(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20221018BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20221018BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20221018BHJP
C09K 5/06 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F01N3/24 L
F01N3/28 301P
F28D20/02 D
C09K5/06
(21)【出願番号】P 2017244454
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】植田 忠伸
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102004052106(DE,A1)
【文献】実開昭51-87640(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283504(US,A1)
【文献】特開2000-274231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F28D 20/02
C09K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気が流れる排気管と、
前記排気管の内部に設けられ、前記排気が通過するハニカム状とされて前記排気を浄化する触媒を担持する触媒担持体と、
前記排気管の内部に設けられ、蓄熱材が封入された
複数の蓄熱材容器が
焼結されて一体化されていることで、前記蓄熱材容器により、前記排気が通過するハニカム状に形成されている蓄熱材集結体と、
を有する排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気の流れ方向で見て、前記触媒担持体における複数の排気流路のそれぞれは、前記蓄熱材集結体における複数の排気流路のいずれかに納まる形状である請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記触媒担持体と前記蓄熱材集結体とが前記排気の流れ方向で接触している請求項1又は請求項2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記触媒が、集結されている前記蓄熱材容器の外側にも担持される請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
排気が流れる排気管と、
前記排気管の内部に設けられ、蓄熱材が封入されると共に外側に排気を浄化する触媒が担持された
複数の蓄熱材容器が
焼結されて一体化されていることで、前記蓄熱材容器により、前記排気が通過するハニカム状に形成されている蓄熱材集結体と、
を有する排気浄化装置。
【請求項6】
前記蓄熱材集結体は、複数の蓄熱材容器が焼結された蓄熱材焼結体である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
前記蓄熱材容器がセラミック製である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項8】
前記蓄熱材は、前記触媒の活性温度以上の融点をもつ潜熱蓄熱材である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セラミックスの隔壁により仕切られて一方の端面から他方の端面まで軸方向に貫通し、流体が流通する複数のセルを有するハニカム構造体として形成された蓄熱材が記載されている。
【0003】
特許文献2には、ハニカム構造を有し、流体が流通する流体流路と、その熱を蓄熱する媒体が封じ込められた蓄熱媒体部とが形成された蓄熱材の本体が記載されている。蓄熱媒体部は、ハニカム両端面を目封じすることにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-255105号公報
【文献】特開2011-52919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、隔壁は、二つの端面(入口端面、出口端面)の間を連通する複数のセルが形成されるように配置されており、隔壁の内部に潜熱蓄熱材が充填されている。このように、隔壁に潜熱蓄熱材を充填した構造では、実質的には、隔壁に潜熱蓄熱材が含浸されているため、潜熱蓄熱材が漏出するおそれがある。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、ハニカム構造体の目封止セルに蓄熱媒体が備えられており、ハニカム構造体の隔壁を介して、蓄熱媒体が排気と熱交換するため、熱交換の効率が悪い。
