(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20221017BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221017BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221017BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20221017BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221017BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/67
A61K8/81
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021210357
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2020217298
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】ちふれホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】千葉 祐毅
(72)【発明者】
【氏名】階堂 睦子
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131524(JP,A)
【文献】特開2018-172304(JP,A)
【文献】特開2019-131547(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107233282(CN,A)
【文献】特開2021-098655(JP,A)
【文献】特開2017-178789(JP,A)
【文献】ID 2436903,DATABASE GNPD [ONLINE],MINTEL,2014年06月
【文献】ID 2801373,DATABASE GNPD [ONLINE],MINTEL,2014年12月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-99
A61Q 1/00-90/00
MINTEL GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン酸アミドと、抱水性油剤と、アクリルアミド系高分子と、多価アルコール脂肪酸エステルと、水とを含む、水中油型乳化化粧料であって、
前記ニコチン酸アミドの含有量は3質量%~8質量%であり、
前記抱水性油剤の含有量が1.5質量%~15質量%であり、
前記アクリルアミド系高分子の含有量は、コポリマーのアクリルアミド系高分子である場合は0.5質量%~8質量%であり、及びホモポリマーのアクリルアミド系高分子である場合は0.4質量%~8質量%であり、
油分の総含有量が15質量%~40質量%であり、
ステアロイルメチルタウリンナトリウム及びポリソルベート80の総含有量が0質量%~0.5質量%であり、及び
前記油分における油剤と抱水性油剤及び多価アルコール脂肪酸エステルとの配合比([油剤の配合量]/[抱水性油剤及び多価アルコール脂肪酸エステルの配合量])の値が0.1~2.0である
前記水中油型乳化化粧
料。
【請求項2】
前記水中油型乳化化粧料は、無機顔料の含有量が1質量%未満である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記抱水性油剤は、フィトステロール誘導体及び多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の抱水性油剤である、請求項1~2のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記フィトステロール誘導体はラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)、イソステアリン酸フィトステリル及びヒドロキシステアリン酸フィトステリルからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィトステロール誘導体であり、及び/又は、前記多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルはトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル及びヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルである、請求項3に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
前記アクリルアミド系高分子は、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリルアミド系高分子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、トリエチルヘキサノイン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール及びジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールエステルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
前記多価アルコール脂肪酸エステルの含有量は1質量%~14質量%であり、及び/又は前記水の含有量は40質量%~75質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化化粧料は、連続相が水相であり、しっとりとした使用感を有しながら、含有する油分により、皮膚に対して適度に水分を保持する水分保持作用及び生体内部の水分が失われないようにする水分バリア作用といった保湿作用を備える。
【0003】
また、水中油型乳化化粧料に機能性成分を加えれば、保湿作用とともに生理活性作用を付与することができる。このような機能性成分の一つに、ニコチン酸アミドがある。ニコチン酸アミドは、ビタミン類の一種であり、これまでスキンケア領域において、血行促進活性、抗炎症活性、セラミド合成促進活性などを示す機能性成分として幅広く使用されている。
【0004】
近年では、ニコチン酸アミドの多様な生理活性作用を効果的に発揮させるべく、高濃度でニコチン酸アミドを配合するような処方設計が試みられている。しかし、ニコチン酸アミドを高濃度で配合するものは、皮膚刺激を惹起し、べたつくことから、使用感が低下するという問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決するものとして、特許文献1には、ニコチン酸アミド、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ステロール誘導体及び水を含有し、かつニコチン酸アミドとステアロイルメチルタウリンナトリウムとの含有質量比が一定の関係にある水中油型乳化組成物が記載されている。
【0006】
また、ニコチン酸アミドを比較的高濃度で含有するものとして、ニコチン酸アミド及びシロキクラゲ多糖体などの水溶性多糖類を含む水性美容液(特許文献2)及びニコチン酸アミド、カタツムリ分泌液、マイカ及び水添ホスファチジルコリンを含むスキンクリーム(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6495685号
【文献】特開2019-131547号公報
【文献】中国特許出願公開第107233282号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の水中油型乳化組成物は、ニコチン酸アミドの刺激感をステロール誘導体により抑制しようとし、さらにステアロイルメチルタウリンナトリウムによりニコチン酸アミド及びステロール誘導体のべたつきを抑制しようとするものである。
【0009】
