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特許7159359可動容積についての放射性画像を改善するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】可動容積についての放射性画像を改善するシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20221017BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G01T1/161 E
G01T1/161 A
A61B6/03 377
G01T1/161 ZDM
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020573217
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019024233
(87)【国際公開番号】W WO2020005351
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】16/021,264
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593063105
【氏名又は名称】シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】スポティスッド,ブルース エス.
(72)【発明者】
【氏名】ゾルトナー,ユルゲン
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-156856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性画像化走査装置と処理システムとを含むシステムであって、
前記放射性画像化走査装置は、
身体の第1の放射性画像化走査データを取得するために第1の放射性画像化走査を実行し、かつ
身体の第2の放射性画像化走査データを取得するために第2の放射性画像化走査を実行し、
前記処理システムは、
前記第1の放射性画像化走査データに基づいてターゲット画像を生成し、
前記第2の放射性画像化走査データの複数の部分の各々を、身体の複数の動きの位相の各々の1つと関連付け、
前記身体の複数の動きの位相の各々について、前記動きの位相と関連する前記第2の放射性画像化走査データの部分に基づいてビニング画像を生成し、
前記ターゲット画像に基づいて複数のビニング画像の各々に動き補正を行って、複数の動き補正されたビニング画像を生成し、かつ
前記ターゲット画像と前記複数の動き補正されたビニング画像とに基づく画像を生成
さらに、身体のコンピュータ断層撮影走査データを取得するコンピュータ断層撮影操作装置を含み、
さらに、前記処理システムは、前記コンピュータ断層撮影走査データに基づいて前記画像を減衰補正する、
システム。
【請求項2】
前記コンピュータ断層撮影走査データは、身体が呼吸停止位置にある間に取得され、
身体が前記呼吸停止位置にある間に、前記第1の放射性画像化走査データの少なくとも一部を取得する、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の放射性画像化走査は、身体が自由に呼吸を行える間に取得される、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
さらに、経時的に身体の複数の呼吸の位相の各々の発生を示す信号を受信する呼吸モニタを含み、
前記第2の放射性画像化走査データの複数の部分の各々を、身体の複数の動きの位相の1つと関連付けることは、前記第2の放射性画像化走査データの部分の各々を、複数の呼吸の位相の各々の1つと関連付けることを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記画像の生成は、前記ターゲット画像と、前記複数の動き補正されたビニング画像とを組み合わせることを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンピュータ断層撮影走査データは、前記第1の放射性画像化走査データの後に取得され、前記処理システムはさらに、
前記ターゲット画像の取り込み値に基づいて、前記コンピュータ断層撮影走査データを取得するか否かを決定する、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
身体の第1の放射性画像化走査データを取得するステップと、
前記第1の放射性画像化走査データに基づいて、ターゲット画像を生成するステップと、
身体の第2の放射性画像化走査データを取得するステップと、
前記第2の放射性画像化走査データの複数の部分の各々を、身体の複数の動きの位相の各々の1つと関連付けるステップと、
