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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びゴム製品
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/02 20060101AFI20221017BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20221017BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20221017BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221017BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B65H5/02 C
C08L23/16
C08K3/01
C08K3/04
C08L9/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022514691
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008899
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2021038528
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021164437
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】進藤 昌宏
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-063247(JP,A)
【文献】特開2007-002149(JP,A)
【文献】特開2014-214188(JP,A)
【文献】特開2015-218248(JP,A)
【文献】特開2001-192505(JP,A)
【文献】特開平08-269267(JP,A)
【文献】国際公開第98/049227(WO,A1)
【文献】特開2000-336210(JP,A)
【文献】特開昭57-096032(JP,A)
【文献】特開昭61-053340(JP,A)
【文献】国際公開第03/055925(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/108198(WO,A1)
【文献】特開2015-143573(JP,A)
【文献】特開2001-206987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B65H 5/02-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分として NBRとEPDMとのみを55/45~70/30の質量比で含むゴム成分と、可塑剤を含むゴム組成物からなり
前記NBR中のアクリルニトリル含有量が30質量%以上40質量%以下であり、
前記可塑剤が、ポリエーテルエステル系、エーテルエステル系、脂肪族二塩基酸エステル系からなる群から選択されることを特徴とする搬送ベルト(ただし、以下(1)~(3)を除く)。
(1)NBRとEPDMとの合計100質量部当たりオレフィンを通常の重合方法で重合させたオレフィン系高分子物質を少なくとも1質量部含有するもの。
(2)NBRのΔTgが58℃以上であるもの。
(3)NBRが、樹脂酸アルカリ金属塩を含むニトリル基含有共重合体ゴムエマルジョンをpH6以下で凝固して得られたもの。
【請求項2】
前記可塑剤を、前記ゴム成分に対して3質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項3】
無機粒子を、前記ゴム成分に対して10質量%以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送ベルト。
【請求項4】
前記無機粒子が、カーボンブラックを含むことを特徴とする請求項3に記載の搬送ベルト。
【請求項5】
紙幣または乗車券の搬送用であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の搬送ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物と、このゴム組成物を用いたゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムは、様々な製品に用いられており、多様な物性が要求される。ゴムには、天然ゴム、ニトリルゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)等の多くの種類が存在し、その用途に適した物性のゴムが用いられている。
ここで、単一のゴムでは要求物性を満足できない場合、2種以上のゴムを混合して用いることが行われている。例えば、特許文献1には、EPDMとNBRとを混合したゴム組成物を主剤としたOA機器用部材、特許文献2には、水素化ニトリルゴム(HNBR)とエチレン-α-オレフィンエラストマーとを混合したゴム組成物を用いた伝動ベルト用ゴム組成物が提案されている。
【0003】
これら2種以上のゴムを混合し、それぞれのゴムの物性を高いレベルで両立させることにより、複雑な要求物性に応えることができる。しかし、ゴムは一般的に互いに相溶しないため、2種以上のゴムを混合(混練)したゴム成分は、海島構造を形成しており、大きな力が加わると、海島構造(異種高分子)の界面を起点として亀裂が生じやすいという問題があった。特に、無機粒子を配合すると、無機粒子が海島構造の界面に集まり、より強度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-45013号公報
【文献】特開2005-126642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、NBRとEPDMとを含み、引張強度に優れたゴム組成物と、このゴム組成物を用いたゴム製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の構成は以下のとおりである。
1.NBRとEPDMとを10/90~90/10の質量比で含むゴム成分と、可塑剤を含むことを特徴とするゴム組成物。
2.前記可塑剤が、合成可塑剤、または石油系軟化剤であることを特徴とする1.に記載のゴム組成物。
3.前記合成可塑剤が、ポリエーテルエステル系、エーテルエステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、フタル酸エステル系からなる群から選択されることを特徴とする1.または2.に記載のゴム組成物。
