(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20221017BHJP
【FI】
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2022127352
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2022069659の分割
【原出願日】2022-04-20
【審査請求日】2022-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】小林 日登志
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-56385(JP,A)
【文献】特開2009-259184(JP,A)
【文献】特開2006-296089(JP,A)
【文献】特開2021-152883(JP,A)
【文献】特開2005-222451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能であり、
前記制御部によって、
製造物の注文情報を取得することと、
前記注文情報から、前記製造物を製造するために必要な必要電力量の少なくとも一部を決定することと、
製造に使用される電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明するための、購入済みの証明情報を前記記憶部から読み出すことと、
前記必要電力量の少なくとも一部が、前記証明情報によって証明される電力量の範囲内か否かを判定することと、
を含む情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記製造物は鉄鋼関連製造物を含む、情報処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記製造物は電気炉で製造される、情報処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
前記必要電力量の少なくとも一部は、前記必要電力量の全てを含む、情報処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記情報処理装置はネットワークを介して他の情報処理装置と通信可能であり、
前記必要電力量の少なくとも一部が、前記証明情報によって証明される電力量の範囲内にあると判定すると、前記製造物の製造を開始するよう前記他の情報処理装置に通知することを含む、情報処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記必要電力量の少なくとも一部が、前記証明情報によって証明される電力量の範囲内にないと判定すると、ネットワークを介して追加の証明情報を購入することを含む、情報処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理方法において、
前記必要電力量の少なくとも一部が、前記証明情報によって証明される電力量の範囲内にないと判定すると、追加の証明情報を購入するための次回のオークションの開催日時よりも前記製造物の納期が前であるか否かを判定することと、
前記次回のオークションの開催日時よりも前記納期が前であると判定すると、前記ネットワークを介して前記追加の証明情報を業者から購入することと、
を含む情報処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の情報処理方法において、
前記必要電力量の少なくとも一部が、前記証明情報によって証明される電力量の範囲内にないと判定すると、追加の証明情報を購入するための次回のオークションの開催日時よりも前記製造物の納期が前であるか否かを判定することと、
前記次回のオークションの開催日時よりも前記納期が前ではないと判定すると、前記次回のオークションに参加して前記追加の証明情報を購入することと、
を含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ等の画像形成装置で使用されるサプライ品の使用量が所定量に達したときに、追加のサプライ品の発注及び発送を指示する発注システムが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の発注システムで発注される商品は、画像形成装置で使用されるサプライ品に限定されている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、カーボンニュートラルな鉄鋼関連製造物又はカーボンニュートラルな廃棄物処理の発注を支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能であり、
前記制御部によって、
製造物の注文情報を取得することと、
前記注文情報から、前記製造物を製造するために必要な必要電力量の少なくとも一部を決定することと、
製造に使用される電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明するための、購入済みの証明情報を前記記憶部から読み出すことと、
