IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エンジンの吸気装置 図1
  • 特許-エンジンの吸気装置 図2
  • 特許-エンジンの吸気装置 図3
  • 特許-エンジンの吸気装置 図4
  • 特許-エンジンの吸気装置 図5
  • 特許-エンジンの吸気装置 図6
  • 特許-エンジンの吸気装置 図7
  • 特許-エンジンの吸気装置 図8
  • 特許-エンジンの吸気装置 図9
  • 特許-エンジンの吸気装置 図10
  • 特許-エンジンの吸気装置 図11
  • 特許-エンジンの吸気装置 図12
  • 特許-エンジンの吸気装置 図13
  • 特許-エンジンの吸気装置 図14
  • 特許-エンジンの吸気装置 図15
  • 特許-エンジンの吸気装置 図16
  • 特許-エンジンの吸気装置 図17
  • 特許-エンジンの吸気装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】エンジンの吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
F02M35/10 311D
F02M35/10 101K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018169791
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020041492
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 臣
(72)【発明者】
【氏名】菅崎 健二
(72)【発明者】
【氏名】中川 博勝
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-144282(JP,A)
【文献】特開2004-190671(JP,A)
【文献】特開平11-141415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
B60K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気をエンジンの燃焼室に導入する吸気ダクトを備えるエンジンの吸気装置であって、
上記吸気ダクトは、
エンジンルームの外側の空気を導入する外気導入ダクト部と、該エンジンルームの内部の空気を導入する内気導入ダクト部とを備え、
上記内気導入ダクト部の上流端には、上方を向いて開口し、上記エンジンルームの内部の空気を取り入れる内気取入口を有し、
上記内気取入口は、少なくとも一部が上記外気導入ダクト部で上方から覆われており、
上記外気導入ダクト部は、
上記内気取入口の上方を横切って該内気取入口の一部を上方から覆うダクト壁と、
上記ダクト壁から突出し、上記内気取入口のうち該ダクト壁で覆われていない部分を上方から覆う突起部とを備えることを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記吸気ダクトは、
上記外気導入ダクト部を通じて上記エンジンルームの外側の空気を上記エンジンの燃焼室に導入する外気導入状態と、
上記内気導入ダクト部を通じて上記エンジンルームの内部の空気を上記エンジンの燃焼室に導入する内気導入状態とを、切り換える通路切換機構が内部に備えられていることを特徴とするエンジンの吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの吸気装置に関して種々の開示がされている。例えば、特許文献1では、内燃機関の高温部分周辺のホットエアを導入する第2導入通路を備えた吸気装置が開示されている。具体的には、特許文献1では、エアクリーナに外気導入用の第1エアインレットとエキゾーストマニホールド近傍のホットエア導入用の第2エアインレットとを接続すると共に、第1エアインレットをエアクリーナに連通させる状態と第2エアインレットをエアクリーナに連通させる状態とを切り換える吸気切り換え機構を備えさせる。高度センサによって車両が走行している標高を認識し、この標高が高い場合には第2エアインレットからホットエアを導入し気筒内での吸気温度を十分に上昇させて燃焼不良を回避する。これにより、標高の高い高所であっても内燃機関を安定的に運転させることが可能な吸気装置及びその吸気装置を備えた内燃機関を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-170251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、ホットエア導入用の第2エアインレットは、その空気流れの上流側が、エキゾーストマニホールド近傍で開放されている。そして、該第2エアインレットのホットエア取込口は、エキゾーストマニホールドに向けて(すなわち、水平方向に向けて)、開口していることが示唆されている(特に図1参照)。
【0005】
ところで、エンジンルーム内には、車両の走行によって、タイヤで巻上げられた水や小石等の異物が侵入する。そして、該異物は、横方向や下方向から、エンジンルーム内に侵入することが多い。したがって、特許文献1における吸気装置の構成では、該異物がホットエア取込口から吸気装置の内部に侵入してしまうおそれがある。特に、吸気装置の内部に切換弁等の通路切換機構が設けられている場合は、該異物によって通路切換機構が破損してしまうおそれがある。
【0006】