しかし、ステアロイルメチルタウリンナトリウムは、それ自体で刺激感がある。実際、本発明者らが調べたところによれば、ニコチン酸アミド及びステアロイルメチルタウリンナトリウムを含む水中油型乳化化粧料は、ニコチン酸アミドのみを含む水中油型乳化化粧料に比べて、刺激感を感じるものであった。
【0010】
また、油分の含有量が少ない場合はステアロイルメチルタウリンナトリウムによりニコチン酸アミド及びステロール誘導体のべたつきが抑制される可能性がある。しかし、本発明者らが調べたところによれば、油分の総量が15質量%以上である場合は、ステアロイルメチルタウリンナトリウムを多量に配合しなければならず、結果として得られる水中油型乳化化粧料は刺激感をより感じるものになった。
【0011】
一方、特許文献2に記載の水性美容液及び特許文献3に記載のスキンクリームは、それぞれ増粘性のあるシロキクラゲ多糖体などの水溶性多糖類及びカタツムリ分泌液を含有することにより、所望の粘度になるように調整することが困難なものである。
【0012】
また、本発明者らが調べたところによれば、特許文献2に記載の水性美容液は、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルである抱水性油剤の含有量及び(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーであるアクリルアミド系高分子の含有量は少なく、結果として特許文献2に記載の水性美容液は経時安定性が劣るという問題がある。
【0013】
さらに、特許文献3に記載のスキンクリームは、マイカといった粉末状の無機顔料を含むために、無機顔料を分散させるための水添ホスファチジルコリンといった界面活性能を有する乳化剤を多く含まなければならない。しかし、その結果として、含有される油分の量は限定されるという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、ニコチン酸アミドを高濃度で含みながらも刺激感が低減されており、かつ油分の総量が15質量%以上である場合でさえもべたつきが感じられず、総合的に使用感が良好であり、さらに安定性のある水中油型乳化化粧料を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、ステアロイルメチルタウリンナトリウムなどの刺激性界面活性剤を用いずに、ニコチン酸アミド及びステロール誘導体を含む水中油型乳化化粧料の処方設計を試みた。しかし、水溶性成分であるニコチン酸アミドと油性成分であるステロール誘導体とを混合及び乳化したとしても経時安定性を確保することは困難であり、さらにこのことを界面活性剤を用いずに行うことには至難を極めた。
【0016】
それでも本発明者らは、乳化剤として使用される成分だけでも数百種類はあるとされている数多の化粧料成分について種々検討して、高濃度のニコチン酸アミドを含みつつも、刺激感及びべたつきが低減されて、使用感が良好である水中油型乳化化粧料を得るために試行錯誤を繰り返した。
【0017】
本発明者らが鋭意研究開発に励んだ結果、遂に、高濃度のニコチン酸アミドを含みつつも、ステロール誘導体のうちフィトステロール誘導体と、アクリルアミド系高分子及び多価アルコール脂肪酸エステルとを配合し、さらにフィトステロール誘導体及びアクリルアミド系高分子の含有量を所定の範囲の量にすることにより、刺激を惹起することがなく、べたつきが低減された、使用感が良好である水中油型乳化化粧料を得ることに成功した。
【0018】
しかも、驚くべきことに、上記水中油型乳化化粧料は、油分の総量を15質量%以上に設定することが可能であり、それでいて低温保管条件及び高温保管条件のいずれにおいても性状を維持でき、安定性の高いものであることがわかった。すなわち、上記水中油型乳化化粧料は、含有する油分により、優れた保湿作用を発揮することができることを見出した。
【0019】
一方、本発明者らは、フィトステロール誘導体が有するニコチン酸アミドによる刺激感の抑制効果は、フィトステロール誘導体が有する抱水性にあるのではないかと考えた。そこで、フィトステロール誘導体とは異なる構造を有する抱水性油剤を用いたところ、フィトステロール誘導体と同様にニコチン酸アミドによる刺激感を抑制することを見出した。
【0020】
本発明者らは、このような知見を基に、本発明の課題を解決するものとして、ニコチン酸アミドと、抱水性油剤と、アクリルアミド系高分子と、多価アルコール脂肪酸エステルと、水とを含み、かつ油分の総含有量が15質量%以上である、使用感及び安定性に優れながらも、ニコチン酸アミドによる生理活性作用及び油分による保湿作用が期待できる水中油型乳化化粧料を創作することに成功した。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0021】
したがって、本発明の一側面として、以下の各態様の水中油型乳化化粧料及び方法が提供される。
[1]ニコチン酸アミドと、抱水性油剤と、アクリルアミド系高分子と、多価アルコール脂肪酸エステルと、水とを含む、水中油型乳化化粧料であって、
前記ニコチン酸アミドの含有量は3質量%~8質量%であり、
前記抱水性油剤の含有量が1.5質量%~15質量%であり、
前記アクリルアミド系高分子の含有量は、コポリマーのアクリルアミド系高分子である場合は0.5質量%~8質量%であり、及びホモポリマーのアクリルアミド系高分子である場合は0.4質量%~8質量%であり、及び
油分の総含有量が15質量%~40質量%である、
前記水中油型乳化化粧料。
[2]前記水中油型乳化化粧料は、無機顔料の含有量が1質量%未満である、[1]に記載の水中油型乳化化粧料。
[3]前記水中油型乳化化粧料は、ステアロイルメチルタウリンナトリウム及びポリソルベート80からなる群から選ばれる刺激性界面活性剤の総含有量が0質量%~0.5質量%である、[1]~[2]のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
[4]前記抱水性油剤は、フィトステロール誘導体及び多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の抱水性油剤である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
[5]前記フィトステロール誘導体はラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)、イソステアリン酸フィトステリル及びヒドロキシステアリン酸フィトステリルからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィトステロール誘導体であり、及び/又は、前記多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルはトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル及びヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルである、[4]に記載の水中油型乳化化粧料。
[6]前記アクリルアミド系高分子は、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリルアミド系高分子である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
[7]前記多価アルコール脂肪酸エステルは、トリエチルヘキサノイン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール及びジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールエステルである、[1]~[6]のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
[8]前記多価アルコール脂肪酸エステルの含有量は1質量%~14質量%であり、及び/又は前記水の含有量は40質量%~75質量%である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
[9]ニコチン酸アミド及び水を含む水相に、アクリルアミド系高分子と、抱水性油剤及び多価アルコール脂肪酸エステルを含む油相とを順次添加して、乳化することにより、水中油型乳化化粧料を得る工程
