(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】4-1BBアゴニストと抗CD20抗体の治療的組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20221017BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221017BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221017BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221017BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20221017BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221017BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20221017BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61P43/00 111
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/705
(21)【出願番号】P 2020547215
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2019055946
(87)【国際公開番号】W WO2019175071
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-05
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フェッラーラ コラー, クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】サム, ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ウマーナ, パブロ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ, ウェイ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/075278(WO,A1)
【文献】JOURNAL OF IMMUNOTHERAPY,2010年,Vol.33, Mo.5,p.500-509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 47/00
A61K 39/395
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD20抗体と組み合わせて、がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための医薬であって、該医薬は、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む4-1BB(CD137)アゴニストを含み、
4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
抗CD20抗体が、リツキシマブ又はオビヌツズマブから選択される、医薬。
【請求項2】
4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が同時に投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(V
HCD19)、並びに(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(V
LCD19)、又は
(b)(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(V
HCD19)、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(V
LCD19)
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
HCD19)及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
LCD19)を含むか、又は、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
HCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
LCD19)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
4-1BBアゴニストが、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
4-1BBアゴニストが、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させるか又は排除する1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
HCD19)と配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
LCD19)、又は配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
HCD19)と配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
LCD19)を含むCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
4-1BBアゴニストが、
a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖及び配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
d)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号50のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
j)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
k)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;並びに
l)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
4-1BBアゴニストが、抗CD20抗体と組み合わせて使用され、この組み合わせが、約1週間から3週間の間隔で投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療が、併用治療の前に行われ、ここで、前治療と併用治療の間の期間は、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブに応答した、個体におけるB細胞の減少に十分である、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
がんの併用治療又は同時治療における使用のための、
(A)活性成分としての、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む4-1BBアゴニスト、及び薬学的に許容される添加物を含む第1の組成物であって、
4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、第1の組成物;並びに
(B)活性成分としての、リツキシマブ又はオビヌツズマブから選択される抗CD20抗体、及び薬学的に許容される添加物を含む第2の組成物
を含む、薬学的製品。
【請求項15】
B細胞増殖性疾患の治療における使用のための薬学的組成物であって、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む4-1BBアゴニストであって、4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、4-1BBアゴニスト、及び薬学的に許容される添加物、並びに
リツキシマブ又はオビヌツズマブから選択される抗CD20抗体を含む第2の医薬、
を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
B細胞増殖性疾患
が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択され
る、請求項1
5に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
B細胞増殖性疾患を治療するた
めの医薬の製造における、
CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む4-1BBアゴニストであって、4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、4-1BBアゴニスト;及び
リツキシマブ又はオビヌツズマブから選択される抗CD20抗体、の組み合わせの使用。
【請求項18】
CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む4-1BBアゴニストであって、4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、4-1BBアゴニスト;及び
リツキシマブ又はオビヌツズマブから選択される抗CD20抗体を含む、対象における
B細胞増殖性疾患を治療するため又はがんの進行を遅延させるためのキット。
【請求項19】
4-1BBアゴニストが、抗CD20抗体と同時に投与される、請求項
18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍関連抗原、特にCD19標的化4-1BBL抗原結合分子に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BB(CD137)アゴニストと、ヒトCD20に結合する特異的抗体とを使用する併用療法、がんの治療のためのこれらの併用療法の使用、及び併用療法を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
B細胞増殖性疾患は、白血病とリンパ腫の両方を含む悪性腫瘍の異種群を表す。リンパ腫は、リンパ細胞から生じ、ホジキンリンパ腫(HL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)という2つの主要カテゴリを含む。米国では、B細胞起源のリンパ腫は非ホジキンリンパ腫症例の約80~85%を構成し、B細胞サブセット内には、起源のB細胞における遺伝子型及び表現型の発現パターンに基づくと、大きな不均一性がある。例えば、B細胞リンパ腫サブセットは、濾胞性リンパ腫(FL)又は慢性リンパ性白血病(CLL)といった進行の遅い無痛性及び難治性疾患と、それよりも攻撃的なサブタイプ、マントル細胞リンパ腫(MCL)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含む。B細胞増殖性疾患の治療のために様々な薬剤が利用可能であるものの、患者の寛解を延長し、かつ治癒率を向上させる、安全で効果的な治療法の開発が引き続き必要とされている。
【0003】
現在研究されている戦略は、悪性B細胞に対するT細胞の関与である。悪性B細胞に対してT細胞を効果的に関与させるために、最近2つのアプローチが開発されている。これらの2つのアプローチは、1)腫瘍細胞を認識するようにex vivoで操作されたT細胞の投与(キメラ抗原受容体修飾T細胞療法又はCAR-T細胞としても知られている)(Maude et al., N Engl J Med (2014) 371,1507-1517);及び、2)内因性T細胞を活性化する薬剤、例えば二重特異性抗体などの投与(Oak and Bartlett, Expert Opin Investig Drugs (2015) 24, 715-724)である。最初のアプローチの例は、Maudeらによる研究で報告されており、30人の成人及び小児患者が、CD19指向性キメラ抗原受容体レンチウイルスベクターで形質導入された自己T細胞(CTL019 CAR-T細胞)により治療された。その結果、6ヶ月のイベントフリー生存率67%、全生存率78%に基づいた持続的寛解が得られた。ただし、すべての患者がサイトカイン放出症候群(CRS)(腫瘍負荷に関連する)を有し、患者の27%が重度のCRSを有していた。原因不明の中枢神経系毒性も高頻度で認められた。第二のアプローチは、内因性T細胞を活性化して腫瘍標的を認識させることを含み、このスケーラビリティのハードルを回避し、競争力のある有効性、安全性データ、及び長期的な奏効期間の可能性を提供することもできる。異なるCD20+血液悪性腫瘍において、このアプローチは、微小残存病変陽性の急性リンパ性白血病(ALL)の患者に対して最近承認された、CD19 CD3標的化T細胞二重特異的分子であるブリナツモマブによって最もよく例示されている(Bargou et al., Science (2008) 321, 974-977)。この化合物は、2つの単鎖Fv断片(いわゆるBiTE(登録商標)フォーマット)からなり、細胞溶解性T細胞によるCD19+細胞の溶解を導く。ブリナツモマブの主な制約は、その短い半減期(約2時間)であり、4~8週間にわたってポンプを介して持続的に注入する必要がある。さらに、重度のCRS及びCNS毒性も頻繁に観察されている(Klinger et al., Blood. 2012;119(26):6226-6233)。すべての臨床試験においてブリナツモマブを投与されている患者では、約50%の患者で神経毒性が発生しており、観察された毒性の種類は添付文書で明確に定義されている。
【0004】
TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである4-1BB(CD137)は、活性化されたT細胞によって発現される誘導性分子として最初に同定された(Kwon and Weissman, Proc Natl Acad Sci U S A (1989) 86, 1963-1967)。その後の研究により、NK細胞、B細胞、NKT細胞、単球、好中球、マスト細胞、樹状細胞(DC)、及び内皮細胞や平滑筋細胞などの非造血起源の細胞を含む、他の多くの免疫細胞も4-1BBを発現することが実証された(Vinay and Kwon, Cell Mol Immunol. (2011) 8, 281-284)。異なる細胞型における4-1BBの発現は、大部分は誘導性であり、T細胞受容体(TCR)又はB細胞受容体トリガーなどの様々な刺激シグナル、並びに共刺激分子又は炎症性サイトカインの受容体を通じて誘導されるシグナル伝達によって駆動される(Diehl et al., J Immunol (2002)168, 3755-3762; Zhang et al., J Immunol(2010) 184, 787-795)。
【0005】
4-1BBリガンド(4-1BBL又はCD137L)は、1993年に同定された(Goodwin et al., Eur J Immunol. (1993) 23, 2631-2641)。4-1BBLの発現は、B細胞、DC及びマクロファージなどのプロフェッショナルな抗原提示細胞(APC)上に制限されていることが示されている。4-1BBLの誘導性発現は、αβ及びγδ両方のT細胞サブセットを含むT細胞、並びに内皮細胞に特徴的である(Shao and Schwarz, J Leukoc Biol (2011) 89, 21-29)。
【0006】
4-1BB受容体を通した共刺激(例えば4-1BBLのライゲーションによる)は、T細胞(CD4+及びCD8+サブセットの両方)内部において複数のシグナル伝達カスケードを活性化させ、T細胞活性化を強力に増強する(Bartkowiak and Curran, Front Oncol (2015) 5, 117)。TCRトリガーと組み合わせて、アゴニスト4-1BB特異的抗体は、T細胞の増殖を増強し、リンホカイン分泌を刺激し、活性化誘導細胞死に対するTリンパ球の感受性を低下させる(Snell et al., Immunol Rev (2011) 244, 197-217)。このような機序は、がん免疫療法における概念の最初の実証としてさらに進歩した。前臨床モデルでは、腫瘍を有するマウスにおける4-1BBに対するアゴニスト抗体の投与は、強力な抗腫瘍効果をもたらした(Melero et al., Nature Med (1997)3, 682-685)。その後、蓄積された証拠により、4-1BBは通常、他の免疫調節化合物、化学療法剤、腫瘍特異的ワクチン接種又は放射線療法と組み合わせて投与されたときにのみ、抗腫瘍剤としてのその効力を示すことが示唆された(Bartkowiak and Curran, Front Oncol (2015) 5, 117)。
【0007】
TNFRスーパーファミリーのシグナル伝達は、受容体と係合するために三量体化リガンドの架橋を必要とし、野生型Fc結合を必要とする4-1BBアゴニスト抗体も同様である(Li and Ravetch, Science (2011)333, 1030-1034)。しかしながら、機能的に活性なFcドメインを有する4-1BB特異的アゴニスト抗体の全身投与は、マウスにおいて機能的Fc受容体の非存在下では減少するか又は有意に改善される肝毒性に関連するCD8+ T細胞の流入をもたらした(Dubrot et al., Cancer Immunol Immunother (2010) 59, 1223-1233)。クリニックにおいて、Fcコンピテント4-1BBアゴニストAb(BMS-663513)(NCT00612664)は、グレード4の肝炎を生じさせ、治験終了に至った(Simeone and Ascierto, J Immunotoxicol (2012) 9, 241-247)。したがって、効果的で安全な4-1BBアゴニストが必要とされている。
【0008】
4-1BBリガンドの1つの細胞外ドメインと、単鎖抗体断片(Hornig et al., J Immunother (2012) 35, 418-429; Mueller et al., J Immunother. (2008) 31, 714-722)又は重鎖のC末端に融合した単一の4-1BBリガンド(Zhang et al., Clin Cancer Res (2007) 13, 2758-2767)からなる融合タンパク質が作製されている。国際公開第2010/010051号は、互いに連結され、抗体部分に融合された3つのTNFリガンドエクトドメインからなる融合タンパク質の生成を開示している。本発明において、三量体、したがって生物学的に活性な4-1BBリガンドと、腫瘍抗原CD19特異的な抗原結合ドメインと、FcγR結合を欠いたFc領域とからなる抗原結合分子は、特に安定かつ強力であることが示されている(本明細書においてCD19-4-1BBLと命名する)。これらの構築物は、国際公開第2016/075278号に開示されており、CD19標的化B細胞特異的架橋によって、Fc媒介毒性の原因となる非特異的FcγR媒介架橋を置き換える。
【0009】
CD19は、B細胞の表面に発現され、これら細胞にほとんど特異性であるため、B細胞悪性腫瘍の免疫療法のための理想的な標的である。CD19は、B細胞発生の間に、B細胞上においてCD20よりも広く発現されるため、通常CD20陽性細胞もCD19を発現するだろう。B細胞が形質細胞(抗体分泌細胞)へと分化する間に、B細胞はCD20の発現をダウンレギュレートする。時に、B細胞リンパ腫もCD20の発現をダウンレギュレートするが、CD19については陽性のままである。したがって、CD19及びCD20の両方を標的とすることは、リンパ腫中の罹患B細胞を広くカバーし、また選択圧をCD20からCD19及びCD20の両方へと偏向させる可能性がある。CD19がB細胞の発癌に直接寄与するかどうかは不明であるが、その発現は、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)及びB細胞リンパ腫といった多くのB細胞腫瘍において高度に保存されている。急性白血病CD19は、ほとんどすべてのサブタイプに安定的に、かつ継続的に発現されるが、少数の白血病のみがCD20を発現する。
【0010】
したがって、NHLやCLLなどのB細胞増殖性疾患の患者の治療に大きく貢献する可能性のある新しい化合物や組み合わせに対する必要性が依然として存在する。CD19標的化4-1BBL抗原結合分子を、ヒトCD20に結合する特異的抗体と組み合わせると、優れた抗腫瘍効果が得られることが見出されている。したがって、本発明者らはここに、B細胞悪性腫瘍を含むがんのための新規の併用療法を記載する。
【発明の概要】
【0011】
発明の要旨
本発明は、がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるため、より具体的には、B細胞増殖性疾患を治療するため又はB細胞増殖性疾患の進行を遅延させるための方法における、腫瘍関連抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、特に4-1BBLの3つのエクトドメインを含む抗原結合分子を含む4-1BB(CD137)アゴニストと、ヒトCD20に結合する抗体、特にリツキシマブ又はオビヌツズマブと組み合わせたその使用とに関する。本明細書に記載される併用療法は、抗CD20抗体単独での治療よりも、腫瘍増殖の阻害及び腫瘍細胞の除去においてより効果的であることが見出されている。
【0012】
一態様では、本発明は、がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BB(CD137)アゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは抗CD20抗体と組み合わせて使用され、4-1BBアゴニストは腫瘍関連抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含み、特に、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、腫瘍関連抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。
【0013】
特に、4-1BBアゴニストは、CD19に特異的に結合することができる1つの抗原結合ドメインを含む抗原結合分子である。一態様では、4-1BBアゴニストはFcドメインを含む抗原結合分子である。特定の態様では、4-1BBアゴニストは、Fcγ受容体結合及び/又はエフェクター機能を低減させるか好ましくは除去する修飾を有する好Fcドメインを含む抗原結合分子である。
【0014】
一態様では、4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体は、同時に(concomitant)、又は同時に(simultaneously)投与される。さらなる態様では、がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体は、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、
【0015】
一態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための、腫瘍関連抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む。さらなる態様では、がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む分子であり、ここで、4-1BBLのエクトドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。より具体的には、4-1BBLのエクトドメインは配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0016】
一態様では、本発明は、がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BB(CD137)アゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、抗CD20抗体と組み合わせて使用され、ここで、4-1BBアゴニストは、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。
【0017】
一態様では、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む抗原結合分子は、CD19発現B細胞によって内部移行されないであろう。別の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は
(b)(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)
を含む。
【0018】
特定の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)とを含むか、又はCD19に特異的に結合できる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)とを含む。特定の態様では、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含む。
【0019】
一態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインをさらに含む抗原結合分子である。特に、4-1BBアゴニストは、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である。より具体的には、4-1BBアゴニストは、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である。特定の態様では、4-1BBアゴニストは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む。
【0020】
本発明の別の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、
(i)第1のポリペプチドがCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドがCL又はCH1ドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH1又はCLドメインに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドがCH3ドメインを、第2のポリペプチドがCH3ドメインを、それぞれ含み、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH3ドメインのC末端に連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドがVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドがVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びVH又はVLに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする。
【0022】
一態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0023】
特定の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、
a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖及び配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
d)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号50のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
j)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
k)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;並びに
l)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である。
【0024】
別の態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド
を含む抗原結合分子である。
【0025】
特定の態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(c)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号54のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、及び
(d)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号55のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である。
【0026】
別の態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、抗CD19/抗4-1BB二重特異性抗体である。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BB(CD137)アゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、抗CD20抗体と組み合わせて使用され、ここで、4-1BBアゴニストは、FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。
【0028】
一態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む抗原結合分子であり、ここで、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号96のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号97のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号98のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号99のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号100のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号101のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)、又は
(b)(i)配列番号102のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号103のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号106のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号107のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)
を含む。
【0029】
特定の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む抗原結合分子であり、ここで、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)と、配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)とを含むか、又はFAPに特異的に結合できる抗原結合ドメインは、配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)と、配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)とを含む。特定の態様では、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)及び配列番号112のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む。
【0030】
一態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインをさらに含む抗原結合分子である。特に、4-1BBアゴニストは、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である。より具体的には、4-1BBアゴニストは、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である。特定の態様では、4-1BBアゴニストは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む。
【0031】
本発明の別の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む。
【0032】
別の態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、
(i)第1のポリペプチドがCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドがCL又はCH1ドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH1又はCLドメインに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドがCH3ドメインを、第2のポリペプチドがCH3ドメインを、それぞれ含み、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH3ドメインのC末端に連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドがVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドがVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びVH又はVLに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする。
【0033】
一態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)と配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)、又は配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)と配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含むFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0034】
特定の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、
a)配列番号112のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号113のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号112のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号113のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号112のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号113のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
