(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】角膜微小層の三次元厚さマッピングおよび角膜診断のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221018BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61B3/10
A61F9/007 200C
(21)【出願番号】P 2019536536
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(86)【国際出願番号】 US2018013409
(87)【国際公開番号】W WO2018132621
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-22
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510250892
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ マイアミ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】アブー ショウシュ, ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】エルサウィ, アムル サード ムハンマド
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0128222(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300862(US,A1)
【文献】特表2014-500096(JP,A)
【文献】特表2013-525014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138505(US,A1)
【文献】特表2015-504740(JP,A)
【文献】国際公開第2010/129544(WO,A1)
【文献】特開2013-212173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに実装される、眼を評価する方法であって、
1つ以上のプロセッサにより
、前記眼の角膜の複数の高解像度画像をセグメント化して、前記角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つ以上の微小層を識別する工程であって、前記複数の高解像度画像が、前記角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含む、工程と、
前記1つ以上のプロセッサにより、
前記複数の高解像度画像のセグメント化から、前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータを求める工程と、
前記1つ以上のプロセッサにより、
前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての前記厚さデータから厚さマップを策定する工程であって、前記厚さマップが前記識別された生物学的に定義された微小層全体にわたる角膜厚さの差を識別し、前記厚さマップが前記角膜の診断可能な症状と相関している、工程と、
前記1つ以上のプロセッサにより、
前記診断可能な症状の徴候を提供するために前記厚さマップを表示する工程と、を含
み、
前記複数の高解像度画像をセグメント化する工程が、
(a)前記複数の高解像度画像のそれぞれについて、(i)前記角膜の前面と前記角膜の後面を識別し、(ii)前記角膜の前面と前記角膜の後面を、基準フレームの前面と後面にそれぞれマッチングさせることによって、前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行う工程と、
(b)合計および平均化プロセスを行って、前記登録された複数の高解像度画像から、前記角膜の画像である高解像度複合画像を生成する工程と、
前記高解像度複合画像の前面と後面を識別する工程と、
前記前面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化する工程と、
前記後面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化する工程と、
前記前面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定する工程と、
前記後面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定する工程と、
前記前面を用いた平坦化からの推定と前記後面を用いた平坦化からの推定とを組み合わせることによって、セグメント化された高解像度複合画像を生成する工程と、を更に含む、方法。
【請求項2】
前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層が、上皮、基底上皮層、ボーマン層、1つ以上の内皮/デスメ層複合体、および/またはコラーゲン架橋層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の高解像度画像が、(i)それぞれが異なる方向に前記目を向けてキャプチャされた前記角膜の複数の画像であって、各画像をつなぎ合わせることにより前記角膜の広域走査が形成される、複数の画像、または(ii)光学歪みが補正された前記角膜の複数の広域走査画像、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の高解像度画像が、光学撮像システムの広角レンズキャプチャからキャプチャされた前記角膜の画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記診断可能な症状が、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、屈折矯正術後拡張症、角膜移植拒絶反応および角膜移植において失敗した移植片、フックスジストロフィー、輪部幹細胞欠損、ドライアイ症候群、および術後コラーゲン架橋処置からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記厚さマップが、角膜微小層厚さの差を示すヒートマップである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記厚さマップが、
(i)微小層厚さの平均、分散、標準偏差のブルズアイマップ、
(ii)微小層厚さの角膜全厚に対する比率または比較のブルズアイマップまたはヒートマップ、
(iii)前記微小層の厚さの標準データに対する比率または比較のブルズアイマップまたはヒートマップ、または
(iv)ある領域の微小層厚さと、別の領域における前記微小層の厚さとの間の比率または比較のブルズアイマップまたはヒートマップ、である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記診断可能な症状が、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、および/または屈折矯正術後拡張症であり、前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層がボーマン層を含み、前記方法が、
前記1つ以上のプロセッサにより、
前記厚さマップを、
(i)前記ボーマン層のヒートマップであって、前記ヒートマップが、前記ボーマン層の最小厚さ領域、前記ボーマン層の正常厚さ領域、および/または前記ボーマン層の最大厚さ領域を区別する色分けを有する、ヒートマップ、
(ii)前記ボーマン層の測定された厚さと正常厚さとの間の比率または比較の厚さマップまたはヒートマップ、または
(iii)ある領域における測定された厚さと別の領域において測定された厚さとの間の比率または比較の厚さマップまたはヒートマップ、として策定する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記診断可能な症状が、フックスジストロフィーおよび/または角膜移植片の健全性、拒絶反応、および不全を含み、前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層が前記角膜の内皮/デスメ層を含み、前記方法が、
前記1つ以上のプロセッサにより、
前記厚さマップを、
(i)内皮/デスメ層のヒートマップであって、前記ヒートマップが、前記内皮/デスメ層の最小厚さ領域、前記内皮/デスメ層の正常厚さ領域、前記内皮/デスメ層の最大厚さ領域 、1つ以上の層全体にわたる厚さ領域における不規則性を区別する色分けを有する、ヒートマップ、
(ii)前記内皮/デスメ層の測定された厚さと正常厚さとの間の比率または比較の厚さマップまたはヒートマップ、または
(iii)ある領域における測定された厚さと別の領域において測定された厚さとの間の比率または比較の厚さマップまたはヒートマップ、として策定する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記診断可能な症状がドライアイを含み、前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層が、前記角膜の上皮、基底上皮層、ボーマン層、1つ以上の内皮/デスメ層複合体を含み、前記方法が、
前記1つ以上のプロセッサにより、
前記厚さマップを前記角膜上皮の厚さマップとして策定する工程であって、前記厚さマップが、前記角膜上皮全体にわたる厚さの変化の不規則性の徴候を含み、前記不規則性の徴候が、前記角膜のそれぞれ異なる領域全体にわたる厚さの不規則性の密度の差を示す、工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記角膜上皮のそれぞれ異なる領域が、(1)前記診断可能な症状が水様液の欠乏であることに対応する前記角膜の中心部、(2)前記診断可能な症状が脂質欠乏性ドライアイ症候群またはマイボーム腺機能不全であることに対応する前記角膜の下部または上部を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記診断可能な症状が、輪部幹細胞欠損、基底上皮細胞の薄厚化、または角膜輪部幹細胞欠損であることを示す基底上皮細胞の欠如を含み、前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層が基底上皮層を含み、前記方法が、
前記1つ以上のプロセッサにより、
前記厚さマップを基底上皮層のヒートマップとして策定する工程であって、前記ヒートマップが、前記基底上皮層の最小厚さ領域、前記基底上皮層の正常厚さ領域、および前記基底上皮層の最大厚さ領域を区別する色分けを有する、工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の高解像度画像をセグメント化して、前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれについての画像データを識別する工程が、
前記1つ以上のプロセッサにより、
(a)(i)前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つの微小層の前面を識別し、前記前面が登録基準面であり、(ii)前記複数の高解像度画像における複数の画像フレームを前記前面と比較し、(iii)登録条件を満たさないフレームを抽出し、(iv)残りのフレームについて、合計および平均化プロセスを行って前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記1つの微小層の高解像度複合画像を生成する、ことによって前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行う工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のプロセッサにより、
(b)前記高解像度複合画像について1つ以上のコントラスト遷移面を識別する工程であって、前記コントラスト遷移面はそれぞれ異なる前記角膜微小層間の各界面に対応する、工程と、
前記1つ以上のプロセッサにより、
(c)隣接する生物学的に定義された微小層について(a)を行って2番目の高解像度複合画像を識別する工程であって、前記隣接する生物学的に定義された微小層が前記1つ以上のコントラスト遷移面によって識別される、工程と、
前記1つ以上のプロセッサにより、
(d)前記角膜の生物学的に定義された微小層のそれぞれについて(c)を行う工程と、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(b)が、前記上皮の前部界面、上皮/基底上皮層界面、基底上皮/ボーマン界面、ボーマン/ストロマ界面、前記内皮/デスメ層の前部界面、前記内皮/デスメ層の界面、水様液、および/またはコラーゲン架橋層界面への遷移を識別するために行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行う工程が、前記複数の高解像度画像のそれぞれについて、前記角膜の頂点を識別し、前記角膜の頂点を基準フレームの頂点にマッチングさせる工程を更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記前面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定する工程が、前記前面を用いた平坦化の垂直投影を行う工程と、前記1つ以上の生物学的に定義された微小層間の各界面に対応する1つ以上のコントラスト遷移面を識別する工程と、を含み、
前記後面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定する工程が、前記後面を用いた平坦化の垂直投影を行う工程と、前記1つ以上の生物学的に定義された微小層間の各界面に対応する1つ以上のコントラスト遷移面を識別する工程とを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のコントラスト遷移面が、前記上皮の前部界面、上皮/基底上皮層界面、基底上皮/ボーマン界面、ボーマン/ストロマ界面、前記内皮/デスメ層の前部界面、前記内皮/デスメ層の後部界面、水様液界面、および/またはコラーゲン架橋層界面に対応する、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
眼の診断可能な症状を評価するためのシステムであって、
1つ以上のプロセッサと、
非一時的な命令を保存するコンピュータ可読メモリと、を含み、前記非一時的な命令が前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムが
画像プロセッサを用いて、前記眼の角膜の複数の高解像度画像をセグメント化して、前記角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つ以上の微小層を識別し、前記複数の高解像度画像が、前記角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含み、
前記複数の高解像度画像のセグメント化から、前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータを求め、
前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータから厚さマップを策定し、前記厚さマップが前記識別された生物学的に定義された微小層全体にわたる角膜厚さの差を識別し、前記厚さマップが前記角膜の診断可能な症状と相関しており、
前記診断可能な症状の徴候を提供するために前記厚さマップを表示
し、
(a)前記複数の高解像度画像のそれぞれについて、(i)前記角膜の前面と前記角膜の後面を識別し、(ii)前記角膜の前面と前記角膜の後面を、基準フレームの前面と後面にそれぞれマッチングさせることによって、前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行い、
(b)合計および平均化プロセスを行って、前記登録された複数の高解像度画像から、前記角膜の画像である高解像度複合画像を生成し、
前記高解像度複合画像の前面と後面を識別し、
