(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20221018BHJP
F16H 57/03 20120101ALI20221018BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20221018BHJP
B60K 17/22 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/03
B60K17/06 K
B60K17/22 Z
(21)【出願番号】P 2018146628
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 慎一
(72)【発明者】
【氏名】荒川 嵩史
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-017462(JP,U)
【文献】特開2016-130569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 57/03
B60K 17/06
B60K 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のギヤを有し、内燃機関の動力が伝達される第1の回転軸と、
前記第1のギヤに噛み合って前記第1のギヤから動力が伝達される第2のギヤを有し、前記第1の回転軸と平行に設置される第2の回転軸と、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸を収容する動力伝達ケースとを備え、
前記動力伝達ケースが、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸を回転自在に支持する壁部と、前記壁部から前記第1の回転軸の軸方向の外方に膨出し、内部にオイル通路を有する筒状のオイル通路部とを備えた車両用動力伝達装置であって、
前記オイル通路
部は、前記第1のギヤと前記第2のギヤとの噛み合い部の接線力が生じる方向と略平行に延び
、第1のオイル通路を有する第1のオイル通路部と、前記第1のオイル通路部から前記噛み合い部よりも上方に延び、前記第1のオイル通路に連通する第2のオイル通路を有する第2のオイル通路部とを含んで構成されており、
前記第1のオイル通路部上と前記第2のオイル通路部上に、前記第1の回転軸によって駆動され、前記動力伝達ケースの底部に貯留されたオイルを前記オイル通路に流すオイルポンプが設置されており、
前記動力伝達ケースの前記壁部に、前記壁部から前記第1の回転軸の軸方向の外方に膨出し、前記オイルポンプを収容するポンプ収容部が設けられており、
前記動力伝達ケースは、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸が車両の前後方向に延びるように車両に設置されており、
前記第2の回転軸の後端部にリヤプロペラシャフトのスライディングヨークが連結されており、
前記動力伝達ケースは、前記壁部から前記第2の回転軸の軸方向の後方に突出し、前記スライディングヨークが挿入される筒状のヨーク支持部を有し、
前記第1のオイル通路部は、前記ヨーク支持部の下方に設けられており、
前記ヨーク支持部は、上下方向において第2のオイル通路部の延びる方向の下端と上端との間に設けられていることを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記第1のオイル通路部、前記第2のオイル通路部および前記ポンプ収容部は、前記壁部から前記ヨーク支持部の後端まで膨出していることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記ヨーク支持部の上方において前記壁部から後方に突出し、軸部材が収容される収容室が形成された箱型の軸部材収容部を有し、
前記オイル通路部は、前記第2のオイル通路に連通する第3のオイル通路を有し、前記第2のオイル通路部と前記ヨーク支持部とを連結する第3のオイル通路部を含んで構成されており、
前記第2のオイル通路部と前記軸部材収容部は、第1のリブによって連結されており、
前記ヨーク支持部と前記軸部材収容部は、第2のリブによって連結されており、
前記ポンプ収容部は、前記第1のオイル通路部と前記第2のオイル通路部とに連結されており、
前記ヨーク支持部は、前記第1のオイル通路部、前記ポンプ収容部、前記第2のオイル通路部、前記第1のリブおよび前記軸部材収容部によって囲まれていることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
前記第2の回転軸は、前記第2の回転軸と相対回転自在に設けられ、チェーンを介してフロントプロペラシャフトに連結されるスプロケットと、前記第2の回転軸と一体で回転するハブと、前記第2の回転軸の軸方向に移動自在で、かつ前記第2の回転軸と一体で回転自在に設けられ、前記第2の回転軸の軸方向の一方側に移動したときに前記ハブと前記スプロケットとを連結し、前記第2の回転軸の軸方向の他方側に移動したときに前記ハブと前記スプロケットとの連結を解除するスリーブとを備えており、
前記壁部は、前記第2の回転軸に対して前記第2のオイル通路部と反対側に位置して前記壁部から前記第2の回転軸の延びる方向に膨出し、前記チェーンを収容するチェーン収容部と、前記チェーン収容部に対して前記ヨーク支持部と反対側に位置して前記壁部から前記第2の回転軸の延びる方向に膨出し、前記フロントプロペラシャフトを回転自在に支持するフロントプロペラシャフト支持部とを有し、