d)配列番号112のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号113のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号114のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号115のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号114のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号115のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
g)配列番号114のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号115のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号114のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号115のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号113のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号116のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号117のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;及び
j)配列番号115のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号118のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号119のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である。
【0035】
別の態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、
(a)FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド
を含む抗原結合分子である。
【0036】
別の態様では、本発明は、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、4-1BBアゴニストは、抗FAP/抗4-1BB二重特異性抗体である。
【0037】
これらのすべての態様では、本発明はさらに、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、抗CD20抗体はI型抗CD20抗体である。特に、抗CD20抗体は、リツキシマブである。別の態様では、本発明はさらに、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストを提供し、ここで、抗CD20抗体はII型抗CD20抗体である。特に、抗CD20抗体は、オビヌツズマブである。一態様では、抗CD20抗体は、アフコシル化抗CD20抗体である。さらなる態様では、抗CD20抗体は、リツキシマブ又はオビヌツズマブである。
【0038】
別の態様では、本明細書で前に定義された抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストであり、ここで、組み合わせは、約1週間から3週間の間隔で投与される。
【0039】
別の態様では、抗CD20抗体と組み合わせてがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BBアゴニストが提供され、ここで、4-1BBアゴニストは、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストであり、ここで、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療は、併用治療の前に行われ、ここで、前治療と併用治療の間の期間は、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブに応答した、個体におけるB細胞の減少に十分である。
【0040】
別の態様では、本発明は、疾患、特にがんの併用治療又は同時治療における使用のための、(A)活性成分としての、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び薬学的に許容される添加物を含む第1の組成物;及び(B)活性成分としての抗CD20抗体及び薬学的に許容される添加物を含む第2の組成物を含む薬学的製品を提供する。
【0041】
別の態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、薬学的に許容される添加物と、抗CD20抗体を含む第2の医薬とを含む薬学的組成物が提供される。一態様では、薬学的組成物は、医薬として使用するためのものである。特に、この薬学的組成物は、B細胞増殖性疾患、特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される疾患の治療における使用のためのものである。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるためのキットであって、(A)活性成分としての、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び薬学的に許容される添加物を含む第1の組成物;及び(B)活性成分としての抗CD20抗体及び薬学的に許容される添加物を含む第2の組成物、及び(C)併用療法において組成物を使用するための説明書を含むパッケージを含むキットを提供する。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、増殖性疾患、特にがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための医薬の製造における、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体の組み合わせの使用に関する。
【0044】
特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される疾患を治療するための医薬の製造における、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体との組み合わせの使用が提供される。
【0045】
別の態様では、本発明は、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの有効量と、抗CD20抗体の有効量を対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法を提供する。特に、本発明は、4-1BBアゴニストが、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む抗原結合分子である、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法に関する。一態様では、4-1BBアゴニストはFcドメインを含む抗原結合分子である。特定の態様では、4-1BBアゴニストは、Fcγ受容体結合及び/又はエフェクター機能を低減させる修飾を有するFcドメインを含む抗原結合分子である。特定の態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む抗原結合分子である。より具体的には、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子である。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの有効量、及び抗CD20抗体の有効量を対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法を提供し、ここで、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体は、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される。特に、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト、及び抗CD20抗体は、静脈内又は皮下に投与される。さらなる態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、抗CD20抗体と同時に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1A-F】
図1は、実施例で使用される特定のCD19-4-1BBL抗原結合分子を示す。これらの分子は、実施例1及び2においてそれぞれさらに詳細に記載される。太い黒色の点は、ノブ・イントゥー・ホール修飾を表している。
図1Aは、4-1BBL二量体及び4-1BBL単量体に隣接するCH1及びCLドメインにアミノ酸修飾を有する一価CD19 4-1BBL三量体含有抗原結合分子を示す。これはCD19バインダー8B8-018を含んでいたため、本明細書においてmono CD19(018)-4-1BBLと命名した。1Bに示す構築物は、CD19バインダー8B8-2B11を含むという点で1Aとは異なり、したがってmono CD19(2B11)-4-1BBLと命名した。1Dは、bi CD19(018)-4-1BBLと命名されたバインダーCD19(018)を含む二価の構築物を示している。
図1C及び1Eは、非標的化対照分子を示している(CD19バインダーは、非結合性DP47 Fabによって置換されている)。
図1Fは、マウス4-1BBL二量体及びマウス4-1BBL単量体を含む抗原結合分子を含む一価CD19 4-1BBL三量体を示し、本明細書ではハイブリッドCD19-4-1BBL又はCD19-mu4-1BBLと命名される。
【
図2A-B】
図2Aは、CD19標的化三量体スプリット4-1BBLのマウス4-1BB及びヒトCD19への同時結合を測定するアッセイのセットアップを示す(実施例2)。
図2Bのグラフは、固定化されたマウス4-1BB及びヒトCD19(被分析物2)に対するハイブリッドサロゲートCD19-mu4-1BBL(被分析物1)の同時結合を示す。
【
図3A-B】
図3Aから3Cでは、CD19-4-1BBLは、NHL細胞株、つまりWSU-DLCL2(CD19
+ CD20
high)(
図3A)、SU-DHL-8(CD19
+ CD20
low)(
図3B)、又はNaml-6(CD19
+ CD20
low)(
図3C)と結合すると、リツキシマブ又はオビヌツズマブ(Gazyva)によって活性化されたNK細胞の活性化(IFNγ放出)を高める可能性があることが示されている。
【
図3C】
図3Aから3Cでは、CD19-4-1BBLは、NHL細胞株、つまりWSU-DLCL2(CD19
+ CD20
high)(
図3A)、SU-DHL-8(CD19
+ CD20
low)(
図3B)、又はNaml-6(CD19
+ CD20
low)(
図3C)と結合すると、リツキシマブ又はオビヌツズマブ(Gazyva)によって活性化されたNK細胞の活性化(IFNγ放出)を高める可能性があることが示されている。
【
図4A-B】
図4Aから4Cは、CD19-4-1BBLをリツキシマブ又はオビヌツズマブ(Gazyva)と組み合わせることにより、NHL細胞株、つまりWSU-DLCL2(CD19
+ CD20
high)(
図4A)、SU-DHL-8(CD19
+ CD20
low)(
図4B)、又はNaml-6(CD19
+ CD20
low)(
図4C)と結合すると、NK細胞の活性化(CD25上方制御)が高められることを示している。
【
図4C】
図4Aから4Cは、CD19-4-1BBLをリツキシマブ又はオビヌツズマブ(Gazyva)と組み合わせることにより、NHL細胞株、つまりWSU-DLCL2(CD19
+ CD20
high)(
図4A)、SU-DHL-8(CD19
+ CD20
low)(
図4B)、又はNaml-6(CD19
+ CD20
low)(
図4C)と結合すると、NK細胞の活性化(CD25上方制御)が高められることを示している。
【
図5A-B】
図5Aから5Cでは、CD19-4-1BBLとオビヌツズマブ(Gazyva)の組み合わせは、NHL細胞株WSU-DLCL2(
図5A)、SU-DHL-8(
図5B)又はNaml-6(
図5C)と結合すると、NK細胞の活性化(CD25上方制御)を高めるが、一方、ウレルマブとオビヌツズマブの組み合わせでは高めないことが示されている。
【
図5C】
図5Aから5Cでは、CD19-4-1BBLとオビヌツズマブ(Gazyva)の組み合わせは、NHL細胞株WSU-DLCL2(
図5A)、SU-DHL-8(
図5B)又はNaml-6(
図5C)と結合すると、NK細胞の活性化(CD25上方制御)を高めるが、一方、ウレルマブとオビヌツズマブの組み合わせでは高めないことが示されている。
【
図6】
図6は、huCD16Tg Scidマウスにおける、リツキシマブと組み合わせた一価ハイブリッドCD19-4-1BBL分子(mono CD19-mu4-1BBL)のin vivoでの有効性試験のプロトコールを示している。下の表では、異なる組み合わせ及び用量を投与されたマウスのサブグループが定義されている。実験は実施例4に記載されており、結果は
図7A及び7Bに示されている。リツキシマブと組み合わせたmono CD19-mu4-1BBLの組み合わせは、リツキシマブによる単剤療法又はmono CD19-mu4-1BBLによる単剤療法と比較して、試験したすべての用量でより強力かつ迅速な腫瘍増殖阻害を誘発した。
図7Bに示すように、試験終了時の腫瘍重量は、これらの知見を確認するものであった。
【
図7A-B】
図6は、huCD16Tg Scidマウスにおける、リツキシマブと組み合わせた一価ハイブリッドCD19-4-1BBL分子(mono CD19-mu4-1BBL)のin vivoでの有効性試験のプロトコールを示している。下の表では、異なる組み合わせ及び用量を投与されたマウスのサブグループが定義されている。実験は実施例4に記載されており、結果は
図7A及び7Bに示されている。リツキシマブと組み合わせたmono CD19-mu4-1BBLの組み合わせは、リツキシマブによる単剤療法又はmono CD19-mu4-1BBLによる単剤療法と比較して、試験したすべての用量でより強力かつ迅速な腫瘍増殖阻害を誘発した。
図7Bに示すように、試験終了時の腫瘍重量は、これらの知見を確認するものであった。
【
図8】
図8は、WSU-DLCL2を有する完全ヒト化NSGマウスにおける、オビヌツズマブ(Gazyva)と組み合わせた一価CD19(2B11)-4-1BBL構築物のin vivoでの有効性試験のプロトコールを示している。下の表では、異なる組み合わせ及び用量を投与されたマウスのサブグループが定義されている。実験は実施例5に記載されており、結果は
図9に示されている。mono CD19(2B11)-4-1BBLとGazyvaの組み合わせは、Gazyvaによる単剤療法と比較して、はるかに強力な腫瘍増殖阻害を誘発した。
【
図9】
図8は、WSU-DLCL2を有する完全ヒト化NSGマウスにおける、オビヌツズマブ(Gazyva)と組み合わせた一価CD19(2B11)-4-1BBL構築物のin vivoでの有効性試験のプロトコールを示している。下の表では、異なる組み合わせ及び用量を投与されたマウスのサブグループが定義されている。実験は実施例5に記載されており、結果は
図9に示されている。mono CD19(2B11)-4-1BBLとGazyvaの組み合わせは、Gazyvaによる単剤療法と比較して、はるかに強力な腫瘍増殖阻害を誘発した。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
定義
特に定義されない限り、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野において一般的に使用されるのと同じ意味を有する。本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形を含み、その逆もまた同様である。
【0049】
本明細書において使用される用語「抗原結合分子」は、その最も広い意味において、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、抗体、抗体断片、及び足場抗原結合タンパク質である。
【0050】
用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定しないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性及び多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0051】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、例えば、天然に生じる突然変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の製造時に発生し、一般的に少量で存在している可能性のある変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0052】
本明細書で使用される用語「単一特異性」抗体とは、それぞれが同一の抗原の同一のエピトープに結合する1つ又は複数の結合部位を有する抗体を意味する。用語「二重特異性」は、抗原結合分子が少なくとも2つの異なる抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。典型的には、二重特異性抗原結合分子は2つの抗原結合部位を含み、そのそれぞれは異なる抗原決定基に特異的である。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原決定基、特に2つの別個の細胞上に発現した2つの抗原決定基に同時に結合することができる。
【0053】
本出願内で使用される用語「価」は、抗原結合分子における特定数の結合部位の存在を意味する。このように、用語「二価」、「四価」及び「六価」は、抗原結合分子中、それぞれ2つの結合部位、4つの結合部位及び6つの結合部位の存在を意味する。「一価」は、抗原結合分子内の特定の標的に対してただ1つの結合ドメインが存在することを意味する。
【0054】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」は、本明細書中で互換的に使用され、天然抗体構造と実質的に類似の構造を有する抗体を指す。「天然抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgGクラスの抗体は、ジスルフィド結合している2つの軽鎖及び2つの重鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端にかけて、各重鎖は可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、続いて重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端にかけて、各軽鎖は可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる軽鎖定常ドメイン(CL)を有する。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、又はμ(IgM)と呼ばれる5つの種類のうちの1つに割当てることができ、それらのいくつかはさらにサブタイプ、例えばγ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)に分けられる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つの種類のうちの1つに割り当てることができる。
【0055】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、cross-Fab断片;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び単一ドメイン抗体が挙げられる。特定の抗体断片の総説については、Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003)を参照のこと。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthuen, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp. 269-315 (1994)を参照のこと;また、国際公開第93/16185号;及び米国特許第5571894号及び第5587458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期を増加させたFab及びF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片であり、例えば、欧州特許第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003);及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む抗体断片である。特定の実施態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6248516(B1)号を参照のこと)。抗体断片は、本明細書に記載されるように、インタクトな抗体のタンパク分解、並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による生産を含むがこれらに限定されない様々な技術により作製することができる。
【0056】
インタクトな抗体のパパイン消化は、各々が重鎖及び軽鎖可変ドメインと、さらには軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とを含む、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生成する。したがって、本明細書において使用される用語「Fab断片」は、軽鎖(CL)のVLドメイン及び定常ドメインを含む軽鎖断片と、重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)とを含む抗体断片を指す。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’断片である。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)とFc領域の一部とを有するF(ab’)2断片を生成する。
【0057】
用語「cross-Fab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されているFab断片を指す。クロスオーバーFab分子の2つの異なる鎖組成が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方では、Fab重鎖及び軽鎖の可変領域が交換されており、すなわちクロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)からなるペプチド鎖、及び重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)からなるいるペプチド鎖を含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(VLVH)とも呼ばれる。また一方では、Fab重鎖及び軽鎖の定常領域が交換されている場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)からなるペプチド鎖、及び軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)からなるペプチド鎖を含む。このクロスオーバー分子は、CrossFab(CLCH1)とも呼ばれる。
【0058】
「単鎖Fab断片」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、ここで、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端方向に次の順序:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し;ここで前記リンカーは、少なくとも30アミノ酸、好ましくは32~50アミノ酸のポリペプチドである。前記単鎖Fab断片は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合を介して安定化されている。加えて、これらの単鎖Fab分子は、システイン残基(例えばKabat番号付けによる可変重鎖の44位及び可変軽鎖の100位)の挿入を介した鎖間ジスルフィド結合の生成により、さらに安定化される可能性がある。
【0059】
「クロスオーバー単鎖Fab断片」又は「x-scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、ここで前記抗体ドメイン及び前記リンカーはN末端からC末端方向に次の順序:a)VH-CL-リンカー-VL-CH1及びb)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し;ここでVH及びVLは、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を一緒に形成し、前記リンカーは少なくとも30アミノ酸のポリペプチドである。加えて、これらのx-scFab分子は、システイン残基(例えばKabat番号付けによる可変重鎖の44位及び可変軽鎖の100位)の挿入を介した鎖間ジスルフィド結合の生成により、さらに安定化される可能性がある。
【0060】
「単鎖可変断片(scFv)」は、10個から約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドにより連結された抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシンが豊富であり、溶解性のためにセリン又はスレオニンが豊富であり、VHのN末端をVLのC末端に連結するか、又はその逆に連結することができる。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の抗体の特異性を保持する。scFv抗体は、例えば、Houston, J.S., Methods in Enzymol. 203 (1991) 46-96に記載されている。加えて、抗体断片は、VHドメインの特性、すなわちVLドメインと一緒に機能的抗原結合部位へと組み立てられることが可能である特性、又はVLドメインの特性、すなわちVHドメインと一緒に機能的抗原結合部位へと組み立てられることが可能である特性を有し、それにより全長抗体の抗原結合特性を提供する単鎖ポリペプチドを含む。
【0061】
「足場抗原結合タンパク質」は当技術分野で公知であり、例えば、フィブロネクチン及び設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPins)が、抗原結合ドメインのための代替足場として使用されている(例えば、Gebauer and Skerra, Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeuticsを参照のこと)。Curr Opin Chem Biol 13:245-255 (2009) and Stumpp et al., Darpins: A new generation of protein therapeutics. Drug Discovery Today 13: 695-701 (2008)。本発明の一態様では、足場抗原結合タンパク質は、CTLA-4(エビボディ(Evibody))、リポカリン(アンチカリン)、プロテインAのZドメイン(アフィボディ(Affibody)などのプロテインA由来分子、A-ドメイン(アビマー(Avimer)/マキシボディ(Maxibody)、血清トランスフェリン(トランスボディ(trans-body));設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)、抗体軽鎖又は重鎖の可変ドメイン(単一ドメイン抗体、sdAb)、抗体重鎖の可変ドメイン(ナノボディ、aVH)、VNAR断片、フィブロネクチン(アドネクチン(AdNectin))、C型レクチンドメイン(テトラネクチン(Tetranectin));新規抗原受容体β-ラクタマーゼの可変ドメイン(VNAR断片)、ヒトγ-クリスタリン又はユビキチン(アフィリン(Affilin)分子);ヒトプロテアーゼ阻害剤のクニッツ型ドメイン、ノッチンファミリー由来のタンパク質などのミクロボディー、ペプチドアプタマー及びフィブロネクチン(アドネクチン(adnectin))からなる群から選択される。
【0062】
リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質などの小さな疎水性分子を輸送する細胞外タンパク質のファミリーである。それらは、異なる標的抗原に結合するように操作することができる円錐構造の開放端に多数のループを有する強固なβシート二次構造を有する。アンチカリンは、160-180アミノ酸のサイズであり、リポカリンに由来する。さらなる詳細は、Biochim Biophys Acta 1482: 337-350 (2000)、米国特許第7250297(B1)号及び米国特許出願公開第20070224633号を参照のこと。
【0063】
設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPins)は、内在性膜タンパク質の細胞骨格への付着を媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリン(Ankyrin)に由来する。単一のアンキリンリピートは、2つのαヘリックスとβターンとからなる33残基のモチーフである。それらは、各リピートの第1のαヘリックス及びβターンの残基を無作為化することによって、異なる標的抗原に結合するように操作することができる。それらの結合面は、モジュールの数を増加させることによって増大させることができる(親和性成熟の方法)。さらなる詳細は、J. Mol. Biol. 332, 489-503 (2003), PNAS 100(4), 1700-1705 (2003)及びJ. Mol. Biol. 369, 1015-1028 (2007)及び米国特許出願公開第20040132028(A1)号を参照のこと。
【0064】
単一ドメイン抗体は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である。第1の単一ドメインは、ラクダ科の抗体重鎖の可変ドメインに由来するものであった(ナノボディ又はVHH断片)。さらに、単一ドメイン抗体という用語は、自律性ヒト重鎖可変ドメイン(aVH)又はサメ由来のVNAR断片を含む。
【0065】
参照分子と「同じエピトープに結合する抗原結合分子」とは、競合アッセイにおいて参照分子とその抗原との結合を50%以上遮断する抗原結合分子を指し、逆に参照分子は、競合アッセイにおいて抗原結合分子のその抗原に対する結合を50%以上遮断する。
【0066】
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原に特異的に結合し、抗原の一部又は全部に相補的である領域を含む抗原結合分子の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、エピトープと呼ばれる抗原の特定の部分にのみ結合することができる。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の可変ドメイン(可変領域とも呼ばれる)によって提供されてもよい。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0067】
本明細書において使用される用語「抗原決定基」は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分が結合し、抗原結合部分-抗原複合体を形成するポリペプチド巨大分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続的区間又は非連続的アミノ酸の異なる領域から形成される立体構造配置)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面に、ウイルス感染細胞の表面に、他の疾患細胞の表面に、免疫細胞の表面に、血清中に遊離した状態で、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)に見いだすことができる。本明細書の抗原として有用なタンパク質は、他に指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物源由来のタンパク質の任意の天然形態であり得る。特定の実施態様では、抗原はヒトタンパク質である。本明細書において特定のタンパク質が言及される場合、その用語は「完全長」の未処理のタンパク質、並びに細胞内でのプロセシングから生じる任意の形態のタンパク質を包含する。その用語はまた、天然に存在するタンパク質の変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を包含する。
【0068】
「特異的結合」とは、結合が、抗原について選択的であり、望ましくない相互作用又は非特異的相互作用とは区別可能であることを意味する。抗原結合分子の、特定の抗原への結合能は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)又は当業者によく知られた他の技術、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore装置における解析)(Liljeblad et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))、及び古典的結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))により測定することができる。
【0069】
一実施態様では、抗原結合分子の無関係なタンパク質への結合の程度は、例えばSPRによって測定した場合、抗原結合分子の抗原への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、抗原に結合する分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0070】
「親和性」又は「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(KD)によって表され、この解離定数(Kd)は、解離速度定数と会合速度定数(それぞれ、koff及びkon)の比である。したがって、等価な親和性は、速度定数の比率が同じままである限り、異なる速度定数を含み得る。親和性は、本明細書中に記載のものを含む当技術分野で公知である一般的な方法により測定することができる。親和性を測定するための特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0071】
本明細書において使用される「B細胞抗原」は、Bリンパ球、特に悪性Bリンパ球の表面上に存在する抗原決定基を指す(この場合、抗原は「悪性B細胞抗原」とも呼ばれる)。
【0072】
用語「腫瘍関連抗原」は、腫瘍細胞によって又は腫瘍間質において高度に発現される任意の抗原を意味する。特定の腫瘍関連抗原は、CD19又はFAPである。
【0073】
用語「CD19」は、Bリンパ球抗原CD19を指し、Bリンパ球表面抗原B4又はT細胞表面抗原Leu-12としても知られており、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD19を含む。ヒトCD19のアミノ酸配列は、UniProt登録番号P15391(バージョン160、配列番号62)に示されている。この用語は、「完全長」の未処理のヒトCD19並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のヒトCD19を、本明細書に報告される抗体がそれに結合する限りにおいて包含する。CD19は、ヒトB細胞の表面に発現する構造的に異なる細胞表面受容体であり、このB細胞には、限定されないが、プレB細胞、早期発達期のB細胞(すなわち、未成熟B細胞)、形質細胞への終末分化を経た成熟B細胞、及び悪性B細胞が含まれる。CD19は、ほとんどのプレB急性リンパ性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病、一般的な急性リンパ性白血病、及び一部のNull細胞型急性リンパ性白血病によって発現される。形質細胞におけるCD19の発現は、それが多発性骨髄腫などの分化したB細胞腫瘍に発現され得ることをさらに示唆している。したがって、CD19抗原は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病及び/又は急性リンパ性白血病の治療において免疫療法の標的である。
