(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ガスタービンケーシング内における静翼の組付け方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20221017BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20221017BHJP
F01D 25/28 20060101ALI20221017BHJP
F01D 9/04 20060101ALI20221017BHJP
F02C 7/20 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F01D25/00 X
F01D25/28 E
F01D9/04
F02C7/20 Z
(21)【出願番号】P 2022082955
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591130319
【氏名又は名称】東京パワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】寺山 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】高原 弘一
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 25/00
F01D 25/28
F01D 9/04
F02C 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンケーシング内に複数の組付静翼を組み付ける組付け方法であって、
ガイドチェーンに連結されたダミー静翼を前記タービンケーシング内の所定のシュラウドブロック側レールに嵌入し、前記ダミー静翼を押上終点位置まで押し上げるダミー静翼セッティング工程(F)と;
ダミー用油圧ジャッキにより、前記ガイドチェーンに押力を加え、前記ダミー静翼を固定する工程(L)と;
前記複数の組付静翼のうちの第1の組付静翼を、前記ダミー静翼に載置する第1の載置工程(S1)と;
前記第1の組付静翼が、当該第1の組付静翼の自重により前記押上終点位置まで押し下げられるように、前記ダミー用油圧ジャッキによる押力を解除し、前記第1の組付静翼を前記押上終点位置まで押し下げ、前記第1の組付静翼にシールキーの取り付けを行い、前記複数の組付静翼のうちの第2の組付静翼を、前記第1の組付静翼に載置する第2の載置工程(S2)と;
以後、同様に工程(S3)、工程(S4)・・・工程(Sn)を順次繰り返し実行し、前記ダミー用油圧ジャッキの押力を解除しても組付静翼の自重により、当該組付静翼が前記押上終点位置まで押し下げられなかった場合に、静翼用油圧ジャッキにより、当該組付静翼を前記押上終点位置まで押し下げる押下工程(P1)と;
以後、工程(P2)、工程(P3)・・・工程(Pn)を順次繰り返し実行し、前記タービンケーシング内において、組付静翼の組み付けを完了させる工程(P)と;
を備えたことを特徴とする静翼組付け方法。
【請求項2】
前記複数の組付静翼が、前記タービンケーシング内における2段静翼又は3段静翼であることを特徴とする請求項1に記載の静翼組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンケーシング内において、静翼を、着脱可能に組み付け(取付固定)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所においては、発電機の動力源としてガスタービンが用いられている。ガスタービンは、その構造として大きく、圧縮機、燃焼器、タービンに分けることができる。圧縮機は、外部から大量の空気を吸い込み、その吸い込んだ空気を圧縮する。燃焼器は、燃料(軽油、灯油、天然ガスなど)を供給し、圧縮機からの圧縮空気を燃焼させることで、高温高圧ガスを発生させる。タービンは、燃焼器からの高温高圧ガスを外部に吐き出す過程で、回転動力に変換する。
【0003】
また、ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、タービンの外郭となるケーシングを有する。ケーシングは、圧縮機、燃焼器、タービンの全体に渡って一体的に構成された回転軸となるロータを回転可能に支持する。ケーシングは、圧縮機、燃焼器、タービンの各部で軸方向に複数に分割されており、かつ、上下に2分割可能な構成となっている。ケーシングには、タービンの動翼の径方向外側において、わずかな隙間を介して内壁面となるシュラウドという部材が周方向に並んで嵌り合うように組み付けられている。また、ケーシングには、タービンの軸方向の動翼間に配置される静翼が周方向に並んで、隣り合うシュラウド間に嵌り合うことによって組み付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来、以上のようなガスタービンにおいて、シュラウドや静翼の組付け時に、上半分の全てのケーシングを吊り上げて外し、その後、ロータを吊り上げて外した上で、タービンにおけるシュラウド及び静翼を組み付けしていた。具体的には、先ず、ケーシングに設けられた円弧状のシュラウド保持溝に沿ってシュラウドをスライドさせてシュラウド保持溝の端部からシュラウドを順次係入し、スライドさせてシュラウドを組み付け、次に、シュラウドに設けられた円弧状の側面係合溝部(静翼保持溝)に沿って静翼を順次係入し、スライドさせて静翼を組み付けしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスタービンケーシングにおいて、ガスタービンに静翼を組み付けする(係合させる)上で、係合レールが熱変性してしまっていることに関係し、作業者が、ガスタービンケーシング内に潜り込み、バールにて静翼のこじりを解消する必要があったり、また、その際には、静翼を係合レールより取り外し、レール溝の手入れを行う必要があったりした。さらに、ガスタービンケーシング内で、シールキーが脱落すると、静翼を取り外し、シールキーを回収後に再度、組付けを行う必要があった(