【0007】
このように、いずれの特許文献に記載の技術も、排気の熱を効率的に蓄熱材と熱交換すると共に、蓄熱材の漏出を抑制する点で改善の余地がある。
【0008】
本発明では、排気の熱を効率的に蓄熱材と熱交換すると共に、蓄熱材の漏出を抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様では、排気が流れる排気管と、前記排気管の内部に設けられ、前記排気が通過するハニカム状とされて前記排気を浄化する触媒を担持する触媒担持体と、前記排気管の内部に設けられ、蓄熱材が封入された蓄熱材容器が、前記排気が通過するハニカム状に集結されている蓄熱材集結体と、を有する。
【0010】
この排気浄化装置では、触媒担持体に担持された触媒により、排気管を流れる排気を浄化できる。触媒担持体は排気が通過するハニカム状とされているので、排気管内の排気は、触媒担持体をスムーズに通過する。
【0011】
排気管の内部には、蓄熱材集結体が設けられている。蓄熱材集結体の蓄熱材容器は、排気が通過するハニカム状に集結されているので、排気管内の排気は、蓄熱材集結体をスムーズに通過する。蓄熱材容器には蓄熱材が封入されているので、蓄熱材の漏出が抑制されている。そして、蓄熱材集結体を排気が通過するので、この排気と蓄熱材との間で効率的に熱交換できる。
【0012】
第二の態様では、第一の態様において、前記排気の流れ方向で見て、前記触媒担持体における複数の排気流路のそれぞれは、前記蓄熱材集結体における複数の排気流路のいずれかに納まる形状である。
【0013】
このため、蓄熱材焼結体の存在によって排気の流れに対する抵抗(圧力損失)が上昇することを抑制できる。
【0014】
第三の態様では、第一又は第二の態様において、前記触媒担持体と前記蓄熱材集結体とが前記排気の流れ方向で接触している。
【0015】
これにより、蓄熱材集結体の熱を触媒担持体に直接的に伝えることができ、蓄熱材集結体が触媒担持体から離間している構造と比較して熱伝達の効率が高い。
【0016】
第四の態様では、第一~第三のいずれか1つの態様において、前記触媒が、集結されている前記蓄熱材容器の外側にも担持される。
【0017】
触媒担持体に担持された触媒だけでなく、蓄熱材容器の外側に担持された触媒によっても排気を浄化することができる。
【0018】
第五の態様では、排気が流れる排気管と、前記排気管の内部に設けられ、蓄熱材が封入されると共に外側に排気を浄化する触媒が担持された蓄熱材容器が、前記排気が通過するハニカム状に集結されている蓄熱材集結体と、を有する。
【0019】
この排気浄化装置では、排気管の内部には、蓄熱材集結体が設けられている。蓄熱材容器は、排気が通過するハニカム状に集結されているので、排気管内の排気は、蓄熱材集結体をスムーズに通過する。そして、蓄熱材集結体を排気が通過するので、この排気と蓄熱材との間で効率的に熱交換できる。
【0020】
蓄熱材容器の外側には触媒が担持されているので、この触媒によって排気を浄化することができる。
【0021】
蓄熱材容器には蓄熱材が封入されているので、蓄熱材の漏出が抑制されている。そして、蓄熱材と触媒とは、蓄熱材容器の内側と外側とで近い位置にあるので、蓄熱材と触媒とが離れている構造と比較して、蓄熱材の熱を触媒に効率的に伝えることができる。
【0022】
第六の態様では、第一~第五のいずれか1つの態様において、前記蓄熱材集結体は、複数の蓄熱材容器が焼結された蓄熱材焼結体である。
【0023】
蓄熱材焼結体により、複数の蓄熱材容器を焼結して一点の形状に維持できる。複数の蓄熱材容器を焼結しており、蓄熱材容器を集結させるための接着剤等が不要であるので、蓄熱材容器の表面積を広く確保できる。これにより、多くの触媒を蓄熱材容器の表面に担持したり、蓄熱材容器の内部と外部とで効率的に熱移動させたりすることが可能となる。
【0024】
第七の態様では、第一~第六のいずれか1つの態様において、前記蓄熱材容器がセラミック製である。
【0025】
蓄熱材容器が、たとえば金属製である構成と比較して、セラミック製なので、排気に対する耐性を高く維持しやすい。
【0026】
第八の態様では、第一~第七のいずれか1つの態様において、前記蓄熱材は、前記触媒の活性温度以上の融点をもつ潜熱蓄熱材である。
【0027】
すなわち、蓄熱材が液相から固相へ相変化する際の温度は、触媒の活性温度以上である。蓄熱材の凝固熱により、触媒を活性温度以上に維持しやすくなり、触媒による排気の浄化を効率的に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0028】