【0074】
「CD20」は、Bリンパ球抗原CD20を指し、Bリンパ球表面抗原B1又は白血球表面抗原Leu-16としても知られており、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD20を含む。ヒトCD20のアミノ酸配列は、UniProt登録番号P11836(バージョン149、配列番号63)に示されている。CD20は、プレB及び成熟Bリンパ球に発現される、約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である。対応するヒト遺伝子は、膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1であり、MS4A1としても知られる。この遺伝子は、膜貫通4A遺伝子ファミリーのメンバーをコードする。この新生タンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴及び類似のイントロン/エクソンのスプライス境界により特徴づけられ、造血細胞及び非リンパ系組織の中に固有の発現パターンを示す。この遺伝子は、B細胞の発生及び形質細胞への分化に役割を果たすBリンパ球表面分子をコードしている。このファミリーメンバーは、ファミリーメンバーのクラスターの中で、11q12に局在する。この遺伝子の選択的スプライシングにより、同じタンパク質をコードする2つの転写変異体が生じる。用語「CD20」は、「完全長」の未処理のCD20だけでなく、細胞内でのプロセシングから生じるあらゆる形態のCD20を包含する。その用語はまた、CD20の天然に生じる変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を含む。
【0075】
用語「抗CD20抗体」及び「CD20に結合する抗体」は、その抗体がCD20を標的とする際に診断薬及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性でCD20に結合することができる抗体を指す。一実施態様では、抗CD20抗体の、無関係な、非CD20タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体のCD20への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、CD20に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様では、抗CD20抗体は、異なる種からのCD20間で保存されているCD20のエピトープに結合する。
【0076】
「II型抗CD20抗体」は、Cragg et al., Blood 103 (2004) 2738-2743; Cragg et al., Blood 101 (2003) 1045-1052, Klein et al., mAbs 5 (2013), 22-33に記載され、以下の表1にまとめられたII型抗CD20抗体の結合特性及び生物活性を有する抗CD20抗体を意味する。
【0077】
【0078】
II型抗CD20抗体の例には、例えば、オビヌツズマブ(GA101)、トシツモマブ(B1)、ヒト化B-Ly1抗体IgG1(国際公開2005/044859号に開示されるようなキメラヒト化IgG1抗体)、11B8 IgG1(国際公開2004/035607号に開示)及びAT80 IgG1が含まれる。
【0079】
一態様では、II型抗CD20抗体は、配列番号73のHCDR1、配列番号74のHCDR2、及び配列番号75のHCDR3を含む重鎖可変領域配列(VHCD20)、並びに配列番号76のLCDR1、配列番号77のLCDR2、及び配列番号78のLCDR3を含む軽鎖可変領域配列(VLCD20)を含む。別の態様では、II型抗CD20抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作されている。一態様では、II型抗CD20抗体のFc領域において、少なくとも約40%のN結合型オリゴ糖が非フコシル化されている。
【0080】
特定の態様では、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブである(推奨国際一般名、WHO Drug Information, Vol. 26, No. 4, 2012, p. 453)。本明細書で使用される場合、オビヌツズマブは、GA101と同義である。商品名は、GAZYVA(登録商標)又はGAZYVARO(登録商標)である。これは、すべての旧バージョン(例えば、Vol. 25, No. 1, 2011, p.75-76)を置き換え、以前はアフツズマブとして知られていたものである(推奨国際一般名、WHO Drug Information, Vol. 23, No. 2, 2009, p. 176; Vol. 22, No. 2, 2008, p. 124)。一態様では、II型抗CD20抗体は、配列番号79の重鎖可変領域配列及び配列番号80の軽鎖可変領域配列を含む。一態様では、II型抗CD20抗体は、トシツモマブである。
【0081】
「I型抗CD20抗体」とは、リツキシマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、PRO131921、ublituximab、HI47 IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6 IgG1(国際公開第2005/103081号に開示)、2F2 IgG1 国際公開第2004/035607号及び同第2005/103081号に開示)及び2H7 IgG1(国際公開第2004/056312号に開示)からなる群から選択される抗CD20抗体を意味する。特定のI型抗CD20抗体は、リツキシマブである。
【0082】
「リツキシマブ」は、ヒトCD20抗原に対する遺伝子操作キメラヒトガンマ1マウス定常ドメイン含有モノクローナル抗体である。このキメラ抗体は、ヒトガンマ1定常ドメインを含み1998年4月17日に発行され、IDEC Pharmaceuticals Corporationに付与された米国特許第5736137号(Andersen等)の「C2B8」という名称で同定されている。リツキシマブは、再発性又は難治性の低悪性度又は濾胞性のCD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療に対して承認されている。in vitro作用機序研究は、リツキシマブがヒト補体依存性細胞傷害性(CDC)を呈することを示している(Reff, M.E., et. al., Blood 83 (1994) 435-445)。加えて、リツキシマブは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を測定するアッセイにおいて有意な活性を示す。リツキシマブはアフコシル化されていない。
【0083】
用語「ヒト化B-Ly1抗体」は、IgG1由来のヒト定常ドメインとのキメラ化及びその後のヒト化によって、マウスモノクローナル抗CD20抗体B-Ly1(マウス重鎖の可変領域(VH):配列番号64;マウス軽鎖の可変領域(VL):配列番号65)(Poppema, S. and Visser, L., Biotest Bulletin 3(1987) 131-139を参照)から得られた、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に開示されているようなヒト化B-Ly1抗体を指す(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号参照)。これらの「ヒト化B-Ly1抗体」は、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に詳細に開示されている。
【0084】
用語「線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)」は、プロリルエンドペプチダーゼFAP又はセプラーゼ(EC3.4.21)としても知られ、特に明記しない限り、霊長類(例えば、ヒト)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然FAPを指す。その用語は、「完全長」の未処理のFAP並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のFAPを包含する。この用語は、天然に存在するFAPの変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体も包含する。一実施態様では、本発明の抗原結合分子は、ヒト、マウス及び/又はカニクイザルFAPに特異的に結合することができる。ヒトFAPのアミノ酸配列はUniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号Q12884(バージョン149、配列番号120)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_004451に示されている。ヒトFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から760に及ぶ。Hisタグ付きヒトFAP ECDのアミノ酸配列は、配列番号121に示されている。マウスFAPのアミノ酸配列は、UniProtアクセッション番号P97321(バージョン126、配列番号122)、又はNCBI RefSeq NP_032012に示されている。マウスFAPの細胞外ドメイン(ECD)は、アミノ酸位置26から761に及ぶ。配列番号123は、Hisタグ付きマウスFAP ECDのアミノ酸配列を示している。配列番号124は、Hisタグ付きカニクイザルFAP ECDのアミノ酸配列を示している。好ましくは、本発明の抗FAP結合分子はFAPの細胞外ドメインに結合する。例示的な抗FAP結合分子は、国際特許出願番号WO2012/020006A2に記載されている。
【0085】
用語「減少/低減(reduction)」(及びその文法的変形、例えば「減少する/低減する(reduce/reducing)」)、例えばB細胞の数の減少又はサイトカイン放出の低減は、当技術分野において公知の適切な方法によって測定される、それぞれの量の減少を指す。明確にするために、この用語には、ゼロ(又は分析方法の検出限界未満)への減少、すなわち完全な消失又は排除も含まれる。逆に、「増加/増大した(increased)とは、それぞれの量の増加を指す。
【0086】
本明細書において使用される「T細胞抗原」は、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面に提示される抗原決定基を指す。
【0087】
本明細書において使用される「T細胞活性化治療剤」は、対象においてT細胞活性化を誘導することができる治療剤、特に対象においてT細胞活性化を誘導するために設計された治療剤を指す。T細胞活性化治療剤の例には、CD3などの活性化T細胞抗原、及びCD20又はCD19などの標的細胞抗原に特異的に結合する二重特異性抗体が含まれる。さらなる例には、T細胞活性化ドメインと、CD20又はCD19といった標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分とを含むキメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。
【0088】
本明細書において使用される「活性化T細胞抗原」は、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球によって発現される抗原決定基を指し、これは抗原結合分子との相互作用によりT細胞活性化を誘導又は増強することができる。具体的には、抗原結合分子と活性化T細胞抗原との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達カスケードをトリガーすることにより、T細胞活性化を誘導することができる。例示的な活性化T細胞抗原はCD3である。
【0089】
用語 「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗原結合分子の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は、一般的に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照のこと。抗原結合特異性を付与するためには、単一のVH又はVLドメインで十分な場合がある。
【0090】
本明細書で使用される用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変であり、かつ/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般に、天然の4鎖抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。HVRは、一般的に超可変ループ由来及び/又は相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は最も高い配列可変性を有し、かつ/又は抗原認識に関与している。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3)において生じる(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24-34、L2の50-56、L3の89-97、H1の31-35B、H2の50-65及びH3の95-102において生じる(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。超可変領域(HVR)は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の部分に関して本明細書では互換的に使用される。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」 (1983)及びChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)に記載されており、ここでの定義には、互いに対して比較されたときのアミノ酸残基の重複又はサブセットが含まれる。それにもかかわらず、抗体又はその変異体のCDRを指す定義のいずれかの適用は、本明細書で定義され、使用される用語の範囲内であることを意図している。上記で引用した参考文献のそれぞれによって定義されるCDRを含む適切なアミノ酸残基を、比較として以下の表Bに示す。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列及び大きさに応じて変わるであろう。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられれば、どの残基が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
【0091】
【0092】
また、Kabatらは、任意の抗体に適用可能な可変領域配列のための番号付けシステムを定義した。当業者は、配列自体を超える実験データに依存することなく、この「Kabat番号付け」のシステムを任意の可変領域配列に明確に割り当てることができる。ここで使用される「Kabat番号付け」は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, ”Sequence of Proteins of Immunological Interest” (1983)によって示された番号付けシステムを指す。特に明記しない限り、抗体可変領域内の特定のアミノ酸残基位置の番号付けへの参照は、Kabat番号付けシステムに従っている。
【0093】
VHのCDR1を除いて、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原と接触する残基である「特異性決定残基」又は「SDR」を含む。SDRは、短縮型(abbreviated-)CDR又はa-CDRと称されるCDRの領域内に含まれている。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2及びa-CDR-H3)は、L1のアミノ酸残基31-34、L2の50-55、L3の89-96、H1の31-35B、H2の50-58及びH3の95-102において生じる(Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照)。特に明記しない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらに従って番号付けされている。
【0094】
本明細書において抗原結合分子(例えば抗体)の文脈で使用される用語「親和性成熟」は、参照抗原結合分子に由来し、例えば変異により、参照抗体と同じ抗原に、好ましくは同じエピトープに結合し;参照抗原結合分子の抗原に対する親和性よりも高い親和性を有する抗原結合分子を指す。親和性成熟は一般に、抗原結合分子の1つ又は複数のCDRにおける1つ又は複数のアミノ酸残基の修飾を含む。典型的には、親和性成熟抗原結合分子は、最初の参照抗原結合分子と同じエピトープに結合する。
【0095】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR配列及びFR配列は一般に、VH(又はVL)の次の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4に現れる。
【0096】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含み得るか、又はそれはアミノ酸配列の変化を含み得る。いくつかの実施態様では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0097】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0098】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体には5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA1、及びIgA2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0099】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここではHVR(例えば、CDR)のすべて又は実質的にすべてが非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべて又は実質的にすべてがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定数領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を遂げた抗体を指す。本発明により包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して本発明による特性を生成するように定常領域が追加的に修飾されているもの又は元の抗体から変更されているものである。
【0100】
「ヒト」抗体は、ヒト又はヒト細胞により産生されるか、又はヒト抗体のレパートリーや他のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト起源に由来する抗体のものに対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0101】
本明細書の用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。IgG Fc領域は、IgG CH2及びIgG CH3ドメインを含む。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基に及ぶ。一実施態様では、糖鎖がCH2ドメインに結合している。本明細書のCH2ドメインは、天然配列CH2ドメイン又は変異体CH2ドメインであり得る。「CH3ドメイン」は、Fc領域のC末端からCH2ドメインまでのひと続きの残基(すなわち、IgGの約341位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基まで)を含む。本明細書におけるCH3領域は、天然配列のCH3ドメイン又は変異体CH3ドメイン(例えば、一方の鎖に「隆起」(「ノブ」)が導入され、他方の鎖に対応する「空洞」(「ホール」)が導入されたCH3ドメイン;参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5821333号を参照)であり得る。そのような変異体CH3ドメインは、本明細書に記載されるように、2つの同一でない抗体重鎖のヘテロ二量体化を促進するために使用され得る。一実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から重鎖のカルボキシル末端にまで及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても、存在しなくてもよい。本明細書に特に明記しない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従っている。
【0102】
ノブ・イントゥー・ホール技術は、例えば、米国特許第5731168号;米国特許第7695936号;Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)及びCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載される。一般に、この方法は、第1のポリペプチドの接触面において隆起(「ノブ」)及び第2のポリペプチドの接触面において対応する空洞(「ホール」)を導入することを含み、その結果、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるように、隆起が空洞内に配置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの接触面から小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と置換することによって構築される。隆起と同一か又は類似のサイズの相補的空洞が、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置換することによって、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的変異誘発により、又はペプチド合成により改変することにより作り出すことができる。特定の実施態様では、ノブ修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方にアミノ酸置換T366Wを含み、ホール修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのもう一方にアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。さらなる特定の実施態様では、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換S354Cをさらに含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換Y349Cをさらに含む。これら2つのシステイン残基の導入は、Fc領域の2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成をもたらし、したがって二量体をさらに安定化する(Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
【0103】
「免疫グロブリンのFc領域と同等の領域」は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子変異体、並びに置換、付加、又は欠失を生じさせるが、免疫グロブリンのエフェクター機能(抗体依存性細胞傷害など)の媒介能を実質的に低下させない改変を有する変異体を含むことを意図している。例えば、1つ又は複数のアミノ酸を、免疫グロブリンのFc領域のN末端又はC末端から、生物学的機能を実質的に失うことなく欠失させることができる。そのような変異体は、活性に対する影響が最小限であるように、当技術分野で公知の一般的な規則に従って選択することができる(例えば、Bowie, J. U. et al., Science 247:1306-10 (1990)を参照のこと)。
【0104】
用語「エフェクター機能」は、抗体のアイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介抗原取り込み、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞の活性化が含まれる。
【0105】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域の結合に続いて、エフェクター機能を実行するように受容体保有細胞を刺激するシグナル伝達現象を生じさせるFc受容体である。活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)が含まれる。特定の活性化Fc受容体は、ヒトFcγRIIIaである(UniProtアクセッション番号P08637、バージョン141を参照)。
【0106】
本明細書において使用される用語「エフェクター細胞」は、エフェクター部分受容体、例えばサイトカイン受容体、及び/又はFc受容体を表面上に提示し、それによりエフェクター部分、例えばサイトカイン、及び/又は抗体のFc領域に結合して標的細胞、例えば腫瘍細胞の破壊に寄与するリンパ球の集団を指す。エフェクター細胞は、例えば細胞傷害性又は食作用効果を媒介する。エフェクター細胞には、限定されないが、エフェクターT細胞、例えばCD8+細胞傷害性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、γδT細胞、NK細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞及びマクロファージ/単球が含まれる。
【0107】
「エクトドメイン」は、細胞外空間(すなわち標的細胞外の空間)中に延びる膜タンパク質のドメインである。エクトドメインは通常、表面との接触を開始するタンパク質の部分であり、シグナル伝達をもたらす。したがって、本明細書で定義される4-1BBLのエクトドメインは、細胞外空間(細胞外ドメイン)中に延びる4-1BBLの部分を指すが、三量体化及び対応する受容体4-1BBへの結合に関与するそのより短い部分又はその断片も含まれる。したがって、用語「4-1BBLのエクトドメイン又はその断片」は、細胞外ドメインを形成する4-1BBLの細胞外ドメイン又は受容体に依然として結合することができるその部分(受容体結合ドメイン)を指す。
【0108】
「4-1BBL」又は「4-1BBリガンド」又は「CD137L」は、T細胞の増殖及びサイトカイン産生を共刺激することができる共刺激性TNFリガンドファミリーメンバーである。共刺激性TNFファミリーリガンドは、対応するTNF受容体と相互作用するとTCRシグナルを共刺激することができ、それらの受容体との相互作用は、T細胞活性化をもたらすシグナル伝達カスケードを開始するTNFR関連因子(TRAF)の動員につながる。4-1BBLはII型膜貫通タンパク質である。配列番号66のアミノ酸配列を有する完全又は完全長4-1BBLは、細胞の表面上に三量体を形成することが記載されている。三量体の形成は、4-1BBLのエクトドメインの特定のモチーフにより可能になる。前記モチーフは、本明細書では、「三量体化領域」と命名される。ヒト4-1BBL配列(配列番号67)のアミノ酸50-254は、4-1BBLの細胞外ドメインを形成するが、その断片も三量体を形成することができる。本発明の特定の実施態様では、用語「4-1BBLのエクトドメイン又はその断片」は、配列番号4(ヒト4-1BBLのアミノ酸52-254)、配列番号1(ヒト4-1BBLのアミノ酸71-254)、配列番号3(ヒト4-1BBLのアミノ酸80-254)、配列番号2(ヒト4-1BBLのアミノ酸85-254)、配列番号5(ヒト4-1BBLのアミノ酸71-248)、配列番号6(ヒト4-1BBLのアミノ酸85-248)、配列番号7(ヒト4-1BBLのアミノ酸80-248)及び配列番号8(ヒト4-1BBLのアミノ酸52-248)から選択されるアミノ酸を有するポリペプチドを指すが、三量体化が可能なエクトドメインの他の断片も本明細書に含まれる。
【0109】
本明細書で使用される用語「4-1BB」又は「CD137」は、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス、ラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然4-1BBを指す。その用語は、「完全長」の未処理の4-1BBだけでなく、細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態の4-1BBを含む。その用語はまた、4-1BBの天然に生じる変異体、例えば、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体を含む。例示的なヒト4-1BBのアミノ酸配列は、配列番号68(UniProt登録番号Q07011)に示されており、例示的なマウス4-1BBのアミノ酸配列は配列番号69(UniProt登録番号P20334)に示されており、例示的なカニクイザル4-1BBのアミノ酸配列(アカゲザル由来)は配列番号70(UniProt登録番号F6W5G6)に示されている。
【0110】
用語「抗4-1BB抗体」、「抗4-1BB」、「4-1BB抗体」及び「4-1BBに特異的に結合する抗体」は、その抗体が4-1BBを標的とする際に診断薬及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性で4-1BBに結合することができる抗体を指す。一実施態様では、抗4-1BB抗体の、無関係な、非4-1BBタンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又はフローサイトメトリー(FACS)によって測定される場合、抗体の4-1BBへの結合の約10%未満である。特定の実施態様では、4-1BBに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-6M以下、例えば10-68Mから10-13M、例えば10-8Mから10-10M)の解離定数(KD)を有する。例えば、ウレルマブは抗体20H4.9に由来する抗4-1BB抗体である。
【0111】
用語「ペプチドリンカー」は、1つ又は複数のアミノ酸、典型的には約2から20個のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは当技術分野において公知であるか、又は本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(G4S)n、(SG4)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーであり、ここで「n」は通常1から10、典型的には2から4の数字、特に2であり、すなわち、GGGGS(配列番号81)、GGGGSGGGGS(配列番号82)、SGGGGSGGGG(配列番号83)及びGGGGSGGGGSGGGG(配列番号84)から成る群から選択されるペプチドであるが、配列GSPGSSSSGS(配列番号85)、(G4S)3(配列番号86)、(G4S)4(配列番号87)、GSGSGSGS(配列番号88)、GSGSGNGS(配列番号89)、GGSGSGSG(配列番号90)、GGSGSG(配列番号91)、GGSG(配列番号92)、GGSGNGSG(配列番号93)、GGNGSGSG(配列番号94)及びGGNGSG(配列番号95)も含む。特に興味深いペプチドリンカーは、(G4S)(配列番号81)及び(G4S)2(配列番号82)である。
【0112】
本出願の中で使用される場合、用語「アミノ酸」は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、及びバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシαアミノ酸の群を意味する。
【0113】
「融合された」又は「連結された」とは、成分(例えば、4-1BBLのエクトドメイン及びポリペプチド)が、直接又は1つ又は複数のペプチドリンカーを介して、ペプチド結合によって連結されることを意味する。
【0114】
参照ポリペプチド(タンパク質)配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大の配列同一性パーセントを得るように配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当分野の技術の範囲内にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN.SAWI又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。また、ALIGN-2は、ジェネンテック社、サウスサンフランシスコ、カリフォルニアから公的に入手可能であるか、又はそのソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標)のV4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされていなければならない。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Aは、所与のアミノ酸配列Bと、又はそれに対して特定の%アミノ酸配列同一性を有するか又は含む所与のアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
100×分率X/Y
ここで、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2により、そのプログラムのAとBとの配列比較において、完全一致を記録したアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用し、直前の段落で説明したように得られる。
【0115】
特定の実施態様では、本明細書に提供される抗原結合分子のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗原結合分子の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗原結合分子のアミノ酸配列変異体は、分子をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、又はペプチド合成により調製することができる。そのような修飾には、例えば抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれへの挿入、及び/又はそれの置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを、最終構築物が所望の特性、例えば、抗原結合を有することを条件として、最終構築物に到達するために行うことができる。置換突然変異誘発のための目的の部位には、HVR及びフレームワーク(FR)が含まれる。保存的置換は、表Cにおいて「好ましい置換」の見出しの下で提供され、アミノ酸側鎖クラス(1)~(6)を参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換を目的の分子に導入することができ、その生成物を、所望の活性、例えば抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングすることができる。
【0116】
【0117】
アミノ酸は共通の側鎖特性に従ってグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe.
