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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】内視鏡装置および内視鏡装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20221017BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/04 531
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021503303
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2019008537
(87)【国際公開番号】W WO2020178970
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光一郎
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154325(WO,A1)
【文献】特開2015-066132(JP,A)
【文献】特開2019-005096(JP,A)
【文献】特開2011-087910(JP,A)
【文献】国際公開第2006/004038(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/071372(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の第1の光を透過させる第1の色フィルタおよび第2の色の第2の光を透過させる第2の色フィルタを有し、前記第1の色フィルタを透過した第1の光に基づく第1の画像信号および前記第2の色フィルタを透過した第2の光に基づく第2の画像信号を取得する撮像素子と、
前記第1の画像信号および前記第2の画像信号の各々に色分離処理および個体差補正処理を行う色分離補正部と、
前記色分離処理および前記個体差補正処理が行われた第1の画像信号および第2の画像信号をカラー画像信号の第1のチャネルおよび第2のチャネルにそれぞれ割り当てる色変換部と、を備え、
前記色分離処理は、前記第1の画像信号から前記第2の光に基づく信号を減算し、前記第2の画像信号から前記第1の光に基づく信号を減算する処理であり、
前記個体差補正処理は、前記第1の色フィルタの分光特性と所定の第1の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第1の画像信号の誤差を補正し、前記第2の色フィルタの分光特性と所定の第2の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第2の画像信号の誤差を補正する処理である、内視鏡装置。
【請求項2】
前記第2の色フィルタが、第3の色の第3の光を透過させ、
前記撮像素子は、前記第2の色フィルタを透過した第3の光に基づく第3の画像信号を、前記第1および第2の画像信号とは異なるタイミングで取得し、
前記色変換部が、前記第3の画像信号を前記カラー画像信号の第3のチャネルに割り当てる、請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記第1の色フィルタが、380nmから460nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第1の光を透過させ、
前記第2の色フィルタが、500nmから580nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第2の光を透過させる、請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記第1の色フィルタが、400nmから585nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第1の光を透過させ、
前記第2の色フィルタが、610nmから730nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第2の光、および、585nmから615nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第3の光を透過させる、請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
内視鏡装置の作動方法であって、
前記内視鏡装置は、第1の色フィルタおよび第2の色フィルタを有する撮像素子と、色分離補正部および色変換部を有する画像処理装置と、を備え、
前記第1の色フィルタが、第1の色の第1の光を透過させるステップと、
