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特許7159434髄内釘補助具およびこれを用いた骨接合具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】髄内釘補助具およびこれを用いた骨接合具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20221017BHJP
   A61B 17/76 20060101ALI20221017BHJP
   A61B 17/78 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A61B17/72
A61B17/76
A61B17/78
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021208187
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2022-02-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501046420
【氏名又は名称】HOYA Technosurgical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 健
(72)【発明者】
【氏名】新城 明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅基
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特許第6426482(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第110974385(CN,A)
【文献】特表平06-505423(JP,A)
【文献】特開2007-117603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0046250(US,A1)
【文献】特表2018-524101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/72 - A61B 17/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸孔と該軸孔と交差する方向に伸びる横孔とを有する髄内釘に対して取り付け可能な髄内釘補助具であって、
前記髄内釘の外周壁と対向し、かつ、該外周壁に対して間隔を空けて配置されて、前記髄内釘の軸方向に延在する本体部と、
前記本体部に連続して前記髄内釘の径方向に延在することで、自身の一部が前記髄内釘の上端と対向する連接部と、
前記連接部と前記髄内釘の前記上端の間に介在する位置調整機構と、
前記連接部を前記髄内釘の前記上端に固定可能な固定具と、
を有し、
前記位置調整機構は、前記髄内釘と前記連接部とを前記径方向に相対移動自在に案内する径方向スライド機構と、前記髄内釘と前記連接部とを前記髄内釘の周方向に沿って係合する周方向係合機構と、を有し、
前記位置調整機構は、前記髄内釘の前記上端に着脱自在に固定されるスペーサを有する、
ことを特徴とする髄内釘補助具。
【請求項2】
前記髄内釘を前記軸方向から視た場合に、前記相対移動の方向(以下、「相対移動方向」という。)は、前記横孔の軸方向(以下、「横孔軸方向」という。)に対して交差する方向であり、
前記相対移動方向は、前記横孔軸方向に対して直交する方向を中心として±30°以内の方向であり、
前記位置調整機構は、前記連接部に設けられて、前記相対移動の方向を延在方向とする第一スライド面と、前記上端側に設けられて該第一スライド面と摺動可能な第二スライド面と、を有し、
前記位置調整機構は、前記連接部に設けられる長孔と、前記上端側に設けられて該長孔内の長手方向に摺動自在な突出部を有する、請求項1に記載の髄内釘補助具。
【請求項3】
前記スペーサは、
内部に前記固定具が挿通可能な略筒状体であり、
底部には、前記髄内釘の前記上端に形成されるノッチ部と係止可能な係止片を有し、
上部には、前記径方向スライド機構及び前記周方向係合機構の少なくとも一部が形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の髄内釘補助具。
【請求項4】
前記本体部は、該本体部の一部を前記軸方向の下端に向かうに従って前記髄内釘に近づくように変位させる近接変曲領域を少なくとも一部に有し、
前記本体部は、ワイヤを係止可能なワイヤ係止部を有し、
前記ワイヤ係止部は、前記本体部における前記周方向の側縁に形成される凹部を有し、
前記本体部は、前記軸方向の下端に向かうに従って、前記周方向に変位する周方向変位領域を少なくとも一部に有し、
前記本体部は、前記連接部の近傍に該本体部の先端部よりも肉厚である肉厚部分を有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の髄内釘補助具。
【請求項5】
髄内釘と、
前記髄内釘に挿通される骨接合部材と、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の髄内釘補助具と、を有する、
ことを特徴とする骨接合具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折の治療に用いられる髄内釘に選択的に取り付け可能な髄内釘補助具およびこれを用いた骨接合具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大腿骨および上腕骨等の骨頭を備える骨の骨頭近傍における骨折を治療する方法として、骨の軸方向に沿って、その内部に挿入される髄内釘(ネイル)と、この髄内釘に挿通される骨接合部材(ラグスクリュー)とを備えた手術器具(骨接合具)を用いる場合がある。そしてこのような手術器具において、骨の骨頭側の端部において、後壁または側壁の一部が剥離した領域における骨の癒合が円滑になされるとともに、骨頭近傍の骨折部位を強固に固定することができる手術器具も開発されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、髄内釘に後発的に取り付け可能な当接板を備える。当接板は、髄内釘に固定されることで、大腿骨の骨頭側の端部において、後壁または側壁の一部が剥離した領域に当接され、これにより、この領域に位置する剥離した骨を、剥離する前の位置に再度配置させるためのものである。そしてこの当接板は、固定具による当接板の髄内釘への固定の前では、髄内釘の軸を中心に回動可能なように構成されている。このような構成により、骨接合具を適用する患者に適した位置で、当接板を髄内釘に対して固定することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6426482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、患者の体格や患部の状態は多種多様であり、それらに合わせて効果的な治療および整復を可能とするという観点において、従来の技術では限界があった。例えば、特許文献1に記載の当接板は、髄内釘の軸を中心に回動可能ではあるが、それだけでは骨片との当接が十分に行われない場合もあり、骨片を剥離する前の適切な位置に配置できない可能性がある。
【0006】
より詳しくは、骨接合具(髄内釘や骨接合部材)を用いて骨折部を固定する場合、大腿骨は骨折前の骨に比べて人体の前面側または背面側に捻じれやすい状態となる上、その捻じれる状態も様々である。このような場合に当接板が髄内釘に対して回転しか許容されていと、骨折の状態によっては当接板として適切な位置を設定できない可能性があった。
【0007】
一方で、当接板を髄内釘に対して回転させて固定することが望ましい場合もあり、骨折の状態や、骨接合具で固定した状態に応じて剥離した骨を固定する手段の選択肢は、多様である方が望ましい。また、術者にとっては手技の自由度を高めたい要望もある。