前記チェーン収容部の上端は、上下方向で前記軸部材収容部と重なり、前記チェーン収容部の下端は、上下方向で前記第1のオイル通路部と重なり、前記チェーン収容部の車幅方向の側部は、車幅方向において前記フロントプロペラシャフト支持部に対向していることを特徴とする請求項3に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の回転軸を有するとともに、セカンダリプーリとプライマリプーリとにベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機において、騒音振動特性が悪化し易いカウンタ軸と車軸との間を通過するケース部分と、カウンタ軸の裏側のケース部分とに、ケースの剛性を改善するためのリブを兼ねた油路を形成したものが知られている(特許文献1参照)。これにより、ケースの重量とコストの削減に加えて、強度およびNV特性の低下を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のベルト式無段変速機にあっては、リブを兼ねた油路の配置において、プライマリプーリおよびセカンダリプーリとベルトとの巻き掛け反力の方向が考慮されていない。このため、ケースの剛性が低下することを十分に抑制できないおそれがあり、ケースの変形や振動を抑制できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、動力伝達ケースの重量や部品点数が増大することを抑制しつつ、動力伝達ケースの剛性を向上でき、動力伝達ケースの変形や振動を抑制できる車両用動力伝達装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1のギヤを有し、内燃機関の動力が伝達される第1の回転軸と、前記第1のギヤに噛み合って前記第1のギヤから動力が伝達される第2のギヤを有し、前記第1の回転軸と平行に設置される第2の回転軸と、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸を収容する動力伝達ケースとを備え、前記動力伝達ケースが、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸を回転自在に支持する壁部と、前記壁部から前記第1の回転軸の軸方向の外方に膨出し、内部にオイル通路を有する筒状のオイル通路部とを備えた車両用動力伝達装置であって、前記オイル通路部は、前記第1のギヤと前記第2のギヤとの噛み合い部の接線力が生じる方向と略平行に延び、第1のオイル通路を有する第1のオイル通路部と、前記第1のオイル通路部から前記噛み合い部よりも上方に延び、前記第1のオイル通路に連通する第2のオイル通路を有する第2のオイル通路部とを含んで構成されており、前記第1のオイル通路部上と前記第2のオイル通路部上に、前記第1の回転軸によって駆動され、前記動力伝達ケースの底部に貯留されたオイルを前記オイル通路に流すオイルポンプが設置されており、前記動力伝達ケースの前記壁部に、前記壁部から前記第1の回転軸の軸方向の外方に膨出し、前記オイルポンプを収容するポンプ収容部が設けられており、前記動力伝達ケースは、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸が車両の前後方向に延びるように車両に設置されており、前記第2の回転軸の後端部にリヤプロペラシャフトのスライディングヨークが連結されており、前記動力伝達ケースは、前記壁部から前記第2の回転軸の軸方向の後方に突出し、前記スライディングヨークが挿入される筒状のヨーク支持部を有し、前記第1のオイル通路部は、前記ヨーク支持部の下方に設けられており、前記ヨーク支持部は、上下方向において第2のオイル通路部の延びる方向の下端と上端との間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように上記の本発明によれば、動力伝達ケースの重量や部品点数が増大することを抑制しつつ、動力伝達ケースの剛性を向上でき、動力伝達ケースの変形や振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用動力伝達装置は、第1のギヤを有し、内燃機関の動力が伝達される第1の回転軸と、第1のギヤに噛み合って第1のギヤから動力が伝達される第2のギヤを有し、第1の回転軸と平行に設置される第2の回転軸と、第1の回転軸および第2の回転軸を収容する動力伝達ケースとを備え、動力伝達ケースが、第1の回転軸および第2の回転軸を回転自在に支持する壁部と、壁部から第1の回転軸の軸方向の外方に膨出し、内部にオイル通路を有する筒状のオイル通路部とを備えた車両用動力伝達装置であって、オイル通路部の少なくとも一部は、第1のギヤと第2のギヤとの噛み合い部の接線力が生じる方向と略平行に延びている。
これにより、動力伝達ケースの重量や部品点数が増大することを抑制しつつ、動力伝達ケースの剛性を向上でき、動力伝達ケースの変形や振動を抑制できる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置について、図面を用いて説明する。
図1から
図5は、本発明の一実施例に係る車両用動力伝達装置を示す図である。
図1から
図5において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用動力伝達装置を基準とし、前後方向に対して直交する方向が左右方向、車両用動力伝達装置の高さ方向が上下方向である。
【0011】
まず、構成を説明する。
図1、
図2において、車両1には車両用動力伝達装置(以下、単に動力伝達装置という)2が搭載されており、動力伝達装置2は、エンジン3に接続された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。
【0012】
動力伝達装置2は、動力伝達ケース4を備えており、動力伝達ケース4は、トルクコンバータハウジング(以下、単にトルコンハウジングという)5と、フロントケース6と、トランスファフロントケース7と、トランスファリヤケース8と、トランスファシフトケース9とを備えている。
