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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A41B11/00 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018130724
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020007676
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河合 孝
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235204(JP,A)
【文献】実公昭09-013620(JP,Y1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0403378(KR,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0340021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編み機により一体的に編成された靴下ではない靴下であって、
脚を被覆するレッグ部と、爪先、足甲および踵を被覆するフット部とが単一の生地からなり、
足底を被覆する生地であって平面形状が略足底形状の足底生地と、前記単一の生地との2枚の生地が接合されて、前記靴下が形成され、
前記足底生地は、足裏当接面に吸水性を持たせた生地であって、
前記足底生地にポリウレタン糸を軸にして他の素材の糸を巻きつけたカバード・ヤーンを用いた生地を採用するともに、前記足底生地とは異なる生地を前記レッグ部に採用した ことを特徴とする靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下編み機(丸編み機)で一体的に編成される通常の靴下とは異なり複数の生地(編地であっても織地であっても他の種類の生地であっても構わない)を接合して形成された靴下に関し、特に、編成されることに捕らわれない画期的な靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
日本においては、暑い夏季等を除けば、多くの人が、足に靴下等の足被覆衣類を履いて過ごすことが多い。この靴下の基本的機能としては、靴と素足との間の緩衝機能、足を暖かく保つ保温機能、汗を吸収して乾燥させ通気性を確保する機能、靴の外にでる皮膚の保護機能、靴と下半身の衣服(ズボン)との間を埋める衣服としての機能がある。
そして、このような靴下の基本的機能を発現させるために、靴下は編地で構成され、靴下の部位によりその編成を変更する場合がある。たとえば、実用新案登録第3100762号公報(特許文献1)は、履いた際に足底部位に体重が架かるので、足底部分の感触が重要な要素となることに鑑みて足底がべとつかず爽やかな履き心地の靴下を開示する。特許文献1に開示された靴下は、表糸と裏糸からなる靴下において、靴下の踵部・足底部・爪先部からなる足底部に増糸をなし、この増糸に絹糸を使用したことを特徴とする。
【0003】
この靴下によると、靴下の特定の部位である足底部位に絹糸を使用して編成したために、足底がべとつかず爽やかで清潔な履き心地のよい、快適さ抜群の靴下を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3100762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された靴下を始めとして、靴下は靴下編み機(丸編み機)で一体的に編成されることが通常である。そして、基本的機能に新たな別の機能を付与する場合には、たとえば特許文献1に開示されたように、編み機での編成途中に編成される足底部をカットボス組織で編成して絹糸を増糸することにより、足底がべとつかず爽やかで清潔な履き心地のよいという機能を発現させている。最近では、このような基本的機能以外に、種々の機能が靴下に求められている。
【0006】
ところが、靴下編み機(丸編み機)で一体的に編成される靴下においては、編糸である糸の特性、編み組織自体の特性、および、編み組織の組み合わせた特性により、求められる機能を(たとえば特許文献1に開示されたように足底部をカットボス組織で編成して絹糸を増糸)発現させることしかできない。このため、どうしても制約があって、たとえば、機能とデザイン性とを両立させることが困難な場合が発生し得る。
【0007】
本発明は、靴下編み機(丸編み機)で一体的に編成される靴下についての問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、編成されることに捕らわれることなく様々な機能とデザインとを両立させ得る靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る靴下は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のある局面に係る靴下は、丸編み機により一体的に編成された靴下ではない靴下であって、脚を被覆するレッグ部と、爪先、足甲、踵および足底を被覆するフット部とを含み、前記足底を被覆する生地であって平面形状が略足底形状の足底生地と、前記足底生地以外の1以上の生地とが接合されて、前記レッグ部と前記フット部とが形成されていることをの特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の局面に係る靴下は、丸編み機により一体的に編成された靴下ではない靴下であって、脚を被覆するレッグ部と、爪先、足甲および踵を被覆するフット部とが単一の生地からなり、足底を被覆する生地であって平面形状が略足底形状の足底生地と、前記単一の生地とが接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の靴下によれば、靴下編み機(丸編み機)で一体的に編成されることに捕らわれることなく様々な機能とデザインとを両立させ得る靴下を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る靴下の全体斜視図であって、(A)は表向きの通常の状態、(B)は裏返した状態を示す。