図20A及び
図20B)。そのため、工期が長くなる問題、又は人件費がかさむという問題(課題)があった(即ち、本発明の課題は、ガスタービンケーシング内における内外シュラウド間に静翼を組み付ける方法であって、少人数でスムーズに静翼を組み付けることができ、延いては組立てコストの低減化及び組立て工期の短縮化を図ることができる静翼の組付け方法を提供することにある)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討に着手した。従来、静翼の組立時は、シュラウドの側面係合溝部(静翼保持溝)にブロック状の静翼の係合凸部を嵌め入れて係合させていたが、燃焼器出口温度約1500℃となる過酷な条件下で係合凸部の軸方向外幅や側面係合溝部の軸方向内幅が熱変性しても目視により確認することが難しく、とにかく静翼を嵌合してみて、静翼のヘッドをゴム製ハンマーで叩き無理矢理静翼の係合凸部をシュラウドの側面係合溝部に嵌入させていたが、多くの場合スムーズにセッティングできず、その都度、静翼をシュラウドから取り外し、ハンマー等で修正、又はレールの削正をして再度シュラウドの側面係合溝部に静翼の係合凸部を嵌め直して係合させていた。先ず、この点を改善すべく、静翼に設けられた周方向に延在する係合凸部と、シュラウドに設けられた周方向に延在する側面係合溝部(静翼保持溝)とを係合して静翼を組み立てる前に、前記係合凸部の軸方向外幅と側面係合溝部の軸方向内幅がそれぞれ定寸であるかどうかを確認するための静翼取付け治具セットを作製した(特願2022-042336参照)。
【0008】
また、上記静翼取付け治具セットを用いると、シュラウドの側面係合溝部に静翼の係合凸部を順次係合させスムーズにスライドさせることができることを確認した。そこで、スムーズにスライドさせることができることから、組付けに静翼の自重を利用できないかとのヒントを得た。その後、多くの試行錯誤の末に、ダミー静翼をケーシングに固定されたシュラウドに沿って円弧状に並べ、半周に達した上死点で、この上死点に達したダミー静翼の上端に静翼(1)の下端を組み付け、自重により静翼(1)が1個分沈んだ状態で、この静翼(1)の上端に静翼(2)の下端を順次組み付けていくと、少人数でスムーズに静翼を組み付けることができ、延いては組立てコストの低減化及び組立て工期の短縮化を図ることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
タービンケーシング内に複数の組付静翼を組み付ける組付け方法であって、
ガイドチェーンに連結されたダミー静翼を前記タービンケーシング内の所定のシュラウドブロック側レールに嵌入し、前記ダミー静翼を押上終点位置まで押し上げるダミー静翼セッティング工程(F)と;
ダミー用油圧ジャッキにより、前記ガイドチェーンに押力を加え、前記ダミー静翼を固定する工程(L)と;
前記複数の組付静翼のうちの第1の組付静翼を、前記ダミー静翼に載置する第1の載置工程(S1)と;
前記第1の組付静翼が、当該第1の組付静翼の自重により前記押上終点位置まで押し下げられるように、前記ダミー用油圧ジャッキによる押力を解除し、前記第1の組付静翼を前記押上終点位置まで押し下げ、前記第1の組付静翼にシールキーの取り付けを行い、前記複数の組付静翼のうちの第2の組付静翼を、前記第1の組付静翼に載置する第2の載置工程(S2)と;
以後、同様に工程(S3)、工程(S4)・・・工程(Sn)を順次繰り返し実行し、前記ダミー用油圧ジャッキの押力を解除しても組付静翼の自重により、当該組付静翼が前記押上終点位置まで押し下げられなかった場合に、静翼用油圧ジャッキにより、当該組付静翼を前記押上終点位置まで押し下げる押下工程(P1)と;
以後、工程(P2)、工程(P3)・・・工程(Pn)を順次繰り返し実行し、前記タービンケーシング内において、組付静翼の組み付けを完了させる工程(P)と;
を備えたことを特徴とする静翼組付け方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスタービンケーシング内に入ることなく少人数でスムーズに静翼を組み付けることができ、延いては組立てコストの低減化及び組立て工期の短縮化を図ることができる。具体的には、工期に関して、2段静翼の組み付け、3段静翼の組み付けのいずれの場合にも、約1日、工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】組み付け対象とするガスタービンの構成を模式的に示した上半分のケーシングを外した状態の平面図である。
【
図2】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの構成を模式的に示した平面図である。
【
図3】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの構成を模式的に示した斜視図である。
【
図4】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの構成を模式的に示した拡大部分平面図である。
【
図5】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの静翼を外した状態の構成を模式的に示した拡大部分平面図である。
【
図6】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングの構成を模式的に示した平面図である。
【
図7】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングの構成を模式的に示した斜視図である。
【
図8】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットにおける2段静翼の構成を模式的に示した(A)斜視図、(B)矢視V1の図である。