4.前記可塑剤を、前記ゴム成分に対して3質量%以上含むことを特徴とする1.~3.のいずれかに記載のゴム組成物。
5.無機粒子を、前記ゴム成分に対して10質量%以上含むことを特徴とする1.~4.のいずれかに記載のゴム組成物。
6.前記無機粒子が、カーボンブラックを含むことを特徴とする5.に記載のゴム組成物。
7.1.~6.のいずれかに記載のゴム組成物を用いたゴム製品。
8.1.~6.のいずれかに記載のゴム組成物を用いた伝動ベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム組成物は、NBRとEPDMとを含むゴム成分が海島構造を形成しているにも関わらず、引張強度に優れている。本発明のゴム組成物は、NBRに由来する耐油性等の性能と、EPDMに由来する耐オゾン性等の性能とを、高いレベルで両立させることができる。
本発明のゴム組成物は、NBRとEPDMが用いられている様々なゴム製品に用いることができる。特に、耐油性、耐オゾン性が要求される紙幣搬送装置、券売機、電子写真装置に内蔵されるゴム製品に好適に用いることができ、特に、引張強度が要求される搬送ベルトに最適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のゴム組成物は、NBRとEPDMとを10/90~90/10の質量比で含むゴム成分と、可塑剤を含むことを特徴とする。なお、本明細書において、A~B(A、Bは数値)との記載は、A、Bを含む数値範囲、すなわち、A以上B以下を意味する。
「ニトリルゴム(NBR)」
NBRは、アクリロニトリルと1,3-ブタジエンとの共重合体であり、耐油性に優れている。アクリロニトリルと1,3-ブタジエンの組成比は、加工性や求める物性に合わせて適宜調整することができる。例えば、耐油性と耐寒性の点から、アクリロニトリルの含有量が12質量%以上45質量%以下であるものが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。NBRは、1種類もしくは2種類以上を混合して使用することもできる。
【0009】
「エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)」
EPDMは、エチレン、プロピレン及びジエンの3成分の三元共重合体であり、耐オゾン性、耐熱性に優れている。エチレンとプロピレンの組成比は、加工性や求める物性に合わせて適宜調整することができる。例えば、耐寒性の点から、エチレンの含有量が40質量%以上58質量%以下であるものが好ましい。また、ジエン成分としては、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)等を使用することができる。これらの中で、ENBの含有量が4質量%以上12質量%以下のものが、高弾性であるため好ましい。EPDMは、1種類もしくは2種類以上を混合して使用することもできる。
【0010】
本発明のゴム組成物は、NBRとEPDMとを10/90~90/10の質量比で含む。NBRとEPDMとの質量比は、NBR由来の物性、EPDM由来の物性のどちらが主たる要求物性であるかに応じて決定することができ、NBR由来の物性を強く発現したい場合はNBRリッチに、EPDM由来の物性を強く発現したい場合はEPDMリッチにすればよい。例えば、耐油性と耐オゾン性の両立とが要求されるが、インクや油分に直接接触する搬送ローラや搬送ベルトに用いるのであれば、NBRとEPDMとを68/32~51/49とすることが好ましい。また、耐寒性が要求される用途であれば、ゴム組成物におけるアクリロニトリル含有量が、26質量%以下であることが好ましい。
【0011】
「可塑剤」
本発明のゴム組成物は、可塑剤を含む。本発明のゴム組成物は、可塑剤を含むことにより、NBRとEPDMを含むゴム組成物での引張強度の低下を抑えることができる。詳細なメカニズムは不明であるが、出願人は、可塑剤がNBRとEPDMとが形成する海島構造の界面に集まり、両者を結び付ける機能を果たすためであると推測している。
本発明において使用する可塑剤は、本発明の効果を奏するものであれば特に制限されないが、例えば、合成可塑剤のフタル酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、トリメリット酸エステル系、エーテルエステル系、ポリエーテルエステル系、ポリエステル系や、石油系軟化剤のナフテン系、芳香族系、パラフィン系等が挙げられる。フタル酸エステル系としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジ(2-エチルヘキシル)フタル酸エステル(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等、脂肪族二塩基酸エステル系としては、例えばジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジブチルセバケート(DBS)、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート(DOS)等、トリメリット酸エステル系としては、例えばトリ2-エチルヘキシルトチメリテート(TOTM)、トリデシルトリメリテート(TDTM)等、エーテルエステル系としては、例えばアジピン酸エーテルエステル等、ポリエステル系としては、例えばアジピン酸ポリエステル、セバシン酸ポリエステル等が挙げられる。これらは市販品を用いることもでき、例えばポリエーテルエステル系としては、アデカサイザーRS-700、RS-735、RS-966、RS-1000等を用いることができる。
本発明において、可塑剤の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、ゴム成分100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、この配合量の上限は、25質量%以下程度である。それ以上可塑剤を配合しても、その効果は飽和してほとんど性能が向上せず、ゴム表面にブリードする場合があり、また、高コストとなる。
【0012】
ゴム成分は、分子間が架橋しているが、架橋剤として有機過酸化物、硫黄、さらに、これらを併用することもできる。また、ゴム成分は、電子線等が用いられて架橋していてもよい。これらの中で、耐摩耗性の点から、有機過酸化物を用いることが好ましく、具体的には、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチルジ(t-ブチル)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物は、これらのうちの1種又は2種以上を併用することができる。有機過酸化物の配合量は、通常、ゴム成分100質量%に対して例えば1質量%以上8質量%以下程度である。
