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特許7159695電子機器、プログラム及び電子機器の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電子機器、プログラム及び電子機器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20221018BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20221018BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20221018BHJP
【FI】
H04W52/02
H04W84/12
H04W88/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018158987
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020036110
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【弁理士】
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】上野 大知
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-066892(JP,A)
【文献】特開2013-131956(JP,A)
【文献】特開2014-036233(JP,A)
【文献】特開2008-244532(JP,A)
【文献】特開2002-271831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得する通信部と、
前記通信部の制御を行う処理部と、
を含み、
前記処理部は、
第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれる前記SSIDの名称と、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれる前記SSIDの名称との比較処理に基づいて、前記リスト情報の変化度合いを求め、
前記リスト情報の前記変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記処理部は、
前記第1リスト情報と前記第2リスト情報において一致する前記SSIDの名称の数に基づいて、前記リスト情報の前記変化度合いを求めることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項に記載の電子機器において、
前記処理部は、
前記リスト情報の前記変化度合いが前記閾値未満であると判定され、且つ、前記第1リスト情報に含まれる前記SSIDの名称の数と前記第2リスト情報に含まれる前記SSIDの名称の数の少なくとも一方が0でない場合、通常動作モードに設定する処理を行い、
前記第1リスト情報に含まれる前記SSIDの名称の数と前記第2リスト情報に含まれる前記SSIDの名称の数の両方が0である場合に、前記移行処理又は前記報知処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記通信部は、
前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行い、
前記処理部は、
前記報知処理を行う場合には、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を前記通信部に送信させる処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記通信部は、
前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行い、
前記処理部は、
前記リスト情報の前記変化度合いが前記閾値以上であると判定されたイベント、又は、前記第1リスト情報に含まれる前記SSIDの名称の数と前記第2リスト情報に含まれる前記SSIDの名称の数の両方が0であるイベントの発生回数又は発生時間が所与の条件を満たすと判定された場合に、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を前記通信部に送信させる前記報知処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得する通信部と、
前記通信部の制御を行う処理部と、
を含み、
前記通信部は、
前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行い、
前記処理部は、
前記リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行い、
前記報知処理を行う場合には、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を前記通信部に送信させる処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得する通信部と、
前記通信部の制御を行う処理部と、
を含み、
前記通信部は、
前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行い、
前記処理部は、
第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれる前記SSIDと、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれる前記SSIDとの比較処理に基づいて、前記リスト情報の変化度合いを判定し、
前記リスト情報の前記変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行い、
前記リスト情報の前記変化度合いが前記閾値以上であると判定されたイベント、又は、前記第1リスト情報に含まれる前記SSIDの数と前記第2リスト情報に含まれる前記SSIDの数の両方が0であるイベントの発生回数又は発生時間が所与の条件を満たすと判定された場合に、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を前記通信部に送信させる前記報知処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記ビーコン信号は、前記電子機器が移動中であることを表す情報、又は前記電子機器の周辺にアクセスポイントが存在しないことを表す情報を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記処理部は、
前記ビーコン信号の送信後、所与の待機時間内に前記省電力モードへの移行指示を受け付けた場合に、前記通信部の前記第1無線通信方式による通信動作をオフにする処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記処理部は、
前記移行処理を行う場合には、前記スキャン処理を実行する時間間隔を所与の値よりも長くする処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記処理部は、
前記移行処理を行う場合には、前記電子機器の表示部をオフする表示オフ処理、又は、動作クロックの周波数を低減する周波数低減処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子機器において、
印刷媒体に画像を印刷する印刷部を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子機器において、
画像センサーによって画像を読み取る画像読み取り部を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得する通信部の制御を行う処理部としてコンピューターを機能させ、
前記処理部は、
第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれる前記SSIDの名称と、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれる前記SSIDの名称との比較処理に基づいて、前記リスト情報の変化度合いを求める処理を行い、
