(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】高度に変形可能で熱処理可能な連続コイル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/00 20060101AFI20221017BHJP
C25D 11/04 20060101ALI20221017BHJP
C25D 11/08 20060101ALI20221017BHJP
C25D 11/16 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C25D11/00 305Z
C25D11/04 304
C25D11/08
C25D11/16
(21)【出願番号】P 2021538172
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 US2019050396
(87)【国際公開番号】W WO2020055855
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-18
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】ラフル・ヴィラス・クルカルニ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ウー
(72)【発明者】
【氏名】トッド・サム
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・ベック
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・エーディト・ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】クルト・ゼーキンガー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・レヴラ
(72)【発明者】
【氏名】テリーサ・エリザベス・マクファーレン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-519482(JP,A)
【文献】特開平08-225991(JP,A)
【文献】特開昭61-257497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0129215(US,A1)
【文献】特開平05-156413(JP,A)
【文献】特表2001-527602(JP,A)
【文献】特開平01-162800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/00-11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化連続コイルであって、
アルミニウム合金連続コイルを備え、前記アルミニウム合金連続コイルの表面が、薄い陽極酸化膜層を備え、
前記薄い陽極酸化膜層は、バリア層と、前記バリア層上のフィラメント層と、を含み、
前記バリア層は、最大で25nmの厚さであり、
前記フィラメント層は、最大で250nmの厚さである、前記陽極酸化連続コイル。
【請求項2】
前記バリア層が、酸化アルミニウムを含む、請求項
1に記載の陽極酸化連続コイル。
【請求項3】
前記フィラメント層が、酸化アルミニウムを含む、請求項
1または
2に記載の陽極酸化連続コイル。
【請求項4】
前記薄い陽極酸化膜層が、5μm未満の厚さである、請求項1~
3のいずれかに記載の陽極酸化連続コイル。
【請求項5】
前記アルミニウム合金連続コイルが、7xxx系アルミニウム合金を含む、請求項1~
4のいずれかに記載の陽極酸化連続コイル。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の陽極酸化連続コイルから調製されたアルミニウム合金製品。
【請求項7】
前記アルミニウム合金製品が、自動車車体部品を構成する、請求項
6に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の陽極酸化連続コイルを作製する方法であって、
アルミニウム合金連続コイルを提供することであって、前記アルミニウム合金連続コイルが、予め選択されたライン速度を有する金属加工ライン内で処理される、前記提供することと、
前記アルミニウム合金連続コイルの表面を調製することと、
前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面を電解液中で陽極酸化して、薄い陽極酸化フィルム層を形成することであって、
電力印加に基づく陽極酸化パラメータが、前記金属加工ラインの前記ライン速度に合わせて、
高いライン速度のときは高い電力印加を必要とするように調整される、前記形成することと、を含む、前記方法。
【請求項9】
前記薄い陽極酸化膜層が、酸化アルミニウム層を備える、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記薄い陽極酸化膜層が、5μm未満の厚さである、請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
前記電解液が、硫酸、硝酸、及びリン酸、のうちの1つ以上を含む、請求項
8~
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記調製するステップが、酸性溶液によって前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面をエッチングすること、及び前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面を電解によって洗浄すること、のうちの一方または両方を含む、請求項
8~
11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記調製するステップの前に、洗浄剤を前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面に塗布することをさらに含む、請求項
8~
12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記陽極酸化するステップの後に、前記薄い陽極酸化膜層をリンスすることをさらに含む、請求項
8~