前記第2の色フィルタが、第2の色の第2の光を透過させるステップと、
前記撮像素子が、前記第1の色フィルタを透過した第1の光に基づく第1の画像信号および前記第2の色フィルタを透過した第2の光に基づく第2の画像信号を取得するステップと
前記色分離補正部が、前記第1の画像信号から前記第2の光に基づく信号を減算し、前記第2の画像信号から前記第1の光に基づく信号を減算する色分離処理前記第1の色フィルタの分光特性と所定の第1の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第1の画像信号の誤差を補正し、前記第2の色フィルタの分光特性と所定の第2の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第2の画像信号の誤差を補正する個体差補正処理と、を行うステップと、
前記色変換部が、前記色分離処理および前記個体差補正処理が行われた第1の画像信号および第2の画像信号をカラー画像信号の第1のチャネルおよび第2のチャネルにそれぞれ割り当てるステップと、を有する内視鏡装置の作動方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置および内視鏡装置の作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡には、原色系または補色系の色フィルタアレイを備えるカラー撮像素子が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-106692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
色フィルタの分光特性には個体差があるため、撮像素子によって分光特性がばらつき、内視鏡画像の色が内視鏡によってばらつく。色フィルタの分光特性の個体差に起因するこのような内視鏡画像の色のばらつきは、特に狭帯域光観察において問題になることがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、撮像素子の分光特性の個体差に起因する狭帯域光観察での画像の色のばらつきを補正することができる内視鏡装置および内視鏡装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、第1の色の第1の光を透過させる第1の色フィルタおよび第2の色の第2の光を透過させる第2の色フィルタを有し、前記第1の色フィルタを透過した第1の光に基づく第1の画像信号および前記第2の色フィルタを透過した第2の光に基づく第2の画像信号を取得する撮像素子と、前記第1の画像信号および前記第2の画像信号の各々に色分離処理および個体差補正処理を行う色分離補正部と、前記色分離処理および前記個体差補正処理が行われた第1の画像信号および第2の画像信号をカラー画像信号の第1のチャネルおよび第2のチャネルにそれぞれ割り当てる色変換部と、を備え、前記色分離処理は、前記第1の画像信号から前記第2の光に基づく信号を減算し、前記第2の画像信号から前記第1の光に基づく信号を減算する処理であり、前記個体差補正処理は、前記第1の色フィルタの分光特性と所定の第1の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第1の画像信号の誤差を補正し、前記第2の色フィルタの分光特性と所定の第2の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第2の画像信号の誤差を補正する処理である、内視鏡装置である。
【0006】
本態様によれば、第1の光および第2の光で同時に照明された被写体が撮像素子によって撮像されることによって、第1の画像信号および第2の画像信号が同時に取得される。第1の光および第2の光は、相互に異なる色の光であり、第1の色フィルタを透過した第1の光から第1の画像信号が生成され、第2の色フィルタを透過した第2の光から第2の画像信号が生成される。第1の画像信号および第2の画像信号は、色変換部によって、カラー画像信号の第1のチャネルおよび第2のチャネルにそれぞれ割り当てられる。このようなカラー画像信号から、第1の光に基づく画像と第2の光に基づく画像とが重畳されたカラー画像を生成することができる。
【0007】
ここで、色変換部によるチャネルへの割り当てに先立ち、第1および第2の画像信号には、色分離処理および個体差補正処理が行われる。
第1の画像信号は、第1の色フィルタを透過した第2の光に基づく信号も含み得る。同様に、第2の画像信号は、第2の色フィルタを透過した第1の光に基づく信号も含み得る。色分離処理によって、第1の画像信号から第2の光に基づく信号が除去され、第2の画像信号から第1の光に基づく信号が除去される。したがって、第1の光および第2の光の少なくとも一方として狭帯域光を用いる狭帯域光観察において、色分離処理が行われた画像信号から、被写体の特定の情報が強調された狭帯域光画像を得ることができる。