前記リスト情報の前記変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得し、前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行う通信部の制御を行う処理部としてコンピューターを機能させ、
前記処理部は、
前記リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行い、
前記報知処理を行う場合には、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を前記通信部に送信させる処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項16】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得し、前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行う通信部の制御を行う処理部としてコンピューターを機能させ、
前記処理部は、
第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれる前記SSIDと、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれる前記SSIDとの比較処理に基づいて、前記リスト情報の変化度合いを判定し、
前記リスト情報の前記変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行い、
前記リスト情報の前記変化度合いが前記閾値以上であると判定されたイベント、又は、前記第1リスト情報に含まれる前記SSIDの数と前記第2リスト情報に含まれる前記SSIDの数の両方が0であるイベントの発生回数又は発生時間が所与の条件を満たすと判定された場合に、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を前記通信部に送信させる前記報知処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得し、
第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれる前記SSIDの名称と、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれる前記SSIDの名称との比較処理に基づいて、前記リスト情報の変化度合いを求め、
前記変化度合いが閾値以上であると判定した場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う、
ことを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項18】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得し、
前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行い、
前記リスト情報の変化度合いを判定し、
前記変化度合いが閾値以上であると判定した場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行い、
前記報知処理を行う場合には、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を送信する通信処理を行う、
ことを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項19】
スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得し、
前記スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、前記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行い、
第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれる前記SSIDと、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれる前記SSIDとの比較処理に基づいて、前記リスト情報の変化度合いを判定し、
前記変化度合いが閾値以上であると判定した場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行い、
前記リスト情報の前記変化度合いが前記閾値以上であると判定されたイベント、又は、前記第1リスト情報に含まれる前記SSIDの数と前記第2リスト情報に含まれる前記SSIDの数の両方が0であるイベントの発生回数又は発生時間が所与の条件を満たすと判定された場合に、前記省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を送信することにより前記報知処理を行う、
ことを特徴とする電子機器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、プログラム及び電子機器の制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信方式として無線LAN(Local Area Network)が広く知られている。無線LANにおいては、無線通信機器はSSID(Service Set Identifier)のスキャン処理を行い、SSIDのリスト情報を取得する。特許文献1には、アクセスポイントとの距離が離れた場合に、優先的にスキャン処理を行うことによってリスト情報を取得する無線通信機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-131956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキャン処理は短時間に連続して実行されるため多くの電力を消費する。それ以外の無線通信に係る処理もかなり電力を消費する。そのため無線通信機能を有するモバイル機器ではすぐにバッテリーが切れてしまう。そこで、無駄な電力消費を極力抑えてモバイル機器のバッテリーの持ち時間を伸ばすことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、スキャン処理によってSSID(Service Set Identifier)のリスト情報を取得する通信部と、前記通信部の制御を行う処理部と、を含み、前記処理部は、前記リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び前記省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】電子機器の構成例。
図2】電子機器を含むシステムの構成例。
図3】電子機器の移動に伴うアクセスポイントとの位置関係の変化を説明する図。
図4】リスト情報の変化度合いを説明する図。
図5】リスト情報の変化度合いを説明する図。
図6】リスト情報の変化度合いを説明する図。
図7】リスト情報の変化度合いを説明する図。
図8】省電力モードへの移行処理を説明するフローチャート。
図9】省電力モードへの移行を促す報知処理を説明するフローチャート。
図10】報知処理の詳細なシーケンスを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0008】
1.システム構成例
従来、無線LANに従った通信方式で無線通信を行う機器が広く知られている。無線LANとは、具体的にはIEEE 802.11に準拠した無線通信規格である。なお、以下では無線LANの具体例としてWi-Fi(登録商標)について説明する。
【0009】
Wi-Fi規格に準拠した通信を行う無線通信機器は、アクセスポイントと無線接続するためにスキャン処理を行う。スキャン処理とは、無線通信機器の周辺に存在するアクセスポイントを探索する処理である。より具体的には、スキャン処理とは、アクセスポイントが送信するWi-Fi規格に準拠したビーコン信号を受信する処理である。以下、Wi-Fi規格に準拠したビーコン信号をWi-Fiビーコンと表記する。ここでのWi-Fiビーコンは、SSIDをブロードキャストするためのビーコン信号である。なおWi-Fiビーコンは、アクセスポイントのMACアドレス(Media Access Control address)、チャンネル情報、ビーコンの送信間隔等の他の情報を含んでもよい。