【0013】
ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、クレー、タルク、酸化亜鉛等の無機粒子の1種または2種以上を含むことができる。NBRとEPDMとを含むゴム組成物において、無機粒子はNBRとEPDMとが形成する海島構造の界面に集まりやすく、界面での強度が低下する原因となりやすい。本発明のゴム組成物は、NBRとEPDMとが形成する海島構造の界面における強度に優れているため、無機粒子を配合しても強度の低下を小さくすることができる。無機粒子の配合量は、ゴム成分100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、この配合量の上限は、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。無機粒子としては、カーボンブラックを用いることが導電性付与、補強性、紫外線劣化防止性等の点から好ましい。配合するカーボンブラックは特に制限されず、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N-339、HAF、N-351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N-234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック、ケッチェンブラックEC300J、ケッチェンブラックEC600JD等が挙げられる。
【0014】
本発明のゴム組成物は、その他に加工助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、発泡剤、発泡助剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等を含むことができる。
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。加工助剤の含有量は、例えば、ゴム成分100質量%対して、0.5質量%以上2質量%以下である。
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系(例えばTETD、TT、TRAなど)、チアゾール系(例えばMBT、MBTSなど)、スルフェンアミド系(例えばCZなど)、ジチオカルバミン酸塩系(例えばBZ-Pなど)のもの等が挙げられる。加硫促進剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。加硫促進剤の含有量は、例えば、ゴム成分100質量%対して、2質量%以上5質量%以下である。
【0015】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。加硫促進助剤の含有量は、例えば、ゴム成分100質量%対して、3質量%以上7質量%以下である。
老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系老化防止剤、ジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤等が挙げられる。老化防止剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。老化防止剤の含有量は、例えば、ゴム成分100質量%対して、0.1質量%以上5質量%以下である。
【0016】
本発明のゴム組成物は、各材料をニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等のゴム混練機を用いて混練し、成形、架橋し、必要に応じて仕上げ等を行うことにより、ゴム製品とすることができる。本発明のゴム組成物の用途は特に制限されないが、例えば、紙幣搬送装置、券売機、電子写真装置等に内蔵されるベルト、ローラ等のゴム製品が、耐油性と耐オゾン性とが要求されるため好適である。特に、本発明のゴム組成物は、人の皮脂や食品や化粧品由来の油脂が付着している紙幣や、高沸点溶剤や可塑剤を含むインクを用いる乗車券等と直接接触する搬送ベルト、搬送ローラにより好適に用いることができ、さらに、引張強度が特に要求される搬送ベルトに最適に用いることができる。
【0017】
本発明のゴム組成物を搬送ベルトとして用いる場合、ベルトの形状は特に制限されず、平ベルト、歯付ベルト、Vベルト等とすることができる。また、ベルトは、その内部に抗張体として、芯線、または編物や不織布等の布帛が埋設されていてもよい。
【0018】
本発明のゴム組成物は、JIS K6251:2010に基づいて測定される引張強さ(TB)、破断伸び(Eb)が、それぞれ15.0MPa以上、130%以上であることが好ましい。引張強さ(TB)は、15.5MPa以上であることがより好ましく、16.0MPa以上であることがさらに好ましい。また、破断伸び(Eb)は、140%以上であることがより好ましく、150%以上であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明のゴム組成物は、JIS K6261に基づいて測定されるゲーマンねじり試験によるt100(ねじり剛性が23℃での値の100倍になる温度)が-40℃以下であることが好ましい。このt100が-40℃以下であるゴム組成物は、耐寒性に優れており、低温環境下でも所定の物性を発揮することが容易となる。
【実施例
【0020】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
「実施例1」
NBR(JSR社製、N230S)70質量部、EPDM(ダウ・ケミカル社製、Nordel IP4640)30質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤(ADEKA社製 アデカサイザーRS700)10質量部、カーボンブラックFEF(東海カーボン社製、商品名:シーストSO)60質量部、ステアリン酸1質量部、酸化亜鉛5質量部、架橋剤(日油株式会社製、ペロキシモンF-40)5質量部を、密閉式混練機により混練し、得られた未架橋のゴム組成物をロールにてシート状にし、170℃×20分間プレス成型することにより1mm厚及び2mm厚の架橋ゴムシートを作製した。
【0021】
「実施例2」
NBR60質量部、EPDM40質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「実施例3」
NBR55質量部、EPDM45質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
【0022】
「実施例4」
NBR80質量部、EPDM20質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、架橋剤6.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「実施例5」