【
図9】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットにおける3段静翼の構成を模式的に示した(A)斜視図、(B)矢視V2の図、(C)矢視V3の図である。
【
図10】組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットにおける2段シュラウドの構成を模式的に示した(A)斜視図、(B)矢視V4の図である。
【
図11】組み付け対象とするガスタービンにおける上半分のタービンケーシングを外した状態の構成を模式的に示した斜視図である。
【
図12】タービンケーシング内に、ダミー静翼をガイドチェーンに取り付けた状態を示した図である。
【
図14】ダミー静翼を上死点まで押し上げ、固定した状態を示す図である。
【
図15】組込静翼をダミー静翼に載置した状態を示す図である。
【
図16】4つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、5つ目の組込静翼を4つ目の組込静翼に載置した状態を示した図である。
【
図17】新規に組み込まれた6つ目の組込静翼を第2の油圧ジャッキにより押し込む様子を示した図である。
【
図18】8つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、9つ目の組込静翼を8つ目の組込静翼に載置し、9つ目の組込静翼が、上死点まで、押し下げられた状態を示している。
【
図19】静翼を、ガスタービンケーシングに組付け(取付固定)する手順を示すフローチャートである。
【
図20】従来の静翼の組付け方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれ、また、以下の実施形態の一部を適宜組み合わせることもできる。
【0013】
ガスタービンの組み付け方法について説明する前に、図面を用いて、ガスタービンの構成について説明する。
図1は、組み付け対象とするガスタービンの構成を模式的に示した上半分のケーシングを外した状態の平面図である。また、
図11は、組み付け対象とするガスタービンにおける上半分のタービンケーシングを外した状態の構成を模式的に示した斜視図である。
【0014】
ガスタービン1は、熱エネルギーを回転動力に変換する熱機関である。ガスタービン1は、圧縮機2、燃焼器3、タービン4を備え、それらを、軸方向に、圧縮機2、燃焼器3、タービン4の順に並んで配列した構成となっている。
【0015】
ガスタービン1は、さらに、圧縮機2、燃焼器3及びタービン4の外郭となるケーシング5(車室)と、圧縮機2、タービン4の全体に渡って一体的に構成された回転軸となるロータ6を備える。ケーシング5は、圧縮機2、燃焼器3及びタービン4の各部の間で軸方向に複数(圧縮機ケーシング11、圧縮機吐出ケーシング15、タービンケーシング19、排気ケーシング28)に分割されており、かつ、上下に2分割可能な構成となっている。また、ロータ6は、軸受部7、8を介して、ケーシング5及び吸気口10に回転可能に支持されている。ロータ6は、ロータ6と同軸上にある不図示の発電機又は蒸気タービンと連結されている。
【0016】
圧縮機2は、空気を取り込む吸気口10を有し、圧縮機ケーシング11内において、ロータ6に取付固定されている、複数の動翼12と圧縮機ケーシング11に取付固定されている、複数の静翼13とが空気の流れる方向に対して(即ち、軸方向に対して)交互に、配設されている。なお、圧縮機2では、圧縮機ケーシング11の内壁とロータ6の外周面との径方向の間の空間を燃焼器3に近づくにつれ小さくしており、外部から吸気口10に取り込まれた空気を、動翼12の回転により圧縮することで高温高圧の圧縮空気としている。
【0017】
燃焼器3は、圧縮機吐出ケーシング15内で、燃料ノズル16から燃料を供給し、不図示の点火プラグで点火して圧縮機2からの圧縮空気を燃焼させることで、高温高圧ガスを発生させる。高温高圧ガスは、タービン4に供給される。
【0018】
タービン4は、タービンケーシング19内に、1段静翼17、1段動翼20、2段静翼24、2段動翼21、3段静翼26、3段動翼22を各々、複数備え、また、それらは、燃焼ガスの流れる方向に対して(即ち、軸方向に対して)、複数の1段静翼17、複数の1段動翼20、複数の2段静翼24、複数の2段動翼21、複数の3段静翼26、複数の3段動翼22の順に配設される。
【0019】
1段動翼20、2段動翼21及び3段動翼22は、ロータ6に取付固定され、また、1段動翼20、2段動翼21及び3段動翼22の各々の外周には、1段動翼20、2段動翼21及び3段動翼22と間隔をおいて1段シュラウドブロック23、2段シュラウドブロック25及び3段シュラウドブロック27が配されている。1段シュラウドブロック23、2段シュラウドブロック25及び3段シュラウドブロック27は、各々、1段動翼20、2段動翼21及び3段動翼22の外壁面となる。1段シュラウドブロック23、2段シュラウドブロック25及び3段シュラウドブロック27は、タービンケーシング19に着脱可能に組付け(取付固定)されている。
【0020】
1段静翼17は、
図11に示されるように、燃焼器3の燃焼筒3aの高温高圧ガスの出口と1段動翼20との軸方向の間に配され、燃焼器3の高温高圧ガスの出口に固定されている。1段静翼17は、燃焼器3からの高温高圧ガスを整流して1段動翼20に送り出す。2段静翼24は、軸方向において、動翼20と動翼21との間に配され、1段シュラウドブロック23及び2段シュラウドブロック25を介して、タービンケーシング19に着脱可能に組付け(取付固定)される。3段静翼26は、軸方向において、2段シュラウドブロック25及び3段シュラウドブロック27との間に配され、2段シュラウドブロック25及び3段シュラウドブロック27を介して、タービンケーシング19に着脱可能に組付け(取付固定)される。
【0021】