【0008】
また、例えば髄内釘は仕様が規格化されている場合が多く、また骨接合具ごとに使用方法が異なるのでは術者の負担も大きくなる。このため、骨接合具(特に髄内釘)の全体的な仕様変更や交換をすることなく、利便性の高い複数の機能が提供されるとともに、状況に応じて適宜選択的に付与可能とすることが望まれていた。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、髄内釘に選択的に取り付け可能であり、手技の自由度を高めるとともに、患部に応じた適切な固定が可能とすることで効果的な整復を助けることが可能な髄内釘補助具、およびこれを用いた骨接合具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、軸孔と該軸孔と交差する方向に伸びる横孔とを有する髄内釘に対して取り付け可能な髄内釘補助具であって、前記髄内釘の外周壁と対向し、かつ、該外周壁に対して間隔を空けて配置されて、前記髄内釘の軸方向に延在する本体部と、前記本体部に連続して前記髄内釘の径方向に延在することで、自身の一部が前記髄内釘の上端と対向する連接部と、前記連接部と前記髄内釘の前記上端の間に介在する位置調整機構と、前記連接部を前記髄内釘の前記上端に固定可能な固定具と、を有し、前記位置調整機構は、前記髄内釘と前記連接部とを前記径方向に相対移動自在に案内する径方向スライド機構と、前記髄内釘と前記連接部とを前記髄内釘の周方向に沿って係合する周方向係合機構と、を有する、ことを特徴とする髄内釘補助具に係るものである。
【0011】
また、本発明は、髄内釘と、前記髄内釘に挿通される骨接合部材と、上記の髄内釘補助具とを有する、ことを特徴とする骨接合具に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、髄内釘に選択的に取り付け可能であり、手技の自由度を高めるとともに、患部に応じた適切な固定が可能とすることで効果的な整復を助けることが可能な髄内釘補助具、およびこれを用いた骨接合具を提供できる、という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の骨接合具を説明する図であり、(A)一部を透視して示す外観の斜視図、(B)骨接合具の一部を示す縦断面図である。
図2】本実施形態の髄内釘補助具を説明する図であり、(A)外観斜視図、(B)分解斜視図、(C)平面図である。
図3】本実施形態の骨接合具を説明する平面図であり、(A)骨接合具を取り付けた患者が自立している場合の大腿骨付近を示す一部透視平面図、(B)(A)を模式的に示す平面図である。
図4】本実施形態プレート部材を示す図であり、(A)左足用のプレート部材の外観斜視図、(B)右足用のプレート部材の外観斜視図、(C)左足用の連接部を示す平面図、(D)右足用の連接部を示す平面図、(E)左足用の本体部を示す正面図、(F)右足用の本体部を示す正面図である。
図5】(A)スペーサの外観斜視図、(B)スペーサと髄内釘との係合状態を説明する正面図、(C)スペーサの正面図、(D)スペーサの側面図、(E)スペーサの底面図、(F)スペーサの平面(上面)図、(G)固定具の外観斜視図、(H)固定具の正面図、(I)スペーサに固定具を挿通した状態を示す正面図である。
図6】相対移動方向について説明する平面概要図である。
図7】本実施形態のプレート部材について説明する図であり(A)側面図、(B)使用例を示す概要図である。
図8】本実施形態のプレート部材について説明する図であり(A)左足用のプレート部材の正面図、(B)右足用のプレート部材の正面図、(C)使用状態を示す概要図である。
図9】本実施形態の骨接合具を用いた手術方法の一例を示す図である。
図10】本実施形態の左足用のプレート部材を示す図であり、(A)上方から視た平面図(上面図)、(B)下方から視た平面図(底面図)、(C)左側面図、(D)後方から視た正面図、(E)前方から視た背面図、(F)右側面図である。なお、本発明について、別途、部分意匠として意匠登録を受けようとする場合、ここではその部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。
図11】(A)本実施形態のプレート部材の使用状態を示す外観斜視図である。(B)本実施形態のプレート部材を示す外観斜視図である。
図12】本実施形態のスペーサを示す図であり、(A)正面図、(B)左側面図、(C)底面図、(D)平面(上面)図、(E)右側面図、(F)背面図、である。
図13】本実施形態の髄内釘補助具を示す図であり、(A)スペーサの外観斜視図、(B)髄内釘補助具の外観斜視図、(C)スペーサとプレート部材を組み合わせた状態の平面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。以下の各図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。また、各図においては一部の構成を適宜省略して図面を簡略化し、部材の大きさ、形状、厚み等を適宜誇張して表現する。
【0015】
<骨接合具>
まず、図1を参照して本実施形態の骨接合具100の全体構成について説明する。図1は、骨接合具100によって患者の大腿骨500の骨折部位を固定した状態を示す概要図であり、図1(A)が一部を透視して示す外観の斜視図であり、図1(B)が骨接合具100の一部を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、特に断らない限り、骨接合具100で患者の大腿骨500の骨折部位を固定した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側を「前」、背側を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。図1は一例として左足の大腿骨500を示す。
【0016】
図1(A)に示すように、本実施形態の骨接合具100は、例えば、髄内釘(ネイル)101と、骨接合部材(ラグスクリュー)201と、髄内釘補助具10を有する。本実施形態の髄内釘補助具10は、例えば、従来既知の髄内釘101に選択的に取り付け可能である。すなわち本実施形態において、髄内釘101および骨接合部材201は既知のものが採用できる。髄内釘補助具10は、その全体形状が軸状をなす棒状部材である髄内釘101の軸AX1方向の一端(上端T(基端)側)に取り付けられる。図1において、髄内釘101の軸AX1方向は図示上下方向である。
【0017】
図1(B)を参照し、髄内釘101および骨接合部材201について簡単に説明する。なお図1(B)では髄内釘補助具10の図示を省略している。
【0018】
髄内釘101は、大腿骨500の髄腔(内腔)に挿入して用いられる。髄内釘101は、軸AX1方向の基端(上端T)側となる近位部102と、先端(下端)側に位置する遠位部103とを有する。髄内釘101は、近位部102および遠位部103に連通して、その軸AX1方向に伸び、かつ、その両端で開口する軸孔105を有している。軸孔105の近位部102(上端T)側の開口近傍には、その内壁(内面)に雌ネジ106が形成されている。なお、軸孔105は、髄内釘101の近位部102側にのみ設け、遠位部103にまで連通させなくてもよい。すなわち、遠位部103は、中実体であってもよい。
【0019】
髄内釘101は、軸孔105と交差する方向にのびる横孔104を有している。横孔104は、骨接合部材(ラグスクリュー)201が挿通される孔である。軸孔105は、髄内釘101の上下両端で開口する途中で、横孔104に開口しており、この位置で、軸孔105と横孔104とは、互いに連通している。この連接部分、詳細には横孔104の上方の軸孔105内には、骨接合部材201の固定具であるセットスクリュー451が挿入されている。
【0020】
図1(B)に示す断面視において、横孔104は、髄内釘101の軸AX1方向に対して傾斜した軸AX2を有するように、髄内釘101を斜めに貫通している。以下、横孔104の軸AX2方向を横孔軸方向ともいう。
【0021】
