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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/532 100
A61F13/532 210
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018119024
(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2019217185
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100214226
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博文
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓郎
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-044115(JP,U)
【文献】特開2016-112232(JP,A)
【文献】特開2013-013430(JP,A)
【文献】特開2017-086378(JP,A)
【文献】特表2007-516767(JP,A)
【文献】特開2007-167193(JP,A)
【文献】米国特許第05938650(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記吸収体の長手方向の中心よりも長手方向後方の領域内に、長手方向及び幅方向に延び、かつ前記吸収体を厚さ方向に貫通する第一のスリットを少なくとも1つ有しており、
前記吸収体には、前記吸収体の幅方向両端部に、長手方向に延び、かつ、前記第一のスリットの幅方向両端部における前方端部と連結し、長手方向の寸法が80mm以上380mm以下、幅方向の寸法が5mm以上20mm以下の第二のスリットが設けられており、
前記第一のスリットが形成されている領域内に、液透過性の上層シートと、液透過性の下層シートと、高吸収性ポリマーと、で形成される補助吸収体が設けられており、
前記補助吸収体は、平面視において、前記上層シートが前記下層シートに接合するシール領域と、前記上層シートが前記下層シートに接合しない複数の非シール領域と、をそれぞれ有しており、
前記非シール領域における前記上層シートと前記下層シートの間に、高吸収性ポリマーが分布している、吸収性物品。
【請求項2】
前記シール領域が、平面視において、迷路状に分岐して連結している、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記非シール領域に分布する高吸収性ポリマーが吸収速度の異なる複数種で構成される、請求項1又は2に記載のハンドタオル。
【請求項4】
前記第一のスリットが、前記吸収体の長手方向全長の後方端部側40%以内の位置に形成されている、請求項1からのいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後漏れ防止効果が良好な吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ止めタイプ、パンツタイプ、尿取りパッド等の様々な吸収性物品が上市されており、これらの吸収性物品は、使用者の症状や用途に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
上記の吸収性物品は就寝時にも使用されることが多いが、その際、後漏れの防止が重要となる。この後漏れ防止性能を向上させるために、従来、吸収性物品に対して様々な改良が試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用状態において自由隆起するウエスト用バリヤーカフスを有する、使い捨ての吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、前後漏れを防止するために、長手方向両側部を長手方向中央側に折り返すことでポケット部が形成される、使い捨ての吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-293032号公報
【文献】特開2015-24070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の使い捨ての吸収性物品においては、着用者が仰向け状態にあるときには、吸収性物品に形成されるポケット形状が体重によって押し潰されてしまうため、後漏れ防止機能が十分に発揮されない場合があった。
【0007】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、後側からの体液の漏れを効果的に防止する吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品において、吸収体の長手方向後方部に厚さ方向に貫通するスリットを設け、かつ、当該スリットが形成されている領域内に、所定の補助吸収体を設けることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、前記吸収体の長手方向の中心よりも長手方向後方の領域内に、長手方向及び幅方向に延び、かつ前記吸収体を厚さ方向に貫通する第一のスリットを少なくとも1つ有しており、前記第一のスリットが形成されている領域内に、液透過性の上層シートと、液透過性の下層シートと、高吸収性ポリマーと、で形成される補助吸収体が設けられており、前記補助吸収体は、平面視において、前記上層シートが前記下層シートに接合するシール領域と、前記上層シートが前記下層シートに接合しない複数の非シール領域と、を有しており、前記非シール領域における前記上層シートと前記下層シートの間に、高吸収性ポリマーが分布している、吸収性物品である。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記吸収体には、前記吸収体の幅方向両端部に、長手方向に延び、かつ、前記第一のスリットの幅方向両端部における前方端部と連結する、第二のスリットが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記シール領域が、平面視において、迷路状に分岐して連結していることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記非シール領域に分布する高吸収性ポリマーが吸収速度の異なる複数種で構成されることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記第一のスリットが、前記吸収体の長手方向全長の後方端部側40%以内の位置に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸収性物品によれば、後側からの体液の漏れを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の吸収性物品の平面図である。