【0118】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを必要とするであろう。
【0119】
用語「アミノ酸配列変異体」は、親抗原結合分子(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ又は複数の超可変領域残基にアミノ酸置換が存在する実質的変異体を含む。一般に、さらなる研究のために選択された得られた変異体は、親抗原結合分子と比較して、特定の生物学的特性の修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有し、かつ/又は親抗原結合分子の特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例示的な置換変異体は、親和性成熟抗体であり、例えば、本明細書に記載のものなどファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して簡便に生成することができる。簡潔には、1つ又は複数のCDR残基が変異され、変異体抗原結合分子がファージ上に提示され、特定の生物活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。特定の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、そのような改変が抗原結合分子が抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ又は複数のCDRで起こり得る。例えば、実質的に結合親和性を低減させない保存的改変(例えば本明細書において提供される保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。突然変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085により記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基のうちの残基又は群(例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGluなどの荷電残基)が同定され、抗原と抗体との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)により置換される。そのアミノ酸位置にさらなる置換を導入して、最初の置換に対する機能的感受性を実証することができる。別法として又はそれに加えて、抗体と抗原との接触点を特定するための抗原-抗原結合分子複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされてもよいし、又は排除されてもよい。変異体は、所望の特性を含むかどうかを判定するためにスクリーニングされ得る。
【0120】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗原結合分子が含まれる。分子の他の挿入変異体には、抗原結合分子の血清半減期を増加させるポリペプチドへのN末端又はC末端への融合が含まれる。
【0121】
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗原結合分子は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように改変される。分子のグリコシル化変異体は、1つ又は複数のグリコシル化部位が生成又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって簡便に得ることができる。抗原結合分子がFc領域を含む場合、それに結合している糖は改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって通常結合している分枝状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照。オリゴ糖には、様々な糖、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施態様では、特定の改善された特性を有する変異体を作製するために、抗原結合分子中のオリゴ糖の修飾が行われ得る。一態様では、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合するフコースを欠いた糖鎖構造を有する抗原結合分子の変異体が提供される。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.)又は米国特許出願公開第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照のこと。本発明の抗原結合分子のさらなる変異体は、二分されたオリゴ糖を含むもの、例えば、Fc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されているものを含む。そのような変異体は、フコシル化が低減されている可能性があり、かつ/又は改善されたADCC機能を有する可能性がある。例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet等);米国特許第6602684号(Umana等);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana等)を参照のこと。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有してもよく、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel等);国際公開第1998/58964号(Raju, S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju, S.)に記載されている。
【0122】
特に接頭辞「糖(glyco)」を伴う「操作」、並びに用語「グリコシル化操作」は、細胞内で発現される糖タンパク質のグリコシル化の変化を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝子操作を含む、細胞のグリコシル化機構の代謝操作を含む。さらに、グリコシル化操作には、グリコシル化に対する変異と細胞環境の影響が含まれる。一実施態様では、グリコシル化操作は、グリコシルトランスフェラーゼ活性の改変である。特定の実施態様では、操作は、グルコサミニルトランスフェラーゼ活性及び/又はフコシルトランスフェラーゼ活性の改変をもたらす。グリコシル化操作を使用して、「増加したGnTIII活性を有する宿主細胞」(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作された宿主細胞)、「増加したManII活性を有する宿主細胞」(例えば、α-マンノシダーゼII(ManII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作された宿主細胞)、又は「低減したα(1,6)フコシルトランスフェラーゼ活性を有する宿主細胞」(例えば低減したレベルのα(1,6)フコシルトランスフェラーゼを発現するように操作された宿主細胞)を得ることができる。
【0123】
本明細書において使用される用語「GnTIII活性を有するポリペプチド」は、N結合型オリゴ糖のトリマンノシルコアのβ結合型マンノシドへのβ-1,4の結合中のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒することができるポリペプチドを指す。これには、特定の生物学的アッセイで測定した場合に、用量依存性あり又はなしで、国際生化学分子生物学連合の命名委員会(NC-IUBMB)によればβ-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-ベータ-N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼ(EC2.4.1.144)としても知られる、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性に必ずしも同一ではないが類似の酵素活性を示す融合ポリペプチドが含まれる。用量依存性が存在する場合、それはGnTIIIのものと同一である必要はなく、むしろGnTIIIと比較して所与の活性における用量依存性と実質的に類似している必要がある(すなわち、候補ポリペプチドは、GnTIIIと比較して、より高い活性を示すか、又は約25分の1以下、好ましくは約10分の1以下の活性、最も好ましくは約3分の1以下の活性を示すであろう)。
【0124】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による抗体被覆標的細胞の溶解につながる免疫機構である。標的細胞は、一般にFc領域のN末端であるタンパク質部分を介して、Fc領域を含む抗体又はその断片が特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される用語「増加した/減少したADCC」は、標的細胞を囲む媒質中の所定の抗体濃度において、上記に定義したADCCの機構により所定の時間内に溶解する標的細胞数の増加/減少、及び/又はADCCの機構により所定の時間内に所定の数の標的細胞を溶解させるために必要な、標的細胞を囲む媒質中の抗体濃度の低下/上昇のいずれかと定義される。増加した/減少したADCCは、同じ標準的な生成、精製、製剤化、及び貯蔵方法(当業者に既知の)を用いて、但し改変されていない、同じ型の宿主細胞により産生される同じ抗体により媒介されるADCCに対するものである。例えば、本明細書に記載の方法により、改変されたグリコシル化パターンを有するように(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、GnTIII、又は他のグリコシルトランスフェラーゼを発現するように)操作された宿主細胞によって産生される抗体によって媒介されるADCCの増加は、同じ種類の非操作宿主細胞によって産生された同じ抗体によって媒介されるADCCに対するものである。
【0125】
特定の態様では、本発明は、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を有し、それにより、in vivoにおける抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(例えば補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC))が不要又は有害である用途のための望ましい候補となる、抗体変異体を意図している。in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを、CDC及び/又はADCCの活性の低下/枯渇を確認するために実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体が、FcγR結合を欠く(したがっておそらくADCC活性を欠く)がFcRn結合能力を保持することを確かめることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、一方単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例が、米国特許第5500362号;Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985);米国特許第5821337号;Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えばフローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WIを参照のこと)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは又はそれに加えて、目的の分子のADCC活性は、Clynes et al., PNAS USA 95:652-656 (1998)に開示されるように、例えば動物モデルにおいてin vivoで評価することができる。抗体がC1qに結合できず、したがってCDC活性を欠いていることを確認するために、C1q結合アッセイを実施することもできる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996); Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照のこと)。FcRn結合及びin vivoでのクリアランス/半減期の決定も、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova, S.B. et al., Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006);国際公開第2013/120929号を参照のこと)。
【0126】
エフェクター機能が低下した抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ又は複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6737056号)。このようなFc変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含め、アミノ酸265、269、270、297及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7332581号)。FcRへの結合が改善又は減少した特定の抗体変異体が記載されている。(例えば、米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照)。特定の実施態様では、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えばFc領域の298、333及び/又は334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。
【0127】
特定の態様では、抗体変異体は、FcγR結合を減少させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の234位及び235位での置換(残基のEU番号付け)を有するFc領域を含む。一態様では、置換はL234AとL235A(LALA)である。特定の態様では、抗体変異体は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内にD265A及び/又はP329Gをさらに含む。一態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のL234A、L235A及びP329G(LALA-PG)である(例えば、国際公開第2012/130831号を参照のこと)。別の態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のL234A、L235A及びD265A(LALA-DA)である。
【0128】
いくつかの実施態様では、Fc領域において、例えば米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に記載のように、改変された(すなわち改善されたか減少した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす改変がなされる。
【0129】
半減期が延長され、胎児への母性IgGの移動を担う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))新生児Fc受容体(FcRn)への結合性が改善された抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hinton等)に記述されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つ又は複数の置換を伴うFc領域を含む。このようなFc変異体には、Fc領域残基238、252、254、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ又は複数における置換を有するものが含まれる(例えば米国特許第7371826号;Dall’Acqua, W.F., et al. J. Biol. Chem. 281 (2006) 23514-23524を参照)。
【0130】
特定の態様では、抗体変異体は、FcRn結合を低減する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の253位、及び/又は310位、及び/又は435位(残基のEU番号付け)における置換を含むFc領域を含む。特定の態様では、抗体変異体は、253位、310位及び435位にアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のI253A、H310A及びH435Aである。例えば、Grevys, A., et al., J. Immunol. 194 (2015) 5497-5508を参照のこと。
【0131】
別の態様では、抗体変異体は、FcRn結合を低減する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の310位、及び/又は433位、及び/又は436位(残基のEU番号付け)における置換を含むFc領域を含む。特定の態様では、抗体変異体は、310位、433位及び436位にアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のH310A、H433A及びY436Aである(例えば、国際公開第2014/177460を参照のこと)。
【0132】
特定の態様では、抗体変異体は、FcRn結合を増大させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の252位、及び/又は254位、及び/又は256位(残基のEU番号付け)における置換を含むFc領域を含む。特定の実施態様では、抗体変異体は、252位、254位及び256位にアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一実施態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のM252Y、S254T及びT256Eである(Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5648260号;同第5624821号;及びFc領域変異体の他の例については国際公開第94/29351号も参照のこと)。
【0133】
特定の実施態様では、本発明の抗原結合分子のシステイン操作変異体(cysteine engineered variant)、例えば分子の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換された「thioMAb」を作成することが望ましい場合がある。特定の実施態様では、置換される残基は分子の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能な部位に配置され、その反応性チオール基を使用して抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分に結合させ、イムノコンジュゲートを作成することができる。特定の実施態様では、以下の残基のうちのいずれかの1つ又は複数がシステインで置換される:軽鎖のV205(Kabatの番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗原結合分子は、例えば、米国特許第7521541号に記載のように生成され得る。
【0134】
特定の態様では、本明細書に提供される抗原結合分子は、当技術分野で公知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むようにさらに修飾することができる。抗体の誘導体化に適した部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例は、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール並びにこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはその水中での安定性のために製造上の利点を有し得る。ポリマーは任意の分子量のものであってよく、分枝鎖又は非分枝鎖であってよい。抗体に付着するポリマーの数は変化してよく、1つを超えるポリマーが付着する場合、それらは同じ分子でも又は異なる分子でもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、二重特異性抗体誘導体が限定条件下での治療に使用されるかどうかなどを含むが、これらに限定されない考慮事項に基づいて決定することができる。別の態様では、抗体と、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600-11605)。放射線は、任意の波長であってよく、限定しないが、通常の細胞に害を与えないが抗体-非タンパク質部分の近位細胞を死滅させる温度に非タンパク質部分を加熱する波長を含む。別の態様では、本明細書に提供される4-1BBL含有抗原結合分子のイムノコンジュゲートが得られる。「イムノコンジュゲート」は、細胞傷害性剤を含むがそれに限定されない、1つ又は複数の異種分子にコンジュゲートした抗体である。
【0135】
用語「ポリヌクレオチド」は、単離された核酸分子又はコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来RNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、一般的なホスホジエステル結合又は非一般的な結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含み得る。用語「核酸分子」は、ポリヌクレオチド中に存在する、任意の1つ又は複数の核酸セグメント、例えばDNA又はRNA断片を指す。
【0136】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出された核酸分子、DNA又はRNAを意味する。例えば、ベクターに含まれるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを、本発明の目的のために単離することが考慮される。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞内に維持される組換えポリヌクレオチド、又は溶液中の(部分的に又は実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子を通常含む細胞に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、そのポリヌクレオチド分子は、染色体外に、又は天然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。単離されたRNA分子は、in vivo又はin vitroの本発明のRNA転写物、並びにプラス鎖型及びマイナス鎖型、及び二重鎖型を含む。本発明の単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、合成により生成されたそのような分子をさらに含む。さらに、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーターなどの調節エレメントであり得るか、又はそれらを含み得る。
【0137】
本発明の参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば、95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチド配列がその参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドごとに5個までの点突然変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列がその参照配列と同一であることを意味する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中最大5%のヌクレオチドが削除され又は別のヌクレオチドで置換されても良く、又は参照配列に含まれるすべてのヌクレオチドの最大5%までの複数のヌクレオチドが参照配列に挿入されてもよい。参照配列のこのような改変は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置で、又はこれら末端位置の間のどの位置で起こってもよく、参照配列中の残基間に個々に散在してもよいし、又は参照配列内に1つ若しくは複数の連続した群として散在してもよい。実際問題として、特定のポリヌクレオチド配列が本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、ポリペプチドについて上述したもの(例えばALIGN-2)などの既知のコンピュータプログラムを用いて慣例的に判定することができる。
【0138】
用語「発現カセット」は、組換え的又は合成的に生成されたポリヌクレオチドであって、標的細胞における特定の核酸の転写を可能にする一連の指定された核酸要素を有するものを指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、又は核酸断片中に組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、他の配列の中でも、転写される核酸配列及びプロモーターが含まれる。特定の実施態様では、本発明の発現カセットは、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。
【0139】
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、「発現コンストラクト」と同義であり、標的細胞内においてそれが作動可能に結合する特定の遺伝子を導入し、その発現を誘導するために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、大量の安定なmRNAの転写を可能にする。発現ベクターが標的細胞内部に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質が、細胞の転写及び/又は翻訳機構により産生される。一実施態様では、本発明の発現ベクターは、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む発現カセットを含む。
【0140】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、それには初代形質転換細胞及び、継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含んでいてもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が本明細書において含まれる。宿主細胞は、本発明の二重特異性抗原結合分子を生成するために使用することができる任意の種類の細胞系である。宿主細胞には、培養細胞、例えばいくつか例を挙げると、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞等の哺乳動物の培養細胞、又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び植物細胞が含まれるだけでなく、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養された植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞も含まれる。
【0141】
薬剤の「有効量」は、それが投与される細胞又は組織中に生理的変化をもたらすために必要な量を指す。
【0142】
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。治療的有効量の薬剤は、疾患の有害作用を、例えば、排除する、減少させる、遅延させる、最小化する、又は防止する。
【0143】
「個体」又は「対象」とは、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。特に、個体又は対象はヒトである。
【0144】
用語「薬学的組成物」は、その中に含まれる活性成分の生物活性が有効であることを可能にするような形態であって、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である付加的成分を含まない調製物を指す。
【0145】
「薬学的に許容される添加物」は、薬学的組成物中の活性成分以外の成分で、対象に対して非毒性である成分を指す。薬学的に許容される添加物には、限定されないが、バッファー、安定剤又は保存剤が含まれる。
【0146】
用語「添付文書」は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、そのような治療製品の適応症、用法、用量、投与、併用療法、使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
【0147】
本明細書で用いられる場合、「治療(treatment)」(及び「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」など、その文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために行うことも、臨床病理の過程において行うこともできる。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様では、本発明の分子は、疾患の発症を遅延させるか、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0148】
本明細書において用いられる用語「がん」は、リンパ腫又はリンパ性白血病、又は黒色腫といった増殖性疾患を指す。
【0149】
「B細胞増殖性疾患」とは、健康な対象のB細胞の数と比較して、患者のB細胞の数が増加する疾患、特に、B細胞の数の増加が病気の原因又は特徴である疾患を意味する。「CD20陽性B細胞増殖性疾患」は、B細胞、特に(通常のB細胞に加えて)悪性B細胞がCD20を発現するB細胞増殖性疾患である。例示的なB細胞増殖性疾患には、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、並びにいくつかの種類の多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)が含まれる。
【0150】
本発明における使用のための例示的4-1BBアゴニスト
特に、抗CD20抗体と組み合わせて使用される、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、4-1BBLを含む分子である。特に、本発明で使用される4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む。
【0151】
特定の態様では、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む分子であり、ここで、4-1BBLのエクトドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0152】
本明細書では、4-1BBアゴニストが、腫瘍標的、特にB細胞上の標的に特異的な抗原結合ドメインを含む場合に特に有用であることが示されている。したがって、別の態様では、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子である。
【0153】
本明細書ではさらに、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストが、CD19によりB細胞中に内部移行されず、したがって腫瘍微小環境と相互作用する能力を失わなかったことが示された。さらなる態様では、B細胞に内部移行されず、それによってその活性を維持する4-1BBアゴニストが提供される。
【0154】
別の態様では、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、cyno-交差反応性であり、すなわち、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、ヒト及びカニクイザルCD19に特異的に結合する。
【0155】
さらなる態様では、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は
(b)(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン
を含む。
【0156】
特定の態様では、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインを含む。
【0157】
さらなる態様では、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むか、又は、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含む。より具体的には、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含む。
【0158】
別の態様では、4-1BBアゴニストは、安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインをさらに含む抗原結合分子である。一態様では、4-1BBアゴニストは、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である。特に、4-1BBアゴニストは、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である。特定の態様では、4-1BBアゴニストは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む抗原結合分子である。
【0159】
一態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む。
【0160】
特定の態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、
(i)第1のポリペプチドがCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドがCL又はCH1ドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH1又はCLドメインに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドがCH3ドメインを、第2のポリペプチドがCH3ドメインを、それぞれ含み、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH3ドメインのC末端に連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドがVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドがVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びVH又はVLに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする。
【0161】
別の態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0162】
特定の態様では、4-1BBアゴニストは、
a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖及び配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
d)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号50のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
j)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
k)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;並びに
l)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である。
【0163】
別の態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド
を含む抗原結合分子である。
【0164】
一態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド、及び
(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む抗原結合分子であり、ここで、ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチドは、任意選択的にペプチドリンカーを介して、Fcドメインの2つのサブユニットの一方のN又はC末端アミノ酸に融合される。
【0165】
特定の態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(c)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号54のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、及び
(d)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号55のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である。
【0166】
さらなる態様では、4-1BBアゴニストは抗CD19/抗4-1BB二重特異性抗体である。
【0167】
さらなる態様では、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子であり、ここで、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号96のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号97のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号98のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号99のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号100のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号101のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)、又は
(b)(i)配列番号102のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号103のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号106のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号107のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)
を含む。
【0168】
特定の態様では、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、(i)配列番号102のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号103のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHFAP)、並びに(iv)配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号106のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号107のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む。
【0169】
さらなる態様では、4-1BBアゴニストは、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子であり、ここで、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)及び配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含むか、又は、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)及び配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む。より具体的には、FAPに特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHFAP)及び配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLFAP)を含む。
【0170】