つまり、ホットエア取込口に異物が侵入することを防止するには、ホットエア取込口は、上向きに開口していることが望ましい。
【0007】
しかし、吸気装置を、ホットエア取込口が上向きに開口する構成とした場合、組立時やメンテナンス時等に、ボルト等の異物を落下させてしまい、当該上向きに開口したホットエア取込口から、該異物を吸気装置の内部に侵入させてしまうおそれがある。この場合も、吸気装置の内部に切換弁等の通路切換機構が設けられていると、通路切換機構が破損してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンルームの外側の空気を導入する外気導入ダクト部と、エンジンルームの内部の空気を導入する内気導入ダクト部とを有する吸気ダクトを備えるエンジンの吸気装置に関して、内気導入ダクト部の内気取入口に異物が入ることを避けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内気導入ダクト部の内気取入口は、上方を向いて開口し、少なくとも一部が外気導入ダクト部で上方から覆われるようにする。
【0010】
ここに開示するエンジンの吸気装置は、
空気をエンジンの燃焼室に導入する吸気ダクトを備えるエンジンの吸気装置であって、
上記吸気ダクトは、
エンジンルームの外側の空気を導入する外気導入ダクト部と、該エンジンルームの内部の空気を導入する内気導入ダクト部とを備え、
上記内気導入ダクト部の上流端には、上方を向いて開口し、上記エンジンルームの内部の空気を取り入れる内気取入口を有し、
上記内気取入口は、少なくとも一部が上記外気導入ダクト部で上方から覆われていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、内気導入ダクト部の内気取入口は、上向きに開口しているから、エンジンルームに横方向や下方から侵入する異物は内気取入口には入りにくくなる。一方、内気取入口は、上向きに開口しているものの、外気導入ダクト部が内気取入口を上方から覆っているので、メンテナンス等において、ボルト等の異物は、外気導入ダクト部によって遮られるから、内気取入口に入ることが避けられる。
【0012】
一実施形態では、上記外気導入ダクト部は、上記内気取入口の上方を横切って該内気取入口の一部を上方から覆うダクト壁と、該ダクト壁から突出し、該内気取入口のうち該ダクト壁で覆われていない部分を上方から覆う突起部とを備えることを特徴とする。
【0013】
これによれば、内気取入口は、ダクト壁のみならず、さらに、突起部によって上方から覆われているので、メンテナンス等において、ボルト等の異物は、ダクト壁及び突起部によって遮られるから、内気取入口に入ることがさらに避けられる。
【0014】
一実施形態では、上記吸気ダクトは、上記外気導入ダクト部を通じて上記エンジンルームの外側の空気を上記エンジンの燃焼室に導入する外気導入状態と、上記内気導入ダクト部を通じて上記エンジンルームの内部の空気を該エンジンの燃焼室に導入する内気導入状態とを、切り換える通路切換機構が内部に備えられていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、吸気ダクトの内部に通路切換機構が備えられている。仮に、内気取入口から吸気ダクトの内部に異物が侵入した場合、通路切換機構は、破損してしまうおそれがある。ここで、この実施形態では、内気取入口を上方から外気導入ダクト部で覆い、内気取入口に異物が入ることを避けることで、吸気ダクトの内部に異物が侵入し、該吸気ダクトの内部にある通路切換機構が破損することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内気導入ダクト部の内気取入口は、上方を向いて開口し、外気導入ダクト部で上方から覆われるようにしたから、内気取入口に異物が入ることが避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る吸気装置を備えたエンジンルームの内部においてエンジンが蓄熱カバーに覆われた状態を示す右側面図である。
図2図2は、エンジンが蓄熱カバーに覆われた状態(但し、上面カバー部を鎖線で記載してカバー内部を表している。)を示す平面図である。
図3図3は、エンジンが蓄熱カバーに覆われた状態を示す正面図である。
図4図4は、エンジンが蓄熱カバーに覆われた状態を示す左側面図である。
図5図5は、吸気ダクト、エアクリーナ及び蓄熱カバーを示す斜視図である。
図6図6は、蓄熱カバーの上面カバー部を除いた状態で示す、図5と同様の斜視図である。
図7図7は、蓄熱カバーの上面カバー部及び右側面カバー部と吸気ダクトとを示す右側面図である。
図8図8は、吸気ダクトと右側面カバーの関係を示す、カバー内側から見た斜視図である。
図9図9は、吸気ダクトを示す斜め右前側から見た斜視図である。
図10図10は、吸気ダクトを示す斜め左後側から見た斜視図である。
図11図11は、吸気ダクトの平面図である。
図12図12は、図11のXII‐XII線における断面図である。
図13図13は、吸気ダクトの分解斜視図である。
図14図14は、吸気ダクトの第2ダクト部材を、通路切換機構を除いた状態で示す斜視図である。
図15図15は、通路切換機構の分解斜視図である。
図16図16は、通路切換機構を組立てた状態で示す斜視図である。
図17図17は、通路切換機構を組立てた状態の一部を示す正面図である。
図18図18は、通路切換機構を吸気装置に組付ける状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