前記必要電力量の少なくとも一部が、前記証明情報によって証明される電力量の範囲内か否かを判定することと、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、カーボンニュートラルな鉄鋼関連製造物又はカーボンニュートラルな廃棄物処理の発注を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】注文情報DB(database)のデータ構造を示す図である。
【
図7】情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示される情報処理装置1は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバなどのコンピュータである。代替例として情報処理装置1は、携帯電話機、スマートフォン、ウェアラブル機器、若しくはタブレットなどのモバイル機器であってよい。別の代替例として情報処理装置1は、PCなどの汎用機器、又は専用機器であってもよい。「PC」は、personal computerの略語である。
【0010】
情報処理装置1は、ネットワークを介して、他の1以上の情報処理装置と互いに通信可能である。ネットワークは有線又は無線のネットワークを含み、例えば移動体通信網又はインターネットを含む。
【0011】
情報処理装置1の内部構成が詳細に説明される。情報処理装置1は、制御部11と通信部12と記憶部13とを含む。情報処理装置1の各構成要素は、例えば専用線を介して互いに通信可能に接続される。
【0012】
制御部11は例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)を含む1つ以上の汎用プロセッサを含む。制御部11は、特定の処理に特化した1つ以上の専用プロセッサを含んでよい。制御部11は、プロセッサを含む代わりに、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってよい。制御部11は、ECU(Electronic Control Unit)を含んでもよい。制御部11は通信部12を介して、任意の情報を送信及び受信する。
【0013】
通信部12は、ネットワークNWに接続するための、1つ以上の有線又は無線LAN(Local Area Network)規格に対応する通信モジュールを含む。通信部12は、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、又は5G(5th Generation)を含む1つ以上の移動体通信規格に対応するモジュールを含んでよい。通信部12は、Bluetooth(登録商標)、AirDrop(登録商標)、IrDA、ZigBee(登録商標)、Felica(登録商標)、又はRFIDを含む1つ以上の近距離通信の規格又は仕様に対応する通信モジュール等を含んでよい。通信部12は、ネットワークNWを介して任意の情報を送信及び受信する。
【0014】
記憶部13は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれるが、これらに限られない。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。ROMは、例えば、EEPROMである。記憶部13は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部13は、制御部11によって分析又は処理された結果の情報を記憶してよい。記憶部13は、情報処理装置1の動作又は制御に関する各種情報等を記憶してよい。記憶部13は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェア等を記憶してよい。記憶部13は情報処理装置1の外部に設けられて、情報処理装置1からアクセスされてよい。記憶部13は、注文情報DBを含む。
【0015】
以下、情報処理装置1による情報処理方法が詳細に説明される。
【0016】
情報処理装置1の制御部11は、鉄鋼関連製造物の注文情報を取得する。鉄鋼関連製造物は、例えばスラグ又は鋼材製品を含むが、これに限られない。注文情報はネットワーク及び通信部12を介して他の情報処理装置から受信されることにより取得されてよいし、情報処理装置1に手動で入力されることにより取得されてよい。注文情報は例えば、JIS規格、数量、又は納期の情報を含む。
【0017】
制御部11は、鉄鋼関連製造物の製造規格を決定する。鉄鋼関連製造物が鋼材製品である場合、製造規格は鋼種、製品規格、製造ルート、製品重量等の情報を含んでよい。鉄鋼関連製造物がスラグである場合、製造規格は製品規格、製造ルート、製品重量等の情報を含んでよい。
【0018】
制御部11は、決定された製造規格から、鉄鋼関連製造物を製造するための電気炉EFの出鋼量とスラグ量と圧延量とを決定する。
図2を参照して電気炉EFが説明される。
【0019】
