(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20221018BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221018BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20221018BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221018BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B27/00 L
C08J7/04 CFD
C09D5/00 Z
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2017217051
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-10-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中谷 充晴
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 有加
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221737(JP,A)
【文献】特開2016-060158(JP,A)
【文献】特開2013-256105(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102746722(CN,A)
【文献】特開2006-080496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04-7/06
C09D 5/00
C09D 201/00
B29C 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムが無機粒子を実質的に含有しておらず、前記基材フィルムの一方の表面上に離型塗布層を有し、基材フィルムのもう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有し、易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下、かつ粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であり、
前記易滑塗布層は、少なくとも100nm超の粒径を有する粒子を含み、
前記易滑塗布層はアクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である
樹脂シート成型用離型フィルム。
【請求項2】
離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下、最大突起高さ(P)が200nm以下である請求項1に記載の樹脂シート成型用離型フィルム。
【請求項3】
離型塗布層の表面自由エネルギーが15mJ/m
2以上45mJ/m
2以下である請求項1または2に記載の樹脂シート成型用離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム に関する。更に詳しくは、薄膜の樹脂シートを溶液製膜するときに用いる樹脂シート成型用離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とした離型フィルムは、耐熱性や機械特性が高く、粘着シートやカバーフィルム、高分子電解質膜などの樹脂シートを溶液製膜する工程フィルムとして使用されてきた。近年、特に電子部品や光学用途に用いられる樹脂シートには、高い平滑性や透明性が求められるため、工程フィルムとして使用する離型フィルムの表面にも高い平滑性が求められてきた。そのため、特許文献1~3に記載されるような技術が開示されており、離型層表面の表面粗さを低くしたものが提案されている。
【0003】
しかし従来の技術では、離型フィルムの離型層表面の平滑性は高いが、その反対面の平滑性は満足できるものではなかった。樹脂シートを離型フィルム上に成型する場合、樹脂シートを離型フィルムの離型面に成型したのちロール状態に巻かれるため、離型フィルムの樹脂シートを成形した面の反対面と樹脂シートが接触することになる。そのため、離型フィルムの表面をいくら平滑にしても、離型フィルムの樹脂シートを成形する面とは反対面の平滑性が高くないと、凹凸が樹脂シートに転写し樹脂シートの平滑性が劣るという課題があった。近年成型される樹脂シートはより薄膜になってきており、これらの課題はより顕著になってきており、離型フィルムの両面が高い平滑性を持たせることが重要になってきている。一方で離型フィルムの両面ともに平滑性が高すぎると滑り性が悪く巻取性が悪化するため、離型フィルム両面の高い平滑性と巻取性を両立することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-144021号公報
【文献】特開2014-154273号公報
【文献】特開2015-182261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、樹脂シートを離型フィルム上に成型しロール状に巻き取った場合でも、樹脂シートのピンホールやキズなどの発生を抑制し、高い平滑性を有する樹脂シートを成型することができる離型フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 基材フィルムが無機粒子を実質的に含有しておらず、前記基材フィルムの一方の表面上に離型塗布層を有し、基材フィルムのもう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有し、易滑塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下、最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下、かつ粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下である樹脂シート成型用離型フィルム。
2. 離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下、最大突起高さ(P)が200nm以下である上記第1に記載の樹脂シート成型用離型フィルム。
3. 離型塗布層の表面自由エネルギーが15mJ/m2以上45mJ/m2以下である上記第1または第2に記載の樹脂シート成型用離型フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薄膜の高い平滑性が求められる樹脂シートでも、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止し高い平滑性を具備する樹脂シート製造用離型フィルムの提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの片面に離型塗布層、もう一方の面に粒子を含む易滑塗布層を有する離型フィルムである。
【0009】
本発明者らは易滑面の突起密度を高めるため、易滑塗布面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を特定の範囲に収めることで、近年のセラミックグリーンシート薄膜化に対応可能な離型フィルムを提案している(国際出願番号PCT/JP2017/017354)。本発明者らは、かかる技術を薄膜で高い平滑性が求められる樹脂シートの成型用離型フィルムにも適用できることを新たに見出し本発明に至ったものである。
【0010】
(基材フィルム)
本発明において好ましく基材として用いられるフィルムとしては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのフィルムを用いることができるが、機械的強度などの観点からポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂より構成されるフィルムであり、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選ばれる少なくとも1種を含むポリエステルフィルムが好ましい。また、前記のようなポリエステルのジカルボン酸成分、又は、ジオール成分の一部として、第三成分モノマーが共重合されたポリエステルからなるフィルムであってもよい。これらのポリエステルフィルムの中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートフィルムが最も好ましい。
【0011】
また、前記のポリエステルフィルムは、単層であっても複層であってもかまわない。また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル樹脂中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0012】
(易滑塗布層)
本発明の離型フィルムは、上記のようなポリエステル製の基材フィルムの一方の表面上に易滑塗布層を有するものである。易滑塗布層中には、少なくともバインダー樹脂及び粒子が含まれていることが好ましい。
【0013】
(易滑塗布層中のバインダー樹脂)
易滑塗布層を構成するバインダー樹脂としては特に限定されないが、ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも粒子の保持、密着性の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0014】
バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を用いる場合は、特に限定されないが、溶剤への溶解性、分散性、さらには基材フィルムや他の層との接着性を達成させるため、共重合ポリエステルであることが好ましい。なお、ポリエステル樹脂はポリウレタン変性されていても良い。
【0015】
バインダー樹脂としてアクリル樹脂を用いる場合は、特に限定されないが、分子中に水酸基、及びカルボキシル基を有するアクリル樹脂であることが好ましい。水酸基を有する構成ユニットは、全構成ユニット100モル%中、20~90モル%含まれていることが更に好ましい。水酸基を有する構成ユニットが20モル%以上であると、アクリル樹脂の水溶性を適度に保つことができ好ましい。一方、90モル%以下であると、アクリル樹脂の水酸基と易滑塗布層中に含まれる粒子が極端に相互作用を引き起こさず粒子が均一に分散され好ましい。
【0016】
水酸基をアクリル樹脂に導入するには、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマーや、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ-ブチロラクトンやε-カプロラクトンの開環付加物等を共重合成分として用いるとよい。中でも、水溶性を阻害しない点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらは2種以上併用してもよい。
【0017】
アクリル樹脂の水酸基価は2mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上である。アクリル樹脂の水酸基価が2mgKOH/g以上であれば、アクリル樹脂の水溶性が良好となり好ましい。
【0018】
アクリル樹脂の水酸基価は250mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは230mgKOH/g以下、更に好ましくは200mgKOH/g以下である。アクリル樹脂の水酸基価が250mgKOH/g以下であれば、アクリル樹脂の水酸基と易滑塗布層中に含まれる粒子が極端に相互作用を引き起こさず粒子が均一に分散され好ましい。
【0019】
本発明で用いるアクリル樹脂は水酸基に加えて、カルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。カルボキシル基を有することで、架橋剤との架橋構造を形成することと、水溶性を容易に付与することが可能となる。例として(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等のカルボキシ基を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を含有するモノマーが挙げられる。
【0020】
カルボキシル基を有するモノマーは、アクリル樹脂の全構成ユニット100モル%中、4モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。4モル%以上であると、易滑塗布層に架橋構造を形成すること、及び水溶性を付与することが容易となり好ましい。カルボキシル基を有するモノマーは、65モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。65モル%以下であると、得られる塗膜のTgが後述する好適範囲に対して高くなりすぎず、造膜性や、インラインコーティングにおける延伸適正が良好であり好ましい。
【0021】
良好な水溶性を発現させるためには、アクリル酸やメタクリル酸の共重合によってアクリル樹脂中に導入されたカルボキシル基を中和することが好ましい。塩基性の中和剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン化合物や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機系塩基性物質等があり、このうち、中和剤の揮発のしやすさ、架橋構造の形成のしやすさのためには、中和剤としてアミン化合物を使用することが好ましい。また中和率としては、30モル%~95モル%であることが好ましく、より好ましくは40モル%~90モル%である。中和率が30モル%以上の場合、アクリル樹脂の水溶性が十分であり、塗布液調製の際にアクリル樹脂の溶解が容易であり、乾燥後の塗膜面が白化したりするおそれがなく好ましい。一方、中和率が95モル%以下であると、水溶性が高すぎず、塗布液調製においてアルコール等の混合が容易となり好ましい。
【0022】
アクリル樹脂の酸価は40mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上である。アクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であれば、オキサゾリン架橋剤もしくはカルボジイミド架橋剤との架橋点が増加するので、より架橋密度の高い強固な塗膜が得られるため好ましい。
【0023】
アクリル樹脂の酸価は400mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは350mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。アクリル樹脂の酸価が400mgKOH/g以下であれば、アクリル樹脂のカルボキシル基と易滑塗布層中に含まれる粒子が極端に相互作用を引き起こさず粒子が均一に分散され好ましい。粒子の分散性が良好であると易滑塗布面に粗大な突起が発生せず、樹脂シートのピンホールが発生しないため好ましい。
【0024】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることが好ましく、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上である。アクリル樹脂のガラス転移温度が50℃以上であると、易滑塗布層の硬度が適度に高くなり好ましい。
【0025】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は110℃以下であることが好ましく、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下である。アクリル樹脂のガラス転移温度が110℃以下であると、易滑塗布層を塗工した後の延伸工程で、塗膜にクラックが発生せず均一に延伸されるため好ましい。
【0026】
Tgを上記範囲にするために共重合されるTg調整用モノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーや、非アクリル系ビニルモノマーが利用できる。(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、n-メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有アクリル系モノマー;メタクリル酸ビニル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
また、非アクリル系ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン(m-メチルスチレンとp-メチルスチレンの混合物)、クロロスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルモノマー;が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
Tg調整用のモノマーは、水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーの適正量を決めてから、その残部とすることが好ましい。共重合体のTgは、下記のFoxの式で求められる。
【0029】
【数1】
W
n:各モノマーの質量分率(質量%)
Tg
n:各モノマーのホモポリマーのTg(K)
【0030】
Tg調整のために共重合されるモノマーとして、長鎖アルキル基など表面自由エネルギーを低下させる成分が導入されていてもよい。長鎖アルキル基を導入したアクリル樹脂としては、アクリル樹脂の側鎖に炭素数が8~20程度のアルキル基を有するものが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルを主な繰り返し単位とする重合体であり、エステル交換された部分に炭素数8~20の長鎖アルキル基を含む共重合体も好適に使用することができる。
【0031】
Tg調整のために共重合されるモノマー中の長鎖アルキル基を有するモノマーは、アクリル樹脂の全構成ユニット100モル%中、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。50モル%以下であると、得られる塗膜のTgが好適範囲に対して低くなりすぎず、塗膜の硬度が高く維持できるため好ましい。本発明においては、Tgが好適範囲を維持できるのであれば、長鎖アルキル基を有するモノマーは、0モル%であっても構わないが、5モル%以上であるとアクリル樹脂のTg調整の効果が明瞭となり好ましい。
【0032】