前記前面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化し、
前記後面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化し、
前記前面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、
前記後面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、
前記前面を用いた平坦化からの推定と前記後面を用いた平坦化からの推定とを組み合わせることによって、セグメント化された高解像度複合画像を生成する、
システム。
【請求項20】
前記コンピュータ可読メモリが更なる非一時的な命令を保存し、当該更なる非一時的な命令が前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムが
(a)(i)前記角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つの微小層の前面を識別し、前記前面が登録基準面であり、(ii)前記複数の高解像度画像における複数の画像フレームを前記前面と比較し、(iii)登録条件を満たさないフレームを抽出し、(iv)残りのフレームについて、合計および平均化プロセスを行って前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記1つの微小層の高解像度複合画像を生成する、ことによって前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行う、請求項
19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コンピュータ可読メモリが更なる非一時的な命令を保存し、当該更なる非一時的な命令が前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムが、
(b)前記高解像度複合画像について1つ以上のコントラスト遷移面を識別し、前記コントラスト遷移面はそれぞれ異なる前記角膜微小層間の各界面に対応し、
(c)隣接する生物学的に定義された微小層について(a)を行って2番目の高解像度複合画像を識別し、前記隣接する生物学的に定義された微小層が前記1つ以上のコントラスト遷移面によって識別され、
(d)前記角膜の生物学的に定義された微小層のそれぞれについて(c)を行う、請求項
19に記載のシステム。
【請求項22】
(b)が、前記上皮の前部界面、上皮/基底上皮層界面、基底上皮/ボーマン界面、ボーマン/ストロマ界面、前記内皮/デスメ層の前部界面、前記内皮/デスメ層の界面、水様液、および/またはコラーゲン架橋層界面への遷移を識別するために行われる、請求項
21に記載のシステム。
【請求項23】
前記コンピュータ可読メモリが更なる非一時的な命令を保存し、当該更なる非一時的な命令が前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムが、
前記角膜の頂点を識別し、前記角膜の頂点を基準フレームの頂点にマッチングさせることによって、前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行う、請求項
19に記載のシステム。
【請求項24】
前記コンピュータ可読メモリが更なる非一時的な命令を保存し、当該更なる非一時的な命令が前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムが、
前記前面を用いた平坦化の垂直投影を行い、前記1つ以上の生物学的に定義された微小層間の各界面に対応する1つ以上のコントラスト遷移面を識別することによって、前記前面を用いた平坦化から前記角膜の前記1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、 前記後面を用いた平坦化の垂直投影を行い、前記1つ以上の生物学的に定義された微小層間の各界面に対応する1つ以上のコントラスト遷移面を識別することによって、前記後面を用いた平坦化から前記角膜の前記1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定する、請求項
19に記載のシステム。
【請求項25】
眼の診断可能な症状のためのシステムであって、前記システムが、1つ以上のプロセッサと、
非一時的な命令を保存するコンピュータ可読メモリと、を含み、前記非一時的な命令が前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムが
前記
眼の角膜の複数の高解像度画像のそれぞれに対して二面登録を行い、前記複数の高解像度画像が、前記角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含み、前記角膜の高解像度複合画像を生成し、前記二面登録が、前面登録と後面登録とを含み、 前記高解像度複合画像をセグメント化して、前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれを識別し、前記高解像度複合画像のセグメント化が、前記高解像度複合画像を平坦化することと、前記高解像度複合画像の平坦化されたレンディションの垂直投影を行って、セグメント化された高解像度複合画像を生成することとを含み、
前記セグメント化された高解像度複合画像から、前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さを求め、
前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層について厚さマップを策定し、前記厚さマップが、前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記少なくとも1つの微小層の全体にわたる厚さの視覚的な差を識別し、前記厚さマップが前記角膜の診断可能な症状と相関しており、
前記診断可能な症状の視覚的徴候を提供するために前記厚さマップを表示
し、
(a)前記複数の高解像度画像のそれぞれについて、(i)前記角膜の前面と前記角膜の後面を識別し、(ii)前記角膜の前面と前記角膜の後面を、基準フレームの前面と後面にそれぞれマッチングさせることによって、前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行い、
(b)合計および平均化プロセスを行って、前記登録された複数の高解像度画像から、前記角膜の画像である高解像度複合画像を生成し、
前記高解像度複合画像の前面と後面を識別し、
前記前面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化し、
前記後面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化し、
前記前面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、
前記後面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、
前記前面を用いた平坦化からの推定と前記後面を用いた平坦化からの推定とを組み合わせることによって、セグメント化された高解像度複合画像を生成する、
システム。
【請求項26】
眼の診断可能な症状のためのシステムであって、前記システムが、1つ以上のプロセッサと、
非一時的な命令を保存するコンピュータ可読メモリと、を含み、前記非一時的な命令が前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記システムが
前記
眼の角膜の複数の高解像度画像に対して多面登録を用いて、前記角膜の前記複数の高解像度画像から前記角膜の高解像度複合画像を生成し、前記複数の高解像度画像が、前記角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含み、前記角膜の前記複数の高解像度画像がそれぞれ頂点を有する湾曲画像であり、
前記高解像度複合画像をセグメント化して、前記高解像度複合画像に対して多面平坦化を用いて、前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれを識別し、前記セグメント化によってセグメント化された高解像度複合画像が生成され、
前記セグメント化された高解像度複合画像から前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さを求め、
前記角膜の前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記少なくとも1つの微小層の厚さマップを策定し、前記厚さマップが、前記複数の生物学的に定義された微小層のうちの前記少なくとも1つの微小層の全体にわたる厚さの視覚的な差を識別し、
前記厚さマップを表示
し、
(a)前記複数の高解像度画像のそれぞれについて、(i)前記角膜の前面と前記角膜の後面を識別し、(ii)前記角膜の前面と前記角膜の後面を、基準フレームの前面と後面にそれぞれマッチングさせることによって、前記複数の高解像度画像に対して画像登録を行い、
(b)合計および平均化プロセスを行って、前記登録された複数の高解像度画像から、前記角膜の画像である高解像度複合画像を生成し、
前記高解像度複合画像の前面と後面を識別し、
前記前面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化し、
前記後面を用いて前記高解像度複合画像を平坦化し、
前記前面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、
前記後面を用いた平坦化から、前記角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、
前記前面を用いた平坦化からの推定と前記後面を用いた平坦化からの推定とを組み合わせることによって、セグメント化された高解像度複合画像を生成する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願第62/445,106号(出願日:2017年1月11日、名称:「角膜微小層の三次元厚さマッピングおよび角膜診断のための方法およびシステム」)に基づく優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
(米国政府支援の陳述)
【0002】
本発明は、米国国立眼病研究所により授与された許可番号第K23EY026118号のもとに政府の支援を得てなされた。米国政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本開示は、角膜の厚さを測定することに関し、より詳細には、角膜微小層の厚さを測定し、診断目的のために角膜の厚さマッピングを策定することに関する。
【0004】
本明細書に記載の背景説明は、本開示のコンテクストの一般的な提示を目的とするものである。背景技術欄に記載されている本出願の発明者による研究および出願時に先行技術として有効でない可能性のある説明の態様は、明示的にも黙示的にも本開示に対する先行技術として自認されたものではない。
【0005】
眼に影響を及ぼす多くの症状が存在する。一般的な症状として、例えば、水様液欠乏性および蒸発性ドライアイ症候群(DES)、角膜拡張症、角膜輪部幹細胞欠損、角膜移植片拒絶エピソードおよび不全、およびフックスジストロフィーが挙げられる。しかし、これらのような症状は診断および治療が困難である。
【0006】
ドライアイ症候群:ドライアイ症候群(DES)は、世界的な公衆衛生問題である。米国だけでも、推定2500万人のDES患者がいる。DESは視力に悪影響を及ぼし、乾燥、眼刺激、および異物感といった恒常的症候を引き起こすため、患者の生活の質にマイナスの影響を及ぼす。重度のDESは、眼の完全性を損なう角膜融解につながり、失明を引き起こす可能性がある。DESは、水様液欠乏性DESまたは蒸発性DESに分類可能である。水様液欠乏性DESでは、涙腺から分泌される涙液の量が欠乏する。一方、マイボーム腺機能不全(MGD)によって引き起こされる蒸発性ドライアイでは、問題は涙膜の脂質層の欠乏にあり、これは涙液の過剰な蒸発につながる。DESの診断および治療が課題となっている。主要な研究はDESの新しい治療法の発見に向けられているが、それらの取り組みはDESの診断のためのゴールドスタンダードが存在しないという事実によって限定されている。利用可能な診断検査は、他の限定事項に加え、標準化を欠き、通常、患者の症候を表すものではない。
【0007】
医学文献には、現在のドライアイ検査と患者の症候との間の関連性が低いことが示されている。更に、現在の検査は、制御が難しい要因の影響を受けるため、標準化が不十分な検査である。例えば、涙液分解時間は、診察室の温度と湿度の影響を受ける。更に、患者が眼を開いたまま測定値を取得する際の反射性涙液分泌によって、取得した測定値が無効になる可能性がある。シルマー試験(水分生成を測定するために紙の細片が眼に挿入される)は、患者にとって侵襲的で不快である。また、患者の眼からろ紙を垂らすと、反射流涙が起こる可能性があり、これが得られる測定値に影響を与えかねない。眼表面のフルオレセインまたは他の生体染料は、眼表面上皮へのDESの有害な影響を検出する検査の例である。ただし、これらの検査の結果は、倍率が最大16倍までしかない細隙灯を用いて識別される。このような精度は、中程度から重度のドライアイを診断するには十分かも知れないが、軽度の症例を検出したり、治療に対する反応を監視するにはもちろん不十分であろう。実際、ドライアイ患者の兆候と症候との間のずれは精度の欠如に起因する可能性が最も高い。角膜神経は、眼表面への顕微鏡的損傷を検出するのに十分な感度を有するが、利用可能な検査には、その損傷を視覚化または定量化するのに十分な感度が備わっていない。現在の臨床技術の更なる限定事項は、多くが主観的に評価されることである。ある検査員が経度と考える角結膜のフルオレセイン染色を、別の検査員が中程度と考える可能性があり、その逆もあり得る。
【0008】
共焦点顕微鏡法や涙液膜浸透圧モル濃度などの診断法が近年導入されている。共焦点顕微鏡法を用いてDESを診断することは、眼表面との接触を必要とする、時間のかかる処置であり、そのため普通の診療所には採用され難く、その使用が研究に限定される。また、共焦点顕微鏡法では、全角膜のうちの小さなエリアにわたってのみ画像をキャプチャすることができる。涙液膜浸透圧モル濃度は、DESを診断する定量的方法として有望であるが、侵襲的でもあり、時間もかかる。文献にはまた、涙液浸透圧モル濃度のカットオフ値が欠如していること、および正常な被験者とDES患者との間に大きな重複があることも示されている。十分なデータによってそれ以外であると証明されるまで、ドライアイを潤せば、不十分な自然の涙液に代わるものを提供することによって眼表面の健全性を改善することができるが、涙液膜浸透圧モル濃度は改変されない。従って、浸透圧モル濃度を見ても、治療に対する患者の反応についての洞察は得られない可能性がある。
【0009】
角膜拡張症は、角膜の構造的完全性に悪影響を及ぼす進行性疾患である。弱くなった角膜は膨れ上がり、深刻な不正乱視が起こり始める。正乱視は視力を低下させ、疾患が進行するにつれて角膜の瘢痕が起こる。角膜拡張症には、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、屈折矯正術後拡張症、および球状角膜など他の稀な疾患が含まれる。紫外線(UV)光とリボフラビンを用いて角膜を硬くし、疾患の進行を止める角膜コラーゲン架橋などの角膜拡張症の治療法が策定されている。不正乱視または瘢痕により視力が低下する前に、非常に早い段階で疾患の進行を止めることが望ましい。そこで、不可逆的な角膜損傷が起こる前に治療を可能にするために、それらの初期患者を検出できる特定の感度のよい兆候が必要である。
【0010】
屈折矯正術後拡張症は、屈折矯正手術の壊滅的な合併症であり、米国だけで何百万人もの患者が受ける選択的な処置である。それらの患者の視力を脅かすこの合併症の最も一般的な原因は、従来的な現在の診断技術では検出されなかった初期拡張症患者に屈折矯正手術を施してしまうことである。このことは、それらの初期患者を検出してそのような壊滅的な合併症から救うために用いることができる特定の感度のよい兆候の必要性を強調する。
【0011】