<エンジン及び周辺機器の構成>
図1は、本実施形態に係るエンジンの吸気装置を備えるエンジンルーム1の内部を示していている。エンジンルーム1は、車両前部において上側に開口する凹部として備えられており、エンジン2及びその周辺機器を収容している。エンジンルーム1の上側の開口は、ボンネット3によって、塞がれている。ボンネット2は、開閉自在のため、必要に応じて、該ボンネット3を開くことで、エンジンルーム1の内部を車両の外側から臨むことができる。
【0020】
なお、ここで、「エンジンルーム1の内部」とは、エンジンルーム1の上側の開口をボンネット3を閉じて塞いだときに区画される空間のことをいう。本明細書では、車両の前進後退方向を「前後方向」とし、前進側を「前側」、後退側を「後側」とする。また、車幅方向を「左右方向」とする。また、「右側」及び「左側」は車両を前方から見たときのものである。
【0021】
エンジン2は、シリンダブロック4と、その上に載置されるシリンダヘッドとを備えている。シリンダブロック4の下面にはオイルパン5が固定されている。シリンダブロック4の内部には、図示しないが、複数のシリンダが形成されている。すなわち、エンジン2は、多気筒エンジンである。各シリンダ内には、ピストンが摺動自在に内挿されている。ピストンは、コネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結されている。ピストンは、シリンダ及びシリンダヘッドと共に、エンジン2の燃焼室を区画する。
【0022】
エンジン2の燃焼室には、新気が吸気ダクト11及びエアクリーナ12を通して導入される。エアクリーナ12は燃焼室に導入する新気に含まれる塵や埃などの異物を取り除く機器である。
【0023】
図2は後述する蓄熱カバー21の上面カバー22を外してエンジン2を上から見た図である。
【0024】
同図に示すように、新気はエアクリーナ12からスロットルバルブを備えた吸気管13を経て過給機14に導入される。過給機14は、燃焼室に導入する新気の圧力を高める。本例の過給機14は、エンジン2のクランク軸によってベルト駆動される機械式過給機である。なお、電動式の過給機、或いは排気エネルギによって駆動されるターボ過給機を採用してもよい。過給機14を経た新気は図3に示すインタークーラ15によって冷却され、サージタンク及び吸気マニホールドを介して各気筒の燃焼室に導入される。
【0025】
図2に示すように、吸気管13からは過給機14をバイパスして新気をサージタンクに導くバイパス管16が分岐している。バイパス管16には、その管路の開口面積を調節するバイパス弁が設けられている。バイパス管16のバイパス弁よりも上流側の部位には、図1に示すEGR管17が接続されている。EGR管17は、排気ガスの一部をEGRガスとして燃焼室に還流させるものであり、EGRガスを冷却するEGRクーラ18を備えている。
【0026】
エンジン2の吸気系を構成する吸気ダクト11、エアクリーナ12、吸気管13、過給機14、インタークーラ15、サージタンク及び吸気マニホールドは、エンジン2の前側に配置され、エンジン2の排気系を構成する排気マニホールド及び該排気マニホールドに続く排気管はエンジン2の後側に配置されている。すなわち、当該エンジン2は、前方吸気且つ後方排気のエンジンである。
【0027】
<エンジンのカバー構造>
蓄熱カバー21は、エンジンルーム1に設けられ、エンジン2をその上方から覆うとともに、エンジン2の上部のまわりを囲む。蓄熱カバー21は、エンジン2から放散される熱が空気を媒体としてその内側にたくわえ、上方への放熱を少なくとも一部は遮る。
【0028】
ここに、「蓄熱カバーの内側」とは、蓄熱カバーにおけるエンジンを上方から覆う部分の内面よりも下側であって、該蓄熱カバーにおけるエンジンのまわりを少なくとも部分的に囲む部分の内面よりも内側をいう。
【0029】
図1に示すように、蓄熱カバー21は、エンジン2を上方から覆う上面カバー部22と、上面カバー部22に連なりエンジン2の上部を後方から覆う後面カバー部23と、上面カバー部22に連なりエンジン2の上部を右側方から覆う右側面カバー部24とを備え、さらに、図4に示すように、上面カバー部22に連なりエンジン2の上部を左側方から覆う左側面カバー部25を備えている。
【0030】
エンジン2の前方には、エンジン2の冷却水を空気との熱交換によって冷却するラジエータ6がエンジン2を前方から覆うように配置されている。ラジエータ6の前方には、ラジエータ6への前方からの通風を遮断可能なグリルシャッター7が設けられている。ラジエータ6は、冷却水の熱をエンジン2に向かって放熱するラジエータファン8を背面側に備えている。グリルシャッター7の前方にフロントグリル9が設けられている。
【0031】
グリルシャッター7は、複数のフラップ26を上下に間隔をおいて配設したものであり、複数のフラップ26を回動させるアクチュエータを備えている。フラップ26が鎖線で示すように横になると、ラジエータ6への前方からの通風が許容され、フラップ26が実線で示すように縦になると、ラジエータ6への当該通風が遮られる。グリルシャッター7は、後述する吸気ダクト11の通路切換機構の作動によって、エンジン2の燃焼室への新気の導入が内気導入状態になると、フラップ26が縦になってラジエータ6に車両走行風が当たることを抑える。その結果、エンジンルーム1から前方への放熱も抑えられることになる。
【0032】
