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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】モジュール式電子走査アレイ(ESA)
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/06 20060101AFI20221017BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20221017BHJP
   H01Q 3/30 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q23/00
H01Q3/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021553847
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 US2020025348
(87)【国際公開番号】W WO2020256805
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】16/446,339
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ガマルスキ,アンドリュー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,アンドリュー,ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒンバザ,ダレン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ケネス,ダブリュ.
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033525(WO,A1)
【文献】実開平05-023164(JP,U)
【文献】中国特許第103457015(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第104332413(CN,A)
【文献】特表2015-511070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
H01Q 23/00
H01Q 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式通信アレイであって:
RF信号を通信するためのパッチ・アンテナ・アレイを含むアンテナカード;
複数のモノリシックマイクロ波集積回路(MMICs)を含むチップキャリアカードであり、MMICsの各々が電力増幅器(PA)を備えて複数の金属ポストのそれぞれの金属ポスト上に位置決めされる、チップキャリアカード;
ビームステアリング及び利得制御のための複数の移相器回路と、複数のキャビティとを備える移相器カードであり、前記キャビティの各々は、前記チップキャリアカード上のそれぞれの金属ポストの位置に対応する、移相器カード;及び
冷却用の熱伝導性エポキシにより前記チップキャリアカードに結合された冷却ブロックであり、前記移相器カードは、前記アンテナカード及び前記チップキャリアカードの構成要素に影響を及ぼすことなく交換可能である、冷却ブロック;
を含むモジュール式通信アレイ。
【請求項2】
前記チップキャリアカード上のそれぞれの金属ポストが、前記冷却ブロックへの熱伝導経路として構成される、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【請求項3】
前記複数の金属ポストは、銅で構成される、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【請求項4】
前記キャビティの断面積は、前記金属ポストが前記キャビティ内へとスライドすることを可能にするように、前記金属ポストの上面フットプリントのサイズよりも大きい、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【請求項5】
前記移相器カードから前記冷却ブロックを通って前記アンテナカードへと前記RF信号をルーティングするための同軸ケーブルルーティングをさらに備える、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【請求項6】
前記金属ポストは、減算プロセス又はろう付け化合物により前記チップキャリアカードに取り付けられる、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【請求項7】
前記キャビティの各々は、前記MMICsを前記移相器カードに接続するためのワイヤボンド用の導電性パッドを含む、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【請求項8】
前記キャビティは、前記移相器回路に近接して規則的なパターンで配置され、RFルーティングが平面内でスケールされることを可能にする、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【請求項9】