本発明で使用するアクリル樹脂は、公知のラジカル重合によって得ることができる。乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等、いずれも採用可能である。取り扱い性の点からは、溶液重合が好ましい。溶液重合に用いることのできる水溶性有機溶媒としては、エチレングリコールn-ブチルエーテル、イソプロパノール、エタノール、n-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-オキソラン、メチルソロソルブ、エチルソロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは水と混合して用いてもよい。
【0033】
重合開始剤としてはラジカルを発生する公知の化合物であればよいが、例えば、2,2-アゾビス-2-メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミド等の水溶性アゾ系重合開始剤が好ましい。重合の温度や時間等は適宜選択される。
【0034】
アクリル樹脂の質量平均分子量(Mw)は、10,000~200,000程度が好ましい。より好ましい範囲は、20,000~150,000である。Mwが10,000以上の場合、テンター内での熱分解のおそれがなく好ましい。Mwが200,000以下であると、塗布液の粘度の著しい上昇がなく、塗工性が良好であり好ましい。
【0035】
(架橋剤)
本発明において、易滑塗布層中に架橋構造を形成させるために、易滑塗布層は架橋剤が含まれて形成されていてもよい。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等が挙げられる。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0036】
(易滑塗布層中の粒子)
易滑塗布層は、表面にすべり性を付与するために、滑剤粒子を含むことが好ましい。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられるが、塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0037】
粒子の平均粒径は10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上である。粒子の平均粒径は10nm以上であると、凝集しにくく、滑り性が確保できて好ましい。
【0038】
粒子の平均粒径は1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは600nm以下である。粒子の平均粒径が1000nm以下であると、透明性が保たれ、また、粒子が脱落することがなく好ましい。
【0039】
また、例えば、平均粒径が10~270nm程度の小さい粒子と、平均粒径が300~1000nm程度の大きい粒子を混用することも、後述の領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(P)を小さく保ちながら、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくして、すべり性と平滑性を両立させる上で好ましく、特に好ましくは、30nm以上250nm以下の小さい粒子と、平均粒径が350~600nmの大きい粒子を併用することである。小さい粒子と大きい粒子を混用する場合、塗布層固形分全体に対して、小さい粒子の質量含有率を大きい粒子の質量含有率より大きくしておくことが好ましい。
【0040】
粒子の平均粒径の測定方法は、加工後のフィルムの断面の粒子を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察を行い、凝集していない粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法で行った。
【0041】
本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒子径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0042】
粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率が50質量%以下であれば、透明性が保たれ、易滑塗布層からの粒子の脱落が顕著に発生せず、好ましい。
【0043】
粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率は、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。粒子の易滑塗布層の全固形分に対する比率が1質量%以上であれば、滑り性が確保できて好ましい。
【0044】
易滑塗布層に含まれる粒子の含有率を測定する方法としては、例えば、易滑塗布層に有機成分の樹脂と無機粒子が含まれる場合、次の方法を用いることができる。まず加工フィルムに設けられた易滑塗布層を溶剤などを用いて加工フィルムより抽出し乾固することで易滑塗布層取り出す。次に得られた易滑塗布層に熱をかけ、易滑塗布層に含まれる有機成分を熱により燃焼留去させることで無機成分のみを得ることができる。得られた無機成分と燃焼留去前の易滑塗布層の重量を測定することで、易滑塗布層に含まれる粒子の質量%を測定することができる。このとき、市販の示差熱・熱重量同時測定装置を用いることで精度良く測定することができる。なお、上記の粒子の易滑塗布層の全固形分中の比率は、粒子が複数種存在する場合は、その複数種の合計量の比率を意味する。
【0045】
(易滑塗布層中の添加剤)
易滑塗布層に他の機能性を付与するために、塗布外観を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0046】
易滑塗布層には、塗布時のレベリング性の向上、塗布液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコーン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、過剰に添加することで塗布外観の異常が発生しない程度の範囲で塗布層に含有させることが好ましい。
【0047】
本発明の易滑塗布層の表面自由エネルギーは、65mJ/m2以下であることが好ましい。より好ましくは、50mJ/m2以下である。40mJ/m2以下がさらに好ましい。65mJ/m2以下であると滑り性が良好であり、易滑塗布層の平滑性が高くても巻取性やフィルムの走行性が良好になるため好ましい。また、表面自由エネルギーの下限は特に限定されないが、15mJ/m2以上であることが好ましい。
【0048】
塗布方法としては、ポリエステル基材フィルム製膜時に同時に塗布する所謂インラインコーティング法、及び、ポリエステル基材フィルムを製膜後、別途コーターで塗布する所謂オフラインコーティング法のいずれも適用できるが、インラインコーティング法が効率的でより好ましい。
【0049】
塗布方法として塗布液をポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)フィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗布する。
【0050】
本発明において、ポリエステルフィルム上に易滑塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合した所謂水系の溶媒が好ましい。
【0051】
易滑塗布液の固形分濃度はバインダー樹脂の種類や溶媒の種類などにもよるが、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。塗布液の固形分濃度は35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0052】
塗布後の乾燥温度についても、バインダー樹脂の種類、溶媒の種類、架橋剤の有無、固形分濃度などにもよるが、70℃以上であることが好ましく、250℃以下であることが好ましい。
【0053】
(ポリエステルフィルムの製造)
本発明において、基材フィルムとなるポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。また、テンター内で縦横同時に二軸延伸する方法も挙げられる。
【0054】
本発明において、基材フィルムとなるポリエステルフィルムは、一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであっても構わないが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0055】
ポリエステルフィルム基材の厚みは5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上である。厚みは5μm以上であると、フィルムの搬送時にシワが入りにくく好ましい。
【0056】
ポリエステルフィルム基材の厚みは50μm以下であることが好ましく、より好ましくは45μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下である。厚みが40μm以下であると、単位面積当たりのコストが低下するため好ましい。
【0057】
インラインコートの場合は縦方向の延伸前の未延伸フィルムに塗工しても、縦方向の延伸後で横方向の延伸前の一軸延伸フィルムに塗工しても良い。縦方向の延伸前に塗工する場合にはロール延伸前に乾燥工程を設けることが好ましい。横方向の延伸前の一軸延伸フィルムに塗工する場合はテンター内でのフィルム加熱工程で乾燥工程を兼ねることが出来るので、必ずしも別途乾燥工程を設ける必要はない。なお、同時二軸延伸する場合も同様である。
【0058】
易滑塗布層の膜厚は0.001μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.02μm以上であり、特に好ましくは0.03μm以上である。塗布層の膜厚が0.001μm以上であると、塗布膜の造膜性が維持され、均一な塗布膜が得られるため好ましい。