ラジエータ6には、エンジン2からの冷却水を流入させるための冷却水流入ホース27,28(図2及び図4参照)と、温度が低下した冷却水を図4に示すウォータポンプ29に送るための冷却水流出ホース(図1及び図2参照)31が接続されている。
【0033】
ここに、蓄熱カバー21は、エンジン2の上部から上方及び周囲への放熱を遮ることによってエンジン2の保温に寄与する。一方、ラジエータ6及びグリルシャッター7はエンジン2から前方への放熱を遮ることによってエンジン2の保温に寄与する。また、ラジエータ6はラジエータファン8によって冷却水の熱をエンジン2に向かって放つことにより、蓄熱カバー21による蓄熱を有利にする。
【0034】
(蓄熱カバーの詳細)
図5に示すように、エアクリーナ12は、車両前方から見て、蓄熱カバー21の右外側に配設されている。吸気ダクト11は、蓄熱カバー21の外側であって、エアクリーナ12の前側に配設されている。
【0035】
図1図4及び図5に示すように、蓄熱カバー21の上面カバー部22は、前方に向かって緩やかに下降傾斜した上壁22aと、上壁22aの両側縁に続く下方へ延びた上部側壁22b,22c(図1図4参照)とを備えている。上壁22aは、エンジン2の上面を全面にわたって覆うようにエンジン2の上面よりも外側に広がっている。上壁22aの前端部に蓄熱カバー21をラジエータシュラウド20に固定する固定部22dが設けられている。
【0036】
図1図4及び図6に示すように、蓄熱カバー21の後面カバー部23は、エンジン2の上部の後面を覆うように、左右方向に広がった後壁23aと、後壁23aの両側縁各々に続く前方に延びた後部側壁23b,23cとを備えている。後壁23aは、蓄熱カバー21を車両のカウルパネルに固定するための後方へ突出したブラケット23dを備えている。図6に示すように、後壁23aの上端及び後部側壁23b,23cの前端上部に、上面カバー部22との間に隙間を生じないようにするシール32が設けられている。すなわち、上面カバー部22の上壁22a及び上部側壁22b各々の後端縁がシール32に当接する。
【0037】
図1及び図7に示すように、蓄熱カバー21の右側面カバー部24は、エンジン2の上部を右側方から後面カバー部23の右側後部側壁と共に覆うように前後方向に広がっている。右側面カバー部24の前端縁は吸気ダクト11より後方に突出した上下方向に延びる突出部33(図7図10参照)に当接している。図6図8に示すように、右側面カバー部24の前端縁上端より前方に突出した取付片34が吸気ダクト11の突出部33の上端の取付部33aに、締着材としての抜け止め機能を有するクリップ35によって固定されている。右側面カバー部24の後端縁は後面カバー部23の右側後部側壁23bの前端下部に当接している。
【0038】
ここに、吸気ダクト11は、図7に示すように、後述する外気取入口44が右側面カバー部24の上縁と略同じ高さに設けられていて、ダクト全体を側方からみると、外気導入口44から後方に略水平に延びる上部11a、該上部11aに続いて下方に延びる中間部11b、並びに、該中間部11bに続いて後方に延びエアクリーナ12に接続される下部11cを備えた形になっている。図8に示すように、吸気ダクト11の上記突出部33は、該吸気ダクト11の上部11aの後端から中間部11bを経て下部11cまで上下に延びており、この突出部33が図7に示すように上記右側面カバー部24の前側の側縁に接続されている。すなわち、吸気ダクト11は右側面カバー部24の前側の側縁に連なっている。従って、吸気ダクト11は、エンジン2の上部を右側方から右側面カバー部24と共に覆うカバー部材として機能する。
【0039】
図7に示すように、右側面カバー部24の上縁にはシール36を介して上面カバー部22の右側上部側壁22bが載置されている。上面カバー部22の右側上部側壁22bの下縁と右側面カバー部24の上縁には、図6及び図8に示すエアクリーナ12からエンジン2に向かって延びたフレキシブル管37を通すための、上下に相対する半円状の切欠き22e,24aが形成されている。フレキシブル管37は先に説明した吸気管13に接続される。
【0040】
図4及び図6に示すように、蓄熱カバー21の左側面カバー部25は、エンジン2の上部を左側方から後面カバー部23の左側後部側壁23c及びエンジンマウント38と共に覆うように前後方向に広がっている。すなわち、エンジンマウント38の前後両側に左側面カバー部25と後面カバー部23の左側後部側壁23cが配設されている。従って、エンジンマウント38は、エンジン2の上部を左側方から左側面カバー部25と共に覆うカバー部材として機能する。エンジンマウント38は、その前後の脚部38aが車両のフロントサイドフレームに固定され、上部にエンジン2が支持される。エンジンマウント38は、カバー機能を得る観点から、前後の脚部38a間が塞がれている。
【0041】
<吸気ダクトの配置及び構造>
図9及び図10に示すように、吸気ダクト11は、エンジンルーム1の外側の空気である外気を導入する外気導入ダクト部41と、エンジンルーム1の内部の空気を導入する内気導入ダクト部42とを備え、両ダクト部42,43が1本の下流側ダクト部43に接続された複合ダクトである。
【0042】
外気導入ダクト部41の上流端には、前方に向かって開口した横長矩形状の外気取入口44が設けられている。内気導入ダクト部42の上流端には、上方に向かって開口した横長矩形状の内気取入口45が設けられている。下流側ダクト部43の下流端にエアクリーナ12に接続される接続口46が後方に向かって開口している。
【0043】