横孔104(その軸AX2)の図1(B)における傾斜角度は、骨接合具100の適用部位(骨の状態や骨折の状態など)に応じ、髄内釘101を大腿骨500の髄腔に挿入した際に骨接合部材201により大腿骨500の骨頭502近傍の骨折部位を固定し得るように適宜設定される。本実施形態では一例として、当該傾斜角度は、大腿骨500の軸方向(図示上下方向)と大腿骨500から骨頭502が突出する方向とのなす角度とほぼ一致するように設定されている。
【0022】
また、この例では、髄内釘101は、遠位部103を貫通し、その両端が遠位部103の外周面の両方において開口した固定具挿通孔108を有している。なお、固定具挿通孔108は遠位部103の軸AX1方向とほぼ直交する方向に貫通して形成されている。固定具挿通孔108にはスクリュー601などが挿通され、これにより遠位部103においても髄内釘101と大腿骨500とが固定される。
【0023】
骨接合部材(ラグスクリュー)201もその全体形状が軸状をなす棒状部材であり、髄内釘101の横孔104に挿通される。すなわち、骨接合部材201の軸AX2方向は、横孔104の軸AX2方向(横孔軸方向)と一致する。骨接合部材201は、その先端側に位置し、ネジ溝が形成された係合部(スクリュー部)211と、この係合部211から基端側に伸び、横孔104に挿通される軸部221とを有し、係合部211を骨頭502に捩じ込むことで、骨頭502近傍の骨折部位を固定する。なお、骨接合部材201は複数本挿入されてもよいし、骨接合部材201と共に一般的に使用される回旋防止用のさらなる棒状部材を併用してもよい。
【0024】
また骨接合部材201は、セットスクリュー451により髄内釘101に固定される。セットスクリュー451は、頭部と、雄ネジが形成されたネジ部とからなるネジ形状をなしており、髄内釘101の軸孔105内において、軸孔105の内壁に形成された雌ネジ107にセットスクリュー451のネジ部が螺合するように構成されている。また、骨接合部材201は、軸部221の外周面にその軸AX2方向に延在する溝部222が等間隔で軸周りに複数形成されており、この溝部222内で、セットスクリュー451の先端が係合することで、骨接合部材201は横孔104に挿通された状態でその回動が防止されるとともに髄内釘101に固定される。
【0025】
<髄内釘補助具>
図2図9を参照して、本実施形態に係る髄内釘補助具10について詳細に説明する。図2は髄内釘補助具10の概要を示す図であり、図2(A)は髄内釘補助具10の外観斜視図であり、図2(B)は髄内釘補助具10の分解斜視図であり、図2(C)は髄内釘補助具10の一部を抜き出して示す軸AX1の上方から視た平面図である。
【0026】
図3は、髄内釘101の上端(頂部)T方向から見た大腿骨500および骨接合具100(髄内釘補助具10)の平面図であり、図3(A)は、骨接合具100(髄内釘補助具10)を取り付けた患者が自立している場合の上(患者の頭部)方向から視た左足の大腿骨500付近を示す一部透視平面図である。図3(B)は、図3(A)を模式的に示す平面図である。
【0027】
図2(A)、図2(B)に示すように、髄内釘補助具10は、本体部11と連接部12とを有するプレート部材13と、髄内釘101の上端T(頂部)に着脱自在に固定されるスペーサ14と、連接部12を髄内釘101の上端Tに固定可能な固定具16とを有する。また、髄内釘補助具10は、図2(C)に示すように、連接部12と髄内釘101の上端Tの間に介在する位置調整機構15を有する。後述するように、本発明の好ましい一実施形態において、位置調整機構15は、連接部12の長孔121およびスペーサ14の少なくとも一部によって構成される構成である。位置調整機構15は、髄内釘101と連接部12とが髄内釘101の径方向において相対移動が自在となるように連接部12と髄内釘101とを案内する径方向スライド機構151と、髄内釘101と連接部12との髄内釘101の周方向R(軸AX1周りの方向)に沿う相対回動(回転)が不可となるように連接部12と髄内釘とを係合する周方向係合機構152と、を有する。
【0028】
図3(A)を参照して、大腿骨500の頚部の軸BX2は、遠位端(膝関節部分)にある大腿骨顆部の横軸BX1に対して前捻しており、図3(A)の平面視における前捻の角度(前捻角θ)は、正常な場合で一般的には10°から15°程度である。骨接合部材201は、その軸AX2が概ね大腿骨500の頚部の軸BX2に合わせるように埋入されることが多いが、骨の形状や前捻角θの値、および骨折の状態にもより、必ずしも骨接合部材201の軸AX2と大腿骨500の頚部の軸BX2とが一致するとは限らない。
【0029】
本実施形態では、図3(B)に示す模式図に基づき、大腿骨500内の所望の位置に埋入されている骨接合部材201の軸AX2を基準として説明する。図3(B)は左足の大腿骨500と、左足用の骨接合具100および髄内釘補助具10を模式的に示すものであり、軸AX2を境界として図示上方が前、図示下方が後である。また、図示左方が骨接合部材201の基端側であり、図示右方が骨接合部材201の先端(係合部211)側であって骨頭502(股関節)の方向である。なお、右足用の骨接合具100よび髄内釘補助具10については軸AX2に直交する線分を中心として線対称に配置される以外はこれと同様であるので、説明は省略する。
【0030】
図3(B)および図2(C)を参照して、位置調整機構15の径方向スライド機構151は、髄内釘101と連接部12とが、髄内釘101の径方向において相対移動が自在となるように髄内釘101と連接部12を案内するものである。この髄内釘101と連接部12の相対移動の方向(以下、「相対移動方向D」という。)」とは、髄内釘101をその軸AX1方向(上端T側)から視た場合に、骨接合部材201(横孔104)の軸AX2方向(横孔軸方向)に対して交差する方向である。具体的に、相対移動方向Dは、横孔軸方向に対して略直交する方向であり、より詳細には、相対移動方向Dは、横孔軸方向に対して直交する方向(以下、「横孔直交方向PX2」という。)を中心として±α°以内の許容角を含む方向である。「横孔直交方向PX2を中心として±α°以内の許容角を含む方向」とは、「横孔直交方向PX2を基準(12時の位置)として時計回り方向にα°(+α°)の方向から反時計回り方向にα°(-α°)の方向」の意味である。許容角αは一例として30°(横孔直交方向PX2を中心として例えば、±30°以内の方向)、より好適にはαは20°、さらに好適にはαは15°である。
【0031】
なお、或る一つの髄内釘補助具10に対し、一つの相対移動方向Dが設定される(許容角αの範囲で複数設定される趣旨ではない)。具体的には、例えば、或る髄内釘補助具10における相対移動方向Dは、横孔直交方向PX2を中心とした+5°の方向であり、他の髄内釘補助具10における相対移動方向Dは、横孔直交方向PX2(と一致する方向)である。以下の説明では一例として、相対移動方向Dが横孔直交方向PX2と一致する場合について説明する。
【0032】
図2(C)を参照して、本実施形態の位置調整機構15は、連接部12に設けられて相対移動方向Dを延在方向とする第一スライド面153と、髄内釘101の上端T側に設けられて第一スライド面153と摺動可能な第二スライド面154と、を有する。この第一スライド面153と第二スライド面154は、径方向スライド機構151として機能する。
【0033】
より具体的に、位置調整機構15は、連接部12に設けられ、相対移動方向D(横孔直交方向PX2)を長手方向Ldとする長孔121と、上端T側に設けられて長孔121内の長手方向に摺動自在な突出部142と、を有する。この場合、第一スライド面153は長孔121の一部であり、第二スライド面154は突出部142の一部である。また図2(B)に示すように突出部142は、例えばスペーサ14の一部である。
【0034】
また、突出部142と連接部12の長孔121の一部とは、髄内釘101の周方向Rに沿って(軸AX1周りに)連接部12が回動(回転)しようとする場合に係合可能に構成され、これらは周方向係合機構152として機能する。
【0035】