電気炉EFは、電極ELに高電圧をかけて電気アークEAを発生させる。電気炉EFは、電極ELに高電圧をかけてアーク熱を発生させ、アーク熱で例えば鉄スクラップを溶解する。溶解によって生成された溶鋼MSは、成分調整、鋳造及び圧延等の過程を経た後、鋼材製品へ加工される。鋼材製品は例えば次の製品のうち少なくとも1つであってよいがこれに限られない。
・異形棒鋼
・平鋼
・中小形形鋼
・H形鋼(大形形鋼、鋼矢板)
【0020】
代替例として又は追加例として電気炉EFは、電気アークEAによる熱エネルギーで電気炉EF内のスラグ原料を高温で溶解及び無害化処理する。アーク温度は約4,000℃である。スラグ原料は約1,300℃乃至1,600℃で溶融される。生成されたスラグSGは溶鋼MSよりも上に浮かび、保温効果を有する。本実施形態におけるスラグSGは、例えば次のうち少なくとも1つに利用されるが、代替例として他の用途に利用されてもよい。
・アスファルト混合物用骨材
・コンクリート用骨材
・道路用路盤材
・地盤改良材
・土工用材
・セメント原料
・土壌改良材の原料
【0021】
制御部11は、電気炉EFの出鋼量とスラグ量と圧延量とから、鉄鋼関連製造物を電気炉EFで製造するために必要な必要電力量を決定する。必要電力量は所定の計算式で算出されてよいし、出鋼量、スラグ量及び圧延量と、必要電力量と、の間の対応表を参照することによって決定されてよい。
【0022】
本実施形態の電気炉EFで使用される電力は、再生可能エネルギー等の非化石電源から発電された、二酸化炭素を排出しない電力である。ここでの再生可能エネルギーとは、次に掲げるエネルギー源をいう。
一 太陽光
二 風力
三 水力
四 地熱
五 バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。)
六 上記一乃至五のエネルギー源のほか、原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品以外のエネルギー源のうち、電気のエネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの
【0023】
非化石電源には、再生可能エネルギーだけでなく、例えば原子力も含まれる。非化石電源から発電された電気には次の2つが含まれる。
1.電気そのものが有する価値(kWh価値等)
2.非化石としての価値
本実施形態では、上記2つの価値のうち「非化石としての価値」を、非化石価値と称する。電気炉EFでは、非化石価値で定義された電力が使用される。ここでの非化石価値は、日本国の「エネルギー供給構造高度化法」上の非化石電源比率の算定時に非化石電源として計上される価値である。非化石価値は、定められた目標値を達成するために、新規の電力小売事業者によって購入される価値である。
【0024】
非化石価値によって定義された電力は、例えば次の3つの手段のうち少なくとも1つを利用して入手及び証明可能である。
(1)非化石証書
(2)グリーン電力証書
(3)Jクレジット
【0025】
非化石証書とは、再生可能エネルギーで発電された電気の環境価値を証書のかたちにしたものである。
【0026】
グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーで発電された電力の環境価値の証書である。グリーン電力証書にはシリアルナンバーが付されるので、唯一無二である。グリーン電力証書には、発電電力量と発電期間と発電方法と証書の発行日との情報が含まれる。グリーン電力証書には更に、認証機関名と証書発行事業者名との情報が含まれる。
【0027】
Jクレジットとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減量と吸収量とを「クレジット」として国が認証する制度である。
【0028】
追加例として又は代替例として、非化石価値で定義された電力は、次の手段によっても入手及び証明可能である。
(4)自社が保有する太陽光発電設備を用いた発電
【0029】
代替例として、電気炉EFで使用される電力は、非化石価値で定義された電力ではなく、ゼロエミ価値で定義された電力であってよい。ここでのゼロエミ価値とは、日本国の「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下、温対法)上の二酸化炭素排出係数がゼロである価値である。具体的にはゼロエミ価値は、電気の小売事業者が調整後排出係数の算定時に、調達した非化石証書の電力量に「全国平均係数」を乗じることで算出した二酸化炭素排出量を実二酸化炭素排出量から減算することができる価値である。製造業等の電力購入者が温対法に基づいて二酸化炭素排出量を国に報告する際には、ゼロエミ価値を持つ電力の二酸化炭素排出係数はゼロとなる。例えば、ゼロエミ価値で定義された電力は、既存の電力販売会社が水力等の再生可能エネルギー又は原子力で発電した電力であってよい。ゼロエミ価値で定義された電力は、次の手段によって入手及び証明可能である。
(5)電力小売との契約(例:東京電力エナジーパートナー(登録商標)社によって提供される「アクアプレミアム」(登録商標)及び「アクアエナジー100」)
【0030】