【0013】
動力伝達ケース4のうち、トルコンハウジング5、フロントケース6およびトランスファフロントケース7は、変速機ケースを構成し、トランスファリヤケース8およびトランスファシフトケース9は、トランスファケースを構成する。
【0014】
トルコンハウジング5の前端部には図示しないボルトによって内燃機関としてのエンジン3が接続されている。エンジン3は、燃料の燃焼を行い、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0015】
トルコンハウジング5は、フロントケース6に連結されている。トルコンハウジング5の内部には図示しないトルクコンバータが収容されている。トルクコンバータは、エンジン3と入力軸11(
図4参照)との間でオイルを介して動力を伝達する流体継手を構成している。
【0016】
フロントケース6には図示しないクラッチが収容されており、クラッチは、エンジン3から入力軸11に動力を伝達し、また、動力の伝達を遮断する。
【0017】
フロントケース6にはトランスファフロントケース7が連結されており、フロントケース6およびトランスファフロントケース7には入力軸11(
図4参照)が収容されている。トランスファフロントケース7は、トランスファリヤケース8に連結されている。入力軸11よりも下方においてトランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8にはカウンタ軸12が設置されている(
図4参照)。
【0018】
入力軸11には図示しない複数の入力ギヤが設けられている。カウンタ軸12には図示しない複数のカウンタギヤが設けられており、同一の変速段を構成する入力ギヤは、同一の変速段を有するカウンタギヤに噛み合っている。
【0019】
トランスファリヤケース8の上部にはトランスファシフトケース9が連結されている。
図4において、トランスファリヤケース8には出力軸13が収容されている。入力軸11、カウンタ軸12および出力軸13は、前後方向に延びており、互いに平行に設置されている。
【0020】
すなわち、動力伝達ケース4は、入力軸11、カウンタ軸12および出力軸13が前後方向に延びるように車両1に設置されている。本実施例のカウンタ軸12は、本発明の第1の回転軸を構成し、出力軸13は、本発明の第2の回転軸を構成する。
【0021】
図4において、入力軸11の後端部は、出力軸13の前端部にニードル軸受10Aを介して相対回転自在に連結されている。
【0022】
トランスファフロントケース7には隔壁16が設けられており、隔壁16は、動力伝達ケース4の内部の空間をトランスファフロントケース7側の空間であるギヤ室20Aとトランスファリヤケース8側の空間であるトランスファ室20Bとに仕切っている。
【0023】
隔壁16には軸受支持部16Aが設けられており、軸受支持部16Aは、軸受17を介して出力軸13の前端部を回転自在に支持している。隔壁16は、軸受支持部16Aから出力軸13の径方向の外方に延びており、延びる方向の外端がトランスファフロントケース7の内周部に連結されている。
【0024】
トランスファリヤケース8には後壁18が設けられており、後壁18は、隔壁16と共にトランスファフロントケース7側のトランスファ室20Bを閉塞している。後壁18には後壁18からトランスファシフトケース9に向かって突出する中空部45が設けられている。本実施例の後壁18は、本発明の壁部を構成する。
【0025】
トランスファシフトケース9は、中空部45に連結されており、中空部45およびトランスファシフトケース9の内部にはトランスファギヤシフト室20Cが形成されている。
【0026】
図3、
図4において、トランスファシフトケース9および中空部45は、後述するスライディングヨーク支持部18Hの上方にいて、後壁18から後方に突出しており、箱型に形成されている。
【0027】
後壁18の上部には開口18aが形成されており、トランスファ室20Bは、開口18aを通してトランスファギヤシフト室20Cに連通されている。
【0028】
後壁18には軸受支持部18Aが設けられており、軸受支持部18Aは、軸受19を介して出力軸13の軸方向の中央部を回転自在に支持している。後壁18は、軸受支持部18Aから出力軸13の径方向の外方に延びており、延びる方向の外端がトランスファリヤケース8の内周部に連結されている。
【0029】
軸受支持部18Aは、後壁18から隔壁16に向かって入力軸11側に突出している。
図4、
図5において、出力軸13の後端部にはリヤプロペラシャフト41のスライディングヨーク31がスプライン嵌合されており、スライディングヨーク31は、出力軸13と一体で回転自在で、かつ、出力軸13の軸方向に移動自在となっている。
【0030】
リヤプロペラシャフト41は、図示しないリヤディファレンシャル装置に連結されており、リヤディファレンシャル装置は、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の後輪に連結されている。
【0031】
リヤプロペラシャフト41が前後方向に移動すると、スライディングヨーク31が出力軸13の軸方向に沿って前後に移動することにより、リヤプロペラシャフト41の前後方向への移動が許容される。
【0032】
後壁18には図示しない軸受支持部が設けられており、軸受支持部は、図示しない軸受を介してカウンタ軸12の後端部を回転自在に支持している。
【0033】
後壁18には筒状のスライディングヨーク支持部18Hが設けられている。スライディングヨーク支持部18Hは、後壁18から出力軸13の軸方向の外方(後方)に突出している。スライディングヨーク支持部18Hにはスライディングヨーク31が挿入されており、スライディングヨーク支持部18Hは、出力軸13の一部とスライディングヨーク31の一部とを覆っている。
【0034】