前記身体の複数の動きの位相の各々について、前記動きの位相と関連する前記第2の放射性画像化走査データの部分に基づいて、ビニング画像を生成するステップと、
前記複数のビニング画像の各々を前記ターゲット画像に変形して、複数の変形されたビニング画像を生成するステップと、
前記ターゲット画像と前記複数の変形されたビニング画像とに基づいて画像を生成するステップと、
身体のコンピュータ断層撮影走査データを取得するステップと、
前記取得したコンピュータ断層撮影走査データに基づいて、身体の減衰プロフィールを決定するステップと、
前記減衰プロフィールに基づいて前記画像を補正するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記コンピュータ断層撮影走査データは、身体が呼吸停止位置にあることを表し、
前記第1の放射性画像化走査データは、前記呼吸停止位置にある身体の少なくとも一部を表す、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の放射性画像化走査データは、身体の自由な呼吸位置を表す、請求項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、経時的に身体の複数の呼吸の位相の各々の発生を示す信号を受信することを含み、
前記第2の放射性画像化走査データの各々の部分を、前記身体の複数の動きの位相の1つと関連付けることは、前記第2の放射性画像化走査データの各々の部分を、前記複数の呼吸の位相の各々の1つと関連付けることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記画像を生成することは、前記ターゲット画像と前記複数の変形されたビニング画像とを組み合わせることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記コンピュータ断層撮影走査データは、前記第1の放射性画像化走査データの後に取得され、さらに、前記ターゲット画像の取り込み値に基づいて、前記コンピュータ断層撮影走査データを取得するか否かを決定する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
陽電子放出型断層撮影走査装置と、コンピュータ断層撮影走査装置と、処理システムとを含むシステムであって、
前記陽電子放出型断層撮影走査装置は、スカウト画像化走査を実行して、身体の第1の陽電子放出断層撮影データを取得し、第2の画像走査を実行して、リストモード中の身体の第2の陽電子放出断層撮影データを取得し、前記スカウト画像化走査の持続時間は、前記第2の画像化走査の持続時間より短く、
前記コンピュータ断層撮影走査装置は、身体のコンピュータ断層撮影走査データを取得し、前記コンピュータ断層撮影走査データは、前記第1の陽電子放出断層撮影データと実質的に登録されており、
前記処理システムは、
前記第1の陽電子放出断層撮影データに基づいてターゲット画像を生成し、
前記第2の陽電子放出断層撮影データの複数の部分の各々を、身体の複数の動きの位相の各々の1つと関連付け、
前記身体の複数の動きの位相の各々について、前記動きの位相と関連する前記第2の陽電子放出断層撮影データの部分に基づいてビニング画像を生成し、
前記複数のビニング画像の各々をターゲット画像に変形して、複数の変形されたビニング画像を生成し、
前記ターゲット画像と前記複数の変形されたビニング画像とに基づいて画像を生成し、
前記コンピュータ断層撮影走査データに基づいて前記画像を減衰補正する、
システム。
【請求項14】
身体が呼吸停止位置にある間に前記コンピュータ断層撮影走査データを取得し、
身体が呼吸停止位置にある間に前記第1の陽電子放出断層撮影データの少なくとも一部を取得する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
身体が自由に呼吸を行える間に前記第2の陽電子放出断層撮影データを取得する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
さらに、経時的に身体の複数の呼吸の位相の各々の発生を示す信号を受信する呼吸モニタを含み、