【0010】
無線通信機器として、バッテリーにより駆動される機器が考えられる。バッテリーにより駆動される機器とは、具体的には、ユーザーが持ち運ぶことが想定されるモバイル機器である。モバイル機器は、高機能化が進むことによって、電力の消費量が従来に比べて大きくなっている。そのため、モバイル機器の更なる省電力化が求められている。特に上記スキャン処理は連続的に実行されるため、消費電力が大きい。そのため、モバイル機器では、スキャン処理に起因する消費電力を低減することが重要である。
【0011】
しかし特許文献1はSSIDのリスト情報を適切に生成することを目的としている。特許文献1等の従来手法では、バッテリー駆動であるモバイル機器に要求される省電力化が考慮されていない。
【0012】
本実施形態に係る電子機器100は、図1に示すように、通信部120と、処理部110を含む。通信部120は、スキャン処理によってSSIDのリスト情報を取得する。処理部110は、通信部120の制御を行う。処理部110とは、具体的にはプロセッサーやコントローラーである。通信部120とは、具体的には通信インターフェースや通信デバイスである。そして処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う。
【0013】
本実施形態の手法によれば、リスト情報の変化度合いが大きい場合、即ち電子機器100が移動していると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理が行われる。これにより、状況に応じた適切な省電力制御を実現することが可能になる。
【0014】
図2は、本実施形態に係る電子機器100を含むシステムの例である。電子機器100の通信部120は、周辺のアクセスポイント200と接続可能に構成される。アクセスポイント200との通信は、Wi-Fi規格に準拠した無線通信である。また通信部120は、端末装置300と通信してもよい。端末装置300との通信は種々の無線通信方式により実現可能であるが、例えばBluetooth(登録商標)規格に準拠した通信である。Bluetooth規格に準拠した通信は、例えばBluetooth Low Energyに準拠した通信であってもよい。以下、Bluetooth Low EnergyをBLEと表記する。
【0015】
SSIDのリスト情報とは、スキャン処理によって取得されたSSIDを、リスト形式で管理するための情報である。リスト情報の変化度合いとは、リスト情報に含まれるSSIDが、時間経過によりどれだけ変化したかを表す情報である。より具体的には、処理部110は、第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれるSSIDと、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれるSSIDとの比較処理に基づいて、リスト情報の変化度合いを求める。第2タイミングは、第1タイミングとは異なるタイミングである。狭義には、第1タイミングは所与のスキャン処理の実行タイミングに対応し、第2タイミングは第1タイミングの次にスキャン処理が実行されるタイミングである。後述する図3及び図4の例であれば、第1タイミングとは電子機器100がA1に示す位置においてスキャン処理を実行するタイミングであり、第1リスト情報はリストAに対応する。また、第2タイミングとは電子機器100がA2に示す位置においてスキャン処理を実行するタイミングであり、第2リスト情報はリストBに対応する。
【0016】
アクセスポイント200は、所与の位置に固定されることが想定される機器である。また、アクセスポイント200から送信されるWi-Fiビーコンが到達可能な範囲は、大きく変化することは想定されない。電子機器100が移動していなければ、当該電子機器100によって受信可能なWi-Fiビーコンは大きく変化することがなく、リスト情報の変化度合いは小さい。ここでの移動とは、ユーザーにより電子機器100が運搬されていることを表す。
【0017】
一方、それまで受信していた所与のアクセスポイント200からのWi-Fiビーコンが受信できなくなった場合、電子機器100とアクセスポイント200との位置関係が大きく変化したと考えられる。それまで受信していなかった所与のアクセスポイント200からのWi-Fiビーコンが受信できるようになった場合も同様である。即ち、リスト情報の変化度合いが大きい場合、電子機器100が移動していると考えられる。
【0018】
スマートフォン等の携帯端末装置は、移動中にも使用することが想定される。そのため、リスト情報の変化度合いが大きい場合に省電力制御が行われると、携帯端末装置の動作が妨げられるおそれがある。例えば携帯端末装置がスキャン処理の実行間隔を長くする省電力モードに移行した場合、アクセスポイント200に接続するまでの時間が長くなってしまう。ただし電子機器100には、移動中の使用が想定されない機器も多く考えられる。そのような電子機器100では、本実施形態の手法を適用することによって、ユーザーが使用することがない期間を対象として省電力制御を実行できるため、当該省電力制御によるデメリットを抑制できる。
【0019】
例えば本実施形態に係る電子機器100は、印刷媒体に画像を印刷する印刷部を含む。即ち、電子機器100は、プリンターであり、狭義にはユーザーが持ち運ぶことを前提とし、バッテリー駆動可能なモバイルプリンターである。印刷部は、印刷エンジンを含む。印刷エンジンとは、印刷媒体への画像の印刷を実行する機械的構成である。印刷エンジンは、例えば搬送機構やインクジェット方式の吐出ヘッド、当該吐出ヘッドを含むキャリッジの駆動機構等を含む。印刷エンジンは、搬送機構により搬送される印刷媒体に対して、吐出ヘッドからインクを吐出することで、印刷媒体に画像を印刷する。印刷媒体は、紙や布等、種々の媒体を利用できる。なお、印刷部及び印刷エンジンの具体的構成はここで例示したものに限られず、種々の変形実施が可能である。
【0020】
或いは本実施形態に係る電子機器100は、画像センサーによって画像を読み取る画像読み取り部を含む。即ち、電子機器100はスキャナーであり、狭義にはモバイルスキャナーであってもよい。画像読み取り部は、光源と画像センサーを含む。光源は、例えばLED(light emitting diode)や蛍光ランプなどにより構成される。画像センサーは、光源から射出された光が原稿等の読み取り対象で反射した反射光を受光し、受光した光を電気信号に変換して受光量に応じた値の画素信号を出力する。画像センサーは、例えばリニアイメージセンサーである。なお、画像読み取り部の具体的構成はここで例示したものに限られず、種々の変形実施が可能である。
【0021】
モバイルプリンターやモバイルスキャナーは、持ち運びが可能な機器ではあるが、移動中での使用は想定されない。なぜなら、印刷やスキャンを実行するためには、印刷媒体や原稿をセットする作業が必要になるし、印刷媒体等の搬送をスムーズに行うためには、機器を安定した場所に設置することが望ましいためである。つまりこれらの電子機器100は、目的地までの移動が完了した後、当該目的地において使用することが想定される。よって移動中であると判定された場合に省電力制御を行うことにより、ユーザーの利便性を損なうことなく、消費電力を低減することが可能である。
【0022】
また、本実施形態に係る電子機器100は、持ち運びが行われ、且つ移動中の使用が想定されない他の機器に拡張可能である。例えば電子機器100は、画像投影部を含むプロジェクターであり、狭義にはモバイルプロジェクターであってもよい。また、電子機器100は、複数の機能を有するモバイル複合機(MFP:Multifunction Peripheral)であることも妨げられない。
【0023】
なお、本実施形態の処理部110は、下記のハードウェアにより構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子で構成することができる。1又は複数の回路装置は例えばIC等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。
【0024】
