑は、多湿な条件下では、どぎついピンクがかったオレンジ色の胞子の塊を生成することがある。パパイア植物の場合、植物体および果実周辺での病原体の伝播ならびにパパイアにおける感染は、降雨によってもたらされた水分に大きく依存する。よって、炭疽病は、相対湿度および降雨量がより高く、気温が温暖で真菌発生を助長するこれらの地域で、最も高い発病率および発病度となる。
【0014】
炭疽病は、湿った生育条件下で、特に、降雨に曝された後、または樹上灌水が用いられる場合に、最も蔓延する。それらは、飛散する水によって植物から植物へと伝播する。炭疽病の発生は、多くの場合、感染した出発物質を突き止めることができる。創傷も発病度に寄与しうるが、感染に必要ではない。
【0015】
炭疽病の管理には、場所の選択、栽培品種の選択、圃場における栽培の実施(すなわち、衛生、栽植距離、間作など)、水分管理、殺真菌剤、収穫管理、および収穫後処理が含まれる。
【0016】
感染しやすい植物および栽培品種ならびに助長される環境での炭疽病の防除には、定期的な殺真菌剤噴霧を行うことが頻繁に必要であり、施用のタイミングおよび回数が、適切な病害防除にはきわめて重要なものとなる。殺真菌剤の施用の多くは、それらを予防的に施用するか、またはまさに感染が起こり始めたときに施用すると、最も効果的に作用する。
【0017】
マンゴー、パパイア、およびアボカド植物および栽培品種における炭疽病の防除に使用した様々な殺真菌剤を、表1に列挙する。
【0018】
【表1】
【0019】
ただし、熱帯性果実植物および栽培品種の様々な罹病しやすい個体群における炭疽病の防除に使用することができる、この他の殺真菌剤も検討することが望ましい。
【発明の概要】
【0020】
本発明の目的は、熱帯性果実植物および栽培品種における炭疽病を防除することができる殺真菌剤組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、マンゴー、パパイア、およびアボカドにおける炭疽病を防除することができる殺真菌剤組成物を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、グアニジンを使用する、熱帯性果実植物および栽培品種における炭疽病の改良された防除方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、グアニジンを使用する、感染しやすい熱帯性果実植物および栽培品種における炭疽病の改良された葉面での防除方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、熱帯性果実における炭疽病を防除するための、果実の収穫後処理の方法を提供することである。
【0025】
その目的のために、一実施形態において、本発明は、概して、熱帯性果実植物または栽培品種においてコレトトリカム属菌によって引き起こされる炭疽病を防除する方法に関し、該方法は、
処理を必要とする熱帯性果実植物または栽培品種を、有効量のグアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物と接触させるステップを含む。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、概して、炭疽病にかかりやすい熱帯性果実植物または栽培品種を処理するに関し、該方法は、
熱帯性果実植物または栽培品種を、有効量のグアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物と接触させるステップと、
該接触させるステップを、一定間隔で、1回または複数回、繰り返すステップと、を含む。
【0027】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面に関連する説明を以下に記す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の地区における、パパイアの花における発病結果を示す図である。
図2】第1の地区における、パパイアの果実における発病結果を示す図である。
図3】第2の地区における、パパイアの花における発病結果を示す図である。
図4】第2の地区における、パパイアの葉における発病結果を示す図である。
図5】第2の地区における、パパイアの果実における発病結果を示す図である。
図6】第1の地区における、マンゴーの花における発病結果を示す図である。
図7】第1の地区における、マンゴーの果実における発病結果を示す図である。
図8】第2の地区における、マンゴーの花における発病結果を示す図である。
図9】第2の地区における、マンゴーの葉における発病結果を示す図である。
図10】第2の地区における、マンゴーの果実における発病結果を示す図である。
図11】第1の地区における、アボカドの葉における発病結果を示す図である。
図12】第1の地区における、アボカドの果実における発病結果を示す図である。
図13】第2の地区における、アボカドの花における発病結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
