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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】調光体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20221018BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20221018BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20221018BHJP
   G02F 1/153 20060101ALI20221018BHJP
   G02F 1/155 20060101ALI20221018BHJP
   E06B 9/24 20060101ALN20221018BHJP
   E06B 5/00 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
G02F1/15 502
G02F1/15 505
G02F1/153
G02F1/155
E06B9/24 C
E06B5/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018095207
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019200336
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敬
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221196(JP,A)
【文献】特表2008-500466(JP,A)
【文献】米国特許第05317667(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1334
G02F 1/15-1/19
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面全域に透明電極が設けられた筒状の透明基材と、
前記筒状の透明基材の略中心軸上に配設される棒状透明電極と、
前記筒状の透明基材と前記棒状透明電極により規定される空間に隙間無く設けられ、電気的制御により表示面から入射する光の散乱状態と透過状態を変化させる光学素子と、を有し、
前記光学素子は液晶分子がポリマー中に分散配置された高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)あるいは三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有するポリマーネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)であり、
前記透過状態のときに前記液晶分子が前記表示面に対して垂直に整列した状態になる調光体。
【請求項2】
透明基材は大略円筒形状であることを特徴とする請求項1記載の調光体。
【請求項3】
透明基材は、PET、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、またはガラスから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の調光体。
【請求項4】
棒状の電極は、透明なプラスチック材料またはガラス製材料から選択される棒状の芯材の表面に金属酸化物や導電性ポリマーを被覆してなる請求項1~3の何れかに記載の調光体。
【請求項5】
筒状の調光体の両端が断裁され、封入された光学素子、棒状の電極が露出した断面は、絶縁樹脂材料により封止されており、調光体の両端の少なくとも一方から、透明電極と棒状の電極に給電するための配線が接続された構成である請求項1~4の何れかに記載の調光体。
【請求項6】
前記光学素子は、入射光の透過状態を少なくとも2段階変化させる請求項1~5の何れかに記載の調光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的制御によって光の透過状態を変調する光学素子を備える調光体に関する。
【0002】
光学素子の種類としては、調光体により発揮される視覚効果の要求に応じて、液晶素子、エレクトロクロミック材料、懸濁粒子(SPD:Suspended Particle Device)等が適宜選択される。以下、本明細書においては、光学素子として液晶素子を例にとり説明する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置は、一般的な表示装置として、数値などの情報表示装置、映像などの画像表示装置などの様々な領域で利用されている。