排気の熱を効率的に蓄熱材と熱交換すると共に、蓄熱材の漏出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は第一実施形態の排気浄化装置を排気管の長手方向に沿った断面で示す断面図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の排気浄化装置の触媒担持体を示す斜視図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の排気浄化装置の触媒担持体を部分的に拡大して示す正面図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の排気浄化装置の触媒担持体の
図3とは異なる例を部分的に拡大して示す正面図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の排気浄化装置の触媒担持体の
図3及び
図4とは異なる例を部分的に拡大して示す正面図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の排気浄化装置の蓄熱材焼結体を示す斜視図である。
【
図7】
図7は第一実施形態の排気浄化装置の蓄熱材焼結体を部分的に拡大して示す正面図である。
【
図8】
図8は第一実施形態の排気浄化装置の蓄熱材焼結体を
図7よりもさらに拡大して示す正面図である。
【
図9】
図9は第一実施形態の排気浄化装置の蓄熱材容器を一部破断して示す斜視図である。
【
図10】
図10は第二実施形態の排気浄化装置を排気管の長手方向に沿った断面で示す断面図である。
【
図11】
図11は第一実施形態の排気浄化装置に適用可能な蓄熱材容器の
図9とは異なる例を一部破断して示す斜視図である。
【
図12】
図12は第一実施形態の排気浄化装置における触媒担持体の間隙と蓄熱材焼結体の間隙との関係を示す説明図である。
【
図13】
図13は第一実施形態の排気浄化装置における触媒担持体の間隙と蓄熱材焼結体の間隙との関係の
図12とは異なる第一変形例を示す説明図である。
【
図14】
図14は第一実施形態の排気浄化装置における触媒担持体の間隙と蓄熱材焼結体の間隙との関係の
図12及び
図13とは異なる第二変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して第一実施形態の排気浄化装置12を説明する。
【0031】
排気浄化装置12は、一例として、エンジンを有する自動車に適用される。第一実施形態では、
図1に示すように、排気浄化装置12は、自動車の排気管14の内部に取り付けられる触媒担持体16を有している。触媒担持体16は、たとえばセラミック製あるいは金属製である。
【0032】
図1に示す例では、排気管14は略円筒形であるが、長手方向の一部分は他の部分よりも径が太い太径配管14Bである。触媒担持体16は太径配管14Bに配置されている。
【0033】
以下において、単に「上流側」及び「下流側」というときは、排気管14内での排気の流れ方向(矢印F1方向)における上流側及び下流側をそれぞれいうものとする。
【0034】
第一実施形態では、
図2及び
図3にも示すように、触媒担持体16は、太径配管14Bの内周面に接触する円柱形状であり、内部がハニカム状の部材である。この「ハニカム状」とは、排気の流れ方向に延在する複数の壁体20によって、排気の流れ方向(矢印F1方向)に見て、触媒担持体16における排気流路が複数に分割された形状である。特に、本実施形態では、排気の流れ方向に見て一定形状の排気流路(間隙GP)がパターン化されて整列している構造である。したがって、排気は、壁体20の間に生じている間隙GPを通過可能であり、排気がこのように間隙GPを通過する際に壁体20に沿って流れる。すなわち、ハニカム状の触媒担持体16が存在する範囲では、排気が接触する部材の面積が増大されている。
【0035】
触媒担持体16には、エンジンから排出される排気を浄化する触媒18(
図3参照)が担持されている。
【0036】
排気の流れ方向で見たときの壁体の形状は、たとえば
図3に示すように四角形状(格子状)であってもよいし、
図4に示す六角形状(狭義のハニカム状)や、
図5に示す三角形状であってもよい。触媒担持体16はこれら各種のハニカム状とされることで広い表面積を確保しているので、表面に担持できる触媒18の量も多い。そして、触媒担持体16の間隙GPを排気が通過することで、このように多く担持された触媒18に排気を接触させて、排気を効率的に浄化できる。なお、
図4及び