図2図1に示す靴下の側面図であって、(A)は図1(A)の矢示2Aから見た図(通常)、(B)は図1(B)の矢示2Bから見た図(裏返し)である。
図3図1に示す靴下の側面図であって、(A)は図1(A)の矢示3Aから見た図(通常)、(B)は図1(B)の矢示3Bから見た図(裏返し)である。
図4図1に示す靴下の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る靴下100を、図面に基づき詳しく説明する。なお、靴下の構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのような靴下の構造であっても、靴下を構成する生地の種類、生地の型紙およびその生地の接合方法がどのようなものであっても基本的には構わない。そのため、以下に示す靴下の構造自体は単なる例示でしかない。
【0013】
ここで、本実施の形態に係る靴下100を構成する生地は、編地であっても織地であっても他の種類の生地であっても構わないが、編地である場合には以下のような編地が好ましい。好ましい生地の一例である編地としては、トリコット(経編み機の一種であるトリコット機で編んだ経編みの生地)、ベア天(ベア天竺:ポリウレタン糸を軸にして他の素材の糸(綿、ウール等)を巻きつけた糸(カバード・ヤーン)を用いて編んだ平編みの生地)等が好ましく用いられる。特に、これらの中でもベア天は、(1)伸縮性にすぐれている点、(2)吸湿性にすぐれる点等で靴下に好ましい。なお、足底を被覆する生地は吸水性を備えた生地であることが好ましい。
【0014】
本実施の形態に係る靴下100は、丸編み機により一体的に編成された靴下ではない。そして、この靴下100は、脚を被覆するレッグ部と、爪先、足甲、踵および足底を被覆するフット部とを含む。さらに、特徴的であるのは、足底を被覆する生地であって平面形状が略足底形状の足底生地140と、足底生地140以外の1以上の生地(この靴下100においては1の脚生地120)とが接合されて、レッグ部とフット部とが形成されている。より詳しくは、レッグ部は、脚生地120のうちの一部分である脚部102Dにより形成され、フット部は、脚生地120のうちの一部分である爪先部102A、足甲部102Bおよび踵部102C、ならびに、足底生地140の全部分である足底部104により形成されている。足底部104に対して、足底以外部102と記載する場合がある
ここで、この靴下100のレッグ部とフット部とは、足底生地140と、足底生地140以外の1以上の生地とが接合されて形成されていればよい。すなわち、この靴下100は足底生地140以外の1の脚生地120で形成されているが、本発明に係る靴下は足底生地140以外の1以上の生地で形成されていればよい。
【0015】
また、限定されるものではないが、以下に示す靴下は左右共用であって、左右共用であるために左右を履き間違いすることがない点で好ましい。なお、靴下が左右共用でない場合には、左足用と右足用とは左右対称の形状を備えることになる。
このように、この靴下100は、足底生地140と、この足底生地140以外の1の脚生地120とが接合されて、レッグ部とフット部とが形成されていることを特徴的な構成としている。この場合における接合については、特に限定されるものではなく、縫製により接合(縫合)されていても、接着(代表的には接着テープ)により接合されていても構わない。
【0016】
接合はこのような接着による接合に限定されるものではないが、接着により接合する場合には帯状部材の一面に接着材が塗布された接着テープであって、加熱することにより接着材が溶融して生地を熱接着して接合するものが好ましい。なお、この接着には、熱圧着によるもの、熱溶着によるもの、熱融着によるもの等を含む。このように接着により接合した場合には、縫い目を備えないで(縫合線を備えないで)爪先部102A、足甲部102B、踵部102C、脚部102D、および、足底部104を備えた靴下100が立体的に形成される点で好ましいが、以下においては、この靴下100における接合は縫合であるとして説明する。
【0017】
図1は本実施の形態に係る靴下100の全体斜視図であって、図1(A)は表向きの通常の状態を、図1(B)は裏返した状態を、それぞれ示している。図2はこの靴下100の側面図であって、図2(A)は図1(A)の矢示2Aから見た図(通常)を、図2(B)は図1(B)の矢示2Bから見た図(裏返し)を、それぞれ示している。図3はこの靴下100の側面図であって、図3(A)は図1(A)の矢示3Aから見た図(通常)を、図3(B)は図1(B)の矢示3Bから見た図(裏返し)を、それぞれ示している。図4は、この靴下100の展開図(型紙)を示している。
【0018】
ここで、図1図2および図3は、着用者の足Fに靴下100を着用している状態を想定している。すなわち、本発明の実施の形態に係る靴下100は、限定されるものではないが生地としてベア天等の伸縮性編地を採用した場合には、このように想定して図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。なお、図1図2および図3においては、実際にこの靴下100を着用している状態を示しているために、これらの図においては足裏肌と足底部104とが完全に一致して着用されているわけではなく(着用者の足サイズがこの靴下の足底部104のサイズと完全に一致することは却って稀であるために当然のことであるが)、かつ、靴下100の脚部102Dにおける縫合線J(Y)(縫合線J(Y)は脚生地120を筒状に形成するための縫合線)が足Fの内側にずれて(ここでは足Fは右足であるために左足側にずれて)着用されている。このため、側面視である図2において、靴下100の足底部104における縫合線J(X)(縫合線J(X)は脚生地120と足底生地140とを連結するための縫合線)、および、縫合線J(Y)が、見えるように描かれている。