別の態様では、4-1BBアゴニストは、安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインをさらに含む抗原結合分子である。一態様では、4-1BBアゴニストは、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である。特に、4-1BBアゴニストは、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である。特定の態様では、4-1BBアゴニストは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む抗原結合分子である。
【0171】
一態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む。
【0172】
特定の態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、
(i)第1のポリペプチドがCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドがCL又はCH1ドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH1又はCLドメインに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドがCH3ドメインを、第2のポリペプチドがCH3ドメインを、それぞれ含み、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH3ドメインのC末端に連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドがVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドがVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びVH又はVLに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする。
【0173】
特定の態様では、4-1BBアゴニストは、配列番号112のアミノ酸配列を含む第1の重鎖を含む分子、配列番号113のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖からなる群から選択される抗原結合分子である。
【0174】
別の態様では、4-1BBアゴニストは、
(a)FAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド
を含む抗原結合分子である。
【0175】
特定の二重特異性抗体は、PCT公開番号WO2016/075278A1又はPCT公開番号WO2016/156291A1に記載されている。
【0176】
さらなる態様では、4-1BBアゴニストは抗FAP/抗4-1BB二重特異性抗体である。
【0177】
本発明における使用のための抗原結合分子の調製
特定の態様では、組み合わせで使用される治療剤は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体を含む。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の態様では、結合特異性は異なる抗原に対するものである。特定の態様では、結合特異性は、同じ抗原上の異なるエピトープに対するものである。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0178】
多重特異性抗体を作製するための技術には、限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照)及び「ノブ・イン・ホール」エンジニアリング(例えば、米国特許第5731168号を参照)が含まれる。多重特異抗体はまた、抗体のFc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(国際公開第2009/089004号);2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば米国特許第4676980号、及びBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照);二重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照);及び、例えば、Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているように、三重特異性抗体を調製することによって作製することができる。
【0179】
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体も本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号を参照)。
【0180】
本明細書における抗体又は断片は、2つの異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用性FAb」又は「DAF」も含む(例えば米国特許出願公開第2008/0069820号を参照)。本明細書には「Crossmab」抗体も含まれる(例えば国際公開第2009/080251号、国際公開第2009/080252号、国際公開第2009/080253号、又は国際公開第2009/080254号を参照)。
【0181】
二重特異性抗体断片を作製するための別の技術は、「二重特異性T細胞エンゲージャー」又はBiTE(登録商標)手法である(例えば、国際公開第2004/106381号、国際公開第2005/061547号、国際公開第2007/042261、及び国際公開第2008/119567号を参照)。この手法は、単一のポリペプチド上に配置される2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一ポリペプチド鎖は、各々が、2つのドメイン間の分子内会合を可能にするために十分な長さのポリペプチドリンカーにより分離された可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインを有する、2つの短鎖Fv(scFv)断片を含む。この単一ポリペプチドは、2つのscFv断片の間にポリペプチドスペーサー配列をさらに含む。各scFvは異なるエピトープを認識し、各scFvがその同族エピトープと結合したときに、2つの異なる細胞型の細胞が近接するか又は繋がるように、これらのエピトープは異なる細胞型に特異的であり得る。この手法の特定の一実施態様には、例えば、悪性細胞又は腫瘍細胞などの標的細胞によって発現される細胞表面抗原を認識する別のscFvに結合した、T細胞上のCD3ポリペプチドなどの、免疫細胞によって発現される細胞表面抗原を認識するscFvが含まれる。
【0182】
それは単一のポリペプチドであるので、二重特異性T細胞エンゲージャーは、当技術分野で公知の任意の原核生物又は真核生物細胞発現系、例えばCHO細胞株を使用して発現させることができる。しかしながら、単量体の意図された活性以外の生物活性を有し得る他の多量体種から単量体二重特異性T細胞エンゲージャーを分離するために、特定の精製技術(例えば、EP1691833を参照)が必要な場合もある。1つの例示的な精製スキームでは、分泌されたポリペプチドを含む溶液は、最初に金属アフィニティークロマトグラフィーにかけられ、ポリペプチドはイミダゾール濃度の勾配を用いて溶出される。この溶出液は、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用してさらに精製され、ポリペプチドは、塩化ナトリウム濃度の勾配を用いて溶出される。最後に、この溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーにかけ、多量体種から単量体を分離する。一態様では、本発明で使用される二重特異性抗体は、ペプチドリンカーによって互いに融合された2つの単鎖FV断片(scFV)を含む単一のポリペプチド鎖を含む。
【0183】
Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低減させるFcドメインの修飾
本発明の抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは二量体であり、その各サブユニットはCH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定に会合することができる。
【0184】
Fcドメインは、本発明の抗原結合分子に望ましい薬物動態特性を付与し、そのような薬物動態特性には、標的組織中への良好な蓄積に貢献する長い血清半減期、及び望ましい組織-血液分布比が含まれる。しかし同時に、Fcドメインは、好ましい抗原保有細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する、本発明の二重特異性抗体の望ましくない標的化をもたらす可能性があるしたがって、特定の態様では、本発明の抗原結合分子のFcドメインは、天然IgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低減及び/又はエフェクター機能の低減を示す。一態様では、Fcは、Fc受容体に実質的に結合せず、かつ/又はエフェクター機能を誘導しない。特定の態様では、Fc受容体はFcγ受容体である。一態様では、Fc受容体はヒトFc受容体である。特定の態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一態様では、Fcドメインはエフェクター機能を誘導しない。エフェクター機能の低減は、限定しないが、補体依存性細胞傷害(CDC)の低減、抗体依存性T細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低減、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の低減、サイトカイン分泌の低減、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低減、NK細胞に対する結合の低減、マクロファージに対する結合の低減、単球に対する結合の低減、多形核細胞に対する結合の低減、アポトーシスを誘導する直接的シグナル伝達の低減、樹状細胞成熟の低減、又はT細胞プライミングの低減のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0185】
特定の態様では、1つ又は複数のアミノ酸修飾を、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域変異体を生成することができる。Fc領域変異体は、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0186】
特定の態様では、本発明は、Fcドメインが、特にFc受容体に対するFcγ受容体への結合を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む抗体を提供する。
【0187】
一態様では、本発明の抗体のFcドメインは、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに同じ1つ又は複数のアミノ酸変異が存在する。特に、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の位置(EU番号付け)にアミノ酸置換を含む。特に、Fcドメインは、IgG重鎖の234位及び235位(EU番号付け)及び/又は329位(EU番号付け)にアミノ酸置換を含む。より具体的には、IgG重鎖においてアミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」、EU番号付け)を有するFcドメインを含む本発明による抗体が提供される。アミノ酸置換L234A及びL235Aは、いわゆるLALA変異を指す。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほぼ完全に消失させるもので、国際公開第2012/130831(A1)号に記載があり、同文献には、このような変異Fcドメインを調製する方法、及びFc受容体結合又はエフェクター機能などのその特性を決定するための方法も記載されている。
【0188】
Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能が低減したFcドメインは、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ又は複数の置換を伴うものも含まれる(米国特許第6737056号)。このようなFc変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含め、アミノ酸265、269、270、297及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7332581号)。
【0189】
別の態様では、FcドメインはIgG4 Fcドメインである。IgG4抗体は、IgG1抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低減及びエフェクター機能の低減を示す。より具体的な態様では、Fcドメインは、S228位(Kabat番号付け)にアミノ酸置換を、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである。より具体的な態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L235E及びS228P及びP329G(EU番号付け)を含むIgG4 Fcドメインである。このようなIgG4 Fcドメイン変異及びそのFcγ受容体結合特性は、国際公開第2012/130831号にも記載されている。
【0190】
変異体Fcドメインは、当技術分野で周知の遺伝学的又は化学的方法を用いたアミノ酸の欠失、置換、挿入、又は修飾により調製することができる。遺伝学的方法は、コード化DNA配列の部位特異的突然変異、PCR、遺伝子合成などを含み得る。正確なヌクレオチドの変化は、例えば配列決定により検証することができる。
【0191】
Fc受容体に対する結合は、例えばELISAにより、又はBIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な装置を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)により容易に測定することができ、このようなFc受容体は組換え発現により得ることができる。あるいは、Fcドメイン、又はFcドメインを含む細胞活性化抗体の、Fc受容体に対する結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を使用して評価することができる。
【0192】
Fcドメイン、又はFcドメインを含む本発明の抗体のエフェクター機能は、当技術分野で公知の方法により測定することができる。ADCCを測定するための適切なアッセイは、本明細書に記載されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例が、米国特許第5500362号;Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985);米国特許第5821337号;Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えばフローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは又はそれに加えて、目的の分子のADCC活性は、Clynes et al., PNAS USA 95:652-656 (1998)に開示されるように、例えば動物モデルにおいてin vivoで評価することができる。
【0193】
いくつかの態様では、補体成分に対するFcドメインの結合、特にC1qに対する結合が低減する。したがって、Fcドメインがエフェクター機能を低減させるように操作されているいくつかの実施態様では、前記エフェクター機能の低減は、CDCの低減を含む。本発明の二重特異性抗原結合分子がC1qに結合することができ、それによりCDC活性を有するかどうかを決定するために、C1q結合アッセイを行うことができる(例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと)。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996); Cragg, et al., Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, and Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照のこと)。
【0194】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメインの修飾
本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合した異なる抗原結合部位を含み、したがって、Fcドメインの2つのサブユニットは、2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれ得る。これらのポリペプチドの組換え共発現とそれに続く二量体化は、2つのポリペプチドの複数の可能な組み合わせをもたらす。したがって、組換え産生における本発明の二重特異性抗体の収率及び純度を改善するために、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、所望のポリペプチドの会合を促進する修飾を導入することが有利であろう。
【0195】
したがって、特定の態様では、本発明は、(a)腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分、(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含み、ここで、第1のポリペプチドが、ペプチドリンカーによって互いに連結されているTNFリガンドファミリーメンバーの2つのエクトドメイン又はそれらの2つの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドが、前記TNFリガンドファミリーメンバーの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含むことを特徴とする二重特異性分子に関し、該抗原結合分子はさらに(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含み、ここで該Fcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も広範なタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメインにある。したがって、一態様では、前記修飾はFcドメインのCH3ドメインにある。
【0196】
特定の態様では、前記修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ」修飾を含み、Fcドメインの2つのサブユニットの他方に「ホール」修飾を含む、いわゆる「ノブ・イントゥー・ホール」修飾である。したがって、本発明は、(a)腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの部分、(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含み、
ここで、第1のポリペプチドが、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの2つの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドが、前記4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含むことを特徴とする抗原結合分子に関し、該抗原結合分子はさらに(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含み、ここで、ノブ・イントゥー・ホール法に従って、Fcドメインの第1のサブユニットはノブを含み、Fcドメインの第2のサブユニットはホールを含む。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、及びY407V(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。
【0197】
ノブ・イントゥー・ホール技術は、例えば、米国特許第5731168号;米国特許第7695936号;Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)及びCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載される。一般に、この方法は、第1のポリペプチドの接触面において隆起(「ノブ」)及び第2のポリペプチドの接触面において対応する空洞(「ホール」)を導入することを含み、その結果、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるように、隆起が空洞内に配置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの接触面から小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と置換することによって構築される。隆起と同一か又は類似のサイズの相補的空洞が、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置換することによって、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。
【0198】
したがって、一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、それにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に配置可能な隆起が生成され、かつ、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の隆起を配置可能な空洞が生成される。隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的変異誘発により、又はペプチド合成により改変することにより作り出すことができる。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置換され(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、407位のチロシン残基がバリン残基で置換される(Y407V)。一態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいてさらに、366位のスレオニン残基がセリン残基で置換され(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置換される(L368A)。
【0199】
さらなる態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいてさらに、354位のセリン残基がシステイン残基で置換され(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいてさらに、349位のチロシン残基がシステイン残基で置換される(Y349C)。これらの2つのシステイン残基の導入は、Fcドメインの2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成をもたらし、二量体をさらに安定化する(Carter (2001), J Immunol Methods 248, 7-15)。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、及びY407V(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。
【0200】
別の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、例えば、国際公開第2009/089004号に記載されているような静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般に、この方法は、ホモ二量体形成は静電的に不利になるが、ヘテロ二量体は静電的に有利になるように、2つのFcドメインサブユニットの接触面において、荷電したアミノ酸残基による1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含む。
【0201】
本明細書で報告される二重特異性抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終端する完全なC末端であり得る。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基の1つ又は2つが除去された短縮されたC末端であり得る。好ましい一態様では、重鎖のC末端は、PGで終端する短縮されたC末端である。本明細書中に報告されたすべての態様のうちの一態様では、本明細書中に特定されるようなC末端CH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、C末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。本明細書中に報告されたすべての態様のうちの一態様では、C末端CH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、本明細書で規定されるように、C末端グリシン残基(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0202】
Fabドメインにおける修飾
一態様では、本発明は、(a)腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができるFab断片、(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含み、ここで、第1のポリペプチドが、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの2つの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドが、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含むことを特徴とする4-1BBL含有抗原結合分子に関し、該抗原結合分子はさらに(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含み、ここで、Fab断片の1つにおいて、可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLのいずれかが交換されている。二重特異性抗体は、Crossmab技術に従って調製される。
【0203】
1つの結合アームにドメインの置換/交換を有する多重特異性抗体(CrossMab VH-VL又はCrossMab CH-CL)は、国際公開第2009/080252号及びSchaefer, W. et al, PNAS, 108 (2011) 11187-1191に詳細に記載されている。それらは、第1の抗原に対する軽鎖と第2の抗原に対する不適切な重鎖とのミスマッチによって引き起こされる副産物を(このようなドメイン交換のない手法と比較して)明らかに減少させる。
【0204】
一態様では、本発明は、(a)CD19に特異的に結合することができる第1のFab断片、(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含み、ここで、第1のポリペプチドが、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの2つの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドが、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含み、ここでそれらの各々が、CH1又はCLドメインに連結されていることを特徴とする二重特異性抗原結合分子に関し、該抗原結合分子はさらに(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含み、ここで、CH1ドメインが軽鎖の一部となり、CLドメインが重鎖の一部となるように、4-1BBLに隣接する定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている。
【0205】
別の態様では、本発明は、(a)共刺激性TNF受容体ファミリーメンバーに特異的に結合することができる2つのFab断片とFcドメインとを含む抗体の2つの軽鎖及び2つの重鎖、及び(b)標的細胞抗原に特異的に結合することができる2つの追加のFab断片を含む二重特異性抗原結合分子に関し、ここで前記追加のFab断片は各々、ペプチドリンカーを介して(a)の重鎖のC末端に連結されている。特定の態様では、追加のFab断片は、可変ドメインVL及びVHが、VHドメインが軽鎖の一部であり、かつ、VLドメインが重鎖の一部であるように、互いに置換されているFab断片である。
【0206】
別の態様では、正しいペアリングをさらに改善するために、(a)CD19に特異的に結合することができる第1のFab断片、(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含み、ここで、第1のポリペプチドが、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの2つの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドが、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含み、ここでそれらの各々が、CH1又はCLドメインに連結されていることを特徴とし、さらに(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、異なる荷電アミノ酸置換(いわゆる「荷電残基」)を含むことができる。これらの修飾は、交差又は非交差のCH1ドメイン及びCLドメインに導入される。特定の態様では、本発明は二重特異性抗原結合分子に関し、ここで、CLドメインの1つにおいて、123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)で置換され、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)で置換されており、かつ、CH1ドメインの1つにおいて、147位(EU番号付け)及び213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)で置換されている。
【0207】
より具体的には、本発明はFabを含む二重特異性抗原結合分子に関し、ここで、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCLドメインにおいて、123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)で置換され、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)で置換されており、かつ、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCH1ドメインにおいて、147位(EU番号付け)及び213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)で置換されている。
【0208】
ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本明細書に記載される二重特異性抗体又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0209】
本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドは、抗原結合分子全体をコードする単一のポリヌクレオチドとして、又は共発現される複数(例えば、2つ以上)のポリヌクレオチドとして発現され得る。共発現されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して会合して、機能的抗原結合分子を形成し得る。例えば、免疫グロブリンの軽鎖部分は、免疫グロブリンの重鎖部分とは別個のポリヌクレオチドによってコードされ得る。共発現されると、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと会合して免疫グロブリンを形成するであろう。
【0210】
いくつかの態様では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載される本発明による抗体全体をコードする。他の実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載される本発明による抗体に含まれるポリペプチドをコードする。
【0211】
特定の実施態様では、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。他の実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態のRNAである。本発明のRNAは一本鎖又は二本鎖であり得る。
【0212】
組換え法
本発明において使用される二重特異性抗体は、例えば、固相ペプチド合成(例えば、メリフィールド固相合成)又は組換え産生によって得ることができる。組換え産生のために、例えば上述したように、抗体又はそのポリペプチド断片をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドが単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、一般的な手順を使用して容易に単離され配列決定され得る。本発明の一態様では、本発明のポリヌクレオチドの1つ又は複数を含むベクタ-、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者に周知の方法を使用して、適切な転写/翻訳制御シグナルとともに抗体(断片)のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、in vitroでの組換えDNA技術、合成技術及びin vivoでの組換え/遺伝子組換えを含む。例えば、Maniatis et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1989);及びAusubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989)に記載される技術を参照のこと。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部であり得るか、又は核酸断片であり得る。発現ベクターは、抗体又はそのポリペプチド断片(すなわち、コード領域)をコードするポリヌクレオチドが、プロモーター及び/又は他の転写若しくは翻訳制御エレメントと作動可能に結合してクローニングされる発現カセットを含む。本発明で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「終止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、存在する場合にはコード領域の一部と考えられ、しかし、任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’非翻訳領域などはコード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト中に、例えば単一のベクター上に、又は別々のポリヌクレオチドコンストラクト中に、例えば別の(異なる)ベクター上に存在することができる。さらに、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでいてもよいし、2つ以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、タンパク質分解性切断によって翻訳後又は翻訳と同時に最終タンパク質に分離される1つ又は複数のポリペプチドをコードしてもよい。さらに、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、又は核酸は、本発明の抗体若しくはそのポリペプチド断片、又はその変異体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドに融合しているか、又は融合していない異種コード領域をコードし得る。異種コード領域は、限定されないが、分泌シグナルペプチド又は異種機能ドメインなどの特殊なエレメント又はモチーフを含む。作動可能に結合とは、ポリペプチドなどの遺伝子産物のコード領域が、遺伝子産物の発現を制御配列の影響下又は制御下に置くように、1つ又は複数の制御配列と結合している場合である。2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域とそれに結合しているプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、及び2つのDNA断片間の連結の性質が、遺伝子産物の発現を指示する発現調節配列の能力を妨げないか又は転写されるべきDNAテンプレートの能力を妨げない場合、「作動可能に結合している」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写をもたらすことができる場合に、ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に結合されているといえる。プロモーターは、所定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーター以外に、他の転写調節エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルが、細胞特異的転写を指示するポリヌクレオチドと作動可能に結合することができる。
【0213】
適切なプロモーター及び他の転写制御領域は本明細書に開示されている。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えばイントロン-Aと連結した最初期プロモーター)、シミアンウイルス40(例えば初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルスなど)が含まれる。他の転写制御領域は、脊椎動物の遺伝子由来のもの、例えばアクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギ-αグロビン、並びに、真核細胞における遺伝子発現を制御することができる他の配列を含む。さらなる適切な転写制御領域は、組織特異的プロモーター及びエンハンサー並びに誘導性プロモーター(例えば、プロモーター誘導性テトラサイクリン)を含む。同様に、種々の翻訳調節エレメントが当業者に知られている。これらには、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終結コドン、並びにウイルス系由来のエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位、又はCITE配列とも呼ばれるIRES)が含まれる。また、発現カセットは、例えば複製起点及び/又はレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)若しくはアデノ随伴ウイルス(AAV)の逆位末端配列(ITR)などの染色体組み込みエレメントといった他の特徴を含んでいてもよい。
【0214】
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌又はシグナルペプチドをコードするさらなるコード領域と結合させることができる。例えば、抗体又はそのポリペプチド断片の分泌が望まれる場合、シグナル配列をコードするDNAが、本発明の抗体又はそのポリペプチド断片をコードする核酸の上流に配置され得る。シグナル仮説によると、哺乳類細胞によって分泌されるタンパク質は、粗面小胞体上で成長するタンパク質鎖の排出が開始されると成熟タンパク質から切断されるシグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが一般に、ポリペプチドのN末端に融合したシグナルペプチドを有し、それが翻訳されたポリペプチドから切断されて分泌又は「成熟」型のポリペプチドを産生することを知っている。特定の実施態様では、天然のシグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又はそれに作動可能に結合しているポリペプチドの分泌を指示する能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド又はその機能的誘導体が使用され得る。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
【0215】
後の精製を容易にするため(例えばヒスチジンタグ)又は融合タンパク質の標識化の補助のために使用され得る短タンパク質配列をコードするDNAは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド又はそのポリペプチド断片の中又は末端に含まれ得る。
【0216】