特に明記しない限り、技術用語および科学用語を含む本明細書に記載のすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるような意味を有する。
【0030】
本明細書で使用される「a」、「an」、および「the」は、文脈で特に明確な指示がない限り、単数および複数両方の指示対象を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、例えばパラメーター、量、時間範囲などの測定可能な値を指し、そのような変動が本明細書に記載された本発明における実施に適切なものである限り、具体的に記載された値の、また具体的に記載された値からの+/-15%以下の変動、好ましくは+/-10%以下の変動、より好ましくは+/-5%以下の変動、さらにより好ましくは+/-1%以下の変動、なお一層好ましくは+/-0.1%以下の変動を含むことを意味する。さらに、「約」という修飾語が指す値は本明細書において具体的に開示されたその値自体であることも、また理解されるべきである。
【0032】
本明細書で使用する場合、「直前」または「直後」を含む「直ちに」という用語は、1日以内、より好ましくは数時間以内、より好ましくは1時間以内、なお一層好ましくは数分以内である時限を指す。
【0033】
本明細書で使用される「防除すること(to control)」または「防除すること(controlling)」という用語は、組成物が、コレトトリカム属菌に冒されている植物組織または生育中の植物に施用される場合、パパイア、マンゴー、およびアボカド植物および栽培品種を含む熱帯性果実植物ならびに栽培品種における炭疽病の成長、コロニー形成、または増殖を制限することができることを意味するのに使用される。幾つかの実施形態において、組成物はコレトトリカム属菌を殺すことができ、これによって、植物組織におけるそれらのコロニー形成および/または増殖を回避する。よって、組成物は、コレトトリカム属菌によって引き起こされる炭疽病の伝播を防除することができる、すなわち、制限するかまたは止めることができる。組成物はまた、ロートスでの炭疽病の治療を可能にする。
【0034】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、植物、植物部分、またはその生育場所における炭疽病を防除するために必要とされる有効成分の最少量を指す。ドデシルグアニジン酢酸塩、別名ドジンは、例えば、アーモンド黒星病および穿孔病、リンゴおよびナシ黒星病、バナナシガトカ病、サクランボ斑点病、オリーブピーコックスポット(olive peacock spot)、モモ縮葉病、ラッカセイ早期斑点病(early leaf spot)および黒渋病(late leaf spot)、ならびにペカン黒星病などの作物の様々な主要な菌類病の防除に推奨されている、グアニジン殺真菌剤である。
【0035】
その他のグアニジン殺真菌化合物には、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、およびグアザチンが含まれる。
【0036】
本発明の発明者らは、ドジンなどのグアニジン殺真菌剤が、本明細書で後述するようにマンゴー、パパイア、およびアボカド植物および栽培品種を含む熱帯性果実植物および栽培品種における炭疽病を防除するのに使用できることを断定した。
【0037】
一実施形態において、本発明は、概して、炭疽病によって引き起こされる被害から熱帯性果実植物および栽培品種を保護する方法に関し、該方法は、有効量のグアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物によって植物、植物部分、またはその生育場所を処理するステップを含む。
【0038】
グアニジンは、水和剤、フロアブル剤(suspension concentrate)として、および顆粒水和剤として、製剤することができる。一実施形態において、グアニジンはドジンであり、微黄色を帯びた、水(0.63g/L、25℃で)および有機溶媒への溶解度が低い細粉である。
【0039】
ドジンの塩および/または溶媒和物を含む様々な形態のドジンが、本明細書に記載の農薬組成物中で使用されうる。例えば、ドジンの一形態は、Syllit(登録商標)の商用名で入手可能であり、葉面殺真菌剤および殺菌剤として使用されている。一実施形態において、農薬組成物中で使用されるドジンは、1-ドテシルグアニジニウムアセタート(ドデシルグアニジンモノアセタート)などのドジンの酢酸塩の形態であり、分子式C1533を有する。ドジンHCl 35%などのその他の形態のドジンもまた、本発明の組成物中で使用可能である。加えて、本明細書に記載されているように、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、およびグアザチンを含むその他のグアニジン殺真菌剤もまた、パパイア、マンゴー、およびアボカドなどの熱帯性果実における炭疽病の防除に関する本明細書に記載の本発明の実施において使用してもよい。
【0040】