1段シュラウドブロック23、2段シュラウドブロック25及び3段シュラウドブロック27、並びに、2段静翼24及び3段静翼26は、上下のタービンケーシング19の各々に取り付けられる。タービン4では、タービンケーシング19とロータ6との径方向の間の空間が排気口29に近づくにつれ大きくなっている。
【0022】
タービン4は、燃焼器3からの高温高圧ガスを1段動翼20、2段動翼21及び3段動翼22に作用させて排気ケーシング28の排気口29から外部に吐き出す過程で、ロータ6の回転動力に変換する。ロータ6の回転動力は、主に発電機の動力源になり、また、その一部は、圧縮機2での空気の圧縮の動力源になる。
【0023】
なお、ロータ6には、圧縮機2において、周方向に間隔をおいて同じ大きさの動翼12が複数固定されており、かつ、軸方向に間隔をおいて異なる大きさの動翼12が複数段固定されている。また、ロータ6には、タービン4においても、周方向に間隔をおいて同じ大きさの動翼20、21、22が複数固定されており、かつ、軸方向に間隔をおいて異なる大きさの動翼20、21、22が複数段固定されている。
【0024】
次に、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの詳細について図面を用いて説明する。
図2は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの構成を模式的に示した平面図である。
図3は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの構成を模式的に示した斜視図である。
図4は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの構成を模式的に示した拡大部分平面図である。
図5は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットの静翼を外した状態の構成を模式的に示した拡大部分平面図である。
【0025】
図6は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングの構成を模式的に示した平面図である。
図7は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングの構成を模式的に示した斜視図である。
【0026】
図8は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットにおける2段静翼の構成を模式的に示した(A)斜視図、(B)矢視V1の図である。
図9は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットにおける3段静翼の構成を模式的に示した(A)斜視図、(B)矢視V2の図、(C)矢視V3の図である。
図10は、組み付け対象とするガスタービンの下半分のタービンケーシングユニットにおける2段シュラウドブロックの構成を模式的に示した(A)斜視図、(B)矢視V4の図である。
【0027】
なお、
図3では、静翼24、26の翼部の図示を省略している。また、
図6、
図7では凸部19b、19dのピン穴部(
図5の19f、19g)の図示を省略している。また、説明中に周方向、軸方向及び径方向とあるときは、タービンケーシング(
図1の19)の構成における周方向、軸方向及び径方向の各々に対応する方向をいうものとする。
【0028】
タービンケーシング19は、
図6、
図7に示されるように、タービン4における半円筒状の部材であり、上下が組み合わさって円筒状となる。また、タービンケーシング19は、内周面において、燃焼器3側から順に間隔をおいて、係合レール部19a、凸部19b、係合レール部19c、凸部19d、及び、係合レール部19eを有する。
【0029】
係合レール部19aは、
図5に示されるように、1段シュラウドブロック23と係合するためのレール状の部分である。係合レール部19aは、タービンケーシング19の内壁面において、径方向内側に突出し、かつ、周方向に連続している(
図6、
図7参照)。また、係合レール部19aは、1段シュラウドブロック23の外周面係合溝部23aと、周方向移動可能、径方向移動不能、かつ、軸方向移動不能に係合している。
【0030】
係合レール部19aの断面形状は、例えば、T字等で形成することができ、係合レール部19aには、複数の1段シュラウドブロック23が周方向に並んで装着される。係合レール部19aは、1段シュラウドブロック23の外周面係合溝部23aとなる。
【0031】
凸部19bは、
図4に示されるように、2段静翼24をタービンケーシング19に所定の位置で固定するための凸状の部分である。凸部19bは、タービンケーシング19の内壁面において、径方向内側に突出し、かつ、周方向に連続している(
図6、
図7参照)。また、凸部19bは、タービンケーシング19を貫通した複数のピン穴部19fを有する(
図5参照)。ピン穴部19fは、周方向に所定の間隔をおいて配され、ピン穴部19fには、
図4に示されるように、固定ピン31の先端部が径方向内側に突出するように、固定ピン31が挿入される。固定ピン31の先端部は、1段シュラウドブロック23と2段シュラウドブロック25との間に装着された2段静翼24の固定ピン受部24gと係合している。
【0032】
係合レール部19cは、
図5に示されるように、2段シュラウドブロック25と係合するためのレール状の部分である。係合レール部19cは、タービンケーシング19の内壁面において、径方向内側に突出し、かつ、周方向に連続している(
図6、
図7参照)。また、係合レール部19cは、2段シュラウドブロック25の外周面係合溝部25aと、周方向移動可能、径方向移動不能、かつ、軸方向移動不能に係合している。
【0033】
係合レール部19cの断面形状は、例えば、T字等で形成することができ、係合レール部19cには、複数の2段シュラウドブロック25が周方向に並んで装着される。係合レール部19cは、2段シュラウドブロック25の外周面係合溝部25aとなる。
