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特許7159485含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/04 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021561269
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041738
(87)【国際公開番号】W WO2021106539
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019212039
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】青津 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/013131(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/126954(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/173218(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/101830(WO,A1)
【文献】特開昭59-104364(JP,A)
【文献】INOUYE,Y. et al.,A facile one-pot preparation of 2-methyl- and 2-phenyl-4-fluoro-5-(trifluoromethyl)-6-methoxypyrimid,Journal of Fluorine Chemistry,1985年,Vol.27, No.2,pp.231-236,DOI 10.1016/S0022-1139(00)84991-X
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、含フッ素ピリミジン化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、請求項1に記載の含フッ素ピリミジン化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【請求項4】
下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)または(4)において、
Qは、ハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)または-NAを表し、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【請求項5】
前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、請求項3または4に記載の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含フッ素ピリミジン化合物は種々の生物活性を有することが報告されている。なかでも、ピリミジン環の2位にピラゾール環またはトリアゾール環等を置換基として有する化合物について、医薬・農薬分野においての使用が有望視されている。
【0003】
より具体的には、ピリミジン環の2位にピラゾール環を有する化合物は、非特許文献1に開示されている。非特許文献1では、2-(1-ピラゾリル)-ピリミジン構造を有する化合物が、麻疹ウイルスおよびチクングニアウイルスの増殖抑制作用を有することが報告されている。
【0004】
また、ピリミジン環の2位にトリアゾール環を有する化合物は、特許文献1に開示されている。特許文献1では、2-(1-トリアゾリル)-ピリミジン構造を有する化合物が、抗腫瘍作用を有することが報告されている。
【0005】
このような観点から、さらなる活性向上を期待して、ピリミジン環の4、5、6位への置換基の導入に興味が持たれている。
【0006】
一方、ピリミジン環の5位にトリフルオロメチル基を有し、4位および6位に置換基を有するピリミジン化合物の合成法は、非特許文献2~4に開示されている。より具体的には、非特許文献2にはトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム(Langlois試薬)を使用した合成法、非特許文献3にはトリフルオロ酢酸誘導体を使用した合成法、非特許文献4には無水トリフルオロメタンスルホン酸を使用した合成法、がそれぞれ報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/152076号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Journal Of Medicinal Chemistry,2015年、58巻、860~877頁
【文献】Tetrahedron,2016年、72巻、3250~3255頁
【文献】ACS Catalysis,2018年、8巻、2839~2843頁
【文献】Angewandte Chemie International Edition,2018年、57巻、6926~6929頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来、反応性および選択性の面から、ピリミジン環の5位に含フッ素置換基を、2位に置換基として複素環を有し、4位および6位に置換基を有する含フッ素ピリミジン化合物の製造は困難であり、このような含フッ素ピリミジン化合物は報告されていなかった。該含フッ素ピリミジン化合物は、様々な生物活性を有することが期待され、ピリミジン環の4位および6位に置換基を有し、2位に置換基として複素環を有する新規な含フッ素ピリミジン化合物、およびその製造方法を確立することが望まれていた。
【0010】
非特許文献2に報告されている製造方法では、トリフルオロメチル基導入時の位置選択性が低いことから、複素環が置換したピリミジン化合物といった、複数の複素環を有する基質に対しては、トリフルオロメチル基の導入効率が低下するか、またはトリフルオロメチル基の導入が困難となる懸念がある。また、基質に対してトリフルオロメチル化剤としてLanglois試薬を3倍量使用するばかりか、別途酸化剤として有害な酢酸マンガン(III)水和物をも基質の3倍量、使用するといった問題があった。
【0011】
非特許文献3および4に報告されている製造方法により得られた化合物をさらに修飾・誘導体化することにより、該含フッ素ピリミジン化合物へと変換することが考えられる。しかしながら、工程数の増加による煩雑化および効率の低下が避けられないか、または該含フッ素ピリミジン化合物の製造自体が困難な場合があった。また、ルテニウム錯体触媒存在下での光照射が必要であること、非特許文献3では、基質に対してトリフルオロメチル化剤を2.5~3倍量使用する必要があること、非特許文献4では、基質に対してトリフルオロメチル化剤を3倍量使用する必要があることから、実用には向かないと考えられる。
【0012】
そこで、本発明者らは、特定の原料を反応させることにより、ピリミジン環上の2つの窒素原子の間の2位にピラゾール環構造またはトリアゾール環構造等の全てのヘテロ原子が窒素であるアゾール系構造を導入できるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、従来から知られていなかった、ピリミジン環の4位および6位に置換基を有し、2位に置換基として全てのヘテロ原子が窒素であるアゾール系構造を有する新規な含フッ素ピリミジン化合物、および、該含フッ素ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供する。