本発明の農薬組成物は、さらに1つまたは複数の農学的に許容される助剤を含有してもよい。農薬組成物中で使用される助剤およびそれらの量は、製剤もしくは組成物のタイプ、および/または製剤が施用される方式に、部分的に依存することとなる。好適な助剤としては、これらだけに限定されないが、溶媒、界面活性剤、安定剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、増粘剤、および不活性充填剤などの製剤補助剤または成分が挙げられ、これらの助剤は、農薬組成物中で個別に、または1つもしくは複数の助剤を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
例えば、組成物は1つまたは複数の溶媒を含んでもよく、溶媒は有機的であっても無機的であってもよい。好適な溶媒は、使用される農薬的に有効な物質を、完全に溶解する溶媒である。好適な溶媒の例としては、水、キシレンなどの芳香族溶媒(例えばSolvesso(商標)から市販されている溶媒製品)、鉱油、動物油、植物油、例えばメタノール、ブタノール、ペンタノール、およびベンジルアルコールなどのアルコール;例えばシクロヘキサノンおよびガンマ-ブチロラクトンなどのケトン、NMPおよびNOPなどのピロリドン、グリコールジアセタートなどのアセタート、グリコール、脂肪酸ジメチルアミド、脂肪酸、ならびに脂肪酸エステルが挙げられる。
【0042】
組成物は、任意選択的に、1つまたは複数の界面活性剤を含んでもよい。好適な界面活性剤は、当技術分野において公知であり、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、脂肪アルコールスルフェート、脂肪酸、および硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテルのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩、さらに、ホルムアルデヒドとのスルホン化ナフタレンおよびナフタレン誘導体の縮合物、フェノールとのナフタレンまたはナフタレンスルホン酸の縮合物、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコールおよび脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグニン亜硫酸廃液およびメチルセルロース、ならびにエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0043】
組成物は、任意選択的に、1つまたは複数の高分子安定剤を含んでもよい。本発明において使用できる好適な高分子安定剤には、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、モノオレフィンとジオレフィンとのコポリマー、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、またはポリアミドが含まれるが、これらだけに限定されない。
【0044】
組成物は、消泡剤を含んでもよい。好適な消泡剤には、例えば、シリコーン消泡剤などの、ポリジメチルシロキサンとペルフルロアルキルホスホン酸との混合物が含まれる。
【0045】
1つまたは複数の防腐剤も、組成物中に存在していてもよい。好適な例としては、例えば、Preventol(登録商標)(Bayer AGから市販されている)およびProxel(登録商標)(Bayer AGから市販されている)が含まれる。
【0046】
さらに、組成物はまた、ブチル化ヒドロキシトルエンなどの1つまたは複数の酸化防止剤を含んでもよい。
【0047】
組成物は、1つまたは複数の固形被着剤をさらに含んでいてもよい。そのような被着剤は、当技術分野において既知であり、市販されている。それらには、置換セルロースのセルロース類、粉末、顆粒、または格子の形態の天然および合成ポリマーなどの粘着付与剤を含む有機接着剤と、石膏、シリカ、またはセメントなどの無機接着剤と、が含まれる。
【0048】
組成物は、例えば、カオリン、アルミナ、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、および珪藻土などの粉砕された天然鉱物、または高分散性ケイ酸、酸化アルミニウム、ケイ酸塩、ならびにリン酸カルシウムおよびリン酸水素カルシウムなどの粉砕された合成鉱物を含む、1つまたは複数の不活性充填剤を含んでもよい。顆粒に好適な不活性充填剤には、例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石、およびドロマイトなどの、粉砕され分別された天然鉱物、または粉砕された合成無機および有機物質の顆粒、ならびにおがくず、ココナッツの殻、トウモロコシの穂軸、およびタバコの茎などの有機物質の顆粒が含まれる。
【0049】
組成物はまた、例えば、キサンタンガムなどのガム、PVOH、セルロースおよびその誘導体、水和ケイ酸クレイ(clay hydrated silicate)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、またはそれらの混合物を含む、1つまたは複数の増粘剤も含んでいてもよい。