を含む、水中油型乳化化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ニコチン酸アミドを高濃度で含みながらも、刺激感が低減されており、かつ油分の含有量が15質量%以上である場合でさえもべたつきが感じられず、総合的に使用感が良好な水中油型乳化化粧料を提供することができる。すなわち、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、含有するニコチン酸アミドによる生理活性作用及び油分の保湿作用の発揮を期待して、刺激感が低減されており、べたつきが感じられないことから、良好な使用感をもって、日常的に使用することが期待される。
【0023】
さらに、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、安定性に優れるものであることから、長期間の使用及び保存が可能である。また、本発明の一態様の方法によれば、簡便かつ工業的規模で、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一態様である水中油型乳化化粧料及び方法の詳細について説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0025】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、化粧品分野における当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている理論や推測は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような理論や推測のみによって拘泥されるものではない。
【0026】
本明細書で用いられている用語のうち、
「及び/又は」は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、水中油型乳化化粧料の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、各成分の含有量の総量は、100%を越えることはない。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。なお、成分の含有量は、市販品を用いる場合は、市販品に含まれる成分の量であることが好ましいが、市販品自体の量であってもよい。
数値範囲の「~」は、本明細書において、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。「超過」及び「未満」は、その前の数値を含まない、下限及び上限をそれぞれ意味し、例えば、「1超過」は1より大きい数値であり、「100未満」は100より小さい数値を意味する。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
「使用感」が良好である水中油型乳化化粧料とは、後述する実施例に記載のとおりに、規格ビンに充填して20℃にて一晩静置保管した化粧料を前腕内側の皮膚へ塗布した際に、刺激感及びべたつきが良好である水中油型乳化化粧料をいう。
「安定性」を有する水中油型乳化化粧料とは、後述する実施例に記載のとおりの安定性試験を実施した場合に、化粧料全体が均一であり、アクリル板上で伸ばした際に結晶物及び凝集物が確認されない、又はキメ粗が確認されない水中油型乳化化粧料をいう。
【0027】
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0028】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、ニコチン酸アミド(成分(A))と、抱水性油剤(成分(B))と、アクリルアミド系高分子(成分(C))と、多価アルコール脂肪酸エステル(成分(D))と、水(成分(E))とを含む。
【0029】
成分(A)のニコチン酸アミドは、ニコチン酸(ビタミンB3、ナイアシンともよばれる)のアミド化合物であり、ニコチンアミド及びナイアシンアミドともよばれる、ニコチン酸の誘導体である。
【0030】
成分(A)のニコチン酸アミドは、水溶性ビタミンであって、ビタミンB群の一種である。成分(A)は、水相に含まれる成分として使用され、水中油型乳化化粧料に血行促進作用、抗炎症作用、セラミド合成促進作用などの生理活性作用を付与するように機能する。成分(A)は、天然物(米ぬかなど)から抽出すること、公知の方法によって合成することなどにより得ることができる。また、成分(A)は、市販されているものであってもよい。
【0031】
成分(A)のニコチン酸アミドの含有量は、水中油型乳化化粧料を皮膚に塗布した際にニコチン酸アミドが有する所望の生理活性を発揮し得る量であり、具体的には、3質量%以上である。ただし、ニコチン酸アミドの含有量が多いと過剰な刺激感を水中油型乳化化粧料に付与し得ることから、成分(A)のニコチン酸アミドの含有量は3質量%~8質量%であり、好ましくは4質量%~7質量%であり、より好ましくは4.5質量%~6質量%である。
【0032】
成分(B)の抱水性油剤は、自重と等量以上の水を保持できる、すなわち、抱水力が100%以上である油剤であればよい。成分(B)は、水を包含して均一なペースト状態となることができる。成分(B)は、油相に含まれる成分として使用され、主として成分(A)の刺激感を抑制するように機能し、さらに成分(C)及び成分(D)とともに水中油型乳化化粧料の安定性を高めるように機能し得る。
【0033】
なお、「抱水力が100%以上である油剤」とは、英国薬局方(BP)「ラノリン含水価測定法」に準じた方法、具体的には、油剤 10gを500mL容ポリ容器に計量し、次いでスポイトで少しずつ純水(「純水」(イオン交換水);正起薬品工業社製)を加えながら撹拌棒(φ12×300mm;材質:POM(ジュラコン))を用いて練り(約0.5mL/min)、次いで純水を練りこめなくなった時点で試験終了とし(過剰な水分は可能な限り取り除く)、下記の式により算出された抱水力が100%以上である油剤をいう。
抱水力(%)=[増量した水重量(g)]/[開始時の油剤重量(10g)]×100
【0034】
成分(B)の抱水性油剤は、成分(A)の刺激感を良好に抑制するという観点から、フィトステロール誘導体及び多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルであることが好ましい。また、同様の観点から、フィトステロール誘導体としては、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)、イソステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリルなどが好ましく;多価アルコールヒドロキシ脂肪酸エステルとしては、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルなどが好ましいが、成分(A)の刺激感をより良好に抑制するという観点から、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル及びトリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルがより好ましい。成分(B)は、上記したものの1種の単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0035】
