IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

特許7159590充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム
<>
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図1
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図2
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図3
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図4
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図5
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図6
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図7
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図8
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図9
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図10
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図11
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図12
  • 特許-充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20221018BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221018BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221018BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221018BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221018BHJP
【FI】
H02J7/10 A
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018062992
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019176637
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】古川 健吾
(72)【発明者】
【氏名】村上 元信
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201382(JP,A)
【文献】特開2015-130272(JP,A)
【文献】特開2000-106219(JP,A)
【文献】特開2011-229315(JP,A)
【文献】特開2003-109672(JP,A)
【文献】特開2016-166864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0037438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H01M 10/48
H01M 10/44
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lix(NiaMnbCocd)O2(MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、
0≦a≦1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行うCC充電部と、
SOCを算出する第1算出部と、
前記SOCが、正極の抵抗とSOCとの相関関係に基づき正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値となるよう設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行うCV充電部と
を備える、充電制御装置。
【請求項2】
Lix(NiaM’1-a)O2(M’はLi,Ni以外の金属元素、0.5≦a≦1、
0<x≦1.1)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行うCC充電部と、
SOCを算出する第1算出部と、
前記SOCが、正極の抵抗とSOCとの相関関係に基づき正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値となるよう設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行うCV充電部と
を備える、充電制御装置。
【請求項3】
前記CV充電部は、前記SOCが前記閾値以上になったときの電圧より一段階的又は多段階的に大きくした電圧で充電を行う、請求項1又は請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記CC充電部は、前記SOCが第1の閾値以上になった場合に前記一定の電流より低い電流で充電を継続し、
前記CV充電部は、前記SOCが第2の閾値以上になった場合に一定の電圧で充電を行う、請求項1又は請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記SOCが前記閾値以上になった場合に、前記CC充電部が前記一定の電流より高い電流で充電を継続した後、前記CV充電部が充電を行う、請求項1又は請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記蓄電素子の電流を取得する第1取得部と、