前記第2の陽電子放出断層撮影データの複数の部分の各々を、前記身体の複数の動きの位相の1つと関連付けることは、前記第2の陽電子放出断層撮影データの部分の各々を、前記複数の呼吸の位相の各々の1つと関連付けることを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記画像の生成は、前記ターゲット画像と前記複数の変形されたビニング画像とを組み合わせることを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記画像の生成は、前記ターゲット画像と前記複数の変形されたビニング画像とを組み合わせることを含む、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月28日に出願された米国仮出願第16/021,264号に基づく優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射性画像化(ニュークリア・イメージング)では、注射または経口の摂取によって、放射性医薬品が患者の体内に導入されている。放射性医薬品は、SPECT(single-photon-emission-computer-tomography:単一フォトン放出型コンピュータ断層撮影)画像化の場合はガンマ線を放出しており、またPET(positron-emission-tomography:陽電子放出型断層撮影)画像化の場合はガンマ線を生成するために電子と消滅する陽電子(ポジトロン)を放出している。身体の外側に配置された検出器(デテクタ)システムによって、放出されたガンマ線を検出し、それに基づいて画像(イメージ)を再構成している。
【0003】
検出器システムが身体部分に曝される期間は、身体部分から検出されるガンマ線の数と、その結果として、そこから再構成される画像の画質とに直接関係する。しかし、持続時間が長いほど、身体部分が動く可能性がより高まるため、結果として生じる画像がぼやけやすくなる。特に、腹部、胸部および心臓の領域の画像化が問題となる。何故なら、これらの領域は生来の生理学的プロセスに基づいて、ほぼ連続的に運動しているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像化中の身体の動きに対処するため、幾つかの従来の放射性画像化処理では、例えば、胸部領域を走査(スキャン)する間、患者が息を止めることを必要としている。しかし、(典型的には病人である)患者が息を止めることができる期間は、しばしば、適当な画像を形成するのに十分な数のガンマ線を検出するには短すぎる。一連の息を止める期間にわたって連続して領域を走査することで、ガンマ線の検出数を増加できるが、この作業は患者に対して相当の負担をかけている。さらに、この場合、連続する画像間の登録(レジストレーション)エラーのため、アーチファクト(ノイズ等)を生じさせる虞がある。このため、画像解像度を向上させ、動きによるアーチファクトを減少させるように、可動の容積(ボリューム)の放射性画像を生成するシステムが求められている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、幾つかの実施形態に従う減衰補正された放射性画像を生成するシステムのブロック図であ。
図2図2は、幾つかの実施形態に従う減衰補正された放射性画像を生成するプロセスのフロー図である。
図3図3は、幾つかの実施形態に従うコンピュータ断層撮影データ、第1の放射性画像化データ及び第2の放射性画像化データの取得を例示した図である。
図4図4は、幾つかの実施形態に従う位相と関連する画像の生成を例示するブロック図である。
図5図5は、幾つかの実施形態に従う減衰補正された放射性画像を生成するシステムのブロック図である。
図6図6は幾つかの実施形態に従う画像化システムを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明は、当業者に対して、本明細書に記載の実施形態を製造し、使用することを可能にすることを目的として提供されており、本明細書に記載の実施形態を実施する上でベストモードと考えられるものが例示されている。しかし、当業者であれば、この例示に対して様々な変更等を行えることが明らかだろう。
【0007】
概して、幾つかの実施形態は、患者が呼吸停止位置にある間に急速な放射性画像化走査(スキャン)を実行し、続いて、患者が正常に呼吸している間に標準の放射性画像化走査を実行する。標準の走査のデータは、データ検出時の患者の動きの位相に従ってビニング(統合)される。ビニング(された)データは、それぞれのビニングされた画像(以下、ビニング画像という)を再構成するために使用され、ビニング画像の各々は、急速な放射性画像化走査から生成されたターゲット(標的)画像に変形される。変形されたビニング画像とターゲット画像とに基づいて、より高解像度の複合画像を効率的に作成可能になるが、これは、急速な放射性画像化走査と標準の放射性画像化走査の全てのデータを含み、標準の放射性画像化走査中の患者の動きによって引き起こされるアーチファクトを最小にする。
【0008】