NBR40質量部、EPDM60質量部とした以外は、実施例4と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「実施例6」
NBR20質量部、EPDM80質量部とした以外は、実施例4と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
【0023】
「比較例1」
ポリエーテルエステル系可塑剤を配合せず、カーボンブラック30質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「比較例2」
EPDM(JSR社製、EP65)とし、ポリエーテルエステル系可塑剤を配合せず、カーボンブラック30質量部、架橋剤4質量部とした以外は、実施例2と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「比較例3」
NBR100質量部とし、EPDMを使用せず、カーボンブラック50質量部、架橋剤4質量部とした以外は、実施例4と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「比較例4」
NBRを使用せず、EPDM100質量部とし、架橋剤8質量部とした以外は、実施例4と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
なお、比較例1~4は、実施例1と同等のゴム硬度となることを目指し、無機粒子、架橋剤の配合量を調整している。
【0024】
「実施例7」
NBR60質量部、EPDM40質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、カーボンブラックFEF40質量部、ステアリン酸1質量部、酸化亜鉛5質量部、架橋剤4質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
【0025】
「実施例8」
可塑剤をエーテルエステル系可塑剤(ADEKA社製 アデカサイザーRS107)とした以外は、実施例7と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「実施例9」
可塑剤を脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤1(田岡化学工業株式会社製 ジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA))とした以外は、実施例7と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「実施例10」
可塑剤を脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤2(田岡化学工業株式会社製 ジ(2-エチルヘキシル)セバケート(DOS))とした以外は、実施例7と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
【0026】
「実施例11」
可塑剤をフタル酸エステル系可塑剤(田岡化学工業株式会社製 ジイソノニルフタレート(DINP))とした以外は、実施例7と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「実施例12」
可塑剤を石油系軟化剤(日本サン石油株式会社 SUNPAR2280)とした以外は、実施例7と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
【0027】
「比較例5」
可塑剤を配合せず、カーボンブラック34質量部とした以外は、実施例7と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
なお、比較例5は、実施例7と同等のゴム硬度となることを目指し、無機粒子の配合量を調整したものである。
【0028】
得られた架橋ゴムシートについて、下記評価を行った。結果を表1、2に示す。
・ゴム硬度
JIS K6253-3:2012に準じて、2mm厚の架橋ゴムシートを3枚重ねた状態でタイプAデュロメータを用いて測定した。
・引張強さ、破断伸び
JIS K6251:2010に準じて、2mm厚の架橋ゴムシートの引張強さ(TB)、破断伸び(Eb)を測定した。
・ゲーマンねじり(t100)
JIS K6261に準じて、ゲーマンねじり試験によるt100(ねじり剛性が23℃での値の100倍になる温度)を測定した。2mm厚の架橋ゴムシートを3mm幅の短冊状に打ち抜いたサンプルを用いて測定した。
【0029】
・耐油性
2mm厚の架橋ゴムシートを3cm角にカットした試験片を、亜麻仁油(山桂産業株式会社)に、80℃で24時間浸漬した。その後、取り出した試験片の表面をウエスで良く拭いてから、空気中での質量、水中での質量を測定し、下記式(1)により浸漬前後の体積変化率を求めた。
(式1)
(ただし、ΔV100は体積変化率、mは浸漬前の空気中での質量、mは浸漬前の水中での質量(重りの質量を加算)、mは浸漬後の空気中での質量、mは浸漬後の水中での質量(重りの質量を加算)、mは重りの水中での質量を表す)
【0030】
・耐オゾン
1mm厚の架橋ゴムシートを幅10mm、長さ約40mmに打ち抜いた試験片を、Φ8mmのステンレス製丸棒にたるみが無いよう巻き付け、雰囲気がオゾン濃度50pphm、温度40℃である槽に入れ、2、4、24時間、以降24時間おきに336時間まで、試験片に亀裂が発生しているか否かを目視観察した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
本発明である実施例1~12で得られたゴム組成物は、可塑剤を含まない比較例1、2、5で得られたゴム組成物と比較して引張強さ、破断伸びのいずれか、または両方が優れていた。
本発明である実施例1~6で得られたゴム組成物は、NBRとEPDMの配合比で、耐油性と耐オゾン性のバランスを調整することができ、その配合比により耐油性と耐オゾン性とを高いレベルで両立できることが確かめられた。このことから、本発明のゴム組成物が、これらの物性が要求されるゴム製品に好適に用いることができることが確かめられた。
本発明である実施例7~12で得られたゴム組成物は、可塑剤の種類に依らず、引張強度に優れていた。このことから、様々な可塑剤により、NBRとEPDMとを10/90~90/10の質量比で含むゴム組成物の引張強度を向上させられることが確かめられた。
【要約】
NBRとEPDMとを含み、引張強度に優れたゴム組成物と、このゴム組成物を用いたゴム製品を提供することを課題とする。解決手段として、NBRとEPDMとを10/90~90/10の質量比で含むゴム成分と、可塑剤を含むゴム組成物を提供する。