成分(B)は、これまでに知られている方法で抽出又は合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。市販されているものとしては、例えば、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)として「エルデュウ(登録商標) PS-203」(味の素社製)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)として「エルデュウ(登録商標) PS-304」(味の素社製)、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルとして「PLANDOOLTM-MAS」(日本精化社製)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)として「PLANDOOLTM-S」(日本精化社製)、イソステアリン酸フィトステリルとして「PLANDOOLTM-ISS」(日本精化社製)、ヒドロキシステアリン酸フィトステリルとして「サラコス FH」(日清オイリオグループ社製)、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルとして「サラコス WO-6」(日清オイリオグループ社製)、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルとして「コスモール 168ARV」(日清オイリオグループ社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
成分(B)の含有量は、成分(A)の刺激感を抑制するように機能し得る量であり、具体的には、1.5質量%~15質量%である。ただし、成分(B)の含有量は、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の安定性を高めるためには、1.5質量%~12質量%であることが好ましく、2.0質量%~10質量%であることがより好ましく、3.0質量%~5.0質量%であることがさらに好ましい。成分(B)の含有量がこれらの範囲内にあることにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、刺激感を抑えつつも、生理活性作用を発揮することが期待できる量の成分(A)を含有することができる。
【0037】
成分(C)のアクリルアミド系高分子は、分子内にアクリルアミド構造(CH2=CH-CO-NH-)に由来する構造を有する有機高分子であり、構成単位が1種のホモポリマーであってもよいし、構成単位が2種以上のコポリマーであってもよい。成分(C)は、水相と油相とを混合する際に使用され、いわゆる、乳化剤として機能する。本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、成分(C)を含有することにより、乳化目的で界面活性剤、特に刺激性界面活性剤を含有しなくともよいという利点を有する。
【0038】
ホモポリマーのアクリルアミド系高分子としては、例えば、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。コポリマーのアクリルアミド系高分子としては、例えば、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリロイルジアルキルタウリン共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル/(メタ)アクリロイルジアルキルタウリン共重合体及びその塩などが挙げられる。アクリルアミド系高分子は、これらの1種の単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0039】
成分(C)は、成分(A)を含む水相と、成分(B)及び成分(D)とを含む油相とを良好に混合及び均一することができるという観点から、ポリアクリルアミド、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリロイルジアルキルタウリン共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル/(メタ)アクリロイルジアルキルタウリン共重合体及びその塩であることが好ましい。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。成分(C)の好ましい具体例は、ポリアクリルアミド及び(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー及び(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーである。
【0040】
成分(C)は、これまでに知られている方法で抽出又は合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。市販されているものとしては、例えば、ポリアクリルアミドとしては「SEPIGEL 305」(SEPPIC社製)、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーとしては「SIMULGELTM EG」(SEPPIC社製)、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーとしては「SIMULGELTM FL」(SEPPIC社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
成分(C)の含有量は、水中油型乳化化粧料を調製する際に水相と油相とを混合及び均一にし得る量であり、具体的には、成分(C)がコポリマーである場合は0.5質量%~8質量%であり、及び成分(C)がホモポリマーである場合は0.4質量%~8質量%である。ただし、成分(C)の含有量は、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の安定性を高め、使用感を良好に保つためには、成分(C)がコポリマーである場合は0.75質量%~2.5質量%であることが好ましく、0.85質量%~1.5質量%であることがより好ましく;成分(C)がホモポリマーである場合は0.6質量%~3質量%であることが好ましく、0.8質量%~2質量%であることがより好ましい。成分(C)の含有量がこれらの範囲内にあることにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、良好な乳化が達成され、他の成分がよく混合される結果として、使用感及び安定性に優れつつも、成分(A)による生理活性作用を発揮することが期待できる。
【0042】
成分(D)の多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有する有機化合物である。成分(D)は、油相に含まれる成分として使用され、成分(A)を含む水相及び成分(B)を含む油相を成分(C)により混合及び均一化するように乳化して得られたものを安定的に維持せしめるように機能する。
【0043】
成分(D)の構成多価アルコールは特に限定されないが、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、BG、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。成分(D)の構成脂肪酸は特に限定されないが、例えば、エチルヘキサン酸、カプリル酸、カプリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などが挙げられる。成分(D)において、構成多価アルコール及び構成脂肪酸は、それぞれ上記したもののいずれか1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0044】
成分(D)は極性を有することから、極性油剤であるといえる。成分(D)の極性の程度は特に限定されないが、例えば、IOBが0.2以上であることが好ましい。IOBとは、有機化合物の極性/非極性を表す有機概念図に基づく親疎水性の指標であり、有機概念図及びIOBの詳細は、例えば、Fujitaの文献(A. Fujita, Pharm. Bull., 2, 163-173 (1954))などで説明されている。簡潔に、有機概念図とは、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環などにそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値(OV)及び無機性値(IV)を求め、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットして作成される。有機概念図におけるIOBは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち、「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。IOB値が大きくなるほど、親水性、すなわち、極性が大きくなることを意味する。なお、IOB値は、メーカーが公開している数値を用いてもよく、例えば、ウェブサイト[https://www.nihon-emulsion.co.jp/tech/organic.html]などにより公開されている数値を用いてもよい。