拡張症の現在の診断基準には、角膜のトポグラフィおよび厚さが含まれる。それらの使用は、一般集団間のそれらのばらつきによって複雑になる。角膜厚さの正常な範囲は広く、正常な薄い角膜と初期の拡張症患者との間の重複のために、拡張症の初期の症例の診断におけるこの基準の使用が複雑になる。従って、特異性の欠如は、拡張症の診断に角膜肥厚化を用いることの有意な限定事項である。拡張症の診断に角膜トポグラフィを用いることは、角膜薄厚化と同じ限定事項を共有する。不正乱視は、正常な被験者と拡張症患者とに見られ、特に軽度の場合、診断を行うためのその使用が複雑になる。
【0012】
角膜移植片拒絶エピソード/不全およびフックスジストロフィー:角膜移植術、すなわち角膜移植は、損傷した角膜または罹患した角膜を、提供された角膜組織移植片と取り替えるために用いられる。米国だけで毎年約60,000件の角膜移植が行われており、移植片レシピエントの身体が、提供された角膜組織を拒絶することは珍しくない。実際、それらの患者の50%が少なくとも1回拒絶エピソードを経験し、移植の20%が3年目までに最終的に失敗すると推定されており、これは一般に患者の免疫系が移植片内皮を攻撃して破壊してしまうためである。移植片を保護し、その生存を延ばすために、拒絶反応をできるだけ早く検出して逆転させなければならない。しかし、残念ながら、拒絶反応の初期段階は容易には識別されない。現在、拒絶反応の検出には細隙灯検査などの方法が用いられるが、この方法では限られた倍率しか提供されず、軽度の無症状拒絶エピソードは見逃されがちである。また、スペキュラーマイクロスコピーを用いた内皮細胞数の測定は、十分な再現性、感度、および特異性に欠ける。最後に、中心角膜厚さの測定は、軽度の症例の診断に役立つだけの十分な感度を欠き、また、正常な角膜厚さの範囲が広いことが、軽度の角膜移植片拒絶反応および浮腫の診断におけるその使用を複雑にする。
【0013】
フックスジストロフィー(またはフックス内皮ジストロフィー)は、角膜の内皮表面からのグッテー(guttae)(病巣の成長)の蓄積を伴う角膜内皮の変性疾患である。フックスジストロフィーにおける角膜内皮細胞の変性は、角膜浮腫と視力喪失につながる。フックスジストロフィーは50代および60代の人々に最もよく見られるが、この疾患は人々が30代および40代の頃に影響を及ぼし始める可能性があるため、その初期段階で症状を正確に識別することが重要である。角膜移植片の拒絶反応を検出するのに一般的に用いられるのと同じ方法を用いてフックスジストロフィーを診断することが多いが、これらの方法には上記と同じ限定事項がある。更に、拒絶反応、不全、またはフックスジストロフィーを定義できるカットオフ値がない。同様に、内皮細胞数についてのカットオフ値がないため、内皮細胞数を用いることも同じように不正確である。透明な角膜を維持できる内皮細胞の数は不明である。また、フックスジストロフィー患者の少なくとも3分の1において、信頼性の高い内皮細胞数が得られないことが示されている。
【0014】
フックスジストロフィーは、米国における角膜移植の主な原因であり、全角膜移植術のほぼ4分の1を占める。40歳より高齢の米国人口の約5%がフックスジストロフィーを患っている。この症状は加齢性疾患であり、人口が高齢化するにつれて、フックスジストロフィーの有病率は更にいっそう上昇すると予想され、それにより更にいっそう有意な公衆衛生問題を課すと予想される。フックスジストロフィーは、アイバンキングに課題を課す。正常な被験者と初期のフックスジストロフィーとの間の混同は、患者に初期のフックスジストロフィー角膜移植片を移植してしまうリスク、または一方、角膜組織を不必要に無駄にしてしまうリスクの何れかを伴う。また、角膜組織に対する需要は増している。人口の高齢化、フックスジストロフィーの有病率の増加、および内皮角膜移植術の閾値の低下により、需要と供給のギャップが拡大している。しかし、角膜移植片における新生角膜グッテーの発生が報告されており、これは未診断のフックスジストロフィー移植片を移植する結果である可能性が最も高い。
【0015】
角膜の輪部幹細胞欠損が更なる懸念である。輪部幹細胞は、角膜上皮の再増殖に関与する。角膜の幹細胞の欠損は、上皮の自己再生または修復の失敗につながる。これにより、持続性で治療に耐性を示す角膜の上皮欠損が起こり、角膜透明度が失われて失明に至る。角膜の基底上皮層は、それらの幹細胞によって生成される、上皮細胞の最内層であり、角膜上皮のより表在性の層の前駆体である。現在、輪部幹細胞欠損(LSCD)の診断は、使用する倍率が最大16倍までしかない細隙灯を用いて行われ、輪部幹細胞も基底上皮層も視覚化することはできない。共焦点顕微鏡法では、上皮の基底層を視覚化できるが、非常に小さな窓部(0.4mmx0.4mm)を通すことになり、角膜全体を表すものではない。これらの細胞層の断面図を構築することもできない。
【0016】
光干渉断層撮影法(OCT)は、例えば、生体組織内からマイクロメータ解像度の三次元画像をキャプチャする非侵襲的な光信号の取得および処理方法である。OCTは、網膜および視神経の撮像に不可欠なツールであることが証明されている。OCTは眼科のプラクティスを変え、加齢性黄斑変性症や緑内障などの有意な罹患率および有病率を有する疾患の診断および管理のゴールドスタンダードとなっている。それにも拘わらず、OCTは一般に前眼部、特に角膜撮像においてそのような役割をまだ果たしていない。これは、前眼部と角膜の撮像において、デバイスの標準化された臨床応用が欠如していることによる可能性が最も高い。
【0017】
そのため、ドライアイ症候群、角膜拡張症、角膜移植術の拒絶反応および不全、およびフックスジストロフィーなどの角膜症状を診断するための改善された指標を提供することが望ましい。これらの改善された指標は、OCTシステムなどの現在および将来の撮像デバイス、または角膜症状を識別および監視するために、眼、特に角膜の高解像度画像を提供できる任意の他の撮像デバイスまたはシステムで使用可能であることが更に望ましい。
【発明の概要】
【0018】
本技術は、特定の角膜症状の改善された診断、治療、および監視のための方法およびシステムを、新しい治療法の評価と共に提供する。本技術は、角膜の改良されたマッピング、特に、層厚データを保持しながら、角膜厚さの三次元マッピングを区別する層を作成することに関する。これらの技術は、例えば角膜層の厚さなどの診断データのこれまで利用できなかったレンダリングを提供し、それによって、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、屈折矯正術後拡張症、球状角膜、角膜移植拒絶反応および角膜移植において失敗した移植片、フックスジストロフィー、角膜輪部幹細胞欠損、およびドライアイ症候群(DES)を含むいくつかの症状の改良された評価および診断を提供する。
【0019】
一例において、コンピュータに実装される眼の評価方法は、画像プロセッサを用いて、眼の角膜の複数の高解像度画像をセグメント化して、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つ以上の微小層を識別する工程であって、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含む、工程と、複数の高解像度画像のセグメント化から、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータを求める工程と、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータから厚さマップを策定する工程であって、厚さマップが識別された生物学的に定義された微小層全体にわたる角膜厚さの差を識別し、厚さマップが角膜の診断可能な症状と相関している、工程と、診断可能な症状の徴候を提供するために厚さマップを表示する工程と、を含む。
【0020】
一部の例において、生物学的に定義された微小層は、上皮、基底上皮層、ボーマン層、1つ以上の内皮/デスメ層複合体、および/またはコラーゲン架橋層を含む。
【0021】
一部の例において、診断可能な症状は、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、屈折矯正術後拡張症、角膜移植拒絶反応および角膜移植において失敗した移植片、フックスジストロフィー、角膜幹細胞欠損、およびドライアイ症候群からなる群から選択される。
【0022】
一部の例において、マッピングは三次元厚さマップである。一部の例において、厚さマップは角膜微小層厚さの差を示すヒートマップである。一部の例において、厚さマップはブルズアイ厚さマップである。
【0023】
一部の例において、方法は、ボーマン層の三次元厚さマップを策定することを含み、厚さマップは、ボーマン層の最小厚さ領域、ボーマン層の正常厚さ領域、ボーマン層の最大厚さ領域、および/またはボーマン層全体にわたる厚さ領域における不規則性を区別する色分けを有する。
【0024】
一部の例において、この方法は、内皮/デスメ層の三次元厚さマップを策定することを更に含み、厚さマップは、内皮/デスメ層の最小厚さ領域、内皮/デスメ層の正常厚さ領域、内皮/デスメ層の最大厚さ領域、および/または1つ以上の層全体にわたる厚さ領域における不規則性を区別する色分けを有する。
【0025】
一部の例において、この方法は、角膜上皮の三次元厚さマップを策定することを更に含み、厚さマップは、角膜上皮全体にわたる厚さの変化の不規則性の徴候を含み、不規則性の徴候は、角膜のそれぞれ異なる領域全体にわたる厚さの不規則性の密度の差を示す。
【0026】
一部の例において、この方法は、基底上皮層の三次元厚さマップを策定することを更に含み、厚さマップは、基底上皮層の有無、正常厚さ領域、および/または1つ以上の層全体にわたる厚さ領域における不規則性を区別する色分けを有する。
【0027】
別の例において、眼の診断可能な症状を評価するためのシステムは、1つ以上のプロセッサと、非一時的な命令を保存するコンピュータ可読メモリとを含み、非一時的な命令が当該1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムが以下を行う。すなわち、画像プロセッサを用いて、眼の角膜の複数の高解像度画像をセグメント化して、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つ以上の微小層を識別し、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含み、複数の高解像度画像のセグメント化から、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータを求め、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータから厚さマップを策定し、厚さマップが識別された生物学的に定義された微小層全体にわたる角膜厚さの差を識別し、厚さマップが角膜の診断可能な症状と相関しており、診断可能な症状の徴候を提供するために厚さマップを表示する。
【0028】
一部の例において、コンピュータ可読メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムに以下を行わせる更なる非一時的な命令を保存する。すなわち、(a)(i)角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つの微小層の前面を識別し、その前面が登録基準面であり、(ii)複数の高解像度画像における複数の画像フレームを前面と比較し、(iii)登録条件を満たさないフレームを抽出し、(iv)残りのフレームについて、合計および平均化プロセスを行って複数の生物学的に定義された微小層うちの1つの微小層の高解像度複合画像を生成する、ことによって複数の高解像度画像に対して画像登録を行う。
【0029】
一部の例において、コンピュータ可読メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムに以下を行わせる更なる非一時的な命令を保存する。すなわち、(b)高解像度複合画像について1つ以上のコントラスト遷移面を識別し、コントラスト遷移面はそれぞれ異なる角膜微小層間の各界面に対応し、(c)隣接する生物学的に定義された微小層について(a)を行って2番目の高解像度複合画像を識別し、隣接する生物学的に定義された微小層が1つ以上のコントラスト遷移面によって識別され、(d)角膜の生物学的に定義された微小層のそれぞれについて(c)を行う。一部の例において、(b)は、上皮の前部界面、上皮/基底上皮層界面、基底上皮/ボーマン界面、ボーマン/ストロマ界面、内皮/デスメ層の前部界面、内皮/デスメ層の界面、水様液、および/またはコラーゲン架橋層界面への遷移を識別するために行われる。
【0030】
一部の例において、コンピュータ可読メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムに以下を行わせる更なる非一時的な命令を保存する。すなわち、(a)複数の高解像度画像のそれぞれについて、(i)角膜の前面と角膜の後面を識別し、(ii)角膜の前面と角膜の後面を、基準フレームの前面と後面にそれぞれマッチングさせ、(b)合計および平均化プロセスを行って、登録された複数の高解像度画像から、角膜の画像である高解像度複合画像を生成する、ことによって複数の高解像度画像に対して画像登録を行う。
【0031】
一部の例において、コンピュータ可読メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムに以下を行わせる更なる非一時的命令を保存する。すなわち、角膜の頂点を識別し、角膜の頂点を基準フレームの頂点にマッチングさせることによって、複数の高解像度画像に対して画像登録を行う。
【0032】
一部の例において、コンピュータ可読メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムに以下を行わせる更なる非一時的命令を保存する。すなわち、高解像度複合画像の前面と後面を識別し、前面を用いて高解像度複合画像を平坦化し、後面を用いて高解像度複合画像を平坦化し、前面を用いた平坦化から、角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、後面を用いた平坦化から、角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、前面を用いた平坦化からの推定と後面を用いた平坦化からの推定とを組み合わせることによって、セグメント化された高解像度複合画像を生成する。
【0033】
一部の例において、コンピュータ可読メモリは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムに以下を行わせる更なる非一時的命令を保存する。すなわち、前面を用いた平坦化の垂直投影を行い、1つ以上の生物学的に定義された微小層間の各界面に対応する1つ以上のコントラスト遷移面を識別することによって、前面を用いた平坦化から角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定し、後面を用いた平坦化の垂直投影を行い、1つ以上の生物学的に定義された微小層間の各界面に対応する1つ以上のコントラスト遷移面を識別することによって、後面を用いた平坦化から角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層を推定する。
【0034】
別の例において、眼の診断可能な症状のためのシステムは、1つ以上のプロセッサと、非一時的な命令を保存するコンピュータ可読メモリとを含み、非一時的な命令が当該1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムが以下を行う。すなわち、角膜の複数の高解像度画像のそれぞれに対して二面登録を行い、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含み、角膜の高解像度複合画像を生成し、二面登録が、前面登録と後面登録とを含み、高解像度複合画像をセグメント化して、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれを識別し、高解像度複合画像のセグメント化が、高解像度複合画像を平坦化することと、高解像度複合画像の平坦化されたレンディションの垂直投影を行って、セグメント化された高解像度複合画像を生成することとを含み、セグメント化された高解像度複合画像から、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さを求め、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層について厚さマップを策定し、厚さマップが、複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の全体にわたる厚さの視覚的な差を識別し、厚さマップが角膜の診断可能な症状と相関しており、診断可能な症状の視覚的徴候を提供するために厚さマップを表示する。