このように本実施形態の位置調整機構15(径方向スライド機構151及び周方向係合機構152)は、連接部12の長孔121およびスペーサ14の少なくとも一部によって構成されるものであり、以下より詳細に説明する。
【0036】
図4は、プレート部材13を説明する図である。髄内釘補助具10は例えば、左右の大腿骨500にそれぞれ固定可能であり、プレート部材13は左足用と右足用が準備される。図4は左右のプレート部材13を並べて記載している。図4(A)、図4(C),図4(E)が左の大腿骨500用のプレート部材13であり、図4(B),図4(D),図4(F)が右の大腿骨500用のプレート部材13である。また、図4(A)、図4(B)がプレート部材13の外観斜視図、図4(C),図4(D)が連接部12を示す上方から視た平面図、図4(E)、図4(F)が本体部11を示す後方から視た正面図である。左右のプレート部材13は、人体の上下方向の中心線に対して左右対称である。
【0037】
プレート部材13は、髄内釘101に固定されることで、大腿骨500の骨頭502と逆側の端部付近において、後壁または側壁の一部が剥離した領域に当接され、これにより、この領域に位置する剥離した骨(後壁骨片、第3骨片など)を、剥離する前の位置に再度配置させるためのものである(図1図3参照)。
【0038】
図4(A),図4(B)に示すようにプレート部材13は、剥離した骨に当接される本体部11と、この本体部11の上端(髄内釘101の軸AX1方向における上端)に接続して設けられた連接部12とを有する。本体部11は、髄内釘101の外周壁700(図1(B)参照)と対向し、かつ、該外周壁700に対して間隔を空けて配置されて、髄内釘101の軸AX1方向に延在する部位である。本体部11は、その全体形状が概ね平板(短冊)状をなし、本実施形態では、例えば1枚の板で構成されている。またここでは一例として本体部11の外形状は正面視(図4(E),図4(F))において軸AX1方向に長手方向が沿う略矩形状を呈している。
【0039】
連接部12は、本体部11に連続して髄内釘101の径方向に延在することで、自身の一部が髄内釘101の上端T(頂部)と対向する部位である(図1(A)参照)。図4(C)、図4(D)に示すように、連接部12は、髄内釘101をその軸AX1方向(上端T側)から視た場合に(平面視において)例えばU字状の外形を有し、その中央付近に長孔121が設けられる。長孔121は、髄内釘101が備える軸孔105に対応した位置に設けられ、長孔121を介した状態で、髄内釘101の軸孔105に固定具16を固定することで(図2(A))、連接部12(プレート13)が髄内釘101に固定される。これにより、本体部11が、剥離した骨に当接されることとなる。
【0040】
図4(A),図4(C)に示すように連接部12の長孔121は、連接部12を板厚d1方向に貫通し、長手方向Ldが相対移動方向Dに沿うように設けられる。すなわち図3(B)に示すように、長孔121の長手方向Ldは、髄内釘101の軸AX1方向(上端T側)から視た場合に、横孔104の軸AX2方向(横孔軸方向)に対して交差する方向であり、横孔軸方向に対して略直交する方向である。より詳細には、長孔121の長手方向Ldは、横孔直交方向PX2を中心として例えば、±30°以内の方向、好適には、横孔直交方向PX2を中心として例えば、±20°以内の方向、より好適には横孔直交方向PX2を中心として例えば、±15°以内の方向である。
【0041】
すでに述べたように左右の大腿骨500の頚部の軸BX2は、遠位端(膝関節部分)にある大腿骨顆部の横軸BX1に対して前捻しており(図3(A))、前捻角θは図3(A)に示す大腿骨顆部の横軸BX1に直交する線分を中心に左右対称となる。
【0042】
本実施形態のプレート部材13における長孔121の長手方向Ldは、左右いずれの場合も、それぞれに対応した骨接合部材201の軸AX2に例えば直交する方向(横孔直交方向PX2)に設定されている。つまり左足用のプレート部材13の長孔121の長手方向Ldは、左足に埋入される髄内釘101の横孔104(または骨接合部材201)の軸AX2に例えば直交する方向(横孔直交方向PX2)に設定され(図4(C))、右足用のプレート部材13の長孔121の長手方向Ldは、左足に埋入される髄内釘101の横孔104(または骨接合部材201)の軸AX2に例えば直交する方向(横孔直交方向PX2)に設定される(図4(D))。この長孔121の長手方向Ldが相対移動方向Dとなる。
【0043】
図4(A),図4(B)を参照して、長孔121は、相対移動方向Dを延在方向とする第一スライド面153を有する。本実施形態の長孔121の外周形状は連続曲線ではなく、図4(C)、図4(D)示す平面視において対向する直線部121Sと、対向する曲線部121Cとを連続させてなる形状である。直線部121Sの延在方向は長手方向Ldと一致し、当該直線部121Sとなる長孔121の内壁部分(側面1211)が第一スライド面153となる。
【0044】
次に、図5を参照して、本実施形態のスペーサ14、固定具16および位置調整機構15について説明する。スペーサ14および固定具16は、左足用と右足用とで共通である。図5(A)~図5(F)はスペーサ14の外観図であり、図5(G)、図5(H)は固定具16の外観図である。図5(A)は外観斜視図、図5(B)は髄内釘101との係合状態を説明する正面図、図5(C)がスペーサ14の正面図、図5(D)が左側面図、図5(E)が底面図、図5(F)が平面(上面)図、である。また、図5(G)が固定具16の外観斜視図、図5(H)が正面図である。また図5(I)は、スペーサ14に固定具16を挿通した状態を示す正面図である。
【0045】
スペーサ14は、髄内釘101の上端T(頂部)にプレート部材13を取り付ける際、これらの間に介在させるものであり、がたつきの防止や部材間のクリアランスを減少させる。プレート部材13は、大腿骨500に埋設されている髄内釘101に取り付けるため(図1(B)参照)、その上端Tとプレート部材13間を密着させることが困難である。このため、スペーサ14によりこれらの間に生じた隙間を埋め、がたつきを防いで確実に両者を固定する。また、スペーサ14の一部は連接部12の長孔121とともに位置調整機構15として機能する。
【0046】
図5(A),図5(E)、図5(F)に示すように、スペーサ14は、内部が中空の略筒状体であり、その内部には図5(G),図5(H)に示す固定具16が挿通可能となっている。スペーサ14は、筒状の胴部140と、その底部に設けられた係止片141と、胴部140の上部に設けられた突出部142を有する。係止片141は例えばスペーサ14の底部において胴部140の周面の一部を鋭角に軸AX1方向の下方に突出させてなる。係止片141は、図5(B)に示すように髄内釘101の上端Tに設けられているノッチ部1012と係止可能に構成されている(図1(A)参照)。
【0047】
また突出部142は、スペーサ14(胴部140)の上部において胴部140の周面の一部を正面視(図5(C))において略矩形状に軸AX1方向の上方に突出させた部位であり、胴部140の径方向において対向するように2箇所に設けられる(図5(F))。図2(C)に示すように胴部140の直径L1は長孔121の短手方向の長さL2より大きく、髄内釘補助具10として組み立てた場合に、長孔121の短手方向から胴部140の周面の一部が径外側方向に露出する。突出部142は、この露出する胴部140の周面の一部を切り欠いて構成されるともいえる。平面視における突出部142の形状は、胴部140の円周面の一部からなる略円弧状であり、その弦長は長孔121の短手方向の長さL2よりわずかに小さい(図2(C),図5(F))。また、突出部142の高さH1は、連接部12の厚みd1より小さい(図2(B))。
【0048】
図5(G)~図5(I)、図2(A),図2(B)を参照して、固定具(エンドキャップ)16は、連接部12の長孔121およびスペーサ14を介して、髄内釘101における軸孔105の基端で螺合されることで、連接部12(プレート部材13)を髄内釘101に固定するとともに、軸孔105を、基端で封止する(図1(A))。固定具16は、基端側に位置する頭部161と、先端側に位置するネジ部162と、頭部161とネジ部162との間に位置する円柱部163を有する。