【0004】
液晶材料を用いた表示装置では、一定の間隔を保持して配置された電極を有する基板間に液晶分子を配向して挟み込み、さらにこれらを2枚の偏光板で挟み込んだものであり、電気的に液晶を駆動することにより、偏向光の透過率を変えることで、セル(画素)単位での透光状態-遮光状態の変調による表示を可能にしている。
【0005】
一方で、建築や自動車などの居住空間における窓などの領域において、外部環境の変化に応じて居住空間を常に快適に保つための光学的な機能を窓ガラスに持たせた調光ガラスの検討がなされてきた(例えば、非特許文献1)。
【0006】
このような調光ガラス用として液晶材料を用いる場合には、先に示した表示装置用の方式とは異なり、偏光板を用いず、光の利用効率の高い液晶表示素子として、液晶の透過状態(透明状態)と散乱状態(不透明状態)との間でスイッチングを行う液晶表示素子があり、三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有する構成のポリマーネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、または、液晶分子がポリマー中に分散配置された構成の高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いたものが知られており、透光-遮光でなく透明-散乱の状態変化を奏する素子として採用されている。
【0007】
既存の液晶表示装置や調光ガラスでは、液晶材料を挟持する基板(基材)がリジッドなガラス板の採用例が多く、装置(表示面)の形状としてはフラットな板状が殆どである。
【0008】
昨今では、基材としてフレキシブルな樹脂シートや厚さ100μm以下の薄板ガラスの採用も可能となり、平坦面だけでなく曲率を有する表面への装置(表示面)の適用も実現されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】NEW GLASS Vol.13 No.1 1998 P48-51 建築物、自動車以外で、鉄道車両、船舶、航空機の窓、デジタルサイネージ用スクリーン、間仕切り(パーテーション)においても、高い意匠性、高級感を演出するため、多様で複雑なデザインに対応した非平坦な装置(表示面)の実現に対する要望もあり、球面の様な3次元形状を持つ表面デザインへの追従性が要求されることになる。
【0010】
基材がフレキシブルな材料からなる「シート」であっても、2方向(軸)以上での曲率変化を要する3次元形状に忠実に追従させることは困難であり、基材シートを用いて作製される平坦な液晶表示装置(調光体)では対応し切れない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、多様な3次元形状を持つ表面デザインへの適用が可能な調光体を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による調光体は、
内壁面全域に透明電極が設けられた筒状の透明基材と、
前記筒状の透明基材の略中心軸上に配設される棒状透明電極と、
前記筒状の透明基材と前記棒状透明電極により規定される空間に隙間無く設けられ、電気的制御により入射する光の透過状態を変化させる光学素子と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
平坦な「シート状」ではない「筒状」「ファイバー状」の極めて新規な形状の調光体が提供され、多様で複雑な表面デザインへの適用の上で優位性を持つことになる。また、シート形状の調光体に比べて周縁部のシール構造が簡易化されるため、光学素子(液晶など)の劣化、調光体の剥離などの弊害が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る「筒状の」調光体の要部を示す説明図。
図2】従来技術に係る「平坦な」調光体の要部を示す説明図。
図3】給電回路構成を含む調光体全体の構造例を示す説明図。
図4】本実施形態に係る調光体の製造方法の一例を工程順に示す説明図。
図5】本実施形態に係る調光体の使用例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、PNLCの場合を例にとり図面を参照しつつ説明する。
【0016】