13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面を乾燥させることをさらに含む、請求項
8~
14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記アルミニウム合金連続コイルが、7xxx系アルミニウム合金を含む、請求項
8~
15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記エッチングするステップにおける前記酸性溶液が、硫酸、硝酸、及びリン酸、のうちの1つ以上を含む、請求項
12~
16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月11日に出願された米国仮特許出願第62/729,741号、及び2018年9月11日に出願された米国仮特許出願第62/729,702号の優先権及びその出願利益を主張するものであり、どちらも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、金属加工に関し、より具体的には、陽極酸化連続コイルに関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金などの特定の金属製品は、金属製品を作成するために、変形ステップが必要な場合がある。これらの金属製品はまた、安全性、美観、及び情報を含む理由から、コーティングステップも必要とする場合がある。あるときには、金属シートの接着性を高めるために、金属製品の表面に前処理が適用される。しかしながら、これらの前処理層は、しばしば、変形及び/または下流の熱処理中に損傷を受ける。
【発明の概要】
【0004】
本発明の網羅された実施形態は、この概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。本概要は、本発明の様々な態様の大まかな概要であり、以下の発明を実施するための形態の節でさらに説明される概念のいくつかを紹介する。この発明の概要は、特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体、任意のまたは全ての図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
本明細書では、陽極酸化連続コイル、ならびにその製作及び使用方法を説明する。本明細書で説明する陽極酸化連続コイルは、アルミニウム合金連続コイルを含み、アルミニウム合金連続コイルの表面は、薄い陽極酸化膜層を含む。薄い陽極酸化膜層は、最大で約25nmの厚さであり得るバリア層を含む。薄い陽極酸化膜層はまた、最大で約250nmの厚さであり得るフィラメント層も含むことができる。随意に、バリア層及び随意のフィラメント層を含む薄い陽極酸化膜層は、約5μm未満の厚さであり得る。アルミニウム合金連続コイルは、7xxx系アルミニウム合金を含むことができる。
【0006】
また、本明細書では、本明細書で説明する陽極酸化連続コイルを含むアルミニウム合金製品も説明する。アルミニウム合金製品は、とりわけ、自動車車体部品であり得る。
【0007】
さらに、本明細書では、陽極酸化連続コイルを作製する方法を説明する。陽極酸化連続コイルを作製する方法は、アルミニウム合金連続コイルを提供することであって、アルミニウム合金連続コイルが、予め選択されたライン速度を有する金属加工ライン内で処理される、ことと、アルミニウム合金連続コイルの表面を調製することと、アルミニウム合金連続コイルの表面を電解液中で陽極酸化して、薄い陽極酸化フィルム層を形成することであって、陽極酸化パラメータは、金属加工ラインのライン速度に合わせて調整される、こととを含む。薄い陽極酸化膜層は、酸化アルミニウム層であり得る。本明細書で説明する方法に従って調製される薄い陽極酸化膜層は、約5μm未満の厚さであり得る。電解液は、硫酸、硝酸、及びリン酸、のうちの1つ以上を含むことができる。調製するステップは、酸性溶液によってアルミニウム合金連続コイルの表面をエッチングすること、及びアルミニウム合金連続コイルの表面を電解によって洗浄すること、のうちの一方または両方を含むことができる。
【0008】
陽極酸化連続コイルを作製する方法は、調製するステップの前にアルミニウム合金連続コイルの表面を洗浄するステップ、及び/または薄い陽極酸化膜層を陽極酸化するステップの後にリンスするステップをさらに含むことができる。本方法は、アルミニウム合金連続コイルの表面を乾燥させることをさらに含むことができる。随意に、アルミニウム合金連続コイルは、7xxx系アルミニウム合金を含む。エッチングスするテップにおける酸性溶液は、硫酸、硝酸、及びリン酸性、または任意の他の酸性溶液、のうちの1つ以上を含むことができる。
【0009】
他の目的、態様、及び利点は、非限定的な実施例の以下の詳細な説明を考慮することで明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、薄い陽極酸化膜含有表面を有する連続コイル、ならびに連続コイルを作製及び使用する方法を説明する。結果として生じる連続コイルを使用して、例えば、本明細書で説明する薄い陽極酸化膜含有表面を伴わないコイルから調製されたアルミニウム合金製品と比較して、優れた表面品質及び最小限の表面欠陥を有する陽極酸化アルミニウム合金製品を製造することができる。本明細書で説明する連続コイルは、例えば下流側の変形手順(例えば、伸長、成形、曲げ、人工的なエイジング、溶体化熱処理、熱間成形、温間成形、焼鈍し、塗料焼き付け、など)に晒されたときに、特に堅牢で耐久性のある表面を有する。加えて、本明細書で説明する方法に従って調製された連続コイルは、別格の接着促進及び耐腐食性を示す。
【0011】
定義及び説明
本明細書で使用される場合、「発明」、「本発明」、「この発明」、「現在の発明」は、本特許出願及び下記の特許請求項の主題の全てを広く指すことが意図される。これらの用語を含有する記述は、本明細書に記載される主題を限定するものではなく、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0012】
この説明では、「系」または「AA7xxx」などのアルミニウム業界の表記によって指定された合金を参照する。アルミニウム及びその合金の命名及び識別に最も一般的に使用される番号指定システムの理解に関しては、ともにThe Aluminum Associationにより出版されている、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」を参照されたい。
【0013】