前記蓄電素子の電圧を取得する第2取得部と、
前記電流、前記電圧、及びSOC-OCV特性に基づいて前記蓄電素子の容量を算出する第2算出部と
を備え、
前記第1算出部は、前記容量に基づいて前記SOCを算出する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記蓄電素子と、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の充電制御装置と
を備える、蓄電装置。
【請求項8】
Lix(NiaMnbCocd)O2(MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、
0≦a≦1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行い、
SOCを算出し、
前記SOCが、正極の抵抗とSOCとの相関関係に基づき正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値となるよう設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行う、蓄電素子の充電制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
Lix(NiaMnbCocd)O2(MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、
0≦a≦1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行い、
SOCを算出し、
前記SOCが、正極の抵抗とSOCとの相関関係に基づき正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値となるよう設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行う
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の充電を制御する充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の蓄電素子は、ノートパソコン、携帯電話機、及びシェーバー等のモバイル機器の電源として用いられてきた。近年、EV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)の電源等、幅広い分野で使用されており、更なる高エネルギー密度化が求められている。
【0003】
従来、正極活物質として層状岩塩型リチウム遷移金属酸化物(以下、層状酸化物という)が用いられており、蓄電素子の高エネルギー密度化を実現するために組成の検討が行われている。即ち、充電上限電圧に達するまでのLiの引抜き量を多くし、充電容量を大きくすることが図られている。層状酸化物のうち、例えばLix (Nia Cob Mnc )O2 (a+b+c=1、0<x≦1.1)で表されるNCMの場合、Niの含有比率を高くして、蓄電素子の充電上限電圧を上げることなく、前記Liの引抜き量を多くし、高容量化を図っている。
しかし、Liの引抜き量を多くした層状酸化物を用いた蓄電素子は、低SOC(State of Charge)側及び高SOC側において、正極に起因して蓄電素子の抵抗が増加する傾向がある。
【0004】
近年、蓄電素子の急速充電性(充電受け入れ性)の改良が要求されている。充電の方式としては、CC-CV(Constant Current -Constant Voltage)充電(例えば特許文献1等)、及び多段CC充電(例えば特許文献2等)等がある。CC-CV充電においては、一定の電流で充電する定電流充電を行った後、端子電圧が充電上限電圧付近の値を維持するように充電電流を徐々に減少させる定電圧充電を行う。多段CC(Constant Current)充電においては、定電流で規定の充電電圧まで充電を行った後、充電電流を段階的に低減させた状態でCC充電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-111184号公報
【文献】特開平7-296853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の層状酸化物を正極活物質に用い、特許文献2の多段CC充電を含めたCC充電を行った場合、高SOC側で抵抗が増加するため、2段目の充電電流を小さく設定した場合には充電に長時間を要し、急速充電性が悪くなる。また、充電時間を短くするために電流を大きくした場合には、抵抗の増大に伴う蓄電素子の温度上昇や負極における金属Liの析出などにより、蓄電素子が劣化し、寿命特性が悪くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、急速充電性が良好であり、抵抗の増大に伴う発熱が抑制され、負極において金属Liの析出が生じず、寿命特性が良好である充電制御装置、蓄電装置、蓄電素子の充電制御方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る充電制御装置は、Lix (NiaMnbCoc d )O2 (MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行うCC充電部と、SOCを算出する第1算出部と、前記SOCが、正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値に基づいて設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行うCV充電部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、CC充電を行っている途中でSOCが閾値以上になった場合に、充電上限電圧に到達する前にCV充電に切り替えるので、充電時間を短くでき、急速充電性が良好である。また、CC充電の電流をCV充電のそれよりも小さくすることによって、それまでの充電による蓄電素子の温度上昇を避けられ、かつ、CV充電時において、電流が徐々に減少して発熱が緩やかになるため、蓄電素子の劣化が抑制される。かつ、充電末期での電流が徐々に減少するために、負極において金属Liの析出が生じず、寿命特性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】充電中の蓄電素子の等価回路図である。