【0049】
ネジ部162の外周面は、ネジ溝(雄ネジ)を有し、このネジ部162が軸孔105の基端において、髄内釘101の軸AX1とネジ部162の軸とが一致するように、軸孔105の内壁に形成された雌ネジ106に螺合することで、固定具16が髄内釘101の軸孔105に固定される。
【0050】
頭部161は円柱部163より径が大きく、鍔部状を呈している。頭部161の直径はスペーサ14の胴部140の直径(突出部142を円弧とする円の直径)、およびプレート部材13の長孔121の短手方向の長さL2(図2(C))よりも大きく、円柱部163の外径は、スペーサ14の胴部140の内径より小さく設定される。図5(I)に示すように、つまり固定具16は、スペーサ14の胴部140に挿通可能であるが、頭部161はスペーサ14の突出部142の上に載置される。また、円柱部163の長さ(軸AX1方向の長さ)は、スペーサ14の高さに基づき、スペーサ14の全体の高さH2(突出部142から係止片141先端までの長さ)より長く設定されている。詳細には、スペーサ14の胴部140に固定具16を挿通した場合、ネジ部162の全てがスペーサ14から下方に露出する。固定具16は、プレート部材13の長孔121を介した状態で、髄内釘101の軸孔105に挿通される。このとき、スペーサ14の係止片141は、髄内釘101のノッチ部1012と係止し、スペーサ14から露出する固定具16のネジ部162は確実に軸孔105に螺合される。
【0051】
このような構成により、図2(A)に示すように、スペーサ14の上部にプレート部材13(の連接部12)を装着すると、長孔121内に突出部142が上方に向かって突出する。また長孔121周囲の連接部12は、スペーサ14の胴部140の上面(突出部142の間に露出する上面)の上に載置される。突出部142は長孔121より上方に突出することはない。また固定具16の頭部161は長孔121の上面に係止する。
【0052】
そして、図2(A)に示すように、突出部142は長孔121内を長手方向Ldに摺動自在となる。このとき、長孔121の側面1211が第一スライド面153となり、突出部142の側面(切り欠き面)1421が第二スライド面154となり摺動する。つまり長孔121(第一スライド面153)とスペーサ14(その突出部142、第二スライド面154)は径方向スライド機構151として機能する。
【0053】
また、スペーサ14の係止片141は図5(B)に示すように、髄内釘101の上端Tのノッチ部1012と係止し、髄内釘101の上端Tに取り付け(固定)られる。つまり係止片141をノッチ部1012に係止することで、髄内釘101に対する突出部142の相対位置が決定する。そしてスペーサ14の上部にプレート部材13(の連接部12)を装着した際には、突出部142は長孔121内を長手方向Ldに摺動自在となる。つまり、第一スライド面153と第二スライド面154の摺動により、髄内釘101と連接部12(および本体部11)とが相対移動方向Dに相対移動自在となる。
【0054】
また、図2(C),図5(A)に示すように、突出部142の両側面1421の外側には、長孔121の直線部121Sが配置される。直線部121Sと突出部142のクリアランスは僅かであり、連接部12を髄内釘101の周方向R(髄内釘101の軸AX1周り)に回動(回転)させようとした場合には、突出部142(の側面(切り欠き面)1421)が長孔121の直線部121Sの側面1211と当接・係合し、連接部12と髄内釘101の周方向Rにおける相対回動(相対回転)が規制される。つまりこの場合、長孔121とスペーサ14(その突出部142)とは周方向係合機構152として機能する。
【0055】
このように本実施形態では、連接部12には径方向スライド機構151及び周方向係合機構152の少なくとも一部(長孔121)が形成され、スペーサ14の上部には径方向スライド機構151及び周方向係合機構152の少なくとも一部(突出部142)が形成される。そして、長孔121とスペーサ14(その突出部142)とが協働し、連接部12と髄内釘101の上端Tの間に介在する位置調整機構15(径方向スライド機構151および周方向係合機構152)として機能する。この位置調整機構15により、髄内釘101と連接部12(プレート部材13)とを髄内釘101の径方向に相対移動自在に案内する一方で、髄内釘101と連接部12(プレート部材13)とを髄内釘101の周方向Rに沿っては相対的に回動(回転)不可とすることができる。
【0056】
詳細な手技は後述するが、本実施形態では固定具16にて完全に固定する以前に、プレート部材13を髄内釘101の径方向に沿った適宜の位置に位置調整する。その後、固定具16を軸孔105に螺合することで、固定具16と髄内釘101の固定に伴って、プレート部材13も髄内釘101に固定される。
【0057】
以上説明したように、髄内釘101とプレート部材13の相対移動方向Dは、長孔121の長手方向Ldで決定され、これは、髄内釘101に対する突出部142の相対位置でもある。つまり、図2(D),図5(C)に示すように、対向する突出部142の周方向(円弧部分)の中心142C同士を結ぶ線分(突出部中心線142L)の方向が長孔121の長手方向Ldであり、これらが相対移動方向Dである。
【0058】
本実施形態では、一例として、突出部中心線142Lの方向(長孔121の長手方向Ld)が横孔直交方向PX2に設定されており、この結果相対移動方向Dが横孔直交方向PX2になっている。
【0059】
また、相対移動方向Dは、横孔直交方向PX2を中心として±30°以内の方向であってもよく、その場合は、図3(B)の破線で示すように、突出部中心線142Lおよび長孔121の長手方向Ldを、横孔直交方向PX2に対して傾斜させる(横孔直交方向PX2の線分(横孔直交線)と軸AX2の交点を中心に回転させる)ように設定する。
【0060】
図6を参照して、横孔直交方向PX2に対して傾斜する方向に相対移動方向Dが設定される場合の一例について説明する。まず、図6(A)は横孔直交方向PX2と相対移動方向Dが一致している場合の左足用の髄内釘補助具10を上方から示す平面概要図である。図6(B)は横孔直交方向PX2に対して時計回り方向に相対移動方向Dを傾斜(回転)させる場合の平面概要図である。図6では長孔121と同一平面に連接部12が存在し、太線で示す折れ部13Lにて紙面垂直方向に本体部11が折れ曲っている。
【0061】
横孔直交方向PX2からの傾斜(回転)の許容量(許容角度)は適宜選択可能であるが、特に、図6(B)に示すように、突出部中心線142Lの前方方向が骨接合部材201の係合部211(軸AX2の先端)側に寄る方向への傾斜量(図示では時計回り方向の回転量+α°)は小さいほうが望ましい。図6(B)のように突出部中心線142Lを傾斜させると、相対移動方向Dに沿うプレート部材13の前方方向への移動に伴い、破線で示すように本体部11の、係合部211に近い側部113が骨頭502に近づく方向に移動することになる。しかしながら、骨頭502(内足)側には靭帯、神経、血管などが存在するため、プレート部材13の移動によってこれらの機能の阻害や組織の損傷が生じることは回避すべきである。
【0062】
本実施形態において、最も好適には相対移動方向Dは好適には横孔直交方向PX2であるが、横孔直交方向PX2からずれる(傾斜させる)場合には、プレート部材13(本体部11)の移動による機能の阻害や組織の損傷などへの影響が少なくなるようにその方向が設定される。一例として、相対移動方向Dは、横孔直交方向PX2を中心として例えば、±30°以内の方向、より好適には横孔直交方向PX2を中心として例えば、±20°以内の方向、より好適には横孔直交方向PX2を中心として例えば、±15°以内の方向である。一方、相対移動方向Dの図示の反時計回り方向の傾斜量については、プレート部材13の移動による機能の阻害や組織の損傷などへの影響は略ないといえ、例えば-30°を超えて傾斜(回転)させる設定であってもよい。