アルミニウム合金は、それらの元素組成に関して、合金の総重量に基づく重量パーセンテージ(重量%)で、本明細書で説明する。各合金の特定の例では、残部はアルミニウムであり、不純物の合計が0.15%の最大重量%である。
【0014】
本出願では、合金の状態または調質度について言及する。最も一般的に使用される合金調質度の説明の理解に関しては、「American National Standards (ANSI) H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F状態または調質度は、製造されたアルミニウム合金を指す。O状態または調質度は、焼鈍し後のアルミニウム合金を指す。本明細書においてH調質度とも称されるHxx状態または調質度は、熱処理(例えば、焼鈍し)を伴うまたは伴わない冷間圧延後の非熱処理可能なアルミニウム合金を指す。好適なH調質度としては、HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9調質度が挙げられる。T1状態または調質度は、熱間加工から冷却され、自然に(例えば、室温で)エイジングさせたアルミニウム合金を指す。T2状態または調質度は、熱間加工から冷却され、冷間加工され、自然にエイジングさせたアルミニウム合金を指す。T3状態または調質度は、溶体化処理され、冷間加工され、自然にエイジングさせたアルミニウム合金を指す。T4状態または調質度は、溶体化処理され、自然にエイジングさせたアルミニウム合金を指す。T5状態または調質度は、熱間加工から冷却され、人工的に(高温で)エイジングさせたアルミニウム合金を指す。T6状態または調質度は、溶体化処理され、人工的にエイジングさせたアルミニウム合金を指す。T7状態または調質度は、溶体化処理され、人工的に過剰にエイジングさせたアルミニウム合金を指す。T8x状態または調質度は、溶体化処理され、冷間加工され、人工的にエイジングさせたアルミニウム合金を指す。T9状態または調質度は、溶体化処理され、人工的にエイジングさせ、冷間加工されたアルミニウム合金を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製品」、「鋳造製品」、「鋳造アルミニウム合金製品」などの用語は、交換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)もしくは半連続鋳造、連続鋳造(例えば、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、ツインブロック鋳造機、もしくは任意の他の連続鋳造機を使用することを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造方法によって製造された製品を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「連続コイル」または「アルミニウム合金連続コイル」は、時間または順序を中断することなく(すなわち、アルミニウム合金は、バッチ処理を受けない)、連続ライン上で連続処理方法を受けるアルミニウム合金を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」の意味は、文脈が他に明確に指示していない限り、単数及び複数の言及を含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含み得る。
【0019】
本明細書で開示する全ての範囲は、任意の及び全てのエンドポイント、ならびにその中に包括される任意及び全ての部分範囲を包含すると理解される。例えば、「1~10」の記載された範囲は、最小値の1と最大値の10との間の任意及び全ての部分範囲、すなわち、1以上、例えば、1~6.1の最小値から始まる全ての部分範囲、及び10以下、例えば、5.5~10の最大値で終わる全ての部分範囲を含むと考慮されなければならない。
【0020】
陽極酸化連続コイル
本明細書では、本明細書で陽極酸化連続コイルと称される、薄い陽極酸化膜含有表面を有する連続コイルを説明する。連続コイルの表面は、バリア層及び随意にフィラメント層を含む、薄い陽極酸化膜層を含む。薄い陽極酸化膜(TAF)を、任意の好適なアルミニウム合金の連続コイルに塗布することができる。アルミニウム合金としては、1xxx系アルミニウム合金、2xxx系アルミニウム合金、3xxx系アルミニウム合金、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、6xxx系アルミニウム合金、7xxx系アルミニウム合金、または8xxx系アルミニウム合金を挙げることができる。
【0021】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる1xxx系アルミニウム合金であり得る:AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199。
【0022】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる2xxx系アルミニウム合金であり得る:AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、またはAA2199。
【0023】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる3xxx系アルミニウム合金であり得る:AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065。
【0024】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる4xxx系アルミニウム合金であり得る:AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147。
【0025】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる5xxx系アルミニウム合金であり得る:AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088。
【0026】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる6xxx系アルミニウム合金であり得る:AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092。