図2】蓄電素子の正極、負極、端子電圧の関係を示すグラフである。
図3】第1実施形態に係る車両及びサーバの構成を示すブロック図である。
図4】電池モジュールの斜視図である。
図5】BMUの構成を示すブロック図である。
図6】SOCと抵抗との関係を示すグラフの一例である。
図7】LixMeO2のxと抵抗との関係を示すグラフである。
図8図8Aは充電時のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図8BはSOCと電流との関係を示すグラフ、図8CはSOCと発熱量との関係を示すグラフである。
図9】制御部の電池容量の更新処理の手順を示すフローチャートである。
図10】制御部の充電制御処理の手順を示すフローチャートである。
図11図11Aは、変形例1の充電制御処理を行う場合のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図11BはSOCと電流との関係を示すグラフである。
図12図12Aは、変形例2の充電制御処理を行う場合のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図12BはSOCと電流との関係を示すグラフである。
図13図13Aは、変形例3の充電制御処理を行う場合のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図13BはSOCと電流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0012】
(本実施形態の概要)
本実施形態に係る充電制御装置は、Lix NiaMnbCoc d )O2 (MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、0≦a<1、0≦b<1、0<c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行うCC充電部と、SOCを算出する第1算出部と、前記SOCが、正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値に基づいて設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行うCV充電部とを備える。
【0013】
図1は充電中の蓄電素子(電池)の等価回路図、図2は蓄電素子(電池)の正極、負極、端子電圧の関係を示すグラフである。
図1及び図2において、
V:充電器電圧、
0 :電池起電力(OCV)
p :正極抵抗
n :負極抵抗
ηp :正極の過電圧
ηn :負極の過電圧
I:電流
である。
キルヒホッフの法則により、常にV-V0 =IRp +IRn が成立する。
【0014】
(1)CC充電の場合
I=I1 で一定とする。このとき、正極、負極の過電圧は夫々
ηp =I1 p
ηn =I1 n となり、抵抗に比例して大きくなる。
【0015】
(2)CV充電の場合
V=V1 で一定とする。このとき、V1 -V0 =IRp +IRn より、I=(V1 -V0 )/(Rp +Rn)であるから、
ηp =(V1 -V0 )×Rp /(Rp +Rn)、
ηn =(V1 -V0 )×Rn /(Rp +Rn)である。即ち負極の過電圧ηn は、Rp 、Rnの両方の大きさに依存する。
【0016】
充電末期における負極の開回路電位En0(Vvs.Li/Li+ )は一定であるとする。黒鉛負極の場合、En0は略0.1Vである。負極電位、即ち(En0-ηn )が0を下回ると金属Liが析出し始める。
【0017】
従来のリチウムイオン二次電池の場合、正極の抵抗と負極の抵抗とはほぼ同等である。この電池にCV充電を実施した場合、上述したように、抵抗の大きさに応じて正極の過電圧ηp 、負極の過電圧ηn が印加される。そのため、充電上限電圧(以下、上限電圧という)より低い電圧からCV充電に切り替えた場合においては、負極に過大な過電圧ηn が印加され、負極電位(En0-ηn )がLi基準で0Vを下回り、金属Liが析出する。従って、従来は上限電圧までCC充電した後、該上限電圧にてCV充電を行う。
【0018】
Lix (NiaMnbCoc d )O2 (MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される層状酸化物を正極活物質に用いた場合、組成を考慮することで、同じ充電上限電圧にしたときの充電時のLi引抜き量を多くし、充電容量を大きくすることができる。Liが多く引き抜かれた充電末期においては、正極活物質内部のLi濃度が低下して正極の抵抗Rp のみが大きくなる。
【0019】
充電末期において、負極の抵抗Rnは正極の抵抗Rp と比較して小さい。上限電圧に達する前にCV充電に切り替えたとしても、充電末期に電流が徐々に減少することと相まって、負極の過電圧ηn は小さく、負極電位(En0-ηn )が0を下回ることはない。
そこで、SOCが正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値に基づいて設定される閾値以上になった場合にCV充電に切り替えることができ、総充電時間を短くできる。即ち、急速充電性が良好である。
CC充電の電流をCV充電のそれよりも小さくすることによって、それまでの充電による蓄電素子の温度上昇を避け、かつ、CV充電時において、電流が徐々に減少して発熱が緩やかになるため、蓄電素子の劣化は抑制される。しかも、上述したように、負極電位が0を下回ることはないので、金属Liの析出は生じず、寿命特性が良好である。
