(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】工作装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20221018BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B23Q11/00 Z
B23Q7/04 C
(21)【出願番号】P 2017252153
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】横山 明伸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 正輝
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094459(JP,A)
【文献】特開平02-185342(JP,A)
【文献】特開2003-117766(JP,A)
【文献】実開昭54-097976(JP,U)
【文献】特開2004-114258(JP,A)
【文献】特開2017-177287(JP,A)
【文献】中国実用新案第203993355(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00、11/08
B23Q 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械と、該工作機械の開閉扉の隣に配置してあり、前記工作機械の内外を移動してワークを交換するワーク交換装置とを備える工作装置において、
前記開閉扉の下方に、冷却液を受け部に案内する案内部が設けてあり、
前記受け部は、少なくとも前記開閉扉と前記ワーク交換装置との間に配置してあり、
前記ワーク交換装置に、前記受け部に冷却液を案内し、前記案内部と異なる第三案内部が設けてあり、
前記第三案内部は水平方向に延び、
前記第三案内部の底面に上下に延びた排液筒が設けてあり、
前記底面は前記排液筒に向かって下降傾斜し、
前記底面の周縁部に堰が設けてあり、
前記案内部は、
前記開閉扉を設置した前記工作機械の壁面に取り付けてあり、前記壁面及びワーク交換装置の間に向けて冷却液を案内する第一案内部と、
該第一案内部の下側にて、前記工作機械及びワーク交換装置の間に配置してあり、前記受け部に冷却液を案内する第二案内部と
を有し、
前記第一案内部、第二案内部及び受け部は
、左右方向及び前後方向にて重なること
を特徴とする工作装置。
【請求項2】
工作機械と、該工作機械の開閉扉の隣に配置してあり、前記工作機械の内外を移動してワークを交換するワーク交換装置とを備える工作装置において、
前記開閉扉の下方に、冷却液を受け部に案内する案内部が設けてあり、
前記受け部は、少なくとも前記開閉扉と前記ワーク交換装置との間に配置してあり、
前記ワーク交換装置に、前記受け部に冷却液を案内し、前記案内部と異なる第三案内部が設けてあり、
前記第三案内部は水平方向に延び、
前記第三案内部の底面に上下に延びた排液筒が設けてあり、
前記底面は前記排液筒に向かって下降傾斜し、
前記底面の周縁部に堰が設けてあり、
前記案内部は、
前記開閉扉を設置した前記工作機械の壁面に取り付けてあり、前記壁面及びワーク交換装置の間に向けて冷却液を案内する第一案内部と、
該第一案内部の下側にて、前記工作機械及びワーク交換装置の間に配置してあり、前記受け部に冷却液を案内する第二案内部と
を有し、
前記第一案内部は樋状をなし、
前記第一案内部、第二案内部及び受け部は
、左右方向及び前後方向にて重なること
を特徴とする工作装置。
【請求項3】
前記第一案内部は前記第二案内部に向けて下降傾斜すること
を特徴とする請求項1に記載の工作装置。
【請求項4】
前記第一案内部は下降傾斜すること
を特徴とする請求項2に記載の工作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及びワーク交換装置を備える工作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作装置は、工作機械とワーク交換装置を備える。ワーク交換装置は、工作機械の隣に配置してある。ワーク交換装置は、工作機械の壁面に形成した窓を通って、工作機械の内外を移動し、ワークを交換する。作業者はワークの交換を行う必要が無い(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワーク交換装置はワークを保持して、窓を通る。ワークには冷却液が付着している。ワークが窓を通る時、冷却液は落下してワークから工作機械の壁面に移動し、更に床に落下する。冷却液は床を汚染する。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、床の汚染を防止することができる工作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作装置は、工作機械と、該工作機械の開閉扉の隣に配置してあり、前記工作機械の内外を移動してワークを交換するワーク交換装置とを備える工作装置において、前記開閉扉の下方に、冷却液を受け部に案内する案内部が設けてあることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、開閉扉の下方に配置された案内部によって、冷却液は、受け部に向けて移動する。
