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特許7159403射出成形品の分別装置、および射出成形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】射出成形品の分別装置、および射出成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20221017BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20221017BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/40
B29C45/17
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021105155
(22)【出願日】2021-06-24
(62)【分割の表示】P 2017192179の分割
【原出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2021142760
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2016213819
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 義久
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 篤
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-175619(JP,A)
【文献】特開2016-074148(JP,A)
【文献】特開平03-266621(JP,A)
【文献】特開平04-238013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B22D 17/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機で成形される成形品の特徴を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出される特徴と対比される特徴を記憶する記憶部と、
前記抽出部で抽出される特徴と、前記記憶部に記憶されている特徴とを対比する処理部とを有し、
前記記憶部は、前記抽出部で抽出される特徴と対比される特徴を、前記成形品の搬送先と対応付けて記憶し、
前記処理部は、前記抽出部で抽出される特徴と一致する特徴が前記記憶部に記憶されているか否かを判断する対比判断を行い、前記一致する特徴が前記記憶部に記憶されていない場合、前記抽出部で抽出される特徴を新規な特徴として前記記憶部に記憶し、次回以降の前記対比判断に用いる、射出成形品の分別装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記一致する特徴が前記記憶部に記憶されていない場合、前記抽出部で抽出される特徴を新規な特徴として搬送先と対応付けて前記記憶部に記憶する、請求項1に記載の射出成形品の分別装置。
【請求項3】
記処理部は、前記抽出部で抽出される特徴と、前記記憶部に記憶されている特徴とを対比して、前記成形品の前記搬送先を選択する、請求項1または2に記載の射出成形品の分別装置。
【請求項4】
前記処理部で選択した前記搬送先に、前記成形品を搬送する搬送部をさらに有する、請求項3に記載の射出成形品の分別装置。
【請求項5】
前記抽出部は、一の前記射出成形機で成形される複数の前記成形品を、前記成形品の品質別に分別するための特徴を抽出する、請求項1~4のいずれか1項に記載の射出成形品の分別装置。
【請求項6】
前記抽出部で抽出される特徴の実績値の目標値に対する割合を算出する割合算出部を有する、請求項5に記載の射出成形品の分別装置。
【請求項7】
前記抽出部は、複数の前記射出成形機で成形される複数の前記成形品を、前記射出成形機別に分別するための特徴を抽出する、請求項1~6のいずれか1項に記載の射出成形品の分別装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の射出成形品の分別装置と、前記射出成形機とを有する射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形品の分別装置、および射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の射出成形機から取出された成形品を、ベルトコンベアなどの搬送装置で下流に搬送し、分別して箱に詰める射出成形システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。この射出成形システムは、複数の成形品の画像などを記憶手段に記憶しておき、画像取得手段によって取得された成形品画像と、記憶手段に記憶された成形品の画像とによって、搬送された成形品の種類を識別して、成形品を分別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5863922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、成形品の分別のため、成形品の画像などの情報を予め記憶手段に記憶しておく必要があり、成形開始までの準備が煩雑であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、容易に成形を開始できる、射出成形品の分別装置の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
射出成形機で成形される成形品の特徴を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出される特徴と対比される特徴を記憶する記憶部と、
前記抽出部で抽出される特徴と、前記記憶部に記憶されている特徴とを対比する処理部とを有し、
前記記憶部は、前記抽出部で抽出される特徴と対比される特徴を、前記成形品の搬送先と対応付けて記憶し、
前記処理部は、前記抽出部で抽出される特徴と一致する特徴が前記記憶部に記憶されているか否かを判断する対比判断を行い、前記一致する特徴が前記記憶部に記憶されていない場合、前記抽出部で抽出される特徴を新規な特徴として前記記憶部に記憶し、次回以降の前記対比判断に用いる、射出成形品の分別装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、容易に成形を開始できる、射出成形品の分別装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による射出成形システムを示す図である。
図2】第2実施形態による射出成形システムを示す図である。
図3】一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図4】一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図5】一実施形態による射出成形システムの成形材料のリサイクル経路を示す図である。
図6】一実施形態による分別装置のコンピュータの構成要素を機能ブロックで示す図である。
図7】一実施形態による分類部の分類結果を示す図である。