スライディングヨーク31とスライディングヨーク支持部18Hとの間にはメタルブッシュ39が設けられている。メタルブッシュ39は、スライディングヨーク31が出力軸13と一体で回転しながら出力軸13の軸方向に移動したときに、スライディングヨーク31を支持する。本実施例のスライディングヨーク支持部18Hは、本発明のヨーク支持部を構成する。
【0035】
トランスファリヤケース8にはダストケース36が設置されている。ダストケース36は、スライディングヨーク31とスライディングヨーク支持部18Hとを覆うようにしてスライディングヨーク31に取付けられており、スライディングヨーク31と一体で移動する。
【0036】
これにより、外部からスライディングヨーク支持部18Hとスライディングヨーク31との間の空間を通して動力伝達ケース4の内部に塵等が侵入することを防止できる。
【0037】
スライディングヨーク支持部18Hの後端の内周部とスライディングヨーク31との間にはオイルシール43が設けられている。オイルシール43は、スライディングヨーク支持部18Hとスライディングヨーク31との間を流れるオイルや、スライディングヨーク支持部18Hとメタルブッシュ39との間を流れるオイルが外部に漏出されることを防止している。
【0038】
カウンタ軸12にはファイナルドライブギヤ21が設けられており、ファイナルドライブギヤ21は、カウンタ軸12と一体で回転する。出力軸13の前部にはファイナルドリブンギヤ22が設けられており、ファイナルドリブンギヤ22は、出力軸13と一体で回転する。本実施例のファイナルドライブギヤ21は、本発明の第1のギヤを構成し、ファイナルドリブンギヤ22は、本発明の第2のギヤを構成する。
【0039】
入力軸11から所定の変速段を成立している入力ギヤおよびカウンタギヤを介してカウンタ軸12に動力が伝達されると、ファイナルドライブギヤ21からファイナルドリブンギヤ22に動力が伝達される。すなわち、エンジン3の動力は、入力軸11からカウンタ軸を介して出力軸13に伝達される。
【0040】
ファイナルドリブンギヤ22の後方において、出力軸13にはニードル軸受10Bを介してスプロケット24が相対回転自在に連結されている。スプロケット24にはチェーン25が巻き掛けられている(
図5参照)。チェーン25は、フロントプロペラシャフト40(
図2参照)のスプロケット40A(
図3参照)に巻き掛けられている。
【0041】
フロントプロペラシャフト40は、図示しないフロントディファレンシャル装置に連結されており、フロントディファレンシャル装置は、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の前輪に連結されている。
【0042】
スプロケット24の後方において出力軸13にはハブ26がスプライン嵌合されており、ハブ26は、出力軸13と一体で回転する。ハブ26の外周部には環状のスリーブ27がスプライン嵌合しており、スリーブ27は、ハブ26と一体で回転し、かつ、ハブ26に対して出力軸13の軸方向に移動自在となっている。
【0043】
スリーブ27は、出力軸13の軸方向の一方側である前側に移動したときにハブ26とスプロケット24とを連結し、出力軸13の軸方向の他方側で後側に移動したときにハブ26とスプロケット24との連結を解除する。
【0044】
スリーブ27にはシフトフォーク28が嵌合している。シフトフォーク28は、シフタ軸29に取付けられている。シフタ軸29は、一端部が隔壁16の上部に設けられた嵌合溝16Bに嵌合し、一端部から開口18aを通してトランスファギヤシフト室20Cに延び、トランスファシフトケース9に設けられた嵌合溝9Aに嵌合している。
【0045】
シフタ軸29は、コイルスプリング30によって後方のトランスファシフトケース9側に付勢されており、図示しない駆動用のモータによって出力軸13の軸方向に移動される。駆動用モータは、2輪駆動-4輪駆動切換用の操作レバーが操作されて操作レバーが2輪駆動側に切換えられると、停止される。モータが停止されると、コイルスプリング30の付勢力によってシフタ軸29が後方に移動し、シフトフォーク28によってスリーブ27が後方に移動する。
【0046】
このとき、スリーブ27がハブ26とスプロケット24とを連結していないので、出力軸13からリヤプロペラシャフト41のみに動力が伝達され、車両1が後輪駆動される。本実施例のシフタ軸29は、本発明の軸部材を構成する。
【0047】
出力軸13の軸方向において、ハブ26とスプロケット24との間にはシンクロナイザリング32が介装されている。シンクロナイザリング32は、スリーブ27が後方からスプロケット24側に移動したときに、スプロケット24の回転をスリーブ27の回転に同期させる。
【0048】
駆動用モータは、2輪-4輪切り換え用の操作レバーが操作されて操作レバーが4輪駆動側に切換えられると、シフタ軸29を前方に移動させる。シフタ軸29が前方に移動すると、シフトフォーク28によってスリーブ27が前方に移動する。
【0049】
このとき、スリーブ27がスプロケット24に連結されるので、出力軸13からリヤプロペラシャフト41に動力で伝達されるとともに、出力軸13からハブ26、スリーブ27、スプロケット24およびチェーン25を介してフロントプロペラシャフト40に動力が伝達され、車両1が前後輪で駆動される。
【0050】
本実施例のトランスファシフトケース9および中空部45は、シフタ軸収容部44を構成している。本実施例のシフタ軸収容部44は、本発明の軸部材収容部を構成し、トランスファギヤシフト室20Cは、本発明の収容室を構成する。
【0051】
出力軸13にはセンサリング33が取付けられており、センサリング33は、出力軸13と一体で回転する。
【0052】
センサリング33は、環状部33Aと、筒状部33Bとを有する。環状部33Aは、出力軸13から径方向外方に延びている。筒状部33Bは、環状部33Aの径方向の外端部に連絡されて環状部33Aの外端部から後壁18に向かって出力軸13の軸方向に延びている。