【0050】
本発明の幾つかの実施形態において、農薬組成物は、純粋な形態で、またはより好ましくは、上述のような助剤の少なくとも1つと一緒に、施用および使用してもよい。
【0051】
本発明の組成物はまた、特異的効果を果たすためのその他の有効成分、例えば、殺菌剤、殺真菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺軟体動物剤、または除草剤を含んでいてもよい。
【0052】
一実施形態において、ドジンまたはその他のグアニジンを1つまたは複数の追加の殺真菌剤と組み合わせてもよい。これらの1つまたは複数の追加の殺真菌剤には、ニームオイル、亜リン酸のモノおよびジカリウム塩、塩基性硫酸銅、硫酸銅五水和物、水酸化銅、マンコゼブ、クロロタロニル、ハーピンタンパク質、脂肪酸およびロジン酸の銅塩、アゾキシストロビンおよびフルオキサストロビンなどのストロビルリン、バチルス・プミリス菌株QST、バチルス・スブチリスQST713、酸化第一銅、オオイタドリ、炭酸のモノカリウム塩、ホセチル-Al、メタラキシル、および前述の組合せが含まれるが、これらだけに限定されない。熱帯性果実植物および栽培品種における炭疽病に対して有効であることが実証されうるその他の殺真菌剤もまた、単独でまたは列記された化合物のうちの1つまたは複数と組み合わせて、本発明の組成物中で使用可能でありうる。
【0053】
ドジンおよびその他のグアニジンと適合性がある好適な殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺軟体動物剤、または除草剤化合物もまた、本明細書に記載の組成物中で使用可能であると考えられ、当業者に既知と思われる。
【0054】
本発明の農薬組成物は、その使用の状況に応じて様々な形で製剤化してもよい。好適な製剤技術には、当技術分野において既知であり、水和剤、粉剤、ペースト剤、顆粒水和剤、液剤、乳剤、エマルション、フロアブル剤、エアゾル、またはマイクロカプセル剤が含まれる。
【0055】
一実施形態において、本発明は、概して、コレトトリカム属菌によって引き起こされる炭疽病を防除する方法に関し、該方法は、
処理を必要とする熱帯性果実植物または栽培品種を、有効量のグアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物と接触させるステップを含む。
【0056】
一実施形態において、該方法は、熱帯性果実植物または栽培品種へ、病害に好都合な気候条件下で、熱帯性果実植物または栽培品種の開花前に、1回目の殺真菌剤噴霧を施用し、次いで、熱帯性果実植物または栽培品種の開花開始時に、葉面噴霧として有効量のグアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物を施用するステップを含む。使用する場合、1回目の殺真菌剤噴霧には、開花前に施用されるオキシ塩化銅噴霧が含まれる。
【0057】
別の好ましい実施形態において、本発明は、概して、炭疽病にかかりやすい熱帯性果実植物または栽培品種を処理する方法に関し、該方法は、
熱帯性果実植物または栽培品種を、有効量のグアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物と接触させるステップと、
該接触させるステップを、一定間隔で、1回または複数回、繰り返すステップと、を含む。
【0058】
別の好ましい実施形態において、本発明は、概して、熱帯性果実を収穫後に処理する方法に関し、該方法は、
a)炭疽病にかかりやすい植物または栽培品種から熱帯性果実を収穫するステップと、
b)収穫した熱帯性果実を、有効量のグアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物と接触させるステップと、
c)該接触させるステップを、一定間隔で、1回または複数回、繰り返すステップと、を含む。
【0059】
前述の任意の組合せを行ってもよいことも、また企図される。例えば、炭疽病感染の程度または炭疽病感染の起こりうる程度に応じて(すなわち、気象条件に応じて)、農薬組成物を、開花開始時に、次いで生育期間に所定の間隔で、植物または栽培品種に施用し、次いで収穫後にも果実を処理して、損失を最少化することが有益でありうる。接触ステップのその他の概要も、当業者に既知であり、この場合も、感染しやすい熱帯性植物または栽培品種における感染のレベルまたは予想されるレベルに応じて用いることができると考えられる。
【0060】
本発明において使用される製剤タイプの例としては、次のものが含まれる。
【0061】
A)グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物が水溶性溶媒に溶解されている、水溶剤。1つまたは複数の湿潤剤および/またはその他の助剤を含んでいてもよい。活性化合物は、水で溶解して希釈する。
【0062】