【0045】
IOBが0.2以上である多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールなどが挙げられるが、水中油型乳化化粧料に良好な安定性を付与するという観点から、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル及びテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルは、これらの1種の単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0046】
成分(D)は、これまでに知られている方法で抽出又は合成したものでも、市販されているものでも、いずれでもよい。市販されているものとしては、例えば、トリエチルヘキサノインとして「MYRITOL GTEH」(BASF社製)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルとして「M-ファインオイル CCT-1」(ミヨシ油脂社製)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルとして「CETIOL PEEH-4」(BASF社製)、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリルとして「サラコス 334」(日清オイリオグループ社製)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールとして「エステモール N-01」(日清オイリオグループ社製)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールとして「コスモール525」(日清オイリオグループ社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
成分(D)の含有量は、水中油型乳化化粧料に安定性を付与し得る量であれば特に限定されないが、例えば、0.1質量%~15質量%であることが好ましく、1質量%~14質量%であることがより好ましく、3質量%~8質量%であることがさらに好ましい。成分(D)の含有量がこれらの範囲内にあることにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、-10℃~45℃程度の温度で保管しても、水相及び油相が混ざり合ったものとして、その性状を安定的に維持することが期待できる。ただし、成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の含有量によって適宜設定され得る。
【0048】
成分(E)の水は、水相の基剤として用いられる。水は通常化粧料を作製するために用いられる水であればよい。水の含有量は、水中油型乳化化粧料を構成し得る量であれば特に限定されないが、例えば、40質量%~75質量%であることが好ましく、45質量%~70質量%であることがより好ましく、50質量%~65質量%であることがより好ましい。
【0049】
本発明一態様の水中油型乳化化粧料は、油分の量を15質量%以上にするために、無機顔料の含有量が1質量%未満であることが好ましく、0質量%~0.5質量%であることがより好ましく、0質量%~0.3質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明一態様の水中油型乳化化粧料は、使用感を良好なものとするために、刺激性界面活性剤の含有量は0質量%~0.5質量%であることが好ましく、0質量%~0.3質量%であることがより好ましい。
【0050】
無機顔料は、水や油に溶けない無機粉末であり、タルクやマイカなどの鉱物が由来の粉末が挙げられる。
刺激性界面活性剤は、刺激性を有することが知られている界面活性剤であり、具体的にはステアロイルメチルタウリンナトリウム及びポリソルベート80である。したがって、本発明一態様の水中油型乳化化粧料は、ステアロイルメチルタウリンナトリウム及びポリソルベート80を含む場合、これらの総含有量は0質量%~0.5質量%であることが好ましく、0質量%~0.3質量%であることがより好ましい。
【0051】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、成分(A)~(E)を含有し、さらに使用感が良好な水中油型乳化化粧料であるためにpH及び硬度が所定の範囲内にあることが好ましい。
【0052】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料のpHは、日常的に使用される水中油型乳化化粧料として適したpHであれば特に限定されないが、例えば、5.0~8.0の範囲内にあることが好ましく、5.5~7.5であることがより好ましく、6.0~7.0であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の硬度は、水中油型乳化化粧料を種々の剤形とするのに適した硬度であれば特に限定されないが、例えば、20g~300gの範囲内にあることが好ましく、20g~250gであることがより好ましく、30g~200gであることがさらに好ましい。
【0054】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料のpH及び硬度は、後述する実施例に記載がされているとおりの方法によって測定して得られる値である。
【0055】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、本発明の課題を解決し得る限り、成分(A)~(E)に加えて、その他の成分を含有してもよい。
【0056】
その他の成分は特に限定されず、例えば、通常の水中油型乳化化粧料に用いられる成分などが挙げられ、より具体的には油剤、保湿剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤、清涼剤、キレート剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、美白剤、ビタミン類、美容成分、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。その他の成分の幾つかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0057】
油剤は、成分(B)の抱水性油剤及び成分(D)の多価アルコール脂肪酸エステル以外の油剤であり、水への溶解度(1013.25hPa、20℃)が0.1質量%未満(1g/L未満)である物質をいう。油剤としては、保湿機能を付与し得る油性エモリエント成分として使用されている油剤などが挙げられ、具体的には、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピルなどのエステル油;シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジメチコン、ジフェニルジメチコン、アモジメチコンなどのシリコーン油;ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテルなどのフッ素油;ポリイソブテン、パラフィン、ポリオレフィン、イソパラフィン、スクワラン、スクワレンなどの直鎖及び分岐鎖の炭化水素油;ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、イソヘキサデカン酸、アンテイソヘンイコサン酸、長鎖分岐脂肪酸などの高級脂肪酸;セタノール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セテアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキシルデカノール、2-デシルテトラデシノール、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)などの高級アルコール;ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、アボカド油、ゴマ油、茶油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ククイナッツ油、ローズヒップ油、ノバラ油、メドウフォーム油、パーシック油、ティートリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、カカオ脂、シア脂、水素添加ヤシ油、水素添加ヒマシ油、ホホバ油、水素添加ホホバ油などの植物油などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。油剤の含有量は、5質量%~15質量%であることが好ましい。後述する紫外線吸収剤、酸化防止剤などの中には油剤として用いられるものが含まれる。