図5では、壁体20のハッチング及び触媒18の図示を省略している。
【0037】
図1に示すように、太径配管14Bの内部において、触媒担持体16が配置された部分よりも上流側には、蓄熱材焼結体24が配置されている。
図1に示す例では、蓄熱材焼結体24は、排気の流れ方向で触媒担持体16に接触している。
【0038】
蓄熱材焼結体24は、
図8に示すように、複数の蓄熱材容器34を焼結することで、一体の形状とされた部材であり、蓄熱材集結体の一例である。
【0039】
図9に示すように、蓄熱材容器34は、内部に蓄熱材36が封入された容器である。
図9に示す例では、蓄熱材容器34は球形の外殻38を有しており、外殻38の外径は、たとえば1~10μm程度である。蓄熱材容器34の外殻38の材料としては、たとえば金属であってもよいが、本実施形態ではセラミックである。そして、この外殻38の内側に、蓄熱材36が封入されている。蓄熱材36は、高温の排気からの熱を受けることで、この熱を蓄えることが可能であり、また、低温の環境に対しては、蓄えた熱を放出することができる。蓄熱材容器34の外殻38の外側にも、複数の触媒18が担持されている。
【0040】
蓄熱材焼結体24は、複数の蓄熱材容器34が焼結により一体化されて形成されている。そして、蓄熱材焼結体24は全体として、
図7に示すように、触媒担持体16と同様にハニカム状であり、複数の壁体40を有している。したがって、排気は、蓄熱材焼結体24の壁体40の間隙GQを通過可能である。排気の流れ方向(矢印F1方向)に見て、間隙GQが蓄熱材焼結体24における排気流路になっている。
【0041】
本実施形態において、ハニカム状とされた蓄熱材焼結体24を排気の流れ方向に見た形状は、触媒担持体16を排気の流れ方向に見た形状と同じである。すなわち、本実施形態では
図12にも示すように、蓄熱材焼結体24における排気流路である間隙GQは、触媒担持体16における排気流路である間隙GPと同形状(正方形状)である。複数の間隙GQと複数の間隙GPとは一対一で対応しており、対応する間隙GQと間隙GPでは、中心が一致している。したがって、間隙GQと間隙GPとは排気の流れ方向に見て同一形状で連続している。換言すれば、排気の流れ方向に見て、触媒担持体16が占める領域(排気が通過できない領域)は、蓄熱材焼結体24が占める領域と同じである。このため、排気の流れに対する抵抗(圧力損失)が、蓄熱材焼結体24が存在することによって増大しない構造である。
【0042】
なお、このように、蓄熱材焼結体24の存在によって排気の流れに対する抵抗が上昇する事態を抑制するためには、上記したように、排気の流れ方向に見た間隙GQの形状が間隙GPの形状と完全に一致している必要はない。すなわち、排気の流れ方向に見た間隙GQの形状が間隙GPの形状よりも大きい構造であっても、蓄熱材焼結体24の存在によって排気の流れに対する抵抗が上昇することを、たとえば
図13、
図14に示す構造により実現できる。
図13に示す第一変形例では、排気の流れ方向に見て、間隙GQは、縦辺の長さが、
図12に示す例の約2倍の長方形である。そして、1つの間隙GQに、2つの間隙GPが納まっている。また、
図14に示す第二変形例では、同じく排気の流れ方向に見て、間隙GQは、縦辺及び横辺の長さが、
図12に示す例の約2倍の正方形である。そして、1つの間隙GQに、4つの間隙GPが納まっている。このように、複数の間隙GPのそれぞれが、複数の間隙GQのいずれかに納まる(はみ出さない)形状であれば、排気の流れ方向で、間隙GPを蓄熱材焼結体24の一部が塞がないので、蓄熱材焼結体24による圧力損失の上昇を抑制できる。なお、
図12~
図14では、間隙GPが4×4のマトリックス状に現れる範囲を示しているが、実際には、触媒担持体16はより多くの間隙GPを備える形状である。
【0043】
排気の流れ方向で見た触媒担持体16の形状を
図4及び
図5に示す形状とした場合であっても、蓄熱材焼結体24は、蓄熱材焼結体24の存在による排気の流れの抵抗上昇を抑制する形状とされる。すなわち、蓄熱材焼結体24の形状は、触媒担持体16の複数の間隙GPのそれぞれが、蓄熱材焼結体24の複数の間隙GQのいずれかに納まる(はみ出さない)形状とされる。
【0044】
触媒担持体16と蓄熱材焼結体24とは、いずれもハニカム状であるので、排気管14の内部には、触媒担持体16と蓄熱材焼結体24とでハニカム構造部42が構成されている構造であると言える。そして、第一実施形態では、ハニカム構造部42のうち、上流側端部42Aから中間部42Cまでが蓄熱材焼結体24であり、中間部42Cから下流側端部42Bまでが触媒担持体16である。
【0045】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0046】