また処理部110は、下記のプロセッサーにより実現されてもよい。本実施形態の電子機器100は、情報を記憶するメモリーと、メモリーに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサーと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサーは、ハードウェアを含む。プロセッサーは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサーを用いることが可能である。メモリーは、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーであってもよいし、レジスターであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリーはコンピューターにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサーにより実行されることで、電子機器100の各部の機能が処理として実現される。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサーのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0025】
2.リスト情報の変化度合いと省電力モード
次に本実施形態の処理を詳細に説明する。まずSSIDのリスト情報の例、及びリスト情報の変化度合いの判定手法について説明する。その後、省電力モードへの移行処理の例、省電力モードへの移行を促す報知処理の例についてそれぞれ説明する。
【0026】
2.1 電子機器の移動に伴うリスト情報の変化
図3は、電子機器100の移動と、電子機器100の周辺のアクセスポイント200との位置関係を説明する模式図である。ユーザーに運搬されることによって、電子機器100はA1に示す位置からA2に示す位置へ移動した場合を考える。
【0027】
電子機器100がA1の位置にある状態では、電子機器100は、SSIDが“AAA”であるアクセスポイント200との距離が近く、当該アクセスポイント200からのWi-Fiビーコンを受信可能である。また電子機器100は、SSIDが“BBB”~“HHH”である7つのアクセスポイント200との距離が遠く、当該7つのアクセスポイント200からのWi-Fiビーコンは受信できない。そのため電子機器100は、A1においてスキャン処理を行うことによって、図4のリストAに示したリスト情報を取得する。図4に示したように、リストAは“AAA”という1つのSSIDを含むリスト情報である。なお図4のnullとは、SSIDが見つかっていないことを意味する。
【0028】
電子機器100がA2の位置に移動した場合、電子機器100は、SSIDが“AAA”~“HHH”である8つのアクセスポイント200との距離が近く、当該8つのアクセスポイント200からのWi-Fiビーコンを受信可能である。そのため電子機器100は、A2においてスキャン処理を行うことによって、図4のリストBに示したリスト情報を取得する。図4に示したように、リストBは“AAA”~“HHH”という8つのSSIDを含むリスト情報である。
【0029】
図3及び図4からわかるように、電子機器100が移動した場合、リスト情報に含まれるSSIDは大きく変化する。よって本実施形態では、処理部110は、リスト情報の変化度合いに基づいて、電子機器100が移動しているか否かを判定する。具体的には処理部110は、リスト情報の変化度合いが所与の閾値以上と判定された場合に、電子機器100が移動していると判定する。
【0030】
リスト情報の変化度合いは、例えば以下のように求められる。リスト情報の変化度合いは、例えばリスト情報に含まれるSSIDの変化率である。処理部110は、リストAとリストBにおいて変化しているSSIDの数をXとする。図4の例であれば、リストの2番目~8番目は、それぞれnullから“BBB”~“HHH”に変化しているため、X=7である。また処理部110は、リストAに含まれるSSIDの数とリストBに含まれるSSIDの数のうちの大きい方をYとする。図4の例であれば、Y=8である。
【0031】
SSIDの変化度合いは、例えばX/Yで求められる。処理部110は、(X/Y)≧Thが満たされる場合に、リスト情報の変化度合いが閾値以上であり、電子機器100が移動していると判定する。Thは予め設定される閾値であり、例えば0.5程度の値である。なお閾値Thの具体的な数値は、種々の変形実施が可能である。図4の例では、(7/8)>0.5であるため、処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定する。
【0032】
図5図7は、リスト情報の変化を説明する具体例である。図5図7のそれぞれにおいて、リストAは所与のタイミングで取得されたリスト情報であり、リストBはリストAと異なるタイミングで取得されたリスト情報である。狭義には、リストA及びリストBは、連続する2回のスキャン処理によって取得された2つのリスト情報である。図5の例では、リストの5番目のSSIDが、“EEE”から“000”に変化しており、それ以外は共通である。つまりX=1、Y=8となり、(X/Y)≧Thが満たされないため、処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値未満と判定する。
【0033】
図6の例では、それぞれ1つのSSIDのみが探索され、当該SSIDが“AAA”から“BBB”に変化している。つまりX=1、Y=1となり、(X/Y)≧Thが満たされるため、処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定する。
【0034】
図7の例では、それぞれ8つのSSIDが探索され、リストの2番目~6番目のSSIDが、それぞれ“BBB”~“FFF”から“000”~“444”に変化している。つまりX=5、Y=8となり、(X/Y)≧Thが満たされるため、処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定する。
【0035】
ただし、変化度合いを求める手法は種々の変形実施が可能である。例えば処理部110は、リストAとリストBのいずれか一方のみに含まれるSSIDの数をX’とし、リストAとリストBに含まれるSSIDの総数を重複を除外してカウントした数をY’とし、X’/Y’を変化度合いとしてもよい。
【0036】
図4の例では、X’=7、Y’=8であるため、上記の例と同様である。図5の例では、“EEE”及び“000”がいずれか一方のみに含まれるSSIDとなるため、X’=2である。また、リストA及びリストBに含まれるSSIDは“AAA”~“HHH”と“000”であるため、Y’=9である。つまりこの場合の変化度合いは、(X’/Y’)=2/9となる。同様に、図6の場合X’=2、Y’=2である。図7の場合、X’=10、Y’=13である。処理部110は、(X’/Y’)≧Thが満たされる場合に、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定する。
【0037】
また、処理部110は、変化度合いが閾値以上か否かを判定できればよく、具体的な処理は上記の例に限定されない。例えば、処理部110は、リストAとリストBで一致するSSIDの数をZとし、Z/Yに基づいて変化度合いを判定してもよい。ここでのZはZ=Y-Xであり、例えば処理部110は、(Z/Y)<Thが満たされる場合に、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定する。また、リストAとリストBで一致するSSIDの数Zは、Z=Y’-X’も満たす。よって処理部110は、(Z/Y’)<Thが満たされる場合に、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定してもよい。
【0038】
広義には、処理部110は、評価関数E(X,Y,Z)に基づいて変化度合いを判定してもよい。評価関数Eは、例えば、Xが大きいほど大きく、Yが大きいほど小さく、Zが大きいほど小さくなる任意の関数である。処理部110は、予め所与の閾値Th2を設定し、E≧Th2が満たされる場合に、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定する。Th2は評価関数Eの形式に応じた値となり、例えば上記Thと同じでもよい。
