(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2018122867
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】入山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中島 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】古川 利郎
(72)【発明者】
【氏名】宮原 健輔
(72)【発明者】
【氏名】早川 雅彦
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119665(JP,A)
【文献】特開2004-101911(JP,A)
【文献】特開2001-092209(JP,A)
【文献】特開2008-102293(JP,A)
【文献】特開2017-215417(JP,A)
【文献】特開2009-134138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能な感光体と、現像ローラを含む交換可能な現像器と、前記現像ローラに現像バイアスを印加するバイアス印加部とを含み、階調の異なる複数のパターン画像を形成する画像形成部と、
前記複数のパターン画像を検出する検出部と、
前記画像形成部で前記複数のパターン画像を形成し、前記検出部での検出結果に基づいて、目標濃度と前記複数のパターン画像との対応関係を設定する階調設定処理を実行する階調設定処理と、を実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記感光体が交換されず、かつ、前記現像器が交換された
ことを含む所定条件が満たされた場合に
おいて、
所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満である
場合には、前記階調設定処理を実行し、
所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でない
場合には、前記階調設定処理を実行しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満であるか否かを判断する判断処理を実行可能であり、
前記所定条件が満たされた場合に、前記判断処理を実行し、
前記判断処理において、
所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満であると判断した場合には、前記階調設定処理を実行し、
所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないと判断した場合には、前記階調設定処理を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないと判断して前記階調設定処理を実行しなかった場合には、前記所定条件に関わらず、
前記階調設定処理を実行しなかったことを示す情報に基づいて前記判断処理を実行し、
所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満であると判断した場合に、前記階調設定処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記画像形成部で所定のパターン画像を形成し、前記検出部での検出結果に基づいて、現像バイアスを設定するバイアス設定処理を実行可能であり、
前記所定条件を満たした場合に、前記感光体の連続駆動時間に関わらず、前記バイアス設定処理を実行することを特徴とする請求項
1から請求項3
のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
交換可能な感光体と、現像ローラを含む交換可能な現像器と、前記現像ローラに現像バイアスを印加するバイアス印加部とを含み、階調の異なる複数のパターン画像を形成する画像形成部と、
前記複数のパターン画像を検出する検出部と、
前記画像形成部で前記複数のパターン画像を形成し、前記検出部での検出結果に基づいて、目標濃度と前記複数のパターン画像との対応関係を設定する階調設定処理を実行する階調設定処理と、を実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記感光体が交換されず、かつ、前記現像器が交換された
ことを含む所定条件が満たされた場合に
おいて、
所定時間内の前記感光体の駆動時間の合計が第2規定時間未満である
場合には、前記階調設定処理を実行し、
所定時間内の前記感光体の駆動時間の合計が第2規定時間未満でない
場合には、前記階調設定処理を実行しないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体を備えるカートリッジと、
前記カートリッジに設けられるメモリと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記所定条件が満たされた場合において所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないと判断し
た場合に、前記階調設定処理を実行しなかったことを示す情報を、前記メモリに記憶することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記所定条件は、前回所定条件を満たしたときから温度が所定以上変化したことを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記所定条件は、前回所定条件を満たしたときから印字枚数が所定枚数以上になったことを含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタでは、環境変化や現像剤の長期間の使用による特性変化に伴い、印字濃度に変化が生じる。印字濃度の変化を補正するために、従来、階調の異なる複数のパターン画像を作成して読み取り、その結果に基づいて、印字指令で指示されている目標濃度とパターン画像の対応関係を設定する階調設定処理、いわゆるガンマ補正を行うものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、連続印字によって感光体を長時間使用していると、感光体の状態が帯電しにくい状態(以下、「長期駆動状態」ともいう。)に一時的に変化することがある。しかしながら、この長期駆動状態においてガンマ補正の実行条件が成立してガンマ補正を実行すると、長期駆動状態では最適な印字濃度で印字できるが、感光体の状態が通常の状態に戻った後は、最適な印字濃度で印字できないため、長期駆動状態で行ったガンマ補正で消費する現像剤が無駄になるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、長期駆動状態での階調設定処理による無駄な現像剤の消費を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、交換可能な感光体と、現像ローラを含む交換可能な現像器と、前記現像ローラに現像バイアスを印加するバイアス印加部とを含み、階調の異なる複数のパターン画像を形成する画像形成部と、前記複数のパターン画像を検出する検出部と、前記画像形成部で前記複数のパターン画像を形成し、前記検出部での検出結果に基づいて、目標濃度と前記複数のパターン画像との対応関係を設定する階調設定処理を実行する階調設定処理と、を実行可能な制御部と、を備える。