【0059】
易滑塗布層の膜厚は2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下であり、特に好ましくは0.5μm以下である。塗布層の膜厚が2μm以下であると、ブロッキングが生じるおそれがなく好ましい。
【0060】
後述する離型塗布層上に、塗布、成型される樹脂シートは、塗布、成型後に離型フィルムと共にロール状に巻き取られる。このとき、樹脂シート表面に離型フィルムの易滑塗布層が接触した状態で巻き取られることとなる。樹脂シート表面に欠陥を発生させないために、易滑塗布層の外表面(ポリエステルフィルムと接していない塗布フィルム全体の易滑塗布層表面)は、適度に平坦であることが必要であり、領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0061】
易滑塗布層の外表面の領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上、最大突起高さ(P)が60nm以上であれば、易滑塗布面が平滑になりすぎず適度な滑り性が維持できるため、巻取性が良好となり好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)が25nm以下、最大突起高さ(P)が500nm以下であれば、易滑塗布面が粗くなりすぎず突起による樹脂シートの欠陥が発生せず好ましい。
【0062】
本発明では、領域表面平均粗さ(Sa),最大突起高さ(P)を上記範囲にすることに加え、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μm以下であることが好ましい。粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を10μm以下に制御することで、単位面積当たりの突起個数が増加する。突起個数が増加すると、突起一つ当たりにかかる圧力が分散され小さくなるため、ピンホールの発生を効果的に抑制できて好ましい。粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは3μm以下である。しかしながら、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が小さ過ぎることは、易滑塗布層中の粒子の含有量が多過ぎることなどと関連し、領域表面平均粗さ(Sa)が大きくなることや、最大突起高さ(P)が大きくなることとも関連があるので、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であっても構わず、1μm以上であっても構わない。
【0063】
本発明では、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を所定の範囲にするために、易滑塗布層に含まれる粒子の平均粒径は1000nm以下であることが好ましい。より好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは600nm以下である。粒子径が1000nm以下であると、粒子間の距離が大きくなりすぎることがなく、RSmが所定の範囲に調節されて好ましい。
【0064】
(離型塗布層)
本発明における離型塗布層を構成する樹脂には特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。
【0065】
本発明の離型塗布層として、例えばシリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂のことであり、硬化型シリコーン、シリコーングラフト樹脂、アルキル変性などの変性シリコーン樹脂などが挙げられるが、移行性などの観点から反応性の硬化シリコーン樹脂を用いることが好ましい。反応性の硬化シリコーン樹脂としては、付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどを用いることができる。より好ましくは、低温で加工できる低温硬化性の付加反応系のもの、および紫外線もしくは、電子線硬化系のものがよい。これらのものを用いることで、ポリエステルフィルムへの塗工加工時に、低温で加工できる。そのため、加工時におけるポリエステルフィルムへの熱ダメージが少なく、平面性の高いポリエステルフィルムが得られ、薄膜の樹脂シート製造時にもピンホールなどの欠点を少なくすることができる。
【0066】
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものが挙げられる。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。例としては、東レ・ダウコーニング社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC755、LTC760Aなど)および熱UV硬化型(LTC851、BY24-510、BY24-561、BY24-562など)、信越化学社製の溶剤付加+UV硬化型(X62-5040、X62-5065、X62-5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62-2835、X62-2834、X62-1980など)などが挙げられる。
【0067】
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0068】
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。使用する樹脂の例としては、信越化学社製のUV硬化系シリコーン(X62-7028A/B、X62-7052、X62-7205、X62-7622、X62-7629、X62-7660など)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のUV硬化系シリコーン(TPR6502、TPR6501、TPR6500、UV9300、UV9315、XS56-A2982、UV9430など)、荒川化学社製のUV硬化系シリコーン(シリコリースUV POLY200、POLY215、POLY201、KF-UV265AMなど)が挙げられる。
【0069】
上記、紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、アクリレート変性や、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンなどを用いることもできる。これら変性されたポリジメチルシロキサンを、多官能のアクリレート樹脂やエポキシ樹脂などと混合し、開始剤存在下で使用することでも良好な離型性能を出すことができる。
【0070】
その他用いられる樹脂の例としては、ステアリル変性、ラウリル変性などをしたアルキド樹脂やアクリル樹脂、またはメチル化メラミンの反応などで得られるアルキド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂なども好適である。電子部品などに用いられる樹脂シートを成形する場合には、シリコーンを含まない離型剤も好ましい。
【0071】
上記、メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアルキド樹脂としては、日立化成社製のテスファイン303、テスファイン305、テスファイン314などが挙げられる。メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアクリル樹脂としては、日立化成社製のテスファイン322などが挙げられる。
【0072】
本発明の離型塗布層に上記樹脂を用いる場合は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、剥離力を調整するために、軽剥離添加剤や、重剥離添加剤といった添加剤を混合することも可能である。
【0073】
本発明の離型塗布層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子などの突起を形成するものは、実質的に含有しないほうが好ましい。
【0074】
本発明の離型塗布層には、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0075】
本発明において、離型塗布層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層の厚みが0.005~2.0μmとなる範囲がよい。離型塗布層の厚みが0.005μm以上であると、剥離性能が保たれて好ましい。また、離型塗布層の厚みが2.0μm以下であると、硬化時間が長くなり過ぎず、離型フィルムの平面性の低下による樹脂シートの厚みムラを生じおそれがなく好ましい。また、硬化時間が長くなり過ぎないので、離型塗布層を構成する樹脂が凝集するおそれがなく、突起を形成するおそれがないため、樹脂シートのピンホール欠点が生じにくく好ましい。
【0076】
離型塗布層を形成させたフィルム外表面(ポリエステルフィルムと接していない塗布フィルム全体の離型塗布層表面)は、その上で塗布、成型する樹脂シートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が200nm以下であることが好ましい。さらには領域表面平均粗さ5nm以下かつ最大突起高さ100nm以下がより好ましく、5nm以下かつ最大突起高さ30nm以下がなお好ましい。領域表面粗さが5nm以下、且つ、最大突起高さが200nm以下であれば、樹脂シート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0077】