【0039】
また評価関数Eにおいて、X,Y,Zのいずれか1つが省略されてもよい。Zを省略した場合、評価関数Eは、例えば上述したE=X/Yである。また、評価関数としてE(X’,Y’,Z)が用いられてもよい。評価関数Eは割合を求める関数に限定されず、例えばE(X,Z)=X-Z等の形式でもよい。また、上記評価関数においてYとZの両方を省略し、評価関数をXの関数E(X)としてもよいし、X’の関数E(X’)としてもよい。或いは、XとYの両方を省略し、評価関数をZの関数E(Z)としてもよい。
【0040】
また、以上では異なる2つのタイミングで取得された2つのリスト情報を比較することによって、リスト情報の変化度合いを求める例を説明した。しかし変化度合いの判定に用いるリスト情報は3つ以上に拡張してもよい。処理部110は、例えば3つ以上のリスト情報において、少なくとも1つのリスト情報において変化しているSSIDの数をXとする。また処理部110は、各リスト情報に含まれるSSIDの数のうち、最大値をYとする。X及びYが求められた後の処理は、リスト情報が2つの場合と同様である。また、変化度合いを求める処理に種々の変形実施が可能である点は、3つ以上のリスト情報を対象とした場合も同様である。
【0041】
2.2 省電力モードへの移行処理
図8は、リスト情報の変化度合いに基づいて、省電力モードへの移行処理を行う場合の処理を説明するフローチャートである。図8は、具体的には電子機器100におけるWi-Fi接続の制御を説明するフローチャートである。なお、簡略化のため、図面内ではアクセスポイント200をAPと表記する。
【0042】
この処理が開始されると、処理部110は、通信部120を制御してSSIDのスキャン処理を行い、リスト情報を取得する(S101)。S101で取得されたリスト情報をリストAとする。処理部110は、電子機器100の周辺に、接続対象として設定されているアクセスポイント200が存在するか否かを判定する(S102)。接続対象として設定されているアクセスポイント200とは、例えば過去に接続した履歴のあるアクセスポイント200である。S102の処理は、リストAに、接続履歴のあるSSIDが含まれているか否かを判定する処理である。周辺に接続対象として設定されているアクセスポイント200が存在する場合(S102でYes)、処理部110は、当該アクセスポイント200に接続する処理を行い(S103)、処理を終了する。
【0043】
周辺に接続対象として設定されているアクセスポイント200が存在しない場合(S102でNo)、処理部110は、スキャン処理の実行間隔として設定された時間だけ待機する(S104)。待機後に、処理部110は、再度、通信部120を制御してSSIDのスキャン処理を行い、リスト情報を取得する(S105)。S105で取得されたリスト情報をリストBとする。処理部110は、電子機器100の周辺に、接続対象として設定されているアクセスポイント200が存在するか否かを判定し(S106)、存在する場合(S106でYes)、当該アクセスポイント200に接続する処理を行う(S103)。
【0044】
ここでも周辺に接続対象として設定されているアクセスポイント200が存在しない場合(S106でNo)、処理部110は省電力モードに移行するか否かの判定を行う。まず処理部110は、リストAとリストBの両方で、発見したアクセスポイント200の数が0であるか否か、即ちリストに含まれるSSIDの数が0であるか否かを判定する(S107)。
【0045】
少なくとも1つのアクセスポイント200が発見されている場合(S107でNo)、処理部110は、リストAとリストBを比較し、リスト情報の変化度合いが閾値以上か否かを判定する(S108)。具体的な判定処理は上述した通りである。
【0046】
処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上の場合(S108でYes)、又は、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合(S107でYes)、省電力モードへの移行処理を行う(S109)。リスト情報の変化度合いが閾値以上の場合とは、上述したように電子機器100が移動しており、ユーザーによる電子機器100の使用が想定されない状況である。本実施形態の手法によれば、ユーザーの利便性を損なうことなく、適切に消費電力を低減することが可能になる。
【0047】
またリスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合とは、第1リスト情報に含まれるSSIDの数と第2リスト情報に含まれるSSIDの数の両方が0である場合に相当する。この場合、電子機器100の周辺にアクセスポイント200が存在しないと考えられる。リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合、スキャン処理を行う利点が少ないため、例えば後述するように、Wi-Fi機能を制限する省電力モードへの移行処理を行うことにより、効率的に消費電力を低減できる。ただし処理部110は、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合に、他の省電力モードへ移行してもよい。なぜなら、本実施形態の電子機器100として想定されるモバイル機器は、動作に用いる情報の外部からの受信、又は動作により生成した情報の外部への送信を行う蓋然性が高い。例えば、モバイルプリンターであれば、印刷データを携帯端末装置等から受信する。モバイルスキャナーであれば、スキャン処理により取得した画像データをPC等の端末装置へ送信する。モバイルプリンター等の機器は、表示部、操作部、記憶部等の機能が簡略化されているケースが多く、データの作成、蓄積、閲覧等を外部機器と連携して行う手法が有効なためである。即ち、外部機器との通信が難しい場合、本実施形態の電子機器100が積極的に動作する蓋然性が低く、省電力モードへ移行しても問題が生じにくい。そして当該省電力モードは、Wi-Fi機能を制限する動作モードに限定されるものではない。即ち本実施形態の手法によれば、積極的に電力を消費する必要性が低い場合に、適切に省電力モードへ移行することが可能になる。
【0048】
処理部110は、移行処理を行う場合には、スキャン処理を実行する時間間隔を所与の値よりも長くする処理を行う。本実施形態の電子機器100は、省電力モードと通常動作モードのいずれかで動作する。省電力モードとは相対的に消費電力が小さいモードであり、通常動作モードとは相対的に消費電力が大きいモードである。通常動作モードは、狭義には電子機器100が動作状態にあるモードであり、電子機器100がモバイルプリンターであれば印刷動作を実行するモードに対応し、電子機器100がモバイルスキャナーであれば画像読み取り動作を実行するモードに対応する。なお、省電力モードが、消費電力の異なる複数のモードを含んでもよい。或いは、通常動作モードが消費電力の異なる複数のモードを含んでもよい。ここでの所与の値とは、通常動作モードにおけるスキャン処理の実行間隔であり、省電力モードでは、通常動作モードに比べてスキャン処理を実行する時間間隔が長くなる。このようにすれば、省電力モードにおいてスキャン処理の実行頻度が低下するため、消費電力を適切に低減することが可能である。例えば通常動作モードでの時間間隔は数秒程度であり、省電力モードへの移行処理が行われた場合の時間間隔は、10秒~数十秒程度である。ただし、具体的な時間間隔は種々の変形実施が可能である。
【0049】
また処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値未満であると判定され、且つ、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0でない場合、通常動作モードに設定する処理を行う。即ち、S107でNoと判定され、さらにS108でもNoと判定された場合、処理部110は、スキャン処理を実行する時間間隔を通常の値に設定する処理を行う(S110)。このようにすれば、省電力モードと通常動作モードを適切に切り替えることが可能になる。なおリスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0でない場合とは、リストAに含まれるSSIDの数とリストBに含まれるSSIDの数の少なくとも一方が0でない場合に対応する。
【0050】