図8】一実施形態による分類結果表示部によって表示装置に表示される画像を示す図である。
図9】一実施形態による算出結果表示部によって表示装置に表示される画像を示す図である。
図10図8に示す画像および図9に示す画像の少なくとも一方と同時に表示される画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態による射出成形システムを示す図である。射出成形システムは、成形品11を成形する射出成形機10と、射出成形機10に取付けられた金型装置から成形品11を取出す取出機20と、取出機20によって取出された成形品11を搬送する搬送装置30と、搬送装置30で搬送される成形品11を分別する分別装置50とを備える。
【0011】
射出成形機10は、金型装置の型閉、型締および型開を行う型締装置と、金型装置の内部に成形材料を充填する射出装置とを備える。射出装置は、成形材料を加熱して溶融させる加熱シリンダを有する。金型装置は、固定金型と可動金型とを含む。型締時に固定金型と可動金型との間にキャビティ空間が形成され、射出装置がキャビティ空間に液状の成形材料を充填する。成形材料は樹脂などを含む。キャビティ空間に充填された溶融樹脂が固化されることで、成形品11が得られる。キャビティ空間の数は複数であってもよく、複数の成形品11が同時に成形されてもよい。成形品11は、型開後に金型装置から取出される。射出成形機10は、成形品11を繰り返し成形する。
【0012】
取出機20は、型開後の金型装置から成形品11を取出し、搬送装置30に渡す。各成形品11は、同じ姿勢で、搬送装置30に渡されてよい。尚、成形品11は射出成形機10から自由落下で搬送装置30に渡されてもよく、この場合、取出機20は不要である。
【0013】
搬送装置30は、複数の成形品11を、順次、分別装置50に搬送する。各成形品11は、同じ姿勢で、分別装置50に搬送されてよい。搬送装置30としては、例えばベルトコンベアなどが用いられる。
【0014】
分別装置50は、成形品11を特徴別に分別する。分別装置50は、成形品11の特徴を抽出する抽出部51と、抽出部51で抽出される特徴と対比される特徴を記憶する記憶部52と、抽出部51で抽出される特徴と記憶部52で記憶される特徴とを対比する処理部53とを有する。
【0015】
抽出部51は、例えば一の射出成形機10で成形される複数の成形品11を、品質別に分別するための特徴を抽出する。特徴は、例えば成形品11の品質を表す指標であり、成形品11の品質検査に用いられる物理量が用いられる。成形品11の品質を表す特徴としては、例えば成形品11の外観、重量、温度などが用いられる。成形品11の外観には、成形品11の寸法や形状、色などが含まれる。これらの特徴は、単独で用いられてよいし、組合わせて用いられてもよい。複数種類の特徴を組合わせて用いることで、成形品11の品質を細かく分別できる。
【0016】
成形品11の品質を低下させる成形不良としては、バリ、ショート、オーバーパック、ひけ、反り、異物の混入、焼け、黄変などが挙げられる。バリは、キャビティ空間から溶融樹脂が漏れることで発生する。ショートは、キャビティ空間の全体に溶融樹脂が行き渡らない現象である。オーバーパックは、キャビティ空間に樹脂が過充填されることである。ひけは、溶融樹脂の冷却収縮によって生じる。反りは、樹脂の収縮が均一ではないことが原因で発生する現象である。異物の混入は、例えば加熱シリンダの内壁に焦げ付いた樹脂が剥がれ落ちることで発生する。焼けは、例えばキャビティ空間のガス抜き不良などによって、ガスが断熱圧縮され温度が急激に高くなり、樹脂が燃えて発生する。黄変は、加熱シリンダ内での樹脂の滞留時間が長く、樹脂が変質する現象である。
【0017】
抽出部51は、成形品11の外観を測定する外観測定部51aを含む。外観測定部51aは、例えば、成形品11の画像を撮像する撮像部と、撮像部で撮像した画像を画像処理する画像処理部とを有する。成形品11の画像処理によって、成形品の寸法や形状、色などが測定できる。
【0018】
撮像部としては、CCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどのカメラが用いられる。画像処理部としては、コンピュータなどが用いられる。画像処理部の役割を、記憶部52と処理部53を含むコンピュータ54が兼ねてもよい。
【0019】
成形品11が良品である場合、成形品11の寸法や形状が目標値と一致する。成形品11の寸法や形状の目標値は、金型装置のキャビティ空間の寸法や形状に基づき設定される。また、成形品11が良品である場合、成形品11の色が例えば色度座標系で目標値と一致する。成形品11の色の目標値は、樹脂の種類に固有の色に基づき設定される。
【0020】
尚、本明細書において、寸法や形状、色などの特徴の実績値が「目標値と一致する」とは、実績値が目標値と許容範囲内で一致することを意味する。また、特徴の実績値が「目標値からずれる」とは、実績値が目標値の許容範囲外であることを意味する。許容範囲は、成形品11の用途、特徴の種類などに応じて適宜設定される。
【0021】
一方、成形品11が不良品である場合、成形品11の寸法や形状が目標値からずれることがある。例えば、ショートが発生する場合、成形品11の寸法が目標値よりも小さくなる。バリが発生する場合、成形品11の寸法が目標値よりも大きくなる。また、反りが発生する場合、成形品11が歪むので、成形品11の形状(例えば撓み量)が目標値からずれる。焼けや黄変が発生する場合、成形品11が変色するので、成形品11の色が目標値からずれる。
【0022】
また、抽出部51は、成形品11の重量を測定する重量測定部51bを含む。重量測定部としては、一般的なものが用いられる。成形品11は、搬送部55によって搬送装置30から重量測定部51bに搬送される。尚、重量測定部51bと搬送装置30との間で成形品11を搬送する、専用の搬送装置が設けられてもよい。
【0023】
成形品11が良品である場合、成形品11の重量は目標値と一致する。成形品11の重量の目標値は、例えば、金型装置のキャビティ空間の寸法や形状、キャビティ空間に充填される樹脂の目標密度などに基づき設定される。
【0024】
一方、成形品11が不良品である場合、成形品11の重量は目標値からずれることがある。例えば、ショートやひけが発生する場合、成形品11の重量は目標値よりも小さくなる。また、バリやオーバーパックが発生する場合、成形品11の重量は目標値よりも大きくなる。成形品11の重量の変動は、異物の混入によっても生じる。
【0025】
さらに、抽出部51は、成形品11の温度を測定する温度測定部51cを含む。温度測定部51cとしては、放射温度計などの非接触式温度計が用いられるが、熱電対などの接触式の温度計が用いられてもよい。
【0026】
成形品11が良品である場合、成形品11の温度が目標値と一致する。成形品11の温度の目標値は、加熱シリンダの温度や加熱シリンダ内での樹脂の滞留時間、金型装置の温度、金型装置からの成形品の取出しから成形品の温度測定までの経過時間などに基づき設定される。
【0027】
一方、成形品11が不良品である場合、成形品11の温度が目標値からずれることがある。例えば、焼けが発生する場合、成形品11の温度は目標値よりも高温になる。成形品11の温度の変動は、ショートやひけ、オーバーパックなどによっても生じうる。成形品11の放熱の進みやすさが変動するためである。
【0028】