【0063】
なお、図6に示す平面視において連接部12と本体部11の境界となる折れ部13Lは、骨接合部材201(軸AXA2)の基端から先端(係合部211)に向かうにつれ軸AX2から離れるように傾斜している(本体部11がそのように設けられている)が、本体部11と軸AX2の位置関係は、適宜選択可能である。ここでは一例として、骨接合部材201の基端側において大腿骨500と当接しやすいように(点接触でよい)、本体部11が軸AX2に対して傾斜するように設けている。
【0064】
骨接合具100の各部(髄内釘101、骨接合部材201、プレート部材13、スペーサ14、固定具16等)は、それぞれ、金属材料または高分子材料を主材料として構成されたものが好ましい。金属材料と高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、骨接合具100により強固に骨折部位を固定することができる。
【0065】
金属材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、チタンまたはチタン合金であるのが好ましい。チタンまたはチタン合金は、生体適合性が高く、また、優れた強度を有することから各部の構成材料として好ましく用いられる。なお、チタン合金としては、特に限定されないが、例えば、Ti-6Al-4Vや、Ti-29Nb-13Ta-4.6ZrのようなTiを主成分とし、Al、Sn、Cr、Zr、Mo、Ni、Pd、Ta、Nb、V、Pt等が添加されたものが挙げられる。
【0066】
また、高分子材料としては、各種のものが挙げられるが、特にポリエーテルエーテルケトンが好ましい。この他にもポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートなど臨床で使用されているものが挙げられる。
【0067】
また、骨接合具100の各部のうち大腿骨500から露出するものは、本実施形態のように、その全体に亘って、角部が丸みを帯びた形状をなしている(R付けがなされている)ものであることが好ましい。かかる構成とすることにより、骨接合具100を大腿骨500の骨折部位に固定する際に、周辺組織を傷付けるのを防止することができる。
【0068】
<本体部の他の形態/ワイヤ係止部および近接変曲領域>
図7および図8を参照して本体部11の構成について更に説明する。図7は、本実施形態の本体部11を説明する図であり、図7(A)はプレート部材13の側面図であり、図7(B)は髄内釘補助具10の使用例を示す概要図である。
【0069】
図7(A),図4に示すように本体部11は、ワイヤ(固定用金属(Ti)線)Wを係止可能なワイヤ係止部112を有していてもよい。ワイヤ係止部112は、本体部11における髄内釘101の周方向Rに沿う両側部113(図4(E)、図4(F)などの正面視における左右の側部)に設けられ、それぞれ凹部114を有している。凹部114は例えば一の側部113においてその長手方向に沿って複数(この例では4個~5個)設けられる。図7(B)に示すように、凹部114のそれぞれにはワイヤWを係止可能であり、本体部11とともに剥離した骨を固定可能である。骨折の状態によっては、骨片が3枚以上など多数に分割されている場合があり、多数に分割された骨片の全てを本体部11のみで固定するのは困難である場合がある。また、固定すべき骨片が少数であっても、プレート部材13は薄くて滑りやすい材質であり、体内に挿入されると、体液や髄液あるいは脂肪などでより滑りやすくなる。
【0070】
このような場合に、ワイヤWを所望の位置に掛けまわし、凹部114にワイヤWを係止して骨片と本体部11を固定できる。また、ワイヤ係止部112として本体部11の側部113の長手方向に複数の凹部114を設け、骨折部あるいは大腿骨500の状態によって任意の凹部114を使用可能とすることで柔軟にワイヤWの係止が可能となり、本体部11の面積以上に広範な領域に対して、剥離した骨片の固定が可能となる。
【0071】
また、図7(A)に示すように、本体部11は、軸AX1方向の下端に向かうに従って髄内釘101に近づくように変曲する(該本体部11の延伸方向が、上端から下端に向かって、髄内釘101から遠ざかる所定の方向から、該所定の方向と比較して髄内釘101から遠ざかる度合いが小さくなる方向又は髄内釘101に近づく方向に変曲する)近接変曲領域111を少なくとも一部に有していてもよい。この例では、本体部11は、略矩形状の平板部材であり、長辺(長手方向)のほぼ中央付近の一か所に近接変曲領域111を有している。つまりこの例の本体部11は、その上方(軸AX1方向の上端)から近接変曲領域111に向かうにつれて僅かに本体部11が髄内釘101から離れるように変位する第一領域11Aと、近接変曲領域111から本体部11の下方(軸AX1方向の下端)に向かうにつれて、本体部11が髄内釘101に近づくように変位する第二領域11Bを有している。
【0072】
近接変曲領域111は、本体部11のうち最も髄内釘101から離間する頂点111Pを有する領域であり、近接変曲領域111の頂点111P部分と接する軸方向AX1の仮想線(一点鎖線で示す)を基準とすると、仮想線に対して第二領域11Bは所定の角度γで傾斜して髄内釘101に近接する。この傾斜する角度(仮想線と第二領域11Bの面S2がなす角度)をここでは近接角度γといい、近接角度γは例えば、1°~30°、好適には3°~20°、より好適には5°~15°である。
【0073】
このような構成にすることにより、本体部11を大腿骨500の形状に近づけることができる。本体部11は大腿部500と点接触すればよいが、大腿骨500の形状に近づけることで剥がれた骨との接触点が確保しやすくなる。また、大腿骨500から大きく離間する領域を最小限にすることができ、省スペース化が図れる。
【0074】
なお、図7(A)に示すように第一領域11A側にも近接角度γ´が設けられてもよいし、第一領域11A側は近接角度γ´は、第二領域11Bの近接角度γと同等でもよいし異なってもよい。また近接角度γ´は0(第一領域11Aの面S1が軸AX1に沿う形状)であってもよい)。また、近接変曲領域111が複数設けられてもよい。
【0075】
また、プレート部材13は、連接部12と本体部11の境界(本体部11の軸AX1方向の上端(基端)付近)に他の部位(例えば、本体部11の下方先端部11Tよりも肉厚である肉厚部11Dを有する。肉厚部11Dはプレート部材13の全体の厚み(板厚方向の大きさ)で比較した場合に最大となる部分であり、連接部12から本体部11に連続する部分に設けられる。具体的に、連接部12の厚みd1、肉厚部11Dの厚みd2、第一領域11Aの厚みd3、近接変曲領域111の厚みd4、第二領域11Bの厚みd5を比較すると、肉厚部11Dの厚みd2は、他の厚みd1,d3~d5よりも大きく設定されている。連接部12と本体部11の境界を肉厚部11Dとすることで、本体部11で骨片を固定する際の強度を高めることができる。
【0076】
<本体部の他の形態/周方向変位領域>
図8は、本体部11を示す後方から視た正面図であり、図8(A)が左足用のプレート部材13を示す図であり、図8(B)が右足用のプレート部材13を示す図であり、図8(C)が左足用の髄内釘補助具10の使用状態の一例を示す概要図である。
【0077】
本体部11は、軸AX1方向の下端(下方先端部11T)に向かうに従って、髄内釘101の周方向Rに変位する周方向変位領域115を少なくとも一部に有してもよい。周方向変位領域115は例えば、本体部11の基準となる線(基準線)11Cが髄内釘10の周方向Rにおいて変位する領域であり、基準線11Cは例えば、本体部11の周方向Rにおける中心線である。
【0078】