【0035】
別の例において、眼の診断可能な症状のためのシステムは、1つ以上のプロセッサと、非一時的な命令を保存するコンピュータ可読メモリとを含み、非一時的な命令が当該1つ以上のプロセッサによって実行されると、システムが以下を行う。すなわち、角膜の複数の高解像度画像に対して多面登録を用いて、角膜の複数の高解像度画像から角膜の高解像度複合画像を生成し、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含み、角膜の複数の高解像度画像がそれぞれ頂点を有する湾曲画像であり、高解像度複合画像をセグメント化して、高解像度複合画像に対して多面平坦化を用いて、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれを識別し、セグメント化によってセグメント化された高解像度複合画像が生成され、セグメント化された高解像度複合画像から角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さを求め、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さマップを策定し、厚さマップが、複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の全体にわたる厚さの視覚的な差を識別し、厚さマップを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下で説明する各図は、本明細書で開示されるシステムおよび方法の様々な態様を示している。それぞれの図が、本システムおよび方法の態様の一例を表していることが理解されるべきである。
【0037】
【
図1】一例による、角膜の1つ以上の微小層の三次元厚さマップを策定することによって被験者の眼、特に被験者の角膜を評価するプロセスを示す。
【0038】
【
図2A】
図1のプロセスによって策定された、健康な角膜組織を持つ被験者についての三次元マップであり、健康な角膜組織の三次元ヒートマップを示す。
【
図2B】
図1のプロセスによって策定された、健康な角膜組織を持つ被験者についての三次元マップであり、健康な角膜組織の三次元ブルズアイマップを示す。
【0039】
【
図3A】
図1のプロセスによって策定された、円錐角膜を患う被験者についての三次元マップであり、円錐角膜症状の三次元ヒートマップを示す。
【
図3B】
図1のプロセスによって策定された、円錐角膜を患う被験者についての三次元マップであり、円錐角膜症状の三次元ブルズアイマップを示す。
【0040】
【
図4】一例による、セグメント化ならびに微小層の識別および厚さ測定のプロセス例を示す。
【0041】
【
図5A】一例における、角膜の第1の高解像度原画像の断面画像である。
【
図5B】一例における、角膜の登録および平均化された画像の断面画像である。
【0042】
【
図6】角膜全体の断面画像であり、微小層がマップアウトされ、それぞれの層の各前面によって境界が定められている。EP1は角膜上皮の前面である。EP2は、基底上皮と上皮の残りの各層との間の界面である。BW1は、基底上皮とボーマン層との間の界面である。BW2は、ボーマン層とストロマとの間の界面である。DMは、ストロマと内皮/デスメ複合層とストロマとの間の界面である。ENは、内皮/デスメ複合層の後部界面である。
【0043】
【
図7】一例における、
図1および
図4のプロセスを行う際に角膜微小層の厚さマッピングを行うための光学撮像システムの例の概略図である。
【0044】
【
図8】別の例における、被験者の眼を評価するためのプロセスを示す。
【0045】
【
図9】一例における、
図8のプロセス中に行われ得る登録プロセスを示す。
【0046】
【
図10】一例における、
図8のプロセス中に行われ得るセグメント化プロセスを示す。
【0047】
【
図11】一例による、ブルズアイマッピング厚さマップの凡例を示す。
【0048】
【
図12A】一例による、何れも正常で健康な被験者についての、ボーマン層の三次元ヒートマップおよび
図11のマッピングスキーマを用いたブルズアイマップを示す。
【
図12B】一例による、円錐角膜を患う被験者についての、ボーマン層の同様の三次元ヒートマップとブルズアイマップを示す。
【0049】
【
図13A】一例による、上皮層の前部境界を識別するセグメント化中の洗練化手順の例であって、洗練化前のセグメント化ラインを示す。
【
図13B】一例による、上皮層の前部境界を識別するセグメント化中の洗練化手順の例であって、洗練化後のセグメント化ラインを示す。
【0050】
【
図14A】一例による、ボーマン層の前部境界を識別するセグメント化中の洗練化手順の例であって、洗練化前のセグメント化ラインを示す。
【
図14B】一例による、ボーマン層の前部境界を識別するセグメント化中の洗練化手順の例であって、洗練化後のセグメント化ラインを示す。
【0051】
【
図15A】一例による、上皮から測定された角膜内のコラーゲン架橋微小層の深さを示すヒートマップを示す。
【0052】
【
図15B】一例による、角膜内のコラーゲン架橋微小層の厚さヒートマップを示す。
【0053】
【
図15C】一例による、角膜内のコラーゲン架橋微小層と内皮との間の距離を示すヒートマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、被験者の眼を評価する、特に眼の角膜症状を評価するためのコンピュータに実装される方法100の例を示す。方法100は、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、屈折矯正術後拡張症、球状角膜、角膜移植拒絶反応および角膜移植において失敗した移植片、フックスジストロフィー、角膜輪部幹細胞欠損、およびドライアイ症候群(DES)を含む角膜症状を評価するように適合されている。
【0055】
方法100は、
図7を参照して以下で更に説明するようなシステムによって実施されてもよい。図示の例において、オペレーション102で、光学撮像システムが、被験者の片眼(両眼)の角膜の複数の高解像度画像を取得する。これらの高解像度画像は、例えばリアルタイムでキャプチャされてもよい。他の各例において、これらの画像は、画像データベースまたは他のメモリに保存された、予め収集された角膜画像であってもよい。
【0056】
光学撮像システム自体が角膜画像を被験者から直接記録するかどうか、または角膜画像が別のイメージャから取得されるかデータベースから取得されるかに拘わらず、本明細書における画像処理、分析、および診断技術は、既存の光学撮像システム内で部分的または全体的に、または専用の画像プロセッサ内で部分的または全体的に実施されてもよい。光学撮像システムの例には、電荷結合素子(CCD)カメラなどの適切な角膜イメージャ、オルブスキャン(Orbscan)システム(Bausch&Lomb社、ニューヨーク州ロチェスター)などの光学スリット設計を用いた角膜トポグラフィスキャナ、ペンタカム(Pentacam)(Oculus社、ワシントン州リンウッド)などのシャインプフルーク(Scheimpflug)イメージャ、反射光を収集する従来の顕微鏡、ピンホール光源および共役ピンホール検出器を用いた共焦点顕微鏡ベースのシステム、角膜を撮像する光干渉断層撮影(OCT)イメージャおよび前眼部イメージャ、角膜画像再構築のために光源を基準ビームと測定ビームとに分割する光干渉法ベースのシステム、および高周波高解像度の超音波生体顕微鏡検査法(UBM)イメージャが含まれる。
【0057】
角膜画像はそれぞれが異なる方向に目を向けてキャプチャされた複数の画像であってもよく、そこから各画像をつなぎ合わせることにより角膜の広域走査が形成される。一部の例において、これらの画像は広角光学撮像システムから収集された角膜の複数の広域走査画像であり、これらの広角画像は画像処理または撮像システムにおける補正光学段階の何れかによって光学歪みが補正されている。
【0058】
各例において、取得された各画像には、角膜の1つ以上の生物学的に定義可能な微小層の画像が含まれる。このような各画像は、典型的にはセグメント化されていない角膜原画像データであり、このことは各微小層が画像内で直接識別されないことを意味し、むしろこれらの画像は、本明細書において独自のアルゴリズム技術を適用する撮像システムによってセグメント化された1つ以上の微小層をキャプチャするであろう。
【0059】
オペレーション104で、方法100は、複数の高解像度画像に対してセグメント化プロセスを行う。特に、画像プロセスは、各画像をセグメント化することを介して、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つ以上を識別する。セグメント化から、画像プロセッサは角膜の1つ以上の生物学的に定義された微小層の厚さを求める。本明細書において撮像システムとも呼ばれる画像プロセッサは、OCTイメージャなどの既存の光学撮像システムのプロセッサであってもよいが、一部の例においては、画像プロセッサは光学撮像システムから高解像度画像を受け取る別個のシステム内にある。画像プロセッサは、一例として、汎用プロセッサまたは専用プロセッサ上に実装されてもよい。
【0060】
画像プロセッサは、オペレーション104で、複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれ、すなわち、上皮、基底上皮層、ボーマン層、および1つ以上の内皮/デスメ層の複合体を識別するようにプログラムされてもよい。撮像システムが特定の角膜症状を識別するようにプログラムされる場合など他の各例において、画像プロセッサは、オペレーション104で、各画像をセグメント化し、角膜の特定の微小層のみの厚さを識別してもよい。
【0061】
オペレーション104で各微小層がそれぞれ異なる画像データにセグメント化され、各微小層の厚さが求められた場合、オペレーション106で、画像プロセッサが、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれについての画像データを組み合わせて角膜全厚(一方の角膜縁から他方の角膜縁までの角膜全体)の厚さマップを生成する。すなわち、一部の例において、厚さマップは、複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれについて求められた厚さの合計であり、角膜全体にわたる総合的な厚さを示し、例えば、一方の角膜縁から他方の角膜縁までの角膜全体の3Dマップを提供する。また、厚さマップにおける組み合わせデータは、各微小層のそれぞれについて指定された厚さ値を保持してもよい。すなわち、これらの技術では、角膜の一端から他端まで全域にわたって各角膜微小層の厚さを測定する。
【0062】
この角膜全体にわたって厚さを求める機能により、角膜全体にわたって異常または不規則な厚さの領域を測定することができる。ただし、オペレーション104およびオペレーション106での測定によって、画像プロセッサは同様に各微小層厚さを分析することもできるため、第1の角膜全体の厚さと第2の微小層の厚さの2レベルの厚さ分析が提供される。
【0063】
図示の例において、オペレーション108で、撮像システムは厚さマップを策定し、オペレーション108を介してモニタ(またはディスプレイ)を通じて厚さマップを表示する。その厚さマップは、全角膜微小層厚さを視覚的に描写することによって、厚さマップ全体にわたって各角膜微小層の厚さの差を視覚的に識別してもよい。視覚的描写は、角膜の診断可能な症状に相関する厚さの差を識別する。
【0064】
図2Aは、角膜微小層の厚さマップ描写の例、具体的にはボーマン層のヒートマップを示す。ヒートマップは、色分けまたは濃淡分けされた色の変化を示す。ヒートマップの凡例は、各角膜微小層の標準的な厚さデータに基づいており、緑色は正常状態、黄色は境界域状態、赤色は病理状態を示す。基底上皮およびボーマン層の薄厚化は病理的であるため、赤色を用いて病理的薄厚化を表し、黄色で境界域薄厚化を示し、緑色を正常範囲の厚さとした。内皮/デスメ層の複合体において、層の肥厚化は病理的変化である。そこで、取得した標準データに基づき、赤色を用いて病理的肥厚化を表し、黄色で境界域厚さを示し、緑色を正常な厚さとした。
【0065】
図示の例において、厚さ値は、角膜のボーマン層全体にわたって、5ミクロンまたは約5ミクロンから30ミクロンまたは約30ミクロンまでの範囲に求めた。
図2Bは、同じボーマン層の別の厚さマップを、ブルズアイの厚さマップの形式で示す。
【0066】
ヒートマップとブルズアイマップは、本技術によって生成され得る様々な三次元厚さマップスキーマの例である。また、本明細書で説明するように、これらのタイプの厚さマップスキーマのそれぞれについて数々の変形があり、例えば、ブルズアイマップは微小層の厚さについて値を示してもよく、またはそのブルズアイマップは微小層の領域間の厚さの比率を示してもよい。
【0067】
ブルズアイマップは、ボーマン層の厚さマップを、その層の9つのセクションについての一連の厚さ値として表示する。9つのセクションのうち、1つの中心領域は瞳孔を中心とし、8つのくさび形領域は中心領域から半径方向外側に延びる。ブルズアイマップは、例えば、角膜を複数の領域に分割し、平均、最小、または最大厚さデータ、または微小層の厚さの、角膜のそれぞれの領域における角膜全厚に対する比率を提示することにより、異なるマッピングスキーマで提示することができる。他の各スキーマ例において、ブルズアイマップは、角膜のある領域における微小層の厚さの、別の角膜領域において測定されたその微小層の厚さに対する比率として提示される。更に他のスキーマ例において、ブルズアイマップは、角膜の特定の領域における微小層の厚さの、その領域またはその微小層についての標準データに比した比率として提示される。そのようなマッピングスキーマは、角膜のそれぞれ異なる経線に沿った角膜の中心から周辺への微小層の厚さまたは厚さプロファイルの推移も示すことができる。
【0068】
図2Aおよび
図2Bの厚さマップは、対照サンプルについてのボーマン層、すなわち健康な被験者のボーマン層の厚さ値を表す。一般に、ボーマン層全体にわたる厚さ値は、12ミクロンから30ミクロンまでの厚さの範囲にある。ただし、特定の被験者や被験者集団については他の厚さ範囲が存在する場合がある。
【0069】
図3Aおよび
図3Bは、円錐角膜を患う被験者の角膜画像から方法100によって策定された厚さマップを示す。円錐角膜は、システムのいくつかのそれぞれ異なる診断測定法を用いて、ボーマン層の厚さマッピングから識別可能である。システムは、例えば、
図3Aまたは
図3Bの厚さマップを対応する
図2Aまたは
図2Bの厚さマップと比較して、ボーマン層の全てまたは特定の領域全体にわたる厚さの差の値を求めてもよい。ピクセル毎の比較を行ってもよいが、一般的にこれらの比較は領域毎に行われる。
【0070】
一部の例において、システムはボーマン層の複合指標値を求め、その複合指標を対照厚さマップについて求められた複合指標値と比較してもよい。例えば、(A)ボーマン拡張指数(3D BEI;角膜の下半分のそれぞれの領域のボーマン層(BL)最小厚さを、角膜の上半分の対応する領域のBL平均厚さで割り、100を掛けたものと定義される)、および(B)BEI-Max(角膜の下半分のBL最小厚さを、角膜の上半分のBL最大厚さで割り、100を掛けたものと定義される)を比較のために用いてもよい。3D BEIの測定の例は、領域C1におけるBLの最小厚さをBL領域C2の平均厚さで割り、100を掛けたものである(例えば、
図11のブルズアイ厚さマップおよび凡例と
図12Aおよび
図12Bのヒートマップとブルズアイの例をそれぞれ参照)。本明細書に記載の本技術の場合、システムによって、角膜全体の3Dマップを用いてそのような指標が計算され、より正確な指標および指標比較が可能になる。3D BEIを用いる場合、従来の技術に比べてかなりの利点がある。例えば、本技術の場合、角膜の中心エリアを通過するが、角膜ボーマンの最薄点を通過しない可能性がある2D走査上の最薄点だけでなく、角膜全体の最薄点を検出できる。