但し、本発明に係る調光体は、以下の説明によって限定されるものではない。例えば、本発明は、PDLCであっても同様に適用可能である。なお、説明の便宜上、実際の縮尺とは異なるサイズで誇張して図示する場合もある。
【0017】
PNLCは、液晶層内部の網目状の高分子繊維に沿って液晶分子が不規則に並んだ状態では、表示が不透明(散乱状態)となり、液晶分子が表示面に対して垂直に整列した状態では、表示が透明(透過状態)になる。PDLCでは、高分子マトリックス内で、樹脂材料の硬化物から形成されている各高分子の内部に、液晶分子を含んだ(液状、カプセル状の)液晶材料が設けられて構成され、液晶分子の配向状態に応じて、高分子マトリックスとの屈折率差が変化するに伴い、散乱状態と透過状態とが変調される。PNLCあるいはPDLCを調光層として用いる調光フィルムには、その使用態様により、ノーマルモードとリバースモードの二種が知られている。ノーマルモードとは、電圧印加により透過状態となり、電界除去により散乱状態となるモードを言う。また、リバースモードとは、電圧非印加により透過状態となり、電圧印加により散乱状態となるモードを言う。
【0018】
ノーマル型のPNLCによる調光層を具備する調光フィルムの製造は、一般的に以下のようにしてなされる。まず、液晶と光重合性化合物(モノマー)との混合物を一対の透明
基板(透明電極が積層されてなる)の間に挟む。次いで、一定の条件下で紫外線を照射することにより、光重合によって液晶中の光重合性化合物を高分子に変化させる。光重合および架橋結合により、微細なドメイン(高分子の空隙)を無数に有するポリマーネットワークが液晶中に形成される。
【0019】
図1は、本実施形態に係る「筒状の」調光体10の要部を示す説明図である。調光体10は、調光層2を有する。調光層2は、ポリマーネットワークと液晶分子を有するPNLCタイプである。調光層2は、透明導電材料からなる透明電極3が内周面に成膜された筒状の基材1の内部に封入されている。そして、封入された調光層(PNLC)2の内部には棒状の電極4を具備している。図1では、「筒状」の断面形状は大略円筒形で図示しているが、断面形状はそれに限られるものではない。例えば光学素子の駆動に影響がない範囲であれば調光体は角柱形状(断面は、角形)であっても良い。断面形状が何れの場合であっても、コア部に棒状電極4、クラッド部に調光層2、外周に透明電極3、最外周に筒状基材1が配置される概ね同心状の構成となる。調光層2、透明電極3、筒状基材1は何れも中空の筒形状となる。
【0020】
図2は、対比のため、従来技術に係る「平坦な」調光体20の要部を示す説明図である。調光体20は、調光層12を有する。調光層12は、ポリマーネットワークと液晶分子を有するPNLCタイプである。調光層12は、透明導電材料からなる透明電極13a、13bが(調光層12に対向する側に)成膜された基材フィルム11a、11bに挟持されてなる。基材フィルム11a、11b、透明電極13a、13b、調光層12は、(調光体20も)何れも平板形状となる。
【0021】
図2の場合、両面に位置する透明電極13a、13bの間での印加電圧により、調光層(PNLC)12が変調される。対して、図1の場合は、透明電極3と棒状の電極4との間での印加電圧により、調光層(PNLC)2が変調される。
【0022】
透明導電フィルム(11a+13a、11b+13b)を構成する基材フィルム11a、11bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、アクリルフィルム、薄板ガラスなどを用いることができる。これらの基材フィルムを使用することにより、可撓性や柔軟性に富むため、調光体10を平坦なガラスに積層して使用する以外にも、曲面形状への適用や巻き取り収納など、取扱い上の自由度が高いという利点がある。しかし、上述した様に、2方向(軸)以上での曲率変化を要する形状に忠実に追従させることは困難であり、多様な3次元形状への適用には限度がある。
【0023】
図1の実施形態においても、基材1、調光層2、透明電極3として、従来技術と同様の材料、サイズの部材が採用される。
【0024】
棒状の電極4としては、棒状の芯材の表面に金属酸化物や導電性ポリマーを被覆してなる構成、あるいは銅、アルミなどの金属を棒状に加工してなる構成が選択される。芯材としては、電極4の透明性を確保する上で透明なプラスチック材料またはガラス製材料が選択される。プラスチック材料としては、PET、PE、PC、アクリルなどが採用可能である。
【0025】