【0034】
凸部19dは、
図4に示されるように、3段静翼26をタービンケーシング19に所定の位置で固定するための凸状の部分である。凸部19dは、タービンケーシング19の内壁面において、径方向内側に突出し、かつ、周方向に連続している(
図6、
図7参照)。また、凸部19dは、タービンケーシング19を貫通した複数のピン穴部19gを有する(
図5参照)。ピン穴部19gは、周方向に所定の間隔をおいて配され、ピン穴部19gには、
図4に示されるように、固定ピン32の先端部が径方向内側に突出するように、固定ピン32が挿入されている。固定ピン32の先端部は、2段シュラウドブロック25と3段シュラウドブロック27との間に装着された3段静翼26の固定ピン受部26gと係合している。
【0035】
係合レール部19eは、
図5に示されるように、3段シュラウドブロック27と係合するためのレール状の部分である。係合レール部19eは、タービンケーシング19の内壁面において、径方向内側に突出し、かつ、周方向に連続している(
図6、
図7参照)。また、係合レール部19eは、3段シュラウドブロック27の外周面係合溝部27aと、周方向移動可能、径方向移動不能、かつ、軸方向移動不能に係合している。
【0036】
係合レール部19eの断面形状は、例えば、T字等で形成することができ、係合レール部19eには、複数の3段シュラウドブロック27が周方向に並んで装着されている。係合レール部19eは、3段シュラウドブロック27の外周面係合溝部27aとなる。
【0037】
1段シュラウドブロック23は、ロータ6の1段動翼20の径方向外側の壁面となるブロック状の部材である(
図1参照)。1段シュラウドブロック23は、セグメント構造(即ち、複数に分割された構造)により構成され、隣り合う他の1段シュラウドブロック23と嵌り合って配列することで円周を形成する(
図2-
図5参照)。1段シュラウドブロック23は、
図1に示されるように、1段動翼20とわずかな隙間を介して配され、径方向外側の外周面において、タービンケーシング19の係合レール部19aと係合する溝状であって、周方向に連続した外周面係合溝部23aを有する。外周面係合溝部23aは、係合レール部19aと、周方向移動可能、径方向移動不能、かつ、軸方向移動不能に係合している。
【0038】
外周面係合溝部23aは、タービンケーシング19の係合レール部19aの被ガイド部となる。1段シュラウドブロック23は、タービンケーシング19に形成されたピン穴部(不図示)に挿入された固定ピン(不図示)と係合することによって、係合レール部19aの所定の位置に固定される。1段シュラウドブロック23は、軸方向の排気口(
図1の29)側の面において、2段静翼24の係合凸部24bと係合する溝状であって、周方向に連続した側面係合溝部23bを有する。側面係合溝部23bは、係合凸部24bと、周方向移動可能、かつ、径方向移動不能に係合している。側面係合溝部23bは、2段静翼24の係合凸部24b、及び、静翼用連結治具ユニット44のスライドプレート45bのガイド部となる。1段シュラウドブロック23は、軸方向の燃焼器3側の面において、側面穴部(不図示)を有する。
【0039】
2段静翼24は、1段動翼20からのガスを整流して2段動翼21に送り出す静止した翼である(
図1参照)。2段静翼24は、セグメント構造(即ち、複数に分割された構造)により構成され、隣り合う他の2段静翼24と配列することで円柱を形成する(
図2-
図4参照)。
【0040】
2段静翼24は、1段動翼20と2段動翼21との軸方向の間に配され(
図1参照)、また、
図8に示されるように、アウターシェル24aと、係合凸部24b、24cと、翼部24dと、インナーシェル24eと、ラビリンス24fと、固定ピン受部24gと、アウターシェルカバー穴部24hと、空気取入管部24iとを有する。
【0041】
アウターシェル24aは、径方向外側の板状の外郭である。アウターシェル24aは、軸方向両側に係合凸部24b、24cを有する。係合凸部24bは、1段シュラウドブロック23の側面係合溝部23bと周方向移動可能かつ径方向移動不能に係合する凸部であり、1段シュラウドブロック23の側面係合溝部23bの被ガイド部となる。また、係合凸部24cは、2段シュラウドブロック25の側面係合溝部25bと周方向移動可能かつ径方向移動不能に係合する凸部であり、2段シュラウドブロック25の側面係合溝部25bの被ガイド部となる。
【0042】
翼部24dは、アウターシェル24aとインナーシェル24eとの間に複数、取り付けられた翼状の部分である。なお、
図8では、翼状の部分が2つの例を示している。
図8において、翼部24dの内側は空洞となっている。インナーシェル24eは、径方向内側の板状の内郭である。
【0043】
ラビリンス24fは、インナーシェル24eとロータ6との間の空間の軸方向のガスの流れを規制するように、インナーシェル24eに取り付けられた箱状の部分であり、また、周方向両側が開口しており、内部が空洞となっている。ラビリンス24fは、径方向内側の面でロータ6を回転可能に支持する。
【0044】
固定ピン受部24gは、固定ピン31を受ける部分であり、アウターシェル24aの径方向外側の面に突出するように取り付けられる。固定ピン受部24gがタービンケーシング19の凸部19bに形成されたピン穴部19fに挿入された固定ピン31と係合することによって、2段静翼24は、周方向の移動が規制され、凸部19b上の所定の位置に固定される。アウターシェルカバー穴部24hは、アウターシェル24aのカバーに形成された穴部であり、インナーシェル24eの径方向内側の面、及び、ラビリンス24fの内面の軸方向の片側の面に取り付けられる。
【0045】
2段シュラウドブロック25は、ロータ6の2段動翼21の径方向外側の壁面となるブロック状の部材である(
図1、