前記制御部は、前記現像器が交換された際に、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満であることを条件として、前記階調設定処理を実行し、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないことを条件として、前記階調設定処理を実行しない。
【0007】
また、本発明に係る画像形成装置は、交換可能な感光体と、現像ローラを含む交換可能な現像器と、前記現像ローラに現像バイアスを印加するバイアス印加部とを含み、階調の異なる複数のパターン画像を形成する画像形成部と、前記複数のパターン画像を検出する検出部と、前記画像形成部で前記複数のパターン画像を形成し、前記検出部での検出結果に基づいて、目標濃度と前記複数のパターン画像との対応関係を設定する階調設定処理を実行する階調設定処理と、を実行可能な制御部と、を備える。
前記制御部は、前記現像器が交換された際に、所定時間内の前記感光体の駆動時間の合計が第2規定時間未満であることを条件として、前記階調設定処理を実行し、所定時間内の前記感光体の駆動時間の合計が第2規定時間未満でないことを条件として、前記階調設定処理を実行しない。
【0008】
前述した各構成によれば、所定時間内の感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないとき、または、所定時間内の感光体の駆動時間の合計が第2規定時間未満でないとき、つまり感光体の状態が長期駆動状態であるときに階調設定処理を実行しないので、長期駆動状態での階調設定処理による無駄な現像剤の消費を抑えることができる。
【0009】
また、前記制御部は、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満であるか否かを判断する判断処理を実行可能であり、所定条件が満たされた場合に、前記判断処理を実行し、前記判断処理において、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満であると判断した場合には、前記階調設定処理を実行し、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないと判断した場合には、前記階調設定処理を実行しないように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記制御部は、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないと判断して前記階調設定処理を実行しなかった場合には、前記所定条件に関わらず、前記判断処理を実行し、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満であると判断した場合に、前記階調設定処理を実行してもよい。
【0011】
これによれば、感光体の状態が長期駆動状態でなくなったときに、階調設定処理を実行するので、その後に形成する画像の画質を向上させることができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記画像形成部で所定のパターン画像を形成し、前記検出部での検出結果に基づいて、現像バイアスを設定するバイアス設定処理を実行可能であり、前記感光体の連続駆動時間に関わらず、前記バイアス設定処理を実行してもよい。
【0013】
これによれば、感光体の状態が長期駆動状態であるときにもバイアス設定処理を実行するので、長期駆動状態での画質が極端に悪化するのを抑えることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記感光体が新品に交換された場合には、目標濃度と前記複数のパターン画像との対応関係をデフォルトの値に設定してもよい。
【0015】
また、前記画像形成装置が、前記感光体を備えるカートリッジと、前記カートリッジに設けられるメモリと、をさらに備える場合には、前記制御部は、所定時間内の前記感光体の連続駆動時間が第1規定時間未満でないと判断して前記階調設定処理を実行しなかったことを示す情報を、前記メモリに記憶してもよい。
【0016】
これによれば、カートリッジを一旦取り外して再度装着した場合であっても、そのカートリッジのメモリに階調設定処理を実行しなかったことを示す情報が記憶されているので、そのカートリッジに対して実行しなかった階調設定処理を実行することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長期駆動状態での階調設定処理による無駄な現像剤の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を示す図である。
【
図2】制御部と関連する各構成を示すブロック図である。
【
図4】目標濃度と露光濃度の対応関係を示す図である。
【
図5】トップカバーの開閉状態に基づいて実行する制御を示すフローチャートである。
【
図8】印字指令の有無に基づいて実行する制御を示すフローチャートである。
【
図10】第2補正処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1の概略構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分の構成について詳細に説明する。
【0020】
また、以下の説明において、方向は、
図1に示す方向で説明する。すなわち、
図1における左側を「前」、右側を「後」とし、奥側を「左」、手前側を「右」とする。また、
図1における上側を「上」、下側を「下」とする。
【0021】
図1に示すように、カラープリンタ1は、本体筐体10と、トップカバー11と、本体筐体10内に設けられた給紙部20および画像形成部30と、制御部100と、を備えている。
【0022】
トップカバー11は、本体筐体10の上部に配置され、後側の回動軸11Aを中心として本体筐体10に対し回動可能に設けられており、本体筐体10の上部に形成された開口10Aを開閉する。具体的には、トップカバー11は、開口10Aを閉鎖する閉鎖位置と、開口10Aを開放する開放位置とに移動可能となっている。
【0023】
給紙部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、用紙Pを収容する給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Pを画像形成部30に供給する用紙供給機構22とを備えている。給紙トレイ21内の用紙Pは、用紙供給機構22によって1枚ずつ分離されて画像形成部30に供給される。
【0024】