前記MMICsは、スイッチ及び低電力増幅器をさらに含む、請求項1に記載のモジュール式通信アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アンテナ・アレイに関し、より具体的には、モジュール式電子的に走査されるアレイに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
アンテナ・アレイは、指向性放射パターンを生成するために共通のソース又は負荷に結合された複数のアクティブ・アンテナのグループである。通常、個々のアンテナの空間的関係もアンテナ・アレイの指向性に寄与する。フェーズド・アレイ・アンテナは、アンテナに給電する信号の相対的位相が、アレイ全体の有効放射パターンが所望の方向で強化され、望ましくない方向で抑制されるように、変化されるアンテナのアレイである。
【0003】
図1は、従来のアンテナ・アレイ100の図を示す。アンテナ・アレイ100は、(非金属)レードーム(radome)102内に収容されるいくつかの線形アレイ104を含む。ここで、各線形アレイ104は、互いの間に間隔をもって垂直に配置される。間隔は、アンテナ・アレイ100の所望の共振周波数によって決定される、各線形アレイ104は、アンテナフィード106を介して、外部RF電子モジュール108内に含まれる関連した無線周波数(RF)電子回路に接続される。RF電子モジュール108は、電力接続、制御接続及び通信接続のために接続110を介して外部システムに接続され、レードーム102上に物理的に取り付けられてもよく、或いはアンテナ・アレイ100の遠隔又は外部に配置されてもよい。
【0004】
電子的に走査されるアレイ(Electronically Scanned Array (ESA))は、フェーズド・アレイ・アンテナの一種であり、そこではトランシーバは多数のソリッドステート(固体)送信/受信モジュールを含む。ESAでは、アンテナの前方の所定の角度において建設的に干渉する無線周波数エネルギーを伝搬することによって、電磁ビームが放射される。アクティブ電子走査アレイ(AESA)は、送信機と受信機(トランシーバ)機能が多数の小型固体送信/受信モジュール(TRM)で構成されるフェーズド・アレイ・レーダの一種である。AESAレーダーは、アンテナの前方の所定の角度において建設的に干渉する、各モジュールからの個別的な電波を放射することにより、それらのビームを照準する。ESAアンテナAESAアンテナの設計は、高密度充填、高信頼性の電子機器を提供する。
【0005】
フェーズド・アレイ・アンテナは、アレイアセンブリ内で互いに隣接して配置される複数の送信/受信集積マイクロ波モジュール(TRIMM)アセンブリと、TRIMMアセンブリの各々から延びる複数の放射素子とを含むことができる。TRIMMアセンブリは、各々、他の部品が取り付けられるカラム又はプレート部分を含む。フェーズド・アレイ・アンテナの電気的性能は、例えば、アンテナ内の種々の特徴の配向、及びこれらの種々の特徴間の配置及び相互通信といった種々の要因に依存する。フェーズド・アレイ・アンテナはまた、1つ以上の空冷又は水冷マルチビーム送受信(Tx /Rx)モノリシックマイクロ波集積回路、及びパッチアンテナ素子を含んでもよい。
【0006】
現代のAESAは、高度に統合された無線システムであり、設計と開発に費用がかかり、開発時間が長く、複雑な陳腐化管理の負担がある。現代のAESAシステムでは、増幅、位相シフト、及び他のRF電子機器は、互いに容易に分離することはできない。したがって、1つの電気サブシステムにおける改良は、完全なシステム再設計を必要とし得る。対照的に、この特許出願で提案されたモジュール式AESA設計トポロジは、新しいRF電子ハードウェアをAESAスタックに組み込むコストと複雑さを低減する。
【0007】
市販の走査アレイ技術は、離散電力増幅器が一般に使用されないので、短距離能力のみを提供することを強調することは価値がある。長距離性能を実現するためには、高出力窒化ガリウム(GaN) MMICの使用が必要である。GaN MMICを組み込むと、商用の移相器部分と比較して、通常、製品の寿命サイクルが長いので、電力増幅器を移相器から容易に切り離して、合理化された陳腐化管理を行うモジュール式アーキテクチャの必要性を生じさせる。従来のAESAシステムでは、位相シフト又は増幅層のいずれかを変更するには、走査アレイ電子システム全体を再エンジニアリングする必要がある。したがって、システムの再設計のコストが高いため、技術的改善はシステムの構成要素に限定される。
【0008】
故に、モジュール式で、低コストで、開発時間の短いアンテナ・アレイが必要とされており、これは、より大型で、より能力の高いアンテナ・アレイを提供するために、容易に集積化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態では、開示された発明は、迅速なシステムアップグレード及び新製品の投入と長距離通信能力を可能にする低コストのモジュール式走査アレイ通信システムである。
【0010】