【0013】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 下記一般式(1)で表される、含フッ素ピリミジン化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
[2] 前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、[1]に記載の含フッ素ピリミジン化合物。
[3] 下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
[4] 下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)または(4)において、
Qは、ハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)または-NAを表し、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
[5] 前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、[3]または[4]に記載の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
ピリミジン環の4位および6位に置換基を有し、2位に全てのヘテロ原子が窒素であるアゾール系構造を有する、新規な含フッ素ピリミジン化合物、および、該含フッ素ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、以下に説明する具体例に限定されるものではない。
【0016】
(含フッ素ピリミジン化合物)
一実施形態における含フッ素ピリミジン化合物は下記一般式(1)で表される。
【化4】
(上記一般式(1)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【0017】
Rは、炭素数1~12の、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基などを挙げることができる。鎖状炭化水素基は合計の炭素数が1~12であれば特に限定されず、直鎖状炭化水素基であっても、分岐した鎖状炭化水素基であってもよい。Rが芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は合計の炭素数が6~12であれば特に限定されず、置換基を有する芳香族炭化水素基であっても、置換基を有さない芳香族炭化水素基であってもよい。また、芳香族炭化水素基は、縮合多環構造を有していてもよい。Rが脂環式炭化水素基である場合、脂環式炭化水素基は合計の炭素数が3~12であれば特に限定されず、置換基を有する脂環式炭化水素基であっても、置換基を有さない脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造を有していてもよい。
【0018】
鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、ter-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0019】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0020】
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0021】
Rは、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。Rが炭素数1~10のアルキル基であることにより、含フッ素ピリミジン化合物の原料である一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体、および一般式(4)のフルオロイソブタン誘導体を容易に調製することができる。
【0022】
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。BおよびBは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0023】
およびBにおいて、ハロゲン原子は、F、Cl、BrまたはIであり、FまたはClであることが好ましい。
【0024】
およびBにおいて、炭素数1~10の炭化水素基は、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0025】
およびBにおいて、-C2n+1は、炭素原子およびフッ素原子からなるパーフルオロアルキル基であれば特に限定されず、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。また、nは1~10の整数であり、1~3の整数であることが好ましい。
【0026】
およびBにおいて、-OA、-SOに含まれるAは、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。また、mは0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0~1の整数であることがより好ましい。
【0027】
およびBにおいて、-NAに含まれるAおよびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。AおよびAは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。AおよびAが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0028】
およびBにおいて、-COOAに含まれるAは、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0029】
およびBにおいて、-CONAに含まれるAおよびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。AおよびAは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。AおよびAが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0030】
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表す。W、X、YおよびZの少なくとも1つがCVである場合、Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。W、X、YおよびZは、少なくとも1つがNであることが好ましく、W、X、YおよびZのいずれか1つまたは2つがNであることがより好ましい。特に、一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物は、ピリミジン環上の2位にピラゾール環構造またはトリアゾール環構造を有していることが好ましい。
【0031】
Vにおいて、ハロゲン原子は、F、Cl、BrまたはIであり、FまたはClであることが好ましい。
【0032】
Vにおいて、炭素数1~10の炭化水素基は、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0033】
Vにおいて、-C2n+1は、炭素原子およびフッ素原子からなるパーフルオロアルキル基であれば特に限定されず、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。また、nは1~10の整数であり、1~3の整数であることが好ましい。
【0034】
Vにおいて、-OA、-SOに含まれるAは、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。また、mは0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0~1の整数であることがより好ましい。
【0035】