図11に示すように、吸気ダクト11は、外気導入ダクト部41の外気取入口44から後方に延びる上部11aからその両側に突出した取付片47を備えている。下流側ダクト部43の下流端にはエアクリーナ2に接続するためのフランジ48が設けられている。
【0044】
吸気ダクト11は、上記取付片47が、図1に示すラジエータシュラウド20の上面に固定されている。これにより、外気導入ダクト部41の外気取入口44がラジエータシュラウド20の上から前方に臨むように設けられている。一方、吸気ダクト11の内気取入口45は、図2に示すように、エンジン2とラジエータ6の間において、蓄熱カバー21の内側に下方から臨むように設けられている。但し、内気取入口45は外気導入ダクト部41と後述の突起部51によって上から覆われている。
【0045】
(内気取入口のカバー構造)
内気導入ダクト部42の内気取入口45の一部は外気導入ダクト部41によって上から隙間を存して覆われ、内気取入口45の残部は突起部51によって上から隙間を存して覆われている。以下、このカバー構造を説明する。
【0046】
図9に示すように、外気導入ダクト部41と内気導入ダクト部42は、下流側ダクト部43から分岐して左右に並んで立上り、且つ外気導入ダクト部41は内気導入ダクト部42の内気取入口45よりも高く立上っている。
【0047】
図10及び図11に示すように、外気導入ダクト部41は、内気導入ダクト部42の内気取入口45よりも高位置において、内気導入ダクト部42側に湾曲して該内気導入ダクト部42の内気取入口45の上方を斜めに横切り前方に延びるダクト壁41aを有する。このダクト壁41aによって、図11及び図12にも示すように、内気導入ダクト部42の内気取入口45の前側部分が上方から覆われた形になっている。外気導入ダクト部41のダクト壁41aから前方に延びた部分が吸気ダクト11の上部11aを形成している。
【0048】
外気導入ダクト部41は、上記ダクト壁41aの後面より内気導入ダクト部42の内気取入口45の上方を後方に突出したつば状の突起部51を備えている。この突起部51が内気取入口45の残部を上方から覆っている。図10に示すように、突起部51は、外気導入ダクト部41の立上り部の方に下降傾斜しており、この傾斜部が内気取入口45を側方から、すなわち、斜め上方から覆っている。
【0049】
突起部51と内気取込口45との間隔は、可能な限り狭い方が、異物の侵入防止という観点からは有利である。組立時におけるボルトの侵入を防止したければ、突起部51と内気取込口45との間隔を、例えば、M6ナット径よりも小さくなるように設定すること等が考えられる。なお、該間隔を過剰に狭くしすぎると、突起部51が通気抵抗になって内気の内気取込口45への取り込みが妨げられる。従って、突起部51と内気取込口45との間隔は、例えば、10~60mmの範囲において、これら諸問題を総合的に考慮設定することが好ましい。本実施形態では、この間隔を40mmとしている。
【0050】
(吸気ダクトの通路切換機構)
吸気ダクト11の通路切換機構は、エンジン2の燃焼室への新気の導入を、エンジンルーム1の外側の外気を外気導入ダクト部41によってエアクリーナ4に導入する外気導入状態と、エンジンルーム1内の空気、特に蓄熱カバー21によって得られるホットエアを内気導入ダクト部42によってエアクリーナ4に導入する内気導入状態とに切り換えるものである。そのために、当該通路切換機構は、後述する第1バルブ61と第2バルブ62を備えている。
【0051】
図13に示すように、吸気ダクト11は、合成樹脂製の第1ダクト部材11Aと合成樹脂製の第2ダクト部材11Bを互いの周縁部において合わせて溶着することによって形成されている。本例では、第1ダクト部材11Aは、外気導入ダクト部41の外気取入口44を含む吸気ダクト11の前部を形成している。第2ダクト部材11Bは、下流側ダクト部43の接続口46を含む吸気ダクト11の後部を形成している。第1ダクト部材11Aと第2ダクト部材11Bを合わせることによって、吸気ダクト11の外気導入ダクト部41、内気導入ダクト部42及び下流側ダクト部43が完成する。
【0052】
図13に示すように、外気導入ダクト部41は外気導入通路55を形成し、内気導入ダクト42が内気導入通路56を形成している。外気導入通路55及び内気導入通路56は、下流側ダクト部43によって形成された下流側導入通路57に続いている。外気導入ダクト部41には外気導入通路55を開閉する第1バルブ61が配設され、内気導入ダクト部42には内気導入通路56を開閉する第2バルブ62が配設されている。
【0053】
先に説明したように、外気導入ダクト部41と内気導入ダクト部42は下流側ダクト部43から分岐して左右に並んで立上っており、第1バルブ61及び第2バルブ62は、外気導入ダクト部41及び内気導入ダクト部42各々の立上りの基端部に配設されている。すなわち、外気導入通路55の第1バルブ配設部と内気導入通路56の第2バルブ配設部とは、両通路55,56を隔てる隔壁58を挟んで並列状に設けられている。
【0054】
第1ダクト部材11Aは、外気導入通路55の第1バルブ配設部と内気導入通路56の第2バルブ配設部各々の通路壁周方向の一部を形成し、第2ダクト部材11Bが当該通路壁周方向の残部を形成している。
【0055】
第1バルブ61はフラップ型バルブであり、第2バルブ62はバタフライ型バルブである。すなわち、両バルブ61,62は、いずれも回転によって通路を開閉する回転型バルブであり、外気導入ダクト部41と内気導入ダクト部42の両者に亘って延びる1本の回転シャフト63に支持されている。両バルブ61,62は、一方が開になるとき、他方が閉となるように、回転シャフト63に対して所定の角度に位置決めして支持されている。