本発明のさらなる態様では、本発明の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。特定の実施態様では、本発明の1つ又は複数のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、ポリヌクレオチド及びベクターそれぞれに関連して本明細書に記載される特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて組み込むことができる。一態様では、宿主細胞は、本発明の抗体(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えばそのようなベクターで形質転換又はトランスフェクトされている)。本明細書中で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明の融合タンパク質又はその断片を生成するように操作され得る任意の種類の細胞系を指す。抗原結合分子の複製及び発現の補助に適切な宿主細胞は当技術分野で周知である。このような細胞は特定の発現ベクターで適切にトランスフェクト又は形質導入することができ、大量のベクター含有細胞を、臨床利用のための十分な量の抗原結合分子を得るために、大規模発酵槽に播種するために増殖させることができる。適切な宿主細胞には、原核生物微生物、例えば大腸菌、又は種々の真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞等が含まれる。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要でない場合、細菌中で産生され得る。発現の後、ポリペプチドは可溶性画分において細菌細胞のペーストから単離することができ、さらに精製することができる。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」され、部分的又は完全なヒトのグリコシル化パターンを有するポリペプチドの産生をもたらす真菌及び酵母菌株を含む、ポリペプチドをコードするベクターの適切なクローニング宿主又は発現宿主である。Gerngross, Nat Biotech 22, 1409-1414 (2004)、及びLi et al., Nat Biotech 24, 210-215 (2006)を参照のこと。
【0217】
(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と組み合わせて使用できる多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養もまた宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照。脊椎動物細胞も宿主として使用することができる。例えば、懸濁状態で増殖するように適合された哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)で形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載された293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスのセルトリ細胞(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(HepG2)、マウス乳腺腫瘍細胞(MMT060562)、(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載される)TRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、dhfr-CHO細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;及びYO、NS0、P3X63及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。タンパク質産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞系の総説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)を参照のこと。宿主細胞には、培養細胞、例えばいくつか挙げると、哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が含まれ、さらにはトランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞も含まれる。一実施態様では、宿主細胞は、真核生物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。これらの系において外来遺伝子を発現する標準的な技術は当技術分野で周知である。免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖を含むポリペプチドを発現する細胞は、発現された生成物が重鎖及び軽鎖の両方を有する免疫グロブリンであるように、免疫グロブリン鎖の他方を発現するように操作することができる。
【0218】
一態様では、本発明の抗体又はそのポリペプチド断片を生成する方法が提供され、この方法は、本発明の抗体又はそのポリペプチド断片の発現に適した条件下で、本明細書に提供される本発明の抗体又はそのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養すること、及び本発明の抗体又はそのポリペプチド断片を宿主細胞(又は宿主細胞培地)から回収することを含む。
【0219】
特定の実施態様では、抗原結合分子の一部を形成する、標的細胞抗原に特異的に結合することができる部分(例えばFab断片)は、少なくとも、抗原に結合することができる免疫グロブリン可変領域を含む。可変領域は、天然又は非天然の抗体及びその断片の一部を形成することができ、かつそのような抗体及び断片から誘導することができる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane, ”Antibodies, a laboratory manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照)。天然に存在しない抗体は、固体相-ペプチド合成を使用して構築することができ、(例えば米国特許第4186567号に記載のように)組換え的に産生することができ、又は例えば可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる(例えばMcCaffertyへの米国特許第5969108号を参照)。
【0220】
任意の動物種の免疫グロブリンを本発明において使用することができる。本発明において有用な非限定的免疫グロブリンは、マウス、霊長類又はヒト起源のものであり得る。融合タンパク質がヒトでの使用を意図している場合、免疫グロブリンの定常領域がヒト由来であるキメラ型の免疫グロブリンを使用することができる。ヒト化又は完全ヒト型の免疫グロブリンも、当技術分野で周知の方法に従って調製することができる(例えばWinterへの米国特許第5565332号を参照)。ヒト化は、様々な方法によって達成することができ、それらの方法には、限定されないが、(a)非ヒト(例えばドナー抗体)のCDRを、重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合アフィニティー又は抗体機能を維持するために重要であるもの)の保持を伴うか又は伴わない、ヒト(例えばレシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域の上に移植すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用に重要な残基)のみをヒトフレームワーク領域及び定常領域上に移植すること、又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによってヒト様切片でそれらを「クローキング」することが含まれる。ヒト化抗体及びその製造方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)に総説され、さらに、例えば、Riechmann et al., Nature 332, 323-329 (1988); Queen et al., Proc Natl Acad Sci USA 86, 10029-10033 (1989);米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号、及び同第7087409号;Jones et al., Nature 321, 522-525 (1986); Morrison et al., Proc Natl Acad Sci 81, 6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv Immunol 44, 65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science 239, 1534-1536 (1988); Padlan, Molec Immun 31(3), 169-217 (1994); Kashmiri et al., Methods 36, 25-34 (2005)(SDR(a-CDR)移植について記載);Padlan, Mol Immunol 28, 489-498 (1991)(「リサーフェイシング」について記載);Dall’Acqua et al., Methods 36, 43-60 (2005)(「FRシャフリング」について記載);Osbourn et al., Methods 36, 61-68 (2005)及びKlimka et al., Br J Cancer 83, 252-260 (2000)(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」アプローチについて記載)に記載されている。本発明による特定の免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。ヒト抗体及びヒト可変領域は、当技術分野で公知の様々な技術を使用して生成することができる。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001)及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に一般的に記載されている。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法によって作製されたヒトモノクローナル抗体の一部を形成することができ、そのような抗体から由来することができる(例えば、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによっても調製することができる(例えば、Lonberg, Nat Biotech 23, 1117-1125 (2005)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変領域配列を単離することによっても生成することができる(例えば、Hoogenboom et al. Methods in Molecular Biology 178, 1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001);及びMcCafferty et al., Nature 348, 552-554; Clackson et al., Nature 352, 624-628 (1991)を参照)。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片として、抗体断片を提示する。
【0221】
特定の態様では、抗体は、例えば、国際公開第2012/020006号(親和性成熟に関連する実施例を参照)又は米国特許出願公開第2004/0132066号に開示された方法に従って、増強された結合親和性を有するように操作される。特定の抗原決定基に対する本発明の抗原結合分子の結合能は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴技術(Liljeblad,et al.,Glyco.J.17:323-329(2000))及び古典的な結合アッセイ(Heeley,R.P.,Endocr.Res.28:217-229(2002))によって測定することができる。競合アッセイは、特定の抗原への結合について参照抗体と競合する抗原結合分子を同定するために使用され得る。特定の実施態様では、このような競合抗原結合分子は、参照抗原結合分子によって結合される同じエピトープ(例えば直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗原結合分子が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的な方法が、Morris(1996)によるMethods in Molecular Biology 第66巻の「Epitope Mapping Protocols」(Humana Press,Totowa,NJ)に提供されている。例示的な競合アッセイでは、固定化された抗原は、抗原に結合する第1の標識抗原結合分子と、抗原への結合について第1の抗原結合分子と競合するその能力について試験されている第2の非標識抗原結合分子とを含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗原結合分子はハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化抗原が、第1の標識抗原結合分子を含むが第2の非標識抗原結合分子を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体の抗原への結合を許容する条件下でのインキュベーション後、過剰な未結合抗体が除去され、固定化された抗原に結合した標識の量が測定される。固定化抗原に結合した標識の量が、対照試料と比較して試験試料中で実質的に減少している場合、それは、第2の抗原結合分子が、抗原への結合について第1の抗原結合分子と競合していることを示している。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照。
【0222】
本明細書で記載のように調製される本発明の抗体は、当技術分野で公知の技術、例えば高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどによって精製され得る。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には正味荷電、疎水性、親水性などの要因に依存し、当業者には明らかであろう。アフィニティークロマトグラフィー精製では、抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原が使用され得る。例えば、本発明の融合タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー精製では、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスが使用され得る。連続的なプロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを、本質的に実施例に記載されるように抗原結合分子を単離するために使用することができる。抗原結合分子又はその断片の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーなどを含む様々な周知の分析方法のいずれかによって決定することができる。例えば、実施例に記載されるように発現された4-1BBL含有抗原結合分子は、還元及び非還元SDS-PAGEによって示されるようにインタクトであり、適切に組み立てられていることが示された。
【0223】
アッセイ
本明細書で提供される抗原結合分子は、当技術分野で公知の様々なアッセイによって、その物理的/化学的性質及び/又は生物活性について同定、スクリーニング又は特徴づけすることができる。
【0224】
1.親和性アッセイ
本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子のその対応する受容体に対する親和性は、実施例に記載の方法に従って、BIAcore装置(GEヘルスケア)などの標準的装置と、組換え発現により得られるような受容体又は標的タンパク質とを用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することができる。標的細胞抗原に対する二重特異性抗原結合分子の親和性もまた、BIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的装置と、組換え発現により得られるような受容体又は標的タンパク質とを用いる表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することができる。CD19-4-1BBL抗原結合分子に関して、本方法は、国際公開第2016/075278号にさらに詳細に記載されている。一態様によれば、KDは、25℃でBIACORE(登録商標)T100装置(GE Healthcare)を用いる表面プラズモン共鳴により測定される。
【0225】
2.結合アッセイ及びその他のアッセイ
一態様では、本明細書で報告されるCD19-4-1BBL抗原結合分子は、実施例2にさらに詳細に記載されるように、その抗原結合活性について試験される。
【0226】
3.活性のアッセイ
一態様では、CD19-4-1BBL抗原結合分子の生物活性を同定するためのアッセイが提供される。生物活性には、例えば、B細胞増殖の阻害又はB細胞の死滅が含まれ得る。in vitro及び/又はin vivoでそのような生物活性を有する抗体も提供される。CD19-4-1BBL抗原結合分子に関して、特定の方法が、国際公開第2016/075278号にさらに詳細に記載されている。
【0227】
特定の実施態様では、本明細書に報告されるような抗体は、そのような生物活性について試験される。
【0228】
薬学的組成物、製剤、及び投与経路
さらなる態様では、本発明は、例えば、以下の治療法のいずれかにおける使用のための、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト、及び本明細書で提供される抗CD20抗体を含む薬学的組成物を提供する。一態様では、薬学的組成物は、本明細書で提供される、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、少なくとも1つの薬学的に許容される添加物と、抗CD20抗体を含む第2の医薬を含む。別の実施態様では、薬学的組成物は、本明細書で提供される、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、少なくとも1つの薬学的に許容される添加物、抗CD20抗体を含む第2の医薬、及び例えば以下に記載されるような少なくとも1つの追加の治療剤を含む。
【0229】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される添加物に溶解又は分散させた、本明細書に記載の1つ又は複数の抗原結合分子の治療的有効量を含む。「薬学的に許容される又は薬理学的に許容される」という語句は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに対して一般に無毒である、すなわち、例えばヒトなどの動物に必要に応じて投与されたとき、副作用、アレルギー又は他の有害な反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。少なくとも1つの抗体と、任意選択的に追加的な活性成分とを含む薬学的組成物の調製物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.Mack Printing Company, 1990(参照により本明細書に包含される)によって例示されているように、本開示内容の見地から当業者には公知であろう。特に、組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液である。本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される添加物」には、当業者には既知であるように、任意の及びすべての溶媒、バッファー、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、塩、安定剤及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0230】
非経口組成物には、注射による投与、例えば皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射用に設計されたものが含まれる。注射の場合、本発明の抗原結合分子は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水バッファーなどの生理的に適合性のバッファー中において製剤化され得る。溶液は、懸濁化剤、安定剤、及び/又は分散剤などの調合剤を含有することができる。あるいは、融合タンパク質は、使用前に適切なビヒクル、例えば、発熱性物質除去蒸留水と構成するために、粉末形態であってもよい。滅菌注射用溶液は、本発明の融合タンパク質を、必要に応じて、以下に列挙する様々な他の成分を含む適切な溶媒中に必要量で組み込むことによって調製される。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成することができる。分散体は通常、基本的な分散媒及び/又は他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、様々な滅菌活性成分を取り込むことにより調製される。滅菌注射用溶液、懸濁液又は乳濁液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過されたその液体媒質から、活性成分と任意の追加的所望成分の粉末を得る真空乾燥又は凍結乾燥技術である。場合によっては、液体媒質を適切に緩衝し、注射前にまず、その液体希釈剤を十分な生理食塩水又はグルコースで等張にする必要がある。組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌といった微生物の汚染作用から保護されなければならない。エンドトキシン汚染は、安全なレベル、例えばタンパク質1mgあたり0.5ng未満で最小限に保たれるべきであることが理解されよう。薬学的に許容される適切な添加物には、限定されないが、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー類、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる化合物を含有し得る。任意選択的に、懸濁液は、適切な安定剤、又は化合物の溶解度を上昇させて高濃度溶液の調製を可能にする薬剤も含有し得る。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ごま油のような脂肪油、又はエチルクリート若しくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。
【0231】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセルに、コロイド薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入することができる。これらの技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed. Mack Printing Company, 1990)に開示されている。徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の適切な例は、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、そのマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。特定の実施態様では、注射可能な組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン又はそれらの組み合わせなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物に使用することによってもたらされ得る。
【0232】
本明細書における例示的な薬学的に許容される添加物には、間質性薬物分散剤(insterstitial drug dispersion agent)、例えば可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International社)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質がさらに含まれる。rHuPH20を含む、特定の例示的なsHASEGP及び使用法については、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0233】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性の抗体製剤には、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン-酢酸バッファーを含む。
【0234】
上記の組成物に加えて、抗体は、持効性製剤として製剤化されていてもよい。そのような長時間作用する製剤は、埋め込み(例えば、皮下又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、融合タンパク質は、適切なポリマー性又は疎水性物質を用いて(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化することができる。
【0235】
本発明の抗原結合分子を含む薬学的組成物は、一般的な混合、溶解、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。薬学的組成物は、1つ又は複数の生理的に許容される担体、希釈剤、添加物、又はタンパク質の薬学的に使用可能な調製物への加工を容易にする補助剤を使用して、従来の方式で製剤化することができる。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0236】
本明細書で提供されるCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、遊離の酸又は塩基、中性又は塩の形態の組成物に製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、遊離酸又は遊離塩基の生物活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えばタンパク質性組成物の遊離アミノ基で形成されたもの、又は例えば塩酸若しくはリン酸といった無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸などの有機酸で形成されたものが含まれる。また、遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム若しくは水酸化第二鉄などの無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン若しくはプロカインなどの有機塩基に由来し得る。薬学的塩は、対応する遊離塩基の形態よりも水性溶媒及び他のプロトン性溶媒に溶解しやすい傾向がある。
【0237】
本明細書中の組成物はまた、治療される特定の症状に必要な1つを超える活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含有し得る。そのような活性成分は、意図された目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0238】
一態様では、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、薬学的に許容される添加物と、本明細書に記載の抗CD20抗体を含む第2の医薬とを含む薬学的組成物が提供される。特定の態様では、薬学的組成物は、B細胞増殖性疾患、特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される疾患の治療における使用のためのものである。
【0239】
in vivo投与に使用される製剤は、一般的に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成することができる。
【0240】
本明細書で提供されるCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体の投与
CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体(両方とも本明細書では物質と呼ばれる)は両方とも、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所治療が望ましい場合は病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。しかしながら、本発明の方法は、非経口、特に静脈内注入により投与される治療剤に関して特に有用である。
【0241】
非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は、その投与が短期間であるか長期間であるかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内注射又は皮下注射などの注射によって行うことができる。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが企図される。一実施態様では、治療剤は、非経口的に、特に静脈内に投与される。特定の実施態様では、物質は、静脈内注入によって投与される。別の態様では、物質は皮下投与される。
【0242】
腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト、及び抗CD20抗体は両方とも、医学行動規範と一致した様式で製剤化され、用量分けされ、投与される。この文脈において考慮すべき要因には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医療従事者が知るその他の要因が含まれる。腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト、及び抗CD20抗体は両方とも、そうである必要はないが、任意選択的に、問題の障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ又は複数の薬剤とともに製剤化される。
そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する治療剤の量、障害又は治療の種類、及び上記で論じた他の要因に依存する。これらは一般に、本明細書に記載されているのと同じ投与量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投与量の約1%~99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投与量及び経路で使用される。
【0243】
疾患の予防又は治療のために、本明細書で提供される、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト、及び抗CD20抗体の適切な投与量は(それらの組み合わせで、又は1つ又は複数の他の追加的治療剤と併用して使用される場合)、治療される疾患の種類、4-1BB剤の種類、疾患の重症度及び経過、両薬剤が予防目的で又は治療目的で投与されるのか、治療歴、患者の病歴及び治療剤に対する応答、並びに主治医の判断によって決まるであろう。各物質は、患者に対して、一度に、又は一連の治療にわたって適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば単回又は複数回の個別投与によるか、連続注入によるかに関わらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の物質が対象への投与のための初期候補用量となり得る。1つの典型的な1日の投与量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲であろう。数日間以上にわたる反復投与の場合には、状態にもよるが、治療は一般に疾患症状の望ましい抑制が起こるまで持続されることになる。各物質の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg~約10 mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はその任意の組み合わせ)のうちの1つ又は複数の用量が対象に投与され得る。このような用量は断続的に、例えば毎週、2週毎、又は3週毎に(例えば対象が約2から約20用量、例えば約6用量の治療剤を受けるように)投与され得る。より高い初回負荷用量と、それに続く1つ又は複数のより低い用量、又はより低い初回用量と、それに続く1つ又は複数のより高い用量が投与されてもよい。例示的投与レジメンは、約10mgの初回用量に続いて、隔週約20mgの治療剤を投与することを含む。しかしながら、他の投与レジメンも有用であり得る。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易に監視される。
【0244】
一態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体の両方の投与は、単回投与である。特定の態様では、物質の投与は2回以上の投与である。そのような一態様では、物質は、毎週、2週毎、又は3週毎、特に2週毎に投与される。一態様では、物質は治療的有効量で投与される。一態様では、物質は、約50μg/kg、約100μg/kg、約200μg/kg、約300μg/kg、約400μg/kg、約500μg/kg、約600μg/kg、約700μg/kg、約800μg/kg、約900μg/kg又は約1000μg/kgの用量で投与される。一実施態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、抗CD20抗体の投与なしの対応する治療レジメンにおける、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの用量よりも高い用量で投与される。一態様では、本明細書で提供される、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの投与は、抗CD20抗体の第1の用量の初回投与、及び抗CD20抗体の第2の用量の1回以上のその後の投与を含み、ここで、第2の用量は第1の用量よりも高い。一態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの投与は、抗CD20抗体の第1の用量の初回投与、及び抗CD20抗体の第2の用量の1回以上のその後の投与を含み、ここで、第1の用量は第2の用量より低くない。
【0245】
一態様では、本発明による治療レジメンにおいて、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの投与は、対象へのCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの第1の投与である(少なくとも同じ治療過程内で)。一態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの投与の前に、抗CD20抗体の投与は対象に対して行われない。別の態様では、抗CD20抗体は、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの投与前に投与される。
【0246】
別の態様では、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストは、抗CD20抗体と組み合わせた使用のためのものであり、ここで、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブによる前治療は、併用治療の前に行われ、ここで、前治療と併用治療の間の期間は、II型抗CD20抗体、好ましくはオビヌツズマブに応答した、個体におけるB細胞の減少に十分である。
【0247】
T細胞の活性化は、重度のサイトカイン放出症候群(CRS)を引き起こす可能性がある。TeGeneroによって実施された第1相試験(Suntharalingam et al., N Engl J Med (2006) 355,1018-1028)では、6人の健常なボランティア全員が、不適切に投与されたT細胞刺激スーパーアゴニスト抗CD28モノクローナル抗体の注入後すぐに、ほぼ致命的な重度のサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した。腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストなどのT細胞活性化治療剤の対象への投与に関連するサイトカイン放出は、オビヌツズマブなどのII型抗CD20抗体による前記対象の前治療によって有意に低減することができる。GAZYVA(登録商標)前治療(Gpt)の使用は、投薬開始から腫瘍細胞の排除を媒介するのに十分に高いT細胞活性化治療剤の曝露レベルを維持しつつ、T細胞活性化治療剤(例えばCRS)による強力な全身性T細胞活性化に由来する関連性の高い有害事象(AE)のリスクが軽減されるように、末梢血と二次リンパ器官の両方で、B細胞の急速な枯渇を助けるはずである。今日まで、オビヌツズマブの安全性プロファイル(サイトカイン放出を含む)は、進行中のオビヌツズマブ臨床治験において数百人の患者で評価及び管理されている。最後に、本明細書で提供される、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストの安全性プロファイルを維持することに加えて、Gptは、これらのユニークな分子に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を防ぐのにも役立つはずである。
【0248】
本発明において、特に、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト、及び抗CD20抗体は、治療において1つ又は複数のさらなる薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、少なくとも1つの追加の治療剤が共投与され得る。特定の態様では、追加の治療剤は、免疫療法剤である。
【0249】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一又は別々の製剤に含まれている)と、治療剤の投与が、追加の治療剤又は薬剤の投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起こり得る分離投与とを包含する。一実施態様では、治療剤の投与及び追加の治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、又は約1週間、2週間、若しくは3週間以内、又は1日、2日、3日、4日、5日、若しくは6日間以内に行われる。
【0250】
治療方法及び組成物
CD20及びCD19は、幹細胞と形質細胞を除くほとんどのB細胞で発現し(pan-B細胞マーカー)、例えば非ホジキンリンパ腫及び急性リンパ性白血病において、多発性骨髄腫を除くリンパ腫及び白血病といったほとんどのヒトB細胞悪性腫瘍で頻繁に発現する(腫瘍関連抗原)。
【0251】
異なる細胞集団上の2つの細胞表面タンパク質を認識する二重特異性分子は、病原性標的細胞の破壊のために細胞傷害性免疫細胞をリダイレクトすることが期待されている。
【0252】
一態様では、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体の有効量を対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法が提供される。
【0253】
このような一態様では、方法は、対象に少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を投与することをさらに含む。さらなる態様では、本明細書において、本明細書で提供されるCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体の有効量を対象に投与することを含む、B細胞を枯渇させるための方法が提供される。上記のいずれの態様に記載の「個体」又は「対象」も、好ましくはヒトである。
【0254】
さらなる態様では、本明細書で提供されるCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体を含む、がん免疫療法における使用のための組成物が提供される。特定の態様では、がん免疫療法の方法における使用のための、本明細書で提供されるCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体を含む組成物が提供される。
【0255】
さらなる態様では、本明細書において、医薬の製造又は調製における、本明細書で提供されるCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体を含む組成物の使用が提供される。一実施態様では、医薬は、B細胞増殖性疾患の治療用である。さらなる実施態様では、医薬は、B細胞増殖性疾患を有する個体に医薬の有効量を投与することを含む、B細胞増殖性疾患を治療する方法における使用のためのものである。このような一実施態様では、方法は、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施態様では、医薬は、B細胞を枯渇させるためのものである。B細胞増殖性疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される。特定の一態様では、B細胞がんは、非ホジキンリンパ腫又は急性リンパ性白血病である。