幾つかの実施形態では、患者についてのコンピュータ断層撮影画像は、急速な放射性画像化走査の実施と時間的に続いて、上記息を止めた位置で取得される。このコンピュータ断層撮影画像は、ターゲット画像と整列可能であり、従って、より高解像度の複合画像とも整列可能である。このため、コンピュータ断層撮影画像を用いて、複合画像上で減衰補正(または減弱補正)を行うことができ、例えば、コンピュータ断層撮影画像に基づいて減衰係数マップを生成し、複合画像に対してこの減衰係数マップを適用する。従って、本実施形態は、高解像度かつ減衰補正した、可動の容積の放射性画像の効率的な生成を提供できる。
【0009】
図1を参照すると、幾つかの実施形態に従う画像生成プロセス(処理)が例示されている。この処理について、図2のフロー200を参照して説明する。フロー200および本明細書に記の他のフローは、ハードウエアおよびソフトウエアの任意の適当な組み合わせを用いて実行され得る。これらの処理を実装するためのソフトウェア・プログラム・コードは、任意の非一時的実体媒体(メディア)に記憶可能であって、例えば、固定ディスク、揮発性または不揮発性ランダムアクセスメモリ、フロッピーディスク、CD、DVD、フラッシュドライブ、または磁気テープを用いることができる。なお、本実施形態は、以下に記載の例に限定されない。
【0010】
まず、身体のコンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)データ110が、当技術分野で知られているように、ステップS210で取得される。CTデータ110は、CT走査装置(CTスキャナ)内に身体が位置決めされている間に、CT走査装置によって取得されてもよい。図1では、データ110は、容積測定CTデータのスライス状に表されているが、これは、当技術分野で知られているように、CT走査装置によってステップS210で取得された二次元CT画像データの複数の組に基づいて再構成される。
【0011】
幾つかの実施形態では、身体が呼吸停止位置にある間に、CTデータ110の少なくとも一部が取得される。図3を参照すると、矢印315に示す方向に身体を縦方向に走査することで、ステップS210で取得されたCTデータ310が例示されている。位置Aに到達すると、患者は、息を止めるように指示される。走査が位置Bに到達するまで息は止められ、その位置で患者は正常な呼吸をはじめるように指示される。呼吸に起因する患者の動きは、主に位置Aと位置Bとの間の領域で起きるが、息止めプロセスによって、動きアーチファクトを減少させている。さもなければ、取得した走査データから再構成されるCT画像中に動きアーチファクトが存在する可能性がある。なお、典型的には、CT走査の持続時間が短いため、通常、患者は必要な時間で息を止めることができる。
【0012】
再度図2を参照すると、ステップS220で、身体の第1の放射性画像化走査データを取得する。第1の放射性画像化走査データの取得は、当技術分野で知られているように、任意の適当な方法で、適当な放射性医薬品の導入が先に行われる。本実施例は、PETシステムに関して説明されているが、このデータは、SPECTシステム若しくはPETシステムによって取得されてもよく、または、既に知られている若しくは将来的に知られ得る他の種類の放射性画像化システムによって取得されてもよい。
【0013】
図1のPETデータ120は、ステップS220で取得された第1の放射性画像化走査データを表し、PET画像として図示されている。幾つかの実施形態では、PETデータ120は、典型的な放射性画像化走査と比べてより速い走査速度で取得される「PETスカウト(PET調査)」を含むことができる。このより速い走査速度は、ガンマ線が検出される時間が短縮されるため、PETデータ120内で、より遅い走査速度で得られる場合と比べて、より低い信号対ノイズ比をもたらし得る。
【0014】
また、より速い走査速度は、ステップS210に関して上述した呼吸停止の取得を容易にできる。図3を参照すると、ステップS220にて、矢印325に示す方向で身体を縦方向に走査することで取得されるPETデータ320が図示されている。位置Cに到達すると、患者は、息を止めるように指示される。走査が位置Dに到達するまで息は止められ、その位置になると、患者は、呼気して正常に呼吸しはじめるように指示される。同様に、ステップS220では、走査の持続時間が短いため(典型的な放射性画像化走査と比較して)、患者は、位置Cから位置Dまで走査が進む際、息止め位置(呼吸停止位置)を維持できる。従って、患者は、ステップS210で息止め位置で走査された同じ身体部分の走査中、息止め位置にある。従って、CTデータとPETデータの双方は、実質的に同様の位置にある身体部分を表すことになる。
【0015】
第1の放射性画像化走査データは、CTデータの取得と実質的に同時期に取得できる。例えば、PET/CT走査装置のCT画像化システムは、患者がPET/CT走査装置のベッド上の所与の位置で横たわっている間に、ステップS210にてCTデータを取得するように動作することができ、そして、PET/CT走査装置のPET画像化システムは、その直後に動作されて、患者がベッド上のその所与の位置にとどまっている間に、ステップS220にて、第1の放射性画像化走査データを取得してもよい。CT走査装置とPET走査装置の座標間の幾何学的変換(もしあれば)が知られているので、CTデータとPETデータは、互いに対して実質的に登録されているとみなすことができる。