いくつかの実施形態では、開示された本発明のモジュール式通信アレイは、RF信号を通信するためのパッチ・アンテナ・アレイを含むアンテナカードと; 複数のモノリシックマイクロ波集積回路(MMICs)を含むチップキャリアカードであり、MMICsの各々が電力増幅器(PA)を備えて複数の金属ポストのそれぞれの金属ポスト上に位置決めされる、チップキャリアカードと; ビームステアリング及び利得制御のための複数の移相器回路と、複数のキャビティとを備える移相器カードであり、前記キャビティの各々は、前記チップキャリアカード上のそれぞれの金属ポストの位置に対応する、移相器カードと; 冷却用の熱伝導性エポキシにより前記チップキャリアカードに結合された冷却ブロックであり、前記移相器カードは、前記アンテナカード及び前記チップキャリアカードの構成要素に影響を及ぼすことなく交換可能である、冷却ブロックとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、モジュール式通信アレイは、前記移相器カードから前記冷却ブロックを通って前記アンテナカードへと前記RF信号をルーティングするための同軸ケーブルルーティングをさらに備える。前記キャビティの断面積は、前記金属ポストが前記キャビティ内へとスライドすることを可能にするように、前記金属ポストの上面フットプリントのサイズよりも大きい。前記複数の金属ポストは、銅で構成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記金属ポストは、減算プロセス又はろう付け化合物により前記チップキャリアカードに取り付けられる。前記キャビティの各々は、前記MMICsを前記移相器カードに接続するためのワイヤボンド用の導電性パッドを含む。
【0013】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面に関してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、従来のアンテナ・アレイの図を示す。
図2A】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、モジュール式通信システムの関連層の簡略化した図である。
図2B】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、モジュール式通信システムの関連層の簡略化した図である。
図2C】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、モジュール通信システムの関連する層の側面図の例示的な簡略化した図である。
図3A】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、組み立てられた通信システムの例示的な簡略化した背面斜視図である。
図3B】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、組み立てられたモジュール式通信システムの例示的な簡略化された正面斜視図である。
図4A】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、移相器カードを取り外したモジュール式通信システムの例示的な簡略図である。
図4B】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、アンテナカードを取り外したモジュール式通信システムの例示的な簡略図である。
図5A】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、移相器カードの例示的な簡略化された斜視図である。
図5B】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、移相器カードの例示的な簡略化された上面図である。
図6A】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、MMICsを有するチップキャリアカードの例示的な簡略化された斜視図である。
図6B】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、MMICsを有するチップキャリアカードの例示的な簡略化された上面図である。
図7】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、冷却ブロックの例示的な簡略図である。
図8】開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、単一の移相器IC及び関連するMMICsを拡大した例示的な簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
いくつかの実施形態では、開示された発明は、モジュール式通信システムであり、移相器層(カード)、増幅器層(チップキャリア)、冷却ブロック(水ブロック)、及びアンテナ層(カード)が、全て、垂直(Z)方向に互いに分離され、故に着脱可能である。
【0016】