図2】補助吸収体が体液を吸収する前における、図1に示す本発明の吸収性物品のY-Y断面図である。
図3】補助吸収体が体液を吸収した後における、図1に示す本発明の吸収性物品のY-Y断面図である。
図4】本発明の吸収性物品の作用モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<吸収性物品>
本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図1中、符号Yで示す方向である。図中、符号Yで示す方向が前方であり、符号Yで示す方向が後方であり、着用時にYの方向が着用者の腹側、Yの方向が着用者の背側に配される。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。また、本発明の吸収性物品1の用途は、特に限定されるものではなく、一般には、幼児又は成人用を問わず、テープ止めタイプの使い捨ておむつ、パンツタイプの使い捨ておむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、生理用ナプキン等であってもよいが、本発明は、特に大人用のテープ止めタイプ及びパンツタイプの使い捨ておむつ、並びに尿取りパッドに好適に適用される。
【0017】
本発明の吸収性物品1は、図1に示すように、身体側表面に配置された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向し、衣類側表面に配置された液不透過性のバックシート20と、トップシート10とバックシート20との間に配置された吸収体30と、を備える。そして、吸収体30は、吸収体30の長手方向の中心よりも長手方向後方の領域内に、長手方向及び幅方向に延び、かつ吸収体30を厚さ方向に貫通する第一のスリット40を有している。ここで、吸収体30の長手方向の中心とは、吸収体30の長手方向の中央を幅方向に横断する直線であり、図1中、X-Xで示す線である。さらに、本発明の吸収性物品1には、第一のスリット40が形成されている領域内に、液透過性の上層シート63と、液透過性の下層シート64と、高吸収性ポリマーと、で形成される補助吸収体60が設けられており、補助吸収体60は、平面視において、上層シート63が下層シート64に接合するシール領域62と、上層シート63が下層シート64に接合しない複数の非シール領域61と、を有しており、非シール領域61における上層シート63と下層シート64の間に、高吸収性ポリマーが分布している。
【0018】
本発明の吸収性物品1は、図4に示すように、第一のスリット40と、第一のスリット40が形成されている領域内に形成される補助吸収体60と、が着用者の背側に配置されるように装着される。本発明において、上記のような第一のスリット40が形成されていることにより、毛細管現象で水平方向に伝わる体液の後側への拡散が抑制され、加えて補助吸収体60が形成されていることにより、第一のスリット40内に導かれた体液が、補助吸収体60により確実に吸収されるため、着用者が仰向けになった状況においても、体液の後側からの漏れを効果的に防止することができる。
【0019】
なお、図1に示す吸収性物品1は、尿取りパッド、軽失禁パッド等の形態であるが、本発明の吸収性物品1は、この形態に限定されるものではない。
【0020】
吸収性物品1の寸法は用途等に応じて適宜選択されるが、通常、吸収性物品1の、長手方向の寸法は100mm以上400mm以下、幅方向の寸法は30mm以上210mm以下であることが好ましい。
【0021】
吸収性物品1には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10上に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザーを備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザーの外端は、バックシート20に固定され、その内端はトップシート10に固着され、その中央はトップシート10に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配置される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザーが起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0022】
[吸収体]
図2は、補助吸収体60が体液を吸収する前における、図1に示す本発明の吸収性物品1のY-Y断面図である。本発明において、吸収体30は、図1及び図2に示すように、吸収体30の長手方向の中心(図1及び図2中、X-Xで示す線)よりも長手方向後方の領域内に、後述する、第一のスリット40が設けられており、第一のスリット40が形成されている領域内には、後述する、補助吸収体60が設けられている。
【0023】
吸収体30は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有することが好ましい。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。使用するフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体30の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m以上800g/m以下の坪量とすることが好ましい。
【0024】
吸収体30の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体30のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、25g/m以上300g/m以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0025】
吸収体30において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、あるいは、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートとしたものであることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体30の形状の安定化の目的から、吸収体30をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0026】