画像形成部30は、4つの露光ヘッド40と、4つのプロセスカートリッジPCと、転写ユニット70と、定着ユニット80とを備えている。
【0025】
露光ヘッド40は、その先端に発光素子と結像レンズを有し、トップカバー11から吊り下げられるようにトップカバー11に保持されており、トップカバー11を閉じた状態において、後述する感光ドラム51の上方に対向して配置されている。具体的に、露光ヘッド40は、トップカバー11の開閉によって、感光ドラム51に接近した基準位置と、当該基準位置よりも感光ドラム51から離れた退避位置との間を移動可能となっている。露光ヘッド40は、感光ドラム51の表面を露光する露光部材であり、発光素子が二値のラスタ画像に基づいて明滅することで露光を行う。
【0026】
各プロセスカートリッジPCは、トップカバー11と給紙トレイ21との間で前後方向に沿って並列配置されている。各プロセスカートリッジPCは、トップカバー11が開かれた状態において、本体筐体10の開口10Aを通して着脱可能となっている。プロセスカートリッジPCは、カートリッジの一例としてのドラムカートリッジ50と、現像器の一例としての現像カートリッジ60とを備えている。現像カートリッジ60は、ドラムカートリッジ50に着脱可能となっている。
【0027】
ドラムカートリッジ50は、感光体の一例としての感光ドラム51と、感光ドラム51を帯電させるスコロトロン方式の帯電器52と、クリーニングローラ54と、感光ドラム51等を支持するドラムフレーム55とを備えている。
【0028】
現像カートリッジ60は、トナーを収容するトナー収容部61と、トナー収容部61内のトナーを感光ドラム51に供給する現像ローラ62とを主に備えている。トナーは、感光ドラム51上の静電潜像を現像する現像剤である。各現像カートリッジ60のトナー収容部61には、前から順にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが収容されている。
【0029】
転写ユニット70は、給紙トレイ21とプロセスカートリッジPCとの間に設けられている。転写ユニット70は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、無端状の搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、駆動ローラ71と従動ローラ72の間に張設されている。搬送ベルト73は、外側の面が各感光ドラム51に接しており、その内側には各転写ローラ74が各感光ドラム51との間で搬送ベルト73を挟持するように配置されている。
【0030】
搬送ベルト73の後斜め下方には、検出部75が設けられている。検出部75は、搬送ベルト73上に形成される画質調整のためのトナー像、つまり画像の印字濃度を検出するセンサであり、搬送ベルト73の後部に対向して配置されている。なお、以下の説明では、搬送ベルト73上に形成される画質調整のための画像を、「パッチ」とも称する。検出部75は、LEDなどの発光素子と、フォトトランジスタなどの受光素子とを備えた光反射型のセンサであり、パッチに光を照射して反射光を検出している。
【0031】
定着ユニット80は、プロセスカートリッジPCおよび転写ユニット70の後方に設けられ、加熱ローラ81と、加熱ローラ81に向けて押圧される加圧ローラ82とを備えている。
【0032】
このような画像形成部30では、感光ドラム51の表面が、帯電器52により一様に帯電された後、露光ヘッド40によって露光されることで、感光ドラム51上に画像データに基づく静電潜像が形成される。そして、現像ローラ62に電圧を印加することで、現像ローラ62から感光ドラム51にトナーが供給され、静電潜像が可視像化されて感光ドラム51上にトナー像が形成される。つまり、現像カートリッジ60は、感光ドラム51上の静電潜像を現像している。
【0033】
各感光ドラム51上に形成されたトナー像は、転写ローラ74によって、搬送ベルト73上を搬送される用紙P上に順次重ね合わせて転写される。トナー像が転写された用紙Pは、加熱ローラ81と加圧ローラ82の間を搬送されることでトナー像が熱定着される。その後、用紙Pは、搬送ローラ91によって本体筐体10内から外部に排出され、トップカバー11の上面に形成された排紙トレイ11B上に載置される。
【0034】
図1および
図2に示すように、制御部100には、4つのリーダライタ12と、開閉センサ13と、検出部75と、が接続されている。制御部100は、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、外部のコンピュータ900から出力されてくる印字ジョブと、リーダライタ12、開閉センサ13、検出部75などから出力されてくる情報と、ROM等に記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。具体的に、制御部100は、CPUなどの演算部110と、現像ローラ62、露光ヘッド40等を制御する制御回路120と、記憶部130とを備えている。制御部100は、記憶部130に記憶されているプログラムに基づいて動作することで、印字制御や画質調整を実行する。
【0035】
リーダライタ12は、ドラムカートリッジ50に設けられた第1メモリM1に対して情報の読み取り・書き込みが可能であるとともに、現像カートリッジ60に設けられた第2メモリM2に対して情報の読み取り・書き込みが可能な装置である。制御部100は、リーダライタ12からの情報に基づいて、ドラムカートリッジ50が新品であるか否かの判断や、現像カートリッジ60が新品であるか否かの判断を行う新品検知処理を実行可能となっている。
【0036】
なお、新品検知処理は、例えば、不可逆的に移動する突起を各カートリッジ50,60に設け、この突起が、本体筐体10内の検知レバーを押しているか否かを光センサであるカートリッジセンサで検出することで行ってもよい。
【0037】
開閉センサ13は、トップカバー11の開閉状態を検出するセンサである。なお、開閉センサ13としては、例えば光センサなどを用いることができる。
【0038】
制御部100は、コンピュータ900から出力されてくる印字ジョブに基づいて、用紙Pに画像を形成する印字制御を実行する機能を有している。制御部100は、印字制御において、二値画像である印字用パターン画像に基づいて感光ドラム51を露光する露光処理を実行する。詳しくは、制御部100は、印字制御を実行する際において、用紙Pに画像を印字する場合には、この画像の印字濃度が所定の目標濃度となるように、異なる露光濃度(階調)の複数の印字用パターン画像の中から1つの印字用パターン画像を選択して露光処理を実行する。印字用パターン画像は、
図3に示すような2値の画像からなっている。露光濃度は、印字用パターン画像において、露光される画素の面積率をいう。
【0039】