【0008】
また、第1の画像信号は、第1の色フィルタの分光特性の個体差に起因する誤差を含み得る。同様に、第2の画像信号は、第2の色フィルタの分光特性の個体差に起因する誤差を含み得る。個体差補正処理によって、第1の基準色フィルタを用いた場合と同等の第1の画像信号および第2の基準色フィルタを用いた場合と同等の第2の画像信号が得られる。したがって、個体差補正処理が行われた第1および第2の画像信号から、撮像素子の色フィルタの分光特性の個体差に起因する色のばらつきが補正されたカラーの狭帯域光画像を生成することができる。
また、色分離補正部によって色分離処理および個体差補正処理の両方が行われるので、色分離処理および個体差補正処理を回路によって実現する場合には、回路を複雑化および大規模化することなく、画像の色のばらつきの補正を実現することができる。
【0009】
上記一態様において、前記第2の色フィルタが、第3の色の第3の光を透過させ、前記撮像素子は、前記第2の色フィルタを透過した第3の光に基づく第3の画像信号を、前記第1および第2の画像信号とは異なるタイミングで取得し、前記色変換部が、前記第3の画像信号を前記カラー画像信号の第3のチャネルに割り当ててもよい。
第3の光は、第2の光と近い波長を有する光である。この構成によれば、相互に色が近い2つの光を用いて、被写体を観察することができる。
【0010】
上記一態様において、前記第1の色フィルタが、380nmから460nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第1の光を透過させ、前記第2の色フィルタが、500nmから580nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第2の光を透過させてもよい。
この構成によれば、青の第1の光および緑の第2の光を用いてNBI(Narrow Band Imaging)観察を行うことができる。
【0011】
上記一態様において、前記第1の色フィルタが、400nmから585nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第1の光を透過させ、前記第2の色フィルタが、610nmから730nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第2の光、および、585nmから615nmの波長帯域にピーク波長を有する前記第3の光を透過させてもよい。
この構成によれば、緑の第1の光、赤の第2の光、および橙の第3の光を用いてRBI(Red Band Imaging)観察を行うことができる。
【0012】
本発明の他の態様は、内視鏡装置の作動方法であって、前記内視鏡装置は、第1の色フィルタおよび第2の色フィルタを有する撮像素子と、色分離補正部および色変換部を有する画像処理装置と、を備え、前記第1の色フィルタが、第1の色の第1の光を透過させるステップと、前記第2の色フィルタが、第2の色の第2の光を透過させるステップと、前記撮像素子が、前記第1の色フィルタを透過した第1の光に基づく第1の画像信号および前記第2の色フィルタを透過した第2の光に基づく第2の画像信号を取得するステップと前記色分離補正部が、前記第1の画像信号から前記第2の光に基づく信号を減算し、前記第2の画像信号から前記第1の光に基づく信号を減算する色分離処理と、前記第1の色フィルタの分光特性と所定の第1の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第1の画像信号の誤差を補正し、前記第2の色フィルタの分光特性と所定の第2の基準色フィルタの分光特性との差に基づく前記第2の画像信号の誤差を補正する個体差補正処理と、を行うステップと、前記色変換部が、前記色分離処理および前記個体差補正処理が行われた第1の画像信号および第2の画像信号をカラー画像信号の第1のチャネルおよび第2のチャネルにそれぞれ割り当てるステップと、を有する内視鏡作動方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮像素子の分光特性の個体差に起因する狭帯域光観察での画像の色のばらつきを補正することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡装置の全体構成図である。
図2】RBI用の照明光の分光特性を示すグラフである。
図3A】撮像素子の分光特性の一例を示すグラフである。
図3B】撮像素子の分光特性の他の例を示すグラフである。