図10参照)。2段シュラウドブロック25は、セグメント構造(即ち、複数に分割された構造)により構成され、隣り合う他の2段シュラウドブロック25と嵌り合って配列することで円周を形成する(
図2-
図5参照)。2段シュラウドブロック25は、
図1に示されるように、2段動翼21とわずかな隙間を介して配され、径方向外側の外周面において、タービンケーシング19の係合レール部19cと係合する溝状であって、周方向に連続した外周面係合溝部25aを有する。外周面係合溝部25aは、係合レール部19cと、周方向移動可能、径方向移動不能、かつ、軸方向移動不能に係合している。
【0046】
外周面係合溝部25aは、タービンケーシング19の係合レール部19cの被ガイド部となる。2段シュラウドブロック25は、タービンケーシング19に形成されたピン穴部(不図示)に挿入された固定ピン(不図示)と係合することによって、係合レール部19cの所定の位置に固定される。2段シュラウドブロック25は、軸方向の燃焼器(
図1の3)側の面において、2段静翼24の係合凸部24cと係合する溝状であって、周方向に連続した側面係合溝部25bを有する。側面係合溝部25bは、係合凸部24cと、周方向移動可能、かつ、径方向移動不能に係合している。側面係合溝部25bは、2段静翼24の係合凸部24c、及び、静翼用連結治具ユニット44のスライドプレート45dのガイド部となる。2段シュラウドブロック25は、軸方向の排気口29側の面において、3段静翼26の係合凸部26bと係合する溝状の側面係合溝部25cを有する。
【0047】
側面係合溝部25cは、周方向に連続しており、係合凸部26bと、周方向移動可能、かつ、径方向移動不能に係合している。側面係合溝部25cは、3段静翼26の係合凸部26bとなる。また、2段シュラウドブロック25は、軸方向の燃焼器3側の面において、側面係合溝部25bよりも径方向外側の部分に側面穴部25dを有する。
【0048】
3段静翼26は、2段動翼21からのガスを整流して3段動翼22に送り出す静止した翼である(
図1参照)。3段静翼26は、セグメント構造(即ち、複数に分割された構造)により構成され、隣り合う他の3段静翼26と配列することで円周を形成する(
図2-
図4参照)。
【0049】
3段静翼26は、2段動翼21と3段動翼22との軸方向の間に配され(
図1参照)、また、
図9に示されるように、アウターシェル26aと、係合凸部26b、26cと、翼部26dと、インナーシェル26eと、ラビリンス26fと、固定ピン受部26gと、翼内空洞穴部26h、26iとを有する。
【0050】
アウターシェル26aは、径方向外側の板状の外郭である。アウターシェル26aは、軸方向両側に係合凸部26b、26cを有する。係合凸部26bは、2段シュラウドブロック25の側面係合溝部25cと周方向移動可能かつ径方向移動不能に係合する凸部であり、2段シュラウドブロック25の側面係合溝部25cの被ガイド部となる。また、係合凸部26cは、3段シュラウドブロック27の側面係合溝部27bと周方向移動可能かつ径方向移動不能に係合する凸部であり、3段シュラウドブロック27の側面係合溝部27bの被ガイド部となる。
【0051】
翼部26dは、アウターシェル26aとインナーシェル26eとの間に複数取り付けられた翼状の部分である。なお、
図9では、翼状の部分が3つの例を示している。
図9において、翼部26dの内側は空洞となっている。インナーシェル26eは、径方向内側の板状の内郭である。
【0052】
ラビリンス26fは、インナーシェル26eとロータ6との間の空間の軸方向のガスの流れを規制するように、インナーシェル26eに取り付けられた箱状の部分であり、また、周方向両側が開口しており、内部が空洞となっている。ラビリンス26fは、径方向内側の面でロータ6を回転可能に支持する。
【0053】
固定ピン受部26gは、固定ピン32を受ける部分であり、アウターシェル26aの径方向外側の面に突出するように取り付けられる。固定ピン受部26gがタービンケーシング19の凸部19dに形成されたピン穴部19gに挿入された固定ピン32と係合することによって、3段静翼26は、周方向の移動が規制され、凸部19d上の所定の位置に固定される。翼内空洞穴部26hは、ラビリンス26fの周方向の開口から見えるインナーシェル26eにおける、翼部26dの内側の空洞に通ずる穴部である。また、翼内空洞穴部26iは、アウターシェル26aにおける、翼部26dの内側の空洞に通ずる穴部である。
【0054】
3段シュラウドブロック27は、ロータ6の3段動翼22の径方向外側の壁面となるブロック状の部材である(
図1参照)。3段シュラウドブロック27は、セグメント構造(即ち、複数に分割された構造)により構成され、隣り合う他の3段シュラウドブロック27と嵌り合って配列することで円周を形成する(
図2-
図5参照)。3段シュラウドブロック27は、
図1に示されるように、3段動翼22とわずかな隙間を介して配され、径方向外側の外周面において、タービンケーシング19の係合レール部19eと係合する溝状であって、周方向に連続した外周面係合溝部27aを有する。外周面係合溝部27aは、係合レール部19eと、周方向移動可能、径方向移動不能、かつ、軸方向移動不能に係合している。
【0055】
外周面係合溝部27aは、タービンケーシング19の係合レール部19eの被ガイド部となる。3段シュラウドブロック27は、タービンケーシング19に形成されたピン穴部(不図示)に挿入された固定ピン(不図示)と係合することによって、係合レール部19eの所定の位置に固定される。3段シュラウドブロック27は、軸方向の燃焼器(
図1の3)側の面において、3段静翼26の係合凸部26cと係合する溝状であって、周方向に連続した側面係合溝部27bを有する。側面係合溝部27bは、係合凸部26bと、周方向移動可能、かつ、径方向移動不能に係合している。側面係合溝部27bは、3段静翼26の係合凸部26cとなる。3段シュラウドブロック27は、軸方向のタービンケーシング4側の面において、側面穴部(不図示)を有する。
【0056】