【0008】
本発明に係る工作装置は、前記案内部は、前記開閉扉を設置した前記工作機械の壁面に取り付けてあり、前記壁面及びワーク交換装置の間に向けて冷却液を案内する第一案内部と、該第一案内部の下側にて、前記工作機械及びワーク交換装置の間に配置してあり、前記受け部に冷却液を案内する第二案内部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、開閉扉を通る時にワークから落下した冷却液が工作機械の壁面に付着した場合、冷却液は、第一案内部によって、工作機械の壁面とワーク交換装置の間、即ち第二案内部に向けて落下する。冷却液は、第二案内部によって、受け部に向けて移動する。
【0010】
本発明に係る工作装置は、前記第一案内部は前記第二案内部に向けて下降傾斜することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、冷却液は第一案内部から第二案内部に向けて流下する。
【0012】
本発明に係る工作装置は、前記案内部は樋状をなすことを特徴とする。
【0013】
本発明においては、冷却液は、樋状をなす案内部の端部に向けて移動し、予め定めた方向に移動し、受け部に直接向かうことができる。
【0014】
本発明に係る工作装置は、前記案内部は下降傾斜することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、冷却液は案内部を流下し、受け部に直接向かう。
【0016】
本発明に係る工作装置は、前記ワーク交換装置に、前記受け部に冷却液を案内する第三案内部が設けてあることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、第三案内部は、ワーク交換装置付近における冷却液を受け部に案内する。第三案内部が所定領域における冷却液を収集するので、受け部の面積を小さくできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にあっては、開閉扉の下方に配置された案内部によって、冷却液は、受け部に向けて移動する。故に冷却液が床を汚染することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1に係る前方から見た工作装置を略示する斜視図である。
【
図2】後方から見た工作装置を略示する斜視図である。
【
図5】ワーク交換装置の記載を省略した工作装置を略示する右側面図である。
【
図6】前板部付近を略示する工作装置の部分拡大正面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線を切断線とした略示断面図である。
【
図8】実施の形態2に係る工作装置を略示する右側面図である。
【
図9】ワーク交換装置を省略した工作装置の略示右側面図である。
【
図10】受け部付近の構成を略示する部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態に係る工作装置を示す図面に基づいて説明する。
図1は、前方から見た工作装置を略示する斜視図、
図2は、後方から見た工作装置を略示する斜視図、
図3は、工作装置を略示する正面図、
図4は、工作装置を略示する右側面図である。以下の説明では図に示す上下前後左右を使用する。
【0021】
工作装置は、工作機械1と、ワーク交換装置20とを備える。工作機械1は、基台2と、該基台2に設けた立柱3とを備える。立柱3は主軸ヘッド7を上下動可能に支持する。主軸ヘッド7は、上下方向を回転軸方向とした主軸4を回転可能に支持する。主軸ヘッド7の上端に主軸モータ5が設けてある。
【0022】
立柱3はタレット型の工具マガジン6を支持する。工具マガジン6は主軸ヘッド7の前側に配置してある。工具マガジン6の周囲に複数の工具が保持してある。主軸ヘッド7の上下動によって、主軸4に対する工具の取付及び取り外しを行う。主軸4の下方に左右方向及び前後方向に移動可能なテーブル15が配置してある。テーブル15に治具(図示略)を設ける。治具はワーク16の保持及び保持の解除を行う。
【0023】