ここで、印字濃度とは、現像ローラ62によって現像されたトナー像の濃度であって、検出部75で検出された濃度をいう。また、目標濃度とは、印字指令で指示されている目標の濃度をいう。制御部100は、例えば、印字指令で指示された目標濃度が20%である場合には、20%の露光濃度の印字用パターン画像を選択し、この印字用パターン画像で露光処理を実行する。ただし、後述する階調設定処理により、目標濃度と露光濃度との関係が変更される。例えば、目標濃度20%に対して露光濃度20%の印字用パターン画像が関連付けられた状態から、目標濃度20%に対して露光濃度10%の印字用パターン画像が関連付けられた状態に変更された場合には、目標濃度20%で画像形成する際、露光濃度10%の印字用パターン画像で露光処理が実行される。
【0040】
詳しくは、制御部100は、印字データを受信すると、受信した印字データを二値のラスタ画像に展開する展開処理を実行する。制御部100は、展開処理において、受信した印字データを、ベクトルデータあるいはビットマップデータからなるオブジェクトデータに展開する第1処理と、オブジェクトデータを、仮想の用紙内に配置して、複数のバンドデータからなるラスタ画像に展開する第2処理とを実行可能となっている。
【0041】
ここで、印字データは、コンピュータ等の外部機器で作成され、ページ記述言語等で構成されたデータであり、カラープリンタ1の露光用のデータとしては扱うことができない。そこで、制御部100は、ページ記述言語等からなる印字データを、露光用のデータであるラスタ画像に展開する展開処理を行っている。そして、制御部100は、ラスタ画像の所定部分について露光処理を実行する場合、ラスタ画像の所定部分の目標濃度に応じた印字用パターン画像を選択し、この印字用パターン画像で露光処理を実行する。
【0042】
制御部100は、前述したように複数の印字用パターン画像の中から目標濃度に対応した1つの印字用パターン画像を選択した後、当該印字用パターン画像を用いて露光・現像を行うことで、感光ドラム51上に目標濃度のトナー像を形成する。
【0043】
なお、複数の印字用パターン画像は、露光濃度に対応し、予め記憶部130に記憶されている。また、複数の印字用パターン画像は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれの色に対応して、予め記憶部130に記憶されている。
【0044】
制御部100は、感光ドラム51の駆動時間の増加に応じて増加するパラメータに基づいて、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるか否かを判断する判断処理を実行する機能を有している。ここで、本実施形態では、感光ドラム51の駆動時間の増加に応じて増加するパラメータとして、現時点、つまり判断処理での判断時から所定時間前の時点までの間における印字制御の連続実行時間を例示する。
【0045】
ここで、印字制御では、すべての感光ドラム51が回転するため、印字制御の連続実行時間は、感光ドラム51を連続して駆動した時間(以下、「連続駆動時間」とも称する)に相当する。なお、少なくとも1つの感光ドラム51が交換された場合には、交換された感光ドラム51に対応した連続実行時間はリセットされる。
【0046】
なお、感光ドラム51の連続駆動時間は、(1)感光ドラムの回転数、(2)現像ローラの回転数、(3)印刷枚数等、に時間換算用の規定値を掛け算して算出してもよいし、時計を使って測定してもよい。
【0047】
制御部100は、判断処理において、所定時間内の印字制御の連続実行時間が第1規定時間未満であるか否かを判断し、第1規定時間未満でない場合に、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であると判断し、第1規定時間未満である場合に、感光ドラム51の状態が長期駆動状態でないと判断する。詳しくは、制御部100は、印字制御の連続実行時間が、第1規定時間未満でない場合に、少なくとも1つの感光ドラム51の状態が長期駆動状態であると判断し、第1規定時間未満である場合に、すべての感光ドラム51の状態が長期駆動状態でないと判断する。
【0048】
制御部100は、印字されたトナー像の画質を調整するための画質調整を実行可能となっている。制御部100は、所定条件が満たされた場合に、画質調整を実行する。制御部100は、画質調整を実行するときに、検出部75での検出結果に基づいて、バイアス設定処理と、階調設定処理と、を実行する機能を有している。
【0049】
詳しくは、制御部100は、所定条件が満たされた場合には、バイアス設定処理を実行するとともに、前述した判断処理を実行し、判断処理の判断結果に応じて階調設定処理の実行・非実行を決定している。言い換えると、制御部100は、所定条件が満たされた場合には、前述した判断処理の結果に関わらず、つまり感光ドラム51の状態に関わらず、バイアス設定処理を実行する。
【0050】
ここで、本実施形態において、所定条件である、ドラムカートリッジ50が新品に交換されたという第1条件と、現像カートリッジ60が新品に交換されたという第2条件と、温湿度などの環境が前回の画質調整から所定値以上変化したという第3条件と、画質調整を前回実行したときからの印字枚数が所定枚数以上になったという第4条件とのいずれかの条件が満たされた場合に、画質調整が実行される。
【0051】
バイアス設定処理において、制御部100は、画像形成部30で所定の露光濃度に対応した第1印字用パターン画像を用いてパターン画像を形成させ、検出部75で検出した結果に基づいて、現像バイアスを設定する。ここで、現像バイアスは、図示せぬバイアス印加部によって現像ローラに印加するバイアスである。画像形成部30は、バイアス印加部を有している。制御部100は、バイアス設定処理において、所定の露光濃度に対応した第1印字用パターン画像を用いて印字されたパターン画像、つまりトナー像が所定の印字濃度となるような現像バイアスを算出する。ここで、所定の露光濃度、および所定の印字濃度は、一例として40%であり、制御部100は、第1印字用パターン画像として、
図3に示した40%の印字用パターン画像を選択する。詳しくは、バイアス設定処理において、制御部100は、2種類の現像バイアスを用いて、2つの第1印字用パターン画像に対応した2つのトナー像を形成する。より詳しくは、制御部100は、バイアス設定処理において、第1印字用パターン画像を用いて感光ドラム51上に2つの静電潜像を形成し、2つの静電潜像に対して2種類の現像バイアスでそれぞれ現像を行うことで、感光ドラム51上に2種類の印字濃度のパッチを形成する。その後、制御部100は、各パッチを感光ドラム51から搬送ベルト73に転写し、搬送ベルト73上の各パッチを検出部75で検出する。そして、制御部100は、検出部75で検出した各パッチからの反射光の強度を印字濃度に換算し、2種類の印字濃度と2種類の現像バイアスとに基づいて印字濃度が目標濃度になる現像バイアスを算出する。
【0052】
つまり、制御部100は、階調設定処理において目標濃度に対応付けられた印字用パターン画像を用いてパターン画像を形成させ、パターン画像の印字濃度が目標濃度となるような現像バイアスを算出し、算出した現像バイアスを現像ローラ62に印加するように設定する。温度及び湿度等の少なくとも一つが変わると、同じ現像バイアスであっても、目標濃度となるように現像ローラ62から感光ドラム51にトナーが移動しないことがあるからである。目標濃度よりも現像ローラ62から感光ドラム51にトナーが多く移動する場合は現像バイアスを小さくして、移動するトナーの量を少なくする。一方、目標濃度よりも現像ローラ62から感光ドラム51にトナーが少ない場合は現像バイアスを大きくして、移動するトナーの量を多くする。