【0027】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる7xxx系アルミニウム合金であり得る:AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099。
【0028】
随意に、本明細書で説明するアルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金表記のうちの1つによる8xxx系アルミニウム合金であり得る:AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、またはAA8093。
【0029】
連続コイルは、任意の好適な調質度の合金から調製することができる。特定の実施例では、合金は、F、O、HX1、HX2、HX3 HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、HX9、T3、T4、T6、T7x(例えば、T73、T76、T79、またはT77)、またはT8x調質度で使用することができる。合金は、直接チル鋳造または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機を使用することを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造方法によって製造することができる。
【0030】
アルミニウム合金製品を本文の全体にわたって説明するが、本方法及び製品は、あらゆる金属に適用される。いくつかの実施例では、金属製品は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、チタン、チタン系材料、銅、銅系材料、鋼、鋼系材料、青銅、青銅系材料、黄銅、黄銅系材料、複合材料、複合材料に使用されるシート、または任意の他の好適な金属、または材料の組み合わせである。金属製品は、モノリシック材料、ならびにロール接合材料、クラッド材料、複合材料、または様々な他の材料などの非モノリシックな材料を含むことができる。いくつかの実施例では、金属製品は、金属コイル、金属ストリップ、金属プレート、金属シート、金属ビレット、金属インゴット、などである。
【0031】
上で説明したように、連続コイルの表面は、薄い陽極酸化膜層を含む。陽極酸化膜層は、バリア層と、随意にフィラメント層と、を含む。バリア層は、酸化アルミニウム(例えば、無孔酸化アルミニウム)で構成される。バリア層は、最大で約25nmの厚さであり得る。いくつかの場合では、バリア層は、約5nm~約25nm、約10nm~約20nm、または約12nm~約17nmの厚さであり得る。例えば、バリア層は、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、または約25nmの厚さであり得る。
【0032】
フィラメント層は、随意に、薄い陽極酸化膜層内に存在する。バリア層と同様に、フィラメント層は、酸化アルミニウム(例えば、無孔酸化アルミニウム)で構成される。フィラメント層は、最大で約250nmの厚さであり得る。いくつかの場合では、フィラメント層は、約5nm~約225nm、約10nm~約200nm、約25nm~約150nm、または約25nm~約75nmの厚さであり得る。例えば、フィラメント層は、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、約140nm、約145nm、約150nm、約155nm、約160nm、約165nm、約170nm、約175nm、約180nm、約185nm、約190nm、約195nm、約200nm、約205nm、約210nm、約215nm、約220nm、約225nm、約230nm、約235nm、約240nm、約245nm、または約250nmの厚さであり得る。
【0033】
バリア層またはバリア層及びフィラメント層を含む薄い陽極酸化膜層は、約15nm~約5μmの範囲の厚さであり得る。いくつかの場合では、薄い陽極酸化膜層は、約5μm未満(例えば、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満、約1μm未満、約500nm未満、約250nm未満、約100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、または約30nm未満)の厚さである。例えば、薄い陽極酸化膜層は、約25nm~約5μm、約30nm~約4μm、約40nm~約3μm、約50nm~約2μm、約60nm~約1μm、約70nm~約750nm、約80nm~約500nm、または約90nm~約250nmであり得る。いくつかの実施例では、薄い陽極酸化膜層は、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm、約45nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約125nm、約150nm、約175nm、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約675nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、約1μm、約1.1μm、約1.2μm、約1.3μm、約1.4μm、約1.5μm、約1.6μm、約1.7μm、約1.8μm、約1.9μm、約2μm、約2.1μm、約2.2μm、約2.3μm、約2.4μm、約2.5μm、約2.6μm、約2.7μm、約2.8μm、約2.9μm、約3μm、約3.1μm、約3.2μm、約3.3μm、約3.4μm、約3.5μm、約3.6μm、約3.7μm、約3.8μm、約3.9μm、約4μm、約4.1μm、約4.2μm、約4.3μm、約4.4μm、約4.5μm、約4.6μm、約4.7μm、約4.8μm、約4.9μm、または約5μmの厚さであり得る。
【0034】
陽極酸化連続コイルを調製する方法