図2A及び2Bは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、モジュール式通信システムの関連層又はカードの簡略化された図である。図示のように、アンテナカード202と、例えば窒化ガリウム(GaN)MMIC電力増幅器(PA)などの電力増幅器(PA)を配置するための電力増幅器(PA)層(チップキャリア)204と、移相器カード206とが、別々に構成され、モジュール方式で一緒に組み立てられる。このことにより、各層(カード又はチップキャリア)を容易に分離でき、類似の層に置き換えることができる。アンテナカード202は、Tx /Rx通信を可能にするパッチ・アンテナ・アレイを含む。いくつかの実施形態では、PA層204は、長距離通信能力を可能にするmm波信号の出力電力を増大させる金属チップキャリア上の一組のGaN MMIC PAを含む。移相器カード206は、ビームステアリング及びゲイン制御を可能にし、短時間使用ウィンドウ(より新しい部品が入手可能になるまでのウィンドウ)を有する商用部品を含むことができる。従って、カード206の陳腐化管理が望ましい。このことは、アンテナカード(202)及び電力増幅器層(204)をリエンジニアリングすることなく、新しい移相器が市販されるようになるにつれて、移相器カードを交換することを含む。図2Bに示すように、アンテナ経路への単一の移相器カード206が存在する。
【0017】
図2Cは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、モジュール式通信システムのための関連する層又はカードの側面の例示的な簡略化された図である。図示のように、アンテナカード220、冷却用の冷却ブロック222、熱インターフェイス化合物224、モノリシックマイクロ波集積回路(MMICs)(例えば、GaN MMICs)を含むチップキャリアカード226、及び移相器カード228が、一緒に組み立てられて、モジュール式通信システムが形成される。アンテナカード220は、RF信号に関連するビーム・パターンを生成する。冷却ブロック222は、MMIC(カード226上)及び移相器集積回路(カード228上)の両方のために冷却を提供する。熱インターフェイス化合物224は、チップキャリアカード226と冷却ブロック222との間に低熱伝導性の接合部があることを保証する。熱インターフェイス化合物224は、冷却ブロックの冷却効率を提供する。いくつかの実施形態では、PAに加えて、MMICsは、低ノイズ増幅器、スイッチ、及び関連する構成要素を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、電力増幅器MMCは、金属チップキャリアに取り付けられた(銅)ポストの頂部に搭載される。いくつかの実施形態では、金属チップキャリアはまた、熱管理を可能にするために、冷却ブロックに熱伝導経路を提供するヒートシンクとして作用する。移相器カード228は、移相器集積回路230を収容し、RF信号ルーティングを含む信号ルーティングを提供し、利得制御を可能にし、モジュール式通信システムのためのビームステアリングを提供する。いくつかの実施形態では、このカードは、チップキャリア上のポスト上のMMIC電力増幅器が配置される主要な複数の位置にキャビティ(例えば、穴)を有する。このカード内のキャビティは、チップキャリア226上のポスト位置に対応し、このポスト位置で、複数のMMICsが頂部に取り付けられる。これらのMMICsは、ポスト上に配置され、チップキャリア226の頂部に配置され、GaN MMICと移相カードとの間のワイヤボンディングを可能にする。
【0019】
MMICsは、移相器カード228から分離されたチップキャリア226(チップキャリアの等角図については、図6Aを参照)上に収容されるので、移相器カードを取り外し、更新した/異なる移相器集積回路を有する新しいカードに置き換えることが可能である。すなわち、移相器カードは、アンテナカード及びチップキャリアカードの構成要素に影響を及ぼすことなく、交換可能である。新しい移相器を含むカード228に交換する能力は、走査アレイ通信システム全体のモジュール性を可能にする。いくつかの実施態様において、アンテナカード220及び移相器カード228は、各々、ここでは図示しない機械的ファスナ232(例えば、ねじ、クリップ、又は他の任意の公知の機械的ファスナ)を使用して冷却ブロック222に取り付けられる。
【0020】
移相器回路230(例えば、集積回路)は、移相器カード228上に組み立てられる。チップキャリアカード226、移相器カード228、冷却ブロック222及びアンテナカード220を互いに分離する能力は、システムのモジュール性を可能にする。
【0021】
図3Aは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従って組み立てられたモジュール式通信システムの例示的な簡略化された背面図であり、図3Bは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従って組み立てられたモジュール式通信システムの例示的な簡略化された正面図である。図示のように、ポスト(ポストは、この図では、移相カードによって不明瞭になっている。ポストに実装されたMMICsのより明確な図については、図6Aの604を参照のこと)に実装されたMMIC304、移相器回路302、移相器カード306、冷却ブロック308、チップキャリア層310、アンテナカード312及び単一パッチアンテナ314は、図2A及び2Bに関して上述したように、可視である。