【0053】
階調設定処理において、制御部100は、バイアス設定処理によって設定した現像バイアスで複数種類の印字用パターン画像に対応した複数種類の印字濃度のトナー像(パターン画像)を形成し、このトナー像を検出部75で検出する。ここで、複数種類の印字用パターン画像は、複数の露光濃度に対応した複数の印字用パターン画像であり、例えば露光濃度20%に対応した第2印字用パターン画像、露光濃度40%に対応した第3印字用パターン画像、露光濃度60%に対応した第4印字用パターン画像などが用いられる。
【0054】
その後、制御部100は、検出部75で検出した結果に基づいて、目標濃度と印字用パターン画像との対応関係を設定する。このように目標濃度と印字用パターン画像との対応関係を設定することで、目標濃度と、実際に印字されるトナー像、つまり露光濃度との対応関係が設定される。
【0055】
詳しく説明すると、階調設定処理において、制御部100は、例えば露光濃度20,40,60,80,100%に対応した各印字用パターン画像を用いて感光ドラム51上に5つの静電潜像を形成し、各静電潜像に対して、そのときに設定されている現像バイアスで現像を行うことで、5種類の印字濃度のパッチを形成する。その後、制御部100は、感光ドラム51から搬送ベルト73に転写された各パッチを検出部75で検出する。制御部100は、各パッチからの反射光の強度をそれぞれ印字濃度に換算する。そして、制御部100は、算出した各印字濃度を、それぞれ対応する露光濃度と比較し、比較した印字濃度と露光濃度が異なる場合には、印字濃度と露光濃度の対応関係を補正することで、目標濃度と印字用パターン画像の対応関係を変更する。
【0056】
具体的に、目標濃度と印字用パターン画像(露光濃度)の対応関係は、階調設定処理を過去に1回も行っていない場合には、例えば、
図4に2点鎖線で示すようなデフォルトのガンマテーブルとなっている。なお、以下の説明では、目標濃度と印字用パターン画像の対応関係を、「ガンマテーブル」とも称する。
【0057】
ガンマテーブルは、所定の目標濃度で印字する場合において、所定の目標濃度に対応した所定の露光濃度の印字用パターンを選択するためのテーブルである。2点鎖線で示すガンマテーブル、つまりデフォルトのガンマテーブルは、目標濃度と露光濃度とが同じ値となっている。
【0058】
階調設定処理において、例えば、図に黒丸で示すように、露光濃度20%に対応した第1印字用パターン画像を用いて形成したパッチを検出部75で検出した際に、そのパッチの印字濃度が10%となってしまった場合には、制御部100は、第1印字用パターン画像を目標濃度10%に対応するパターン画像として記憶し直す。つまり、次回の印字制御において、目標濃度10%で画像形成する場合には、露光濃度20%に対応した第1印字用パターン画像で画像形成を行えば、印字濃度が10%になるため、制御部100は、目標濃度10%に対して露光濃度20%の第1印字用パターン画像を関連付ける。
【0059】
また、このときの階調設定処理において、露光濃度40%の第2印字用パターン画像が検出部75で検出されたときの印字濃度が40%である場合、つまり目標濃度、露光濃度および印字濃度が一致する場合には、図に破線で示すように、目標濃度と露光濃度の関係を線形補間する。これにより、例えば、次回の印字制御において、目標濃度20%でパッチを形成する場合には、目標濃度20%のラインと図の破線との交点に相当する露光濃度Xに対応した印字用パターン画像が選択される。なお、このときのガンマテーブルは、デフォルトのガンマテーブル(2点鎖線)のうち露光濃度40%未満のラインが図の破線のラインに置き換えられたようなテーブルとなる。つまり、図に示す黒丸と露光濃度40%に対応する白丸との間を破線の直線で示すように補う。
【0060】
制御部100は、所定条件が満たされた場合に実行する判断処理において、感光ドラム51の状態が長期駆動状態でないと判断した場合には、階調設定処理を実行し、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であると判断した場合には、階調設定処理を実行しないように構成されている。そして、制御部100は、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であると判断して階調設定処理を実行しなかった場合には、所定条件に関わらず、判断処理を実行し、判断処理において感光ドラム51の状態が長期駆動状態でないと判断した場合に、階調設定処理を実行するように構成されている。
【0061】
具体的に、制御部100は、長期駆動状態と判断して階調設定処理を実行しなかった場合には、そのことを示す情報であるやり残しフラグF(n)を立てる。そして、制御部100は、やり残しフラグF(n)が立っている場合には、所定条件に関わらず、判断処理を実行し、感光ドラム51の状態が長期駆動状態でない状態に戻った場合に、階調設定処理を実行する。
【0062】
ここで、やり残しフラグF(n)は、各ドラムカートリッジ50に対して、つまり各色に対して個別に設定される。制御部100は、やり残しフラグF(n)を、対応するドラムカートリッジ50に設けられる第1メモリM1に記憶するように構成されている。具体的には、例えば、F(0)は、ブラックに対応し、F(1)は、イエローに対応し、F(2)は、マゼンタに対応し、F(3)は、シアンに対応するフラグであり、それぞれ、各色に対応した第1メモリM1に記憶される。
【0063】
記憶部130は、前述した各印字用パターン画像やデフォルトのガンマテーブルを記憶する他、制御に用いる各種閾値や、制御部100を動作させるためのプログラムなどを記憶している。
【0064】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。制御部100は、常時、
図5および
図8に示す制御を実行している。
【0065】
図5に示す制御において、制御部100は、まず、開閉センサ13からの信号に基づいて、トップカバー11が開閉されたか否かを判断する(S1)。ステップS1において開閉されていないと判断した場合には(No)、制御部100は、本制御を終了する。
【0066】
ステップS1において開閉されたと判断した場合には(Yes)、制御部100は、各色のリーダライタ12で読み取った情報に基づいて、ドラムカートリッジ50が新品に交換されたか否かを各色について判断する(S2)。ステップS2において少なくとも1色について新品に交換されたと判断した場合には(Yes)、制御部100は、新品交換されたドラムカートリッジ50に対応する色について第1補正処理を実行する(S3)。
【0067】
ここで、第1補正処理は、新品交換されたドラムカートリッジ50に対応する色について、画像調整を行う処理である。第1補正処理の詳細については、後で詳述する。
【0068】