本発明の離型フィルムに設けた離型塗布層の表面自由エネルギーの下限は15mJ/m2以上であることが好ましい。より好ましくは、18mJ/m2以上であり、20mJ/m2以上がさらに好ましい。15mJ/m2以上であると樹脂シートの溶解液を塗布した際にハジキなどが発生しにくいため好ましい。
【0078】
本発明の離型フィルムに設けた離型塗布層の表面自由エネルギーの上限は45mJ/m2以下であることが好ましい。より好ましくは、40mJ/m2以下であり、35mJ/m2以下がさらに好ましい。45mJ/m2以下であると成型した樹脂シートの剥離性が良好なため好ましい。
【0079】
本発明において、離型塗布層を形成させたフィルム表面を所定の粗さ範囲に調節するためには、PETフィルムには実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。なお、本発明における「実質的に無機粒子を含有しない」とは、基材フィルム及び離型塗布層の両者について、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm以下であることで定義され、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下である。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0080】
本発明において、離型塗布層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがもっとも好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。180℃以下の場合、フィルムの平面性が保たれ、樹脂シートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。120℃以下であるとフィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、樹脂シートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。
【0081】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0082】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜をレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10~80質量%程度添加することが好ましい。
【0083】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【0084】
本発明の離型フィルムに成型される樹脂シートとは、樹脂シートを構成する成分の30質量%以上が有機成分で構成されたものであり、セラミックグリーンシートのような無機物を70質量%以上含むものは適用されない。有機成分としては特に限定されないが、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂や、イソシアネート、メラミンなどの架橋剤を含み架橋された構造であっても構わない。また、上記範囲を満たせば有機成分以外には無機粒子や添加剤など、どのようなものを含んでも構わない。
【0085】
本発明の離型フィルムの用途は特に限定されず、樹脂シートを成形する用途であれば使用することができる。樹脂シートの例としては、ウレタンシート、高分子電解質膜、粘着シート、シクロオレフィンフィルムなどを挙げることができる。
【0086】
本発明の離型フィルムに成型される樹脂シートの成型方法は特に限定されないが、原料を溶剤に溶解もしくは分散させたものを本発明の離型フィルムに既存の塗布方法によって成型することが好ましい。
【実施例】
【0087】
次に、実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0088】
(離型フィルムの表面特性)
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は5回測定の最大値を採用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 187×139μm (Sa,P測定)
・測定長さ(Lr:基準長さ):187μm(RSm測定)
【0089】
(易滑塗布層の粒子分散性評価)
上記で測定した最大突起高さ(P)の値を下記のような基準で判断した。
○:最大突起高さ(P)が0.2μm以下
○△:最大突起高さ(P)が0.2μmよりも大きく、0.3μmよりも小さい
△:最大突起高さ(P)が0.3μm以上
【0090】
(表面自由エネルギー)
25℃、50%RHの条件下で接触角計(協和界面科学株式会社製: 全自動接触角計 DM-701)を用いて離型フィルムの離型面に水(液滴量1.8μL)、ジヨードメタン(液適量0.9μL)、1-ブロモナフタレン(液適量0.9μL)の液滴を作成しその接触角を測定した。接触角は、各液を離型フィルムに滴下後10秒後の接触角を採用した。前記方法で得られた、水、ジヨードメタン、エチレングリコールの接触角データを「北崎-畑」理論より計算し離型フィルムの表面自由エネルギーの分散成分γsd、極性成分γsp、水素結合成分γshを求め、各成分を合計したものを表面自由エネルギーγsとした。本計算には、本接触角計ソフトウェア(FAMAS)内の計算ソフトを用いて行った。
【0091】
(ピンホール評価)
以下の方法を用いて、樹脂シートを3種類作成し、評価を行った。
(樹脂シート(1))
環状オレフィン樹脂(ARTON(登録商標)G7810/JSR社製、固形分100質量%)0.5質量部を、トルエン80質量部、テトラヒドロフラン20質量部に溶解させて樹脂溶液(1)を作成した。離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後の樹脂シートが0.5μmの厚みになるように塗布し100℃で1分乾燥後、樹脂シート面と易滑塗布層面を重ね合わせ、10分間、1kg/cm2の加重を掛けたあと、離型フィルムを剥離し、樹脂シート(1)を得た。
(樹脂シートi(2))
イオン交換樹脂(20% Nafion(登録商標)20Dispersion Solution DE2021 CS type、和光純薬工業社製、固形分20質量%)を10質量部、水10質量部、イソプロピルアルコールを20質量部を混ぜ、樹脂溶液(2)を作成した。離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後の樹脂シートが0.5μmの厚みになるように塗布し100℃で1分乾燥後、樹脂シート面と易滑塗布層面を重ね合わせ、10分間、1kg/cm2の加重を掛けたあと、離型フィルムを剥離し、樹脂シート(2)を得た。
(樹脂シート(3))
紫外線硬化性樹脂(ウレタンアクリレート、製品名:8UX-015A、大成ファインケミカル社製、固形分100質量%)20質量部、メチルエチルケトン40質量部、イソプロピルアルコール39質量部、光ラジカル開始剤(イルガキュア(登録商標)907、BASF社製)1質量部を混合し樹脂溶液(3)を作成した。離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後の樹脂シートが1.0μmの厚みになるように塗布し90℃で15秒乾燥後、高圧水銀ランプを用いて300mJ/cm2となるように紫外線を照射し、樹脂シート面と易滑塗布層面を重ね合わせ、10分間、1kg/cm2の加重を掛けたあと、離型フィルムを剥離し、樹脂シート(3)を得た。
得られた樹脂シート3種類全てにおいて以下の方法で評価した。
得られた樹脂シートのフィルム幅方向の中央領域において25cm2の範囲で樹脂スラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。
○:ピンホールの発生なし、厚みばらつき特に問題なし
△:ピンホールの発生はないが、やや凹みが見られた。厚みバラつきは特に問題なし。
×:ピンホールの発生が僅かにあり、及び/又は、厚みばらつきが僅かに目立つ
××:ピンホールの発生が少しあり、及び、厚みばらつきが少し目立つ
×××:ピンホールの発生が多数あり、及び、厚みばらつき大きく目立つ
【0092】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0093】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
【0094】
(積層フィルムZの製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流させ、PET(I)を反離型面側層、PET(II)を離型面側層となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャステイング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/(II)=60%/40%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムZを得た。得られたフィルムZの離型面側層のSaは2nm、反離型面側層のSaは28nmであった。
【0095】
(アクリルポリオールA-1の製造)