【0053】
筒状部33Bには図示しない複数の歯面が形成されており、歯面は、筒状部33Bの円周方向に一定の間隔で形成されている。
図2、
図5においてトランスファリヤケース8には回転数センサ34が設けられている。
【0054】
回転数センサ34は、図示しない検出素子を有する。検出素子は、歯面の間隔を検出し、歯面に応じたパルス信号を図示しない制御部に出力することにより、出力軸13の回転数を検出する。
【0055】
具体的には、制御部は、回転数センサ34から入力されたパルス信号を参照し、単位時間当たりのパルス数を算出することにより、出力軸13の回転数を検出する。センサリング33の筒状部33Bは、出力軸13の軸方向において軸受19と軸受支持部18Aとに重なるように出力軸13に設置されている。
【0056】
出力軸13の軸方向において、環状部33Aの径方向の内端は、軸受19とハブ26に接触している。環状部33Aは、出力軸13の軸方向において軸受19とハブ26に挟持されており、出力軸13の軸方向において軸受19とハブ26に位置決めされつつ、軸受19とハブ26に保持されている。
【0057】
動力伝達装置2の高さ方向において筒状部33Bとスリーブ27とは、同じ高さ位置に設置されている。換言すれば、出力軸13の径方向において筒状部33Bとスリーブ27とは、同じ位置に設置されている。
【0058】
これにより、スリーブ27が後方に過度に移動した場合に、筒状部33Bに衝突することにより、スリーブ27がハブ26から脱落することを防止できる。
【0059】
動力伝達ケース4の底部、すなわち、フロントケース6、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の底部(
図4ではトランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の底部のみを図示)にはオイルOが貯留されている。
【0060】
図4のオイルOの油面は、出力軸13が回転していないときのオイルの油面の高さを示しており、出力軸13の回転時にはオイルポンプ46によってオイルが吸い込まれるので、油面が低下する。
【0061】
図3において、後壁18にはポンプ収容部47が設けられている。ポンプ収容部47は、後壁18からカウンタ軸12の軸方向の外方(後方)に膨出しており、オイルポンプ46を回転自在に収容している。
【0062】
オイルポンプ46は、カウンタ軸12の後端部に嵌合してカウンタ軸12によって回転駆動される図示しないインナロータと、インナロータを取り囲むように径方向の外方に配置された図示しないアウタロータとを備えている。
【0063】
オイルポンプ46は、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されており、アウタロータに形成された内歯とインナロータに形成された外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間にオイルを収容する図示しない作動室が形成されている。
【0064】
オイルポンプ46において、エンジン3の動力が入力軸11からカウンタ軸12に伝達されることにより、インナロータとアウタロータとが一方向に回転すると、作動室の容積増加および容積減少が連続して発生することにより、オイルを吸入および吐出する。
【0065】
後壁18にはオイル通路部48が設けられており、オイル通路部48は、後壁18からカウンタ軸12の軸方向の外方(後方)に膨出しており、筒状に形成されている。ここで、後壁18からカウンタ軸12の軸方向の外方に膨出するとは、後壁18の平坦な面あるいは平坦に近い面を基準にし、平坦な面あるいは平坦に近い面からカウンタ軸12の軸方向の外方に膨出することを意味する。
【0066】
オイル通路部48は、第1のオイル通路部49、第2のオイル通路部50および第3のオイル通路部51を含んで構成されている。
【0067】
第1のオイル通路部49は、ファイナルドライブギヤ21とファイナルドリブンギヤ22の噛み合い部23(
図4参照)の接線力F1が生じる方向と略平行に延びている。具体的には、
図3に示すように、第1のオイル通路部49は、動力伝達ケース4の後面視において下端から右斜め上方に延びている。なお、第1のオイル通路部49は、接線力F1が生じる方向と平行に延びていてもよい。
【0068】
図4において、第1のオイル通路部49にはオイル導入溝49aが設けられており、オイル導入溝49aは、動力伝達ケース4の底部側に位置し、トランスファ室20Bに連通している。オイル導入溝49aの開口部49bには編み目状のオイルストレーナ35が設けられている。
【0069】
図3において、第1のオイル通路部49には第1のオイル通路49cが設けられており、第1のオイル通路49cは、第1のオイル通路部49の延びる方向に沿って延びている。
【0070】
第2のオイル通路部50は、第1のオイル通路部49から噛み合い部23よりも上方に延びている。第2のオイル通路部50には第2のオイル通路50aが設けられている。第2のオイル通路50aは、第2のオイル通路部50の延びる方向に沿って延び、第1のオイル通路49cに連通している。
【0071】
第3のオイル通路部51は、第2のオイル通路部50からスライディングヨーク支持部18Hに向かって左方に延び、第2のオイル通路部50とスライディングヨーク支持部18Hとを連結している。
【0072】
第3のオイル通路部51には第3のオイル通路51aが設けられている。第3のオイル通路51aは、第3のオイル通路部51の延びる方向に沿って延び、第2のオイル通路50aに連通している(
図5参照)。
【0073】
オイルポンプ46は、動力伝達ケース4の底部に貯留されているオイルOをオイル導入溝49aから第1のオイル通路49cに吸い込む(