制御部100は、ステップS3の後、新品交換されたすべてのドラムカートリッジ50に対応するすべての色について第1補正処理が終了したか否かを判断する(S4)。ステップS4において終了していないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS3に戻って、第1補正処理を実行していない色について第1補正処理を実行する。ステップS4において終了したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、本制御を終了する。
【0069】
ステップS2においてすべてのドラムカートリッジ50が新品に交換されていないと判断した場合には(No)、制御部100は、現像カートリッジ60が新品に交換されたか否かを各色について判断する(S5)。ステップS5においてすべての現像カートリッジ60が新品に交換されていないと判断した場合には(No)、制御部100は、本制御を終了する。ステップS5において少なくとも1色について新品に交換されたと判断した場合には(Yes)、制御部100は、新品交換された現像カートリッジ60に対応する色について第2補正処理を実行する(S6)。
【0070】
ここで、第2補正処理は、新品交換された現像カートリッジ60に対応する色について、画像調整を行う処理である。第2補正処理の詳細については、後で詳述する。
【0071】
制御部100は、ステップS6の後、新品交換されたすべての現像カートリッジ60に対応するすべての色について第1補正処理が終了したか否かを判断する(S7)。ステップS7において終了していないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS6に戻って、第2補正処理を実行していない色について第2補正処理を実行する。ステップS7において終了したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、本制御を終了する。
【0072】
図6に示すように、第1補正処理において、制御部100は、まず、新品交換されたドラムカートリッジ50に対応する色、つまり所定の1色について、バイアス設定処理を実行して、現像バイアスを補正する(S11)。ステップS11の後、制御部100は、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるか否かを判断する(S12)。
【0073】
ステップS12において長期駆動状態であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、所定の1色に対応するガンマテーブルをデフォルトのガンマテーブルに設定する(S13)。つまり、制御部100は、所定の色に対応する感光ドラム51が新品に交換され(S2:Yes)、かつ、所定の色に対応する感光ドラム51の状態が長期駆動状態の場合には(S12:Yes)、所定の色に対応するガンマテーブルをデフォルトのガンマテーブルに設定する(S13)。ステップS13の後、制御部100は、所定の1色に対応するやり残しフラグF(n)を1にして(S14)、本制御を終了する。
【0074】
つまり、制御部100は、ステップS12において長期駆動状態であると判断した場合には(Yes)、階調設定処理を実行せず、その代わりに、やり残しフラグF(n)を立てて、後で階調設定処理を実行するように構成されている。なお、ガンマテーブルをデフォルトのガンマテーブルに設定する処理は、単に記憶部130に記憶されているデフォルトのガンマテーブルをガンマテーブルとして書き換えるだけの処理であるため、複数のパッチの形成が必要な階調設定処理とは異なる処理である。
【0075】
ステップS12において長期駆動状態でないと判断した場合には(No)、制御部100は、所定の1色について、階調設定処理を実行して、新たなガンマテーブルを設定する(S15)。ステップS15の後、制御部100は、所定の1色に対応するやり残しフラグF(n)を0にして(S16)、本制御を終了する。
【0076】
図7に示すように、第2補正処理は、第1補正処理からステップS13の処理を取り除いただけの処理となっている。ここで、第2補正処理は、ドラムカートリッジ50が新品でない場合に行う処理であるため、第2補正処理を実行する場合には、既にガンマテーブルが設定された状態である。そのため、第2補正処理では、ガンマテーブルをデフォルトのガンマテーブルに設定する処理(S13)が不要となっている。なお、第2補正処理の各処理は、第1補正処理のステップS11,S12,S14~S16と同様であるため、各処理に同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図8に示す制御において、制御部100は、まず、印字指令を受信したか否かを判断する(S31)。ステップS31において印字指令を受信したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、現在の環境が前回ガンマテーブルを設定したときの環境から変わったか否かを判断する(S32)。ここで、環境変化の判断は、例えば、温湿度センサで検出した温度または湿度に基づいて判断することができる。具体的には、例えば、現在の温度(または湿度)と前回ガンマテーブルを設定したときの温度(または湿度)との差が所定値以上かを判断することで、環境変化を判断することができる。なお、本体筐体10は、温湿度センサを有している。
【0078】
ステップS32において環境変化がないと判断した場合には(No)、制御部100は、前回ガンマテーブルを設定したときから現在までの印字枚数が所定枚数以上であるか否かを判断する(S33)。ステップS32において環境変化がある(Yes)、または、ステップS33において印字枚数が所定枚数以上であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、全色についてバイアス設定処理を実行して、全色について現像バイアスを補正する(S34)。
【0079】
ステップS34の後、制御部100は、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるか否かを判断する(S35)。ステップS35において長期駆動状態であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、全色について、やり残しフラグF(n)を1にする(S36)。
【0080】
つまり、制御部100は、ステップS35において長期駆動状態であると判断した場合には(Yes)、全色について階調設定処理を実行せず、その代わりに、やり残しフラグF(n)を立てて、後で階調設定処理を実行するように構成されている。ステップS36の後、制御部100は、印字制御を実行し(S37)、その後、本制御を終了する。
【0081】
ステップS35において長期駆動状態でないと判断した場合には(No)、制御部100は、全色について階調設定処理を実行する(S38)。ステップS38の後、制御部100は、全色について、やり残しフラグF(n)を0にして(S39)、印字制御を実行する(S37)。
【0082】