記憶部52と処理部53とは、例えばコンピュータ54で構成される。コンピュータ54は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリなどの記憶媒体と、入力インターフェイスと、出力インターフェイスとを有する。
【0029】
コンピュータ54は、記憶媒体に記憶されたプログラムをCPUに実行させることにより、各種の機能を実現する。記憶媒体が記憶部52に相当し、CPUが処理部53に相当する。
【0030】
また、コンピュータ54は、入力インターフェイスで外部からの信号を受信し、出力インターフェイスで外部に信号を送信する。例えば、コンピュータ54は、入力インターフェイスで抽出部51からの信号を受信し、出力インターフェイスで搬送部55に信号を送信する。
【0031】
記憶部52は、抽出部51で抽出される特徴と対比される特徴を記憶する。記憶部52に記憶される特徴としては、例えば上記目標値などが挙げられる。上記目標値などは、成形開始前に、予め記憶部52に記憶されていてもよい。上記目標値は、成形開始前に、射出成形機10から分別装置50に送信され、記憶部52に記憶されてもよい。
【0032】
尚、成形開始前に、抽出部51で抽出される特徴と対比される特徴が、記憶部52に全く記憶されていなくてもよい。抽出部51で抽出される特徴と対比される特徴は、成形開始後に、記憶部52に記憶されてもよい。記憶部52に記憶される特徴の種類や数は、予め設定されている。
【0033】
処理部53は、成形開始後、抽出部51で抽出される特徴と記憶部52に記憶されている特徴とを対比する。具体的には、先ず、処理部53は、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されているか否かを判断する。抽出部51で抽出される特徴が複数である場合、当該複数の特徴の組合せと一致する複数の特徴の組合せが記憶部52に記憶されているか否かの判断が行われる。
【0034】
抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されている場合、今回対比判断が行われる成形品11は、過去に対比判断が行われたいずれかの成形品11と同じ特徴を有していると判断される。尚、抽出部51で抽出される特徴と、記憶部52に記憶されている特徴とは、許容範囲内で一致すればよい。許容範囲は、上述の如く、成形品11の用途、特徴の種類などに応じて適宜設定される。
【0035】
一方、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されていない場合、今回対比判断が行われる成形品11は、過去に対比判断が行われたいずれの成形品11とも異なる特徴を有していると判断される。この場合、処理部53は、新規な特徴として、抽出部51で抽出される特徴を記憶部52に記憶する。この場合、処理部53は、抽出部51で抽出される特徴を新規な特徴として搬送先と対応付けて記憶部に記憶してよい。記憶部52に記憶された新規な特徴は、次回以降の対比判断に用いられる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、処理部53は、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されているか否かを判断する。処理部53は、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されていない場合、抽出部51で抽出される特徴を、新規な特徴として記憶部52に記憶する。よって、対比判断に用いられる特徴を成形開始前に記憶部52に記憶しておく手間を省略でき、容易に成形を開始できる。
【0037】
また、本実施形態によれば、処理部53は、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されていない場合、抽出部51で抽出される特徴を、新規な特徴として、搬送先と対応付けて記憶部52に記憶する。よって、成形品11の搬送先を、成形品11の特徴に応じて分けることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、抽出部51は、一の射出成形機10で成形される複数の成形品11を、成形品11の品質別に分別するための特徴を抽出する。よって、成形品11を良品と不良品とに分別でき、不良品をさらに細かく特徴ごとに分別できる。その結果、成形不良の種類や程度、発生頻度などを管理できる。
【0039】
次に、上記記憶部52および上記処理部53について、さらに説明する。
【0040】
記憶部52は、抽出部51で抽出される特徴と対比される特徴を、成形品11の搬送先別に記憶する。成形品11の搬送先の候補位置P1~P5は、成形開始前に、記憶部52に記憶されていてよい。成形品11の搬送先の候補数は、図1では5つであるが、複数である限り、特に限定されない。
【0041】
処理部53は、成形開始後、抽出部51で抽出される特徴と記憶部52に記憶されている特徴とを対比して、成形品11の搬送先を選択する。
【0042】
具体的には、先ず、処理部53は、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されているか否かを判断する。抽出部51で抽出される特徴が複数である場合、当該複数の特徴の組合せと一致する複数の特徴の組合せが記憶部52に記憶されているか否かの判断が行われる。
【0043】
抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されている場合、今回対比判断が行われる成形品11の搬送先は、過去に対比判断が行われたいずれかの成形品11の搬送先と同じになる。尚、抽出部51で抽出される特徴と、記憶部52に記憶されている特徴とは、許容範囲内で一致すればよい。許容範囲は、上述の如く、成形品11の用途、特徴の種類などに応じて適宜設定される。
【0044】
一方、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されていない場合、今回対比判断が行われる成形品11の搬送先は、過去に対比判断が行われたいずれの成形品11の搬送先とも異なる、新規な搬送先になる。新規な搬送先は、記憶部52に予め記憶されている搬送先の候補位置から選択され、対比判断に用いられる特徴が未登録である候補位置から選択される。この場合、処理部53は、新規な特徴として、抽出部51で抽出される特徴を搬送先と対応付けて記憶部52に記憶する。記憶部52に記憶された新規な特徴は、次回以降の対比判断に用いられる。
【0045】
分別装置50は、処理部53で選択した搬送先に、成形品11を搬送する搬送部55をさらに有してよい。これにより、品質別に成形品11を集めることができる。良品は、箱詰めされ、出荷される。不良品は、検査に回されたり、廃棄されたりする。不良品は、破砕され、成形材料として再利用されてもよい。
【0046】
搬送部55は、例えば天井走行式の搬送車55aなどを含む。天井走行式の搬送車55aは、天井に設けられるレール55bに沿って、成形品11を搬送する。天井走行式の搬送車55aの代わりに、または天井走行式の搬送車55aに加えて、床に設置される多関節ロボットなどが用いられてもよい。
【0047】