上記で例示された手段(1)乃至(5)のそれぞれにつき、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証書等の情報は、唯一無二の証明情報として証明書発行事業者又は認証機関等から取得される。上記の手段(1)乃至(5)は一例であり、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する他の任意の手段によって代替可能である。
【0031】
本実施形態において、電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることの証明方法には、上記(1)乃至(5)のいずれかによって証明情報を入手して証明する方法がある。
【0032】
電気炉EFで使用された電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明する証明情報は、オークションにおいて又は仲介業者から購入され、記憶部13に記憶される。
【0033】
追加例として証明情報は、任意のメーカーによって証明された非化石残渣情報を含んでよい。
【0034】
一例として、初回のオークションでの証明情報の購入量(発注量)は例えば以下のように決定されてよい。すなわち制御部11は、年間発注費用と年間在庫維持費用との合計額が最小になる経済的発注量を算出する。年間発注費用は、証明情報を発注するために1年間でかかる費用である。1回あたりの発注量が多いほど1年間での発注回数が少ないため、年間発注費用は低い。年間在庫維持費用は、証明情報を発注するために1年間でかかるシステム使用料又は人件費等である。1回あたりの発注量が多いほど、より多くの証明情報が残るおそれがあるため、年間在庫維持費用は高い。
図3に示されるように経済的発注量においては、年間発注費用と年間在庫維持費用とが同額になる。このため、経済的発注量をQとして、
図4に示されるような等式が成り立つ。
図4における「電力単位」はここではMWhであるが、これに限られない。
図4に示される等式を変形すると、
図5のような式が得られる。
図5の式に代入される各値の例は次の通りである。
1回あたり発注費用=100,000円
年間必要量=(昨年の鉄鋼関連製造物の製造量実績10,000トン)x(636.5kWh/トン)
= 6,365 MWh/年
1電力単位あたり年間在庫維持費用=(1MWhあたり購入原価)x(資本コスト率)
= 300円x 3%
=9円
以上の各値を
図5の式に代入すると、経済的発注量は3,756MWhである。
【0035】
制御部11は、算出された経済的発注量を、初回のオークションでの証明情報の購入量として決定してよい。代替例として制御部11は、経済的発注量と、鋼材需要指数(例えば建築着工床面積年度比予想、GDP予想等)と、カーボンフリー鋼材需要指数(世界平均気温、自然災害発生件数、自然災害被害コスト、国のカーボンフリー対策予算等)等から、初回のオークションでの証明情報の購入量を決定してよい。
【0036】
以上のように初回のオークションでの証明情報の購入量が決定されてよい。しかし初回のオークションでの購入量の決定方法は任意である。
【0037】
制御部11は注文情報を取得すると、
図6に示されるように、必要電力量と関連付けて注文情報を記憶部13の注文情報DBに記憶する。
【0038】
制御部11は、証明情報を記憶部13から読み出すと、製造に必要な必要電力量が、初回のオークションで購入済みの証明情報によって証明される証明電力量の範囲内か否か(具体的には、必要電力量が証明電力量以下であるか否か)を判定する。
図6に示されるように、判定結果は注文情報と関連付けて記憶されてよい。
【0039】
制御部11は、製造に必要な必要電力量が証明電力量の範囲内にあると判定すると、鉄鋼関連製造物の製造を開始するよう他の情報処理装置に通知する。通知は、画像又は音声によって実行されてよい。他の情報処理装置は例えば、製造を行う担当者により操作される端末であってよい。他方で制御部11は、必要電力量が証明電力量の範囲を超えると判定すると、証明情報を購入するための次回のオークションの開催日時よりも鉄鋼関連製造物の納期が前か否かを判定する。次回のオークションの開催日時は、制御部11によりネットワークを介して検索されてもよいし、手動で入力されてもよい。
【0040】
制御部11は、次回のオークションの開催日時よりも納期が前であると判定すると、ネットワークを介して仲介業者の端末にアクセスし、証明情報を発注及び購入する。制御部11は、証明情報の購入を完了すると、鉄鋼関連製造物の製造を開始するよう他の情報処理装置に通知する。代替例として制御部11は、次回のオークション開催日時よりも納期が前であるか否かを判定せずに、仲介業者から証明情報を購入してよい。仲介業者からの購入量(単位は一例としてMWh)は、必要電力量に対する不足分と同一であってよいし、不足分を超えてもよい。
【0041】
一方で制御部11は、次回のオークションの開催日時よりも納期が後である、又は、それらが同日であると判定すると、次回のオークションで追加の証明情報を購入する。制御部11は、追加の証明情報の購入を完了すると、鉄鋼関連製造物の製造を開始するよう他の情報処理装置に通知する。追加の証明情報の購入量は必要電力量に対する不足分と同一であってよいし、不足分を超えてもよい。