撹拌機、還流式冷却器、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)77質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)100質量部、メタクリル酸(MAA)33質量部およびイソプロピルアルコール(IPA)490質量部を仕込み、撹拌を行いながら80℃までフラスコ内を昇温した。フラスコ内を80℃に維持したまま3時間の撹拌を行い、その後、2,2-アゾビス-2―メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミドを0.5質量部フラスコに添加した。フラスコ内を120℃に昇温しながら窒素置換を行った後、120℃で混合物を2時間撹拌した。
次いで、120℃で1.5kPaの減圧操作を行い、未反応の原材料と溶媒を除去し、アクリルポリオールを得た。フラスコ内を大気圧に戻して室温まで冷却し、IPA水溶液(水含量50質量%)840質量部を添加混合した。その後、撹拌しながら滴下ロートを用いて、トリエチルアミンを加え、溶液のpHが5.5~7.5の範囲になるまでアクリルポリオールの中和処理を行い、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(A-1)を得た。アクリルポリオール(A-1)のNMR測定による組成比率、Tg、延伸適性、酸価を表1に併記した。
【0096】
(アクリルポリオール(A-2)~(A-12)の製造)
表1に示したように、MMA、St、SMA、HEMA、MAA、AA、仕込み時IPA、希釈時IPA水溶液の量を変更した以外はアクリルポリオール1の製造と同様にして、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオール(A-2)~(A-12)を得た。アクリルポリオール(A-2)~(A-12)のNMR測定による組成比率、Tg、延伸適性、酸価を表1に併記した。なお、組成比率は、MMA、St(スチレン)、SMA(ステアリルメタクリレート)、を各々l-1、l-2、l-3(単位)、HEMAをm(単位)、MAA、AA(アクリル酸)をn(単位)として表した。
【0097】
【0098】
(ポリエステル樹脂B0-1の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチルー5-ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、エチレングリコール185.1質量部、ネオペンチルグリコール185.1質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(B0-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(B0-1)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(B0-1)の還元粘度を測定したところ,0.60dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は65℃であった。
【0099】
(ポリエステル水分散体B-1の製造)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(B0-1)30質量部、エチレングリコール-n-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散体(B-1)を作製した。
【0100】
(ポリエステル樹脂B0-2の重合)
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート163質量部、ジメチルイソフタレート163質量部、1,4ブタンジオール169質量部、エチレングリコール324質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。
次いで、フマル酸14質量部およびセバシン酸203質量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29Paの減圧下で1時間30分反応させ、疎水性共重合ポリエステル樹脂(B0-2)を得た。得られた疎水性共重合ポリエステル樹脂(B0-2)は、淡黄色透明であった。
【0101】
(ポリエステル水分散体B-2の製造)
次いで、グラフト樹脂の製造撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、この共重合ポリエステル樹脂(B0-2)60質量部、メチルエチルケトン45質量部およびイソプロピルアルコール15質量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、無水マレイン酸24質量部をポリエステル溶液に添加した。
次いで、スチレン16質量部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5質量部をメチルエチルケトン19質量部に溶解した溶液を、0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール8質量部を添加した。次いで、水300質量部とトリエチルアミン24質量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。
その後、反応器の内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、淡黄色透明のポリエステル系樹脂を得、固形分濃度25質量%の均一な水分散性ポリエステル系グラフト共重合体分散液(B-2)を調製した。得られたポリエステル系グラフト共重合体のガラス転移温度は68℃であった。
【0102】
(ポリウレタン水分散体C-1の製造)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分37質量%の水溶性ポリウレタン樹脂溶液C-1を調製した。得られたポリウレタン樹脂のガラス転移点温度は-30℃であった。
【0103】
(オキサゾリン系架橋剤D-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート84部からなる単量体混合物と、重合開始剤である2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業株式会社製「ABN-E」)21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下漏斗から2時間かけて滴下して反応させ、滴下終了後も引き続き5時間反応させた。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。その後、反応液を冷却し、固形分濃度25%のオキサゾリン基を有する樹脂(D-1)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(D-1)のオキサゾリン基量は4.3mmol/gであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した数平均分子量は20000であった。
【0104】
(オキサゾリン系架橋剤D-2の製造)
上記オキサゾリン基を有する樹脂(D-1)の合成と同様の方法で、組成(オキサゾリン基量および分子量)の異なる固形分濃度10%のオキサゾリン基を有する樹脂(D-2)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(D-2)のオキサゾリン基量は7.7mmol/gであり、GPCにより測定した数平均分子量は40000であった。
【0105】
(カルボジイミド架橋剤E-1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M400、平均分子量400)220質量部を仕込み、120℃で1時間、撹拌し、更に4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート26質量部とカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド3.8質量部(全イソシイアネートに対し2質量%)を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応液の赤外スペクトルを測定し、波長2200~2300cm-1の吸収が消失したことを確認した。60℃まで放冷し、イオン交換水を567質量部加え、固形分40質量%のカルボジイミド水溶性樹脂(E-1)を得た。
【0106】
(シリカ粒子G-1)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名MP2040、平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
【0107】
(シリカ粒子G-2)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名スノーテックスXL、平均粒径40nm、固形分濃度40質量%)
【0108】
(シリカ粒子G-3)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名スノーテックスZL、平均粒径100nm、固形分濃度40質量%)
【0109】
(シリカ粒子G-4)
コロイダルシリカ(日産化学製、商品名MP4540M、平均粒径450nm、固形分濃度40質量%)
【0110】
(アクリル粒子G-5)
アクリル粒子水分散体(日本触媒製、商品名MX100W、平均粒径150nm、固形分濃度10質量%)
【0111】
(離型剤溶液X-1)