ステップS31において印字指令がないと判断した場合には(No)、制御部100は、再補正処理を実行する(S40)。ここで、再補正処理は、階調設定処理を実行するための所定条件が満たされたのにも関わらず、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるがために、階調設定処理が実行されなかった場合に、感光ドラム51の状態が長期駆動状態でない状態に戻ったときに階調設定処理を行うための処理である。再補正処理については、後で詳述する。
【0083】
ステップS40の後、制御部100は、本制御を終了する。ステップS33において印字枚数が所定枚数以上でないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS40と同様の再補正処理を実行する(S41)。ステップS41において再補正処理を実行した後、制御部100は、印字制御を実行する(S37)。
【0084】
図9に示すように、再補正処理において、制御部100は、まず、所定の1色について、やり残しフラグF(n)が1であるか否かを判断する(S51)。具体的には、例えば、ブラックに対応したやり残しフラグF(0)が1であるか否かを判断する。
【0085】
ステップS51において所定の1色について、F(n)=1であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるか否かを判断する(S52)。ステップS52において長期駆動状態でないと判断した場合(No)、つまり感光ドラム51の状態が長期駆動状態でない状態に戻った場合には、制御部100は、所定の1色について、バイアス設定処理を実行して、現像バイアスを補正する(S53)。
【0086】
ステップS53の後、制御部100は、所定の1色について、階調設定処理を実行し(S54)、所定の1色に対応するやり残しフラグF(n)を0にする(S55)。ステップS55の後、ステップS51でNoと判断した場合、または、ステップS52でYesと判断した場合、制御部100は、ステップS51のフラグ判断処理が全色について終了したか否かを判断する(S56)。
【0087】
ステップS56においてフラグ判断処理が全色について終了していないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS51に戻って、次の色について、フラグ判断処理を実行する。ステップS56においてフラグ判断処理が全色について終了したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、本制御を終了する。
【0088】
次に、制御部100の動作の一例について説明する。
図8に示すように、制御部100は、印字指令を受けたときに(S31:Yes)、所定条件が満たされておらず、かつ、やり残しフラグF(n)がすべて0である場合には、ステップS32、ステップS33およびステップS41のステップS51(
図9参照)の各処理でNoと判定するため、画像調整を行うことなく、印字制御を実行し(S37)、印字制御の連続実行時間を記憶する。
【0089】
印字制御において、印字枚数が多く、各感光ドラム51が長い時間駆動すると、各感光ドラム51が長期駆動状態となる。各感光ドラム51が長期駆動状態であり、かつ、所定条件(例えば印字枚数の条件)が満たされている場合には、制御部100は、ステップS33でYesと判断して、全色について、現像バイアスの補正を行う(S34)。
【0090】
その後、制御部100は、ステップS35において印字制御の連続実行時間から長期駆動状態であると判断するので(Yes)、階調設定処理を実行せずに、ステップS36ですべてのやり残しフラグF(n)を1にする。このように感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるときに階調設定処理を実行しないので、長期駆動状態での階調設定処理による無駄なトナー消費を抑えることができる。なお、制御部100は、ステップS36で設定した各やり残しフラグF(n)を、対応するドラムカートリッジ50の第1メモリM1にそれぞれ記憶する。
【0091】
ステップS36の後、制御部100は、印字制御を実行する(S37)。この印字制御では、補正されていない前回のガンマテーブルが使用されるが、現像バイアスについてはステップS34で補正されているため、長期駆動状態での画質が極端に悪化することを抑制することができる。
【0092】
印字制御の終了後、しばらくの間、印字指令を受信しない場合には、制御部100は、S31→S40の処理を繰り返し実行する。詳しくは、制御部100は、ステップS31でNo、ステップS40のステップS51でYes(
図9参照)、ステップS52でYesと判定することで、感光ドラム51の状態が長期駆動状態でない状態に戻らない限り、画像調整を実行しない。
【0093】
時間が経過していくと、現時点から所定時間前の時点までの時間間隔に対する印字制御の連続実行時間の割合が徐々に小さくなっていく。そして、現時点から所定時間前の時点までの間における連続実行時間が第1規定時間未満になると、制御部100は、ステップS52において、長期駆動状態でない、つまり長期駆動状態でない状態に戻ったと判断して(No)、すべての色について、現像バイアスを補正するとともに(S53)、やり残した階調設定処理を実行する(S54)。
【0094】
このように感光ドラム51の状態が長期駆動状態でない状態に戻ったときに、現像バイアス補正および階調設定処理を実行するので、その後に形成する画像の画質を向上させることができる。また、このように印字指令を受けていないときに、やり残した階調設定処理を行うので、次に印字指令を受けたときに階調設定処理を行う必要がなく、即座に印字制御を実行することができる。
【0095】
なお、印字指令を受けた時点で感光ドラム51の状態が長期駆動状態でない状態に戻った場合には、制御部100は、ステップS41の再補正処理によって、現像バイアス補正および階調設定処理を実行する。この場合も、印字前に、やり残した階調設定処理を行うことができるので、その後に形成する画像の画質を向上させることができる。
【0096】
やり残しフラグF(n)がすべて0である状態において、例えばブラックのドラムカートリッジ50をユーザが新品に交換すると、
図5に示す制御において、制御部100は、ステップS1,S2の各処理でYesと判断して、第1補正処理を実行する(S3)。
図6に示すように、第1補正処理において、制御部100は、ブラックの現像バイアスを補正した後(S11)、感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるか否かを判断する(S12)。
【0097】
ステップS12で長期駆動状態であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、ブラックのガンマテーブルをデフォルトのガンマテーブルに設定し(S13)、ブラックのやり残しフラグF(0)を1にする(S14)。その後、しばらくの間、印字指令を受信しない場合には、制御部100は、
図8に示す制御において、S31→S40の処理を繰り返し実行する。
【0098】