【0019】
この靴下100は、爪先部102A、足甲部102B、踵部102C、脚部102D(これら4部位が脚生地120により形成)、および、足底部104(この1部位が足底生地140により形成)を備える。そして、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部(靴下100の履き口である)が設けられている。この開口部の上縁の全周に亘って、靴下100の内側(足Fが接する側:肌側)に伸縮性細幅生地112が設けることも好ましい。この靴下100を履くときに伸縮性細幅生地112を伸張させると開口部が大きく開くために履きやすく、かつ、この靴下100を履いた後は伸縮性細幅生地112を収縮して開口部が小さくなるために歩行時に靴下100が脱げることがない。なお、この開口部の上縁の全周に亘って靴下100の外側(足Fが接する側とは逆側:靴側)に伸縮性細幅生地112を設けるようにしても構わないし、この開口部の上縁の全周に亘って靴下100の内側と外側とに跨がって伸縮性細幅生地112を設けるようにしても構わない。
【0020】
この靴下100の特徴は、上述したように、レッグ部とフット部とが足底生地140と、足底生地140以外の1以上の生地(ここでは1の脚生地120であって、脚を被覆するとともに、爪先、足甲および踵を被覆する単一の生地)とが接合されて形成されている点である。より詳しくは、図4の展開図(型紙)に示すように、爪先部102Aと足甲部102Bと踵部102Cと脚部102Dが(すなわちこの靴下100の足底部104以外の足底以外部102)所定の周縁形状を備えた1枚の生地である第1の伸縮性編地である脚生地120により構成され、足底部104が所定の周縁形状(概略的には平面形状が足底形状に略等しい)を備えた1枚の生地である第2の伸縮性編地である足底生地140により構成されている点である。すなわち、足底部104以外の足底以外部102が第1の伸縮性編地(脚生地120)により構成され、足底部104が第2の伸縮性編地(足底生地140)により構成されている。なお、生地は2枚でなく第3(以上)の伸縮性編地を含む3枚(以上)であっても構わない。
【0021】
そして、第1の伸縮性編地(脚生地120)と第2の伸縮性編地(足底生地140)とが図4の矢示X(1)方向および矢示X(2)方向にそれぞれ接近されて、第1の伸縮性編地(脚生地120)と、第2の伸縮性編地(足底生地140)とが、縫合されて縫合線J(X)が形成されている。
すなわち、第2の伸縮性編地(足底生地140)の(全)周縁と、第1の伸縮性編地(脚生地120)の周縁の一部とを、縫合線J(X)で縫合することにより、この靴下100が形成されている。なお、縫合線J(X)は2以上に分断されていても構わない。
【0022】
さらに、この第1の伸縮性編地(脚生地120)どうしが図4の矢示Y方向に接近されて、第1の伸縮性編地(脚生地120)が筒状に縫合されて縫合線J(Y)が形成されている。
このようにして、爪先部102A、足甲部102B、踵部102C、脚部102D、および、足底部104を備えた靴下100が立体的に形成されている。
【0023】
このように、この靴下100においては、足底部104以外の足底以外部102が第1の伸縮性編地(脚生地120)により構成され、足底部104が第2の伸縮性編地(足底生地140)により構成されているために、従来の通常の靴下のように靴下編み機(丸編み機)で一体的に編成される靴下とは異なり、少なくとも足底部と足底部以外とが別々の生地で縫製されているために、それぞれの部位に応じた特性を備えた生地(編地、織地、その他の生地)を、デザインを考慮して適宜選択することができる。このため、編成されることに捕らわれることなく様々な機能とデザインとを両立させ得る靴下を提供することができる。たとえば、このような一例として、足底部104を形成する足底生地140の足裏当接面に吸水性を持たせた生地(汗を速やかに吸収してサラサラ感による快適性を発現)であって靴内側当接面に撥水性を持たせた生地(汗を靴内に浸透させないで靴内が蒸れることを抑制)を採用したり、脚部102Dに対応する部分の脚生地にズレ落ちにくく横じわになりにくい生地を採用したり、靴から大きくはみ出て見えやすい脚部102Dに対応する部分の脚生地にデザイン性の高い生地を採用したり、これらを複合させた生地を採用したりすることが挙げられる。
【0024】
以上のようにして、本実施の形態に係る靴下100によると、編成されることに捕らわれることなく様々な機能とデザインとを両立させ得る靴下を提供することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、靴下編み機(丸編み機)で一体的に編成される通常の靴下とは異なり複数の生地(編地であっても織地であっても他の種類の生地であっても構わない)を接合して形成された靴下に好ましく、編成されることに捕らわれることなく様々な機能とデザインとを両立させ得る靴下を提供することができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0026】
100 靴下
102 足底以外部
102A 爪先部
102B 足甲部
102C 踵部
102D 脚部
104 足底部
112 伸縮性細幅生地
120 脚生地
140 足底生地
J(X)、J(Y) 縫合線
F 足
図1
図2
図3
図4