工作機械1の上側、前側、後側、右側及び左側をカバー8が覆う。カバー8の前面に扉9が設けてある。扉9の右側に、作業者の操作を受け付ける操作部11及び画像を表示する表示部12が設けてある。カバー8の後側に制御装置10が設けてある。制御装置10の下側にポンプ装置60が設けてある。ポンプ装置60は、工具交換時又はワーク16の加工時に、主軸4、工具又はワーク16に冷却液を供給し、供給した冷却液を回収する。
【0024】
カバー8の右面、即ち工作機械1の右壁面に開閉扉13が設けてある。開閉扉13の右側にワーク交換装置20は配置してある。ワーク交換装置20は、支持台21と、アーム22と、レール取付部24とを備える。支持台21は上下に延びた柱状をなす。支持台21の上端部にアーム22が取り付けてある。アーム22は左右に移動する。アーム22の先端部に把持部22aが設けてある。
【0025】
支持台21の後面上部に、第三案内部23が設けてある。第三案内部23は、水平方向に延びた四角形の皿状をなす。第三案内部23の底面は、前側が後側よりも下になるように若干傾斜している。第三案内部23の底面には上下に延びた排液筒23aが設けてある。排液筒23aは、第三案内部23の底面の前縁部に位置し、前記底面を貫通している。第三案内部23の底面の周縁部に堰23bが設けてある。
【0026】
支持台21の下部と工作機械1の間にレール取付部24が設けてある。レール取付部24は、前後方向に対向する前板部24aと後板部24bを備える。前板部24a及び後板部24b夫々の左部分は、連結部30を介して基台2に連結する。前板部24aと後板部24bの間にレール(図示略)が設けてある。レールは前後に延び、支持台21の下部はレールに摺動可能に連結する。支持台21はボールねじ機構(図示略)に連結する。ボールねじ機構は前板部24aと後板部24bの間に配置してある。ボールねじ機構の駆動によって、支持台21はレールに沿って移動する。
【0027】
前板部24aと後板部24bの右側に蛇腹状のカバー25が二つ設けてある。一方のカバー25は、支持台21の下部前側と前板部24aを接続し、他方のカバー25は、支持台21の下部後側と後板部24bを接続する。カバー25は、右側からレール及びボールねじ機構を覆う。制御装置10は開閉扉13を開き、アーム22は工作機械1の内外を移動し、把持部22aでワーク16を把持し、ワーク16を交換する。制御装置10はボールねじ機構を駆動し、アーム22は前後に移動する。カバー25はアーム22の前後動に応じて伸縮し、レール及びボールねじ機構を覆い続ける。
【0028】
レール取付部24の下側に、冷却液を受ける受け部50が配置してある。受け部50は前後に延びた平面視矩形板状をなす。受け部50の上面縁部全体に堰50aが設けてある。受け部50の下面には排出管50bが連結している。受け部50の四隅に移動脚51が設けてある。移動脚51は下方に突出し、移動脚51の下端部に車輪51aが取り付けてある。作業者は受け部50を動かし、所望の場所に受け部50を配置することができる。
【0029】
図5は、ワーク交換装置20の記載を省略した工作装置を略示する右側面図、
図6は、前板部24a付近を略示する工作装置の部分拡大正面図、
図7は、
図3のVII-VII線を切断線とした略示断面図である。
図5に示すように、開閉扉13の下側において、カバー8の右面、即ち工作機械1の右壁面に第一案内部41が設けられている。第一案内部41は前後に延びる。第一案内部41は、開閉扉13の前後幅全体に亘って配置してある。
【0030】
図6に示すように、第一案内部41は、第一板部41aと第二板部41bを備える。第一板部41aと第二板部41bは前後に延びる。第一板部41aの長辺と第二板部41bの長辺が連結する。第一板部41aに対して第二板部41bは傾斜し、第一板部41aと第二板部41bがなす内角は鈍角である。第二板部41bを下向き且つ右向きにして、第一板部41aは工作機械1の右壁面に取り付けられている。第二板部41bは斜め右下に延び、工作機械1の右壁面とワーク交換装置20の間の空間に向く。即ち、第一案内部41は第二案内部42に向けて下降傾斜する。
【0031】
レール取付部24の上部に第二案内部42が設けられている。第二案内部42は前後に延びる。第二案内部42は、前後に延びる矩形の底板部42aと、底板部42aの右縁部及び左縁部夫々から上方に突出した堰42bとを備える。
図6に示すように、レール取付部24の上面は、前方視階段状をなす。底板部42aの形状も前方視階段状をなし、レール取付部24の上面に倣う形状である。底板部42aの形状は、レール取付部24の上面に倣う形状であればよく、階段状に限定されない。例えば前方視平板状又は曲面状でもよい。第二案内部42の前後寸法はカバー8の前後寸法と略同じであり、
図7に示すように、カバー8に対して若干後方に偏倚している。
【0032】