この処理を繰り返している最中に感光ドラム51の状態が長期駆動状態から長期駆動状態でない状態に戻った場合には、制御部100は、
図9のステップS52において長期駆動状態でない状態に戻ったと判断して(No)、ブラックについて、現像バイアスを補正するとともに(S53)、やり残した階調設定処理を実行する(S54)。これにより、ブラックのガンマテーブルを、デフォルトのガンマテーブルよりも印字に適したテーブルに置き換えることができる。
【0099】
ユーザが、例えばブラックのプロセスカートリッジPCを一旦取り外してから、再度装着し直した場合には、制御部100は、
図5の制御において、ステップS1,S2,S5の各処理でNoと判断する。この際、ブラックのドラムカートリッジ50の第1メモリM1に記憶されたやり残しフラグF(0)が1である場合には、制御部100は、プロセスカートリッジPCの付け直し後も、第1メモリM1に記憶したやり残しフラグF(0)=1に基づいて、再補正処理(S40)を行うことができる。
【0100】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるときに階調設定処理を実行しないので、長期駆動状態での階調設定処理による無駄なトナー消費を抑えることができる。
【0101】
感光ドラム51の状態が長期駆動状態でない状態に戻ったときに、長期駆動状態において実行しなかった階調設定処理を実行するので、その後に形成する画像の画質を向上させることができる。
【0102】
感光ドラム51の状態が長期駆動状態であるときにも、現像バイアスの補正(バイアス設定処理)を実行するので、長期駆動状態での画質が極端に悪化することを抑制することができる。
【0103】
ドラムカートリッジ50を一旦取り外して再度装着した場合であっても、そのドラムカートリッジ50の第1メモリM1に階調設定処理を実行しなかったことを示す情報、つまりやり残しフラグF(n)が記憶されているので、そのドラムカートリッジ50に対して実行しなかった階調設定処理を実行することができる。
【0104】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0105】
前記実施形態では、現像カートリッジが交換された際に行う第2補正処理の判断処理(S12)において、感光ドラム51の駆動時間に基づいて感光ドラム51の状態を直接判断したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図10に示すように、判断処理(S12)の結果を、フラグA(n)を用いて間接的に判断してもよい。具体的に、
図10のフローチャートは、
図7のフローチャートと同様の処理(S11,S12,S14~S16)を有する他、新たなステップS61,S62を有している。
【0106】
図10に示す制御では、制御部100は、所定の1色について、ステップS12で感光ドラム51の状態が長期駆動状態であると判断すると(Yes)、所定の1色について長期駆動状態であることを示すフラグA(n)を1にする(S61)。ステップS61の後、または、ステップS12でNoと判断した場合、制御部100は、所定の1色に対応したフラグA(n)=1であるか否かを判断する(S62)。
【0107】
ステップS62においてフラグA(n)=1であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、階調設定処理を実行せずに、所定の1色に対応するやり残しフラグF(n)を1にする(S14)。また、ステップS62においてフラグA(n)=1でないと判断した場合には(No)、制御部100は、所定の1色について、階調設定処理を実行する(S15)。このような形態でも、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
前記実施形態では、長期駆動状態であるかの判断に、印字制御の連続実行時間(感光ドラム51の連続駆動時間)を用いたが、本発明はこれに限定されず、感光体の駆動時間の合計を用いてもよい。つまり、所定時間内の感光体の駆動時間が断続的に存在する場合には、これらの駆動時間の合計を、判断処理に用いるパラメータとしてもよい。なお、この場合、制御部は、所定時間内の感光体の駆動時間の合計が第2規定時間未満であることを条件として、階調設定処理を実行し、所定時間内の感光体の駆動時間の合計が第2規定時間未満でないことを条件として、階調設定処理を実行しない。
【0109】
なお、所定時間は、前記実施形態のような、判断処理の判断時から所定時間前の時点までの間の期間に限定されるものではない。例えば、所定時間は、以下の(1)~(6)に示すような期間に設定してもよい。
(1)現像器の交換の際に操作するカバーを閉鎖位置から開放位置へ移動を開始した時点から所定時間前の時点までの期間。つまり、カバーの開閉を検知する開閉センサによって、カバーが開放されたことを検知した時点から所定時間前の時点までの期間を、所定時間としてもよい。
(2)カバーを開放位置から閉鎖位置へ移動した時点から所定時間前の時点までの期間。つまり、カバーの開閉を検知する開閉センサによって、カバーが閉じられたことを検知した時点から所定時間前の時点までの期間を、所定時間としてもよい。
【0110】
(3)画像形成部への通電を開始した時点から所定時間前の時点までの期間。
(4)画像形成部への通電を終了した時点から所定時間前の時点までの期間。
(5)印字指令を受信した時点から所定時間前までの時点の期間。
(6)カバーが閉鎖位置にある状態で、メモリにアクセスした時点から所定時間前の時点までの期間。
【0111】
また、感光体の駆動時間は、感光体とともに駆動するその他の部材の駆動時間等に適宜置き換えてもよい。例えば、感光体の駆動時間は、現像ローラの駆動時間、現像バイアスの印加時間、帯電バイアスの印加時間、印字枚数などであってもよい。
【0112】
前記実施形態では、印字指令がある場合とない場合の両方で、再補正処理(S40,S41)を実行することとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、印字指令がある場合とない場合のいずれか一方で、再補正処理を実行してもよい。
【0113】
前記実施形態では、感光体として感光ドラム51を例示したが、本発明はこれに限定されず、感光体は、例えばベルト状の感光体であってもよい。
【0114】
前記実施形態では、検出部75で読み取るためのパッチを搬送ベルト73に形成したが、本発明はこれに限定されず、パッチは、例えば用紙などのその他の転写媒体に形成してもよく、検出部として転写媒体に形成されたパッチを検出する読取装置を用いてもよい。あるいは、感光体上にパッチを形成して検出してもよい。
【0115】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えばモノクロのプリンタ、複写機、複合機などに本発明を適用してもよい。
【0116】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 カラープリンタ
30 画像形成部
40 露光ヘッド
51 感光ドラム
75 検出部
100 制御部