【0022】
いくつかの実施形態では、モジュール式通信システムは、以下のモジュール方式で組み立てられる。MMICチップキャリア(例えば、図2Cの226及び図3の310)は、熱伝導性エポキシ、例えば、熱インターフェイス化合物224を用いて冷却ブロック308(例えば、水ブロック)に取り付けられる。チップキャリアは、MMICsがルーティング及びワイヤボンディング目的のために移相器カード306の頂部近くに配置されることを可能にするポスト(例えば、図6Aを参照)を含む。移相器カード306は、チップキャリア(すなわち、MMICsを含む層)の上に配置され、複数のMMICチップキャリアポストが、移相器カード内のキャビティ内に配置される。
【0023】
いくつかの実施形態では、移相器カード306内のキャビティは、減算プロセス(ミリングなど)によって形成されてもよく、又はビルドアッププリント回路基板製造技術によって画定されてもよい。これらのキャビティの断面積は、ポストよりもわずかに大きく(ポストがキャビティ内にスライドすることを可能にする)、エッジ近傍に内部導電性パッドを有し、ワイヤボンドがMMIC304を移相器カード306に接続することを可能にする。これらのキャビティは、設計及び関連するRFルーティング・パターンがX-Y平面内でスケーリングされ得ることを確実にするために、移相器回路302の近くに規則的なパターンで配置される。いくつかの実施形態では、MMIC304の位相シフト集積回路302への近接及び周期的間隔は、走査アレイ通信システムのための位相整合ネットワークを提供する。MMIC304は、移相器カード306からアンテナカード312へ信号を給電するために、移相器カード及び同軸ケーブル(又は類似のRFルーティング)にワイヤボンディングされる。
【0024】
図4Aは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、移相器カードを取り外したモジュール式通信システムの例示的な簡略図である。図示のように、同軸ケーブル配線インターフェイス402(移相器カードに取り付けられるケーブルのインターフェイス)は、移相器カードに嵌合する。同軸ケーブルは、移相器カードをアンテナカードに接続し、冷却ブロックを介して、位相シフト及び増幅器電子回路からパッチ・アンテナ・アレイへ信号をルーティングする手段を提供する。説明のために、特定的な同軸ケーブルのルーティングを示すが、実際には、移相器カードからのRF信号を冷却ブロック405を通してアンテナカードへとルーティングするために、種々の異なるRFルーティング技術を使用することができる。熱伝導性ポスト407上のMMIC404は、チップキャリア406に取り付けられる。チップキャリア406自体は、図2Cに関連して説明したように、熱インターフェイス化合物材料を用いて冷却ブロック405に取り付けられる。同軸ケーブル402は、MMIC404によって増幅されたRF信号を移相器カード(図示せず)からアンテナカード(図示せず)へと冷却ブロック405を介してルーティングする。いくつかの実施形態では、MMICsが取り付けられる金属ブロックであるチップキャリア上で発生するルーティングはない。MMICsは、熱伝導性ポスト407(例えば、銅ポスト)上に配置され、ワイヤボンディングプロセスを支援するために、移相器カードにフラッシュ(flush)して取り付けられる。
【0025】
銅チップキャリアは、銅ポストの接合を可能にする表面として作用し、熱性能を改善するためのヒートスプレッダとして機能する。これに加えて、チップキャリアは、チップキャリア全体を(いったんポスト及びMMICsが取り付けられたら)熱エポキシで冷却ブロック上に結合することができるので、銅ポスト上へのMMICsの組み立てを容易にする表面を提供する。銅ポストは必ずしもチップキャリアに接合される必要はないことに注意されたい。変形的には、チップキャリア(厚い銅のブロックで始まる)を機械加工で除去して、一組の露出ポストを残し、そこにMMICsを取り付けることもできる。
【0026】
図4Bは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、アンテナカードを取り外したモジュール式通信システムの例示的な簡略化された図である。この図では、モジュール式通信システムの反対側にある同軸ケーブル終端408が見える。408で示されている同軸ケーブルが冷却ブロック405を通過することに留意されたい。いくつかの実施態様において、同軸ケーブル接続(端子408を有する)は、パッチ・アンテナ・アレイの周期性に密接に対応する周期的配置で冷却ブロック405に配置される。
【0027】
図5Aは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、移相器カードの例示的な簡略化された斜視図であり、図5Bは、移相器カードの例示的な簡略化された上面図である。図示のように、移相器カードは、移相器回路502と、カード(例えば、PCB)内に切断されたキャビティ504とを含み、銅ポスト(ここには示されていない)上にあるMMICsが移相器カードとほぼ同一に配置されることを可能にする。いくつかの実施形態では、キャビティは、減算プロセス(PCBをミリングする)を使用して形成することができ、或いはビルドアッププロセスが利用される場合には最初からキャビティとして画定することができる。このことにより、MMICs(図示せず)が、移相器カードにワイヤボンディングされることが可能となり、RF信号がカードとMMICsとの間をルーティングできるようになる(例えば、ワイヤボンディング位置については、図8の部品810を参照)。