尚、搬送部55は、搬送車55aなどの他に、搬送装置30をさらに含んでもよい。例えば、搬送車55aなどが搬送装置30から不良品を拾い上げ、良品は搬送装置30によって別の搬送先に搬送されてもよい。また、搬送車55aなどが搬送装置30から良品を拾い上げ、不良品は搬送装置30によって別の搬送先に搬送されてもよい。
【0048】
尚、抽出部51は、本実施形態では搬送装置30が成形品を搬送する搬送経路に沿って設けられるが、抽出部51の設置位置は、特に限定されない。例えば、抽出部51は、取出機20に設けられてもよいし、射出成形機10に設けられてもよいし、金型装置に設けられてもよい。
【0049】
抽出部51が射出成形機10、金型装置または取出機20に設けられる場合、搬送部55は取出機20を含んでもよい。取出機20は、良品を搬送装置30の搬送経路に載せ、不良品を搬送装置30の搬送経路に載せずに別の搬送先に搬送してもよい。
【0050】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、一の射出成形機10で成形される複数の成形品11を、成形品11の品質別に分別する。これに対し、本実施形態では、複数の射出成形機10A~10Cで成形される複数の成形品11A~11Cを、射出成形機10A~10C別に分別する。以下、相違点について主に説明する。
【0051】
図2は、第2実施形態による射出成形システムを示す図である。射出成形システムは、複数の射出成形機10A~10C、および複数の取出機20A~20Cを有する。複数の射出成形機10A~10Cは、搬送装置30の搬送方向に沿って並んでいる。複数の射出成形機10A~10Cで成形される複数の成形品11A~11Cは、用途などが異なるものであってよく、外観や重量、温度などの特徴が互いに異なるものであってよい。一の搬送装置30が複数の射出成形機10A~10Cで成形された複数の成形品11A~11Cを搬送する。分別装置50は、一の搬送装置30で搬送される複数の成形品11A~11Cを、成形品11A~11Cが成形される射出成形機10A~10C別に分別する。
【0052】
分別装置50は、抽出部51と、記憶部52と、処理部53とを有する。また、分別装置50は、搬送部55をさらに有する。
【0053】
抽出部51は、例えば複数の射出成形機10A~10Cで成形される複数の成形品11A~11Cを、射出成形機10A~10C別に分別するための特徴を抽出する。射出成形機10A~10C別に分別するための特徴としては、例えば成形品11A~11Cの外観、重量、温度などが用いられる。成形品11A~11Cの外観には、成形品11A~11Cの寸法や形状、色などが含まれる。これらの特徴は、単独で用いられてよいし、組合わせて用いられてもよい。複数種類の特徴を組合わせて用いることで、分別の精度を向上できる。
【0054】
抽出部51は、成形品11A~11Cの外観を測定する外観測定部51aを含む。成形品11A~11Cは、用途などが異なる場合、外観も異なる。そのため、成形品11A~11Cの外観に基づいて、成形品11A~11Cが成形される射出成形機10A~10Cを特定できる。
【0055】
また、抽出部51は、成形品11A~11Cの重量を測定する重量測定部51bを含む。成形品11A~11Cは、用途などが異なる場合、重量も異なる。そのため、成形品11A~11Cの重量に基づいて、成形品11A~11Cが成形される射出成形機10A~10Cを特定できる。
【0056】
さらに、抽出部51は、成形品11A~11Cの温度を測定する温度測定部51cを含む。射出成形機10A~10C毎に、加熱シリンダの温度や金型装置の温度、金型装置からの取出から温度測定までの経過時間が異なる。そのため、成形品11A~11Cの温度に基づいて、成形品11A~11Cが成形される射出成形機10A~10Cを特定できる。
【0057】
記憶部52は、抽出部51で抽出される特徴と対比される特徴を、成形品11A~11Cの搬送先と対応付けて記憶する。成形品11A~11Cの搬送先の候補位置P1~P5は、成形開始前に記憶部52に記憶されていてよい。一方、抽出部51で抽出される特徴と対比される特徴は、詳しくは後述するが、成形開始前に記憶部52に記憶されていなくてよく、成形開始後に記憶部52に記憶されてよい。
【0058】
処理部53は、成形開始後、抽出部51で抽出される特徴と記憶部52に記憶されている特徴とを対比して、成形品11A~11Cの搬送先を選択する。
【0059】
具体的には、先ず、処理部53は、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されているか否かを判断する。抽出部51で抽出される特徴が複数である場合、当該複数の特徴の組合せと一致する複数の特徴の組合せが記憶部52に記憶されているか否かの判断が行われる。
【0060】
抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されている場合、今回対比判断が行われる成形品の搬送先は、過去に対比判断が行われたいずれかの成形品の搬送先と同じになる。尚、抽出部51で抽出される特徴と、記憶部52に記憶されている特徴とは、許容範囲内で一致すればよい。許容範囲は、上述の如く、成形品11の用途、特徴の種類などに応じて適宜設定される。
【0061】
一方、抽出部51で抽出される特徴と一致する特徴が記憶部52に記憶されていない場合、今回対比判断が行われる成形品の搬送先は、過去に対比判断が行われたいずれの成形品の搬送先とも異なる、新規な搬送先になる。新規な搬送先は、記憶部52に予め記憶されている搬送先の候補位置から選択される。
【0062】
この場合、処理部53は、新規な特徴として、抽出部51で抽出される特徴を搬送先と対応付けて記憶部52に記憶する。記憶部52に記憶された新規な特徴は、次回以降の対比判断に用いられる。よって、対比判断に用いられる特徴を成形開始前に記憶部52に記憶しておく手間を省略でき、容易に成形を開始できる。
【0063】
搬送部55は、処理部53で選択した搬送先に、成形品11A~11Cを搬送する。搬送部55は搬送車55aなどを含む。尚、搬送部55は、搬送車55aなどの他に、搬送装置30をさらに含んでもよい。例えば搬送車55aなどが一部の射出成形機で成形された成形品(例えば成形品11A、11B)を搬送装置30から拾い上げ、残りの射出成形機で成形された成形品(例えば成形品11C)は搬送装置30によって別の搬送先に搬送されてもよい。
【0064】
尚、抽出部51は、本実施形態では搬送装置30が成形品を搬送する搬送経路に沿って設けられるが、抽出部51の設置位置は、特に限定されない。例えば、抽出部51は、取出機20に設けられてもよいし、射出成形機10に設けられてもよいし、金型装置に設けられてもよい。
【0065】
抽出部51が射出成形機10、金型装置または取出機20に設けられる場合、搬送部55は取出機20を含んでもよい。取出機20は、良品を搬送装置30の搬送経路に載せ、不良品を搬送装置30の搬送経路に載せずに別の搬送先に搬送してもよい。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、抽出部51は、複数の射出成形機10A~10Cで成形される複数の成形品11A~11Cを、射出成形機10A~10C別に分別するための特徴を抽出する。よって、複数の射出成形機10A~10Cで成形される複数の成形品11A~11Cの用途が異なる場合に、成形品11A~11Cを用途別に分別できる。
【0067】