本明細書では、陽極酸化連続コイルを作製する方法を説明する。本明細書で説明する連続コイルを陽極酸化することは、(上で説明した)鋳造、均質化、熱間圧延、温間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、焼鈍し、エイジング(自然なエイジング及び/または人工のエイジングを含む)、任意の好適な処理技術、またはこれらの任意の組み合わせを含む、金属製品を連続コイルの形態で提供するために使用される処理技術の後に、金属製品を陽極酸化することを含む。したがって、陽極酸化は、連続コイルを提供するために、上で説明した処理ステップの後のステップとして行うことができる。例えば、陽極酸化ステップを行うシステムは、冷間圧延機、焼鈍し炉、連続焼鈍し及び溶体化熱処理(CASH)ライン、または任意の好適な最終処理装置の下流に配置することができる(すなわち、陽極酸化ステップを行うシステムは、金属コイラを置き換えることができ、または最後から2番目の金属処理装置と金属コイラとの間に配置することができる)。したがって、金属は、金属製品に加工することができ、また、(例えば、連続コイルを提供するために)金属製品を巻き取ることなく、処理の直後に陽極酸化することができる。したがって、陽極酸化ステップを行うシステムを金属加工ライン内で供用するとき、システムのパラメータは、金属加工ラインのライン速度に、例えば、均質化、溶体化熱処理、及び/または焼鈍しを含むプロセスによって選択及び/または決定付けられるライン速度(すなわち、時間依存の熱プロセス)に依存することができる。したがって、印加動力、電解液濃度、電解液温度、及び/またはドウェル時間を含むシステムパラメータは、金属加工ラインのライン速度に従って調整することができる。
【0035】
いくつかの場合では、本明細書で説明する連続コイルは、巻き取り後に陽極酸化することができる。連続コイルは、(例えば、連続コイルを自然にエイジングするために)保管すること、または陽極酸化の前に人工的にエイジングすることができる。したがって、連続コイル(例えば、保管された連続コイルまたは人工的にエイジングされた連続コイル)は、巻き出して、陽極酸化のために上で説明したシステムに送給することができる。
【0036】
本明細書で説明する連続コイルの前処理プロセスは、連続コイルの表面を洗浄することと、酸性溶液によって連続コイルの表面をエッチングすることと、連続コイルの表面を陽極酸化して連続コイルの表面に薄い陽極酸化膜層を形成することと、薄い陽極酸化膜層をリンスすることと、を含む。本明細書で説明するプロセスは、コイルをともに接合または連結して、連続コイルプロセスに用いることができる。連続コイルプロセスのライン速度は、可変的であり、約15~約100メートル/分(mpm)の範囲であり得る。例えば、ライン速度は、約15mpm、約20mpm、約25mpm、約30mpm、約35mpm、約40mpm、約45mpm、約50mpm、約55mpm、約60mpm、約65mpm、約70mpm、約75mpm、約80mpm、約85mpm、約90mpm、約95mpm、または約100mpmであり得る。
【0037】
洗浄及び調製
本明細書で説明する前処理プロセスは、随意に、連続コイルの1つ以上の表面を洗浄するステップを含むことができる。進入洗浄は、コイル表面から残油または軽く付着している酸化物を除去する。随意に、進入洗浄は、溶媒(例えば、水性または有機溶剤)を使用して行うことができる。随意に、溶媒に1つ以上の添加物を加えることができる。
【0038】
前処理プロセスは、連続コイルの表面を電解によって洗浄すること及び/または連続コイルの表面をエッチングすることによって、アルミニウム合金連続コイルの表面を調製するステップを含む。随意に、進入洗浄は、電解洗浄ステップを使用して行うことができる。電解洗浄は、アルミニウム合金表面を電解液と接触させて、電解液を通して電流を流すことによって達成される。好適な電解液としては、例えば、限定的されないが硫酸、硝酸、リン酸、またはこれらの組み合わせなどの無機酸を含有する、水溶液が挙げられる。いくつかの場合では、好適な電解液としては、ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ナトリウム)及び酒石酸塩(例えば、酒石酸ナトリウム)の水溶液が挙げられる。他の例示的な電解液としては、とりわけ、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、硫酸銅、塩化カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、硝酸銀、塩化鉄、またはこれらの任意の組み合わせの水溶液が挙げられる。
【0039】
電解溶液は、合金または合金の一部分(例えば、合金表面)を電解液浴中に浸漬することによって塗布することができる。電解液浴の温度は、約80℃~約100℃(例えば、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、または約100℃)であり得る。電解洗浄は、所望のレベルの洗浄をもたらすために、好適な期間にわたって行うことができる。電解洗浄を行うための期間は、印加されている電圧に基づいて変化し、当業者によって調整することができる。
【0040】
方法は、随意に、加えて、または代替的に、連続コイルの1つ以上の表面をエッチングするステップを含むことができる。連続コイルの表面は、酸エッチング(すなわち、酸性溶液を含むエッチング手順)を使用してエッチングすることができる。酸エッチングは、その後の陽極酸化のための表面を調製する。酸エッチングを行うための例示的な酸としては、硫酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
陽極酸化
本明細書で説明する方法は、連続コイルの表面を陽極酸化するステップをさらに含む。陽極酸化ステップは、連続コイルの表面への薄い陽極酸化膜層の形成をもたらす。陽極酸化は、アルミニウム合金表面を電解液と接触させて、電解液を通して電流を流すことによって達成される。好適な電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、リン酸、またはこれらの組み合わせなどの無機酸を含有する、水溶液が挙げられる。いくつかの場合では、好適な電解液としては、ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ナトリウム)及び酒石酸塩(例えば、酒石酸ナトリウム)の水溶液が挙げられる。他の例示的な電解液としては、とりわけ、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、硫酸銅、塩化カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、硝酸銀、塩化鉄、またはこれらの任意の組み合わせの水溶液が挙げられる。
【0042】