Vにおいて、-NAに含まれるAおよびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。AおよびAは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。AおよびAが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0036】
Vにおいて、-COOAに含まれるAは、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0037】
Vにおいて、-CONAに含まれるAおよびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。AおよびAは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。AおよびAが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0038】
一実施形態における含フッ素ピリミジン化合物は、ピリミジン環の2位に特定の置換基(ピラゾール環構造、トリアゾール環構造等の全てのヘテロ原子が窒素であるアゾール系構造)、ピリミジン環の4位、5位、および6位上に特定の置換基(-OR、-CF、-F)を有するため、構造拡張性の観点から優れた効果を有することができる。特に、所望の生物活性(例えば、各種ウイルスの増殖阻害活性、各種菌の抗菌活性、抗腫瘍活性)を期待することができ、例えば、イネいもち病等の病原菌の防除活性を期待できる。ピリミジン環の2位上に位置する全てのヘテロ原子が窒素であるアゾール系構造はさらに置換基を有していても、有していなくてもよい。当該アゾール系構造が置換基を有することにより、一実施形態における含フッ素ピリミジン化合物に更なる特性を付与することができる。また、ピリミジン環の4位および6位上の置換基は異なる基(-ORと-F)であるため、非対称な構造へ容易に誘導体化を行うことができ、中間体としての使用も期待できる。より具体的には、酸性条件下で含フッ素ピリミジン化合物を反応させることにより-ORを修飾して誘導体を得ることができる。また、塩基性条件下で含フッ素ピリミジン化合物を反応させることにより-Fを修飾して誘導体を得ることができる。一実施形態における含フッ素ピリミジン化合物は例えば、有機半導体、液晶などの電子材料の分野において有用である。
【0039】
(含フッ素ピリミジン化合物の製造方法)
一実施形態における含フッ素ピリミジン化合物の製造方法は、(a)下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化5】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【0040】
一般式(2)において、Rは、上述した一般式(1)の化合物において定義したものと同じであり、一般式(3)において、B、B、W、X、YおよびZのそれぞれは、上述した一般式(1)の化合物において定義したものとそれぞれ同じである。
【0041】
上記一般式(2)におけるRは、炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(2)におけるRは、例えば、上述した一般式(1)におけるRの中で炭素数が1~10のアルキル基とすることができる。
【0042】
一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との上記(a)の反応は、下記反応式(A)として表される。
【化6】
【0043】
上記反応式(A)において、上記一般式(3)の化合物は、それぞれ塩の形態であってもよい。一般式(3)の化合物が塩の形態である場合、例えば、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分がカチオン化されて(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0044】
一実施形態における含フッ素ピリミジン化合物の製造方法では、例えば、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で上記(a)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得ることができる。なお、上記(a)の反応では、一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピリミジン構造が形成される。該ピリミジン構造の2位には、一般式(3)の化合物における全てのヘテロ原子が窒素であるアゾール系構造に由来する基が位置する。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブチレン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0045】
ハロゲン化水素捕捉剤は、上記(A)の反応式において一般式(3)の化合物中のアミジノ基に由来する水素原子と、一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体に由来するフッ素原子とから形成されるフッ化水素(HF)を捕捉する機能を有する物質である。ハロゲン化水素捕捉剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウム等の無機化合物、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、メチルトリアザビシクロデセンおよびジアザビシクロオクタン等の有機窒素誘導体を用いることができる。
【0046】
上記(A)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われることが好ましい。上記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤として、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムまたはテトラメチルアンモニウムのカチオンと、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸またはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸のアニオンとの塩の存在下で反応させることが好ましい。これらの中でも、カリウム塩またはナトリウム塩の使用が好ましく、ナトリウム塩の使用がより好ましい。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出されることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得ることができると考えられる。
【0047】
上記(a)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記(a)の反応時の反応時間は、0.5~48時間が好ましく、1~36時間がより好ましく、2~12時間がさらに好ましい。
【0048】
上記(a)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン等の非プロトン性極性溶媒、または、水等のプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエンおよびジエチルエーテル等の非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(a)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0049】
他の実施形態における含フッ素ピリミジン化合物の製造方法は、(b)下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化7】