【0028】
図6Aは、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、MMICsを有するチップキャリアカードの例示的な簡略化された斜視図であり、図6Bは、チップキャリアカードの例示的な簡略化された上面図である。図示のように、チップキャリアカードは、ポスト604(例えば、銅ポスト)上に取り付けられたMMIC602を含む。また、開口部606が、チップキャリアカード内にドリルで穿孔されて、同軸ケーブルが移相器カード(図示せず)からのRF信号を冷却ブロックを通してアンテナカードへとルーティングすることを可能にする。導電性ポストをチップキャリアに取り付けるにはいくつかの方法がある。例えば、導電性ポストは、減算プロセスを介して画定することができ、そこでは、例えば銅である導電性材料の単一の厚いブロックが、コンピュータ制御ミリングマシンを使用してミリングダウンされる。このプロセスでは、導電性ポストは、ミリングプロセス中に除去されない領域として画定され、チップキャリア及びポストは、銅の単一のモノリシック片である。
【0029】
別のアプローチは、導電性ポストを銅(又は他の導電性材料)チップキャリア上に配置し、ポストとチップキャリアとの間にろう付け(brazing)化合物を配置することである。次に、銅ポスト、ろう着化合物、及びチップキャリアをろう着オーブン内で加熱し、銅ポスト604をチップキャリアに接合する。その後、チップキャリア及び銅ポスト604は、任意の技術によって製造され、熱インターフェイス化合物が各銅ピラー604の頂部に広がる。ピックアンドプレースツールが、MMIC 602を銅ピラーの頂部に取り付ける。続いて、図6A及び6Bに示されるアセンブリ全体が、冷却ブロックの頂部に取り付けられるが、移相器カードの下方にある。例えば、図2Cを参照されたい。チップキャリアは、MMIC602のための取り付け面と、(チップキャリアが冷却ブロック(例えば、図2C及び図3A参照)に取り付けられるように)MMICsが動作中に過熱しないことを確実にする熱伝導性基板とを提供する。MMICsが載置される複数のポスト604は、MMICsから移相器カードへのワイヤボンディングを可能にするために移相器キャビティ内に配置される。チップキャリアカード内の開口部606が、同軸ケーブル(例えば、図4A及び4Bの402)を介して、チップキャリアカードの各側の移相器カードからアンテナカードへのRFルーティングを可能にする。
【0030】
図7は、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、冷却ブロック700の例示的な簡略図である。冷却ブロック700は、MMICs及び移相器回路のために冷却を提供し、移相器及びアンテナカードの両方がその上に置かれる。冷却剤(例えば、水又は他の冷却剤)が、開口部702を介してブロックの側面に流入し、蛇行経路(図示せず)を流れ、他の開口部を介して反対側から流出する。開口部704は、移相器カードからアンテナカードへのRFルーティングを可能にする(図2A、2B及び2Cに示す)。
【0031】
図8は、開示された本発明のいくつかの実施形態に従った、単一の移相器回路806及び関連するMMIC 804の拡大した例示的な簡略図である。ワイヤボンディングキャビティ802は、ワイヤボンディング810が、上述のように、様々な構成要素を互いに接続することを可能にする。MMIC 804及び移相器回路806は、移相器カードの表面808上に配置される。
【0032】
いくつかの実施形態では、移相器カード内の2つ以上のキャビティ、ワイヤボンディングのためのMMICチップキャリア上の複数のポスト、同軸ケーブル(又は他のRF)ルーティングのための冷却ブロック内の複数の孔、及び同軸ケーブル出力に嵌合するアンテナカードのための別個のPCBの組み合わせが、モジュール式電子走査アレイ通信システムを提供する。このようにして、位相シフト、電力増幅器、冷却及びアンテナカードを容易に分離することができ、これは陳腐化管理を強化し、新しいコンポーネントが利用可能になるにつれて設計を改善する能力を高める。
当業者であれば、本発明の広範な発明性から逸脱することなく、上述の本発明の図示の実施形態及び他の実施形態に種々の修正を加えることができることが理解されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態又は構成に限定されるものではなく、添付の図面及び特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内の任意の変更、適合又は修正を包含することを意図するものであることが理解されるであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A-6B】
図7
図8