分別装置50は、複数の射出成形機10A~10Cで成形される複数の成形品11A~11Cを、射出成形機10A~10C別に分別すると共に、さらに品質別に分別してもよい。一の射出成形機で成形される成形品の品質にばらつきが生じると、一の射出成形機で成形される成形品の特徴にばらつきが生じる。一の射出成形機で成形される成形品の特徴は、複数種類の品質(例えば良品と不良品)の特徴を含む。そのため、抽出部51で抽出される特徴と記憶部52に記憶されている特徴とが一致すると判断する許容範囲を狭めれば、複数の成形品11A~11Cを射出成形機10A~10C別に分別できるだけではなく、さらに品質別にも分別できる。尚、品質の種類は、良品と不良品の2種類には限定されず、3種類以上でもよい。
【0068】
また、成形品11A~11Cは、用途などが同じで、外観や重量が同じでもよい。その場合、射出成形機10A~10Cにおいて加熱シリンダの温度や金型装置の温度が同じであっても、射出成形機10A~10Cが搬送装置30の搬送方向に沿って並んでいれば、金型装置からの取出から温度測定までの経過時間が異なる。そのため、成形品11A~11Cの温度に基づいて、成形品11A~11Cが成形される射出成形機10A~10Cを特定できる。これにより、例えば不良率の高い射出成形機を特定できる。
【0069】
[変形例]
以上、射出成形品の分別装置の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0070】
図3は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図4は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。図3図4において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機の幅方向である。
【0071】
射出成形機10は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700と、フレーム900とを有する。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。尚、図2に示す射出成形機10A、10B、10Cは、図1に示す射出成形機10と同様に構成されるので、説明を省略する。
【0072】
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図3および図4中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図3および図4中左方向)を後方として説明する。
【0073】
型締装置100は、金型装置800の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
【0074】
固定プラテン110は、フレーム900に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0075】
可動プラテン120は、フレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされる。フレーム900上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0076】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型810と可動金型820とで金型装置800が構成される。
【0077】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレーム900上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレーム900上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0078】
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレーム900に対し固定され、トグルサポート130がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレーム900に対し固定され、固定プラテン110がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0079】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられる。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0080】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0081】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0082】
尚、トグル機構150の構成は、図3および図4に示す構成に限定されない。例えば図3および図4では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0083】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0084】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0085】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
【0086】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0087】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間801の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0088】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0089】
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締完了位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0090】
型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0091】
尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0092】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0093】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0094】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0095】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0096】
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0097】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0098】