【0016】
ステップS230で第2の放射性画像化走査データを取得する。第2の放射性画像化走査データは、身体の運動又は動き中に取得される。例えば、患者が自由に呼吸できる間に、第2の放射性画像化走査データを取得してもよい。再度図3を参照すると、患者の呼吸に対して何ら制限を課すことなく、矢印335の方向に従来のPET走査を実施することで、第2の放射性画像化走査データ330を取得してもよい。第2の放射性画像化走査データは、ステップS220で取得された第1の放射性画像化走査データと比べて、より遅い走査速度(スキャン・レート)で取得され得る。従って、第2の放射性画像化走査データは、第1の放射性画像化走査データよりも多くのガンマ線検出を表し得るが、そこから再構成される画像には、データ収集中の身体の動きに起因する動きアーチファクトを含み得る。
【0017】
ステップS240での第1の放射性画像化走査に基づいて、ターゲット画像が生成される。ターゲット画像は、当技術分野で知られているように、第1の放射性画像化走査データに対して再構成アルゴリズムを適用することで生成されてもよい。図1のPETデータ120には、そのようなターゲット画像が例示されているが、その取得時間が短いため、典型的なPET画像と比べて、より低い信号対ノイズ比を示している。
【0018】
次に、ステップS250で、第2の放射性画像化走査データを用いて、身体の複数の動きの位相の各々についてビニング画像を生成する。図4を参照すると、幾つかの実施形態に従うステップS250を示している。幾つかの実施形態では、第2の放射性画像化走査データ410は、「リストモード」中に取得されるが、その際、検出された各ガンマ線は、検出時間と、エミッション(放出)イベントの位置を可能にする他の検出値と関連する。
【0019】
ビニング(binning)部420は、リストモードのデータ410と動きの位相情報とを受信する。動きの位相情報は、リストモードのデータの取得を通して、身体が様々な時間にあるときの動きの位相を示すことができる。動きの位相情報は、第2の放射性画像化走査データ自体から決定されてもよく、または動きの位相を時間と関連付ける動きモニタから決定されてもよい。例えば、既に知られているまたは将来的に知られ得る任意の呼吸監視(モニタ)システムを用いて、第2の放射性画像化走査データの取得中に、患者の呼吸サイクルを監視して、記録してもよい。
【0020】
図5を参照すると、ビニング処理を補助するためにビニング部550に呼吸信号540を入力するシステムが示されている。呼吸信号540は、第2の放射性画像化走査データ530の取得中に、患者に取り付けられた呼吸監視装置(モニタ)によって取得されて、送信されてもよい。呼吸サイクルは複数の位相に分けることができ、患者はデータ取得中に幾つかの呼吸サイクルを経験し得る。ビニング部(550及び/または420)は、リストモードのデータと呼吸信号540を使用して、検出が行われた呼吸サイクルの位相に対して各ガンマ線検出を関連付けてもよい。
【0021】
ビニングデータ430a~430eは、5つのビン(bin)に分けられた走査データを表しており、各ビンは、動きの位相を表している。本実施形態は、ビン/位相の任意の特定の数に限定されない。各ビンのデータは、ビンと関連した動きの位相の間に生じたガンマ線検出を表す。再構成部440は、ビニングデータ430a~430e、その結果、ビニング画像450a~450e、の各々に基づく画像を生成する。したがって、各ビニング画像450a~450eは、特定のビンに関連した動きの位相中に位置する身体を表している。
【0022】
ステップS260では、ビニング画像の各々に対して、弾性(エラスティック)運動補正(elasticmotion correction)が適用されて、各ビニング画像について、動き補正された画像を生成する。弾性運動補正を実行して、各ビニング画像をターゲット画像に変形する。図1を参照すると、ビニング画像とターゲット画像とを受け取って、補正された画像を出力する弾性運動補正部150が示されている。図4を参照すると、ターゲット画像をターゲット(目標)として使用する弾性運動補正を適用することで、ビニング画像450aを(PETスカウト走査データに基づいて再構成された)ターゲット画像に変形している。ステップS260における弾性運動補正は、当該技術分野で公知の質量保存型オプティカル・フロー(mass-preserving optical flow)アルゴリズムを利用してもよい。
【0023】