【0071】
更に他の各例において、システムは、
図3Aおよび
図3Bの厚さマップを、層の全体的な厚さ値、またはブルズアイマップ内の各領域のうちの1つ以上の領域の閾値厚さ値の何れかである、保存された閾値厚さ値に照らして比較する。何れの場合も、厚さの差の量は、それぞれ異なるヒートマップまたはブルズアイマップ間であるか、厚さマップと閾値データまたは厚さ推移プロファイルとの間であるかに拘わらず、それらの差が診断を行うために望ましい保証レベルを満足するのに十分に実質的であるかどうかを判断する保証プロセスを用いて更に調べられてもよい。撮像システムは、特定の各領域における厚さの差が他の各例における厚さの差よりも円錐角膜により相関的である可能性があるため、現在の角膜画像と対照または閾値との間の差の量を調べるだけでなく、ボーマン層内の特定の各領域も調べる保証プロセスを行ってもよい。実際、一部の例において、円錐角膜などの診断可能な症状について、下角膜などの主要な対象領域が、撮像システム内にプログラムされてもよい。他の各例においては、しかし、撮像システムは学習モードを用いてプログラムされてもよく、これは機械学習アルゴリズムが複数のセットの角膜画像データに、角膜画像データから同定するまで適用されるかどうかによらない。このデータには、正常な角膜組織を有する被験者についての様々な画像および円錐角膜を患う被験者についての様々な画像が含まれる。機械学習から、それぞれ異なる領域全体にわたる厚さの差の値のみならず、主要な対象領域も識別され得る。後者の場合、例えば、撮像システムは、層内のそれぞれ異なる領域のそれぞれ異なる閾値厚さを求めるだけでなく、それらのそれぞれ異なる領域のそれぞれ異なる高保証値を求めてもよい。例えば、
図2Bのブルズアイプロットを他の画像データに照らして評価すると、撮像システムは、角膜の2つの対向する放射状の内側、外側であってかつ下側の領域のそれぞれについて、20ミクロンの閾値を識別してもよい。しかし、
図3Aに示すように、下側の各放射状領域のうちの1つのみが円錐角膜の徴候に大きな相関性を示す。撮像システムは、機械学習を適用する場合、それぞれの領域について20ミクロンの閾値を求めることができるが、最左領域にはより広い保証帯域を適用し、そのため、より多くのその閾値未満の厚さの変動値を警告しない。これはその領域がより非相関的であるため、円錐角膜をより表出しないと思われるからである。ただし、最右領域は、非常に狭い保証帯域を持つと判断でき、つまり、同じ閾値について、その閾値よりも小さいがその閾値に非常に近い厚さ値は、システムによって円錐角膜の徴候である、または少なくとも円錐角膜の徴候である可能性があるとは警告されない。
【0072】
図2A、
図2B、
図3A、および
図3Bのマップ例は、ボーマン層についての厚さマップから求められ、特に円錐角膜の診断に用いられる。同じ技術を用いて、角膜微小層のうちの任意の1つ以上の微小層の厚さマッピングを策定してもよく、この任意の1つ以上の層は、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、屈折矯正術後拡張症、角膜移植拒絶反応および角膜移植において失敗した移植片、フックスジストロフィー、輪部幹細胞欠損、およびドライアイ症候群を含むがこれらに限定されない検査中の診断可能な症状を表出する層である。円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、および屈折矯正術後拡張症の症状は、特にボーマン層によって表出される。そこで、方法100を適用して、そのボーマン層の厚さマッピングを求めてもよい。他の症状は、角膜内の他の微小層の厚さを分析することから得られるであろう。実際、本技術を用いて、同じ自動化プロセスを通じて角膜のこれら全ての微小層について厚さを求め、厚さマップを生成してもよい。
【0073】
図示の例において、オペレーション108で、撮像システムは三次元厚さマップを生成する。ヒートマップ、すなわち
図2Aおよび
図3Aは、カラーコーディングまたはグレースケールコーディングで第3の次元(XVエリアが最初の2つの次元)の厚さデータを表す。ブルズアイマップ、すなわち
図2Bおよび
図3Bは、数値的な厚さスコアを用いて第3の次元を表す。その数値的な厚さスコアは、ブルズアイマップの領域について全体的な厚さ値を表す。その値は、領域全体にわたる厚さを合計した、総計厚さ値であってもよい。その値は、領域全体にわたる平均厚さ値、領域全体にわたる最小、最大、分散、または標準偏差厚さ値、または何らかの他の厚さ値、領域の厚さの、別の領域または診断指標に対する比率であってもよい。
【0074】
どのマッピングスキーマを用いる場合でも、システムによって策定された三次元厚さマップは、ヒートマップにおける各正常厚さエリア(またはブルズアイにおける各領域)を診断可能な症状を表出する厚さから区別するように構成される。
【0075】
一部の例において、複数のそれぞれ異なる厚さマップを用いて、同じ診断可能な症状を分析および診断してもよい。例えば、症状がドライアイ症候群である場合、角膜の上皮、基底上皮層、ボーマン層、および内皮/デスメ層の複合体を含む複数のそれぞれ異なる微小層について厚さを分析して厚さマップ(またはマップ群)を生成してもよい。このような各例において、三次元厚さマップは、これらの全ての層について厚さを合計した複合厚さを含む。しかし、特定の各層についてのデータセットおよび厚さの差に依存して、これらの層のうちの1つのみ、例えば上皮のみを用いてもよい。例えば、これらの全ての層について組み合わされた全体的な厚さはドライアイの徴候を示すことができるが、上皮の厚さにおける特定の不規則性もドライアイ症候群の徴候を示し得る。すなわち、上皮のそれぞれ異なる厚さパターン自体がドライアイ症候群の表出バイオマーカーであり得る。例えば、撮像システムは、角膜上皮の厚さマップ(群)を評価し、ドライアイ症状が水様液の欠乏に起因することを示す角膜の中心エリア(またはブルズアイの中心領域)を分析してもよい。別の例において、撮像システムは、上皮の厚さマップ(群)、特に脂質の欠乏がドライアイ症候群の原因であることを示す角膜の下部または上部エリア(または領域)を分析する。撮像システムは、いくつかのそれぞれ異なるプロセスを通じて不規則性を検出および分析してもよい。例えば、厚さマップのそれぞれの領域上(例えば、ブルズアイマップのそれぞれの領域上)で上皮厚さの標準偏差と分散を計算することで、不規則性が識別される。そのような不規則性は、厚さマップ内の、または他の各例においては、厚さマップ全体にわたる、1つ以上のキー領域について求められてもよい。どの各領域およびどれだけの各量の不規則性(例えば分散量)が分析されるかは、特定の各症状が不規則性の特定の各量に関連付けられ、厚さマップの特定の各領域にわたって、特定の各微小層のみについて、基礎症状に依存し得る。そのため、撮像システムは、微小層上の予め指定された不規則性パターンについて識別するように構成されてもよい。一方、他の各例において、撮像システムは角膜全体を分析して複数の不規則性パターンのうちの何れかを識別し、その後、被験者に対してどの診断可能な症状が識別されたのかを医療専門家に明らかにしてもよい。他の統計分析を適用して、不規則性パターンの識別を更に洗練化することができる。また、更に他の各例において、微小層の厚さマップを仮想正規表面の厚さ値と比較して、ばらつきパターンを識別してもよい。
【0076】
他の診断可能な症状には、輪部幹細胞欠損が含まれ、これは基底上皮細胞の薄厚化の存在または基底上皮細胞の非存在から診断可能である。そのような各例において、基底上皮層の厚さマップが実行され、結果が診断される。
【0077】
従って、一部の例において、方法100を用いて、OCT装置または角膜の高解像度断面画像を提供する他の撮像デバイスを用いて被験者の画像を取得してもよい。被験者は、それぞれ異なる注視方向を表すそれぞれ異なる固視目標を見るように指示されてもよく、OCT装置は角膜のそれぞれ異なるセグメントの画像をキャプチャする。他の各例において、角膜の広視野を提供する広角レンズを用いて画像をキャプチャしてもよい。OCT装置または他の画像プロセッサは、例えば上皮、基底上皮層、ボーマン層、および内皮/デスメ層を含む各角膜微小層をセグメント化する。 一部の例において、セグメント化をOCT装置のオペレーターに提示し、オペレーターにセグメント化された画像を精査させ、適宜変更を加えさせてもよい。その後、OCT装置または他の画像プロセッサは、上皮、基底上皮層、ボーマン層、および内皮/デスメ層を含む取得した全ての画像から各層の厚さを計算する。OCT装置または他の画像プロセッサは、取得した各画像から取得したデータをつなぎ合わせ、それらを組み合わせて、角膜全厚、上皮、基底上皮層、ボーマン層、および内皮/デスメ層の広幅の色分け厚さマップを生成する。OCT装置または他の画像プロセッサは、ブルズアイ厚さマップを作成し、円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、屈折矯正術後拡張症、角膜移植拒絶反応および健全性、フックスジストロフィー、およびドライアイ症候群についての診断指標を算出する。
【0078】
診断可能な症状がフックスジストロフィーおよび/または角膜移植片である一部の例において、OCT装置または他の画像プロセッサは、角膜の内皮/デスメ層全体の色分けされた3Dマップを生成してもよい。内皮/デスメ層の相対的な肥厚化および正常値と比較した肥厚化と不規則性が、色分けされた3D上で強調表示される。別個のブルズアイマップが策定されてもよく、このマップは角膜の様々な部分における内皮/デスメ層の平均厚さを示し、これは症状の診断に役立つ。症状の進行または安定性は、シリアルマップとフォローアップマップから得られた厚さデータとの比較により検出されてもよい。
【0079】
診断可能な症状が円錐角膜、ペルーシド辺縁変性、および/または屈折矯正術後拡張症である一部の例において、OCT装置または他の画像処理装置は、ボーマン層全体の色分けされた3Dマップを生成する。ボーマン層の相対的な薄厚化および正常値と比較した薄厚化が、色分けされたマップ上で強調表示される。別個のブルズアイマップは、角膜の様々な部分におけるボーマン層の平均および最小厚さを示し、これらは症状の診断に役立つ。症状の進行または安定性は、シリアルマップとフォローアップマップから得られた厚さデータとの比較により検出される。
【0080】
診断可能な症状がドライアイ患者である一部の例において、OCT装置または他の画像プロセッサは、角膜全体の色分けされた3Dマップを作成し、角膜の上皮の不規則性を計算する。正常値と比較した相対的な不規則性が、色分けされたマップ上で強調表示される。別個のブルズアイマップは、平均厚さおよび角膜の様々な部分における層厚のばらつきを示し、これらは症状の診断に役立つ。OCT装置または他の画像プロセッサが、角膜の中心部分におけるより多くの不規則性を識別し、それによって水様液の欠乏と診断し、その診断がオペレータに表示されてもよく、一方、角膜の下部または上部のより多くの不規則性がOCT装置または他の画像プロセッサによって脂質欠乏性ドライアイ症候群またはマイボーム腺機能不全と診断され、それがオペレーターに表示されてもよい。症状の進行または安定性は、シリアルマップとフォローアップマップから得られた厚さデータとの比較により検出される。
【0081】
診断可能な症状が輪部幹細胞欠損である一部の例において、OCT装置または他の画像プロセッサは、基底上皮層全体の色分けされた3Dマップを生成し、その後、基底上皮層の相対的な薄厚化または非存在を判断し、このことは輪部幹細胞欠損の診断に役立つ。OCT装置または他の画像プロセッサによって症状が識別された場合、その診断がオペレーターに表示される。
【0082】
図4は、
図1の104によって実施され得るコンピュータに実装されるセグメント化プロセス200の例を示す。図示の例において、各高解像度画像をセグメント化して、1つ以上の生物学的に定義された微小層についての画像データを識別する。最初に、特に、角膜のある微小層から別の微小層に画像が遷移する各層に対応する一連の表面層を識別することにより、各高解像度画像に対して随意の画像登録プロセスが実行される。登録プロセスは、オペレーション204で、角膜内の各微小層のうちの1つの微小層の前面を識別することを含んでもよい。この前面は、例えば、上皮、基底上皮層、ボーマン層、または内皮/デスメ層の複合体の何れかの前面であってもよい。他の各例において、各微小層の前面および後面が識別されてもよい。
【0083】
前面は、コントラスト識別ベースのアルゴリズム、例えば、画像内の暗から明へ、または明から暗への諧調変化を識別するアルゴリズムを用いて識別できる。一例において、諧調法およびグラフ理論技術を角膜に適応させ、角膜層のセグメント化に用いた。また、一部の例において、特定の画像フィルターを画像分析と組み合わせて、遷移をより正確に識別する。
【0084】
例えば、各角膜微小層、すなわち上皮、基底上皮層、ボーマン層、および内皮/デスメ層の自動セグメント化と厚さデータ抽出を容易にするべく、光干渉断層撮影(OCT)画像を改良するために、画像前処理が行われる。OCT画像の前処理には、画像の登録と平均化が含まれ、これによってノイズ対信号比を低下させ、患者の動作アーチファクトを補正する。
【0085】
図示されていないが、オペレーション204の後に、ノイズを低減し、画質を改善するために各高解像度画像に適用される平均化動作を行ってもよい。
【0086】
オペレーション208で、受け取った各高解像度画像に対して諧調分析が行われる。諧調分析では、例えばグラフ理論アルゴリズムを用いて、諧調の変化が暗から明であるか、明から暗であるかに拘わらず、閾値量の諧調変化を識別する。一般に、オペレーション208で、各角膜微小層の自動セグメント化が、ある層と別の層との間の各界面を検出することにより達成される。オペレーション210で、諧調の変化から、前面が、登録された基準面として識別され、保存される。他の各例において、説明のように、基準面は、前面と後面を分析することから求められてもよい。オペレーション210ではまた、この基準面に対する後続の各画像のアラインメントが行われてもよい。そのアラインメントは、画像処理命令を通じて電子的に行われてもよい。アラインメントには、左右方向および/または回転アラインメントが含まれてもよい。各フレームのうちの1つ以上のフレームにおける前面が、患者のコース動作に付随する他のフレームの登録された表面に適合しない場合、そのフレームは抽出され、除外される。このフレーム抽出は、登録条件を満たさない画像それぞれについて施される。
【0087】
基準面を用いて、プログラムされた各アラインメントアルゴリズムから1つ以上のアルゴリズムを選択し、適用して適切な登録を行い、一部の例において、最良の登録を達成するようにシステムをプログラムしてもよい。
【0088】
後続の全ての高解像度画像が登録された基準と比較され、オペレーション210で登録条件を満たさないフレームが抽出された後、オペレーション212で各画像が特定のサイクル中ずっと、例えば25フレーム、50フレーム、100フレーム、またはそれを超える数、またはそれ未満の数のフレーム後に平均化されてもよい。すなわち、オペレーション212で、プロセス200が、残りの各フレームに合計および平均化プロセスを適用して、オペレーション214で、複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つの微小層のセグメント化された高解像度複合画像を生成する。プロセス200は、オペレーション216を介して、角膜の各微小層のそれぞれについて繰り返されてもよい。例えば、オペレーション226で、プロセス200を繰り返して、複数のコントラスト遷移面を識別してもよく、これらの遷移面は、角膜内の各微小層の各界面に対応する。プロセス200は、任意の先行する表面に隣接する各微小層について繰り返されてもよく、このプロセスは、それぞれの生物学的に定義された微小層がマップアウトされるまで繰り返されてもよい。
【0089】
図示の例において、初期登録なしでセグメント化が行われ、代わって、それぞれの画像にセグメント化(例えば、オペレーション210の微小層抽出)が適用された後、各画像が合計および平均化されて、セグメント化された高解像度複合画像が生成される。本技術の他の例示的な実施例を、
図8から
図10を参照して述べる。
【0090】
図5Aは、角膜の第1の高解像度原画像を示す。
図5Bは、25個のフレームを用いて、登録および平均化された角膜の画像を示す。2つの画像の比較から、