【0020】
本実施形態に係る充電制御装置は、Lix (NiaM’1-a )O2 (M’はLi,Ni以外の金属元素、0.5≦a≦1、0<x≦1.1)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行うCC充電部と、SOCを算出する第1算出部と、前記SOCが閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行うCV充電部とを備える。
【0021】
0.5≦aであり、Niの含有比率が高い上記組成式の正極活物質は、Niの含有比率が低い正極活物質と比較して、同一の上限電圧まで充電したときのLiの引抜き量が大きい。即ち、充電末期で正極活物質内部のLi濃度が低下して正極の抵抗Rp が大きくなる。
上限電圧に到達していない時点でCV充電に切り替えた場合においても、負極の抵抗Rnが小さく、充電末期に電流が徐々に減少することと相まって、負極の過電圧ηn が小さい。従って、負極電位(En0-ηn )が0を下回ることはない。
上記構成によれば、SOCが閾値以上になり、上限電圧に到達する前にCV充電に切り替えるので、総充電時間を短くでき、急速充電性が良好である。
CC充電での蓄電素子の温度上昇が限定的であり、かつ、CV充電においては、電流が徐々に減少するため、抵抗の増加に伴う蓄電素子の温度上昇が抑制され、蓄電素子の劣化が抑制される。しかも、負極電位が0を下回ることはないので、金属Liの析出は生じず、寿命特性が良好である。
【0022】
本実施形態に係る充電制御装置は、前記閾値は、正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値に基づいて設定されている。
【0023】
上記構成によれば、抵抗が高くなり、充電に時間を要するようになる時点でCV充電に切り替えるので、効果的に充電時間を短縮化でき、発熱による蓄電素子の劣化を抑制できる。
【0024】
本実施形態に係る充電制御装置は、前記CV充電部は、前記SOCが前記閾値以上になったときの電圧より一段階的又は多段階的に大きくした電圧で充電を行う。
【0025】
上記構成によれば、充電時間を短縮化できるとともに、十分な充電電気量が得られる。
【0026】
本実施形態に係る充電制御装置は、前記CC充電部は、前記SOCが第1の閾値以上になった場合に前記一定の電流より低い電流で充電を継続し、前記CV充電部は、前記SOCが第2の閾値以上になった場合に一定の電圧で充電を行う。なお、本発明において、本願発明の効果を奏する範囲において、実質的に電圧を一定とする。すなわち、前記SOCが第2の閾値以上になった場合に所定範囲内の電圧で充電してもよい。前記一定の電圧の値と電池の充電上限電圧とを一致させることが望ましい。
【0027】
上記構成によれば、発熱が抑制される。
【0028】
本実施形態に係る充電制御装置は、前記SOCが前記閾値以上になった場合に、前記CC充電部が前記一定の電流より高い電流で充電を継続した後、前記CV充電部が充電を行う。
【0029】
上記構成によれば、CC充電の時間を短縮化できる。
【0030】
本実施形態に係る充電制御装置は、前記蓄電素子の電流を取得する第1取得部と、前記蓄電素子の電圧を取得する第2取得部と、前記電流、前記電圧、及びSOC-OCV特性に基づいて前記蓄電素子の容量を算出する第2算出部とを備え、前記第1算出部は、前記容量に基づいて前記SOCを算出する。
【0031】
上記構成によれば、蓄電素子の容量が経時的に更新されるので、SOCが良好に算出される。
【0032】
本実施形態に係る蓄電装置は、前記蓄電素子と、上述のいずれかの充電制御装置とを備える。
【0033】
上記構成によれば、急速充電性及び寿命特性が良好である。
【0034】
本実施形態に係る蓄電素子の充電制御方法は、Lix (NiaMnbCoc d )O2 (MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行い、SOCを算出し、前記SOCが、正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値に基づいて設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行う。
【0035】
上記構成によれば、充電時間を短くでき、急速充電性が良好である。CC充電の電流をCV充電のそれよりも小さくすることで、それまでの充電による蓄電素子の温度上昇を避け、かつ、CV充電時において、電流が徐々に減少して発熱が緩やかになるため、蓄電素子の劣化が抑制される。しかも、充電末期において電流が徐々に減少し、かつ、充電末期に正極の抵抗のみが大きくなるので、負極の過電圧は大きくならず、負極において金属Liの析出は生じず、寿命特性が良好である。
【0036】
本実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、Lix (NiaMnbCoc d )O2 (MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表される正極活物質を有する蓄電素子に一定の電流で充電を行い、SOCを算出し、前記SOCが、正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値に基づいて設定される閾値以上になった場合に、一定の電圧で充電を行う処理を実行させる。
【0037】
上記構成によれば、充電時間を短くでき、急速充電性が良好である。CC充電の電流をCV充電のそれよりも小さくすることで、それまでの充電による蓄電素子の温度上昇を避け、かつ、CV充電時において、電流が徐々に減少して発熱が緩やかになるため、蓄電素子の劣化が抑制される。しかも、充電末期において電流が徐々に減少し、かつ、正極の抵抗のみが大きくなるので、負極の過電圧は大きくならず、負極において金属Liの析出は生じず、寿命特性が良好である。
【0038】