図4A図3Aの撮像素子のR画素およびG画素によって受光される光の分光特性を示す図であり、図3Aの撮像素子によって取得されるR、O、G画像信号を説明する図である。
図4B図3Bの撮像素子のR画素およびG画素によって受光される光の分光特性を示す図であり、図3Bの撮像素子によって取得されるR、O、G画像信号を説明する図である。
図5A】色分離処理および個体差補正処理後の図4AのR、O、G画像信号を説明する図である。
図5B】色分離処理および個体差補正処理後の図4BのR、O、G画像信号を説明する図である。
図5C】色分離処理後の図4BのR、O、G画像信号を説明する図である。
図6図1の内視鏡装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る内視鏡装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置1は、図1に示されるように、光源装置2と、体内に挿入される内視鏡3と、内視鏡3に接続された画像処理装置4と、を備える。画像処理装置4には、画像処理装置4によって処理された画像を表示するディスプレイ5が接続されている。
内視鏡装置1は、赤(R)、橙(O)および緑(G)の光を用いて被写体AのRBI(Red Band Imaging)画像を観察する狭帯域光観察モードを有する。
【0016】
RBI画像は、被写体Aである生体組織内の血管が強調された画像である。G光は、生体組織の表層まで到達し、O光は、表層下の深部まで到達し、R光は、表層下のさらに深部まで到達する。さらに、G光、O光およびR光は、血液によって吸収される。したがって、被写体Aによって反射または散乱されたG光、O光およびR光から、生体組織の表層および深部の血管が明瞭に表示されたRBI画像を得ることができる。
【0017】
さらに、RBI画像は、出血点から流出する血液によって生体組織の表面が覆われた状態での出血点の特定にも有効である。出血点では、出血点の周囲に比べて血液の濃度が高くなるので、出血点と出血点の周囲とでは、特にO光の透過性が異なる。その結果、RBI画像において、出血点と出血点の周囲とが異なる色で表示される。
内視鏡装置1は、白色光を用いて被写体Aの白色光画像を観察する通常光観察モードをさらに有し、狭帯域光観察モードと通常光観察モードとの間で切り替え可能であってもよい。
【0018】
光源装置2は、狭帯域光観察モードにおいて、R光、O光およびG光を内視鏡3の照明光学系に供給する。図2は、R光、O光およびG光の分光特性の一例を示している。
R光(第2の光)は、610nmから730nmの波長帯域にピーク波長を有する狭帯域光であり、例えば、630nmにピーク波長を有する。
O光(第3の光)は、585nmから615nmの波長帯域にピーク波長を有する狭帯域光であり、例えば、600nmにピーク波長を有する。
G光(第1の光)は、400nmから585nmの波長帯域にピーク波長を有する狭帯域光であり、例えば、540nmにピーク波長を有する。
【0019】
R光、O光およびG光を生成するために、光源装置2は、例えば、キセノンランプのような白色光源と、R、OおよびGの色フィルタとの組み合わせを有する。あるいは、光源装置2は、R光、O光およびG光をそれぞれ発する3個の光源(例えば、LEDまたはLD)を有していてもよい。
光源装置2は、通常光観察モードにおいて、白色光を照明光学系に供給してもよい。
【0020】
内視鏡3は、光源装置2からの照明光を被写体Aに照射する照明光学系と、被写体Aからの光を受光し被写体Aを撮像する撮像光学系と、を備える。
照明光学系は、例えば、内視鏡3の基端部から先端部まで延びるライトガイド6と、内視鏡3の先端に配置された照明レンズ7と、を有する。光源装置2からの光は、ライトガイド6によって内視鏡3の基端部から先端部まで導光され、照明レンズ7によって内視鏡3の先端から被写体Aに向かって射出される。
撮像光学系は、内視鏡3の先端に配置され被写体Aからの光を受光し結像する対物レンズ8と、対物レンズ8によって形成された被写体Aの像を撮像する撮像素子9と、を有する。
【0021】
撮像素子9は、カラーのCCDまたはCMOSイメージセンサであり、撮像面9bを覆う色フィルタアレイ9aを有する。色フィルタアレイ9aは、2次元配列されたRフィルタ、GフィルタおよびBフィルタから構成される原色系フィルタである。R、GおよびBフィルタは、例えばベイヤ配列で配列され、各フィルタは、撮像面9bの各画素に対応している。Rフィルタ(第2の色フィルタ)はR光およびO光を透過させ、Gフィルタ(第1の色フィルタ)はG光を透過させ、Bフィルタは青の光を透過させる。
【0022】