【0056】
回転シャフト63は、吸気ダクト11の後部を形成する第2ダクト部材11Bに支持され、回転シャフト63を回転駆動するアクチュエータ64も第2ダクト部材11Bに支持されている。すなわち、図14に示すように、第2ダクト部材11Bには、該第2ダクト部材11B単独で回転シャフト63を支持するシャフト支持部65,66と、該第2ダクト部材11B単独でアクチュエータ64を支持するアクチュエータ支持部67とが設けられている。
【0057】
本例では、シャフト支持部65,66は第2ダクト部材11Bの相対する外気導入ダクト部41側のダクト壁及び内気導入ダクト部42側のダクト壁に設けられている。アクチュエータ支持部67は第2ダクト部材11Bにおける外気導入ダクト部41側の外側面に設けられている。
【0058】
上述の如く、回転シャフト63を第2ダクト部材11Bに支持したことにより、第1バルブ61と第2バルブ62も、第2ダクト部材11Bに該第2ダクト部材11B単独で支持されている。
【0059】
図14に示すように、内気導入ダクト部42側のシャフト支持部66には支持孔71が設けられ、該支持孔71に図15に示すブッシュ72が嵌められている。外気導入ダクト部41側のシャフト支持部65にも同様に支持孔71(図示省略)が設けられ、該支持孔71に図15に示すブッシュ72が嵌められている。
【0060】
図15に示すように、回転シャフト63は、角形(本例では断面矩形)のシャフトであり、第1バルブ61及び第2バルブ62各々の軸部に設けられた筒状の嵌合部73~77に通されている。第1バルブ61には、軸方向両側の2箇所に端部が第1バルブ61より軸方向外側に突出した嵌合部73,74が設けられている。第2バルブ62には、軸方向両側の2箇所に端部が第2バルブ62より軸方向外側に突出した嵌合部75,76が設けられ、中間の1箇所に嵌合部77が設けられている。
【0061】
第1バルブ61及び第2バルブ62の嵌合部73~77の外周面は円いが、各々の嵌合孔は全て回転シャフト63の断面形状に対応する角形である。回転シャフト63が両バルブ61,62の嵌合部73~77の嵌合孔に通されて、両バルブ61,62が回転シャフト63に対して回転しないように支持されている。
【0062】
シャフト支持部65,66のブッシュ72には、回転シャフト63がバルブ61,62の嵌合部73~77に通された状態で、嵌合部73~77の両端の嵌合部73,76が嵌められて回転自在に支持されている。換言すれば、回転シャフト63がバルブ61,62の嵌合部73,76を介してシャフト支持部65,66のブッシュ72に回転自在に支持されている。
【0063】
第1バルブ61及び第2バルブ62の軸方向に相隣る嵌合部74及び嵌合部75の軸方向に相対する端部は半筒状に切り欠かれた形状になっていて、その切欠き部が係合部78,79になっている。この両係合部78,79は、回転シャフト63が嵌合部73~77に通された状態において、互いにバルブ回転方向において係合し、第1バルブ61と第2バルブ62のバルブ回転方向における相対的な位置を規制する。
【0064】
すなわち、図16に示すように、両バルブ61,62の係合部78,79を互いに係合させた状態で、回転シャフト63を両バルブ61,62の嵌合部73~77に通すと、両バルブ61,62は、回転シャフト63の回転によって一方が開になるとき他方が閉となるように、回転シャフト63に対して位置決めされた状態になる。本例の場合、両バルブ61,62はバルブ本体が回転方向に90度ずれた状態に位置決めされる。
【0065】
第1バルブ61及び第2バルブ62の上記相隣る嵌合部74及び嵌合部75各々には、両バルブ61,62のバルブ軸方向の位置を図15に示すスペーサ81によって規制するための側方に突出した突起82,83が設けられている。
【0066】
以下、具体的に説明する。図14に示すように、第2ダクト部材11Bの隔壁58には、嵌合部74,75が回転自在に嵌まる凹部84を有するスペーサ受け85が形成されている。このスペーサ受け85には嵌合用溝86が形成されている。一方、スペーサ81には、スペーサ受け85の凹部84に対応する凹部87と嵌合用溝86に嵌まる凸条88とが形成されている。スペーサ81は、そのバルブ軸方向の長さが、両バルブ61,62が外気導入ダクト部41及び内気導入ダクト部42の正規位置に位置付けられたときの、突起82,83の間隔に匹敵する寸法にされている。
【0067】
スペーサ81は、第1バルブ61及び第2バルブ62が第2ダクト部材11Bにセットされた状態で、凸条88を嵌合用溝86に嵌めることによってスペーサ受け85に設置される。このときに、図17に示すように、スペーサ81の片側に第1バルブ61側の突起82が当接し、スペーサ81の反対側に第2バルブ62側の突起83が当接するようにするものである。両バルブ61,62は、突起82,83がスペーサ81に対してバルブ軸方向において係合することによって、開閉に支障がないようにバルブ軸方向の位置が規制される。
【0068】
(吸気ダクトの組立)
図14に示す第2ダクト部材11Bのシャフト支持部65,66各々の支持孔71に図15に示すブッシュ72を嵌める。
【0069】
図18(a)に示すように、第2ダクト部材11Bの外気導入ダクト部41側のバルブ配設部(第1バルブ配設部)に第1バルブ61を入れる。該第1バルブ61をバルブ軸方向に動かして嵌合部73をシャフト支持部65のブッシュ72に嵌める。
【0070】