(第1実施形態)
以下、蓄電素子が自動車用に用いられるリチウムイオン二次電池である場合を説明するが、蓄電素子はこのような用途のリチウムイオン二次電池には限定されない。
図3は、第1実施形態に係る車両1及びサーバ12の構成を示すブロック図である。
車両1は、蓄電素子モジュール(以下、電池モジュールという)3と、BMU(Battery Management Unit)4と、負荷5と、統括ECU6と、通信部7と、電圧センサ8と、電流センサ9とを備える。
電池モジュール3は、複数の蓄電素子としてのリチウムイオン二次電池(以下、電池という)2が直列に接続されている。統括ECU6は、車両1の電源装置全体を制御する。統括ECU6は車両1がHEV車又はガソリン車である場合、エンジンも制御する。
サーバ12は、通信部13、及び制御部14を備える。
統括ECU6は、通信部7、ネットワーク11、及び通信部13を介し、制御部14と接続されている。統括ECU6は、ネットワーク11を介して制御部14との間でデータの送受信を行う。
本実施形態においては、BMU4、統括ECU6、及び制御部14のいずれかが、本発明の充電制御装置として機能する。BMU4、統括ECU6、及び制御部15のいずれかと、電池モジュール3とが本発明の蓄電装置として機能する。なお、制御部14が前記充電制御装置として機能しない場合、車両1がサーバ12に接続されなくてもよい。
電池モジュール3は、複数組備えてもよい。
BMU4は、電池ECUであってもよい。
【0039】
電圧センサ8は、電池モジュール3に並列に接続されており、電池モジュール3の全体の電圧に応じた検出結果を出力する。電圧センサ8は、各電池2の後述する端子23,23に接続されており、各電池2の端子電圧V1 を測定し、各電池2のV1 の合計値である、電池モジュール3の後述するリード33,33間の電圧Vを検出する。
電流センサ9は、電池モジュール3に直列に接続されており、電池モジュール3に流れる電流を検出する。
【0040】
図4は、電池モジュール3の斜視図である。
電池モジュール3は、直方体状のケース31と、ケース31に収容された複数の前記電池2とを備える。
【0041】
電池2は、直方体状のケース本体21と、蓋板22と、蓋板22に設けられた、極性が異なる一対の端子23,23と、破裂弁24と、電極体25とを備える。電極体25は、正極板、セパレータ、及び負極板を積層してなり、ケース本体21に収容されている。
電極体25は、正極板と負極板とをセパレータを介して扁平状に巻回して得られるものであってもよい。
【0042】
正極板は、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である正極基材箔上に正極活物質層が形成されたものである。負極板は、銅及び銅合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である負極基材箔上に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、合成樹脂からなる微多孔性のシートである。
正極活物質層に用いられる正極活物質として、Lix (NiaM’1-a )O2 (M’はLi,Ni以外の金属元素、0.5≦a≦1、0<x≦1.1)で表される層状酸化物を用いた場合につき説明する。正極活物質は層状岩塩型の結晶構造を有し、遷移金属サイトにNiを多く含有する。このため、高SOC領域で、正極の抵抗が大きくなる。
正極活物質は、M’がCo、Mnであり、Lix (Nia Cob Mnc )O2 で表されるNCMであるのが好ましい(a+b+c=1、a≧0.5、b≧0、c≧0、0<x<1.1)。aは0.6以上であるのがより好ましく、0.8以上であるのがさらに好ましい。
正極活物質は、M’がCo、Alであり、Lix (Nia Cob Al)O2 で表されるNCAであってもよい(a+b+c=1、a≧0.5、b≧0、c≧0、0<x<1.1)。
なお、M’は2種類の金属からなる場合に限定されず、3種類以上の金属からなるものでもよい。例えば、少量のTi、Nb、B、W、Zr、Ti、Mg等が含まれてもよい。
【0043】
負極活物質層に用いられる負極活物質としては、グラファイト、非晶質炭素(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素)等の炭素材料、又は、一酸化ケイ素(SiO)、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。
【0044】
電池モジュール3の隣り合う電池2の隣り合う端子23は極性が異なり、この端子23同士がバスバ32により電気的に接続されることで、複数の電池2が直列に接続されている。
電池モジュール3の両端の電池2の、互いに極性が異なる端子23,23には、電力を取り出すためのリード33,33が設けられている。
【0045】
図5は、BMU4の構成を示すブロック図である。BMU4は、制御部41と、記憶部49と、入力部52と、インタフェース部53とを備える。これらの各部は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0046】
入力部52は、電圧センサ8、及び電流センサ9からの検出結果の入力を受け付ける。インタフェース部53は、例えば、LANインタフェース及びUSBインタフェース等により構成され、有線又は無線により例えば統括ECU6等の他の装置との通信を行う。
【0047】
記憶部49は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部49には、例えば、後述する充電制御処理を実行するための充電制御プログラム50が格納されている。充電制御プログラム50は、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体60に格納された状態で提供され、BMU4にインストールすることにより記憶部49に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから充電制御プログラム50を取得し、記憶部49に記憶させることにしてもよい。