陰極は、アルミニウム合金表面が陽極になるように、連続コイルの表面と平行に配置される。電解液中の電流は、アルミニウム合金表面に移動してアルミニウム合金表面のアルミニウムと結合する酸素イオンを放出し、それによって、アルミナ(AI2O3)を形成することができる。
【0043】
電解溶液は、合金または合金の一部分(例えば、合金表面)を電解液浴中に浸漬することによって塗布することができる。電解液浴の温度は、約20℃~約80℃(例えば、約30℃~約70℃、約40℃~約60℃、約20℃~約50℃、または約40℃~約80℃)であり得る。例えば、電解液浴の温度は、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、または約80℃であり得る。随意に、電解溶液を循環させて、新しい溶液が連続的に合金表面に晒されることを確実にすることができる。電解溶液中の成分の濃度は、遊離酸及び総酸の滴定法による、または誘導結合プラズマ(ICP)によるなどの、当業者に既知の技術に従って測定することができる。例えば、アルミニウム含有量は、ICPによって測定することができ、特定の範囲内にあるように制御することができる。
【0044】
陰極は、所望の陽極酸化に応じて、合金の上側に、合金の下側に、または合金の上側及び下側に載置することができる。陽極酸化は、バリア層またはバリア層及びフィラメント層を形成するために、所望の薄い陽極酸化膜層厚さに応じて、好適な期間にわたって行うことができる。陽極酸化を行うための期間は、印加されている電圧に基づいて変化し、当業者によって調整することができる。
【0045】
薄い陽極酸化膜層のリンス及び乾燥
陽極酸化の後、アルミニウム合金連続コイルの表面は、溶媒でリンスして、陽極酸化した後に残っている任意の残留電解液を除去することができる。好適な溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、脱イオン水)、有機溶剤、無機溶媒、pH固有の溶媒(例えば、電解液と反応しない溶媒)、任意の好適な溶媒、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。リンスは、スプレーを使用して、または浸漬によって行うことができる。溶媒は、循環させて、アルミニウム合金連続コイルの表面から残留電解液を除去し、それが表面に再度定着するのを防止することができる。リンス溶媒の温度は、任意の好適な温度とすることができる。
【0046】
随意に、リンスステップの後に、連続コイルの表面を乾燥することができる。乾燥ステップは、シートまたはコイルの表面からあらゆるリンス水を除去する。乾燥ステップは、例えば、空気乾燥機または赤外線乾燥機または任意の他の好適な乾燥機を使用して行うことができる。乾燥ステップは、最長で5分の期間にわたって行うことができる。例えば、乾燥ステップは、5秒以上、10秒以上、15秒以上、20秒以上、25秒以上、30秒以上、35秒以上、40秒以上、45秒以上、50秒以上、55秒以上、60秒以上、65秒以上、または90秒以上、2分以上、3分以上、4分以上、または5分にわたって行うことができる。随意に、硬化ステップまたは化学反応を行うことができる。
【0047】
本明細書で説明する陽極酸化連続コイルを調製する方法は、所望の薄い陽極酸化膜層を提供するように調整しなければならない様々なプロセスパラメータを含む。特定の態様では、例えば本明細書で説明するシステムが連続コイル加工ライン内に配置される場合、所望の薄い陽極酸化膜層を提供するように調整しなければならない様々なプロセスパラメータは、上で説明したように、連続コイル加工ラインのライン速度に依存する。例えば、印加電力の変化は、誘電破壊、厚さ、及び均一性(例えば、より高いライン速度は、より高い電力印加を必要とし得る)を含む、薄い陽極酸化膜層の特性に影響を及ぼし得る。他の例では、ライン速度は、薄い陽極酸化膜層の厚さ、均一性、及び欠陥の発生に影響を及ぼし得る。したがって、特性を有する薄い陽極酸化膜層を作成することは、所望の薄い陽極酸化膜層に到達するために、広範囲にわたるプロセスパラメータの選択肢を必要とし得る。
【0048】
本明細書で説明するシステム及び方法は、金属製品をバッチ処理する必要性を伴うことなく、様々な表面特性を有する金属製品を提供する能力を提供する。例えば、本明細書で説明するシステム及び方法を金属製品製造ラインに用いることは、金属製品を洗浄する能力、金属製品を陽極酸化する能力、金属製品を前処理する能力、またはこれらの任意の組み合わせを提供することができる。加えて、本明細書で説明するシステム及び方法は、上で説明したような様々な金属の製造に用いることができる。さらなる実施例では、本明細書で説明するシステム及び方法は、任意の好適な厚さ(例えば、任意の好適なゲージ)を有する金属製品に適用することができる。さらに、本明細書で説明するシステム及び方法は、金属製品をその場で洗浄し、その場で陽極酸化し、及び/またはその場で前処理するための、より高速で、より効率的で、より費用効果的で、より多くの柔軟なプロセス(例えば、様々な表面特性を有する金属製品または連続コイルを提供することが可能なプロセス)を提供する。
【0049】
陽極酸化連続コイルの特性
本明細書で説明する陽極酸化連続コイルは、陽極酸化連続コイルを使用して提供される部品(例えば、自動車部品、航空宇宙部品、など)を、陽極酸化連続コイルを使用して提供される第2の部品に、または非陽極酸化金属部品(例えば、非陽極酸化アルミニウム合金部品、非陽極酸化鋼部品、など)を使用して提供される部品に連結する(例えば、接合する)ときの、接合耐久性を高めることができる。本明細書で説明する接合耐久性試験中に、エポキシ接着剤などによって、2つのアルミニウム合金製品(例えば、本明細書で説明する2つの陽極酸化アルミニウム合金製品、または本明細書で説明する1つの陽極酸化アルミニウム合金製品と1つの非陽極酸化アルミニウム合金製品と)の間に接合が作成される。次いで、接合されたアルミニウム合金製品に、歪み及び/または他の条件を受けさせる。例えば、接合された合金製品は、食塩水に浸漬したり、湿潤条件または乾燥条件に晒したりすることができる。1つ以上の条件における一連のサイクルの後に、化学的及び機械的破損について、アルミニウム合金間の接合を評価する。
【0050】