【0256】
さらなる態様では、本明細書において、B細胞がんを治療するための方法が提供される。一実施態様では、方法は、そのようなB細胞がんを有する個体に抗ヒトCD20抗体の有効量を投与することを含む。このような一実施態様では、方法は、以下に記載されるように、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を個体に投与することをさらに含む。上記の実施態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。B細胞がんは、一実施態様では、B細胞リンパ腫又はB細胞白血病である。一実施態様では、B細胞がんは、非ホジキンリンパ腫又は急性リンパ性白血病である。
【0257】
上記の併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一又は別々の製剤に含まれている)と、本明細書に報告される抗体の投与が、追加の治療剤又は薬剤の投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起き得る別々の投与とを包含する。一実施態様では、抗ヒトCD20抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、又は約1週間、2週間、若しくは3週間以内、又は1日、2日、3日、4日、5日、若しくは6日間以内に行われる。
【0258】
CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、本明細書で報告されている抗CD20抗体(及び任意の追加の治療剤)は両方とも、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所治療が望ましい場合は病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は、その投与が短期間であるか長期間であるかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内注射又は皮下注射などの注射によって行うことができる。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが企図される。
【0259】
CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト、及び本明細書で報告されている抗CD20抗体は両方とも、医学行動規範と一致した様式で製剤化され、用量分けされ、投与される。この文脈において考慮すべき要因には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医療従事者が知るその他の要因が含まれる。抗体は、必ずしもそうである必要はないが、任意選択的に、問題の障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ又は複数の薬剤と共に製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療の種類、及び上記で論じた他の要因に依存する。これらは一般に、本明細書に記載されているのと同じ投与量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投与量の約1%~99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投与量及び経路で使用される。
【0260】
他の薬剤及び治療
本発明の抗原結合分子は、治療において1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本発明の融合タンパク質は、少なくとも1種の追加の治療剤と共投与され得る。用語「治療剤」は、このような治療を必要とする個体の症状又は疾患を治療するために投与され得る任意の薬剤を包含する。このような追加の治療剤は、治療される特定の適応症に適した活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含んでもよい。特定の実施態様では、追加の治療剤は別の抗がん剤である。
【0261】
このような他の薬剤は、意図した目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される融合タンパク質の量、障害又は治療の種類、及び上記で論じた他の要因に依存する。抗原結合分子は一般に、本明細書に記載されているのと同じ投与量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投与量の約1%~99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投与量及び経路で使用される。
【0262】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一又は別々の組成物に含まれている)、及び本発明の抗原結合分子の投与が、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起こり得る分離投与を包含する。
【0263】
製造品(キット)
本発明の別の態様では、上述した障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な材料を含有するキットが提供される。このキットは、少なくとも1つの容器、容器上又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、状態の治療、予防、及び/又は診断に有効な、単独の又はその他の組成物と併用される化合物を収容し、無菌のアクセスポートを有することができる(例えば、容器は皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用の溶液のバッグ又はバイアルであってよい)。キットに含まれる少なくとも2つの活性剤は、本発明の、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストである。
【0264】
特定の態様では、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるためのキットであって、(A)活性成分としての、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び薬学的に許容される添加物を含む第1の組成物;及び(B)活性成分としての抗CD20抗体及び薬学的に許容される添加物を含む第2の組成物、及び(C)併用療法において組成物を使用するための説明書を含むパッケージを含むキットが提供される。
【0265】
ラベル又は添付文書は、選択された状態を治療するために組成物がどのように使用されるかを示し、併用療法において組成物を使用するための指示を提供する。さらに、キットは、(a)組成物がその中に含まれる第1の容器であって、該組成物が、本発明の、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストを含む第1の容器;及び(b)組成物がその中に含まれる第2の容器であって、該組成物が抗CD20抗体を含む、第2の容器を含み得る。加えて、キットは、組み合わせて使用できるさらなる活性成分を含む1つ又は複数のさらなる容器を含み得る。本発明のこの実施態様における製造品は、組成物が特定の状態を治療するために使用できることを示す添付文書をさらに含んでもよい。
【0266】
代替的に又は追加的に、キットは、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器をさらに含んでもよい。それは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0267】
【0268】
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は以下に与えられている:Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)。抗体鎖のアミノ酸は、上で定義されたKabatによる番号付けシステム(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))に従って番号が付けられ、参照される。
【0269】
発明の態様
以下に、本発明のいくつかの態様を列挙する。
1. がんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法における使用のための4-1BB(CD137)アゴニストであって、ここで、4-1BBアゴニストは、抗CD20抗体と組み合わせて使用され、ここで、4-1BBアゴニストは、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、4-1BB(CD137)アゴニスト。
2. 4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が同時に投与される、パラグラフ1に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
3. 4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、パラグラフ1又は2に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
4. 4-1BBアゴニストが、4-1BBアゴニストと同時に、その前に、又はその後に投与される、前述の態様の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
5. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
6. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む分子であり、ここで、4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
7. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子である、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
8. 4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む抗原結合分子は、CD19発現B細胞によって内部移行されないであろう、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
9. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は
(b)(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン
を含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
10. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むか、又は、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
11. 4-1BBアゴニストが、安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインをさらに含む抗原結合分子である、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
12. 4-1BBアゴニストが、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
13. 4-1BBアゴニストが、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させるか又は排除する1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
14. 4-1BBアゴニストが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む抗原結合分子である、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
15. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
16. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、
(i)第1のポリペプチドがCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドがCL又はCH1ドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH1又はCLドメインに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドがCH3ドメインを、第2のポリペプチドがCH3ドメインを、それぞれ含み、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH3ドメインのC末端に連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドがVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドがVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びVH又はVLに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
17. 4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
18. 4-1BBアゴニストが、
a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖及び配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
d)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号50のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
j)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
k)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;並びに
l)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
19. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド
を含む抗原結合分子である、前述の態様のいずれかに記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
20. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド、及び
(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む抗原結合分子であり、ここで、ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチドは、任意選択的にペプチドリンカーを介して、Fcドメインの2つのサブユニットの一方のN又はC末端アミノ酸に融合される、前述の態様のいずれかに記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
21. 4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(c)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号54のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、及び
(d)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号55のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、前述の態様に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
22. 4-1BBアゴニストが、抗CD19/抗4-1BB二重特異性抗体である、態様1から3のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
23. 抗CD20抗体が、I型抗CD20抗体である、態様1から14のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
24. 抗CD20抗体が、リツキシマブである、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
25. 抗CD20抗体が、II型抗CD20抗体である、前述の態様の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
26. 抗CD20抗体が、アフコシル化抗CD20抗体である、前述の態様の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
27. 抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、請求項1から14、又は17又は18のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
28. 抗CD20抗体が、リツキシマブ又はオビヌツズマブである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
29. 抗CD20抗体が、配列番号73のCDR-H1配列、配列番号74のCDR-H2配列、及び配列番号75のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号76のCDR-L1配列、配列番号77のCDR-L2配列、及び配列番号78のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
30. 第2の抗原結合ドメインが、配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)及び/又は配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
31. 4-1BBアゴニストが、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
32. 4-1BBアゴニストが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
33. 4-1BBアゴニストが、抗CD20抗体と組み合わせて使用され、この組み合わせが、約1週間から3週間の間隔で投与される、前述の態様のいずれか一項に記載の方法における使用のための4-1BBアゴニスト。
34. 疾患、特にがんの併用治療、逐次治療又は同時治療における使用のための、(A)活性成分としての、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び薬学的に許容される添加物を含む第1の組成物;及び(B)活性成分としての抗CD20抗体及び薬学的に許容される添加物を含む第2の組成物を含む薬学的製品。
35. B細胞増殖性疾患、特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される疾患の治療における使用のための、態様34に記載の薬学的製品。
36. 腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、抗CD20抗体を含む、薬学的組成物。
37. 4-1BBアゴニストが、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含み、抗CD20抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、態様36に記載の薬学的組成物。
38. 4-1BBアゴニストが、腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含み、抗CD20抗体と同時に、その前に、又はその後に投与される、態様36又は37に記載の薬学的組成物。
39. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む、態様36から38のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
40. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む分子であり、ここで、4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、態様36から39のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
41. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、腫瘍関連抗原、特にCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子である、態様36から40のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
42. 4-1BBアゴニストが、B細胞に内部移行されないであろう、態様36から41のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
43. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は
(b)(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン
を含む、態様36から42のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
44. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むか、又は、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含む、態様36から43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
45. 4-1BBアゴニストが、安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインをさらに含む抗原結合分子である、態様36から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
46. 4-1BBアゴニストが、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である、態様36から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
47. 4-1BBアゴニストが、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である、態様36から46のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
48. 4-1BBアゴニストが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む抗原結合分子である、態様36から47のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
49. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む、態様36から48のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
50. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、
(i)第1のポリペプチドがCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドがCL又はCH1ドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH1又はCLドメインに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドがCH3ドメインを、第2のポリペプチドがCH3ドメインを、それぞれ含み、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH3ドメインのC末端に連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドがVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドがVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びVH又はVLに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする、態様36から49のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
51. 4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、態様36から50のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
52. 4-1BBアゴニストが、
a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖及び配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
d)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号50のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
j)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
k)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;並びに
l)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、態様36から51のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
53. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド
を含む抗原結合分子である、態様36から48のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
54. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド、及び
(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む抗原結合分子であり、ここで、ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチドは、任意選択的にペプチドリンカーを介して、Fcドメインの2つのサブユニットの一方のN又はC末端アミノ酸に融合される、態様36から48、又は53のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
55. 4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(c)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号54のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、及び
(d)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号55のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、態様36から48、又は53又は54のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
56. 4-1BBアゴニストが、抗CD19/抗4-1BB二重特異性抗体である、態様36から38のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
57. 抗CD20抗体が、配列番号73のCDR-H1配列、配列番号74のCDR-H2配列、及び配列番号75のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号76のCDR-L1配列、配列番号77のCDR-L2配列及び配列番号78のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、態様36から56のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
58. 抗CD20抗体が、配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)及び/又は配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、態様36から57のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
59. 4-1BBアゴニストが、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含み、抗CD20抗体と組み合わせて使用され、この組み合わせが、約1週間から3週間の間隔で投与される、態様36から58のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
60. 増殖性疾患、特にがんを治療すること又はがんの進行を遅延させることにおける使用のための、態様36から59のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
61. B細胞増殖性疾患、特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される疾患の治療における使用のための、態様36から60のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
62. 対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるためのキットであって、(A)活性成分としての、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニスト及び薬学的に許容される添加物を含む第1の組成物;及び(B)活性成分としての抗CD20抗体及び薬学的に許容される添加物を含む第2の組成物、及び(C)併用療法において組成物を使用するための説明書を含むパッケージを含むキット。
63. 増殖性疾患、特にがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための医薬の製造における、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体の組み合わせの使用。
64. 医薬が、B細胞増殖性疾患、特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される疾患の治療のためのものである、医薬の製造における、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと抗CD20抗体の組み合わせの使用。
65. 腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、抗CD20抗体の有効量を対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法。
66. CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、抗CD20抗体の有効量を対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療するため又はがんの進行を遅延させるための方法。
67. 4-1BBアゴニストが、Fcドメインを含む抗原結合分子である、態様65又は66に記載の方法。
68. 4-1BBアゴニストが、Fcγ受容体結合及び/又はエフェクター機能を低減させる修飾を有するFcドメインを含む抗原結合分子である、態様65から67のいずれか一項に記載の方法。
69. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む抗原結合分子である、態様65から68のいずれか一項に記載の方法。
70. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子である、態様65から69のいずれか一項に記載の方法。
71. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む分子であり、ここで、4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、態様65から70のいずれか一項に記載の方法。
72. 4-1BBアゴニストが、B細胞に内部移行されないであろう、態様65から71のいずれか一項に記載の方法。
73. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの部分とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は
(b)(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメイン、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン
を含む、態様65から72のいずれか一項に記載の方法。
74. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片と、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインとを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むか、又は、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含む、態様65から73のいずれか一項に記載の方法。
75. 4-1BBアゴニストが、安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインをさらに含む抗原結合分子である、態様65から74のいずれか一項に記載の方法。
76. 4-1BBアゴニストが、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である、態様65から75のいずれか一項に記載の方法。
77. 4-1BBアゴニストが、Fc受容体への結合及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む抗原結合分子である、態様65から76のいずれか一項に記載の方法。
78. 4-1BBアゴニストが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む抗原結合分子である、態様65から77のいずれか一項に記載の方法。
79. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む、態様65から78のいずれか一項に記載の方法。
80. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、
(i)第1のポリペプチドがCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドがCL又はCH1ドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH1又はCLドメインに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドがCH3ドメインを、第2のポリペプチドがCH3ドメインを、それぞれ含み、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びCH3ドメインのC末端に連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドがVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドがVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインを、それぞれ含み、第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合により第1のポリペプチドに結合しており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーにより互いに及びVH又はVLに連結する4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前記ポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して連結する4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする、態様65から79のいずれか一項に記載の方法。
81. 4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、態様65から80のいずれか一項に記載の方法。
82. 4-1BBアゴニストが、
a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖及び配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
d)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号50のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
j)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
k)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;並びに
l)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、態様65から81のいずれか一項に記載の方法。
83. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド
を含む抗原結合分子である、態様65から82のいずれか一項に記載の方法。
84. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチド、及び
(c)安定に会合することができる第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む抗原結合分子であり、ここで、ペプチドリンカーにより互いに連結される4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチドは、任意選択的にペプチドリンカーを介して、Fcドメインの2つのサブユニットの一方のN又はC末端アミノ酸に融合される、態様65から83のいずれか一項に記載の方法。
85. 4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号53のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、
(c)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号54のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子、及び
(d)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、及び配列番号55のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、態様65から84のいずれか一項に記載の方法。
86. 4-1BBアゴニストが、抗CD19/抗4-1BB二重特異性抗体である、態様65から68のいずれか一項に記載の方法。
87. 抗CD20抗体が、配列番号73のCDR-H1配列、配列番号74のCDR-H2配列、及び配列番号75のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)、並びに/又は配列番号76のCDR-L1配列、配列番号77のCDR-L2配列、及び配列番号78のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、態様65から86のいずれか一項に記載の方法。