図4のオイルO1参照)。オイル導入溝49aに吸い込まれるオイルO1は、オイルストレーナ35で濾過される。
【0074】
第1のオイル通路49cに吸い込まれたオイルO1は、オイルポンプ46によって第2のオイル通路50aを流れた後、第3のオイル通路51aに流れる。第3のオイル通路51aに流れるオイルO2は、スライディングヨーク支持部18Hとスライディングヨーク31の間に供給される(
図4参照)。
【0075】
スライディングヨーク支持部18Hとスライディングヨーク31の間に供給されたオイルO2は、メタルブッシュ39や軸受19に供給されることにより、メタルブッシュ39や軸受19が潤滑および冷却される。
【0076】
さらに、オイルO2は、軸受19から前方に流れ、ハブ26と出力軸13のスプライン嵌合部、ニードル軸受10Bに供給され、スプライン嵌合部やニードル軸受10Bが潤滑および冷却される。
【0077】
図5に示すように、オイル通路部50、51にはプラグ57A、57Bが取付けられており、オイル通路50a、51aは、プラグ57A、57Bによって閉じられている。これにより、オイル通路50a、51aから外部にオイルが漏出することはない。
【0078】
図3において、動力伝達装置2の後面視において、ポンプ収容部47は、第1のオイル通路部49および第2のオイル通路部50に重なっている。ポンプ収容部47と第1のオイル通路部49および第2のオイル通路部50とが重なる方向は、カウンタ軸12の軸方向である。すなわち、ポンプ収容部47は、オイル通路部48上に設置されており、第1のオイル通路部49と第2のオイル通路部50とに連結されている。
【0079】
ポンプ収容部47、第1のオイル通路部49および第2のオイル通路部50は、出力軸13に対し、噛み合い部23でカウンタ軸12と出力軸13の軸間が離れる方向に働く斥力F2が生じる方向に設置されている。すなわち、動力伝達装置2の後面視において、ポンプ収容部47、第1のオイル通路部49および第2のオイル通路部50は、出力軸13の右斜め下方に設置されている。
【0080】
図4、
図5において、第1のオイル通路部49、第2のオイル通路部50およびポンプ収容部47は、後壁18からスライディングヨーク支持部18Hの後端18rまで膨出している。
【0081】
ここで、出力軸13の延びる方向、すなわち、前後方向において第1のオイル通路部49、第2のオイル通路部50およびポンプ収容部47は、スライディングヨーク支持部18Hの後端18rと同じ位置まで延びているものに限定されるものではない。
【0082】
出力軸13の延びる方向において第1のオイル通路部49、第2のオイル通路部50およびポンプ収容部47は、スライディングヨーク支持部18Hの後端18rよりもやや前側またはやや後側に延びるものも含む。
【0083】
図3において、第1のオイル通路部49は、スライディングヨーク支持部18Hの下方に設けられており、スライディングヨーク支持部18Hは、上下方向において第2のオイル通路部50の延びる方向の下端50uと上端50tとの間に設けられている。
【0084】
第2のオイル通路部50とシフタ軸収容部44は、第1のリブ52によって連結されている。スライディングヨーク支持部18Hとシフタ軸収容部44は、第2のリブ53によって連結されている。
【0085】
第1のオイル通路部49、ポンプ収容部47、第2のオイル通路部50、第1のリブ52およびシフタ軸収容部44は、互いに連結されている。スライディングヨーク支持部18Hは、第1のオイル通路部49、ポンプ収容部47、第2のオイル通路部50、第1のリブ52およびシフタ軸収容部44によって囲まれている。
【0086】
図3において、後壁18は、チェーン収容部54を有する。チェーン収容部54は、出力軸13に対して第2のオイル通路部50と反対側、すなわち、出力軸13の左側に位置している。チェーン収容部54は、後壁18から出力軸13の延びる方向に膨出しており、チェーン25を収容している(
図5参照)。
【0087】
後壁18にはフロントプロペラシャフト支持部55が設けられている。フロントプロペラシャフト支持部55は、チェーン収容部54に対してスライディングヨーク支持部18Hと反対側、すなわち、チェーン収容部54の左側に位置している。
【0088】
フロントプロペラシャフト支持部55は、後壁18から出力軸13の延びる方向に膨出し、図示しない軸受を介してフロントプロペラシャフト40の後端部を回転自在に支持している。
【0089】
チェーン収容部54の上端54aは、上下方向でシフタ軸収容部44と重なっており、チェーン収容部54の下端54bは、上下方向で第1のオイル通路部49と重なっている。
【0090】
チェーン収容部54の車幅方向の側部54cは、車幅方向においてフロントプロペラシャフト支持部55に対向しており、フロントプロペラシャフト支持部55の近傍に位置している。なお、側部54cは、フロントプロペラシャフト支持部55に連結されてもよい。
【0091】
チェーン収容部54とフロントプロペラシャフト支持部55とは上側リブ56Aと下側リブ56Bとによって連結されている。上側リブ56Aおよび下側リブ56Bは、車幅方向に沿って延びており、それぞれの左端がフロントプロペラシャフト支持部55の上端と下端とに連結されている。
【0092】
以上、本実施例の動力伝達装置2によれば、動力伝達ケース4に、動力伝達ケース4の後壁18からの軸方向の外方に膨出し、内部にオイル通路49c、50a、51aを有する筒状のオイル通路部48が形成されている。
【0093】
さらに、オイル通路部48のうちの第1のオイル通路部49は、ファイナルドライブギヤ21とファイナルドリブンギヤ22との噛み合い部23の接線力F1が生じる方向と略平行に延びている。
【0094】