図1に示すように、排気管14内を流れる排気は、蓄熱材焼結体24を通過する。蓄熱材焼結体24の複数の蓄熱材容器34には、
図9に示すように蓄熱材36が封入されているので、排気はこれらの蓄熱材36と熱交換できる。たとえば、排気の温度が蓄熱材36の温度より高い場合は、排気から蓄熱材36に熱が移動し、これとは逆に、排気の温度が蓄熱材36の温度より低い場合は、蓄熱材36から排気に熱が移動する。
【0047】
蓄熱材焼結体24は、
図7に示すように、蓄熱材容器34が焼結されてハニカム状に形成されている。したがって、排気管14内の排気は、蓄熱材焼結体24の間隙GQをスムーズに通過する。
【0048】
そして、排気がスムーズに蓄熱材焼結体24を通過することで、排気と蓄熱材36とで効率的に熱交換できる。
【0049】
しかも、蓄熱材36は、
図9に示すように、蓄熱材容器34に封入されている。したがって、蓄熱材36の漏出が抑制される。蓄熱材36は、直接的には排気に接触しないので、排気と反応を起こすことがない。
【0050】
排気管14内で、排気はさらに触媒担持体16を通過する。触媒担持体16に担持された触媒18により、排気を浄化できる。触媒担持体16も、蓄熱材焼結体24と同様のハニカム状なので、排気は、触媒担持体16の間隙GP(
図3参照)をスムーズに通過する。たとえば、エンジンの回転数や発生トルクが高く、排気の圧力が高い場合でも、排気を排気管14内でスムーズに流すことができる。換言すれば、高トルクや高回転が要求され、排気管14を流れる排気の流量が多くなる状況下であっても、排気への圧力損失を小さくして、エンジンの出力トルクや回転数に与える影響を小さくすることが可能である。
【0051】
上記したように、本実施形態では、排気管14を高温の排気が流れた場合に、この排気の熱を、蓄熱材36に効率的に蓄えることができる。
【0052】
そして、蓄熱材36に蓄熱した状態で、たとえばエンジンが停止すると、排気管14には排気が流れなくなる。この場合には、蓄熱材36に蓄えられた熱が触媒担持体16の触媒18に作用して、触媒18の温度低下が抑制される。蓄熱材36を有さない構造の排気浄化装置と比較して、触媒18の温度を長時間にわたって高く、たとえば活性温度以上に維持できる。この「活性温度」は、触媒18が排気を浄化する効果を高く発揮する下限温度である。
【0053】
そして、たとえば停止していたエンジンが再始動し排気管14を低温の排気が流れた場合でも、触媒担持体16の触媒18の温度が高く維持されていれば、触媒18によって排気を浄化する効果を高く発揮できる。
【0054】
さらに、蓄熱材焼結体24において触媒18との触媒反応が発生すると、通過する排気を、この触媒反応により昇温することが可能である。そして、昇温された排気の熱を、触媒担持体16の触媒18に作用させることで、触媒担持体16の触媒18の温度低下を抑制したり、昇温時間を短縮したりすることが可能である。
【0055】
本実施形態では、蓄熱材焼結体24が、排気の流れ方向で触媒担持体16に接触している。したがって、蓄熱材焼結体24の熱を直接的に触媒担持体16の触媒18に伝えることができ、蓄熱材焼結体24が触媒担持体16から離間している(非接触である)構造と比較して、熱伝達の効率が高い。
【0056】
このように、本実施形態では、高温の排気が排気管14を流れると、排気の熱を効率的に蓄熱材36に作用させて蓄熱できる。そして、蓄熱材36に蓄えられた熱を触媒担持体16の触媒に作用させることで、触媒が排気を浄化する効果を高く維持できる。
【0057】
また、本実施形態では、触媒担持体16と蓄熱材焼結体24とは、いずれもハニカム状であり、排気の流れ方向に見た形状は、触媒担持体16と蓄熱材焼結体24とで同じである。したがって、蓄熱材焼結体24が存在することで、排気の流れに対する抵抗(圧力損失)が高くなることが抑制され、排気のスムーズな流れが実現されている。
【0058】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0059】
図10に示すように、第二実施形態の排気浄化装置52においても、ハニカム状の蓄熱材焼結体24を有している。第二実施形態では、この蓄熱材焼結体24は、ハニカム構造部42において、上流側端部42Aから下流側端部42Bに亘って設けられている。すなわち、ハニカム構造部42の全部が、蓄熱材焼結体24により構成されている構造である。
【0060】
このような構成とされた第二実施形態の排気浄化装置52では、排気管14内を流れる排気は、蓄熱材焼結体24を通過し、複数の蓄熱材容器34に封入された蓄熱材36と熱交換できる。
【0061】