吸収体30の寸法、及び厚さは用途等に応じて適宜選択されるが、通常、吸収体30の、長手方向の寸法は95mm以上395mm以下、幅方向の寸法は25mm以上200mm以下であることが好ましく、吸収体30の厚さは0.3mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0027】
(スリット)
本発明において、吸収体30は、図1に示すように、吸収体30の長手方向の中心(図1中、X-Xで示す線)よりも長手方向後方の領域内に、長手方向及び幅方向に延び、かつ吸収体30を厚さ方向に貫通する第一のスリット40を有している。なお、本発明の吸収性物品1は、この第一のスリット40が形成される長手方向側が、着用者の背側に位置するように配置される。
【0028】
第一のスリット40は、吸収体30の長手方向全長の後方端部側40%以内の位置に形成されることが好ましい。また、第一のスリット40は、図1及び図2に示すように、1つの第一のスリット40を設けてもよいし、2つ以上の第一のスリット40を、吸収体30の長手方向後方の領域内に、例えば長手方向の異なる位置に略平行に設けてもよい。2つ以上の第一のスリット40を設ける場合、同じ大きさ、形状の第一のスリット40を2つ以上設けてもよいし、異なる大きさ、形状の第一のスリット40を設けてもよい。第一のスリット40間の間隔は、設ける第一のスリット40の大きさ等にもよるが、例えば、10mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0029】
第一のスリット40の形状は、長手方向及び幅方向に延びる形状であればよく、例えば、略矩形、略台形、略菱形、略楕円形、略円形が挙げられる。第一のスリット40の長手方向の寸法は10mm以上150mm以下であることが好ましく、第一のスリット40の幅方向の寸法は30mm以上180mm以下であることが好ましい。また、第一のスリット40の幅方向の寸法は、吸収体30の幅方向の寸法に対して、15%以上90%以下であることが好ましい。
【0030】
また、第一のスリット40(スリットが2つ以上ある場合は、吸収体30に近い第一のスリット40)の後方端部から吸収体30の後方端部までの距離は、10mm以上100mm以下であることが好ましい。また、第一のスリット40の幅方向端部から吸収体30の幅方向端部までの距離は、10mm以上85mm以下であることが好ましい。
【0031】
吸収体30には、吸収体30の幅方向両端部に、長手方向に延び、かつ、第一のスリット40の幅方向両端部における前方端部と連結する、第二のスリット50が設けられていることが好ましい。第二のスリット50が設けられていることにより、長手方向への体液の拡散を向上させることができ、かつ、後述する補助吸収体60に体液を速やかに導くことができる。第二のスリットの長手方向の寸法は、80mm以上380mm以下であることが好ましく、幅方向の寸法は5mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0032】
[補助吸収体]
図2に示すように、第一のスリット40が形成されている領域内に、液透過性の上層シート63と、液透過性の下層シート64と、高吸収性ポリマーと、で形成される補助吸収体60が設けられており、補助吸収体60は、平面視において、上層シート63が下層シート64に接合するシール領域62と、上層シート63が下層シート64に接合しない複数の非シール領域61と、を有しており、非シール領域61における上層シート63と下層シート64の間に、高吸収性ポリマーが分布している。このように、第一のスリット40が形成されている領域内に、上記の構造を有する補助吸収体60を設けることにより、後側からの体液の漏れを効果的に防止することができる。なお、補助吸収体60の長手方向及び幅方向の端部は、高吸収性ポリマーが外に漏れないように、シール領域62で形成されていることが好ましい。また、図2に示すように、少なくとも体液を吸収する前において、下層シート64は、略フラットな状態であり、一方で、上層シート63は、下層シート64と接合してシール領域62を形成し、かつ、非シール領域61における上層シート63と下層シート64の間に、高吸収性ポリマーが分布することで、凹凸を有する状態である。
【0033】
以下、補助吸収体60の機能について、具体的に説明する。図3は、補助吸収体60が体液を吸収した後における、図1に示す本発明の吸収性物品1のY-Y断面図である。
吸収体30や第二のスリット50を介して後側に導かれた体液は、補助吸収体60の非シール領域61に分布された高吸収性ポリマーに吸収され、後側からの体液の漏れを防止することができる。体液が高吸収性ポリマーに吸収されると、体液を吸収した高吸収性ポリマーは膨潤するため、非シール領域61は、図3に示すように、体液の吸収前よりも隆起することになり、高吸収性ポリマーを有さないシール領域62が水路として形成される。そして、2回目以降に体液が排泄される際には、シール領域62が、水路として機能するために、体液が補助吸収体60内でより効果的に拡散及び吸収されるため、後側からの体液の漏れをより効果的に防止することができる。
【0034】
高吸収性ポリマーが分布する非シール領域61が設けられる位置は特に限定されないが、図1に示すように、複数の非シール領域61が長手方向の異なる位置に幅方向に略平行に形成されていることが好ましい。一方、シール領域62の好ましい配置は、シール領域62が、平面視において、迷路状に分岐して連結していることが好ましく、これにより、体液が一度排泄された後は、上記のように、非シール領域61が隆起し、高吸収性ポリマーを有さないシール領域62により水路が迷路状に形成されることにより、繰り返し体液が排泄された場合においても、体液が補助吸収体60内でより効果的に拡散及び吸収され、後側からの漏れを効果的に防止することができる。
この場合、図2に示すように、長手方向のある位置においては、2つ以上の非シール領域61が、一定の間隔をおいて、形成されていてもよい。
以上のような態様で、補助吸収体60に、高吸収性ポリマーが分布する非シール領域61と、シール領域62と、を形成することにより、より良好に後漏れを防止することができる。
【0035】
補助吸収体60の長手方向の寸法は、第一のスリット40の長手方向の寸法に対して60%以上100%以下であることが好ましく、補助吸収体60の幅方向の寸法は、第一のスリット40の幅方向の寸法に対して60%以上100%以下であることが好ましい。これにより、補助吸収体60が、第一のスリット40が形成された領域内に適切に設けられ、第一のスリット40内に導かれた体液を補助吸収体60により確実に吸収することができる。
【0036】