UV硬化型シリコーン樹脂(モメンティブ社製 UV9300、固形分濃度100質量%)100質量部と硬化触媒ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート1質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0112】
(離型剤溶液X-2)
熱硬化型アミノアルキド樹脂(日立化成社製 テスファイン314、固形分60質量%)100質量部と硬化触媒としてp-トルエンスルホン酸(日立化成社製、ドライヤー900、固形分50質量%)1.2質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0113】
(離型剤溶液X-3)
熱硬化型アミノアルキド樹脂(日立化成社製 テスファイン305、固形分50質量%)100質量部と硬化触媒としてp-トルエンスルホン酸(日立化成社製、ドライヤー900、固形分50質量%)1.0質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0114】
(離型剤溶液X-4)
シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製 TOPAS6017S、固形分100質量%)10質量部をトルエン90質量部に熱溶解させた液を、トルエン/テトラヒドロフラン(=8:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0115】
(背面平滑化塗布液Y)
活性エネルギー線化合物としての、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[固形分100質量%]94質量部と、ポリオルガノシロキサンとしての、ポリエーテル変性アクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン[ビッグケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK-3500」、固形分100質量%]1質量部と、光重合開始剤としての、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤[BASF社製、商品名「IRGACURE907」、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、固形分100質量%]5質量部を、イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン混合溶剤(質量比3/1)で希釈して、固形分20質量%の背面平滑化コート層形成用材料を得た。
【0116】
(実施例1)
(易滑塗布液1の調整)
下記の組成の易滑塗布液1を調整した。
(易滑塗布液1)
水 48.33質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
ポリエステル水分散体B-1(固形分濃度30質量%) 15.78質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0117】
(ポリエステルフィルムの製造)
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.62dl/gで、かつ粒子を実質的に含有していないPET樹脂ペレット(PET(II))を、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0118】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0119】
次いで、上記易滑塗布液をバーコーターでPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終延伸、乾燥後の塗布量が0.1μmになるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ31μmのインラインコーティングポリエステルフィルムを得た。
【0120】
(離型塗布層の形成)
上記で得たインラインコーティングポリエステルフィルムの、易滑塗布層積層面とは反対表面に、離型剤溶液X-1を乾燥後の厚みで0.1μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、90℃の熱風で30秒間乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、離型塗布層を形成し樹脂シート製造用離型フィルムを得た。なお、巻き取り性等、工程通過性、ハンドリング性は特に問題なく優秀であった。
【0121】
(実施例2)
易滑塗布液1を、下記の易滑塗布液2に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液2)
水 45.18質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
ポリエステル水分散体B-2(固形分濃度25質量%) 18.93質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0122】
(実施例3)
易滑塗布液1を、下記の易滑塗布液3に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液3)
水 51.32質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
ポリウレタン樹脂水分散体C-1(固形分濃度37質量%) 12.79質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0123】
(実施例4)
易滑塗布液1を、下記の易滑塗布液4に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液4)
水 41.86質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-1(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤D-1(固形分濃度25質量%) 5.68質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0124】
(実施例5)
実施例4で使用した易滑塗布液4中の架橋剤をカルボジイミド系架橋剤E-1(固形分濃度40質量%)に変更した易滑塗布液5を使用した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液5)
水 43.99質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-1(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
カルボジイミド系架橋剤E-1(固形分濃度40質量%) 3.55質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0125】
(実施例6)
実施例4で使用した易滑塗布液4中の架橋剤をオキサゾリン系架橋剤D-2(固形分濃度10質量%)に変更した易滑塗布液6を使用した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液6)
水 33.34質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-1(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤D-2(固形分濃度10質量%) 14.20質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0126】
(実施例7)
易滑塗布液4を、下記の易滑塗布液7に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液7)
水 43.28質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-1(固形分濃度20質量%) 9.47質量部
オキサゾリン系架橋剤D-1(固形分濃度25質量%) 11.36質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0127】
(実施例8)
易滑塗布液4を、下記の易滑塗布液8に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液8)
水 41.15質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-1(固形分濃度20質量%) 20.12質量部
オキサゾリン系架橋剤D-1(固形分濃度25質量%) 2.84質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0128】
(実施例9)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-2(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0129】
(実施例10)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-3(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0130】
(実施例11)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-4(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0131】