撮像素子9は、RおよびGフィルタをそれぞれ透過したRおよびG光を同時に撮像し、Oフィルタを透過したO光をRおよびG光とは異なるタイミングで撮像する。したがって、光源装置2は、RおよびG光と、O光と、を相互に異なるタイミングで照明光学系6,7に供給する。例えば、光源装置2は、RおよびG光とO光とを交互に照明光学系6,7に供給し、撮像素子9は、RおよびG光とO光とを交互に撮像する。このような光源装置2および撮像素子9の同期した動作は、例えば、画像処理装置4に設けられた制御回路(図示略)によって制御される。撮像素子9は、R光に基づくR画像信号(第2の画像信号)、G光に基づくG画像信号(第1の画像信号)およびO光に基づくO画像信号(第3の画像信号)を生成し、R画像信号、G画像信号およびO画像信号を画像処理装置4に出力する。
【0023】
図3Aおよび図3Bは、撮像素子9の分光特性(色フィルタアレイ9aのR、G、Bフィルタの分光特性)の例を示している。図3Aおよび図3Bに示されるように、撮像素子9の分光特性には、色フィルタアレイ9aの分光特性の個体差に起因するばらつきがある。図3Aは、平均的な撮像素子9の分光特性を示している。以下、図3Aの分光特性を有する平均的な撮像素子9を基準撮像素子という。図3Bは、Gフィルタの分光特性において図3Aの分光特性と相違する撮像素子9の分光特性を示している。図3Bにおいて、Gフィルタの透過率がR光の波長帯域(630nm)において高くなっている。
【0024】
図4Aは、図3Aの基準撮像素子のRおよびG画素によって受光される光の分光特性を示している。図4Bは、図3Bの撮像素子のRおよびG画素によって受光される光の分光特性を示している。RおよびG画素は、RおよびGフィルタにそれぞれ対応している。図4Aおよび図4Bにおいて、R、O、Gのスペクトルが、R、O、G画像信号にそれぞれ対応する。
【0025】
図4Aおよび図4Bに示されるように、RフィルタはG光の波長帯域にも感度を有するので、R画像信号は、Rフィルタを透過したG光に基づく信号も含む。同様に、GフィルタはR光の波長帯域にも感度を有するので、G画像信号は、Gフィルタを透過したR光に基づく信号も含む。ここで、Gフィルタの個体差に起因して、図4BのGフィルタを透過するR光の光量は、図4Aと比較して多くなっている。
なお、図4Aから図5Cにおいて、縦軸のスケールは相互に同一である。
【0026】
画像処理装置4は、撮像素子9から入力されたR、OおよびG画像信号を処理し、1組のR、OおよびG画像信号から、R、G、Bの3つの色チャネルを有する1つのカラー画像信号を生成する。
具体的には、画像処理装置4は、ホワイトバランス(WB)補正部11と、色分離補正部12と、色変換部13と、色調整部14と、記憶部15と、を備える。
【0027】
WB補正部11、色分離補正部12、色変換部13および色調整部14は、電子回路によって実現される。あるいは、WB補正部11、色分離補正部12、色変換部13および色調整部14は、記憶部15に格納された画像処理プログラムに従って処理を実行する画像処理装置4のプロセッサによって実現されてもよい。記憶部15は、例えば、RAMおよびROM等の半導体メモリを有する。
【0028】
撮像素子9からのR、OおよびG画像信号は、WB補正部11に入力される。記憶部15には、R、OおよびG画像信号のそれぞれに対するWB係数が記憶されている。WB係数は、撮像素子9を使用して取得された白の被写体Aの画像に基づいて設定されている。WB補正部11は、R、OおよびG画像信号に、対応するWB係数をそれぞれ乗算することによって、R、OおよびG画像信号のホワイトバランスを調整する。WB補正部11は、ホワイトバランスが調整されたR、OおよびG画像信号を色分離補正部12に出力する。
【0029】
色分離補正部12は、WB補正部11から入力されたR、OおよびG画像信号のうち、RおよびG画像信号のみに色分離処理および個体差補正処理を行う。色分離補正部12は、色分離処理および個体差補正処理の両方が行われたRおよびG画像信号を色変換部13に出力する。一方、色分離補正部12は、O画像信号を、何も処理を行わずに色変換部13に出力する。
色分離補正部12がRおよびG画像信号とO画像信号とを区別するために、例えば、RおよびG画像信号とO画像信号との一方に、撮像素子9によってフラグが付される。色分離補正部12は、フラグの有無に基づいて、画像信号に色分離処理および個体差補正処理を行うか否かを判断する。
【0030】
色分離処理において、色分離補正部12は、R画像信号からG光に基づく信号を減算することによって、R画像信号からG光に基づく信号を除去する。同様に、色分離補正部12は、G画像信号からR光に基づく信号を減算することによって、G画像信号からR光に基づく信号を除去する。
例えば、R光照射時のR画素の出力およびG画素の出力と、G光照射時のR画素の出力およびG画素の出力とが、予め取得される。この結果から、R光およびG光の両方を同時に照射した場合の、R画素のG光に基づく出力(すなわち、R画像信号に含まれるG光に基づく信号)およびG画素のR光に基づく出力(すなわち、G画像信号に含まれるR光に基づく信号)をそれぞれ見積もることができる。