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
【0099】
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0100】
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0101】
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
【0102】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0103】
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
【0104】
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
【0105】
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
【0106】
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
【0107】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
【0108】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0109】
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図3および図4中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図3および図4中左方向)を後方として説明する。
【0110】
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
【0111】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0112】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0113】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配設される可動部材830と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0114】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0115】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0116】
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図3および図4中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図3および図4中右方向)を後方として説明する。
【0117】
射出装置300は、フレーム900に対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置800に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
【0118】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0119】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図3および図4中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0120】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0121】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0122】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0123】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図4参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0124】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図3参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0125】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0126】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0127】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0128】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0129】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0130】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0131】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
【0132】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0133】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0134】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
【0135】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0136】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0137】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0138】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0139】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0140】
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図3および図4中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図3および図4中右方向)を後方として説明する。
【0141】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0142】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0143】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0144】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0145】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0146】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0147】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0148】
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図3図4に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェィス703と、出力インターフェィス704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェィス703で外部からの信号を受信し、出力インターフェィス704で外部に信号を送信する。
【0149】
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
【0150】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0151】
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
【0152】
操作画面は、射出成形機10の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
【0153】
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0154】
図5は、一実施形態による射出成形システムの成形材料のリサイクル経路を示す図である。図5に示すように、射出成形システムは、分別装置50で分別された不良の成形品を粉砕し再生材を作製する粉砕機70、および粉砕機70で作製される再生材とバージン材タンク71から供給されるバージン材とを所定の割合で混合する混合機72を有する。粉砕機70や混合機72としては、一般的なものが用いられる。射出成形システムは、混合機72において再生材とバージン材とが所定の割合で混合されたものを、成形材料として、シリンダ310の供給口311(図3および図4参照)に供給する。バージン材は、再生材とは異なり、シリンダ310内で加熱された履歴や金型装置800内に充填にされた履歴の無いものであって、例えばペレタイザーなどで作製される。
【0155】
図6は、一実施形態による分別装置のコンピュータの構成要素を機能ブロックで示す図である。図6に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0156】
図6に示すように、分別装置50は、抽出部51で抽出される特徴の実績値の目標値に対する割合(以下、単に「割合」とも呼ぶ。)を算出する割合算出部61を有する。「実績値の目標値に対する割合を算出する」ことは、実績値が目標値の割合で設定された区分(区分については後述する)のどの区分に属するかを求めることも含む。割合算出部61によって割合を算出する特徴としては、成形品11の品質を表すものが用いられ、例えば成形品11の寸法、形状(撓みを含む)、色、重量、温度などが挙げられる。
【0157】
成形品11の寸法や形状の目標値は、金型装置800のキャビティ空間801の寸法や形状に基づき設定される。成形品11の重量の目標値は、例えば、金型装置800のキャビティ空間801の寸法や形状、キャビティ空間801に充填される樹脂の目標密度などに基づき設定される。成形品11の温度の目標値は、シリンダ310の温度やシリンダ310内での樹脂の滞留時間、金型装置800の温度、金型装置800からの成形品11の取出しから成形品11の温度測定までの経過時間などに基づき設定される。
【0158】
割合算出部61で算出される割合は、例えば百分率で表されてよい。割合が100%であることは、実績値が目標値と一致することを表す。割合は、特徴(例えば寸法、形状、色、重量、温度)毎に算出される。割合は、実績値の分類などに用いられ、ひいては成形品11の搬送先の選択などに用いられる。
【0159】
図6に示すように、分別装置50は、抽出部51で抽出される特徴の実績値を、割合算出部61で算出される割合に応じて、予め設定される複数の区分のうちのいずれか1つの区分に分類する分類部62を有する。分類部62は、実績値の目標値に対する割合に基いて、実績値が属する区分を特定する。区分の数や各区分の範囲は、予め設定される。区分の数や各区分の範囲は、全ての特徴について、一律に設定されてもよいし、独立に設定されてもよい。区分の数や各区分の範囲は、詳しくは後述するが、適宜変更されてよい。
【0160】
図7は、一実施形態による分類部の分類結果を示す図である。図7において、区分Aの範囲は割合が98%以上102%以下の範囲であり、区分Bの範囲は割合が96%以上98%未満および102%以上104%未満の範囲であり、区分Cの範囲は割合が94%以上96%未満および104%以上106%未満の範囲である。尚、区分の数は、3つに限定されない。また、各区分の範囲は、上記の範囲に限定されない。図7において、実績値の目標値に対する割合(加工データ)に代えて実績値の生データが表示されてもよいし、実績値の加工データと実績値の生データの両方が並べて表示されてもよい。
【0161】
図7に示すように、分類部62は、抽出部51で抽出される特徴の実績値を、割合算出部61で算出される割合に応じて、予め設定される複数の区分のいずれか1つの区分に分類する。分類部62による分類は、特徴(例えば寸法、形状、色、重量、温度)毎に行われ、ショット番号等と対応付けて記憶部52に記憶される。分類部62の分類結果は、詳しくは後述するが、成形品11の搬送先の選択などに用いられる。
【0162】
図6に示すように、分別装置50は、分類部62の分類結果に基づき、成形品11の搬送先を選択する搬送先選択部63を有してよい。搬送先選択部63は、分類部62の分類結果に基づき、例えば図7に示す4つの搬送先P1~P4の中から実際の搬送先を選択する。図7において、搬送先P1は出荷用であり、搬送先P2およびP3は再生用であり、搬送先P4は廃棄用である。
【0163】
出荷用の搬送先P1に搬送された成形品11は、良品として出荷される。再生用の搬送先P2、P3に搬送された成形品11は、粉砕機70で粉砕され、再生材として用いられる。廃棄用の搬送先P4に搬送された成形品11は、樹脂の劣化度が再生材として許容できる範囲外であるため、再生材として用いられることなく、廃棄される。
【0164】
尚、再生用の搬送先は、本実施形態では2つであるが、3つ以上でもよいし、1つでもよい。また、再生用の搬送先は無くてもよく、この場合、搬送先選択部63は出荷用の搬送先と廃棄用の搬送先の中から実際の搬送先を選択する。また、搬送先の用途は、出荷用、再生用、廃棄用には限定されず、例えば精密検査用などでもよい。精密検査用の搬送先に搬送された成形品11は、精密検査機で検査され、その検査結果に基づき出荷用、再生用、廃棄用のいずれかの搬送先に搬送される。
【0165】