図18(b)に示すように、第1バルブ61を所定の回転角度に位置決めする。すなわち、本例では、第1バルブ61を外気導入ダクト部41の背面側の通路壁に当たるように回転させる。
【0071】
図18(c)に示すように、第1バルブ61を上述の如く位置決めした状態で、第2バルブ62を第2ダクト部材11Bの内気導入ダクト部42側のバルブ配設部(第2バルブ配設部)に入れる。このとき、第1バルブ61の係合部78と第2バルブ62の係合部79を係合させる。これにより、両バルブ61,62は、相対的に所定の回転角度に位置決めされた状態になる。そうして、第2バルブ62をバルブ軸方向に動かして嵌合部76をシャフト支持部66のブッシュ72(図15参照)に嵌める。
【0072】
図18(d)に示すように、スペーサ81をスペーサ受け85に嵌め込み、スペーサ81の両側面に第1バルブ61の突起82及び第2バルブ62の突起83が当たるようにする。これにより、第1バルブ61及び第2バルブ62の外気導入ダクト部41及び内気導入ダクト部42各々におけるバルブ軸方向の位置が予定の位置に規制された状態になる。
【0073】
図18(e)に示すように、図15に示す端部にギヤ89を結合した回転シャフト63を、外気導入ダクト部41の外側から、シャフト支持部65のブッシュ72を介して、第1バルブ61の嵌合部73,74及び第2バルブ62の嵌合部75~77に挿入する。ギヤ89には図15に示すストッパ90が設けられていて、該ストッパ90が第2ダクト部材11Bに当接することにより、回転シャフト63の軸方向の位置決めがなされる。
【0074】
しかる後、第1ダクト部材11Aと第2ダクト部材11Bを溶着する。そうして、図15に示すキャップ91、アクチュエータ64及びベルマウス92の取付を行なう。すなわち、キャップ91を内気導入ダクト部42側のシャフト支持部66に外側から嵌める。アクチュエータ64を、その出力軸に結合したギヤを回転シャフト63のギヤ89に歯合させて、第2ダクト部材11B側のアクチュエータ支持部67に取り付ける。ベルマウス92を内気導入ダクト部42の内気取入口45に嵌める。
【0075】
なお、先にキャップ91及びアクチュエータ61を第2ダクト部材11Bを取り付けてから、第1ダクト部材11Aと第2ダクト部材11Bを溶着するようにしてもよい。
【0076】
<実施形態の利点>
(エンジン燃焼室への空気の導入について)
上記実施形態によれば、図13に示すアクチュエータ61による第1バルブ61と第2バルブ62の作動により、吸気ダクト11の外気導入通路55が開き、内気導入通路56が閉じた外気導入状態と、外気導入通路55が閉じ、内気導入通路56が開いた内気導入状態とに切り換えることができる。
【0077】
外気導入状態になると、図1に示すエンジンルーム1の外側の空気が吸気ダクト11の外気取入口44から図13等に示す外気導入通路55を通ってエアクリーナ12に入り、エンジン2の燃焼室には外気が導入される。内気導入状態になると、エンジンルーム1内の空気が吸気ダクト11の内気取入口45から内気導入通路56を通ってエアクリーナ12に入り、エンジン2の燃焼室にはエンジンルーム1内の温度が高い内気が導入される。
【0078】
上記内気導入状態について説明する。エンジン2のまわりの空気はエンジン2から放散される熱によって暖められて上昇し、蓄熱カバー21の内側に入る。蓄熱カバー21が上方(ボンネット3側)への放熱を遮るため、エンジン2から放散される熱は空気を媒体として蓄熱カバー21の内側にたくわえられることになる。その結果、蓄熱カバー21の内側ないしはその下側の空気は高温になる。
【0079】
吸気ダクト11の内気取入口45は蓄熱カバー21の内側に下から臨んでいるため、吸気ダクト11の内気導入通路56には蓄熱カバー21で得られる高温の空気が取り入れられることになる。従って、高温の空気がエアクリーナ12を通ってエンジン2の燃焼室に導入されるため、例えば、リーン燃焼のように大量の空気が必要になるときでも、燃焼室の温度低下が抑制され、エンジン2の燃焼安定性の確保に有利になる。
【0080】
上記実施形態では、図1に示すラジエータ6がエンジン2から前方への放熱を妨げる働きをするとともに、ラジエータ6から放たれる廃熱(冷却水から熱交換によって奪われる熱)がラジエータファン8によってエンジン2側に供給される。そのため、エンジン2とラジエータ6の間の空気の温度が高くなる。また、蓄熱カバー21の後面カバー部23及び側面カバー部24,25によってエンジン2の後方及び側方への熱の逃げが抑えられるから、エンジン2とその前方のラジエータ6との間に高温の空気がたくわえられ易くなる。
【0081】
そうして、図2に示すように、内気取入口45はエンジン2とラジエータ6の間に配置されているから、吸気ダクト11に取り入れられる空気の温度を高いものにする上で有利になる。さらに、内気導入状態のときは、図1に示すグリルシャッター7によってラジエータ6への通風が遮られることにより、エンジン2のラジエータ側の保温性が高まり、燃焼室への高温の空気の導入に有利になる。
【0082】
なお、当該エンジン燃焼室への空気の導入に係る発明は、燃焼室の温度低下の抑制に有用な技術であり、リーン燃焼形態にとどまらず、いわゆる理論空燃比付近での燃焼形態においても適用可能である。
【0083】
また、上記実施形態の内気取入口45は、その開口の全体が蓄熱カバー21の内側に下から臨んでいるが、その開口の一部が蓄熱カバー21の外側に食み出ていてもよい。蓄熱カバー21の近傍は蓄熱カバー21の影響で空気の温度が高くなるため、内気取入口45の一部が蓄熱カバー21の外側に食み出ていて蓄熱カバー21の外側の空気が吸気ダクト11に一部取り入れられるケースでも、エンジン燃焼室には高温の空気を導入することができる。