記憶部49には、予め実験により求めたSOC-OCVデータ(SOC-OCV特性)51も記憶されている。このデータは、適宜、定法により更新されてもよい。
【0048】
制御部41は、例えばCPU、ROM、RAM等により構成され、記憶部49から読み出した充電制御プログラム50等のコンピュータプログラムを実行することにより、BMU4の動作を制御する。例えば、制御部41は、充電制御プログラム50を読み出して実行することにより、後述の充電制御処理を実行する処理部として機能する。
【0049】
具体的には、制御部41は、電圧取得部42、電流取得部43、電池容量算出部44、SOC算出部45、判定部46、CC充電部47、及びCV充電部48を有する。
【0050】
以下、本実施形態に係る充電制御処理について詳述する。電池モジュール3を一つの蓄電素子として、電池モジュール3の充電を制御する場合につき説明する。
BMU4の制御部41は、電池モジュール3に一定の電流でCC充電を行い、SOCを算出し、SOCが閾値以上になった場合に、一定の電圧でCV充電を行う。
閾値は、正極の抵抗が所定値以上にあるときのSOCの値に基づいて設定される。
【0051】
図6は、SOCと正極の抵抗との関係を示すグラフの一例である。図6の横軸はSOC(%)、縦軸は抵抗(Ω)である。正極活物質はNCM811であり、Ni、Co、Mnのモル比が8:1:1である。図6に示すように、抵抗は低SOC側及び高SOC側で高くなっている。
図6より、SOCが80%になったときに抵抗が上昇し始めるので、閾値を80%にすることができる。閾値は85%、又は90%にすることもできる。
【0052】
図7は、図6のSOC及び理論容量に基づいて電気量を求め、Lix MeO2(MeはNi、Co、Mnのモル比が8:1:1)のxを求めたときのxと抵抗との関係を示すグラフである。横軸はx、縦軸は抵抗(Ω)である。xが0.25以下である場合に、抵抗が急激に増加するので、本実施形態に係る充電制御処理を行うことで、効果的に充電時間を短縮し、発熱を抑制することができることが分かる。
【0053】
制御部41の電圧取得部42は、充電中に、電池モジュール3のリード33,33間の電圧Vを電圧センサ8から取得する。
電流取得部43は、充電中に、電流センサ9から電流Iを取得する。
【0054】
電池容量算出部44は、充電開始前後の電圧Vを電圧取得部42から取得する。電池容量算出部44は電流取得部43から電流Iを取得し、通電電流を時間積分して電気量qを算出する。
電池容量算出部44は、充電開始前後の電圧Vの差分をOCVの差分であるΔOCVとし、SOC-OCVデータ54を参照してΔOCVに対応するΔSOCを求める。電池容量算出部44は、ΔSOCに対応する時間につき電流積算を行ってΔqを求める。電池容量算出部44は、ΔSOC及びΔqに基づいて、電池容量を算出する。なお、電池容量の算出方法は、この場合に限定されない。
SOC算出部45は、所定の間隔又は随意の間隔で、電流取得部43から電流Iを取得し、通電電流を時間積分して電気量qを求め、電気量qを電池容量で除してSOCを算出する。
【0055】
判定部46は、SOCが閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、上述の抵抗とSOCとの関係を参照し、正極の抵抗が所定値以上になるときのSOCの値に基づいて設定される。
判定部46が、SOCが閾値以上でないと判定した場合、CC充電部47が、一定の電流で充電を行う。
【0056】
判定部46が、SOCが閾値以上であると判定した場合、CV充電部48が、一定の電圧でCV充電を行う。CV充電部48は、SOCが前記閾値以上になったときの電圧より一段階的又は多段階的に大きくした電圧でCV充電を行うのが好ましい。
【0057】
上述したように、Liの引抜き量が多い層状酸化物を正極活物質として有する正極は、充電末期に、正極の抵抗が高くなる。
この正極を有する蓄電素子にCV充電を実施した場合、充電の末期に正極の抵抗のみが大きくなる。上限電圧に到達する前に、SOCが閾値を超えたときにCV充電に切り替える場合、負極の抵抗が正極の抵抗に比べて小さいため、充電末期に電流が徐々に減少することもあり、負極の過電圧ηn は小さい。従って、負極側で金属Liの析出が生じることはない。総充電時間が短くなるものの、それまでの充電では電流が小さく抑えられているため、蓄電素子の温度上昇は限定的であり、充電末期の蓄電素子の温度上昇による劣化が抑制される。
【0058】
図8Aは充電時のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図8BはSOCと電流との関係を示すグラフ、図8CはSOCと発熱量との関係を示すグラフである。図8Aの横軸はSOC(%)、縦軸は電圧(V)である。図8Bの横軸はSOC(%)、縦軸は電流(mA)である。図8Cの横軸はSOC(%)、縦軸は発熱量(j)である。ここで、SOCが80%になったときに正極の抵抗が上昇するとする。
SOCが80%になった時点で、一度に電流を上げ、電圧を上限電圧まで上げる。電圧は上限電圧より小さい値、又は大きい値であってもよい。SOCが80%になった時点の電圧より大きくする。電圧を上限電圧より大きくする場合、CV充電の時間を規定する。又は電流積算し、充電電気量が所定値を超えないようにする。
図8Bに示すようにSOCが80%になるまでの電流は小さいので、図8Cに示すように、発熱量は小さい。放熱されるので蓄熱量は小さく、CV充電に切り替えた時点の蓄電素子の温度上昇は限定的である。その後、発熱量は減少する。
【0059】
以下、充電制御処理を制御部41の処理として説明する。
まず、電池容量の更新処理について説明する。図9は、制御部41の電池容量の更新処理の手順を示すフローチャートである。
制御部41は、所定の間隔又は随意の間隔で電池容量の更新処理を行う。制御部41は、無負荷状態であり、開放電圧が安定している状態において、充電が開始される場合に、電池容量の更新処理を行う。
【0060】