搬送先選択部63は、成形品11の搬送先として再生用の搬送先を選択肢に含む場合、搬送先の選択に、色の実績値の分類結果を用いてよい。成形品11の色は樹脂の劣化度を表すため、樹脂の劣化度に応じて搬送先を選択できる。
【0166】
色の実績値が区分Aに分類される場合、搬送先選択部63は出荷用の搬送先P1または再生用の搬送先P2を選択する。出荷用の搬送先P1と再生用の搬送先P2のどちらを選択するかは、色以外の特徴の実績値の分類結果に基づき決定される。
【0167】
例えば、色以外の全ての特徴の実績値が区分Aに分類される場合、搬送先選択部63は出荷用の搬送先P1を選択する。一方、色以外の少なくとも1つの特徴の実績値が区分Bまたは区分Cに分類される場合、搬送先選択部63は再生用の搬送先P2を選択する。
【0168】
一方、色の実績値が区分Bに分類される場合、搬送先選択部63は再生用の搬送先P3を選択する。また、色の実績値が区分Cに分類される場合、搬送先選択部63は廃棄用の搬送先P4を選択する。
【0169】
ところで、再生用の搬送先P2と、再生用の搬送先P3とでは、集められる成形品11の樹脂の劣化度が異なる。そのため、射出成形システムは、再生材の原料である成形品11の搬送先P2、P3に基づき、再生材とバージン材との混合比を設定してよい。再生材とバージン材とを混合してなる成形材料の品質を一定の範囲に維持できる。
【0170】
再生用の搬送先P3に集められる成形品11は、再生用の搬送先P2に集められる成形品11に比べて劣化している。そのため、再生材の原料である成形品11の搬送先がP3である場合、再生材の原料である成形品11の搬送先がP2である場合に比べて、再生材とバージン材とを混合してなる成形材料に占める再生材の割合が小さく設定される。
【0171】
以上説明したように、分類部62の分類結果は、再生材とバージン材の混合比などの成形条件の設定に役立ててもよい。また、分類部62の分類結果は、後述するように、成形品11の不良の発生時期や不良の度合い、射出成形機10の機械の状態(例えば劣化度)の分析に役立ててもよい。
【0172】
図6に示すように、分別装置50は、分類部62の分類結果を表示装置に表示する分類結果表示部64を有してよい。分類部62の分類結果を表示する表示装置としては、液晶ディスプレイなどの一般的なものが用いられる。分類部62の分類結果を表示する表示装置として、射出成形機10の表示装置760が用いられてもよい。
【0173】
図8は、一実施形態による分類結果表示部によって表示装置に表示される画像を示す図である。図8において、縦軸は分類部62の分類結果であり、横軸はショット数である。ショット数は経過時間を表す。
【0174】
図8に示すように、分類結果表示部64は、例えば分類部62の分類結果の経時変化を表示装置に表示する。表示装置に表示する画像は、特徴(例えば寸法、形状、色、重量、温度)毎に作成されてよい。
【0175】
図8に示す画像を見たユーザは、成形品11の不良の発生時期や不良の度合い、射出成形機10の機械の状態などを分析できる。尚、分類結果表示部64は、図8に示す画像の代わりに、図7に示す画像を、表示装置に表示してもよい。
【0176】
図6に示すように、分別装置50は、割合算出部61の算出結果を表示装置に表示する算出結果表示部65を有してよい。割合算出部61の算出結果を表示する表示装置としては、液晶ディスプレイなどの一般的なものが用いられる。割合算出部61の算出結果を表示する表示装置として、射出成形機10の表示装置760が用いられてもよい。
【0177】
図9は、一実施形態による算出結果表示部によって表示装置に表示される画像を示す図である。図9において、縦軸は割合算出部61の算出結果であり、横軸はショット数である。ショット数は経過時間を表す。図9の縦軸の「割合」を、目標値及び実績値で表示することにしてもよい。この場合も、目標値の割合で区分A-C等を設定し、実績値が前記割合で設定された区分のどの区分に属するかを表示することにしてもよい。検出値が目標値の割合で設定された区分のどの区分に属するかを求めることも、抽出部で抽出される特徴の実績値の目標値に対する割合を算出することに含まれる。図9に示す画像は、図8に示す画像と同時に表示されてもよいし、図8に示す画像と切り替えて表示されてもよい。
【0178】
図9に示すように、算出結果表示部65は、例えば割合算出部61の算出結果の経時変化を表示装置に表示する。表示装置に表示する画像は、特徴(例えば寸法、形状、色、重量、温度)毎に作成されてよい。
【0179】
図9に示す画像を見たユーザは、成形品11の不良の発生時期や不良の度合い、射出成形機10の機械の状態などを分析できる。尚、算出結果表示部65は、図9に示す画像の代わりに、図7に示す画像を、表示装置に表示してもよい。
【0180】
図10は、図8に示す画像および図9に示す画像の少なくとも一方と同時に表示される画像を示す図である。図10において、縦軸はロギング値の目標値に対する割合であり、横軸はショット数である。ショット数は経過時間を表す。図10において、ロギング値の目標値に対する割合(加工データ)に代えてロギング値の生データが表示されてもよいし、ロギング値の加工データとロギング値の生データの両方が表示されてもよい。
【0181】
ロギング値とは、射出成形機10の成形動作の管理に用いられる物理量の実績値のことである。成形動作の管理に用いられる物理量としては、例えば時間、位置、圧力、力、温度などが挙げられる。時間は、成形サイクル時間、型閉時間、型開時間、充填時間、計量時間などを含む。位置は、クロスヘッド位置、スクリュ位置などを含む。圧力は、射出圧力などを含む。力は、型締力などを含む。温度は、シリンダ温度などを含む。
【0182】
図10に示す画像は、図8に示す画像および図9に示す画像の少なくとも一方と同時に表示される。成形動作の管理に用いられるロギング値と、成形品11の品質を表す特徴の実績値とを同時に表示することで、機械の状態と成形品の品質との関係を把握できる。
【0183】
図10に示す画像のロギング値は、図8図9に示す画像の特徴の種類などに応じて、適宜選択されてよい。
【0184】
尚、図10に示す画像は、本実施形態では図8に示す画像および図9に示す画像の少なくとも一方と同時に表示されるが、図8に示す画像や図9に示す画像とは別に表示されてもよい。
【0185】
図6に示すように、分別装置50は、分類部62で用いられる区分を設定する区分設定部66を有してよい。区分設定部66は、区分の数や各区分の範囲を設定する。区分の数や各区分の範囲は、ユーザの指令に従って設定されてもよいし、実績値の統計に基づいて設定されてもよい。実績値の統計としては、例えば、実績値と目標値との差の最大値、実績値の分散、実績値の標準偏差などが用いられる。
【0186】
区分の設定変更が行われた場合、分類部62は実績値を新しい区分に分類してよい。その分類結果は、分類結果表示部64によって作製される画像(図8参照)や算出結果表示部65によって作製される画像(図9参照)に反映される。
【符号の説明】
【0187】
10 射出成形機
20 取出機
30 搬送装置
50 分別装置
51 抽出部
51a 外観測定部
51b 重量測定部
51c 温度測定部
52 記憶部
53 処理部
54 コンピュータ
55 搬送部
61 割合算出部
62 分類部
63 搬送先選択部
64 分類結果表示部
65 算出結果表示部
66 区分設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10