B)グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物が、好ましくは1つまたは複数の非陰イオン性乳化剤および陰イオン性乳化剤を添加して、水不混和性溶媒に溶解されている、乳剤。この混合物を、例えばかき混ぜることによって撹拌して、均一な製剤を生成する。水で希釈することによって、安定なエマルションが得られる。
【0063】
C)グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物が、好ましくは1つまたは複数の非陰イオン性乳化剤および陰イオン性乳化剤を添加して、1つまたは複数の好適な水不混和性溶媒に溶解されている、エマルション。得られた混合物を乳化機などの適切な手段によって水に導入して、均質なエマルションが得られる。水で希釈することによって、安定なエマルションが得られる。
【0064】
D)グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物が、好ましくは1つまたは複数の分散剤および湿潤剤ならびに水または溶媒を添加して、撹拌型ボールミル中で微粉砕されて得られた微細な活性化合物懸濁液である、懸濁液。水で希釈することによって、活性化合物の安定な懸濁液が得られる。
【0065】
E)グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物が、好ましくは1つまたは複数の分散剤および湿潤剤を添加して、微粉化され、好適な技術によって、例えば、スプレー塔での押出乾燥によって、または流動層でのプロセシングによって、顆粒水和剤または顆粒水溶剤として調製されている、顆粒水和剤および/または顆粒水溶剤。水で希釈することによって、活性化合物の安定な分散物または液剤が得られる。
【0066】
F)グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物が、好ましくは1つまたは複数の分散剤、湿潤剤、およびシリカゲルを添加して、ローターステーターミルなどの好適な装置中で粉砕されている、水和剤および水溶剤。水で希釈することによって、活性化合物の安定な分散物または液剤が得られる。
【0067】
G)グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物が好適な装置中で微粉砕され、キャリアーが99.5重量部まで添加されている、粒剤。粒剤は、次いで、押出、噴霧乾燥、または流動層の使用などの好適な技術のいずれかによって調製することができる。
【0068】
よって、フロアブル剤の場合、フロアブル剤は、約100~約1,000g/Lのグアニジンまたはその溶媒和物の塩を含有してもよく、約100~約300g/Lの、または約200g/L~約300g/Lの、または約300~約500g/Lのグアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物を含有してもよい。一実施形態において、また上述したように、グアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物は、ドジン、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、グアザチン、および前述のうちの1つまたは複数の組合せからなる群から選択してもよい。好ましい一実施形態において、グアニジンは、ドジンまたはその塩もしくは溶媒和物を含む。別の好ましい実施形態において、グアニジンは、イミノクタジンアルベシル酸塩もしくはイミノクタジン酢酸塩、またはそれらの塩もしくは溶媒和物を含む。
【0069】
特に好ましい一実施形態において、本発明は、生育場所において炭疽病を防除するための、グアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物を含む農薬組成物または製剤の使用を説明する。一実施形態において、生育場所とは土壌であり、農薬製剤は好適な間隔で土壌に施用される。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、生育場所における炭疽病の防除方法を提供し、該方法は、本明細書に記載されたようなグアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物を含む農薬組成物または製剤を、生育場所に施用するステップを含む。
【0071】
使用において、本発明の組成物は、標的植物もしくは目的の植物に、1つもしくは複数のそれらの部分(葉または種子または根など)に、またはそれらの生育場所に施用してもよい。特定の好ましい実施形態において、農薬組成物は、葉面殺真菌剤として使用される。本発明の組成物および方法は、感染しやすい栽培品種においてコレトトリカム属菌によって引き起こされた炭疽病の防除に使用される場合、特に好都合であることが分かっている。加えて、本発明はまた、感染しやすい栽培品種においてコレトトリカム属菌によって引き起こされる炭疽病の予防に使用される場合、特に好都合であることが分かっている。
【0072】