以上、図面を用いて、ガスタービンの構成について説明したが、以降では、説明の便宜上、ガスタービンの構成(図面)を簡略化した上で、ガスタービンの組み付け方法について説明する。より詳細には、静翼を、ガスタービンケーシングに着脱可能に組付け(取付固定)する方法について説明する。また、ガスタービンの組み付けは、上述のように、組み付け対象とするガスタービンの上半分のケーシングを外した状態で行われる。
【0057】
図12は、タービンケーシング19内に、実際に組付けする静翼とは異なるダミーの静翼(以下、「ダミー静翼」と称する)をガイドチェーンに取り付けた状態を示している。なお、ガイドチェーンと、ダミー静翼は、所定の連結治具ユニットにより連結された上で、シュラウドブロックとシュラウドブロックの間に配される。
【0058】
図13は、連結治具ユニットの詳細を示す図である。
図13に示されるように、ダミー静翼とダミー静翼が乗る板とは、ダミー静翼の面とダミー静翼が乗る板(ガイドチェーンに固定される板)の面とを重ね合わせ、所定の連結治具により連結させることで固定される。より詳細には、ダミー静翼が乗る板とダミー静翼はボルト等の連結治具で固定され、また、ダミー静翼が乗る板とガイドチェーンについてはガイドチェーン同士の連結方法と同様に連結される。加えて、ダミー静翼が乗る板には固定用の棒が設置され、その固定用の棒を、
図13に示されるように、ダミー静翼に形成させた貫通穴に貫通させ、さらに、その貫通させた固定用の棒を所定の固定板にネジ止めし、その固定板とダミー静翼が乗る板とで、ダミー静翼を挟むようにして、ダミー静翼とガイドチェーンを固定している。
【0059】
図14は、ダミー静翼がガイドチェーンに取り付けられた後に、ダミー静翼を上死点まで押し上げ、第1の油圧ジャッキによりガイドチェーンに押力を加え、固定した状態を示している。なお、ダミー静翼が上死点まで押し上げられた状態を、静翼の組付準備が完了した状態として定義する。
【0060】
図15は、組み込み対象とする静翼(以下、「組込静翼」と称する)の組付準備が完了した後に、組込静翼をダミー静翼に載置した状態を示している。
図15に示される状態では、
図15では、第1の油圧ジャッキによりガイドチェーンが押される押力と、ダミー静翼の自重の均衡が図られた状態より、組込静翼をダミー静翼に載置することによる、組込静翼自体の重さ(自重)により、ダミー静翼を下方に押し下げられるようにしている。なお、第1の油圧ジャッキは、
図14(
図15)の左上に図示されるダミー用油圧ジャッキとして示される。さらに、1つ目の組込静翼が、上死点まで、ダミー静翼及びに1つ目の組込静翼の自重により押し下げられるように、第1の油圧ジャッキによりガイドチェーンを押す押力を徐々に解除する。
【0061】
そして、1つ目の組込静翼が、上死点まで、押し下げられると、1つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、2つ目の組込静翼を1つ目の組込静翼に載置することで、ダミー静翼並びに2つ目の組込静翼及び1つ目の組込静翼の自重により、ダミー静翼並びに1つ目及び2つ目の静翼を全体として下方に押し下げられるようにしている。さらに、2つ目の組込静翼が、上死点まで、ダミー静翼並びに1つ目及び2つ目の静翼の自重により押し下げられるように、第1の油圧ジャッキによりガイドチェーンを押す押力を徐々に解除する。
【0062】
この2つ目の組込静翼に対して実施した作業を、3つ目、4つ目の組込静翼に対しても、同様に、連続して実施する。
図16は、4つ目の組込静翼が、上死点まで、押し下げられた状態において、4つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、5つ目の組込静翼を4つ目の組込静翼に載置した状態を示している。そして、ダミー静翼及び1つ目から5つ目までの組込静翼の自重と、第1の油圧ジャッキによる押力の解除により、ダミー静翼及び1つ目から5つ目までの組込静翼を全体として押し下げられ、5つ目の組込静翼が、上死点に到達すると、これまでの作業と同様に、5つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、6つ目の組込静翼を5つ目の組込静翼に載置する。
【0063】
しかしながら、6つ目の組込静翼を載置した状態では、ダミー静翼が押し上げられることに関係して、第1の油圧ジャッキの押力を無くしても、6つ目の組込静翼と、それまでに組み込まれたダミー静翼と1つ目から5つ目までの組込静翼との自重により、組み込まれたダミー静翼と1つ目から6つ目までの組込静翼を全体として押し下げることができなくなる。そこで、
図17に示されるように、新規に組み込まれた6つ目の組込静翼を第2の油圧ジャッキにより押し込む。なお、第2の油圧ジャッキは、
図17の右上に図示される静翼用油圧ジャッキとして示される。
【0064】
この6つ目の組込静翼に対して実施した作業を、7つ目から9つ目の組込静翼に対しても、同様に、連続して実施する。
図18は、8つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、9つ目の組込静翼を8つ目の組込静翼に載置し、9つ目の組込静翼が、上死点まで、押し下げられた状態を示している。以上、
図12から
図18に示されるように、ガスタービンにおける下半分のタービンケーシングにおいて、組込静翼が、組付け(取付固定)される。なお、ガスタービンにおける上半分のタービンケーシングにおいても、同様の方法で組み付けることができる。
【0065】
次に、
図19のフローチャートを用いて、静翼を、ガスタービンケーシングに着脱可能に組付け(取付固定)する手順について説明する。以下において、フローチャートの説明における記号「S」は、ステップを表すものとする。即ち、ここでは、フローチャートの各処理ステップであるステップS1~ステップS11をS1~S11として略記する。
【0066】