88. 抗CD20抗体が、配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD20)及び/又は配列番号80のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD20)を含む、態様65から87のいずれか一項に記載の方法。
89. 抗CD20抗体が、リツキシマブを含む、態様65から86のいずれか一項に記載の方法。
90. 4-1BBアゴニストが、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含み、抗CD20抗体と組み合わせて使用され、この組み合わせが、約1週間から3週間の間隔で投与される、態様65から89のいずれか一項に記載の方法。
91. 腫瘍関連抗原、特にCD19又はFAPに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、抗CD20抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、態様65から90のいずれか一項に記載の方法。
92. CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストと、抗CD20抗体が、静脈内又は皮下に投与される、態様65から91のいずれか一項に記載の方法。
93. CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBアゴニストが、抗CD20抗体と同時に、その前に、又はその後に投与される、態様65から92のいずれか一項に記載の方法。
94. 4-1BBアゴニストが、腫瘍関連抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む抗原結合分子である、4-1BB(CD137)アゴニストと抗CD20抗体を含む組み合わせ。
95. 4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が同時に投与される、態様94に記載の組み合わせ。
96. 4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、態様94又は95に記載の組み合わせ。
97. 4-1BBアゴニストが、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、態様94から96のいずれか一項に記載の組み合わせ。
98. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む、態様94から97のいずれか一項に記載の組み合わせ。
99. 4-1BBアゴニストが、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、ここで、4-1BBLのエクトドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む、態様94から98のいずれか一項に記載の組み合わせ。
100. 4-1BBアゴニストが、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は
(b)(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(ii)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(iii)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域(VHCD19)、並びに(iv)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(v)配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(vi)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VLCD19)
を含む、態様94から99のいずれか一項に記載の組み合わせ。
101. 4-1BBアゴニストが、CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインと、4-1BBLの3つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む抗原結合分子であり、ここで、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むか、又は、CD19に特異的に結合することができる抗原結合ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)及び配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含む、態様94から100のいずれか一項に記載の組み合わせ。
102. 4-1BBアゴニストが、IgG Fcドメイン、具体的にはIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む抗原結合分子である、態様94から101のいずれか一項に記載の組み合わせ。
103. 4-1BBアゴニストが、
(a)CD19に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメイン、
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチドを含む抗原結合分子であり、
ここで、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに連結されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む、態様94から102のいずれか一項に記載の組み合わせ。
104. 4-1BBアゴニストが、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)、又は配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHCD19)と配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VLCD19)を含むCD19に特異的に結合することができる少なくとも1つのFabドメイン、及び
(b)ジスルフィド結合によって互いに結合している第1及び第2のポリペプチド
を含む抗原結合分子であり、
ここで、該抗原結合分子は、第1のポリペプチドが、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、態様94から103のいずれか一項に記載の組み合わせ。
105. 4-1BBアゴニストが、
a)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
b)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
c)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号39のアミノ酸配列を含む第1の重鎖及び配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
d)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
e)配列番号33のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号34のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
f)配列番号34のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号46のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
g)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号35のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号36のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
h)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
i)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号50のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子;
j)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号41のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号42のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;
k)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号43のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号44のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む分子;並びに
l)配列番号48のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号51のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含む分子
からなる群から選択される抗原結合分子である、態様94から104のいずれか一項に記載の組み合わせ。
106. 4-1BBアゴニストが、CD19に特異的に結合することができる1つの抗原結合ドメインを含む抗原結合分子である、態様94から105のいずれか一項に記載の組み合わせ。
107. 4-1BBアゴニストが、抗CD19/抗4-1BB二重特異性抗体である、態様94から97のいずれか一項に記載の組み合わせ。
108. 抗CD20抗体が、I型抗CD20抗体である、態様94から107のいずれか一項に記載の組み合わせ。
109. 抗CD20抗体が、リツキシマブである、態様94から108のいずれか一項に記載の組み合わせ。
110. 抗CD20抗体が、II型抗CD20抗体である、態様94から107のいずれか一項に記載の組み合わせ。
111. 抗CD20抗体が、アフコシル化抗CD20抗体である、態様94から107、又は110のいずれか一項に記載の組み合わせ。
112. 抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、態様94から107、又は111又は112のいずれか一項に記載の組み合わせ。
113. 抗CD20抗体が、リツキシマブ又はオビヌツズマブである、態様94から107のいずれか一項に記載の組み合わせ。
114. 医薬としての使用のための、態様94から113のいずれか一項に記載の組み合わせ。
115. 4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が、単一の組成物において一緒に投与されるか、又は2つ以上の異なる組成物において別々に投与される、態様94から114のいずれか一項に記載の組み合わせ。
116. 4-1BBアゴニスト及び抗CD20抗体が、同時投与のため、又は逐次投与のためのものである、態様94から115のいずれか一項に記載の組み合わせ。
117. B細胞増殖性疾患、特に、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群より選択される疾患の治療における使用のための、態様94から116のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【実施例】
【0270】
以下は本発明の方法及び組成物の例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
【0271】
組換えDNA技術
標準的な方法を使用して、Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されているようにDNAを操作した。分子生物学的試薬を、製造者の指示に従って使用した。ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat, E.A. et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Ed., NIH Publication No 91-3242に与えられている。
【0272】
DNA配列決定
DNA配列は、二本鎖配列決定により決定された。
【0273】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、適切なテンプレートを用いるPCRによって生成されたか、又は自動遺伝子合成による合成オリゴヌクレオチド及びPCR産物からGeneart AG(Regensburg、Germany)によって合成された。正確な遺伝子配列が利用できない場合、オリゴヌクレオチドプライマーは最も近いホモログからの配列に基づいて設計され、遺伝子は適切な組織に由来するRNAからRT-PCRによって単離された。特異な制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する遺伝子セグメントを、標準的なクローニング/シーケンシングベクター中にクローニングした。形質転換した細菌からプラスミドDNAを精製し、UV分光法により濃度を決定した。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントは、それぞれの発現ベクター中へのサブクローニングを可能にするために適切な制限部位を用いて設計された。すべてのコンストラクトは、真核細胞における分泌のためのタンパク質を標的とするリーダーペプチドをコードする、5’末端DNA配列を含むように設計された。
【0274】
細胞培養技術
Current Protocols in Cell Biology (2000), Bonifacino, J.S., Dasso, M., Harford, J.B., Lippincott-Schwartz, J. and Yamada, K.M. (eds.), John Wiley & Sons, Incに記載されているように、標準的な細胞培養技術を使用した。
【0275】
タンパク質の精製
標準的なプロトコールを参照して、濾過された細胞培養上清からタンパク質を精製した。簡潔には、抗体を、プロテインA Sepharoseカラム(GE healthcare)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶出は、pH2.8で達成され、続いて試料を直ちに中和した。凝集したタンパク質を、PBS中又は20mMのヒスチジン、150mMのNaCl、pH6.0中でのサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200、GE Healthcare)によって、単量体抗体から分離した。単量体抗体画分をプールし、例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30 MWCO)遠心濃縮器を使用して濃縮し(必要に応じて)、-20℃又は-80℃で凍結し、保存した。試料の一部が、例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又は質量分析法によるその後のタンパク質分析及び分析的特徴づけのために提供された。
【0276】
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を製造者の指示に従って使用した。特に、10%又は4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)ビス-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)及びNuPAGE(登録商標)MES(還元ゲル、NuPAGE(登録商標)抗酸化剤ランニングバッファー添加剤を含む)又はMOPS(非還元ゲル)ランニングバッファーを使用した。
【0277】
分析的サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集及びオリゴマー状態の決定のためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、HPLCクロマトグラフィーによって行った。簡潔には、プロテインA精製抗体を、Agilent HPLC 1100システム上の300mMのNaCl、50mMのKH2PO4/K2HPO4、pH7.5の中のTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLCシステム上の2xPBS中のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用した。溶出したタンパク質を、UV吸光度及びピーク面積の積分によって定量化した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901が標準として機能した。
【0278】
表面プラズモン共鳴(SPR)(BIACORE)を使用した、それぞれの抗原に対する多重特異性抗体の結合及び結合親和性の決定
生成された抗体のそれぞれの抗原への結合は、BIACORE機器(GE Healthcare Biosciences AB、Uppsala,Sweden)を使用した表面プラズモン共鳴によって調査される。簡潔には、親和性の測定のために、Goat-Anti-Human IgG,JIR 109-005-098抗体を、それぞれの抗原に対する抗体の提示のためのアミンカップリングを介してCM5チップ上に固定化する。結合は、HBSバッファー(HBS-P(10mMのHEPES、150mMのNaCl、0.005%のTween20、ph7.4)中において、25℃(又は代替的に37℃)で測定される。抗原(R&D Systems又は社内で精製)を溶液中に様々な濃度で添加した。80秒から3分の抗原注入により会合を測定し;3~10分間にわたりHBSバッファーでチップ表面を洗浄することにより解離を測定し、ラングミュア1:1結合モデルを使用してKD値を測定した。システム固有のベースラインドリフトを補正するため及びノイズシグナル低減のために、陰性対照データ(例えば緩衝曲線)が試料曲線から差し引かれる。センサーグラムの分析のため及び親和性データの計算のために、それぞれのBiacore Evaluation Softwareが使用される。
【0279】
実施例1
腫瘍関連抗原に特異的に結合することができる少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む4-1BBL抗原結合分子の調製、精製及び特徴づけ
CD19標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子を、国際特許出願公開番号WO2016/075278A1に記載されるように調製した。
【0280】
特に、以下の分子を作製した。
【0281】
a)一価のCD19標的化及び非標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子
【0282】
ヒトCLドメインに融合した二量体4-1BBリガンドをコードするDNA配列を、ノブ上のヒトIgG1重鎖CH2及びCH3ドメインを含むフレーム内でサブクローニングした(Merchant, Zhu et al. 1998)。4-1BBリガンドの1つのエクトドメインを含むポリペプチドを、ヒトIgG1-CH1ドメインに融合させた。構築物3.4において、正確なペアリングを向上させるために、以下の変異を交差CH-CLに追加的に導入した(荷電変異体)。ヒトCLに融合した二量体4-1BBリガンドにおいて、E123R及びQ124K、ヒトCH1に融合した単量体4-1BBリガンドにおいて、K147E及びK213E。
【0283】
CD19に特異的なバインダーをコードする重鎖及び軽鎖DNA配列の可変領域、クローン8B8-018又はクローン8B8-2B11を、ヒトIgG1のホールの定常重鎖又は定常軽鎖のいずれかとフレーム内でサブクローニングした。国際公開第2012/130831号に記載される方法に従って、Fcガンマ受容体への結合を抑止するため、Pro329Gly、Leu234Ala及びLeu235Ala変異を、ノブ及びホール重鎖の定常領域に導入した。S354C/T366W変異を含む二量体リガンド-Fcノブ鎖、単量体CH1融合、Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を含む標的化抗CD19-Fcホール鎖及び抗CD19軽鎖の組み合わせにより、組み立てられた三量体4-1BBリガンド及びCD19結合Fabを含むヘテロ二量体が生成される(
図1A及び1B)。これに基づき、生殖系列DP47によってCD19バインダーを置換することにより非標的化バージョンが調製された(
図1C)。
【0284】
【0285】
b)二価のCD19標的化及び非標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子
【0286】
CD19に特異的なバインダーに特異的な重鎖及び軽鎖の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNA配列、クローン8B8-018又はクローン8B8-2B11を、ヒトIgG1のホール、ノブの定常重鎖又は定常軽鎖のいずれかとフレーム内でサブクローニングした。国際公開第2012/130831号に記載される方法に従って、Fcガンマ受容体への結合を抑止するために、ノブ及びホール重鎖の定常領域にPro329Gly、Leu234Ala及びLeu235Ala変異を導入した。さらに、4-1BBリガンドの2つのエクトドメインを含むポリペプチドを、ヒトIgG1 Fcホール鎖のC末端に融合させ、4-1BBリガンドの1つのエクトドメインを含むポリペプチドを、ヒトIgG1 Fcノブ鎖のC末端に融合させた。Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を含む抗CD19 huIgG1ホール二量体リガンド重鎖、S354C/T366W変異を含む抗CD19 huIgG1ノブ単量体リガンド重鎖、及び抗CD19軽鎖の組み合わせにより、組み立てられた三量体4-1BBリガンド及び2つのCD19結合Fabを含むヘテロ二量体が生成された(
図1D)。これに基づき、生殖系列DP47によってCD19バインダーを置換することにより非標的化バージョンが調製された(
図1E)。
【0287】
【0288】
CD19標的化及び非標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子の生成及び特徴づけは、国際公開第2016/075278号、実施例7.4及び実施例8から11のそれぞれに詳細に記載されている。
【0289】
FAP標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子も、国際特許出願公開番号WO2016/075278A1に記載されるように調製した。
【0290】
特に、以下の分子を作製した。
【0291】
c)一価のFAP標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子
【0292】
FAPに特異的なバインダーをコードする重鎖及び軽鎖DNA配列の可変領域、クローン28H1又はクローン4B9を、ヒトIgG1のホールの定常重鎖又は定常軽鎖のいずれかとフレーム内でサブクローニングした。国際公開第2012/130831号に記載される方法に従って、Fcガンマ受容体への結合を抑止するため、Pro329Gly、Leu234Ala及びLeu235Ala変異を、ノブ及びホール重鎖の定常領域に導入した。S354C/T366W変異を含む二量体リガンド-Fcノブ鎖、単量体CH1融合、Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を含む標的化抗FAP-Fcホール鎖及び抗FAP軽鎖の組み合わせにより、組み立てられた三量体4-1BBリガンド及びFAP結合Fabを含むヘテロ二量体が生成される(
図1Aに類似)。
【0293】
【0294】
d)二価のFAP標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子
【0295】
FAPに特異的なバインダーに特異的な重鎖及び軽鎖の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNA配列、クローン28H1又はクローン4B9を、ヒトIgG1のホール、ノブの定常重鎖又は定常軽鎖のいずれかとフレーム内でサブクローニングした。国際公開第2012/130831号に記載される方法に従って、Fcガンマ受容体への結合を抑止するために、ノブ及びホール重鎖の定常領域にPro329Gly、Leu234Ala及びLeu235Ala変異を導入した。さらに、4-1BBリガンドの2つのエクトドメインを含むポリペプチドを、ヒトIgG1 Fcホール鎖のC末端に融合させ、4-1BBリガンドの1つのエクトドメインを含むポリペプチドを、ヒトIgG1 Fcノブ鎖のC末端に融合させた。Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を含む抗FAP huIgG1ホール二量体リガンド重鎖、S354C/T366W変異を含む抗FAP huIgG1ノブ単量体リガンド重鎖、及び抗FAP軽鎖の組み合わせにより、組み立てられた三量体4-1BBリガンド及び2つのFAP結合Fabを含むヘテロ二量体が生成された(
図1D)。
【0296】
【0297】
FAP標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子の生成及び特徴づけは、国際公開第2016/075278号、実施例1から6のそれぞれに詳細に記載されている。
【0298】
実施例2
一価CD19-mu4-1BBL抗原結合分子(ハイブリッドサロゲート)の調製、精製、及び特徴づけ
CD19標的化マウス4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子を、国際特許出願公開番号WO2016/075278A1に記載されるように調製した。マウス4-1BBリガンドのエクトドメインの一部(アミノ酸104-309、C160S変異を含む)をコードするDNA配列は、UniprotデータベースのQ3U1Z9-1配列に従って合成された。
【0299】
ヒトCLドメインに融合した二量体マウス4-1BBリガンドをコードするDNA配列を、ノブ上のヒトIgG1重鎖CH2及びCH3ドメインを含むフレーム内でサブクローニングした(Merchant, Zhu et al. 1998)。マウス4-1BBリガンドの1つのエクトドメインを含むポリペプチドを、ヒトIgG1-CH1ドメインに融合させた。CD19に特異的なバインダーをコードする重鎖及び軽鎖DNA配列の可変領域、クローン8B8-018を、ヒトIgG1のホールの定常重鎖又は定常軽鎖のいずれかとフレーム内でサブクローニングした。国際公開第2012/130831号に記載される方法に従って、Fcガンマ受容体への結合を抑止するため、Pro329Gly、Leu234Ala及びLeu235Ala変異を、ノブ及びホール重鎖の定常領域に導入した。S354C/T366W変異を含む二量体リガンド-Fcノブ鎖、単量体CH1融合、Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を含む標的化抗CD19-Fcホール鎖及び抗CD19軽鎖の組み合わせにより、組み立てられた三量体マウス4-1BBリガンド及びCD19結合Fabを含むヘテロ二量体が生成される(
図1F)。
【0300】
ハイブリッドサロゲートCD19-mu4-1BBLのアミノ酸配列は、表5に示すとおりである。
【0301】
【0302】
ハイブリッドサロゲートCD19-mu4-1BBLは、eviFect(Evitria AG)を使用して、懸濁液中で増殖するCHO-K1細胞を哺乳動物発現ベクターと同時トランスフェクトすることによって産生された。細胞は、対応する発現ベクターを、1:1:1:1の比率(「ベクターFcホール重鎖」:「ベクターCD19軽鎖」:「ベクター4-1BBL Fcノブ重鎖」:「ベクターmu4-1BBL軽鎖」)でトランスフェクトされた。トランスフェクションのために、CHO-K1細胞をeviMake(Evitria AG)培地中の無血清懸濁液中で培養する。7日後、5%CO2雰囲気のインキュベーター中において37℃にて、培養上清を遠心分離による精製のために収集し、溶液を滅菌濾過し(0.22mmフィルター)、4℃に保った。分泌されたタンパク質を、プロテインAを使用したアフィニティークロマトグラフィー、次いでサイズ排除クロマトグラフィーにより細胞培養上清から精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、上清を、20mLの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.5で平衡化したプロテインA MabSelectSureカラム(GE Healthcare)にロードした。結合していないタンパク質を、20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム含有バッファー(pH7.5)で洗浄することにより除去した。結合したタンパク質を、20mMクエン酸ナトリウム、100mMのNaCl、100mMグリシン、0.01%のTween20 pH3.0の塩化ナトリウムの線形pH勾配を使用して溶出させた。次にカラムを、20mMクエン酸ナトリウム、100mMのNaCl、100mMグリシン、0.01%のTween20、pH3.0で洗浄した。収集した画分のpHを、1/40(v/v)の2MのTris(pH8.0)を加えることによって調整した。タンパク質を濃縮して濾過した後、20mMヒスチジン、140mMのNaCl、0.01%のTween20 pH6.0で平衡化したHiLoad Superdexカラム(GE Healthcare)にロードした。
【0303】
精製された二重特異性構築物のタンパク質濃度を、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を使用して、280nmにおけるODを測定することにより決定した。二重特異性構築物の純度及び分子量を、LabChipGXII(Caliper)を使用して還元剤(Invitrogen、USA)の存在下及び非存在下でCE-SDSによって分析した。二重特異性構築物の凝集物含有量を、25mMのK2HPO4、125mMのNaCl、200mMのL-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN3、pH6.7のランニングバッファー中で25℃で平衡化したTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を使用して分析した。
【0304】
【0305】
表面プラズモン共鳴によるハイブリッドサロゲートCD19-mu4-1BBLの機能的特徴づけ
マウス4-1BB Fc(kih)とヒトCD19を同時に結合する能力を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した。すべてのSPR実験は、Biacore T200において、ランニングバッファーとしてHBS-EP(0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%のSurfactant P20、Biacore、Freiburg/Germany)を使用して、25℃で行われた。ビオチン化マウス4-1BB Fc(kih)を、ストレプトアビジン(SA)センサーチップのフローセルに直接結合させた。最大600共鳴単位(RU)までの固定化レベルが使用された。CD19標的化mu4-1BBL構築物を、200nMの濃度範囲で30μL/分の流速で90秒間にわたってフローセルを通過させ、解離をゼロ秒に設定した。単量体ヒトCD19-Fc(kih)を、第2の被分析物として、500nMの濃度で30μL/分の流速で90秒間にわたってフローセルを通して注入した(
図2A)。解離を120秒間モニターした。バルク屈折率の差は、タンパク質が固定化されていない基準フローセルで得られた応答を差し引くことによって補正された。
図2Bのグラフに見られるように、ハイブリッドサロゲートCD19-mu4-1BBLは、マウス4-1BBとヒトCD19に同時に結合することができる。
【0306】
実施例3
CD19-4-1BBLとリツキシマブ又はオビヌツズマブのin vitro併用療法
NK細胞の活性化
CD19-4-1BBLは、CD19を発現しているNHL細胞上で架橋することができる場合に活性となる。リツキシマブ及びオビヌツズマブ(Gazyva)などの抗体は、NHL細胞上のCD20に結合し、それによってNK細胞を活性化してADCCを媒介することができる。活性化されたNK細胞は4-1BBを発現する。我々の仮説は、CD19-4-1BBLが、NK細胞活性化のための抗CD20ADCC媒介抗体と協同することができるというものである。これを試験するために、我々は、3つの異なるNHL細胞株、例えばWSU-DLCL2(CD19
+CD20
high)、SU-DHL-8(CD19
+CD20
low)、及びNaml-6(CD19
+CD20
low)を使用した。活性化NK細胞の生物活性を測定するために、IMDM培地(Gibco、カタログ番号31980-048)+10%FBS(Gibco、カタログ番号16140-071)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco、カタログ番号15070-063)中で、用量漸増リツキシマブ若しくはオビヌツズマブのみの存在下で、又は、EC
50濃度のリツキシマブ若しくはオビヌツズマブに加えて用量漸増CD19-4-1BBLを追加して、それぞれのNHL細胞を新鮮な健常者血液から精製したPBMCと1:25の比率で24時間インキュベートした。ELISA(DuoSet Human IFN-γ ELISAキット、R&D Systems、カタログ番号DY285)によるIFN-γの測定のために、上清を収集した。
図3は、試験した3つのNHL細胞株すべてにおいて、CD19-4-1BBLが、リツキシマブ又はオビヌツズマブ(Gazyva)によって活性化された、IFN-γ産生のためのNK細胞のエフェクター機能を高める可能性があることを示している。SU-DHL-8及びNalm-6などのCD20
low細胞では、オビヌツズマブとの組み合わせは、リツキシマブとの組み合わせよりも高いIFN-γ産生を誘導した。
【0307】
CD19-4-1BBLがADCC媒介抗体の添加後にのみNK細胞を活性化できることを確認するために、(CD3
-CD56
dimでゲーティングされた)NK細胞上のCD25などの活性化マーカーを測定した。CD19-4-1BBLは、IFN-γ産生と一致して、リツキシマブ又はオビヌツズマブによってすでに活性化されているCD25を上方制御することによってのみ、NK細胞の活性化を高めることができた(
図4)。対照的に、T細胞(CD4及びCD8の両方)は、この共培養においてCD25又はCD69に関して活性化を示さなかった(データは示さず)。
【0308】
また、NK細胞のADCC機能をオビヌツズマブと協同させることにおいて、標的化CD19-4-1BBLが4-1BBアゴニスト抗体のウレルマブよりも優れているかどうかを調べた。上記と同様の実験で、CD19-4-1BBLとオビヌツズマブの組み合わせのみがNK細胞の活性化を高めるが(CD25上方制御)、ウレルマブとオビヌツズマブの組み合わせは高めなかったことが観察された(
図5)。
【0309】
実施例4
ハイブリッドCD19-4-1BBLとリツキシマブのin vivo併用療法
ハイブリッドCD19-4-1BBL(一価CD19-mu4-1BBL)とリツキシマブの組み合わせの概念に関する最初の実証は、腫瘍を有するhuCD16tgScidマウスで行われた。
【0310】
WSU-DLCL2細胞(ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)は、もともとECACC(European Collection of Cell Culture)から取得され、増殖後、Roche GlycartAGの内部細胞バンクに寄託された。細胞を、10%のFCS及び1xGlutamaxを含むRPMI中で培養した。細胞は、5%CO2の水飽和雰囲気下で37℃で培養した。動物1匹当たり1.5x106個の細胞を、RPMI細胞培地(Gibco)及びGFRマトリゲル(1:1、総量100ul)中において、生存率>95.0%で動物の右脇腹に皮下注射した。
【0311】
実験開始時8-10週齢のヒトFcγRIIIa(CD16)トランスジェニックSCIDマウス(これは、エフェクターとしてマウスFcγRIV陽性マクロファージとヒトFcγRIIIa陽性トランスジェニックマウスNK細胞の両方を発現する)(フランスのチャールズリバーで飼育)は、コミットされたガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、特定の病原体フリーの条件下で毎日12時間明/12時間暗のサイクルで維持された実験研究プロトコールが地方自治体により審査され、承認された。動物は、到着後1週間、新しい環境への馴致及び観察のために保持された。継続的な健康モニタリングが定期的に実施された。
【0312】
プロトコール(
図6)に従って、上記のように雌huCD16TgScidマウスに腫瘍細胞を皮下注射し、腫瘍サイズがおよそ200mm
3(13日目)に達したときに、化合物又はPBS(ビヒクル)で週1回治療した。すべてのマウスに、200μlの適切な溶液を週1回静脈内注射した。200μlあたりの適切な量の化合物を得るために、保存溶液(表5)を必要に応じてPBSで希釈した。リツキシマブとハイブリッドCD19-4-1BBL構築物との併用療法(群D、
図6)については、治療薬は1日の間隔をあけて注射された。腫瘍の増殖をノギスを使用して週に2回測定し、腫瘍体積を以下のように計算した:
T
v:(W
2/2)xL (W:幅,L:長さ)
【0313】
化合物を8回注射した後、試験を終了してすべてのマウスを屠殺し(腫瘍細胞注射後64日目)、腫瘍を外植して重量を測定した。
図7A及び7Bは、すべての治療群における腫瘍増殖動態(平均+/-SEM)、並びに試験終了時の腫瘍重量を示す。ハイブリッドCD19-4-1BBLの単剤療法では、腫瘍増殖阻害は明らかにならなかった。リツキシマブの単剤療法は、ビヒクルと比較してより遅い腫瘍増殖を誘導した。しかしながら、リツキシマブとハイブリッドCD19-4-1BBLの組み合わせは、統計的に有意な腫瘍増殖阻害を誘導し、他のすべての治療群と比較して、
試験終了時の腫瘍重量が有意に減少したことが明らかになった。
【0314】
【0315】
実施例5
一価CD19(2B11)-4-1BBLとオビヌツズマブ(Gazyva)のin vivo併用療法
mono CD19(2B11)-4-1BBLとGAZYVAの組み合わせの概念の実証は、完全にヒト化されたNSGマウスで行われた。
【0316】
WSU-DLCL2細胞(ヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)は、もともとECACC(European Collection Cell Culture)から取得され、増殖後、Roche GlycartAGの内部細胞バンクに寄託された。細胞を、10%のFCS及び1xGlutamaxを含むRPMI中で培養した。細胞は、5%CO2の水飽和雰囲気下で37℃で培養した。動物1匹当たり1.5x106個の細胞(in vitro継代18)を、RPMI細胞培地(Gibco)及びGFRマトリゲル(1:1、総量100μl)中において、生存率>95.0%で動物の右脇腹に皮下注射した。
【0317】
実験開始時に4-5週齢の雌のNOD/Shi-scid/IL-2Rγnull(NSG)マウス(デンマークのタコニックで飼育)は、コミットされたガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、特定の病原体フリーの条件下で毎日12時間明/12時間暗のサイクルで維持された。実験研究プロトコールが地方自治体により審査され、承認された(ZH193/2014)。動物は、到着後1週間、新しい環境への馴致及び観察のために保持された。継続的な健康モニタリングが定期的に実施された。
【0318】
プロトコール(
図8)に従って、雌のNSGマウスに、15mg/kgのブスルファンが腹腔内注射され、1日後に臍帯血から単離された1x10
5個のヒト造血幹細胞が静脈内注射された。幹細胞注射後14-16週目に、マウスの舌下から採血し、ヒト化を成功させるために、血液をフローサイトメトリーによって分析した。効率的に移植されたマウスは、ヒトT細胞の頻度に応じて、異なる治療群に無作為化された(
図8、n:10/群)。その時、マウスに腫瘍細胞を皮下注射し、腫瘍サイズがおよそ450mm
3(11日目)に達したときに、化合物又はPBS(ビヒクル)で週1回治療した。すべてのマウスに200μlの適切な溶液を静脈内注射した。200μlあたりの適切な量の化合物を得るために、保存溶液(表6)を必要に応じてPBSで希釈した。GAZYVAとの併用療法(群D、
図8)の場合、CD19-4-1BBL構築物が同時に注射された。腫瘍の増殖をノギスを使用して週に2回測定し、腫瘍体積を以下のように計算した:
T
v:(W
2/2)xL (W:幅,L:長さ)
【0319】
図9は、すべての治療群における腫瘍増殖動態(平均+/-SEM)を示す。CD19-4-1BBLの単剤療法効果は検出できなかった。単剤としてのオビヌツズマブは、腫瘍増殖阻害をほとんど誘導しなかったが、CD19-4-1BBLとの組み合わせは、すべての動物で完全な腫瘍退縮を誘導した(
図9)。
【0320】
【配列表】