【0058】
なお、その他の成分である油剤の含有量が過剰であると、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の安定性が損なわれる傾向にあることから、該油剤の含有量は、成分(B)の含有量及び/又は成分(D)の含有量と一定の関係にあることが好ましい。具体的には、該油剤と成分(B)及び成分(D)の配合比である、(該油剤の配合量)/(成分(B)及び成分(D)の配合量)の値が、0.1~2.0であることが好ましい。なお、上限が2.0を超える場合は水相と油相との混合及び乳化が困難になること、経時安定性を確保することが困難になることなどの問題が生じる傾向にある。
【0059】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料における成分(B)、成分(D)及び油剤からなる油分の総含有量は、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料に良好な保湿作用を付与し得るという観点から、15質量%~40質量%であり、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料がより良好な保湿作用を有しつつも、安定性を保持するためには、20質量%~40質量%であることが好ましく、20質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0060】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール(BG)、プロピレングリコール(PG)、ジグリセリン、ジプロピレングリコール(DPG)、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、トレハロース、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、加水分解エラスチン、乳酸ナトリウム、シクロデキストリン、ピロリドンカルボン酸などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。保湿剤の含有量は、0質量%~15質量%であることが好ましい。
【0061】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0062】
増粘剤としては、例えば、水溶性高分子などが挙げられ、具体的には、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、フコイダン、チューベロース多糖体などの水溶性多糖類;カラギーナン、アルギン酸などの天然高分子;カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの半合成高分子;カルボマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのアクリル酸系ポリマーなどの合成高分子などが挙げられる。増粘剤は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。増粘剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0063】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、エチドロン酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。pH調整剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。pH調整剤は中和剤ともよぶ。
【0064】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、δトコフェロールなどのビタミンE及びその誘導体;チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物、ピロ亜硫酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0065】
キレート剤としては、例えば、アラニン、エデト酸2ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、リン酸3ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。キレート剤の含有量は、0質量%~0.1質量%程度が好ましい。
【0066】
美容成分としては、例えば、リンゴタンニン、カンゾウ根エキス、レスベラトロール、チューベロース多糖体、異性化糖、ヤエヤマアオキ果汁、チンピエキス、グリチルリチン酸ジカリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。美容成分の含有量は、0質量%~5質量%であることが好ましい。
【0067】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、化粧料として用いられる限りにおいて、その機能及び/又は効果については特に限定されない。本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、使用感及び安定性が良好なものである。
【0068】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の使用感は、例えば、後述する実施例に記載の官能評価により、訓練を受けたパネラー5名を対象として、被験化粧料を直接的に前腕内側の皮膚へ塗布した場合、刺激感又はべたつきの平均点が3.0より大きい程度であることが好ましく、刺激感及びべたつきの両方の平均点が3.0より大きい程度であることがより好ましい。
【0069】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の安定性は、例えば、後述する実施例に記載の方法により、45℃又は低温サイクルの恒温槽にて1ヵ月間又は1週間静置して保管した場合に化粧料全体が均一であり、アクリル板上で伸ばした際に結晶物、凝集物又はキメ粗が確認されない程度であることが好ましく、45℃及び低温サイクルの両方の恒温槽にて1ヵ月間又は1週間静置して保管した場合に化粧料全体が均一であり、アクリル板上で伸ばした際に結晶物、凝集物又はキメ粗が確認されない程度であることがより好ましい。
【0070】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の具体的な態様は、成分(A)を3質量%~8質量%、成分(B)を1.5質量%~15質量%、成分(C)を0.4質量%~8質量%、成分(D)を1質量%~14質量%及び成分(E)を40質量%~75質量%で含み、油分の総含有量が15質量%~40質量%であり、pHが5.5~7.5であり、かつ硬度が20g~250gであることにより、ニコチン酸アミドを高濃度で含みながらも、刺激感が低減されており、油分の総量が15質量%以上である場合でさえもべたつきが感じられず、総合的に使用感が良好である水中油型乳化化粧料である。