本明細書で説明する陽極酸化連続コイルは、接合剤(例えば、エポキシ)を吸収し、かつ接合剤と陽極酸化連続コイルとの間の界面相互作用を高めることができる多孔質表面を提供することによって、接合耐久性を高めることができる。したがって、薄い陽極酸化膜は、接合剤が接合部に浸透し、それを固定するためのより大きい表面積を提供する。さらに、陽極酸化連続コイルは、下流の処理ステップにおいて溶液系の前処理(例えば、腐食抑制剤溶液の接着促進剤溶液)を加えることなく、接着を促進する及び/または腐食に耐える表面を有する、アルミニウム合金製品を提供する。特定の実施例では、薄い陽極酸化膜は、アルミニウム合金表面の前処理である。加えて、薄い陽極酸化膜は、その後の熱処理(例えば、人工的なエイジング、溶体化熱処理、熱間成形、温間成形、焼鈍し、塗料焼き付け、など)において使用される温度に耐える、前処理である。したがって、本明細書で説明する薄い陽極酸化膜及び陽極酸化連続コイルを提供する方法は、高温で行われるその後の処理ステップの前の表面処理に適するアルミニウム合金を提供する。
【0051】
使用方法
本明細書で説明される連続コイルは、商用車、航空機、もしくは鉄道用途などの、とりわけ、自動車、電子機器、及び輸送用途で使用するための製品を含む、製品を成形する際に、または任意の他の好適な用途で使用することができる。本明細書で説明する連続コイル及び方法は、様々な用途で所望される表面特性を有する製品を提供する。本明細書で説明する製品は、高い強度、高い変形性(伸長、スタンピング、形成、成形性、曲げ性、または熱間成形性)、高い強度、及び高い変形性を有することができる。連続コイルのための表面前処理として薄い陽極酸化膜(TAF)を用いることは、前処理を損なうことなく変形可能である製品を提供する。例えば、特定のポリマー系前処理膜は、アルミニウム合金製品を成形するために使用される曲げ動作中に分解し得る。
【0052】
いくつかのさらなる態様では、前処理としてTAFを用いることは、前処理を損なうことなく熱処理可能である、前処理されたアルミニウム合金製品を提供する。例えば、熱間成形手順を適用して、アルミニウム合金製品を成形することができる。いくつかの実施例では、熱間成形は、約3℃/秒~約90℃/秒の加熱速度で約100℃~約600℃の温度にアルミニウム合金製品を加熱することと、アルミニウム合金製品を変形させてアルミニウム合金製品を成形することと、随意に変形ステップとアルミニウム合金製品を冷却することとを繰り返すこと、とを含むことができる。特定の前処理は、そのような温度に耐えることができず、任意の前処理の膜を損なう。薄い陽極酸化膜層を含む、本明細書で説明する連続コイルは、薄い陽極酸化膜を含まない連続コイルと比較して、向上したコーティングの接着及び耐腐食性を示す。
【0053】
いくつかの実施例では、本明細書で説明する連続コイルは、シャーシ、横部材、及びシャーシ内部構成要素(限定されないが、商用車両シャーシ内の2つのC字状チャネルの間の全ての構成要素を包含する)に使用して、強度を得ることができ、高強度鋼の完全なまたは部分的な置換物としての役割を果たす。特定の実施例では、合金は、O、F、T4、T6、またはT8x調質度で使用することができる。特定の態様では、合金及び方法を使用して、自動車車体部品製品を調製することができる。例えば、開示する合金及び方法を使用して、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、サイドパネル、フロアパネル、トンネル、構造パネル、補強パネル、インナーフード、またはトランクリッドパネルなどの、自動車車体部品を調製することができる。開示するアルミニウム合金及び方法はまた、航空機または鉄道車両用途で使用して、例えば外部及び内部パネルも調製することができる。
【0054】
説明する合金及び方法はまた、携帯電話及びタブレットコンピュータを含む電子デバイスのためのハウジングを調製するためにも使用することができる。例えば、この合金は、陽極酸化の有無にかかわらず、携帯電話(例えば、スマートフォン)の外側ケーシング及びタブレットのボトムシャーシ用のハウジングを調製するために使用することができる。例示的な家庭用電化製品としては、携帯電話、オーディオデバイス、ビデオデバイス、カメラ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、テレビ、ディスプレイ、家庭機器、ビデオ再生及び記録装置、など、が挙げられる。例示的な家庭用電化製品部品としては、家庭用電化製品のための外側ハウジング(例えば、ファサード)及び内側ピースが挙げられる。
【0055】
説明する合金及び方法は、任意の他の望ましい用途で使用することができる。
【0056】
例示
例示1は、陽極酸化連続コイルであって、アルミニウム合金連続コイルを備え、前記アルミニウム合金連続コイルの表面が、薄い陽極酸化膜層を備える、前記陽極酸化連続コイルである。
例示2は、前記薄い陽極酸化膜層が、バリア層を備える、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示3は、前記バリア層が、最大で約25nmの厚さである、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示4は、前記バリア層が、酸化アルミニウムを含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示5は、前記薄い陽極酸化膜層が、フィラメント層を備える、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示6は、前記フィラメント層が、最大で約250nmの厚さである、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示7は、前記フィラメント層が、酸化アルミニウムを含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示8は、前記薄い陽極酸化膜層が、約5μm未満の厚さである、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示9は、前記アルミニウム合金連続コイルが、7xxx系アルミニウム合金を含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示10は、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルから調製されたアルミニウム合金製品である。
例示11は、前記アルミニウム合金製品が、自動車車体部品を構成する、任意の先行するまたは以降の例示に記載の陽極酸化連続コイルである。