これにより、噛み合い部23の接線力F1に対してトランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の剛性を高くできる。具体的には、ファイナルドライブギヤ21とファイナルドリブンギヤ22との噛み合い部23によって発生する接線力F1によってカウンタ軸12と出力軸13とが撓む。
【0095】
カウンタ軸12と出力軸13が撓むと、カウンタ軸12と出力軸13を保持する隔壁16と後壁18とに接線力F1の方向の荷重が伝達される。このため、隔壁16と後壁18が変形および振動するおそれがある。
【0096】
これに対して、本実施例の動力伝達装置2は、第1のオイル通路部49を、ファイナルドライブギヤ21とファイナルドリブンギヤ22との噛み合い部23の接線力F1が生じる方向と略平行に延ばすことにより、接線力F1が作用する方向に対する後壁18の剛性を向上できる。このため、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8が変形したり、振動することを抑制できる。
【0097】
また、後壁18に既存の第1のオイル通路部49を利用することにより、後壁18の剛性を高くできるので、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の重量や部品点数が増大することを抑制できる。
【0098】
このように本実施例の動力伝達装置2は、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の重量や部品点数が増大することを抑制しつつ、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の剛性を向上でき、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8の変形や振動を抑制できる。
【0099】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、第1のオイル通路部49および第2のオイル通路部50上に、カウンタ軸12によって駆動され、トランスファリヤケース8の底部に貯留されたオイルをオイル通路49c、50a、51aに流すオイルポンプ46が設置されている。
【0100】
さらに、後壁18に、後壁18からカウンタ軸12の軸方向の外方に膨出し、オイルポンプ46を収容するポンプ収容部47が設けられている。
これに加えて、オイル通路部49は、噛み合い部23の接線力F1が生じる方向と略平行に延びており、第2のオイル通路部50は、第1のオイル通路部49から噛み合い部23よりも上方に延びている。
【0101】
これにより、後壁18に設けられたポンプ収容部47によって後壁18の剛性をより一層高くできる。これに加えて、第1のオイル通路部49および第2のオイル通路部50上にポンプ収容部47が設置されているので、第1のオイル通路部49および第2のオイル通路部50とポンプ収容部47の相互の剛性を高くでき、結果的に後壁18の剛性をより一層高くできる。
【0102】
また、第2のオイル通路部50は、第1のオイル通路部49から噛み合い部23よりも上方に延びているので、第2のオイル通路部50によって噛み合い部23の斥力F2に対する後壁18の剛性を高くできる。また、第2のオイル通路部50によって接線力F1に対する後壁18の剛性を高くできる。
【0103】
この結果、噛み合い部23によって発生する接線力F1および斥力F2に対してトランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8が変形したり、振動することをより効果的に抑制できる。
【0104】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、出力軸13の後端部にリヤプロペラシャフト41のスライディングヨーク31が連結されている。トランスファリヤケース8は、後壁18から出力軸13の軸方向の後方に突出し、スライディングヨーク31が挿入される筒状のスライディングヨーク支持部18Hを有する。
【0105】
第1のオイル通路部49、第2のオイル通路部50およびポンプ収容部47は、後壁18からスライディングヨーク支持部18Hの後端まで膨出しており、第1のオイル通路部49は、スライディングヨーク支持部18Hの下方に設けられている。
【0106】
これに加えて、スライディングヨーク支持部18Hは、上下方向において第2のオイル通路部50の延びる方向の下端50uと上端50tとの間に設けられている。
【0107】
このように、後壁18から後方に膨出する第1のオイル通路部49が、スライディングヨーク支持部18Hの下方に設けられているので、車両1の走行中に下方からスライディングヨーク支持部18Hに向かって移動する飛び石等を第1のオイル通路部49に衝突させることができる。このため、飛び石等がスライディングヨーク支持部18Hに衝突することを抑制できる。
【0108】
さらに、スライディングヨーク支持部18Hは、上下方向において第2のオイル通路部50の延びる方向の下端50uと上端50tとの間に設けられているので、車両1の走行中に車幅方向の側方からスライディングヨーク支持部18Hに向かって移動する飛び石等を第2のオイル通路部50に衝突させることができる。このため、飛び石等がスライディングヨーク支持部18Hに衝突することを抑制できる。
【0109】
このため、スライディングヨーク支持部18Hを飛び石等から保護することができる。本実施例の動力伝達装置2において、スライディングヨーク支持部18Hの後端の内周部とスライディングヨーク31との間にはオイルシール43が設けられている。
【0110】
このため、飛び石等によりオイルシール43が傷付くと、スライディングヨーク支持部18Hとスライディングヨーク31との間を流れるオイルや、スライディングヨーク支持部18Hとメタルブッシュ39との間を流れるオイルが外部に漏出するおそれがある。
【0111】