蓄熱材焼結体24は、蓄熱材容器34が焼結されることでハニカム状に形成されているので、排気がスムーズに通過し、排気と蓄熱材36とで効率的に熱交換できる。蓄熱材36は、蓄熱材容器34に封入されているので、蓄熱材36の漏出が抑制される。
【0062】
第二実施形態では、触媒18が担持された蓄熱材容器34が、ハニカム構造部42の全部(上流側端部42Aから下流側端部42Bまで)に配置されている。この触媒18によって排気を浄化できる。
【0063】
蓄熱材36は、排気の熱を受けて蓄熱できるので、この熱が触媒18に作用することで、触媒18の温度低下を抑制でき、たとえば、触媒18の温度を長時間にわたって活性温度以上に維持できる。エンジンの再始動時に排気管14を低温の排気が流れても、蓄熱材容器34の触媒18の温度が高く維持されていれば、排気を浄化する効果を高く発揮できる。
【0064】
排気が蓄熱材焼結体24における上流側で触媒18と反応すると、反応熱が生じる。この反応熱によって温度上昇した排気により、蓄熱材焼結体24における下流側の触媒18の温度低下を抑制できる効果もある。
【0065】
なお、第一実施形態では、
図11に示す変形例の蓄熱材容器54を用いることも可能である。この蓄熱材容器54では、外殻38の外側に、触媒18が担持されていない構造である。このような蓄熱材容器54を焼結した蓄熱材焼結体を用いた構造であっても、下流側に位置している触媒担持体16の触媒18により排気を浄化できる。これに対し、
図9に示す蓄熱材容器34を用いた蓄熱材焼結体24では、蓄熱材容器34の外殻38の外側に付着された触媒18によっても排気を浄化できる。
【0066】
上記各実施形態において、蓄熱材容器34の外殻38の材質は、たとえば金属であってもよいが、セラミック製であれば、セラミックの微細構造(微小な凹凸や穴)に触媒18を担持しやすく、また、外殻38からの触媒18の脱落も抑制できる。
【0067】
また、外殻38をセラミック製とすることで、たとえば、金属製と比較して、排気の接触による劣化を抑制することが可能である。そして、外殻38の劣化が抑制されることで、長期間にわたって、蓄熱材36を外殻38に封止した状態に維持できる。
【0068】
上記した実施形態の排気浄化装置において、蓄熱材集結体として、蓄熱材容器34が焼結された蓄熱材焼結体24を例示したが、蓄熱材集結体は、このような蓄熱材焼結体24に限定されない。たとえば、複数の蓄熱材容器34が、接着剤により接着されて所定形状とされた蓄熱材集結体でもよい。上記各実施形態の蓄熱材焼結体24では、蓄熱材容器34を相互に固着するための接着剤等の部材が不要であるため、排気と蓄熱材36との効率的な熱交換が可能である。
【0069】
上記した各実施形態の排気浄化装置において、蓄熱材36としては、高温の排気からの熱を受けて蓄熱することができると共に、低温の排気に対して放熱できれば特に限定されない。たとえば、100℃以上600℃以下の範囲に融点がある溶融塩を用いることができる。溶融塩は、常温で固体の塩や酸化物を、加熱により融解して液体にした物質であり、陽イオンと陰イオンとで構成されている。そして、相変化(融解、一次転移又は二次転移)に伴ってエンタルピーが変化し、蓄熱及び放熱する。
【0070】
各実施形態において実際に蓄熱及び放熱する際の蓄熱材36の相変化は、固相と液相との相転移を伴う融解であってもよく、相変化時には蓄熱材は潜熱として蓄熱及び放熱する。これに対し、固相と液相との相転移を伴わない相変化で蓄熱及び放熱してもよい。
【0071】
蓄熱材36の相変化の温度は、触媒18の活性温度以上の温度であることが好ましい。これにより、蓄熱材36の相転移時の温度が、触媒18の活性温度以上となるので、触媒18が効率的に排気を浄化できる状態を維持しやすい。
【0072】
なお、蓄熱材が相転移をしない温度域であっても、顕熱として蓄熱及び放熱するので、この顕熱としての蓄熱及び放熱を触媒18の温度低下抑制に用いてもよい。
【0073】
溶融塩において、特に、相変化温度が100℃以上600℃以下の範囲の溶融塩は、排気との熱交換を効率よく行うことができ、各実施形態及び変形例の排気浄化装置に好ましく適用できる。
【0074】
なお、溶融塩の種類によっては、相変化によって体積変化する溶融塩もある。体積変化する溶融塩を用いる場合は、蓄熱材容器34において、溶融塩の体積変化を吸収できるように十分な容積を外殻38の内部に確保しておけばよい。
【符号の説明】
【0075】
12 排気浄化装置
14 排気管
16 触媒担持体
18 触媒
24 蓄熱材焼結体
34 蓄熱材容器
36 蓄熱材
38 外殻
42 ハニカム構造部
42A 上流側端部
42B 下流側端部
42C 中間部
52 排気浄化装置
54 蓄熱材容器