【0031】
次に、個体差補正処理において、色分離補正部12は、Rフィルタの分光特性と所定のR基準フィルタ(第2の基準色フィルタ)の分光特性との差に基づき、Rフィルタの分光特性の個体差に基づくR画像信号の誤差を補正する。また、色分離補正部12は、Gフィルタの分光特性と所定のG基準フィルタ(第1の基準色フィルタ)の分光特性との差に基づき、Gフィルタの分光特性の個体差に基づくG画像信号の誤差を補正する。R基準フィルタおよびG基準フィルタは、例えば、図3Aの平均的な分光特性を有する基準撮像素子のRフィルタおよびGフィルタである。個体差補正処理によって、図5Aおよび図5Bに示されるように、R画像信号は、R基準フィルタを用いた場合に得られるR画像信号に近似するように補正され、G画像信号は、G基準フィルタを用いた場合に得られるG画像信号に近似するように補正される。
【0032】
図5Aは、図4AのRおよびG画像信号に色分離処理および個体差補正処理を行った結果を示している。図5Bは、図4BのRおよびG画像信号に色分離処理および個体差補正処理を行った結果を示している。図5Cは、比較例として、図4BのRおよびG画像信号に色分離処理のみを行った結果を示している。
【0033】
例えば、記憶部15に、R用およびG用の個体差補正係数が記憶されている。R用の個体差補正係数は、撮像素子9のRフィルタおよびR基準フィルタの分光特性に基づいて設定されている。G用の個体差補正係数は、撮像素子9のGフィルタおよびG基準フィルタの分光特性に基づいて設定されている。色分離補正部12は、R画像信号にR用の個体差補正係数を乗算し、G画像信号にG用の個体差補正係数を乗算する。
【0034】
色変換部13は、色分離処理および個体差補正処理が行われたRおよびG画像信号と、O画像信号とから、1つのカラー画像信号を生成する。具体的には、色変換部13は、R画像信号をRチャネル(第2のチャネル)に割り当て、O画像信号をGチャネル(第3のチャネル)に割り当て、G画像信号をBチャネル(第1のチャネル)に割り当てる。色変換部13は、R、OおよびG画像信号からなるカラー画像信号を色調整部14に出力する。
【0035】
一例において、下式(1)に示されるように、上記の色分離処理、個体差補正処理および色変換処理は、マトリクス(C1,C2,…,C9)およびマトリクス(x1,x2,…,x9)を用いて行われる。
【数1】
【0036】
マトリクス(C1,C2,…,C9)は、色分離処理用のマトリクスである。マトリクス(x1,x2,…,x9)は、各撮像素子9に固有の個体差補正処理用のマトリクスであり、例えば、製造後の検査の結果に基づいて撮像素子9毎に決定される。Sr、So、Sgはそれぞれ、ホワイトバランスの補正後のR、O、G画像信号である。Ir、Ig、Ibはそれぞれ、カラー画像信号のR、G、Bチャネルの画像信号である。
【0037】
色調整部14は、R、G、Bチャネル間の画像信号のバランスを調整することによって、カラー画像信号から生成されるRBI画像の色を調整する。例えば、R光によって得られるより深部の血管の情報を強調するために、色調整部14は、BチャネルのG画像信号に対してRチャネルのR画像信号が増大されるように、RおよびG画像信号の少なくとも一方に係数を乗算する。例えば、色調整部14は、記憶部15に記憶されている色調整用のマトリクスをカラー画像信号Ir,Ig,Ibに乗算する。
画像処理装置4は、WB補正部11、色分離補正部12、色変換部13および色調整部14による処理の他に、他の処理を画像信号またはカラー画像信号に施してもよい。
【0038】
次に、このように構成された内視鏡装置1の作用について、図6を参照して説明する。
狭帯域光観察モードにおいて、光源装置2から内視鏡3の照明光学系6,7にR光およびG光が同時に供給され、内視鏡3の先端から被写体AにR光およびG光が同時に照射される(ステップS1)。被写体Aによって反射または散乱されたR光およびG光は、対物レンズ8によって受光され、Rフィルタを透過したR光に基づくR画像信号およびGフィルタを透過したG光に基づくG画像信号が撮像素子9によって同時に取得される(ステップS2)。R画像信号およびG画像信号は、撮像素子9から画像処理装置4に送信される。
【0039】
次に、光源装置2から内視鏡3の照明光学系6,7にO光が供給され、内視鏡3の先端から被写体AにO光が照射される(ステップS3)。被写体Aによって反射または散乱されたO光は、対物レンズ8によって受光され、Rフィルタを透過したO光に基づくO画像信号が撮像素子9によって取得される(ステップS4)。O画像信号は、撮像素子9から画像処理装置4に送信される。
【0040】