非シール領域61を、長手方向の異なる位置に略平行に形成する場合、長手方向の2ヶ所以上、6ヶ所以下の異なる位置に略平行に形成することが好ましい。また、その場合の非シール領域61の間隔(長手方向の間隔)は、等間隔であることが好ましく、例えば、5mm以上30mm以下であることが好ましい。なお、各非シール領域61の各大きさ及び各形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、シール領域62の形成は、ヒートシールや超音波シール等の従来公知の方法により形成できるが、ヒートシールにより形成することが好ましい。
【0037】
非シール領域61の形状は、幅方向に延びる形状であればよく、例えば、直線、波線でもよいが、略矩形、略台形、略菱形、略楕円形、略円形が挙げられる。非シール領域61の長手方向の寸法は2mm以上15mm以下であることが好ましく、非シール領域61の幅方向の寸法は10mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0038】
(補助吸収体に用いるシート)
上層シート63及び下層シート64は、液透過性を有していればよく、特に材質は限定されないが、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートから形成される。さらに、強度及び加工性の点から、上層シート63及び下層シート64の坪量は、8g/m以上40g/m以下であることが好ましい。
【0039】
(補助吸収体に用いる高吸収性ポリマー)
補助吸収体60に用いる高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、吸収体30と同様に、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。非シール領域61におけるSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、25g/m以上300g/m以下の坪量とすることが好ましく、23質量%以上95質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0040】
非シール領域61に分布する高吸収性ポリマーは、吸収速度の異なる複数種で構成されることが好ましい。これにより、2回目以降に排泄された体液を、吸収速度の小さい高吸収性ポリマーが吸収することができ、体液が繰り返し排泄された場合においても、効果的に後側からの体液の漏れを防止することができる。
なお、各種の高吸収性ポリマーの吸収速度(時間)は、例えば、Vortex法に生理食塩水の吸収速度を測定することができる。Vortex法による生理食塩水の吸収速度は以下のように行う。まず、回転子(8mmφ×30mmのリング無し)を入れた100mlのビーカーに、0.9%生理食塩水を50±0.1g加え、マグネチックスターラーを使用して600rpmで撹拌し、渦を発生させる。高吸収性ポリマー2.0±0.002gを精秤して攪拌渦中に投入する。高吸収性ポリマーの添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定する。吸収時間が小さいほど吸収速度が大きいことを表す。
ここで、非シール領域61に分布する高吸収性ポリマーとして、吸収速度の異なる複数種を選択する場合において、吸収速度の小さい高吸収性ポリマーの吸収速度に対して、その次に吸収速度の大きい高吸収性ポリマーの吸収速度は、1.3倍以上5倍以下であることが好ましい。吸収速度の当該比率は、上記の吸収時間から算出することができる。これにより、体液が繰り返し排泄された場合においても、より効果的に後側からの体液の漏れを防止することができる。
また、各種の高吸収性ポリマーの吸収速度は、高吸収性ポリマーの製造元、品番等を適宜選択することにより、調整することができる。
さらに、吸収速度の異なる高吸収性ポリマーの種類の数は2以上3以下であることが好ましい。
【0041】
[トップシート]
トップシート10は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート10の坪量は、18g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体30へと誘導するために必要とされる、吸収体30を覆う形状であればよい。
【0042】
[バックシート]
バックシート20は、吸収体30が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0043】
強度及び加工性の点から、バックシート20の坪量は、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート20は、通気性を持たせることが好ましい。バックシート20に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート20にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0044】
なお、図示しないが、バックシート20の衣類側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層が設けられていてもよい。また、吸収性物品1が粘着剤層を有する場合、粘着剤層を保護するための剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性物品1の包装シートと部分的に接合されていてもよい。
【0045】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法は、周知の方法を採用することができ、例えば、(A)吸収性繊維を高吸収性ポリマーとともに積繊して吸収体マットを作製し、さらに、上記のような第一のスリット40及び第二のスリット50を形成して、吸収体30を形成する工程、(B)第一のスリット40が形成されている領域内に、補助吸収体60を形成する工程、(C)トップシート10と立体ギャザーをホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程、(D)トップシート10、立体ギャザー、補助吸収体60及びバックシート20の内側にホットメルト系接着剤を塗工する工程、(E)集合ドラムにおいて、下部から順に、バックシート20、吸収体30及び補助吸収体60、トップシート10、の順に配置し、各構成部材を固定・一体化する工程、(F)吸収性物品1の半製品をカッター装置により製品寸法でカットし、個々の吸収性物品1を切り離す工程、を有する製造方法等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 吸収性物品
10 トップシート
20 バックシート
30 吸収体
40 第一のスリット
50 第二のスリット
60 補助吸収体
61 非シール領域
62 シール領域
63 上層シート
64 下層シート
X 幅方向
Y 長手方向
図1
図2
図3
図4