調光層2は、相分離において未反応成分が殆どなく、ポリマーネットワークと液晶領域が高い純度で明確に分かれる挙動を示す。また、透明電極(13a、13b)のラビングによるプレチルト配向処理を行なうことなく、理想的な配向状態を実現することが可能であり、液晶分子はポリマーネットワークによって分割されたドメインごとにほぼ一様に配向することになる。
【0026】
PNLCのドメインのサイズは、光拡散シート内の微粒子(概ね2~10μm径)やPDLCにおける分散させたネマティック液晶ドロップレット(一般に、数μm径)に対して、約1μmと微細であり、レイリー散乱(波長選択的な散乱)は招かず、少なくとも可視光領域波長(400~780nm)を含む広い波長域の散乱が効率的に発生する。
【0027】
PNLCの駆動電圧は、一般にポリマーネットワークの構造上の特性(ドメインの大きさや形状、ポリマーネットワークの膜厚など)に依存しており、ポリマーネットワークの構造と、得られる光透過と散乱の度合いとの関係において、駆動電圧が決定されている。100V以下の電圧領域において、十分な光透過と散乱の度合いが得られるようなPNLCを構成するには、各ドメインがいずれも適正な大きさで均一となるように、かつ、形状も均一となるようにポリマーネットワークを形成する必要がある。本発明では、ポリマーネットワーク構造に依存するドメインサイズを3μm以下、好ましくは2μm以下、一層好ましくは約1μmとなる様に制御する。
【0028】
PNLCまたはPDLCを用いたリバース型素子では、液晶を垂直に配向させなければならないため、液晶を垂直に配向させる液晶配向層(垂直配向膜)が用いられる。
【0029】
現在、主に工業的に利用されている液晶配向層は、耐久性に優れ、液晶のプレチルト角の制御に好適なポリイミド系重合体から成る有機膜が用いられている。ポリイミド系重合体は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸やポリアミド酸をイミド化したポリイミド等を用いている。液晶配向層は、これらの重合体を用いた液晶配向処理剤から作製されている。
【0030】
図1に示す実施形態における調光体10では、透明電極3、棒状の電極4の少なくとも一方の表面に垂直配向膜(図示せず)を形成し、調光層2に電圧を印加していないときに、液晶分子の長手方向が垂直配向膜の法線方向に沿うように、当該液晶分子を配向する。これにより、リバースタイプとされた調光層2(PNLC)は、電圧を印加していないときに低ヘイズ状態となり、透過性が高くなる。
【0031】
図3(a)(b)は、調光体10に電源8からリード線(配線)9により給電する回路構成を含む調光体10全体の構造例を示す説明図である。
【0032】
尚、図3(b)においては、図3(a)と同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を用いて説明するものとし、共通する一部の参照符号の図示は省略する。
【0033】
図3(a)は、筒状の調光体10の両端から給電する回路構成であり、電源8から供給される電流が左側からリード線(配線)9により棒状の電極4に道通され、右側からリード線(配線)9により透明電極3に道通される構成である。
【0034】
図3(b)は、筒状の調光体10の端部の一方から給電する回路構成であり、電源8から供給される電流が左側からリード線(配線)9により棒状の電極4に道通され、同様に左側からリード線(配線)9により透明電極3に道通される構成である。図3(b)の場合、筒状(あるいは、ファイバー状)の調光体10の長さを上回る長さのリード線(配線)9を用いる必要がない。
【0035】
一方、筒状の調光体が数mにも及ぶ長さである場合、図3(b)の様な片側電極だと電極付近と電極から最も離れた地点で電圧に差が生じ調光したときにムラとなってしまうが、電極を図3(a)のように両端でとることで電圧の差をなくす利点がある。
【0036】
図3(a)(b)の断面図において、透明電極3および棒状の電極4は点線にて図示しているが、透明電極3は筒状の基材1の内周面に連続して成膜された構成となっており、棒状の電極4は筒状の基材1の長手方向に渡って連続する構成となっている。
【0037】
また、液晶層は、酸、水分、紫外線などによって劣化が生じやすく、特に、液晶層が挟持されたシート端部(周縁部)は水分や酸、紫外線などに触れる可能性が高く、液晶層の劣化が生じ易い。
【0038】
さらには、シート端部(周縁部)からの空気の浸入に伴い、接合部が剥がれやすい傾向を示す。
【0039】
そのため、シート形状の液晶表示装置では、矩形の場合、四辺に渡るシート端部(周縁部)で液晶層が露出することとなり、周縁部からの劣化の拡大を抑止する上で(加えて剥離防止の上で)、封止材料によるシーリングが必須となっている。