制御部41は、電圧センサ8から充電前後の電圧Vを取得し、電流センサ9から電流Iを取得する(S1)。
制御部41は、SOC-OCVデータ51を参照し、充電開始前後の電圧Vの差分(ΔOCV)に対応するΔSOCを読み取る。制御部41は、ΔSOCに対応する時間Δtの通電電流を積分してΔqを算出する。制御部41は、Δq及びΔSOCに基づいて電池容量を算出する(S2)。
制御部41は、電池容量を記憶部49に記憶し、電池容量が更新される(S3)。
【0061】
以下、充電制御処理について説明する。
図10は、制御部41の充電制御処理の手順を示すフローチャートである。
制御部41は、一定の電流IでCC充電を行う(S11)。
制御部41は、所定の間隔又は随意の間隔で、電流センサ9から電流Iを取得する(S12)。
制御部41は、電流を時間積分して電気量を求め、これを記憶部49から読み出した電池容量で除して、SOCを算出する(S13)。
【0062】
制御部41はSOCが閾値以上であるか否かを判定する(S14)。
制御部41はSOCが閾値以上でないと判定した場合(S14:NO)、処理をS11へ戻す。
制御部41はSOCが閾値以上であると判定した場合(S14:YES)、所定の電圧に到達するように電流を上げ、前記電圧でCV充電を行う(S15)。
例えば上記図6及び図7の場合、SOCが80%に到達した時点で電池モジュール3の電圧Vが4.15Vであったとき、4.35Vまで電圧を上げてCV充電を行い、充電制御処理を終了する。
【0063】
本実施形態においては、上限電圧に到達する前に、抵抗が高くなり、充電に時間を要するようになる時点でCV充電に切り替えるので、CC充電を継続して充電に長時間を要することが回避され、充電時間を短縮化でき、急速充電性が良好である。
CC充電での電池モジュール3の温度上昇は限定的であり、かつ、CV充電においては、電流が徐々に減少するため、抵抗の増加に伴う電池モジュール3の温度上昇が抑制され、電池モジュール3の劣化が抑制される。しかも、負極電位が0を下回ることはないので、金属Liの析出は生じず、寿命特性が良好である。
【0064】
[変形例1]
変形例1においては、SOCの閾値として第1閾値、第2閾値を設定し(第1閾値<第2閾値)、判定部46がSOCが第1閾値以上であると判定した場合、CC充電部47は電流を下げてCC充電を継続する。判定部46がSOCが第2閾値以上であると判定した場合、CV充電部48は電流を上げて電圧を上げ、CV充電を行う。
図11Aは、変形例1の充電制御処理を行う場合のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図11BはSOCと電流との関係を示すグラフである。図11Aの横軸はSOC(%)、縦軸は電圧(V)である。図11Bの横軸はSOC(%)、縦軸は電流(mA)である。ここで、SOCが80%になったときに正極の抵抗が上昇し、SOCが90%になったとき、さらに上昇するとする。
SOCが80%に到達したとき、CC充電の電流を下げて充電を継続する。SOCが90%に到達したとき、電流を上げて、電圧を上限電圧付近の値まで上げてCV充電を行う。
なお、CC充電は1段階で行う場合に限定されず、2段階以上で行ってもよい。
【0065】
[変形例2]
変形例2においては、SOCの閾値として第1閾値、第2閾値を設定し(第1閾値<第2閾値)、複数段階でCV充電を行う。
図12Aは、変形例2の充電制御処理を行う場合のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図12BはSOCと電流との関係を示すグラフである。図12Aの横軸はSOC(%)、縦軸は電圧(V)である。図12Bの横軸はSOC(%)、縦軸は電流(mA)である。ここで、SOCが80%になったときに正極の抵抗が上昇し、SOCが90%になったとき、さらに上昇するとする。
SOCが80%に到達したとき、電流を上げて電圧を上げ、CV充電に切り替えて充電を行い、SOCが90%に到達したとき、さらに電流を上げて上限電圧付近の値まで上げてCV充電を継続する。
なお、CV充電は2段階で行う場合に限定されず、3段階以上で行ってもよい。
【0066】
[変形例3]
変形例3においては、S判定部46がSOCが閾値以上であると判定した場合、CC充電部47は電流を上げてCC充電を継続する。判定部46がCV充電に切り替えると判定した場合、CV充電部48がCV充電を行う。判定部46は、例えば電圧が閾値以上になったか否か、又はSOCが第2の閾値以上になったか否か等により判定する。
図13Aは、変形例3の充電制御処理を行う場合のSOCと電圧との関係を示すグラフ、図13BはSOCと電流との関係を示すグラフである。図13Aの横軸はSOC(%)、縦軸は電圧(V)である。図13Bの横軸はSOC(%)、縦軸は電流(mA)である。ここで、SOCが80%になったときに正極の抵抗が上昇するとする。
SOCが80%に到達したとき、CC充電の電流を上げて充電を継続する。電圧が閾値以上になったとき、CV充電を行う。
なお、CC充電は1段階で行う場合に限定されず、2段階以上で行ってもよい。
【実施例
【0067】
以下、本実施形態の実施例を具体的に説明するが、本実施形態はこの実施例に限定されるものではない。以下に示すように実施例1~4、比較例の充電を行い、急速充電性及び寿命特性を評価した。
急速充電性は充電に要した時間の長短と、充電電気量とにより評価した。
寿命特性は、負極に金属Liの析出が生じて寿命が低下したか否かにより評価した。
【0068】
[実施例1]
正極活物質としてNCM811(上記NCMのNi:Co:Mn(モル比)が8:1:1である)を用いた。1CでCC充電を行い、SOCが80%に到達したときにCV充電に切り替えた。
実施例1において、充電時間は最も短く、充電電気量も十分であり、急速充電性は最良であった。負極に金属Liの析出は生じず、寿命特性は良好である。
【0069】
[実施例2]
正極活物質としてNCM811を用いた。1CでCC充電を行い、SOCが80%に到達したときに0.2Cに切り替えてCC充電を継続し、SOCが90%に到達したときにCV充電に切り替えた。