具体的に、本体部11は、軸AX1方向の下端に向かうに従って髄内釘101の周方向Rの変位量が0の周方向不変位領域116と、周方向変位領域115を有する。周方向不変位領域116は、本体部11の基端から軸AX1に沿うある程度の長さまでの領域であり、本体部11の基準線11Cは軸AX1に沿うように延在し、軸AX1の下方に向かうに従って変位しない。一方、周方向変位領域115では基準線11C´は、軸AX1の下方に向かうにしたがって、周方向不変位領域116の基準線11Cから離れるように変位する。基準線11Cと基準線11C´のなす角(周方向ねじれ角(リード角))ηは、軸AX1方向を基準として、骨接合部材201(軸AX2)の先端(係合部211)に向かう方向に例えば、1°~30°、好ましくは3°~25°、より好適には5°~20°である。すなわち、図8(A)に示す左足用のプレート部材13の場合は、本体部11の下方先端部11Tが本体部11の基端側中心よりも(左足用の)骨接合部材201の係合部211に向かい、図示右方向にカーブする。また、図8(B)に示す右足用のプレート部材13の場合は、本体部11の下方先端部11Tが本体部11基端側の中心よりも(右足用の)骨接合部材201の係合部211に向かい、図示左方向にカーブする。
【0079】
なお、図8では周方向変位領域115が軸AX1を中心として概ね骨頭502に近づくように周方向に変位する例を示している。これは、一般的な大腿骨500の形状を考慮すると、プレート部材13(本体部11)による剥離した骨の固定は、足先に向かうにつれて内側(骨接合部材201(軸AX2)の先端(係合部211)に近づく方向)にカーブする方が押さえやすい場合があるためである。周方向変位領域115を設けることにより、剥離した骨の支持範囲を周方向に広げることが可能である
【0080】
また、剥離した骨の発生は、1枚の場合や、複数枚の場合など状況に応じてさまざまである。剥離した骨が複数枚に割れる場合において、本体部11の長手方向から離れた骨頭502側などに割れた場合には、ストレート形状の本体部11では骨頭502よりの骨片が押さえきれない場合がある。
【0081】
このような場合、本体部11の下端(AX1軸方向に下端)に向かうにつれ、骨接合部材201の先端側に向けて、軸AX1を中心とした周方向に変位するような周方向変位領域115を設けるとよい。周方向変位領域115によって骨頭502よりの骨片を押さえつつ、上方の骨片は周方向不変位領域116の(ストレートな)本体部11で押さえることが可能となる。
【0082】
この場合、本体部11全体をストレート形状のまま、その基準線11Cを軸AX1に対して傾斜させることで、本体部11の下端部付近で骨頭502よりの骨片を押さえることは可能である。しかし、この場合、本体部11の上端(基端)側が骨接合部材201の基端側に突出しすぎたり、本体部11の下端側が骨頭502側に寄りすぎるなど、限られた範囲で適切に埋入させることが困難となる。
【0083】
これに対し周方向変位領域115を設けて本体部11の下方先端部11Tに向かってカーブするような形状にすることで、省スペースでありながら剥離した骨の多様な状態に対応することができる。
【0084】
プレート部材13は、例えば、本体部11の長手方向(軸AX1に沿う方向)の長さや形状が異なるものが複数種類準備される。また、近接変曲領域111の有無やその近接角度γ(γ´)、ワイヤ係止部112の有無や凹部114の数、周方向変位領域115の有無やそのねじれ角ηの異なるものが複数種類準備される。
【0085】
またスペーサ14は胴部140の高さ(軸AX1に沿う方向の長さ)が異なるものが複数種類準備され、固定具16もスペーサ14の高さに合わせて複数準備される。なお、スペーサ14と固定具16とは、高さ毎に対で準備される。
【0086】
複数種類のプレート部材13および複数種類のスペーサ14は、いずれも、位置調整機構15(長孔121の形状・傾き、および突出部142の形状)が共通である。なお、長孔121の長手方向Ldの長さ、すなわち、プレート部材13と髄内釘101の相対移動方向Dの相対移動距離は、複数のプレート部材13において異なってもよい。
【0087】
これにより、大腿骨500の形状や骨折の状態に応じて、最適な髄内釘補助具10を選択できる。また、これらから選択、組み合わせて構成される複数の髄内釘補助具10はいずれも、位置調整機構15を有し、対応する髄内釘101に取り付け可能である。例えば、対応する或る一つの髄内釘101に対して、以下から選択、組み合わせて構成される複数の髄内釘補助具10がそれぞれに取り付け可能である。
【0088】
<骨接合具を用いた手術方法>
本実施形態の骨接合具100は、例えば大腿骨の骨頭近傍における骨折(大腿骨頚部骨折)の治療に適用される。以下、骨接合具100を用いた手術方法(手技)の一例について、図9およびこれまでの各図を参照して説明する。
【0089】
まず、図1(B)を参照して、大腿骨500における骨頭502側の上方の端部501に、オウル等を用いてエントリーホールを形成した後、ドリルおよびリーマ等の穿孔具を用いてエントリーホールを拡掘して、皮質骨に開口処理を施する。結果、端部501に開口が形成される。皮質骨の開口は、大腿骨500の髄腔まで連通させる。
【0090】
次に、髄内釘101の先端を、端部501に形成された開口から導入することで、内部の髄腔に対して、髄内釘101を大腿骨500の軸線に沿って挿入する。
【0091】
次に、不図示の髄内釘取付装置(ターゲットデバイス)を、大腿骨500から露出する髄内釘101の上端T(頂部、基端)に接続する。髄内釘取付装置の先端(保持部)を、髄内釘101の上端Tに設けられたノッチ部1012に係合させてから、特に図示しない固定ボルトを雌ネジ106に螺合させることで、髄内釘取付装置と髄内釘101を連結する。そして、髄内釘取付装置に予め設けられている案内(ガイド)に従って体外から横孔104の軸線に沿うように、ガイドピン(図示せず)を挿入する。このガイドピンの先端は、骨折線505を横断して、その先端が骨頭502の皮質骨まで到達する。
【0092】
次に、このガイドピンを利用して、ドリルおよびリーマ等の穿孔具を案内する。この穿孔具によって、大腿骨500に対して横孔104の軸線に沿う骨孔503が作成される。
【0093】
次に、穿孔具を抜き取った後、このガイドピンを利用して、骨接合部材(ラグスクリュー)201を案内する。結果、骨接合部材201は、横孔104を通過して、大腿骨500に形成された骨孔503に捩じ込まれる。この際、骨接合部材201の係合部211が骨折線505を越えて骨頭502の皮質骨に到達する。
【0094】
結果、骨接合部材201が骨頭502に固定され、さらに、骨接合部材201が髄内釘101側に牽引されるが、このときに、大腿骨500の骨折線505周辺を整合させて、骨折線505で当接する両側の骨折部位が互いに密着するように整復する。
【0095】
次に、この状態で、セットスクリュー451を髄内釘101の基端から軸孔105内で螺合して、セットスクリュー451の先端を、骨接合部材201に当接させる。これにより、骨接合部材201が髄内釘101に固定される。
【0096】
次に、図9(A)に示すように、患部(骨折の状態や骨の形状)に適したプレート部材13を選択するため、挿入された髄内釘101と大腿骨500(後壁)の位置関係を専用テンプレート50にてテンプレーティングする。テンプレーティングの結果に応じて、適切な形状およびサイズのプレート部材13、スペーサ14および固定具16を選択し、インプラントキャディ(不図示)上でこれらを組み合わせる。
【0097】
組合されたプレート部材13、スペーサ14および固定具16は、髄内釘補助具10として一体的に、髄内釘101に取り付けられる。すなわち、図9(B)に示すように例えば、専用の挿入鉗子51で髄内釘補助具10を把持し、固定具16にドライバー52を装着して髄内釘101の近位部102の端部に挿入する。そして筋肉等の組織を避けつつプレート部材13を患部付近(後壁側)に差し込む。その後、髄内釘101の軸孔105の基端側内壁に形成された雌ネジ106に固定具16のネジ部162を位置合わせし(図1(B)参照)、挿入鉗子51の把持を緩めるとともにドライバー52で軽く、ネジ部162を雌ネジ106に螺合させる(仮固定)。
【0098】