【0040】
同図において、筒状の調光体10の両端の断面には、調光層2(液晶)の劣化を抑止するための封止材料によるシール部5が形成される。図3(a)では、断面のみにシール部5を形成しており、図3(b)では、断面を含めて筒状の基材1の端部を覆ってシール部5を形成しており、シール部5の剥離防止と筒状の基材1の剥離防止による調光層2(液晶)の保護対策が一層強化された構成である。何れの場合においても、シート形状の調光体で四辺に渡るシート端部(周縁部)でのシーリング対策に比べて簡便な構造となる。
【0041】
図4は、本実施形態に係る調光体10の製造方法の一例を工程順に示す説明図である。異なる調光体の構成によっては、好適な他の製造方法が採用される場合もあり得ることは当然であり、以下の説明によって調光体の製造方法が限定されるものではない。
(a)プラスチック材料からなる平坦な基材シート1をプレス加工により成形加工する。図4(a)右側に図示されるシート1は、半円柱状シリンドリカルレンズ群に類似する形状であり、その形状の逆型であるスタンパ40を用いた加熱エンボス成形により得られる。
(b)基材シート1の一方の表面(凹部の内周面:同図上側)に透明導電膜をスパッタ法などにより成膜し、透明電極3を形成する。
(c)透明電極3を形成した面に、凹部を充填して液晶を塗工し、調光層2を形成する。(d)半円柱状シリンドリカルレンズの曲率中心にあたる箇所に、棒状の電極4を配置する。
(e)さらに液晶を塗工する。
(f)透明電極3が形成された(b)の形態のシートを、透明電極3側を調光層2側に対向させて、互いの凹部同士で規定された「筒状」の空間に調光層2が充填される様に接合(ラミネーション)する。この際、上下のシートに形成された透明電極3同士が半円柱状シリンドリカルレンズの境界部で接触して、断面視においては「円弧」となって導通される程度に加圧する。
(g)棒状の電極4、調光層2、透明電極3、基材1が同心円上に配置されて筒状(ファイバー状)となった調光体10の不要部分(点線)を断裁する。
【0042】
以上により、図1に示される構成の調光体10が製造される。
【0043】
本実施形態による調光体の使用例を図5に示す。
【0044】
図5(a)に示される、上下の楕円A、Bの形状(および面積)が異なる柱状の立体30が有する「曲率を持つ側面」が何らかのウインドウの表面3次元形状であると仮定する。
【0045】
従来、平坦なシート状の調光体では、曲率が場所によって異なる表面に追従する様に1枚のシートで覆うことは不可能である。
【0046】
図5(b)に概要を示す様に、円筒状(ファイバー状)の調光体10を敷き詰めて並べることで、複雑な形状の表面充填が実現される。個々の調光体10を立体30の側面に沿って楕円A(上)から楕円B(下)に向かって延びる様に配列してなる調光体群(同図では、10xと表記)として配置しても良いし、個々の調光体10を楕円A、Bに平行な周方向に沿って延びる様に曲率を持たせて配列してなる調光体群(同図では、10yと表記)として配置しても良い。あるいは、10xと10yの併用(さらには、双方を編みこんだ布状にしての使用)も可能である。
【0047】
以上のような本実施形態の調光体によれば、平坦な「シート状」ではない「筒状」「ファイバー状」の極めて新規な形状の調光体が提供される。これにより、多様で複雑な表面デザインへの適用の上で優位性を持つことになる。また、シート形状の調光体に比べて周縁部のシール構造が簡易化されるため、光学素子(液晶など)の劣化、調光体の剥離などの弊害も解消される。
【0048】
本発明は、以上説明した実施形態に限らず、主旨を逸脱しない範囲で以下に例示する様な変形例での応用も可能である。
(1)調光層としてPNLC以外の液晶素子、エレクトロクロミック材料、懸濁粒子(SPD)を採用する。
(2)光学素子の駆動に影響がない限りで、円筒形以外の調光体(角柱など)を採用する。
(3)調光体に採用する光学素子の選定に応じて、透過状態の表現バリエーションが一層多様となる。例えば、実施形態において説明したPNLCとして色素を含有する液晶材料を採用する場合、「透明-白濁(散乱)」のみならず、「透明-着色散乱」の切り替えも可能であり、色相変化も含めた表示が可能となる。また、筒状基材として透光性着色プラスチックを用いる場合、筒状基材の色相との相乗効果も含めた表示が可能となる。
【符号の説明】
【0049】
10、20 調光体
1 基材
2 調光層
3 透明電極
4 棒状電極
8 電源
9 リード線(配線)
11(a、b) 基材フィルム
12 調光層
13(a、b) 透明電極
30 立体
40 スタンパ
図1
図2
図3
図4
図5