図5Bは、各角膜微小層を視覚化するのに大きな確実性を有する高コントラスト画像を示す。
【0091】
図6は、
図4のプロセスに従って、それぞれの層の前面および後面によってマップアウトされ、境界が定められた、各微小層を有する角膜全体を示す。各角膜層については、上皮がEP1からEP2までの層であり、基底上皮層がEP2からBW1までの層であり、ボーマン層がBW1からBW2までの層である。内皮/デスメ層は、DMからENまでの層である。
【0092】
一般的に言えば、プロセス200は、上皮の前部界面、上皮/基底上皮層界面、基底上皮/ボーマン界面、ボーマン/ストロマ界面、内皮/デスメ層の前部界面、内皮/デスメ層の界面、および水様液への遷移を識別するために用いられてもよい。
【0093】
図7は、本明細書で説明される技術の何れかを実施する際に用いられる様々な構成要素を示す撮像システム300を示す。画像処理デバイス302は、被験者320についての高解像度角膜画像を収集する角膜光学イメージャ316に結合されている。光学イメージャ316は、画像処理デバイス302に通信可能に結合されたOCTイメージャなどの任意の光学撮像システムであってもよく、これは例えば専用撮像システムであってもよい。一部の例において、撮像システム300は、OCTイメージャなどの光学撮像システム上に部分的または全体的に実装されてもよい。
【0094】
光学イメージャ316は、原データ、処理済みデータ、または前処理済みデータとして、被験者120の角膜画像データを収集して保存する。
【0095】
一部の例において、システム300は、トレーニングモードと呼ばれる第1のモードで動作可能であり、このモードにおいて、システム300はデータを収集し、健康な角膜組織に関するデータを策定する。
【0096】
分析モードと呼ばれる第2のモードにおいて、システム300は後続の角膜組織画像を収集し、分析された画像データを、トレーニングモードでキャプチャされた健康な被験者の画像データに照らして比較する。トレーニングモードデータと分析モードデータは何れも、本明細書で説明される三次元厚さマッピングデータの生成を含む。
【0097】
健康な被験者において、トレーニングデータは、総計トレーニングデータとしてまとめられた何人かの被験者からのデータを含んでもよい。一部の例において、システム300が特定の人口統計グループに関連付けられた被験者のトレーニングモデルを策定するときに、その総計データの人口統計別サブセットを用いることができるように、総計トレーニングデータが人口統計データでコード化される。
【0098】
光学イメージャ316は、有線または無線リンク324を介して画像処理デバイス302に通信可能に接続されている。前者の場合、光学イメージャ316は角膜画像をキャプチャして保存してもよく、ユーザーまたは医療提供者は、ユニバーサルシリアルバス(USB)、IEEE 1394(Firewire)、イーサネット、または他の有線通信プロトコルデバイスを介して光学イメージャ316を画像処理デバイス302に接続してもよい。無線接続は、WiFi、NFC、iBeaconなどの任意の適切な無線通信プロトコルを介して行うことができる。
【0099】
画像処理デバイス302は、入出力(I/O)回路312に接続されたリンク322を介してデータベース314に動作可能に接続されたコントローラ304を有してもよい。図示されていないが、追加のデータベースを既知の方法でコントローラ304にリンクしてもよいことに留意すべきである。コントローラ304は、プログラムメモリ306、プロセッサ308(マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサと呼ばれることもある)、ランダムアクセスメモリ(RAM)310、および入出力(I/O)回路312を含み、それらは全てアドレス/データバス321を介して相互接続されている。1つのマイクロプロセッサ308のみが示されているが、コントローラ304が複数のマイクロプロセッサ308を含んでもよいことが理解されるべきである。同様に、コントローラ304のメモリは、複数のRAM310および複数のプログラムメモリ306を含み得る。I/O回路312は単一のブロックとして示されているが、I/O回路312がいくつかのそれぞれ異なるタイプのI/O回路を含んでもよいことが理解されるべきである。RAM(群)310およびプログラムメモリ306は、例えば、半導体メモリ、磁気的に読み取り可能なメモリ、および/または光学的に読み取り可能なメモリとして実装されてもよい。リンク324は、I/O回路312を介して、コントローラ304をキャプチャデバイス316に動作可能に接続する。
【0100】
プログラムメモリ306および/またはRAM310は、マイクロプロセッサ308による実行のための様々なアプリケーション(すなわち、機械可読命令)を保存してもよい。例えば、オペレーティングシステム330は、一般に、画像処理デバイス302の動作を制御し、デバイス302にユーザーインターフェースを提供して、本明細書で説明される各プロセスを実施してもよい。プログラムメモリ306および/またはRAM310はまた、画像処理デバイス302の特定の機能にアクセスするための様々なサブルーチン332を保存してもよい。限定することなく例として、サブルーチン332は、とりわけ、以下を含んでもよい。すなわち、光学撮像システムから、眼の角膜の複数の高解像度画像を取得することと、画像プロセッサを用いて、眼の角膜の複数の高解像度画像をセグメント化して、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つ以上の微小層を識別し、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含むことと、複数の高解像度画像のセグメント化から、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータを求めることと、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータから厚さマップを策定し、厚さマップが識別された生物学的に定義された微小層全体にわたる角膜厚さの差を識別し、厚さマップが角膜の診断可能な症状と相関していることと、診断可能な症状の徴候を提供するために厚さマップを表示することと、を含む。他の各例において、サブルーチン332は、以下を行う命令を含んでもよい。すなわち、画像プロセッサを用いて、眼の角膜の複数の高解像度画像をセグメント化して、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの1つ以上の微小層を識別する命令であって、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含む、命令と、複数の高解像度画像のセグメント化から、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータを求める命令と、複数の生物学的に定義された微小層のうちの識別された1つ以上の微小層のそれぞれについての厚さデータから厚さマップを策定する命令であって、厚さマップが識別された生物学的に定義された微小層全体にわたる角膜厚さの差を識別し、厚さマップが角膜の診断可能な症状と相関している、命令と、診断可能な症状の徴候を提供するために厚さマップを表示する命令と、を含む。他の各例において、サブルーチン332は、以下を行う命令を含んでもよい。すなわち、角膜の複数の高解像度画像のそれぞれに対して二面登録を行う命令であって、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含む、命令と、角膜の高解像度複合画像を生成する命令であって、二面登録が、前面登録と後面登録とを含む、命令と、高解像度複合画像をセグメント化して、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれを識別する命令であって、高解像度複合画像のセグメント化が、高解像度複合画像を平坦化することと、高解像度複合画像の平坦化されたレンディションの垂直投影を行って、セグメント化された高解像度複合画像を生成することを含む、命令と、セグメント化された高解像度複合画像から、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さを求める命令と、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層について厚さマップを策定する命令であって、厚さマップが、複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の全体にわたる厚さの視覚的な差を識別し、厚さマップが角膜の診断可能な症状と相関している、命令と、診断可能な症状の視覚的徴候を提供するために厚さマップを表示する命令と、を含む。他の各例において、サブルーチン332は、以下を行う命令を含んでもよい。すなわち、角膜の複数の高解像度画像に対して多面登録を用いて、角膜の複数の高解像度画像から角膜の高解像度複合画像を生成する命令であって、複数の高解像度画像が、角膜の複数の生物学的に定義された微小層についての複数の画像を含み、角膜の複数の高解像度画像がそれぞれ頂点を有する湾曲画像である、命令と、高解像度複合画像をセグメント化して、高解像度複合画像に対して多面平坦化を用いて、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のそれぞれを識別する命令であって、セグメント化によってセグメント化された高解像度複合画像が生成される、命令と、セグメント化された高解像度複合画像から角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さを求める命令と、角膜の複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の厚さマップを策定する命令であって、厚さマップが、複数の生物学的に定義された微小層のうちの少なくとも1つの微小層の全体にわたる厚さの視覚的な差を識別する、命令と、厚さマップを表示する命令と、を含む。サブルーチン332は、本明細書に記載された各動作の何れかを実行するサブルーチンを含んでもよく、これには、例えば、
図1、
図4および
図8から
図10の各動作が含まれる。
【0101】
サブルーチン332は、例えば、ソフトウェアキーボード機能を実施し、デバイス302内の他のハードウェアなどとインターフェースする、他のサブルーチンを含んでもよい。プログラムメモリ306および/またはRAM310は、画像処理デバイス302の構成および/または動作に関する、および/または1つ以上のサブルーチン332の動作に関連するデータを更に保存してもよい。例えば、データは、システム316から集められたデータ、プロセッサ308によって測定および/または計算されたデータなどであってもよい。
【0102】
画像処理デバイス302は、コントローラ304に加え、他のハードウェアリソースを含んでもよい。デバイス302はまた、視覚ディスプレイ326および入力デバイス(群)328(例えば、キーパッド、キーボードなど)などの様々なタイプの入力/出力ハードウェアを含み得る。一実施形態において、ディスプレイ326は接触感知式であり、ソフトウェアルーチン332の1つとしのてソフトウェアキーボードルーチンと協働して、ユーザ入力を受け付けてもよい。画像処理デバイスが、いくつかの既知のネットワークデバイスおよび技術の何れかを介して(例えば、イントラネット、インターネットなどのコンピュータネットワークを介して)より広範なネットワーク(図示せず)と通信することが有利な場合がある。例えば、このデバイスは、角膜画像データのデータベース、健康な角膜画像データのデータベース、および本明細書で上記に列挙したような1つ以上の診断可能な症状を経験している被験者についての角膜画像データのデータベースに接続されてもよい。
【0103】
図8から
図10は、被験者の眼を評価するためのコンピュータに実装されるプロセスの更なる例を示す。プロセス100と同様に、プロセス400は、OCT装置などの光学撮像システム、または任意の適切な画像プロセス(すなわち、撮像システム)上に全体的または部分的に実装されてもよい。
【0104】
プロセス400の図示された例示的な実施例において、オペレーション402で高解像度OCT画像がキャプチャされ、オペレーション404でアラインメントのために角膜前面および角膜後面ならびに角膜頂点を用いて高解像度OCT画像に対して画像登録が行われる。登録は、キャプチャされた基準画像と後続のキャプチャ画像との間で行われ得る。例えば、角膜の複数の画像を全ての角膜領域についてキャプチャしてもよい。それらの画像は、例えば、ラジアルまたはラスタカット画像であってもよい。一部の例において、角膜の全く同じ領域のいくつかの画像がキャプチャされる。これらのキャプチャされた画像は、オペレーション404で登録される。オペレーション404で、このようにして角膜の各領域のそれぞれについてキャプチャされた画像を登録してもよい。
【0105】
その後、オペレーション406で画像のセグメント化が行われる。図示の例において、画像を二重平坦化し、前面と後面を用いて各層の初期症状を局所化して、角膜の平均化画像(または、他の各例において、角膜の各領域の平均化画像)を作成することによって画像セグメント化を行い、そこから元の画像の洗練セグメント化が行われる。一部の例において、404の登録動作なしで、および/または平均化動作なしでセグメント化動作が行われる。すなわち、オペレーション404は随意である。そのような各例において、オペレーション402のキャプチャされた高解像度画像は、光学撮像デバイスによるキャプチャ後、オペレーション406により直接取得されてもよく、その場合はその後、セグメント化動作および厚さマッピング動作が行われる。一部の実施例において、プロセス400のセグメント化動作および更なる動作は、光学撮像システムから受信した高解像度画像のうちの1つ以上に対して行われる。
【0106】
図示の例において、オペレーション408で、それぞれの角膜領域についてのセグメント化された平均化画像が分析され、厚さデータが取得され、それぞれの角膜領域のデータが3Dポイントにマッピングされ、アラインメントのための前面の頂点を用いて、ポイントの一部または全てのアライメントが行われる。このようにして、厚さマップは、頂点だけでなく前面および後面を用いて画像を登録する動作によって形成される。これら2つの表面を用いて画像を登録することにより、これらの各例において、回転モーションアーチファクトを説明することができ、角膜の頂点を保護するために画像を平坦化することなく、より正確に画像を登録し、それを基準として横方向のモーションアーチファクトを補償できることが分かった。更に、角膜の中心である角膜頂点を用いて画像をアラインすることにより、患者が撮像中に眼を動かすことに起因するモーションアーチファクトを補正することができる。
【0107】
オペレーション410で、オペレーション408からの3Dポイントに対して補間が行われる。その補間は、この例においては、立方体補間および平滑化を用いてそれぞれの表面に対して行われ、最終層表面が得られる。オペレーション412で、3D屈折補正アルゴリズムがそれぞれの角膜微小層に適用され、それぞれ異なる屈折率を有するそれぞれ異なる角膜界面での光の屈折に起因する光学歪みを補正する。
【0108】
更に、オペレーション412で、それぞれの層の均一なグリッドへのリサンプリングが行われてもよい。オペレーション414で、厚さとして各微小層間の短い距離を測定することにより、1つ以上の微小層の厚さを求める。オペレーション416で、OCT装置が、それぞれの微小層について3D厚さヒートマップとブルズアイディスプレイを生成し、それらをオペレーターに表示する。例えば、オペレーターは、OCT装置が表示する微小層を選択してもよく、OCT装置は対応する3D厚さヒートマップとブルズアイ表示とを表示する。
【0109】