この状態で髄内釘補助具10は、スペーサ14と固定具16とは、髄内釘101の軸孔105に軽度に固定(螺合)されているが、プレート部材13(連接部12)は、固定具16の頭部161との間にクリアランスが残されており(そのように仮固定する)、スペーサ14に対しては摺動可能となっている。つまり、図9(C),図9(D)に示すように、突出部142の側面(切り欠き面)1421と長孔121の内壁部分(側面1211)とが摺動可能となり、相対移動方向Dに相対移動自在となる。一方、突出部142(の切り欠き面1421)が長孔121の直線部121Sの側面1211と当接・係合し、連接部12と髄内釘101の周方向Rにおける相対回動(相対回転)が規制される。
【0099】
そして図9(E)に示すように、剥離した骨の一部にプレート部材13の本体部11の一部を当接させ、剥離した骨が元の位置に正しく戻るように、本体部11を徒手的に移動させる。プレート部材13が適切な位置に移動したのち、ドライバー52により、ネジ部162と雌ネジ106を締結させる(本固定)。この締結により、固定具16(の頭部161)と連接部12とが当接、押圧されてプレート部材13が髄内釘101に固定される。
【0100】
その後、髄内釘101が備える固定具挿通孔108に、スクリュー(ディスタールスクリュー)601を螺合することで、髄内釘101を大腿骨500に固定する。以上のようにして、骨接合具100を用いて、大腿骨500の骨頭502近傍の骨折部位が固定される。
【0101】
このように、本実施形態では髄内釘101(および骨接合部材201)を挿入した後に、髄内釘101(大腿骨500)に対してプレート部材13を移動(スライド)可能となっている。これにより、髄内釘101(および骨接合部材201)の挿入によって大腿骨500に捻れが生じた場合であってもその時の大腿骨500の状態に合わせて、プレート部材13を適切な位置に移動させ、剥離した骨を押さえることができる。
【0102】
また、プレート部材13の移動方向を(概ね)横孔直交方向PX2とすることにより、骨軸に向かう方向(骨軸に交わる方向)に押さえることができる。骨粗鬆症などにより大腿骨500が脆弱なものとなっている場合、大腿骨500の軸方向に沿って髄腔に髄内釘を骨頭502側の端部501から挿入する際に、この端部501において、後壁または側壁に大腿骨500の軸方向に沿って亀裂が生じることがある。この亀裂に起因して、端部501において、側壁または後壁の一部が剥離し、その結果、剥離した領域において、骨の癒合が円滑になされないという問題が生じることがある。
【0103】
本実施形態ではプレート部材13(本体部11)を剥離した骨に当接させ、適宜徒手的にプレート部材13を横孔直交方向PX2にスライドさせることができるので、剥離した骨を元の位置に戻すとともに、大腿骨500の軸方向に沿う亀裂を戻す(隙間を埋める)方向に押圧して固定することができる。そして本体部11が適切な位置で剥がれた骨を支持することが可能になった状態で、ドライバー52により固定具16を締結する。これにより、プレート部材13が髄内釘101に固定される。このようにして、剥離した骨をより適切な位置で、また復元に適切な方向から押圧して固定することができるので、骨癒合性が向上する。
【0104】
また、所定方向へのスライドを許容することで、術者が想定する範囲内における手技の自由度を高めることができる。一方で、髄内釘101と連接部12(プレート部材13)とを髄内釘101の周方向Rに沿っては相対的に回動(回転)不可とすることにより、意図しないプレート部材13の移動を規制できる。従って、術者に沿って操作性の高い骨接合具100を提供できる。
【0105】
また、スペーサ14の係止片141は、髄内釘101の上端T(頂部)に設けられるノッチ部1012と係止するが、当該ノッチ部1012は、髄内釘取付装置による髄内釘101の保持のために本来髄内釘101に設けられているものである。従って、髄内釘101(および骨接合部材201)の仕様変更や入れ替えを行うことなく、既存の髄内釘101(および骨接合部材201)をそのまま利用し、様々なサイズや形態のプレート部材13から骨の状態に適合したものを適宜選択できる。
【0106】
なお、上記の例では髄内釘補助具10を挿入鉗子51で把持するとともに、固定具16をドライバー52で締結する場合を説明したが、これに限らず、例えば髄内釘補助具10を把持する挿入ガイドを備えるドライバーにより、手技を行ってもよい。
【0107】
以上本実施形態の一例について説明したが、位置調整機構15は、髄内釘101と連接部12とを径方向に相対移動自在に案内する径方向スライド機構151と、髄内釘101と連接部12とを髄内釘101の周方向Rに沿って係合する周方向係合機構152と、を有するものであれば、上記の例に限らない。
【0108】
また、位置調整機構15は、連接部12に設けられて、相対移動方向Dを延在方向とする第一スライド面153と、髄内釘101の上端T側に設けられて第一スライド面153と摺動可能な第二スライド面154と、を有すればよい。
【0109】
また、位置調整機構15は、連接部12に設けられる長孔121と、髄内釘101の上端T側に設けられて長孔121内の長手方向Ldに摺動自在な突出部142と、を有すればよい。
【0110】
また、スペーサ14は、突出部142が長孔121内を長手方向Ldにスライド可能に構成されていれば、例えばプレート部材13と一体的に設けられるものであってもよい。
【0111】
また、本体部11は、ワイヤ係止部112、近接変曲領域111および周方向変位領域115のうち少なくともいずれかを有する構成であってもよく、これらのうち少なくともいずれかの組み合わせを有する構成であってもよく、これらを有さない構成であってもよい。
【0112】
また、髄内釘101の構造は一例であり、近位部102と遠位部103とは、一体的に形成されたものであっても良いし、別体として設けられたものが、近位部102の先端と遠位部103の基端とにおいて、嵌合および螺合等により接合されたものであっても良い。
【0113】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0114】
10 髄内釘補助具
11 本体部
11 プレート部材13
11A 第一領域
11B 第二領域
11C 基準線
11D 肉厚部
11T 下方先端部
12 連接部
13 プレート部材
14 スペーサ
15 位置調整機構
16 固定具(エンドキャップ)
50 専用テンプレート
51 挿入鉗子
52 ドライバー
100 骨接合具
101 髄内釘(ネイル)
102 近位部
103 遠位部
104 横孔
105 軸孔
111 近接変曲領域
112 ワイヤ係止部
114 凹部
115 周方向変位領域
121 長孔
140 胴部
141 係止片
142 突出部
142L 突出部中心線
151 径方向スライド機構
152 周方向係合機構
153 第一スライド面
154 第二スライド面
161 頭部
162 ネジ部
163 円柱部
201 骨接合部材(ラグスクリュー)
211 係合部(スクリュー部)
451 セットスクリュー
500 大腿骨
500 大腿部
502 骨頭
700 外周壁
1012 ノッチ部
1211 側面
1421 側面(切り欠き面)
AX1 軸
AX2 軸
D 相対移動方向
PX2 横孔直交方向
γ 近接角度
η リード角
【要約】      (修正有)
【課題】髄内釘に選択的に取り付け可能であり、手技の自由度を高めるとともに、患部に応じた適切な固定が可能とすることで効果的な整復を助ける。
【解決手段】髄内釘補助具10は、軸孔105と、軸孔と交差する方向に伸びる横孔104とを有する髄内釘101に対して取り付け可能であり、髄内釘の外周壁700と対向し、かつ、外周壁に対して間隔を空けて配置されて、軸AX1方向に延在する本体部と、本体部に連続して髄内釘の径方向に延在することで、自身の一部が髄内釘の上端Tと対向する連接部と、連接部と髄内釘の上端Tの間に介在する位置調整機構と、連接部を髄内釘の上端Tに固定可能な固定具と、を有し、位置調整機構は、髄内釘と連接部とを径方向に相対移動自在に案内する径方向スライド機構と、髄内釘と連接部とを髄内釘の周方向に沿って係合する周方向係合機構と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図13