(実施例12)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-5(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0132】
(実施例13)
実施例4に使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-6(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0133】
(実施例14)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-7(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0134】
(実施例15)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-8(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0135】
(実施例16)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-9(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0136】
(実施例17)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-10(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0137】
(実施例18)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-11(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0138】
(実施例19)
実施例4で使用した易滑塗布液4中のアクリルポリオールA-1(固形分濃度20質量%)をアクリルポリオールA-12(固形分濃度20質量%)に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0139】
(実施例20)
易滑塗布液4を下記の易滑塗布液20に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液20)
水 41.74質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-10(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤D-1(固形分濃度25質量%) 5.68質量部
シリカ粒子G-1 0.59質量部
(平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
シリカ粒子G-4 0.12質量部
(平均粒径450nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0140】
(実施例21)
易滑塗布液4を下記の易滑塗布液21に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液21)
水 41.15質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-10(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤D-1(固形分濃度25質量%) 5.68質量部
シリカ粒子G-2 1.18質量部
(平均粒径40nm、固形分濃度40質量%)
シリカ粒子G-4 0.12質量部
(平均粒径450nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0141】
(実施例22)
易滑塗布液4を下記の易滑塗布液22に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液22)
水 41.27質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-10(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤D-1(固形分濃度25質量%) 5.68質量部
シリカ粒子G-3 1.18質量部
(平均粒径100nm、固形分濃度40質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0142】
(実施例23)
易滑塗布液4を下記の易滑塗布液23に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(易滑塗布液23)
水 40.09質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂A-10(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤D-1(固形分濃度25質量%) 5.68質量部
アクリル粒子G-5 2.37質量部
(平均粒径150nm、固形分濃度10質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0143】
(実施例24)
離型塗布層の形成を下記のように実施した以外は、実施例17と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
(離型塗布層の形成)
上記で得たインラインコーティングポリエステルフィルムに離型剤溶液X-2を易滑塗布層積層面とは反対表面に、乾燥後の厚みで0.1μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、130℃の熱風で30秒間乾燥することで離型塗布層を形成しポリエステルフィルムを得た。
【0144】
(実施例25)
離型塗布層をX-3に変更した以外は、実施例24と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0145】
(実施例26)
離型塗布層をX-4に変更した以外は、実施例24と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0146】
(比較例1)
離型塗布層を形成するフィルムとして、実施例1で作成した一方の表面に易滑塗布層を有するインラインコーティングフィルムの代わりに、E5000-25μm(東洋紡製)に変更して使用した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。E5000はフィルム内部に粒子を含有しており、両表面のSaがともに0.031μmであった。
【0147】
(比較例2)
離型層の塗布厚みを1.0μmに変更した以外は、比較例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0148】
(比較例3)
離型塗布層を形成するフィルムとして、実施例1で作成した一方の表面に易滑塗布層を有するインラインコーティングフィルムの代わりに、積層フィルムZに変更して使用した以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。積層フィルムZのPET(II)ペレットを吐出した面(粒子を含有しない層)に離型塗布層を設けた。
【0149】
(比較例4)
比較例3で得たポリエステルフィルムの離型塗布層を形成した面とは反対面の表面に背面平滑化塗布液Yを乾燥後厚みで0.5μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、90℃の熱風で30秒間乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、背面平滑化層を形成し、ポリエステルフィルムを得た。
【0150】
(比較例5)
背面平滑化層を0.7μmとなるよう塗工した以外は、比較例4と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0151】
(比較例6)
背面平滑化層を1.0μmとなるよう塗工した以外は、比較例4と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0152】
各実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0153】
【0154】
実施例1~26においては、易滑塗布層表面のSa,P、RSmすべてのパラメーターが適切な範囲にあるため、ピンホールの発生がない樹脂シートを得ることができた。比較例1~3においては、易滑面のSa,P、RSmすべてのパラメーターが大きいため、ピンホールの発生がみられた。比較例4~6においては、易滑面の凹凸を平滑化層で埋めることで、Sa,Pを適切な範囲に収めることができるがRSmが大きいため、ピンホールの発生を抑制するには不十分であった。RSmが大きいことは突起間隔が広く単位面積当たりの突起数が少ないことを意味し、突起1つあたりにかかる圧力が大きくなり、ピンホールが生じたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明によれば、薄膜で高い平滑性が求められる樹脂シートを作成する場合に、ピンホールや部分的な厚みばらつき等の防止による高い平滑性の具備する樹脂シート製造用離型フィルムの提供が可能となる。