S109又はS110の処理後、処理部110は、設定されたスキャン処理の時間間隔だけ待機し(S111)、待機後はS101に戻りスキャン処理を実行する。
【0051】
なお、図8では、S111の後、S101に戻る例を説明した。この場合、リストAの取得とリストBの取得を再度行うため、2回のスキャン処理に対して1回、省電力モードへの移行処理を行うか否かの判定が行われる。ただし、本実施形態の処理はこれに限定されず、S111の後、S104に戻ってもよい。その場合、1つ前のS104の処理において取得されたリスト情報をリストAとし、最新のS104の処理において取得されたリスト情報をリストBとしてS107以降の処理を行う。換言すれば、1回のスキャン処理に対して1回、省電力モードへの移行処理を行うか否かの判定が行われてもよい。
【0052】
2.3 省電力モードへの移行を促す報知処理
図9は、リスト情報の変化度合いに基づいて、省電力モードへの移行を促す報知処理を行う場合の処理を説明するフローチャートである。図9のS201~S208の処理はS101~S108と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0053】
処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上の場合(S208でYes)、又は、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合(S207でYes)、省電力モードへの移行を促す報知処理を行う。このようにすれば、電子機器100が移動しており使用が想定されない場合、又は、周辺にアクセスポイント200が存在せずスキャン処理を行う利点が少ない場合に、適切に省電力モードへの移行を促すことが可能になる。
【0054】
また処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値未満であると判定され、且つ、前記リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0でない場合、通常動作モードに設定する処理を行う。即ち、S207でNoと判定され、さらにS208でもNoと判定された場合、処理部110は、報知処理を行わずにS201に戻る。
【0055】
電子機器100の通信部120は、スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行う。第1無線通信方式は、無線LANに準拠した通信方式であり、狭義にはWi-Fi規格に準拠した通信方式である。第2無線通信方式は、狭義にはBLE規格に準拠した通信方式である。そして処理部110は、報知処理を行う場合には、省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を通信部120に送信させる処理を行う。
【0056】
このようにすれば、第1無線通信方式とは異なる無線通信方式を用いて、電子機器100の周辺の機器に対してビーコン信号を送信することが可能になる。電子機器100は、スキャン処理によってアクセスポイント200との接続を試行している段階であるため、第1無線通信方式を用いて周辺の機器に情報を送信することは難しい。第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式を用いることによって、電子機器100が送信した情報が周辺の機器で受信される蓋然性を高くすることが可能になる。
【0057】
電子機器100の周辺には、ユーザーの使用する端末装置300が存在する蓋然性が高い。ここでのユーザーは、端末装置300のユーザーであり、且つ、電子機器100のユーザーである。端末装置300は、例えばスマートフォン等の携帯端末装置であるが、他の装置であってもよい。端末装置300が受信可能な態様で信号を送信することによって、電子機器100の省電力モードへの移行操作をユーザーに促すことが可能になる。特に、ビーコン信号を用いることによって、電子機器100と端末装置300との間で第2無線通信方式による接続が確立されていない場合であっても、端末装置300に適切に情報を送信することが可能になる。例えばBLEに準拠したビーコン信号であるアドバタイズパケットには、ユーザーが任意の情報を設定可能な領域が存在するため、当該領域を用いて電子機器100から端末装置300への情報送信が可能である。
【0058】
第2無線通信方式に準拠するビーコン信号は、電子機器100が移動中であることを表す情報、又は電子機器100の周辺にアクセスポイント200が存在しないことを表す情報を含む。ここでの周辺とは、電子機器100がWi-Fiビーコンを受信可能な距離を基準とした領域である。ただし、電子機器100の処理部110は、通信部120が受信したWi-Fiビーコンに基づいてスキャン処理を実行すればよく、「電子機器100の周辺」として厳密な範囲を設定して処理を行うものではない。なお、電子機器100が移動中であることを表す情報、又は電子機器100の周辺にアクセスポイント200が存在しないことを表す情報とは、端末装置300においてその旨が認識可能な情報であればよく、テキスト情報であってもよいし、予め設定された特定のデータパターンを含む情報であってもよいし、他の形式の情報であってもよい。このようにすれば、電子機器100が省電力モードに移行すべき状態であることを端末装置300側で認識できるため、端末装置300はユーザーに適切な報知を行うことが可能になる。
【0059】
なお電子機器100は、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定された場合、又は、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合に、毎回省電力モードへの移行を促す報知処理を行うことは妨げられない。ただし、通常動作モードにおけるスキャン処理は数秒間隔で行われるため、S207又はS208でYesの場合に必ず報知処理を行うと、報知が頻繁に実行され、ユーザーにとって煩わしいおそれがある。
【0060】
よって処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定されたイベント、又は、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0であるイベントの発生回数又は発生時間が所与の条件を満たすと判定された場合に、第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を通信部120に送信させる。このようにすれば、報知処理の実行頻度を抑制でき、ユーザーの利便性向上が可能になる。リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0であるイベントとは、第1リスト情報に含まれるSSIDの数と第2リスト情報に含まれるSSIDの数の両方が0であるイベントである。
【0061】
例えば処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定された場合(S208でYes)、又は、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合(S207でYes)、所与の変数iをインクリメントする(S209)。そして処理部110は、iがある定数jの倍数であるか否かを判定する(S210)。
【0062】
処理部110は、iがjの倍数である場合(S210でYes)、第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を通信部120に送信させる(S211)。また処理部110は、iがjの倍数でない場合(S210でNo)、報知処理を行わずにS201に戻る。ここでjは所与の整数である。この場合、j回のイベントの発生に対して1回だけ報知処理が行われるため、報知処理の実行頻度を抑制可能である。
【0063】
なお、ここではiを発生回数を表す変数としたが、例えばiをイベントが継続して発生している時間としてもよい。例えば処理部110は、イベントが2回連続して発生した場合に、1回目のイベント検出タイミングと2回目のイベント検出タイミングの間隔に相当する時間分だけ、iの値を増加させる処理を行う。この場合、iがjの倍数になるとは限らないため、例えば処理部110は、i<jの場合は報知処理を行わずにS201に戻り、i≧jとなった場合に報知処理を行うとともに、iを0に初期化する処理を行ってもよい。