【0042】
制御部11は、次回のオークションにおいて追加の証明情報の購入ができなかった場合(例えば、落札ができなかった場合、又は、次回のオークションの開催日時が納期よりも後である場合)、仲介業者の端末にアクセスし、証明情報を発注及び購入してよい。代替例として制御部11は、更に次のオークションに参加して、追加の証明情報を購入してもよい。
【0043】
図7を参照して、情報処理装置1の制御部11による情報処理方法が説明される。
【0044】
ステップS1にて制御部11は、鉄鋼関連製造物の注文情報を取得する。
【0045】
ステップS2にて制御部11は、注文情報から、鉄鋼関連製造物の製造規格等を決定する。
【0046】
ステップS3にて制御部11は、製造規格等から、鉄鋼関連製造物を製造するために必要な必要電力量を決定する。
【0047】
ステップS4にて制御部11は、製造に使用される電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明するための、購入済みの証明情報を、記憶部13から読み出す。ステップS4はステップS3以前に実行されてもよい。
【0048】
ステップS5にて制御部11は、必要電力量が、証明情報によって証明される証明電力量の範囲内にあるか否かを判定する。
【0049】
ステップS5でNoのとき制御部11は、ステップS6にて次回のオークションの開催日時よりも納期が前か否かを判定する。
【0050】
ステップS6にてYesのとき制御部11は、ステップS7にて、仲介業者から追加の証明情報を購入する。
【0051】
ステップS6にてNoのとき制御部11は、ステップS8にて、次回のオークションに参加し、追加の証明情報を購入できたか否かを判定する。
【0052】
ステップS8にてNoのとき制御部11は、ステップS7を実行する。
【0053】
ステップS8にてYesのとき制御部11は、ステップS9にて、鉄鋼関連製造物の製造を開始するよう他の情報処理装置に通知する。ステップS5にてYesのときにも制御部11は、ステップS9を実行する。
【0054】
[変形例]
上記実施形態では、制御部11は、必要電力量の全てにつき証明情報を購入する。代替例として制御部11は、必要電力量のうち証明情報が必要な一部を判定し、判定された一部の電力量につき証明情報を購入してよい。説明の簡便のため、上記実施形態と重複する説明はここでは省略される(以下同じ)。
【0055】
上記実施形態では、証明情報を購入する方法として、オークションで購入する方法と仲介業者から購入する方法が記載されるが、これに限られない。更に、購入にあたり、オークションで購入するか、仲介業者から購入するかは任意に選択可能である。
【0056】
上記実施形態では、制御部11は、鉄鋼関連製造物の注文情報を取得する。代替例として制御部11は、廃棄物処理の注文情報を取得してよい。この場合、電気炉EFは、電極ELに高電圧をかけて電気アークEAを発生させる。電気炉EFは、電気アークEAによる熱エネルギーで電気炉EF内の処理対象となる資源化原料廃棄物を高温で溶融又は溶解、及び無害化処理し、処理された廃棄物を鉄又はスラグ等として再生及びリサイクルする。アーク温度は約4,000℃である。資源化原料廃棄物は次の廃棄物のうち少なくとも1つを含む。
・鉄を含む資源化原料廃棄物
・炭素を含む資源化原料廃棄物
・CaO又はSiO2を含む資源化原料廃棄物
制御部11は注文情報から、廃棄物処理に必要な必要電力量を決定する。
【0057】
別の変形例として、情報処理装置1は、分散台帳(Hyperledger)型のブロックチェーンネットワークにノードとして参加してよい。ブロックチェーンネットワークは、インターネットに接続されたパブリックなネットワークであってよいし、プライベートなネットワークであってもよい。注文情報DBに記憶される情報は、レコードごとに1つのブロックに記憶されてよい。
【0058】
[効果]
以上述べたように本実施形態によれば、制御部11は鉄鋼関連製造物の注文情報を取得することと、注文情報から、鉄鋼関連製造物を電気炉で製造するために必要な必要電力量を決定することと、製造に使用される電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明するための、購入済みの証明情報を記憶部13から読み出すことと、必要電力量が、証明情報によって証明される電力量の範囲内か否かを判定することと、を実行する。この構成により情報処理装置1は、第1の効果として、カーボンニュートラルな鉄鋼関連製造物の発注を支援することができる。第2の効果として情報処理装置1は、鉄鋼関連製造物の製造者に対する行政からの総合評価を上昇させることができるので、競争入札で落札を勝ち取る可能性を高めることができ、もって受注量及び収益を拡大することができる。第3の効果として情報処理装置1は、カーボンニュートラルな鉄鋼関連製造物を所望する顧客からの需要を取り込むことができるので、鉄鋼関連製造物の販売価格を上昇させることができる。第4の効果として、本特許出願が特許を受けた場合には、特許に係る発明の実施をする者(例えば、鋼材製品を製造する電気炉メーカー)に実施権を設定することによって使用料(ライセンス料)を得ることができる可能性がある。