プロセス400などの本明細書に記載の各プロセスは、角膜画像処理および診断に関するコンピューター操作を改善するいくつかの利点を含む。例えば、登録オペレーション404は、収集された画像上の専用の前面および後面を用いるため、はるかに正確である。この例では、各フレーム間の前面と後面のマッチングを追加することで、プロセスが更に改良され、モーションアーチファクトが補正される。セグメント化オペレーション406は、前面と後面の両方を用いて画像を平坦化し、2つの平坦化された画像の垂直投影から他の各層を一意に識別することを通して、角膜OCT画像のロバストな処理とアーチファクト除去を導入することにより、コンピューター動作も改善する。セグメント化はまた、垂直投影のために、画像の周辺部分が除外されてもよく、中心アーチファクトが検出された場合のみ、画像の中心部分が除外されてもよいなど、特定の洗練化も可能にする。このような洗練化により、例えばピーク検出を改良することができる。オペレーション414は、不正確である可能性のある表面の法線全体にわたって測定された距離の代わりに、2つの連続する微小層毎にその間の最短距離として厚さを定義することを含む、更なる利点を提供する。
【0110】
図9は、
図8のオペレーション404によって行われ得る画像登録プロセス500の例を示す。高解像度OCT画像が、オペレーション402で得られる。オペレーション502で、第1の受信画像、または閾値を超える信号対ノイズ比を有するなど、確定した画質を有する第1の受信画像などの、基準フレームがOCT装置によって選択される。オペレーション504で、基準画像の前部および後部角膜表面、および基準画像と比較されている現在のフレームについての前部および後部角膜表面が求められる。これら両者の前面および後面は、オペレーション506で互いにマッチングされる。このマッチングから、2つのフレーム間の幾何学的変換がオペレーション508で推定され、この幾何学的変換に基づいて登録が行われる。
【0111】
オペレーション510では、登録が有効かどうかを判定する。例えば、オペレーション510では、自動化画像処理エッジぼけ分析および/または画像コントラスト分析が行われてもよい。一部の例において、オペレーターは、表示された各微小層の画質と透明度を主観的に評価してもよい
【0112】
登録が有効でない場合、その登録はオペレーション512で破棄され、このプロセスはオペレーション502で新しい基準フレームを選択することにより繰り返される。他の各例において、プロセスは登録を破棄し、オペレーション504に戻って、別の試行済み変換および登録を行ってもよい。そのような各例において、プロセスは、新しい基準フレームを求めるためにオペレーション502に戻る前に、2回など所定の回数、オペレーション504に戻ってもよい。代わって、オペレーション510で登録が有効である場合には、プロセス(オペレーション514)は、処理するフレームが更にあるかどうかを判断し、オペレーション504に戻るか、あるいはオペレーション516で基準フレームを用いて全ての処理済みフレームの平均化を行い、そこから平均化された画像をオペレーション518で出力し、その平均化された画像をオペレーション406でのセグメント化に用いる。
【0113】
図10は、
図8のセグメント化オペレーション406として実施され得るプロセス600の例を示す。図示された実施例において、登録オペレーション404からの平均化された画像がオペレーション602で提供される。ただし、登録および平均化プロセスは随意であり、行われなくてもよい。例えば、一部の実施例において、オペレーション404の登録および平均化プロセスをバイパスして、オペレーション402のキャプチャされた高解像度画像が、光学撮像デバイスによるキャプチャ後に、(オペレーション406の)オペレーション604に送られる。何れにしても、図示された実施例において、オペレーション604で、平均化された画像に対して垂直投影を用いたアーチファクトの識別および除去が行われる。前面および後面は、オペレーション606でのランダムサンプルコンセンサス(RANSAC)反復プロセスからの局所的閾値化および多項式フィッティングを用いて識別される。そのオペレーション606では、前面および後面のそれぞれに1つずつ、それぞれ異なる動作パイプがもたらされる。例えば、オペレーション606からの画像データは、図示された2つの二重平坦化パイプのそれぞれの上でそれぞれ分析される2つの別々の同一コピーにバッファされてもよい。これらのコピーは角膜画像全体の正確な複製であってもよいが、一方、他の各例においては、角膜画像全体の切頭バージョンである、前部レンディションおよび後部レンディションをそれぞれ用いてもよい。
【0114】
平均化画像の平坦化は、オペレーション608で前面を用いて行われる。次に、オペレーション610で、平坦化された画像が垂直に投影され、ボーマン層の境界のピークが識別され、基底上皮層の谷が識別される。その後、オペレーション612で、これらの微小層の初期サーチ軌跡を推定する。例として、例えば、上皮、基底上皮、ボーマン層、および内皮/デスメ層を含む、任意の数の微小層がオペレーション610で識別されてもよい。
【0115】
別の動作において、平均化画像(例えば、そのコピー)の平坦化が、オペレーション614によって後面を用いて行われる。次に、オペレーション616で平坦化された画像を垂直に投影して、デスメ層の谷を識別し、その後、ブロック618で各微小層の軌跡(例えば、内皮/デスメの複合層)を推定する。
【0116】
その後、オペレーション612およびオペレーション618から出力された各微小層の推定軌跡(凡例における推定軌跡プロットの例を参照)を組み合わせ、オペレーション620で、推定された各微小層のそれぞれのポイント、例えば軌跡プロットの局所ピークの局所的サーチを行うことにより、各推定微小層の洗練化を行う。オペレーション622で、識別されたそれぞれの微小層の洗練化された推定に対してフィッティングが行われる。
図13Aおよび
図13Bは、オペレーション620およびオペレーション622によって行われる、上皮層の前部境界についてのセグメント化の洗練化の例を示す。
図13Aに示すように、高解像度OCT画像(例えば、
図9のフレーム登録プロセスからオペレーション602で受信した平均化画像)は、二重平坦化プロセスを用いてセグメント化されている。破線として示されているセグメント化ライン702、および上皮層704の前部境界が示されている。この初期セグメント化ライン702は、上皮層704にほぼ一致しているものの、そこからわずかに偏心している。しかし、
図13Bにおいて、洗練化自動セグメント化オペレーション620の後の同じセグメント化されたOCT画像が示されている。その結果、上皮層704の実際の前部境界により密接にマッチングする洗練化されたセグメント化ライン706が得られる。
図14Aおよび
図14Bは、別の例を示す。ボーマン層の前部境界802のセグメント化されたOCT画像が示されている。初期セグメント化ライン804が
図14Aに示され、オペレーション620の後の洗練化されたセグメント化ライン806が
図14Bに示されている。一部の例示的な実施例において、各画像のそれぞれに対して洗練化プロセスが行われ、初期セグメント化が正確であった場合、この洗練化によってセグメント化が変更されることはない。
【0117】
一例において、オペレーション620で、推定された各微小層のそれぞれのポイント、例えばセグメント化ラインを形成する軌跡プロットの局所ピークの局所的サーチを行うことにより、微小層セグメント化を洗練化する。二重平坦化プロセス、例えば2つのパイプライン画像を組み合わせることからの初期セグメント化画像は、各微小層境界の推定初期推測(すなわち、
図13Aおよび
図14Aのセグメント化ラインの初期推測)におけるそれぞれのポイントに代わる最良の代替物を局所的にサーチするために、システムによって分析される。これらの微小層境界の推定値は、各層間での重なりまたは交差の発生を確実に防止するように処理され、それぞれの微小層サーチウィンドウは、その先行および後続の各微小層によって限定される。一例において、初期セグメント化ラインは、以下によって与えられるフィルタ案を用いてフィルタリングされる。
【数1】
【0118】
このフィルタは、セグメント化ラインの中心ピクセルの8近傍の平均を取り、それを中心ピクセルと平均化して、そのセグメント化ラインの中心ピクセルをより強調する。その結果は以下の通りである。
【数2】
【0119】
スペックルノイズまたはバックグラウンドノイズの影響を減らすために、洗練化されたセグメント化ラインは中央値および移動平均フィルタで平滑化されるか、二次多項式に当てはめられる。その結果、セグメント化ラインは、微小層境界により正確にマッチングする。
【0120】
一部の例において、オペレーション620の後、グラフサーチ(GS)技術またはランダム化ハフ変換(RHT)技術を用いてセグメント化を更に強化した。GS技術に関し、セグメント化された画像のグラフが構築され、画像内のそれぞれのピクセルがグラフ内のノードと見なされ、システムがこれらのノードの濃淡値と諧調に基づいてこれらノード間のエッジを計算した。その後、特定のインターフェースをサーチする際、システムはこのサーチ領域内のポイントのみを検査し、これにより、サーチ時間が短縮され、精度が向上した。最小重みのパスがシステムによって検出されると、そのパスがこの領域のインターフェイスとして宣言された。同じ手順が全てののインターフェイスについて実行された。従って、このGSの例示的な実施例において、開始ノードと終了ノードの定義、エッジの重み、ノード間の接続性など、グラフの構築に変更が加えられた。
【0121】
RHT技術において、投票スキームを用いて、モデルに潜在的に適合するポイントから、モデルの未知のパラメーターがシステムによって検出された。RHT技術に、二次多項式モデルが用いられた(y=ax2+bx+c、パラメーターa、b、およびcは未知)。その後、RHT技術により、それぞれのポイントがデカルト空間(x、y)からパラメーター空間(a、b、c)に変換された。ここで、各ポイントは有限範囲内の各パラメーターの全ての可能な値に投票した。システムによって実行される投票は、ポイントの濃淡地を用いて行われた。最後に、使用済みモデルのパラメーター値として、最大投票数を持つパラメーター空間のポイントが選択された。投票プロセスを高速化するために、最高濃淡値ポイントのみがシステムによって用いられた。従って、この例示的な実施例において、システムはRHT、二次多項式モデルを用い、何ら事前知識は用いなかった。
【0122】
洗練化オペレーション620および622は随意であり、一部の例においては実行されない場合がある。何れにしても、結果として得られるセグメント化された画像はオペレーション624で出力され、その後制御がオペレーション410に送られてもよい。
【実施例】
【0123】
本技術は、いくつかの実証的研究において実施された。
【0124】
ある研究において、5つの正常な眼のOCT画像にこれらの技術を適用して、3D内皮/デスメ膜複合体(En/DM)微小層の色分けマップとブルズアイマップを自動的にセグメント化して作成した。各マップはそれぞれ異なる地域に分割された。正常な被験者のEn/DM平均厚さは16.19μmであった。En/DMは、周辺角膜に向かって肥厚化を示した。中心En/DMの平均厚さは11±2μm(平均およびSD)、中心傍En/DM領域の平均厚さは12±2.75μm、周辺En/DMの平均厚さは15.5±4.75μmであった。この研究は、正常な被験者では、En/DMが周辺角膜に向かって相対的に肥厚化することを示した。
【0125】
ある研究において、これらの技術を用いてEn/DM 3D微小層断層撮影マップを評価し、フックス内皮ジストロフィーを診断した。OCTを用いて、23人の個人の27個の眼(7人の患者における11個のフックス内皮ジストロフィー眼、16個の対照眼)を撮像した。En/DM層は、自動セグメント化法を用いてセグメント化された。3D En/DM色分けおよびブルズアイ微小層断層撮影厚さマップが作成され、それぞれ異なる領域に分割された。フックス内皮ジストロフィー眼において、En/DM 3D微小層断層撮影マップは、対照と比較して有意な肥厚化を示した。フックス内皮ジストロフィー眼において、平均厚さは、中心、中心傍、および周辺ゾーンでそれぞれ25μm、27μm、および31μmであったのに対し、対照ではそれぞれ12μm、13μm、および15μmであった(P<0.0001)。En/DMマップは、対照患者とフックス患者の両方で周辺に向かって相対的に肥厚化していることを示した(それぞれP=.045およびP<.0001)。この研究は、En/DM 3D微小層断層撮影マップが、対照と比較して、フックス内皮ジストロフィーにおける有意な肥厚化を示すことを初めて明らかにした。
【0126】
ある研究において、これらの技術を用いて、移植片拒絶反応を患う患者のEn/DM層の色分けおよびブルズアイマップを作成し、それらを対照眼と比較した。この研究は、En/DM 3D微小層断層撮影マップが、対照眼と比較して、角膜移植片拒絶反応における有意な肥厚化を示すことを実証した。この前向き介入症例シリーズにおいて、全層角膜移植術(PKP)およびデスメ剥離自動内皮角膜移植術(DSAEK;17個の透明な角膜移植片および5個の拒絶角膜移植片)後の角膜移植片を有する22個の眼がOCTを用いて撮像された。角膜の各微小層は自動的にセグメント化された。層の色分けされた3D厚さマップとブルズアイマップが作成された。これらの技術により、含まれている全ての眼についての層の3D色分け微小層断層撮影マップとブルズアイマップを作成することができた。ブルズアイ上のEn/DMの平均厚さは、透明な移植片対拒絶移植片における中心、中心傍、および周辺領域についてそれぞれ、20.15±5.66μm、23.16±7.01μm、28.57±10.45μm対41.44±21.96μm、47.71±23.45μm、および59.20±25.65μmであった。この研究は、透明な移植片と比較した場合の拒絶移植片における特定の肥厚化を示した。
【0127】
ある研究において、これらの技術を用いて、角膜基底上皮層(B-Epi)の3D微小層厚さ色分けマップとブルズアイマップを作成し、12人の正常な被験者の厚さデータを報告した。OCTを用いて各画像を取得し、その後、角膜層をセグメント化した。屈折補正アルゴリズムを用いて、光学歪みを補正した。3D微小層断層撮影厚さマップ(C-MLT)を生成した。比較のために、輪部幹細胞ジストロフィー(LSCD)を患う患者1人の撮像を行った。B-Epiの厚さは、中心、中央周辺、および周辺で平均値がそれぞれ12.2+1.8μm、12.5+1.9μm、および13.3+2.2μmであり、それらの間で均一であることが分かった。B-Epiの厚さは、角膜上皮と正の相関性があり、有意性を示す(p<0.0001、R=0.64)。B-Epiの厚さと角膜厚さとの間の弱い相関性が示された(p=0.003、R=0.2)。LSCDを患う患者は、B-Epiが弱化し、左眼においてこの層が完全に欠如していることを示した。この研究は、角膜微小層断層撮影3D厚さマップ(C-MLT)が上皮の基底層を研究するツールを提供することを示した。C-MLTは、この層が角膜全体にわたって均一であり、上皮の厚さおよび角膜全厚と相関していることを明らかにした。この研究は、LSCDを患う患者が弱化した層を有することを示した。
【0128】
ある研究において、これらの技術を用いて、正常な被験者について3Dボーマン層微小層光干渉断層撮影マップ(例えば、ヒートマップまたはブルズアイマップ)を作成した。OCTを用いて、13個の正常な眼を撮像した。セグメント化法を採用して、角膜の各微小層を自動的にセグメント化した。各角膜微小層表面を再構築し、屈折補正アルゴリズムを用いて光学歪みを補正した。層の色分けされた3D厚さマップとブルズアイマップを作成した。我々の技術を用いて、含まれている全ての眼についての層の微小層マップとブルズアイマップを作成することができた。ブルズアイマップはそれぞれ異なる領域に分割された(具体的には、
図11のマッピングを用いて)。正常な被験者のブルズアイの平均厚さデータは、Cl、C2、M1、M2、M3、M4、M5、M6、O1、O2、O3、O4、O5、O6について、それぞれ19±1μm、19±1μm、20±2μm、20±3μm、21±2μm、20±1μm、20±3μm、20±2μm、23±2μm、24±4μm、24±4μm、23±3μm、24±4μm、25±4μmであった。周辺BLは、中央周辺領域よりも有意に厚かった(P<0.001)。周辺領域と中央領域のボーマン層は何れも、中心領域のボーマン層よりも有意に厚かった(P<0.001)。ボーマン層の厚さと角膜全厚との間に弱い正の相関性があった(R=0.3、P<0.001)。この研究は、正常な被験者において、中心から周辺に向かってボーマン層が有意に厚くなることを示した。
【0129】