次に、ステップS270で、ターゲット画像と複数の動き補正された画像(以下、動き補正画像という)とに基づいて画像を生成する。図1に示すように、ターゲット画像と複数の動き補正画像は、結合部160によって単純に組み合わされることで、高解像度画像を生成できる。何故なら、動き補正画像は、実質的にターゲット画像と登録(レジスタ)されているからである。
【0024】
上述のように、CTデータ110とPETデータ120が取得される方法によって(すなわち、呼吸運動が実質的に自由)、これらのデータセットは、実質的に互いに対して登録されることになる。従って、CTデータ110は、部位160によって出力される画像と整列することができ、その際、画像に基づく変形可能な整列を行うことで、別々の呼吸停止間の微小な位置の相違をなくすような改善ステップを伴ってもよく、伴わなくてもよい。
【0025】
この整列によって、減衰補正部170は、CTデータ110を使用して、部位160によって出力される画像に対して減衰補正を実行してもよい。例えば、部位170は、当技術分野で知られているように、CTデータ110からMuマップ(例えば、減衰係数マップ)を導出してもよい。幾つかの実施形態では、Muマップは、ステップS210にてCT走査の代わりに実施される、磁気共鳴画像化(MRI:magnetic resonance imaging)の呼吸停止走査から導かれてもよい。次に、部位170は、Muマップを使用して、部位160から出力された画像に対して減衰補正を実行し、その結果、減衰補正された画像(以下、減衰補正画像という)180が得られる。
【0026】
幾つかの実施形態では、減衰補正画像180は、従来のPET画像と同様の解像度を示す。何故なら、それは、第2の放射性画像化走査データ130中に表されるすべてのイベント(並びに走査データ120のイベント)を含み、特に呼吸停止中に走査される領域において、ターゲット画像に対するビン(bin)に基づく変形のために動きアーチファクトを最小限度で含み、かつ本来的に登録されたCTデータ110の利用可能性により適当に減衰補正されるからである。
【0027】
幾つかの実施形態では、第1の放射性画像化走査データは、品質保証目的のため、CTデータに先立って取得されてもよい。例えば、最初のPETスカウト走査を用いて、患者が過度に動いているか否か、または速く動かなかったか否かを判断して、その結果、放射性医薬品の望ましくない吸収が引き起こされているか否かを判断してもよい。もしそうであれば、患者に不必要な追加の走査を受けさせないように、画像処理を中止してもよい。全身PETスカウト走査を、CT走査からの解剖学的情報とともに使用してもよく、それによって、特定の線量が正しいことを検出したり、血管外漏出(溢血)があるか否かや、血糖(糖血症)を検出してもよい。
【0028】
本明細書に記載の各機能的部位は、少なくとも部分的には、当該技術分野で知られているように、コンピュータ・ハードウエア、プログラム・コード及び/または係るプログラム・コードを実行する1つまたは複数のコンピュータ・システムを用いて実施されてもよい。このようなコンピュータ・システムは、記憶装置(メモリ)システムに記憶されたプロセッサ実行可能プログラム・コードを実行する1つまたは複数の処理装置(処理ユニット)を含むことができる。
【0029】
図6を参照すると、本明細書に記載の処理(プロセス)の1つまたは複数を実行するPET/CTシステム600が例示されている。なお、本実施形態は、このシステム600に限定されない。
【0030】
システム600は、中空部(ボア)612を画定した構台(ガントリー)610を含む。当技術分野で知られているように、構台610は、PET画像データを取得するためのPET画像化部位と、CT画像データを取得するためのCT画像化部位を収容する。PET画像化部位は、当該技術分野で公知のように、任意の構成で任意の数のガンマ・カメラを含み得る。CT画像化部位は、1つまたは複数のX線管(チューブ)と、1つまたは複数の対応するX線検出器(デテクタ)を含み得る。
【0031】
ベッド(床)615及び基部(ベース)616は、ベッド615上に横たわる患者を中空部612の内又は外に移動させるように動作可能である。幾つかの実施形態では、ベッド615は、基部616上を移動するように構成されてもよく、他の実施形態では、基部616は、ベッドに沿って、あるいは、ベッドから移動可能に構成されてもよい。
【0032】
中空部612の内又は外への患者の移動によって、構台610のCT画像化部位およびPET画像化部位を用いて、患者の走査を可能にする。このような走査は、走査範囲及び対応する走査速度等の走査パラメータに基づいて処理できる。ベッド615及び基部616は、幾つかの実施形態では、その走査中に、段階的に撮影する移動とは対照的な、連続的なベッド移動を提供できる。
【0033】