(上記一般式(1)、(3)または(4)において、
Qは、ハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)または-NAを表し、
Rは、炭素数1~12の炭化水素基を表し、
およびBは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
W、X、YおよびZは、それぞれ独立して、CVまたはNを表し、
Vは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOAまたは-CONAを表し、
およびAは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
【0050】
一般式(4)において、Rは、上述した一般式(1)の化合物において定義したものと同じであり、ハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)および-NAは、上述した一般式(1)の化合物において定義したものと同じである。
【0051】
上記一般式(1)および(4)におけるRは、炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(4)におけるRは、例えば、上述した一般式(1)におけるRの中で炭素数が1~10のアルキル基とすることができる。
【0052】
一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との上記(b)の反応は、下記反応式(B)として表される。
【化8】
【0053】
上記反応式(B)において、一般式(3)の化合物は、それぞれ塩の形態であってもよい。一般式(3)の化合物が塩の形態である場合、例えば、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分がカチオン化されて(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0054】
他の実施形態における含フッ素ピリミジン化合物の製造方法では、例えば、上記(B)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得ることができる。なお、上記(b)の反応では、一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピリミジン構造が形成される。該ピリミジン構造の2位には、一般式(3)の化合物における全てのヘテロ原子が窒素であるアゾール系構造に由来する基が位置する。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブタン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0055】
上記(b)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記(b)の反応時の反応時間は、0.5~48時間が好ましく、1~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。上記(b)の反応では、上記(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤を使用してもよい。
【0056】
上記(b)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン等の非プロトン性極性溶媒、または、水等のプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエンおよびジエチルエーテル等の非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(b)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0058】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。また、特に言及がない限り、室温とは20℃±5℃の範囲内であるとする。
【0059】
(実施例1)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(1-ピラゾリル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン33gに、1-アミジノピラゾール塩酸塩2g(13.6mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド17.4g(54.4mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン3.3g(15.6mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン9.2g(71mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約64時間後、テトラヒドロフランを減圧留去し、次いで酢酸エチルに溶解させてカラム精製を行い、下記の式(5)で示される化合物(化学式:CO、分子量:262.17g/mol)2.4gを得た。得られた化合物の単離収率は67%であった。
【0060】
【化9】
【0061】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):262([M]
H-NMR(300MHz、CDCl) δppm:8.52(dd,1H)、7.88(d,1H)、6.54(m,1H)、4.25(s,3H)
19F-NMR(300MHz、C) δppm:-58.51(dd,1F)、-58.57(d,3F)
【0062】
(実施例2)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(1-トリアゾリル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン20gに、1―アミジノトリアゾール塩酸塩1g(6.8mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド8.7g(27mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン1.7g(7.8mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン4.6g(35mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、テトラヒドロフランを減圧留去し、次いで酢酸エチルに溶解させてカラム精製を行い、下記の式(6)で示される化合物(化学式:CO、分子量:263.16g/mol)70mgを得た。得られた化合物の単離収率は4%であった。
【0063】
【化10】
【0064】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):263([M]
H-NMR(300MHz、CDCl) δppm:9.19(s,1H)、8.20(s,1H)、4.29(s,3H)
19F-NMR(300MHz、C) δppm:-57.40(dd,1F)、-58.86(d,3F)
【0065】
(実施例3)
実施例1の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(1-ピラゾリル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン50gに、1-アミジノピラゾール塩酸塩2g(13.6mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド21.7g(68.0mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン3.6g(15.6mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン11.4g(88.4mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、テトラヒドロフランを減圧留去し、次いで酢酸エチルに溶解させてカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例1の生成物と同様であった。