一般的に、グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物が、処理される予定の生育場所によって要求されるような任意の好適な割合で施用されるように、組成物または製剤は、調製および施用される。施用割合は、広範囲に様々であってもよく、事例ごとの土壌組成、施用の種類(すなわち、葉面施用)、植物品種および/または栽培品種、感染のレベル、一般的な気候状況といった要因、ならびに施用の種類、施用のタイミング、および標的作物によって決定されるその他の要因に応じて決めてもよい。
【0073】
典型的には、施用割合は、上記の種々の要因に応じて、1ヘクタール当たり約1~約5,000g(またはml)の農薬組成物であってもよく、また、上記の種々の要因に応じて、10~4,000g/ha、より好ましくは150~2,000g/haであってもよく、または150~300g/haもしくは200~300g/ha、または炭疽病の治療に有効である別の量の農薬組成物であってもよい。本明細書に記載したように、グアニジンは、単独でまたは第2の殺真菌剤と組み合わせて施用してもよい。一実施形態において、第2の殺真菌剤は、フルオキサストロビンなどのストロビルリンである。よって、グアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物は、ストロビルリンとの混合物として調製してもよい。好ましい一実施形態において、グアニジンはドジンであり、ストロビルリンはフルオキサストロビンである。一実施形態において、農薬組成物は、約200g/ha~約800g/haのグアニジンおよび約80g/haおよび約150g/haのストロビルリン、より好ましくは約350g/ha~約650g/haのグアニジンおよび約110g/ha~約125g/haのストロビルリンの割合で、または約400g/ha~約600g/haのグアニジンおよび約115g/haおよび約125g/haのストロビルリンの割合で施用される。
【0074】
本発明によると、グアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物または製剤の使用は、任意の好適な時間に適用してもよい。幾つかの実施形態において、組成物は、植付けの前、植付けの間、または植付けの後に、土壌または植物の生育場所に施用される。このような処理は、例えば、点滴灌漑、化学的灌漑(chem-irrigation)、および噴霧を含む当技術分野で既知の従来方法によって行ってもよい。好ましい実施形態において、好ましい処理は、葉面噴霧による。
【0075】
植物、植物部分、またはそれらの生育場所を処理するステップはまた、一定間隔で、1回または複数回、繰り返してもよい。一定間隔は、1~40日、好ましくは7~40日、より好ましくは7~15日であってもよい。よって、一定間隔は、植物、植物部分、またはそれらの生育場所における感染の速度と、農薬組成物の施用方法と、強度(すなわち、農薬組成物中のグアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物の濃度とを含む種々の要因に応じて、例えば、7日、10日、14日、21日、30日などであってもよい。
【0076】
別の実施形態において、また上述したように、農薬組成物は、収穫後に熱帯性果実に施用される。収穫後に果実を処理する場合、農薬組成物は、まず、収穫している1日または2日以内であり、次いで、果実の輸送時間および/もしくは保管時間ならびに輸送条件および/もしくは保管条件に応じて、1回または複数回、再施用してもよい。
【0077】
本発明によると、植物、植物部分、またはそれらの生育場所を処理するためのグアニジンまたはその塩および/もしくは溶媒和物を含む農薬組成物または製剤の使用は、植物または植物部分へ、または植物または植物部分の環境、生育地、もしくは保管空間へ直接的に行われる種々のプロセシング方法の使用を介する。これらの方法には、例えば、液浸、噴霧、微粒化(atomizing)、灌漑、蒸発、粉化(powdering)、ミスト噴霧(misting)、霧化(fogging)、散布(spreading)、泡、コーティング、塗布、展着(spreading-on)、散水、浸漬、点滴灌漑、および化学的灌漑が含まれる。
【0078】
一実施形態において、本発明は、植物おける炭疽病感染を治療するか、改善させるか、または予防する、改良された方法を提供し、該方法は、農薬的に有効な量の本明細書に記載の農薬組成物によるそのような処理を必要とする植物に接触させるステップを含む。
【0079】
ここで、本発明を、以下の非限定的な例に関して説明する。表2に、実施例において例示した種々の殺真菌剤のリストおよびそれらの投薬割合を示す。
【0080】
【表2】
【実施例1】
【0081】
試験プロトコールを、パパイア植物に対して、578L/haの水量のドジンフロアブル剤(400SC)を使用して実施した。1つの一般的なオキシ塩化銅噴霧(3.5g/Lの水)を、開花前に施用した。試験は、2地区で実施した。
【0082】