充電時間は、実施例1より長くなったが、後述する比較例より大きく向上している。負極に金属Liの析出は生じず、寿命特性は良好である。
【0070】
[実施例3]
正極活物質としてNCM811を用いた。1CでCC充電を行い、SOCが90%に到達したときにCV充電に切り替えた。
充電時間は、実施例1より長くなったが、比較例より大きく向上している。負極に金属Liの析出は生じず、寿命特性は良好である。
【0071】
[実施例4]
正極活物質としてNCM901005(上記NCMのNi:Co:Mn(モル比)が90:10:5である)を用いた。1CでCC充電を行い、SOCが80%に到達したときにCV充電に切り替えた。
充電時間は、実施例1より長くなったが、比較例より大きく向上している。負極に金属Liの析出は生じず、寿命特性は良好である。
【0072】
[比較例1](上限電圧Vmaxまで電流Iconst でCC充電を行う場合)
キルヒホッフの法則よりV-V0 =Iconst (Rp +Rn )である。
また、電池の起電力V0 (OCV)はSOCの関数であり、SOCが高い程、V0は大きくなる。
V=Vmaxで充電を打ち切るので、V0 =Vmax -Iconst(Rp +Rn )となる。
即ちRp 又はRn が大きい程、また、Iconstが大きい程、V0 は小さくなる。
従って、SOCが十分に高まるまでに充電が終了し、十分な充電電気量を得ることができない。
多段充電を行うことにした場合、充電終了までに時間を要する。
【0073】
[比較例2](通常のCC-CV充電)
上限電圧Vmaxまで電流Iconst でCC充電を行い、V=VmaxでCV充電を行う。このとき、I=(Vmax-V0 )/(Rp +Rn )である。充電を続けると、SOCが高まっていくのでVmaxは徐々にV0 に近づき、充電終了電流Icut以下になると充電終止となる。但し、充電終止時点では、V0 =Vmax -Icut(Rp +Rn )となるため、Rp 又はRn が大きい程、V0 は小さくなる。即ち、十分な電気量を得るように充電することができない。Icutを小さく設定し、同じSOCまで充電することにした場合、Rp 又はRn が大きい程、Iが小さくなるため、充電完了までの時間が長くなる。
【0074】
[比較例3](充電電流を大きくした場合のCC-CV充電)
大電流IA で端子間電圧がVmaxになるまで充電すると、相対的に低いSOCでCV充電に切り替わる。そのため、相対的に短時間で充電することが可能になる。しかしながら、CC充電において熱として消費される電力Pは、P=IA 2 ・Rとなり、電流の2乗に比例して大きくなる。他方、電池の放熱は電池表面温度と環境温度との差に比例して徐々にしか生じないため、CC充電の間に電池温度が著しく上昇し、電池の劣化が加速される。
【0075】
[比較例4](上限電圧Vmaxを超えた充電を行う場合)
充電時に、充電器で検知可能な電池端子間電圧V、通電電流I、通電時間tのみにより、En0-ηn <0とならないように電流を制御することは非常に困難であり、金属Liの析出を避けるのは難しい。金属Liの析出を避けることができたとしても、熱として消費される電力PはP=I2(Rp +Rn )より、発熱量QはQ=∫P・dtとなる。Niを多く含むNCMを正極活物質として用いた場合、充電末期にRp が大きくなり、電池の劣化が生じる。
【0076】
上述の実施例の場合、Rn がRp と比較して小さいため、ηn が小さく、金属Liの析出が生じ難く、また、CV充電時のIが適度に抑制されるため、電池の加熱による劣化も生じ難い。
【0077】
以上より、本実施形態の充電制御方法によれば、急速充電性が良好であることが確認された。また、充電時の電池温度の上昇が抑制されるため、温度による電池劣化を抑制でき、負極に金属Liの析出が生じず、電池モジュール3の寿命特性が良好であることが確認された。
【0078】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
本発明に係る蓄電素子は、車載用に限定されず、鉄道用回生電力貯蔵装置、太陽光発電システム等の他の蓄電装置にも適用できる。また、本発明に係る充電制御装置は、ノートパソコン、携帯電話機、及びシェーバー等のモバイル機器にも適用できる。
そして、蓄電素子はリチウムイオン二次電池には限定されない。蓄電素子は、他の二次電池であってもよいし、一次電池であってもよいし、キャパシタ等の電気化学セルであってもよい。
【0080】
また、前記第1実施形態においては、電池モジュール3を一つの蓄電素子として、SOC-OCVデータ51を取得し、電池モジュール3の充電を制御する場合につき説明しているが、これに限定されない。各電池2につきSOC-OCVデータ51を取得し、電池2の充電を各別に制御することにしてもよい。
【0081】
そして、前記第1実施形態において、層状酸化物として、Lix (NiaM’1-a )O2 (M’はLi,Ni以外の金属元素、0.5≦a≦1、0<x≦1.1)で表されるものを用いた場合につき説明しているが、これに限定されない。Lix (NiaMnbCoc d )O2 (MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、a+b+c+d=1、0<x≦1.1、a,cは同時に0でない)で表されるものでもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
2 電池(蓄電素子)
3 電池モジュール(蓄電素子)
4 BMU(充電制御装置)
41 制御部
42 電圧取得部(第2取得部)
43 電流取得部(第1取得部)
44 電池容量算出部(第2算出部)
45 SOC算出部(第1算出部)
46 判定部
47 CC充電部
48 CV充電部
49 記憶部
50 充電制御プログラム
51 SOC-OCVデータ
60 記録媒体
6 統合ECU
7、13 通信部
12 サーバ
14 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13