例示12は、陽極酸化連続コイルを作製する方法であって、アルミニウム合金連続コイルを提供することであって、前記アルミニウム合金連続コイルが、予め選択されたライン速度を有する金属加工ライン内で処理される、前記提供することと、前記アルミニウム合金連続コイルの表面を調製することと、前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面を電解液中で陽極酸化して、薄い陽極酸化フィルム層を形成することであって、陽極酸化パラメータが、前記金属加工ラインの前記ライン速度に合わせて調整される、前記形成することと、を含む、前記方法である。
例示13は、前記薄い陽極酸化膜層が、酸化アルミニウム層を備える、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示14は、前記薄い陽極酸化膜層が、約5μm未満の厚さである、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示15は、前記電解液が、硫酸、硝酸、及びリン酸、のうちの1つ以上を含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示16は、前記調製するステップが、酸性溶液によって前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面をエッチングすること、及び前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面を電解によって洗浄すること、のうちの一方または両方を含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示17は、前記調製するステップの前に、洗浄剤を前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面に塗布することをさらに含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示18は、前記陽極酸化するステップの後に、前記薄い陽極酸化膜層をリンスすることをさらに含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示19は、前記アルミニウム合金連続コイルの前記表面を乾燥させることをさらに含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示20は、前記アルミニウム合金連続コイルが、7xxx系アルミニウム合金を含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
例示21は、前記エッチングするステップにおける前記酸性溶液が、硫酸、硝酸、及びリン酸、のうちの1つ以上を含む、任意の先行するまたは以降の例示に記載の方法である。
【0057】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、そのいかなる限定も構成するものではない。反対に、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく、それら自体を当業者に示唆し得る、様々な実施形態、修正例、及びそれらの均等物に頼ることができることを明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0058】
実施例1:接合耐久性試験
接合耐久性試験のために、随意の人工的なエイジング、エッチング、電解洗浄、及び陽極酸化することを含む本明細書で説明する方法に従って、陽極酸化連続コイルを調製した。エッチングの前に人工的なエイジングを行わなかった特定の実施例では、サンプルに、陽極酸化した後に人工的なエイジングを受けさせた。処理パラメータを下記の表1に要約する:
【0059】
【0060】
表1に示すように、サンプルTAF-A、TAF-B、TAF-C、TAF-D、TAFE、及びTAF-Fは、エッチングステップの前に、随意の人工的なエイジングステップを受けさせて、T6調質度を達成した。サンプルTAF-G、TAF-H、及びTAF-Iは、F調質度で提供し、接合する前にT6調質度に人工的にエイジングした。全てのサンプルは、0.1Mのリン酸のエッチングを受けさせた。エッチング温度を上記の表1に示す。エッチングステップの後に、全てのサンプルに、様々な電圧で10秒にわたって上で説明した電解洗浄ステップを受けさせた。電解洗浄ステップの後に、全てのサンプルに、0.1Mのリン酸で陽極酸化ステップを受けさせ、様々な時間及び電圧で行った。
【0061】
陽極酸化ステップの後に、サンプルTAF-A、TAF-B、TAF-C、TAF-D、TAF-E、及びTAF-Fに、透過電子顕微鏡(TEM)分析を受けさせて、バリア層及びフィラメント層の厚さを決定した(表1で「Fil.」と称する)。サンプルTAF-B、TAF-D、及びTAF-Fは、接合耐久性試験を受けさせた。陽極酸化ステップの後に、サンプルTAF-G、TAF-H、及びTAF-Iは、人工的なエイジングステップを受けさせて、サンプルTAF-G、TAF-H、及びTAF-IをT6調質度で提供した。人工的なエイジングステップの後に、サンプルTAF-G、TAF-H、及びTAF-Iは、透過電子顕微鏡(TEM)分析を受けさせて、バリア層及びフィラメント層の厚さを決定した(表1で「Fil.」と称する)。サンプルTAF-H及びTAF-Iは、接合耐久性試験を受けさせた。接合耐久性試験の結果を下記の表2に示す:
【0062】
【0063】
表2に示すように、F調質度で提供され、陽極酸化されたサンプルは、エッチング及び陽極酸化する前にT6調質度で提供されたサンプルと比較して、優れた接合耐久性を示した。加えて、薄い陽極酸化膜は、その後の熱処理(例えば、人工的なエイジング、溶体化熱処理、熱間成形、温間成形、焼鈍し、塗料焼き付け、など)において使用される温度に耐えるので、F調質度で提供され、本明細書で説明する方法を受けさせたサンプルは、その後の熱処理の前に陽極酸化することができる。したがって、本明細書で説明する薄い陽極酸化膜及び陽極酸化連続コイルを提供する方法は、高温で行われるその後の処理ステップの前の表面処理に適するアルミニウム合金を提供する。その逆に、溶液系有機及び/または無機材料に由来する前処理は、高温での劣化及び分解の影響を受けやすい。
【0064】
上で引用した全ての特許、刊行物、及び要約は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的を達成するために記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することのない、これらの多くの変更及びその適合は、当業者には容易に明らかであろう。