ドジンの1回目の葉面噴霧を、病害に好都合な気候条件(すなわち、多湿な気象条件、湿潤な気象条件および/または温暖な気象条件)下で、開花開始時に施用し、2回目の葉面噴霧を、7日後に施用した。
【0083】
評価は、0日目、1回目の葉面噴霧の7日後、2回目の葉面噴霧の7日後、および2回目の葉面噴霧の14日後に行った。植物は、収量損失を予測する花での病害増加度/発病度、葉での発病度、果実での発病度、および植物毒性について、表3に示した段階によって評価した。
【0084】
【表3】
【0085】
殺真菌剤の各施用について、第1の地区における花での発病結果を図1に示し、第1の地区における果実での発病結果を図2に示す。図3図4、および図5は、殺真菌剤の各施用について、それぞれ、第2の地区における花、葉、および果実での発病結果を示す。
【0086】
結果は、1回目の施用の7日後、2回目の施用の7日後、および2回目の施用の14日後で示している。0日目では、処理のすべては同様の病害の存在を示しており、異なる処理間で有意差はなかった。
【0087】
図1図5にみられるように、種々の濃度のドジンは、両地区におけるパパイア果実および花での発病結果、ならびに第2の地区における葉での発病結果に対し、好ましい効果を示した。
【実施例2】
【0088】
試験プロトコールを、マンゴー植物に対して、1060~1100L/haの水量のドジンフロアブル剤(400SC)を使用して実施した。1つの一般的なオキシ塩化銅噴霧(3kg/haの水)を、開花前に施用した。試験は、2地区で実施した。
【0089】
ドジンの1回目の葉面噴霧を、病害に好都合な気候条件(すなわち、多湿な気象条件、湿潤な気象条件および/または温暖な気象条件)下で、開花開始時に施用し、2回目の葉面噴霧を、7日後に施用した。
【0090】
評価は、0日目、1回目の葉面噴霧の7日後、2回目の葉面噴霧の7日後、および2回目の葉面噴霧の14日後に行った。植物は、収量損失を予測する花での病害増加度/発病度、葉での発病度、果実での発病度、および植物毒性について、表3に示した段階によって評価した。
【0091】
殺真菌剤の各施用について、第1の地区における花での発病結果を図6に示し、第1の地区における果実での発病結果を図7に示す。図8図9、および図10は、殺真菌剤の各施用について、それぞれ、第2の地区における花、葉、および果実での発病結果を示す。
【0092】
結果は、1回目の施用の7日後、2回目の施用の7日後、および2回目の施用の14日後で示している。0日目では、処理のすべては同様の病害の存在を示しており、異なる処理間で有意差はなかった。
【0093】
図6図10にみられるように、種々の濃度のドジンは、両地区におけるマンゴー果実および花での発病結果、ならびに第2の地区における葉での発病結果に対し、好ましい効果を示した。
【実施例3】
【0094】
試験プロトコールを、アボカド植物に対して、1200L/haの水量のドジンフロアブル剤(400SC)を使用して実施した。試験は、2地区で実施した。
【0095】
ドジンの1回目の葉面噴霧を、病害に好都合な気候条件(すなわち、多湿な気象条件、湿潤な気象条件および/または温暖な気象条件)下で、開花開始時に施用し、2回目の葉面噴霧を、7日後に施用した。
【0096】
評価は、0日目、1回目の葉面噴霧の7日後、2回目の葉面噴霧の7日後、および2回目の葉面噴霧の14日後に行った。植物は、収量損失を予測する花での病害増加度/発病度、葉での発病度、果実での発病度、および植物毒性について、表3に示した段階によって評価した。
【0097】
殺真菌剤の各施用について、第1の地区における葉での発病結果を図11に示し、第1の地区における果実での発病結果を図12に示す。図13は、殺真菌剤の各施用について、第2の地区における花での発病結果を示す。
【0098】
結果は、1回目の施用の7日後、2回目の施用の7日後、および2回目の施用の14日後で示している。0日目では、処理のすべては同様の病害の存在を示しており、異なる処理間で有意差はなかった。
【0099】
図11図13にみられるように、種々の濃度のドジンは、両地区におけるアボカド果実および花での発病結果、ならびに第2の地区における葉での発病結果に対し、好ましい効果を示した。
【0100】
5日または7日または10日または14日の施用間隔を用いて、良好な結果を得ることができる。加えて、組成物の施用は、少なくとも1回または少なくとも2回以上施用することが望ましい。よって、一実施形態において、農薬組成物は、花および葉の保護のために、開花時に施用してもよい。あるいは、農薬組成物は、果実を直接保護するために、開花後早期に施用してもよい。加えて、一部の熱帯性作物には、開花前に、オキシ塩化銅噴霧を施用し、次いで開花開始時に、グアニジンまたはその塩もしくは溶媒和物を含有する農薬組成物を施用することができる。
【0101】
最後に、以下の特許請求の範囲が、本明細書に記載された本発明の一般的かつ具体的な特徴のすべてと、言葉としてその間に含まれうる本発明の範囲のすべての記述と、を包含することを意図されていることも、また理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13