【0071】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の別の具体的な態様は、成分(A)を4質量%~7質量%、成分(B)を1.5質量%~12質量%、成分(C)を0.6質量%~3質量%、成分(D)を3質量%~8質量%及び成分(E)を50質量%~65質量%で含み、油分の総含有量が20質量%~40質量%であり、pHが6.0~7.0であり、かつ硬度が30g~200gであることにより、ニコチン酸アミドを高濃度で含みながらも、刺激感が低減されており、油分の総量が15質量%以上である場合でさえもべたつきが感じられず、総合的に使用感が良好であり、かつ安定性が良好である水中油型乳化化粧料である。
【0072】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、成分(A)~(E)及び任意のその他の成分を混合して、乳化することにより得られる。本発明の別の一態様は、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の製造方法である。
【0073】
本発明の一態様の方法は、成分(A)及び成分(E)を含む水相に、成分(C)と、成分(B)及び成分(D)を含む油相とを順次添加して、乳化することにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を得る工程を含む。
【0074】
本発明の一態様の方法の非限定的な具体例としては、それぞれ60℃~90℃に加温して成分(A)及び成分(E)を含む水相と、成分(B)及び成分(D)を含む油相とを調製し、次いで該水相に成分(B)を添加して、高速撹拌機を用いて、60℃~90℃にて、2,000rpm~4,000rpm、数分間の第1の高速撹拌処理に供し、次いで成分(B)を含む水相に該油相を添加して、高速撹拌機を用いて、60℃~90℃にて、2,000rpm~4,000rpm、数分間の第2の高速撹拌処理に供して乳化を行うことにより乳化処理物を得て、次いで該乳化処理物を緩やかに撹拌しながら50℃程度まで冷却したところでpH 6~7に調整し、次いでpH調整後の乳化処理物を緩やかに撹拌しながら室温~30℃程度まで冷却することにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を得る方法などが挙げられる。その他の任意の成分はそれぞれの性質(水溶性又は脂溶性)に応じて、水相又は油相に含めればよい。
【0075】
本発明の一態様の方法は、水相にアクリルアミド系高分子及び油相を順次添加して、乳化することにより、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を得ることが可能であり、複雑な工程又は特別な装置を用意することなく、簡便に実施できることから、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を工業的規模で製造することが可能である。
【0076】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、その使用態様や剤形については特に限定されず、例えば、スキンケア化粧品、メーキャップ化粧品、フレグランス化粧品、ボディケア化粧品など、具体的にはクリーム、乳液、ファンデーション、化粧水、美容液、サンスクリーンミルク、パック、洗顔クリーム、ハンドクリーム、メーキャップクレンジング、化粧下地、コンシーラー、ほほ紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、口紅、日焼け止めクリーム、脱毛・除毛クリーム、オールインワン化粧品などに適用可能である。本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、乳液、クリーム、美容液などの一定の粘性を有する剤形とすることにより、安定性に優れ、さらにしっとりとした良好な使用感触を有し得るものとなることから好ましい。特に、アイクリームなどの部分使用用の剤形とすることにより、一定の固さを有し、優れた使用感触となることからより好ましい。なお、アイクリームのような部分使用の剤形は、塗布時のコクが求められるため、顔全体に塗布するための乳液やクリームよりも固いものである。また、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、シートなどに含浸すること、噴射することなどが可能である。そこで、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、含浸シート、含浸マスク、ポンプなどのスプレーといった剤形とすることが期待される。
【0077】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、皮膚に塗布することで、ニコチン酸アミドによる生理活性により、種々の生理的薬理的効果を発揮することが期待される。本発明の一態様の水中油型乳化化粧料の皮膚への塗布方法は特に限定されないが、例えば、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を皮膚にとった上で指や塗布具で伸ばす方法、容器に内蔵された専用のアプリケーターを使用して塗布する方法などが挙げられる。さらに、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、油分による保湿作用により、皮膚表面からの水分蒸発を防ぐことが可能である。また、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、水分及び保湿剤を含有することにより、塗布した乾燥皮膚を改善すること又はさらなる乾燥による悪化を抑制することが可能である。
【0078】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0079】
[1.水中油型乳化化粧料の調製(1)]
表1に示した処方に従い、以下の手順により、被験化粧料として各種水中油型乳化化粧料を調製した。なお、表中の数値は、質量%(wt%)を表わす。
【0080】
表中の水相及び油相のそれぞれを、80℃にて各成分を溶解混合及び撹拌して均一にすることにより調製した。次いで、水相にアクリルアミド系高分子を加えて、ディスパー(「ラボ・リューション」;プライミクス社製)を用いて、80℃、3,000rpm、1分間の条件で撹拌混合して、アクリルアミド系高分子含有水相を調製した。次いで、アクリルアミド系高分子含有水相に油相を加えて、ディスパーを用いて、80℃、3,000rpm、1分間の条件で撹拌混合して乳化処理に供することにより、乳化処理物を得た。
【0081】
得られた乳化処理物をパドルを用いて緩やかに撹拌しながら50℃まで冷却し、次いで中和剤を加えることにより、pHを6~7に調整した。次いで、pH調整後の乳化処理物を緩やかに撹拌しながら30℃まで冷却することにより被験化粧料を得た。
【0082】
[2.評価方法]
(2-1)pH
pHは、100mlジャー容器(竹本容器社製)に入れ、20℃にて一晩静置した被験化粧料について、常法に従ってpHメーター(「pH METER F-22」;堀場製作所社製)を使用して測定した。
【0083】
(2-2)硬度
被験化粧料を、100mlジャー容器(竹本容器社製)に入れ、20℃にて一晩静置した。次いで、静置した被験化粧料について、レオメーター(「CR-500DX」;サン科学社製)を使用して、硬度を測定した。
【0084】
(2-3)乳化性
製造時の乳化処理から被験化粧料を製造して20℃の環境下で1日経過した間のものについて目視で観察することにより、乳化処理中に層分離が生じたこと、冷却中に油浮きが生じたこと、及び/又は製造後の化粧料中に結晶物、凝集物又はキメ粗が生じたことという異常を指標にして、以下の基準により乳化性を評価した。
○:上記異常が認められない
×:上記異常により、均一性のある被験化粧料を製造できない
【0085】
(2-4)安定性
被験化粧料を7Kビン(東京硝子社製)に入れて、45℃及び低温サイクル(-10℃~10℃)の恒温槽にて、それぞれ1ヵ月静置して保管した。保管後の化粧料の状態を目視で確認することにより、以下の基準で安定性を評価した。