S1において、所定の連結治具ユニットにより、ダミー静翼とガイドチェーンを連結する。ガイドチェーンにダミー静翼を連結すると、ダミー静翼を下半分のタービンケーシング内のシュラウドブロックとシュラウドブロックの間に配する(S2)。その後、ガイドチェーンを押し込み(押し上げ)、第1の油圧ジャッキによりガイドチェーンに押力を加え、固定する(S3)。これにより、静翼の組付準備が完了した状態となる。なお、第1の油圧ジャッキは、上述のように、
図14の左上に図示されるダミー用油圧ジャッキとして示される。
【0067】
静翼の組付け準備が完了すると、S4において、1つ目の組込静翼をダミー静翼に載置する。S5において、1つ目の組込静翼が所定の位置まで押し下げられるように、第1の油圧ジャッキにより押し下げる力(押力)を解除する。S6において、1つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、2つ目の組込静翼を1つ目の組込静翼に載置する。
【0068】
S7において、第1の油圧ジャッキによる押力が「0」であるか否かを確認する。2つ目の組込静翼を1つ目の組込静翼に載置した段階では、第1の油圧ジャッキによる押力は「0」ではないことから(S7 Yes)、S8に作業を進める。S8において、2つ目の組込静翼が所定の位置まで押し下げられるように、第1の油圧ジャッキによる押力を徐々に解除する。
【0069】
S9において、第1の油圧ジャッキによる押力の解除により、2つ目の組込静翼が所定の位置まで押し下げられたか否かを確認する。この場合、2つ目の組込静翼は所定の位置まで押し下げられるので、作業をS6に戻す。S6では、2つ目の組込静翼にシールキーを取り付け、3つ目の組込静翼を2つ目の組込静翼に載置する。続くS7において、第1の油圧ジャッキによる押力が「0」であるか否かを確認する。3つ目の組込静翼を2つ目の組込静翼に載置した段階では、第1の油圧ジャッキによる押力は「0」ではないことから(S7 Yes)、S8に作業を進められ、3つ目の組込静翼が所定の位置まで押し下げられるように、第1の油圧ジャッキによる押力を徐々に解除する。
【0070】
S9において、第1の油圧ジャッキによる押力の解除により、3つ目の組込静翼が所定の位置まで押し下げられたか否かを確認する。この場合、3つ目の組込静翼は、2つ目の組込静翼と同様に所定の位置まで押し下げられるので、作業をS6に戻す。こちらのS6からS9までの作業を、第1の油圧ジャッキによる押力を解除しても、n+1つ目の組込静翼が所定の位置まで押し下げられなくなるまで、繰り返し実施する。
【0071】
そして、S9において、n+1つ目の組込静翼が所定の位置まで押し下げられないことが確認されると、S10において、第2の油圧ジャッキにより、n+1つ目の組込静翼を所定の位置まで押し込む(押し下げる)。なお、第2の油圧ジャッキは、上述のように、
図17の右上に図示される静翼用油圧ジャッキとして示される。S11において、下半分のタービンケーシング内において、すべての組込静翼の組付けが完了したか否かを確認する。すべての組込静翼の組付けが完了していなければ、作業をS6に返し、すべての組込静翼の組付けが完了していれば、タービンケーシングに組込静翼を組付け(取付固定)する。
【0072】
以上、説明したように、本発明によれば、ガスタービンケーシング内に入ることなく少人数でスムーズに静翼を組み付けることができ、延いては組立てコストの低減化及び組立て工期の短縮化を図ることができる。なお、上述では、ガイドチェーンに連結する静翼を、ダミー静翼と定義し、組付静翼(組付対象とする静翼)とは異なる静翼として説明したが、組付対象とする静翼をダミー静翼として用いることも当然にできる。
【符号の説明】
【0073】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
3a 燃焼筒
4 タービン
5 ケーシング
6 ロータ
7、8 軸受部
10 吸気口
11 圧縮機ケーシング
12 動翼
13 静翼
15 燃焼器ケーシング
16 インジケータ
17 1段静翼
19 タービンケーシング
19a、19c、19e 係合レール部(ガイド部)
19b、19d 凸部
19f、19g ピン穴部
20 1段動翼
21 2段動翼
22 3段動翼
23 1段シュラウドブロック
23a 外周面係合溝部
23b 側面係合溝部(ガイド部)
24 2段静翼
24a アウターシェル
24b、24c 係合凸部
24d 翼部
24e インナーシェル
24f ラビリンス
24g 固定ピン受部
24h アウターシェルカバー穴部
24i 空気取入管部
25 2段シュラウドブロック
25a 外周面係合溝部
25b、25c 側面係合溝部(ガイド部)
25d 側面穴部
26 3段静翼
26a アウターシェル
26b、26c 係合凸部
26d 翼部
26e インナーシェル
26f ラビリンス
26g 固定ピン受部
26h 翼内空洞穴部
26i 翼内空洞穴部
27 3段シュラウドブロック
27a 外周面係合溝部
27b 側面係合溝部(ガイド部)
28 排気ケーシング
29 排気口
【要約】
【課題】ガスタービンの組立てコストの低減化及び組立て工期の短縮化を図る。
【解決手段】
ガイドチェーンに連結されたダミー静翼をシュラウドブロック側レールに嵌入し、ダミー静翼を押上終点位置まで押し上げる工程と、ダミー静翼を固定する工程と、複数の組付静翼のうちの第1の組付静翼をダミー静翼に載置する工程(S1)と、第1の組付静翼を押上終点位置まで押し下げ、シールキーの取り付けを行い、複数の組付静翼のうちの第2の組付静翼を第1の組付静翼に載置する工程(S2)と、同様に工程(S3)・・工程(Sn)を繰り返し実行し、ダミー用油圧ジャッキの押力を解除しても組付静翼の自重により、組付静翼が押上終点位置まで押し下げられなかった場合に、組付静翼を押上終点位置まで押し下げる工程(P1)と、以後、工程(P2)・・工程(Pn)を繰り返し実行し、組付静翼の組み付けを完了させる工程(P)を備える。
【選択図】
図19