【0059】
また本実施形態によれば、制御部11は、必要電力量が、証明情報によって証明される電力量の範囲内にあると判定すると、鉄鋼関連製造物の製造を開始するよう他の情報処理装置に通知する。この構成により情報処理装置1は、必要電力量が証明電力量の範囲内にあるときに、円滑に製造を開始させることができる。
【0060】
また本実施形態によれば、制御部11は、必要電力量が、証明情報によって証明される電力量の範囲内にないと判定すると、ネットワークを介して追加の証明情報を購入する。この構成により情報処理装置1は、証明情報が不足する場合であっても、追加の証明情報を購入することによって、カーボンニュートラルな鉄鋼関連製造物の発注を支援することができる。
【0061】
また本実施形態によれば、制御部11は、必要電力量が、証明情報によって証明される電力量の範囲内にないと判定すると、追加の証明情報を購入するための次回のオークションの開催日時よりも鉄鋼関連製造物の納期が前であるか否かを判定することと、次回のオークションの開催日時よりも納期が前であると判定すると、ネットワークを介して前記追加の証明情報を業者から購入することと、を実行する。制御部11は、次回のオークションの開催日時よりも前記納期が前ではないと判定すると、次回のオークションに参加して追加の証明情報を購入することを実行する。この構成により情報処理装置1は、証明情報が不足する場合でも、次回のオークションにて又は業者から、追加の証明情報を購入することができ、もってカーボンニュートラルな鉄鋼関連製造物の発注を支援することができる。
【0062】
また本実施形態によれば、制御部11は、廃棄物処理の注文情報を取得することと、注文情報から、廃棄物を電気炉で処理するために必要な必要電力量を決定することと、廃棄物の処理に使用される電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明するための、購入済みの証明情報を記憶部13から読み出すことと、必要電力量が、証明情報によって証明される電力量の範囲内か否かを判定することと、を実行する。この構成により情報処理装置1は、第1の効果として、カーボンニュートラルな廃棄物処理の発注を支援することができる。第2の効果として情報処理装置1は、廃棄物の処理に対する行政からの総合評価を上昇させることができるので、競争入札で落札を勝ち取る可能性を高めることができ、もって受注量及び収益を拡大することができる。第3の効果として、本特許出願が特許を受けた場合には、特許に係る発明の実施をする者(例えば、鋼材製品を製造する電気炉メーカー)に実施権を設定することによって使用料(ライセンス料)を得ることができる可能性がある。
【0063】
本開示が諸図面及び実施例に基づき説明されるが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。例えば、各手段又は各ステップに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0064】
例えば、上記の実施形態において、情報処理装置1の機能又は処理の全部又は一部を実行するプログラムは、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読取り可能な記録媒体は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体を含み、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(Digital Versatile Disc)又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。またプログラムの流通は、プログラムを任意のサーバのストレージに格納しておき、任意のサーバから他のコンピュータにプログラムを送信することにより行ってもよい。またプログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。本開示は、プロセッサが実行可能なプログラムとしても実現可能である。
【0065】
コンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【符号の説明】
【0066】
1 情報処理装置
11 制御部
12 通信部
13 記憶部
【要約】
【課題】カーボンニュートラルな鉄鋼関連製造物又はカーボンニュートラルな廃棄物処理の発注を支援する。
【解決手段】情報処理装置1による情報処理方法であって、情報処理装置1は、制御部11と通信部12と記憶部13とを含み、通信部12を介してネットワークと通信可能であり、制御部11によって、鉄鋼関連製造物の注文情報を取得することと、注文情報から、鉄鋼関連製造物を電気炉で製造するために必要な必要電力量を決定することと、製造に使用される電力が非化石価値又はゼロエミ価値で定義された電力であることを証明するための、購入済みの証明情報を記憶部13から読み出すことと、必要電力量が、証明情報によって証明される電力量の範囲内か否かを判定することと、を含む。
【選択図】
図1