本実施例の動力伝達装置2は、スライディングヨーク支持部18Hを飛び石等から保護できるので、飛び石等によってオイルシール43が傷付くことを防止でき、オイルが外部に漏出することを防止できる。
【0112】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、スライディングヨーク支持部18Hの上方において後壁18から後方に突出し、シフタ軸29が収容されるトランスファギヤシフト室20Cを形成する箱型のシフタ軸収容部44を有する。
【0113】
第3のオイル通路部51は、第2のオイル通路50aに連通する第3のオイル通路50aを有し、第2のオイル通路部50とスライディングヨーク支持部18Hとを連結している。
【0114】
第2のオイル通路部50とシフタ軸収容部44は、第1のリブ52によって連結されており、スライディングヨーク支持部18Hとシフタ軸収容部44は、第2のリブ53によって連結されている。
【0115】
ポンプ収容部47は、第1のオイル通路部49と第2のオイル通路部50とに連結されている。これに加えて、スライディングヨーク支持部18Hは、第1のオイル通路部49、ポンプ収容部47、第2のオイル通路部50、第1のリブ52およびシフタ軸収容部44によって囲まれている。
【0116】
このように、剛性の高いシフタ軸収容部44とスライディングヨーク支持部18Hとを第2のリブ53によって連結することにより、シフタ軸収容部44とスライディングヨーク支持部18Hの間の後壁18の剛性を高くできる。
【0117】
また、第2のオイル通路部50とスライディングヨーク支持部18Hとを第3のオイル通路部51によって連結することにより、第2のオイル通路部50とスライディングヨーク支持部18Hの間の後壁18の剛性を高くできる。
【0118】
さらに、スライディングヨーク支持部18Hは、第1のオイル通路部49、ポンプ収容部47、第2のオイル通路部50、第1のリブ52およびシフタ軸収容部44によって囲まれているので、噛み合い部23の周辺の後壁18の剛性を高くできる。
【0119】
この結果、接線力F1および斥力F2に対する後壁18の剛性をより一層高くでき、このため、トランスファフロントケース7およびトランスファリヤケース8が変形したり、振動することをより効果的に抑制できる。
【0120】
また、本実施例の動力伝達装置2によれば、後壁18は、出力軸13に対して第2のオイル通路部50と反対側に位置して後壁18から出力軸13の延びる方向に膨出し、チェーン25を収容するチェーン収容部54を有する。
さらに、後壁18は、チェーン収容部54に対してスライディングヨーク31支持部と反対側に位置して後壁18から出力軸13の延びる方向に膨出し、フロントプロペラシャフト40を回転自在に支持するフロントプロペラシャフト支持部55を有する。
【0121】
チェーン収容部54の上端54aは、上下方向でシフタ軸収容部44と重なっており、チェーン収容部54の下端54bは、上下方向で第1のオイル通路部49と重なっている。これに加えて、チェーン収容部54の車幅方向の側部54cは、車幅方向においてフロントプロペラシャフト支持部55に対向している。
【0122】
これにより、噛み合い部23の接線力F1の作用する方向に第2のオイル通路部50とチェーン収容部54とを設置できる。このため、噛み合い部23の接線力F1に対する後壁18の剛性をより一層高くできる。
【0123】
また、チェーン収容部54の車幅方向の側部54cは、車幅方向においてフロントプロペラシャフト支持部55に対向しているので、噛み合い部23からフロントプロペラシャフト支持部55に向かって作用する接線力F1を、剛性の高いチェーン収容部54および剛性の高いフロントプロペラシャフト支持部55で受け止めることができる。
【0124】
この結果、噛み合い部23の接線力F1に対する後壁18の剛性をより一層高くでき、後壁18が変形および振動することをより効果的に抑制できる。
【0125】
また、出力軸13にはスプロケット24を介してチェーン25の巻き掛け反力が加わるが、後壁18の剛性を高くできるので、チェーン25の巻き掛け反力に対して後壁18が変形および振動することを抑制できる。
なお、本実施例の動力伝達装置2は、トランスファ機構を有するが、トランスファ機構を有していない動力伝達装置に適用可能である。
【0126】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0127】
1...車両、2...動力伝達装置(車両用動力伝達装置)、3...エンジン(内燃機関)、4...動力伝達ケース、12...カウンタ軸(第1の回転軸)、13...出力軸(第2の回転軸)、18...後壁(縦壁)、18H...スライディングヨーク支持部(ヨーク支持部)、20C...トランスファギヤシフト室(収容室)、21...ファイナルドライブギヤ(第1のギヤ)、22...ファイナルドリブンギヤ(第2のギヤ)、23...噛み合い部(第1のギヤと第2のギヤの噛み合い部)、24...スプロケット、25...チェーン、26...ハブ、27...スリーブ、29...シフタ軸(軸部材)、31...スライディングヨーク、40...フロントプロペラシャフト、41...リヤプロペラシャフト、44...シフタ軸収容部(軸部材収容室)、46...オイルポンプ、47...ポンプ収容部、48...オイル通路部、49...第1のオイル通路部、49c...第1のオイル通路、50...第2のオイル通路部、50a...第2のオイル通路、50t...上端(第2のオイル通路部の上端)、50u...下端(第2のオイル通路部の下端)、51...第3のオイル通路部、51a...第3のオイル通路、52...第1のリブ、53...第2のリブ、54...チェーン収容部、54a...上端(チェーン収容部の上端)、54b...下端(チェーン収容部の下端)、54c...側部(チェーン収容部の側部)、55...フロントプロペラシャフト支持部、F1...接線力