ある研究において、これらの技術を用いて三次元のボーマン層微小層断層撮影マップ(例えば、ヒートマップまたはブルズアイマップ)を作成し、作成したマップの円錐角膜(KC)の診断への使用を評価した。走査プロトコルを有するOCTを用いて角膜の直径9mmゾーンにわたってBLを撮像するために、30個の眼(15個のKC眼と15個の対照眼)を撮像した。各画像を分析して、ボーマン層をセグメント化し、9mmの色分けされたボーマン層微小層断層撮影マップを作成した。受信者動作特性曲線を作成して、それらの診断精度を評価した。ボーマン層3D微小層断層撮影マップは、対照と比較した、KC眼におけるボーマン層の有意な薄厚化を明らかにした(P<0.001)。角膜の下半分において薄厚化するボーマン層は、曲線下面積が1であり(P<0.001)、KCの診断において優れた精度を有した。角膜の下半分におけるボーマン層厚さは14m未満で、KCの診断において100%の感度を有し、特異的であった。この研究は、ボーマン層3D超広幅微小層断層撮影マップが円錐角膜の診断において優れた精度、感度、特異性を有することを示した。
【0130】
ある研究において、これらの技術を用いて、無症状円錐角膜(KC)の診断におけるボーマン微小層断層撮影三次元(3D)マップ(例えば、ヒートマップまたはブルズアイマップ)を作成した。OCTを用いて、40個の眼(17個の正常眼および23個の無症状KC眼)を撮像した。無症状KCは、正常な臨床検査およびプラチドトポグラフィ(TMS-3;Tomey社、ドイツ国エアランゲン)を有するが、異常亢進断層撮影(ペンタカム(Pentacam);Oculus社、ドイツ国ヴェッツラー)を有する患者として定義された。これらの技術により、ボーマン層(BL)がセグメント化された。セグメント化は、ボーマン層色分け3D微小層厚さマップとブルズアイマップを作成するために再構築された。ブルズアイマップは、14のそれぞれ異なる領域に分割され(例えば、
図11を参照)、ボーマン層厚さがそれぞれの領域について計算され、グループ間で比較された。ボーマン層色分け3D微小層厚さマップとブルズアイマップが、研究対象の全ての眼について正常に作成された。無症状KCにおいて、ボーマン層色分け3D微小層厚さマップとブルズアイマップにより、ボーマン層の局所化された相対的な薄厚化が明らかになった。無症状KCにおいて、C1、C2、C5の各領域でボーマン層の最小厚さが有意に減少した(p<0.01)。ボーマン層色分け3D微小層厚さマップとブルズアイマップの技術は、無症状円錐角膜の診断に用いられ得ると結論付けた。ボーマン層色分け3D微小層厚さマップとブルズアイマップは、我々のマップを用いて定量化できる、有意な局所化された相対的薄厚化を明らかにした。
【0131】
この研究は、3Dマップのそれぞれのセグメントで計算された、最初の特許からの指標であるボーマン拡張指数(BEI)が無症状KCの診断に役立つことも示した。ボーマン拡張指数(BEI)はそれぞれの地域について計算され、グループ間で比較された。上述したように、BEIは、下角膜のそれぞれの領域におけるBLの最小厚さを、上角膜の対応する領域におけるBLの平均厚さで割った値に100を掛けた値として定義された。この研究により、BEIは、領域C1、C2、M1、M2、M4、M5、M6、O4、およびO5において、正常眼と比較して、無症状KCにおいて有意により低いことが分かった(70±11μm、70±12μm、72±12μm、71±11μm、73±13μm、62±19μm、71±13μm、66±19μm、60±20μm対83±8μm、83±11μm、80±9μm、81±9μm、82±8μm、80±11μm、80±12μm、78±15μm、78±20μm;P<0.05)。
【0132】
ある研究において、これらの技術を用いて、屈折矯正術後拡張症を患う患者についてボーマン層の3Dマップを生成した。これらの技術を用いて画像を分析し、ボーマン層をセグメント化し、3D色分けボーマン層断層撮影マップ(例えば、ヒートマップまたはブルズアイマップ)を作成した。ボーマン層の3D色分けマップとブルズアイマップは、層の病理的薄厚化を明らかにした。従って、この研究は、3Dボーマン微小層断層撮影マップが、屈折矯正術後拡張症の診断に用いられ得ることを示した。
【0133】
別の研究において、ドライアイ症候群を患う患者と正常な患者をOCTを用いて撮像した。3D色分けマップととブルズアイマップが、本技術を用いて生成された。上皮微小層角膜断層撮影マップは、上皮が正常な被験者と比較して非常に不規則であることを明らかにした。
【0134】
本明細書におけるこれらの技術はまた、コラーゲン架橋(CXL)の検査にも初めて用いられた。CXLは、進行性角膜拡張症の治療法である。CXLは、コラーゲン繊維間に新しい共有結合を形成することにより、角膜組織を強化することが証明されている。この治療が、角膜の境界線、すなわち、架橋角膜と未治療角膜との間の遷移ゾーンを表すと言われている角膜の過剰反射エリアの発達につながることに注目した。その遷移ゾーンは、角膜内へのCXL治療の深さの測定値であり、よってその治療の有効性の測定値である。本技術を用いて、3D全角膜コラーゲン架橋境界帯域微小層断層撮影マップ(例えば、ヒートマップまたはブルズアイマップ)を作成した。これらは角膜治療の局所化された効果に相関することが、我々の研究で示されている。
【0135】
ある研究において、進行性円錐角膜を患う18個の眼に角膜CXLが施行された。術後1ヶ月で、OCTマップをシステムでキャプチャして分析し、3D角膜コラーゲン架橋境界帯域マップ(CXL-OCT)を作成した。例えば、
図15Aから
図15Cを参照のこと。CXL-OCT上の境界帯域特性と、ペンタカム断層撮影を用いてキャプチャされた角膜曲率の変化との間の相関性を評価した。
【0136】
本技術を用いて、全ての患者についてCXL-OCTマップを生成することができた。CXL境界帯域の平均厚さ(
図15B)および深さ(
図15A)は、それぞれ77±35μmおよび279±82μmであった。CXL境界帯域マップは、中心傍角膜および周辺角膜と比較して中心角膜において有意により厚かった(それぞれ91±31μm、74±34μm、および63±35μm;p<0.01)(
図15B)。それぞれ異なる角膜領域におけるCXL境界帯域マップの深さの間に有意な差はなかった(
図15A)。CXL-OCTを用いて明らかにされているように、CXL境界帯域の深さと下角膜における術後平坦化効果(R=0.4、P<0.05)との間に有意な正の相関性が認められた。従って、この研究は、CXL-OCTマップ上の局所化された境界帯域が深いほど、局所化された術後平坦化効果が大きいことを示した。
【0137】
この明細書全体を通して、複数の事例は、単一の事例として説明された構成要素、動作、または構造を実施してもよい。1つ以上方法の個々の動作は別個の動作として図示および説明されているが、個々の動作の1つ以上を同時に行ってもよく、これらの動作を図示されている順序で行う必要はない。構成例で個別の構成要素として提示される構造および機能は、組み合わされた構造または構成要素として実装されてもよい。同様に、単一の構成要素として提示される構造および機能は、それぞれ別個の構成要素として実装されてもよい。これらおよび他の変形、変更、追加、および改善は、本明細書の主題の範囲内に含まれる。
【0138】
更に、特定の実施形態は、本明細書においては、ロジックまたはいくつかのルーチン、サブルーチン、アプリケーション、または命令を含むものとして説明されている。これらは、ソフトウェア(例えば、機械可読媒体または伝送信号に組み込まれたコード)またはハードウェアの何れかを構成する。ハードウェアにおいて、ルーチンなどは特定の動作を実行できる有形のユニットであり、特定の方法で構成または配置され得る。例示的な各実施形態において、1つ以上のコンピュータシステム(例えば、独立型、クライアントまたはサーバコンピュータシステム)またはコンピュータシステムの1つ以上のハードウェアモジュール(例えば、プロセッサまたは一群のプロセッサ)は、本明細書で説明されている特定の動作を行うように動作するハードウェアモジュールとしてのソフトウェア(例えば、アプリケーションまたはアプリケーション部分)として構成されてもよい。
【0139】
様々な実施形態において、ハードウェアモジュールは、機械的または電子的に実装され得る。例えば、ハードウェアモジュールは、特定の動作を行うために(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)などの特殊用途プロセッサとして)恒久的に構成された専用の回路構成またはロジックを備えてもよい。ハードウェアモジュールはまた、特定の動作を行うためのソフトウェアによって一時的に構成されるプログラム可能なロジックまたは回路構成(例えば、汎用プロセッサまたは他のプログラム可能なプロセッサ内に含まれる)を備えてもよい。ハードウェアモジュールを、専用および恒久的に構成された回路構成、または一時的に構成された回路構成(たとえば、ソフトウェアによって構成される)において機械的に実装する決定は、費用や時間の考慮により左右され得ることが理解されるであろう。
【0140】
従って、「ハードウェアモジュール」という用語は、特定の方法で動作するように、または本明細書で説明されている特定の動作を行うように、物理的に構築され、恒久的に構成された(たとえば、ハードワイヤーされた)、または一時的に構成された(たとえば、プログラムされた)エンティティである有形のエンティティを含むと理解されるべきである。各ハードウェアモジュールが一時的に構成された(例えば、プログラムされた)実施形態を考慮すると、ハードウェアモジュールのそれぞれを、ある時間のインスタンスにおいて構成またはインスタンス化する必要はない。例えば、各ハードウェアモジュールがソフトウェアを用いて構成された汎用プロセッサを含む場合、汎用プロセッサはそれぞれ異なる時間にそれぞれ異なる各ハードウェアモジュールとして構成されてもよい。従って、ソフトウェアは、例えば、ある時間のインスタンスにおいて特定のハードウェアモジュールを構成し、別の時間のインスタンスにおいて別のハードウェアモジュールを構成するように、プロセッサを構成してもよい。
【0141】
各ハードウェアモジュールは、他のハードウェアモジュールに情報を提供し、他のハードウェアモジュールから情報を受信することができる。従って、説明された各ハードウェアモジュールは、通信可能に結合されていると見なされ得る。そのような各ハードウェアモジュールが複数同時に存在する場合、通信は、各ハードウェアモジュールを接続する信号送信(たとえば、適切な回路およびバスを介した)によって達成されてもよい。複数のハードウェアモジュールがそれぞれ異なる時間に構成またはインスタンス化される各実施形態においては、そのような各ハードウェアモジュール間の通信は、例えば、複数のハードウェアモジュールがアクセスするメモリ構造内の情報の保存および検索を通じて達成されてもよい。例えば、あるハードウェアモジュールは、動作を行い、その動作の出力を通信可能に結合されたメモリデバイスに保存してもよい。後で、更なるハードウェアモジュールがそのメモリデバイスにアクセスして、保存された出力を検索および処理してもよい。各ハードウェアモジュールはまた、入力デバイスまたは出力デバイスとの通信を開始してもよく、リソース(例えば、情報の集まり)を操作できる。
【0142】
本明細書で説明されている方法例の様々な動作は、少なくとも部分的に、関連する動作を行うように一時的に構成された(例えば、ソフトウェアによって)、または恒久的に構成された1つ以上のプロセッサによって実行されてもよい。一時的に構成されているか、恒久的に構成されているかに拘わらず、そのような各プロセッサは、1つ以上の動作または機能を行うように動作するプロセッサ実装モジュールを構成してもよい。本明細書で言及されている各モジュールは、一部の例示的な実施形態において、プロセッサ実装モジュールを含み得る。
【0143】
同様に、本明細書で説明されている方法またはルーチンは、少なくとも部分的にプロセッサに実装されてもよい。例えば、方法の各動作の少なくともいくつかは、1つ以上のプロセッサまたはプロセッサ実装ハードウェアモジュールによって行われてもよい。特定の動作の性能は、1つ以上のプロセッサ間に分散されて、単一の装置内にあるだけでなく、いくつかの装置にわたって展開されてもよい。一部の例示的な実施形態において、プロセッサまたはプロセッサ群は単一の場所に配置されてもよく(例えば、家庭環境内、オフィス環境内、またはサーバファームとして)、他の各実施形態においては、各プロセッサはいくつかの場所にわたって分散されてもよい。
【0144】
特定の動作の性能は、1つ以上のプロセッサ間に分散されて、単一の装置内にあるだけでなく、いくつかの装置にわたって展開されてもよい。一部の例示的な実施形態において、1つ以上のプロセッサまたはプロセッサ実装モジュールは、単一の地理的場所(たとえば、家庭環境内、オフィス環境内、またはサーバファーム内)に配置されてもよい。他の例示的な各実施形態において、1つ以上のプロセッサまたはプロセッサ実装モジュールは、いくつかの地理的場所にわたって分散されてもよい。
【0145】
特に明記しない限り、「処理する」、「算出する」、「計算する」、「求める(判定する、判断する)」、「提示する」、「表示する」などの言葉を用いた本明細書における説明は、1つ以上のメモリ(例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせ)内の物理的(例えば、電子的、磁気的、または光学的)量として表されるデータを操作または変換する装置(例えば、コンピュータ)、レジスタ、または情報を受信、保存、送信、または表示する他の装置構成要素の動作またはプロセスを指してもよい。
【0146】
本明細書で用いられる「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の要素、特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書における様々な箇所での「一実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。
【0147】
一部の実施形態は、「結合された」および「接続された」という表現をそれらの派生語と共に用いて説明されてもよい。例えば、一部の実施形態は、「結合された」という用語を用いて説明され、2つ以上の要素が物理的または電気的に直接接触していることを示してもよい。ただし、「結合された」という用語は、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、それでも互いに協働または相互作用することを意味する場合もある。各実施形態はこの文脈に限定されない。
【0148】
本明細書で用いられる、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を意図している。例えば、列挙された要素を備えるプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されず、明示的に列挙されていない他の要素または当該プロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含み得る。また、別途明言されない限り、「または」は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を指す。例えば、条件AまたはBは、次の何れかによって満たされる。すなわち、Aは真(true)(すなわち存在する)およびBは偽(false)(すなわち存在しない)、Aは偽(false)(すなわち存在しない)およびBは真(true)(すなわち存在する)であれば、AもBも共に真(true)(すなわち存在する)である。
【0149】
更に、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載の各実施形態の要素および構成要素を説明するために採用されている。これは単に便宜上および説明の一般的な意味を与えるために行われている。この説明および以下の特許請求の範囲は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、そうでないことを意味することが明らかでない限り、単数形は複数形も含む。
【0150】
この詳細な説明は、例としてのみ解釈されるべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは不可能ではないにしても非現実的であるため、全ての可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術またはこの出願の出願日より後に策定された技術の何れかを用いて、多数の代替的実施形態を実施することができるであろう。