【0064】
S211の報知処理後、処理部110は所与の待機時間だけ、ユーザーからの移行指示を受け付けるために待機する(S212)。そして処理部110は、ビーコン信号の送信後、所与の待機時間内に省電力モードへの移行指示を受け付けた場合に、通信部120の第1無線通信方式による通信動作をオフにする処理を行い(S213)、処理を終了する。このようにすれば、報知処理に基づく移行指示を受け付けた場合に適切に省電力モードに移行すること、及び省電力モードとして第1無線通信方式による通信をオフにするモードを用いることが可能になる。報知処理を行う場合、省電力モードへの移行指示はユーザー操作に基づく指示となるため、より消費電力の小さいモードへ移行したとしてもユーザーの利便性を損なうおそれが少ない。よってここでは、処理部110は、スキャン処理の実行の時間間隔を長くするのではなく、Wi-Fi通信自体をオフにする制御を行う。ただし処理部110は、移行指示に基づいて、スキャン処理の実行の時間間隔を長くする省電力モードへ移行する処理を行うことも妨げられない。
【0065】
また、所与の待機時間内に省電力モードへの移行指示を受け付けなかった場合(S213でNo)、処理部110は省電力モードへ移行せずに、S201に戻り処理を継続する。
【0066】
図10は、S211、S212における処理の詳細を説明するシーケンス図である。まず電子機器100の処理部110は、BLE規格に準拠したビーコン信号を送信する(S301)。S301の処理はS211に対応する。ビーコン信号を受信した端末装置300は、ユーザーを対象とした報知処理を行う(S302)。例えば端末装置300は、「現在、プリンターの周囲にアクセスポイントが存在しないか、プリンターが移動中です」というテキスト情報を、自身の表示部に表示する。また端末装置300は、「省電力化のために、プリンターのWi-Fi機能をオフにすることをおすすめします」という直接的に省電力モードへの移行を促すテキスト情報を表示してもよい。なお、S302における報知情報はテキストの表示に限定されず、アイコンや画像を表示する処理であってもよいし、スピーカーによる音の発生であってもよいし、LED等の発光部の発光であってもよい。
【0067】
所与の待機時間内にユーザーによる操作が行われた場合の処理がS303である。具体的には、ユーザーはS302の報知に基づいて、電子機器100に対して操作を実行する(S3031)。電子機器100の処理部110は、ユーザー操作に基づいて、Wi-Fi機能をオフにする制御を行う(S3032)。
【0068】
なお、S3031のユーザー操作は、例えば電子機器100の操作部の操作である。またユーザー操作は、Wi-Fi機能のオン/オフボタンを押下するような、直接的にWi-Fi機能のオフを指示する操作であってもよい。或いは、ユーザー操作は、省電力モードへの移行を指示する操作であり、処理部110が当該操作に基づいて、具体的な省電力モードの内容を決定する処理を行ってもよい。またユーザー操作は、端末装置300の操作部の操作であってもよい。この場合、端末装置300はユーザー操作に基づいて、電子機器100の通信部120に、省電力モードへの移行を指示する情報を送信する。この際の通信は、第2無線通信方式を用いることが想定される。端末装置300は、BLEのビーコン信号を用いて省電力モードへの移行指示を送信してもよい。或いは端末装置300は、S301で受信したビーコン信号に対して応答を行ってBLE接続を確立し、当該確立した接続を用いて省電力モードへの移行指示を送信してもよい。また、端末装置300から電子機器100への省電力モードへの移行指示は、第1無線通信方式及び第2無線通信方式のいずれとも異なる第3無線通信方式が用いられることも妨げられない。
【0069】
所与の待機時間内にユーザーによる操作が行われなかった場合の処理がS304である。この場合、ユーザー操作も行われず、電子機器100及び端末装置300も特に処理を実行しない。S303又はS304の処理後、電子機器100の処理部110は、図9のS213に示す処理を行う。S303の処理が行われた場合、処理部110は、S213でYesと判定し、処理を終了する。S304の処理が行われた場合、処理部110は、S213でNoと判定し、S201に戻って処理を継続する。
【0070】
3.変形例
以下、いくつかの変形例について説明する。
【0071】
3.1 省電力モードの変形例
以上では電子機器100の省電力モードとして、スキャン処理を実行する時間間隔が通常動作モードよりも長いモード、及び、Wi-Fi機能をオフにするモードを説明した。ただし本実施形態の省電力モードはこれに限定されない。
【0072】
例えば処理部110は、省電力モードへの移行処理を行う場合には、電子機器100の表示部をオフする表示オフ処理を行ってもよい。電子機器100の表示部は、各種情報をユーザーに表示するLCD(liquid crystal display)や、OLEDディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)等の種々のディスプレイである。なお表示部は、例えばタッチパネルとして操作部と一体的に構成されてもよい。これらのディスプレイは発光部の発光等を行う必要があり、消費電力が大きい。また、移動中や周辺にアクセスポイント200が存在しない状況においては、表示部で表示すべき情報は多くないと考えられる。よって省電力モードへの移行処理として表示オフ処理を行うことにより、適切に消費電力を低減できる。また、省電力モードへの移行を促す報知処理として、表示オフ処理を促す報知を行ってもよい。
【0073】
或いは処理部110は、省電力モードへの移行処理を行う場合には、動作クロックの周波数を低減する周波数低減処理を行ってもよい。ここでの動作クロックとは、例えば処理部110であるプロセッサーの動作クロックである。即ち処理部110は省電力モードへの移行処理として、自身の動作クロックを通常動作モードでの周波数に比べて低くする処理を行う。この場合も、適切に消費電力を低減することが可能である。
【0074】
なお、ここでの周波数低減処理は、一部のプロセッサーの動作を停止させる処理を含んでもよい。例えば、処理部110がメインCPUやサブCPU等の複数のプロセッサーを含む場合において、処理部110はそのうちの一部のCPUを停止させる処理を周波数低減処理として実行する。
【0075】
本実施形態の手法は、リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定されたことが、省電力モードへの移行処理、省電力モードへの移行を促す報知処理のトリガーとなればよく、省電力モードは上記に限定されず種々の態様により実現できる。
【0076】
3.2 移行処理と報知処理の組み合わせ
また以上では、省電力モードへの移行処理を行う例、及び省電力モードへの移行を促す報知処理を行う例をそれぞれ説明した。これらの処理は、いずれか一方を行うものに限定されない。
【0077】
例えば省電力モードは、第1省電力モードと、第1省電力モードとは異なる第2省電力モードを含む。そして処理部110は、リスト情報の変化度合いが閾値以上と判定された場合、又は、リスト情報に含まれるSSIDの数が連続して0である場合、第1省電力モードへの移行処理を行い、且つ、第2省電力モードへの移行を促す報知処理を行う。第1省電力モードは、例えばスキャン処理を実行する時間間隔を通常動作モードに比べて長くする動作モードであり、第2省電力モードはWi-Fi機能をオフにする動作モードである。
【0078】
このようにすれば、電子機器100は、自動的に省電力モードへの移行を実行しつつ、ユーザーに対してさらなる省電力モードへの移行を促すことが可能になる。より具体的には、ユーザーによる明示の操作がない場合であっても、ある程度の消費電力の低減を実現すること、及び、ユーザーによる指示を受け付けた場合に、より消費電力の低減効果を高くすることが可能になる。
【0079】
なお、第1省電力モードは消費電力の低減量が小さく通常動作モードへの復帰が容易なモードであり、第2省電力モードは消費電力の低減量が大きく通常動作モードへの復帰に時間を要するモードであってもよい。このようにすれば、ユーザーからの移行指示の有無に応じて、適切な省電力モードを用いることが可能になる。
【0080】