【0066】
(実施例4)
実施例2の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(1-トリアゾリル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン50gに、1-アミジノトリアゾール塩酸塩2g(13.6mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド21.7g(68.0mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン3.6g(15.6mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン11.4g(88.4mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、テトラヒドロフランを減圧留去し、次いで酢酸エチルに溶解させてカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例2の生成物と同様であった。
【0067】
(実施例5)
実施例2のカリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの代わりに、テトラフェニルホウ酸ナトリウムを使用した、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(1-トリアゾリル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン20gに、1―アミジノトリアゾール塩酸塩1g(6.8mmol)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム9.2g(27mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン1.7g(7.8mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン4.6g(35mmol)とテトラヒドロフラン10gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、テトラヒドロフランを減圧留去し、次いで酢酸エチルに溶解させてカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例2の生成物と同様であった。
【0068】
尚、実施例3~5では、得られた化合物の単離収率は算出していないが、実施例3および4では、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンから、系中で1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンを生成させる過程で発生し得る副生成物に起因して、不純物の種類およびその量の増加が予測される。そのため、実施例1、2の製法の方が、対応する実施例3、4の製法と比較して、得られた生成物の単離収率が高いと考えられる。一方、実施例5では、フッ化物イオン捕捉剤として、カリウムよりもフッ化物イオンの捕捉能が高いナトリウム塩を使用しているため、実施例2の製法と比較して、得られた生成物の単離収率が高いと考えられる。
【0069】
(実施例6)
6-フルオロ-2-(4-フルオロ-1-ピラゾリル)-4-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.5g(3.0mmol)をテトラヒドロフラン8mlに溶解し、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4.5g(14.0mmol)と1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.8g(3.8mmol)とジイソプロピルエチルアミン2.1g(16.2mmol)を加え、室温で16.7時間撹拌した。撹拌後、反応液をカラム精製し、下記の式(7)で示される化合物(化学式:CO、分子量:280.16g/mol)0.2g(0.9mmol)を得た。得られた化合物の単離収率は28.0%であった。
【0070】
【化11】
【0071】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):280.9([M+H]
H NMR(400MHz,CDCl) δppm:8.35(dd,J=4.0,0.9Hz,1H)、7.79(dd,J=4.3,0.6Hz,1H)、4.24(s,3H)
【0072】
(実施例7)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(3-メチル-1-ピラゾリル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
3-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.5g(3.1mmol)をテトラヒドロフラン8.4mlに溶解し、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4.0g(12.5mmol)と1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.8g(3.8mmol)とジイソプロピルエチルアミン2.1g(16.2mmol)を加え、室温で16.2時間撹拌した。撹拌後、反応液をカラム精製し、下記の式(8)で示される化合物(化学式:C10O、分子量:276.19g/mol)0.6g(2.1mmol)を得た。得られた化合物の単離収率は67.0%であった。
【0073】
【化12】
【0074】
分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):277.1([M+H]
H NMR(400MHz,CDCl) δppm:8.40(d,J=2.6Hz,1H)、6.35(d,J=2.8Hz,1H)、4.23(s,3H)、2.42(s,3H)
【0075】
<生物活性の試験例>
イネいもち病に対する評価試験
実施例1で作製した6-フルオロ-4-メトキシ-2-(1-ピラゾリル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンをアセトンに溶かし、100000ppmの濃度になるように溶液を調製した。次いで、このアセトン溶液1mlに滅菌水を加え50mlとし、濃度2000ppmの被験液を調製した。濃度2000ppmの被験液を、別途作製したオートミール培地に1000μl滴下し、風乾させた。続いて、4mmのイネいもち病ディスクを、菌叢がオートミール培地の処理面に接するように設置した。その後、オートミール培地を25℃の恒温室に6日間静置した後、菌糸の伸長長さを調査した。その結果を表1に示す。なお、防除価は、下記式にしたがって算出した。下記式において「無処理」とは、被験液としてアセトン1mlを滅菌水で50mlに希釈したものを作製し、培地に滴下処理したことを表す。また、「処理済」とは、設定濃度に希釈調整処理を行った被験液を培地に滴下処理したことを表す。
【0076】
【表1】
【0077】
【数1】
【0078】
表1に示されるように、本発明における含フッ素ピリミジン化合物は、イネいもち病の病原菌に対して防除活性を示し、生物活性を示す化合物として有効であることがわかる。