受け部50の前後寸法は第二案内部42の前後寸法よりも長い。受け部50の前端部は、第二案内部42の前端部よりも前側に位置し、受け部50の後端部は、第二案内部42の後端部よりも後側に位置する。左右方向において、第二案内部42は、受け部50の左縁部及び右縁部の間に配置してある。
【0033】
開閉扉13が開き、アーム22はワーク16を把持し、工作機械1の内外を移動する。ワーク16に付着した冷却液が落下し、第一案内部41よりも上側にて、工作機械1の右側面に付着した場合、冷却液は第一案内部41に至り、第一板部41aと第二板部41bに沿って下方に移動し、第二板部41bの下端から第二案内部42に落下する。冷却液は底板部42aにて拡がる。堰42bが、冷却液の左右方向への移動を制限するので、底板部42aの前端部又は後端部に向けて、冷却液は移動する。冷却液は、底板部42aの前端部又は後端部から落下し、受け部50に至る。冷却液は排出管50bを通り、排出される。受け部50の上面は排出管50bに向けて下降傾斜してもよい。
【0034】
ワーク16に付着した冷却液が第三案内部23に落下した場合、冷却液は第三案内部23の底面を前方に移動する。堰23bが冷却液の移動を制限するので、冷却液は排液筒23aに集まり、排液筒23aを通って落下し、受け部50に至る。なお第三案内部23の底面は、後側が前側よりも下になるように傾斜してもよい。この場合、排液筒23aは、第三案内部23の底面の後縁部に位置する。
【0035】
実施の形態1に係る工作装置にあっては、開閉扉13の下方に配置された第一案内部41及び第二案内部42によって、冷却液は、受け部50に向けて移動する。故に冷却液が床を汚染することを防止できる。
【0036】
ワークが開閉扉13を通る時にワークから落下した冷却液が工作機械1の壁面に付着した場合、冷却液は、第一案内部41によって、工作機械の壁面とワーク交換装置20の間、即ち第二案内部42に向けて落下する。冷却液は、第二案内部42によって、受け部50に向けて移動する。
【0037】
第一案内部41は第二案内部42に向けて下降傾斜するので、冷却液は第一案内部41から第二案内部42に向けて流下する。
【0038】
ワーク交換装置20の付近において、第三案内部23が冷却液を受け部50に案内する。第三案内部23はアーム22の後側領域において、冷却液を収集する。第三案内部23が冷却液を収集する領域に受け部50を配置する必要はない。実施の形態においては、第三案内部23はアーム22の後側に配置してあるので、受け部50を後方に延ばす必要がなく、受け部50の面積を小さくし、小型化できる。
【0039】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る工作装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図8は、工作装置を略示する右側面図、
図9は、ワーク交換装置20を省略した工作装置の略示右側面図、
図10は、受け部50付近の構成を略示する部分拡大平面図、
図11は、第一案内部141の略示縦断面図である。
【0040】
図8、
図9に示すように、開閉扉13の下側において、カバー8の右面、即ち工作機械1の右壁面に第一案内部141が設けられている。
図11に示すように、第一案内部141は樋状をなし、前後に延びる。第一案内部141は、前後方向において、開閉扉13の後端部とカバー8の前部の間に亘って配置してある。即ち、第一案内部141の前端部は、開閉扉13の前端部よりも前側に配置してある。
【0041】
第一案内部141は、前側が後側よりも下になるように傾斜している。
図8に示すように、第一案内部141の前端部は第二案内部42の前端部の上側に配置してある。なお第一案内部141の前端部は、第二案内部42よりも前側且つ受け部50の上側に配置してもよい。
【0042】
ワーク16に付着した冷却液が落下し、第一案内部141に至った場合、冷却液は第一案内部141の前端に向けて流下する。流下した冷却液は第二案内部42を介して受け部50に至るか、又は直接受け部50に至る。第一案内部141の前端部を、第二案内部42よりも前側且つ受け部50の上側に配置した場合、冷却液が受け部50よりも前側に落下しないように、受け部50を配置する。
【0043】
なお第一案内部141は、後側が前側よりも下になるように傾斜してもよい。この場合、第一案内部141の後端部を受け部50の上側に配置する。第二案内部42を削除し、第一案内部141の前端部又は後端部から、受け部50に直接冷却液が落下するようにしてもよい。
【0044】
実施の形態2に係る工作装置にあっては、冷却液は、樋状をなす第一案内部141の前端部に向けて移動し、第二案内部42に向かうか又は受け部50に直接向かうことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 工作機械
13 開閉扉
20 ワーク交換装置
23 第三案内部
41 第一案内部
42 第二案内部
50 受け部