【0084】
(吸気ダクトのレイアウト等について)
上記実施形態によれば、図2に示すように、前方吸気且つ後方排気のエンジン2において、エンジン2の前側に内気取入口45が配置されているから、内気取入口45からエアクリーナ12までの内気導入通路56が長くならず、燃焼室への高温空気の導入に有利になるとともに、吸気ダクト11のレイアウトも容易になる。
【0085】
図6図8に示すように、吸気ダクト11は、右側面カバー部24の前側の側縁に連ねられているから、吸気ダクト11が側面カバー部24の外側に配置される場合に比べて、エンジン2に近づくことになる。従って、蓄熱カバー21及び吸気ダクト11を含む吸気系部品がエンジンルーム2に占めるスペースが大きくなることが避けられ、エンジンルーム2における蓄熱カバー21及び吸気系部品のレイアウトが容易になる。
【0086】
また、吸気ダクト11がエンジン2を右側方から覆う機能を担うから、それだけ右側面カバー部24を小さくすることができる。左側面カバー部25に関しても、エンジンマウント38がエンジン2を左側方から覆う機能を担うから、それだけ左側面カバー部25を小さくすることができる。
【0087】
上述の内気導入通路56の短縮及び側面カバー部24,25の小型化により、装置の軽量化に有利になる。
【0088】
吸気ダクト11と右側面カバー部24がクリップ35(締着材)で結合しているから、当該結合が容易になるとともに、吸気ダクト11を右側面カバー部24の支持に利用することができ、部品点数の削減及び右側面カバー部24の取付安定性の向上に有利になる。
【0089】
図9等に示すように、吸気ダクト11の内気取入口45は、上向きに開口しているから、エンジンルーム1に横方向や下方から侵入する異物は内気取入口45には入りにくく、吸気ダクト11の第2バルブ62を含む通路切換機構の損傷が避けられる。特に、上記実施形態では、図2に示すように、内気取入口45は蓄熱カバー21によって上から覆われているから、上記異物の侵入に有利になる。
【0090】
一方、内気導入ダクト部42の内気取入口45は、上向きに開口しているものの、図11及び図12に示すように、外気導入ダクト部41のダクト壁41aが内気取入口45の上方を横切り、さらに、突起部51が内気取入口45の上方に張り出している。すなわち、内気取入口45は、外気吸気ダクト部41のダクト壁41aのみならず、さらに、突起部45によって上方を覆われている。従って、メンテナンス等において、蓄熱カバー21を取り外しても、ボルト等の異物は、外気導入ダクト部41のダクト壁41aや突起部51によって遮られるから、内気取入口45に入ることが避けられる。
【0091】
さらに、吸気ダクト11の内部にバルブ61,62等からなる通路切換機構が備えられている。通路切換機構、特に第2バルブ62は、内気取入口45から吸気ダクト11の内部に異物が侵入することで、破損してしまうおそれがある。従って、内気取入口45の上方を外気導入ダクト部41で覆い、内気取入口45に異物が入ることを避けることで、吸気ダクト11の内部に異物が侵入し、該吸気ダクト11の内部にある通路切換機構(特に第2バルブ62)が破損することを防ぐことができる。
【0092】
(通路切換機構について)
吸気ダクト11は第1ダクト部材11Aと第2ダクト部材11Bの溶着によって形成されているが、図13に示すように、通路切換機構の回転シャフト63を支持するシャフト支持部65,66と、アクチュエータ64を支持するアクチュエータ支持部67を第2ダクト部材11Bに設け、この回転シャフト63及びアクチュエータ64を当該第2ダクト部材11B単独で支持する構造を採用している。従って、両ダクト部材11A,11Bの溶着に伴ってその合わせ部に多少の変形を生じても、それが回転シャフト63及びアクチュエータ64の支持に与える影響は小さい。よって、通路切換機構の作動不良を招くことが避けられる。
【0093】
図15図17に示すように、通路切換機構を構成する第1バルブ61の嵌合部74と第2バルブ62の嵌合部75を両者の係合部78,79において係合させると、この両バルブ61,62がバルブ回転方向において相対的に位置決めされる。よって、両バルブ61,62を回転シャフト63に組み付ける際の両バルブ61,62のバルブ回転方向の角度設定が容易になる。
【0094】
また、両バルブ61,62のバルブ軸方向における相対的な位置は、両バルブ61,62の嵌合部74,75に設けた突起82,83とスペーサ81との係合によって規制される。従って、上述の如く、両バルブ61,62を上記係合部78,79において係合させた状態で、スペーサ81を第2ダクト部材11Bに取り付けるだけで、両バルブ61,62各々のバルブ配設部におけるバルブ軸方向の位置を規制することができる。
【0095】
以上のように、上記実施形態によれば、両バルブ61,62の嵌合部74,75に係合部78,79及び突起82,83を設け、第2ダクト部材11Bに取り付けるスペーサ81を設けるという簡単な構成により、両バルブ61,62を各々のバルブ配設部に精度良く組付けることが有利になり、バルブ61,62の作動不良防止に有利になる。
【符号の説明】
【0096】
1 エンジンルーム
2 エンジン
11 吸気ダクト
41 外気導入ダクト部
41a ダクト壁
42 内気導入ダクト部
45 内気取入口
51 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18