動きモニタ617は、ワイヤ619を介してモニタ接続部(アタッチメント)618に接続された呼吸モニタを含むことができる。モニタ接続部618は、当該技術分野で知られているように、放射性画像化走査中の動きの位相を表す呼吸信号を取得するために、患者に対して取り付けられてもよい。その信号は、上述のように、取得されたPETデータを、それぞれの動きの位相を表すビン(bin)に分けるために使用されてもよい。
【0034】
制御システム620は、任意の汎用のコンピュータ・システムまたは専用のコンピュータ・システムを含むことができる。従って、制御システム620は、本明細書に記載のようにシステム620を動作させるプロセッサ実行可能プログラム・コードを実行するように構成された1つまたは複数の処理装置(処理ユニット)622と、プログラム・コードを保存する記憶装置630とを含む。記憶装置630は、1つ又は複数の固定ディスク、ソリッドステート・ランダムアクセスメモリ、及び/または対応するインターフェース(例えば、USBポート)に取り付けられるリムーバブルメディア(例えば、親指大の小型メモリ)を含み得る。
【0035】
記憶装置630は、制御プログラム631のプログラム・コードを保存する。1つ又は複数の処理装置622は、制御プログラム631を実行して、PETシステム・インターフェース623、ベッド・インターフェース625、及びモニタ・インターフェース627と共に、患者を中空部612内に移動させるようにハードウエア部位を制御し、その移動中に、ガンマ・カメラを中空部612の周りで回転するように制御して、その回転中に、所定の画像化位置で中空部612内に位置する身体の2次元放出(エミッション)データと動きデータを取得してもよい。取得された放出データは、PETデータ634として記憶装置630内に保存されてもよい。
【0036】
1つ又は複数の処理装置622は、制御プログラム631を実行して、CTシステム・インターフェース624と共に、構台610内の放射線源(放射線ソース)から、異なる投射角度で、中空部612内の身体に向けて放射線を放出させて、対応する検出器を制御して、2次元CTデータを取得してもよい。CTデータは、上述のように、PETデータと実質的に同時期に取得することができ、そしてCTデータ636として保存されてもよい。
【0037】
ビニング・プログラム632は、上述のように、取得されたPETデータをビニングするために実行されてもよい。ビニングされたPETデータは再構成され、PET画像635として保存されてもよく、そして動き補正プログラム633が実行されて、ビニングされたPET画像をターゲットPET画像に基づき動き補正にかけてもよい。ビニング、動き補正、画像組合せ、及び減衰補正は、制御プログラム631及び他のプログラムの任意の組合せによって実行することができる。
【0038】
出力のPET画像と、任意の中間のPET及びCT画像は、端末(ターミナル)インターフェース626を介して端末640に送信され得る。端末640は、表示装置(ディスプレイ装置)及びシステム620に結合された入力装置を含むことができる。端末640は、本明細書に記載のように決定された走査範囲及び走査速度に基づいて取得された、PETスカウト画像、CT画像、PET画像と、摂取容積、摂取容積の分類、及び/または他の任意の適当な画像またはデータを表示できる。端末640は、データの表示、システム600の動作、及び/または本明細書に記載の処理を制御するためのユーザ入力を受信できる。幾つかの実施形態では、端末640は、デスクトップ・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、タブレット・コンピュータ、及びスマートフォン等の別個のコンピュータ装置であるが、これらに限定されない。
【0039】
システム600の部位(構成要素)の各々は、その操作に必要な他の構成要素を含むことができ、さらに、本明細書に記載されたもの以外の機能を提供するために、追加の構成要素を含み得る。
【0040】
当業者であれば、本特許請求の範囲から逸脱することなく、上記実施形態に対して様々な応用や修正を行うことができるであろう。
従って、本特許請求の範囲は、本明細書に具体的に記載されている仕方とは異なるように実施可能なことを理解されたい。
【符号の説明】
【0041】
110 CTデータ(コンピュータ断層撮影データ)
120 PETデータ(陽電子放出型断層撮影データ)
150 弾性運動補正(エラスティック運動補正)部
180 減衰補正画像
310 CTデータ
320 PETデータ
330 第2の放射性画像化走査データ
420 ビニング(binning)部
550 ビニング部
600 システム
610 構台(ガントリー)
612 中空部(ボア)
615 ベッド(床)
616 基部(ベース)
617 動きモニタ(モーション・モニタ)
620 制御システム
622 処理ユニット(処理装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6