○:化粧料全体が均一であり、アクリル板上で伸ばした際に結晶物、凝集物及びキメ粗が確認されない
×:化粧料の分離、又は化粧料をアクリル板上で伸ばした際に結晶物、凝集物又はキメ粗が確認される
【0086】
(2-5)官能評価
訓練を受けたパネラー5名を対象として、被験化粧料を直接的に前腕内側の皮膚へ塗布することにより、刺激感(スティンギング)及びべたつきの2項目を下記の基準により点数をつけてパネラー間の平均点及び標準偏差を求めた。また、これらの総合評価として、使用感を下記の基準により評価した。
【0087】
<刺激感>
5: ピリピリとした刺激を感じない
4: ピリピリとした刺激をあまり感じない
3: 刺激はないが、違和感がある
2: ピリピリとした刺激をやや感じる
1: ピリピリとした刺激を感じる
【0088】
<べたつき>
5: 油性感がなく、べたつきを感じない
4: 油性感はないが、ややべたつきを感じる
3: やや油性感があり、ややべたつきを感じる
2: やや油性感があり、べたつきを感じる
1: 油性感が強く、べたつきを感じる
【0089】
<使用感>
○: 刺激感及びべたつきの両方の平均点が、3.0より大きい
×: 刺激感及びべたつきの少なくとも一方の平均点が、3.0以下
【0090】
[3.評価結果]
各種測定の結果を表1に示す。
実施例1~6の被験化粧料は、5質量%という高濃度のニコチン酸アミドを含みながら、アクリルアミド系高分子、抱水性油剤及び多価アルコール脂肪酸エステルを含有することにより、水中油型乳化化粧料として得られ、さらに使用感及び安定性が優れたものであった。
【0091】
それに対して、アクリルアミド系高分子を含有しない被験化粧料は、乳化性が劣り、水中油型乳化化粧料として使用できないものであった(比較例1)。一方、多価アルコール脂肪酸エステルの代わりに非極性の油剤を高濃度で含有する被験化粧料は、乳化ができたものの、安定性が劣り、べたつきが認められるものであった(比較例2)。
【0092】
ニコチン酸アミドを含有しない被験化粧料は刺激感について問題のないものであったが(参考例1)、ニコチン酸アミドとともに界面活性剤を含有するものは刺激感が認められた(比較例3及び比較例4)。それに対して、石けん乳化を用いざるを得なかった場合、乳化処理が適切に行われず、得られたものは化粧料中に凝集物が認められ、通常の水中油型乳化化粧料として使用できないものであった(比較例5)。なお、比較例5の被験化粧料について、規格には適合しないが、参考のために評価したところ、刺激感が認められた。
【0093】
なお、アクリルアミド系高分子、抱水性油剤及び多価アルコール脂肪酸エステルの含有量によっては、得られた被験化粧料は安定性が劣る傾向にあることがわかった(比較例6、比較例7及び比較例8)。また、ニコチン酸アミドの含有量が過剰である被験化粧料は、使用感が劣ることがわかった(比較例9)。
【0094】
[4.水中油型乳化化粧料の調製(2)及び評価]
上記1と同様にして、表2に示した処方に従い、被験化粧料として各種水中油型乳化化粧料を調製した。また、上記2に示す方法により、得られた被験化粧料のpH、硬度、乳化性及び安定性を測定し、官能評価を実施した。ただし、安定性については、1ヵ月静置して保管することに代えて1週間静置して保管した。各種測定の結果を表2に示す。
【0095】
表2に示すとおり、ニコチン酸アミドの含有量が3質量%~8質量%と大きいものでありながら、抱水性油剤の含有量が2質量%~12質量%であり、アクリルアミド系高分子(コポリマー)の含有量が1.5質量%~3質量%(原材料の量)であり、かつ多価アルコール脂肪酸エステルを含む水中油型乳化化粧料は、ニコチン酸アミドによる生理活性が期待できるものでありながら、使用感及び安定性に優れるものであることがわかった(実施例7~12)。さらに、これらの油分は16.25質量%~27.48質量%と高かった。
【0096】
また、刺激性があるとされているポリソルベート80を含みつつも、その含有量が0.3質量%と小さい水中油型乳化化粧料は、刺激感がほとんど感じられなかった(実施例11)。
【0097】
[5.水中油型乳化化粧料の調製(3)及び評価]
上記1と同様にして、表3に示した処方に従い、被験化粧料として各種水中油型乳化化粧料を調製した。また、上記2に示す方法により、得られた被験化粧料のpH、硬度、乳化性及び安定性を測定し、官能評価を実施した。各種測定の結果を表3に示す。
【0098】
表3に示すとおり、実施例13の被験化粧料は、使用感及び安定性ともに優れたものであった。
【0099】
表1~表3の結果から、ニコチン酸アミドに加えて、それぞれ所定の量に調整したアクリルアミド系高分子及び抱水性油剤とともに、多価アルコール脂肪酸エステル及び水を含有する水中油型乳化化粧料は、ニコチン酸アミドによる生理活性が期待できるものでありながら、油分の含有量が多く、使用感及び安定性に優れるものであることがわかった。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
表中の成分のうち、使用した製品名を抜粋して以下に示す。
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:「PemulenTM TR-2」(Lubrizol Advanced Materials社製)
カルボマー(980):「Carbopol(登録商標) 980 Polymer」(Lubrizol Advanced Materials社製)
カルボマー(MD-105):「HIVISWAKO(登録商標) MD-105」(富士フイルム和光純薬社製)
ステアロイルメチルタウリンNa:「NIKKOL SMT」(日光ケミカルズ社製)
37.5%(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80/水混合物:「SIMULGELTM EG」(コポリマー含有量 37.5%;イソヘキサデカン(含有量 22.5%)、ポリソルベート80(含有量 7.5%)、モノオレイン酸ソルビタン(含有量 2.5%)、水を含有;SEPPIC社製)
40%ポリアクリルアミド/(C13,14)イソパラフィン/ラウレス-7/水混合物:「SEPIGEL 305」(ポリアクリルアミド含有量 40%;(C13,14)イソパラフィン(含有量 24%)、ラウレス-7(含有量 6%)、水を含有;SEPPIC社製)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル):「エルデュウ(登録商標) PS-203」(味の素社製)
トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル:「サラコス WO-6」(日清オイリオグループ社製)
マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル:「PLANDOOLTM-MAS」(日本精化社製)
トリエチルヘキサノイン:「MYRITOL GTEH」(BASF社製)
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル:「CETIOL PEEH-4」(BASF社製)
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:「M-ファインオイル CCT-1」(ミヨシ油脂社製)
ステアリン酸:「NAA-173K」(日油社製)
ポリソルベート80:「レオドール TW-O120V」(花王社製)
L-アルギニン、水:「L-アルギニン Cグレード」(味の素社製)を精製水にて、10%に調整したもの
水酸化カリウム、水:「水酸化カリウム」(関東化学社製)を精製水にて、10%に調整したもの
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の一態様の水中油型乳化化粧料は、ニコチン酸アミドによる生理活性作用があり、かつ油分による保湿作用がありながら、使用感が良好であり、安定性に優れたものであることから、クリーム、乳液、化粧水、美容液、含浸シート、含浸マスク、スプレーなどのスキンケア化粧品などとして利用することができる。使用者は、本発明の一態様の水中油型乳化化粧料を使用することにより、日常的に快適に、皮膚の血行及びセラミド合成を促進しつつ、皮膚の乾燥を低減又は防止することが期待できる。