以下のステップS5~S9は、本発明の一実施形態に係る画像処理方法に相当する。
画像処理装置4において、R画像信号、G画像信号およびO画像信号のホワイトバランスがWB補正部11によって補正される(ステップS5)。
次に、R画像信号およびG画像信号は、色分離補正部12によって色分離処理および個体差補正処理が施される(ステップS6)。色分離処理によってR画像信号からG光に基づく信号が除去され、G画像信号からR光に基づく信号が除去される。次に、個体差補正処理によって、Rフィルタの分光特性の個体差に基づくR画像信号の誤差が補正され、Gフィルタの分光特性の個体差に基づくG画像信号の誤差が補正される。色分離処理および個体差補正処理が施されたRおよびG画像信号は、色変換部13に送信される。
O画像信号は、色分離補正部12によって処理されることなく、色変換部13に送信される。
【0041】
次に、色変換部13において、R、OおよびG画像信号は、カラー画像信号のR、G、Bチャネルにそれぞれ割り当てられる(ステップS7)。
カラー画像信号は、色調整部14によってR、G、Bチャネル間の信号のバランスが調整された後(ステップS8)、画像処理装置4からディスプレイ5に送信され、RBI画像としてディスプレイ5に表示される(ステップS9)。RBI画像において、表層の毛細血管は略黄色で表示され、深部の血管は略赤色で表示され、より深部の血管は、青色から黒色で表示される。また、生体組織の表面上に広がる血液は略黄色で表示され、出血点は略赤色で表示される。
【0042】
例えば、図3Bに示される分光特性を有する撮像素子9の場合、R光の波長帯域におけるGフィルタの透過率が高いため、G画像信号は、基準撮像素子によって得られるG画像信号と比べて、R光に基づく信号を多く含む。したがって、色分離処理後のG画像信号には、図5Cに示されるように、R光に基づく信号が誤差として残る。このような誤差を有する画像信号をカラー画像信号に用いた場合、RBI画像の色は、基準撮像素子を用いて得られたRBI画像の色とは異なったものとなる。
【0043】
本実施形態によれば、個体差補正処理によって、Rフィルタの分光特性の個体差に基づくR画像信号の誤差およびGフィルタの分光特性の個体差に基づくG画像信号の誤差が補正され、基準撮像素子を用いた場合と同等のカラー画像信号が得られる。したがって、色フィルタアレイ9aの分光特性の個体差に起因する色のばらつきが補正され、基準撮像素子を用いた場合と同等の色を有するRBI画像を生成することができる。
また、本実施形態によれば、色分離処理および個体差補正処理の両方が、色分離補正部12によって行われる。したがって、色分離処理および個体差補正処理を回路によって実現する場合には、回路を複雑化および大規模化することなく、RBI画像の色のばらつきの補正を実現することができる。
【0044】
上記実施形態において、色フィルタアレイ9aが、R、G、Bの原色系フィルタであることとしたが、これに代えて、Y(黄)、Cy(シアン)、Mg(マゼンダ)、Gフィルタから構成される補色系フィルタであってもよい。
【0045】
上記実施形態において、色分離補正部12が、色分離処理の後に個体差補正処理を行うこととしたが、これに代えて、個体差補正処理の後に色分離処理を行ってもよい。この場合、色分離補正部12は、個体差補正処理が行われたR画像信号からG光に基づく信号を減算し、個体差補正処理が行われたG画像信号からR光に基づく信号を減算する。
【0046】
上記実施形態において、内視鏡装置1が、狭帯域光観察モードにおいてRBI観察を行うこととしたが、これに代えて、NBI(Narrow Band Imaging)観察を行ってもよい。
この場合、光源装置2は、緑の光(G光)および青の光(O光)を内視鏡3の照明光学系6,7に同時に供給する。G光(第2の光)は、500nmから580nmの波長帯域にピーク波長を有する狭帯域光であり、例えば、540nmにピーク波長を有する。B光(第1の光)は、380nmから460nmの波長帯域にピーク波長を有する狭帯域光であり、例えば、415nmにピーク波長を有する。
【0047】
撮像素子9は、Gフィルタ(第2の色フィルタ)を透過したG光に基づくG画像信号を生成し、Bフィルタ(第1の色フィルタ)を透過したB光に基づくB画像信号を生成する。ホワイトバランス補正、色分離処理および個体差補正処理の後、G画像信号は、Rチャネルに割り当てられ、B画像信号は、GチャネルおよびBチャネルに割り当てられる。
【符号の説明】
【0048】
1 内視鏡装置
3 内視鏡
4 画像処理装置
9 撮像素子
9a 色フィルタアレイ(第1の色フィルタ、第2の色フィルタ、第3の色フィルタ)
12 色分離補正部
13 色変換部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6