ただし、第1省電力モードと第2省電力モードは異なる動作モードであればよく、具体的な内容は種々の変形実施が可能である。例えば、第1省電力モードがWi-Fi機能を制限する動作モードであり、第2省電力モードが表示部の機能を制限する動作モードであってもよい。
【0081】
3.3 プログラム等
また、本実施形態の電子機器100の各部は、プロセッサー上で動作するプログラムのモジュールとして実現されてもよい。例えば、プログラムは、通信インターフェースを用いたスキャン処理によってSSIDのリスト情報を取得する通信制御モジュールと、リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う処理モジュールと、を含む。
【0082】
また、本実施形態の電子機器100の各部が行う処理を実現するプログラムは、例えばコンピューターにより読み取り可能な媒体である情報記憶媒体に格納できる。情報記憶媒体は、例えば光ディスク、メモリーカード、HDD(Hard Disk Drive)、或いは半導体メモリーなどにより実現できる。半導体メモリーは例えばROM(Read Only Memory)である。処理部110は、情報記憶媒体に格納されるプログラムとデータに基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体には、本実施形態の電子機器100の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムが記憶される。コンピューターは、入力装置、及び処理部、記憶部、出力部を備える装置である。プログラムは、各部の処理をコンピューターに実行させるためのプログラムである。プログラムは、情報記憶媒体に記録される。
【0083】
また本実施形態の手法は、図8図9に示した工程の一部又は全部を実行する電子機器100の制御方法、電子機器100の作動方法に適用できる。本実施形態に係る制御方法は、スキャン処理によってSSIDのリスト情報を取得し、リスト情報の変化度合いを判定し、変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う。
【0084】
本実施形態の電子機器は、スキャン処理によってSSIDのリスト情報を取得する通信部と、通信部の制御を行う処理部と、を含む。処理部は、リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う。
【0085】
本実施形態の手法によれば、リスト情報の変化度合いが大きい場合、即ち電子機器が運搬されている蓋然性が高い場合に、移行処理及び報知処理の少なくとも一方を実行できる。これにより、ユーザーの利便性を損なわずに、適切に電子機器の消費電力を低減することが可能になる。
【0086】
また本実施形態では、処理部は、第1タイミングにおいて取得された第1リスト情報に含まれるSSIDと、第2タイミングにおいて取得された第2リスト情報に含まれるSSIDとの比較処理に基づいて、リスト情報の変化度合いを求めてもよい。
【0087】
このようにすれば、取得タイミングの異なる複数のリスト情報の比較処理によって、リスト情報の変化度合いを求めることが可能になる。
【0088】
また本実施形態では、処理部は、リスト情報の変化度合いが閾値未満であると判定され、且つ、第1リスト情報に含まれるSSIDの数と第2リスト情報に含まれるSSIDの数の少なくとも一方が0でない場合、通常動作モードに設定する処理を行う。また処理部は、第1リスト情報に含まれるSSIDの数と第2リスト情報に含まれるSSIDの数の両方が0である場合に、移行処理又は報知処理を行う。
【0089】
このようにすれば、リスト情報の変化度合いが大きいか否か、及び電子機器の周辺にアクセスポイントが存在するか否かの両方の観点に基づいて、電子機器の動作モードを決定することが可能になる。
【0090】
また本実施形態では、処理部は、移行処理を行う場合には、スキャン処理を実行する時間間隔を所与の値よりも長くする処理を行ってもよい。
【0091】
このようにすれば、スキャン処理に起因する消費電力を適切に低減することが可能になる。
【0092】
また本実施形態では、処理部は、移行処理を行う場合には、電子機器の表示部をオフする表示オフ処理、又は、動作クロックの周波数を低減する周波数低減処理を行ってもよい。
【0093】
このようにすれば、表示部の制御又は動作クロックの制御によって、電子機器の消費電力を低減することが可能になる。
【0094】
また本実施形態では、通信部は、スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行う。そして処理部は、報知処理を行う場合には、省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を通信部に送信させる処理を行ってもよい。
【0095】
このようにすれば、スキャン処理に用いられる無線通信方式とは異なる無線通信方式を用いて、報知処理を実行することが可能になる。そのため、例えば周辺の端末装置が受信可能である蓋然性が高い態様を用いて、情報を送信すること等が可能になる。
【0096】
また本実施形態では、通信部は、スキャン処理に用いられる第1無線通信方式による通信と、第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式による通信を行う。そして処理部は、リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定されたイベント、又は、第1リスト情報に含まれるSSIDの数と第2リスト情報に含まれるSSIDの数の両方が0であるイベントの発生回数又は発生時間が所与の条件を満たすと判定された場合に、省電力モードへの移行を促す情報を含む第2無線通信方式に準拠するビーコン信号を通信部に送信させる報知処理を行う。
【0097】
このようにすれば、報知処理の実行頻度が抑えられるため、ユーザーの利便性を損ねることを抑制できる。
【0098】
また本実施形態では、ビーコン信号は、電子機器が移動中であることを表す情報、又は電子機器の周辺にアクセスポイントが存在しないことを表す情報を含んでもよい。
【0099】
このようにすれば、電子機器が省電力モードへ移行すべき状態にあることを、ビーコン信号を受信する機器に適切に通知することが可能になる。
【0100】
また本実施形態では、処理部は、ビーコン信号の送信後、所与の待機時間内に省電力モードへの移行指示を受け付けた場合に、通信部の第1無線通信方式による通信動作をオフにする処理を行ってもよい。
【0101】
このようにすれば、ビーコン信号の送信をトリガーとして実行された移行指示を適切に受信すること、及び、通信部による消費電力を低減する省電力モードへ移行することが可能になる。
【0102】
また本実施形態では、電子機器は印刷媒体に画像を印刷する印刷部を含んでもよい。
【0103】
このようにすれば、印刷装置である電子機器の消費電力を適切に低減することが可能になる。
【0104】
また本実施形態では、電子機器は画像センサーによって画像を読み取る画像読み取り部を含んでもよい。
【0105】
このようにすれば、スキャナーである電子機器の消費電力を適切に低減することが可能になる。
【0106】
また本実施形態のプログラムは、スキャン処理によってSSIDのリスト情報を取得する通信部の制御を行う処理部としてコンピューターを機能させる。そして処理部は、リスト情報の変化度合いが閾値以上であると判定された場合に、省電力モードへの移行処理及び省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う。
【0107】
また本実施形態の電子機器の制御方法は、スキャン処理によってSSIDのリスト情報を取得し、リスト情報の変化度合いを判定し、変化度合いが閾値以上であると判定した場合に、省電力モードへの移行処理及び省電力モードへの移行を促す報知処理の少なくとも一方の処理を行う。
【0108】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また電子機器、端末装置等の構成・動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0109】
100…電子機器、110…処理部、120…通信部、200…アクセスポイント、300…端末装置
図1
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