(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】車両用の空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/20 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B60H1/20 A
(21)【出願番号】P 2018173153
(22)【出願日】2018-09-17
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【氏名又は名称】中島 由布子
(72)【発明者】
【氏名】小池 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山内 健生
(72)【発明者】
【氏名】楢原 和晃
(72)【発明者】
【氏名】谷中 克年
(72)【発明者】
【氏名】森島 千菜美
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智弘
(72)【発明者】
【氏名】川俣 達
(72)【発明者】
【氏名】前多 信之介
(72)【発明者】
【氏名】河井 秀介
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-071014(JP,U)
【文献】特開平11-222025(JP,A)
【文献】特開平02-124313(JP,A)
【文献】特開平07-218160(JP,A)
【文献】実開平02-071016(JP,U)
【文献】特開平03-099928(JP,A)
【文献】特開平01-252898(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00767081(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関で発生する排気ガスが通流する排気管と、
前記排気ガスの熱を回収するヒートパイプシステムと、を備える車両用の空調装置において、
前記ヒートパイプシステムは、
前記排気管に取り付けられて、前記排気ガスとの熱交換で作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発した前記作動媒体を液化させる凝縮器と、
前記凝縮器で液化した前記作動媒体を前記蒸発器に送る液配管と、
前記蒸発器で蒸発した前記作動媒体を前記凝縮器に送るガス配管と、
前記液配管に設けられた開閉弁と、を有しており、
前記液配管の前記開閉弁と前記蒸発器との間の部位に設けられて、前記蒸発器の液配管入口高さよりも低い位置を経由する液溜り部と、
前記液溜り部への排熱非回収時の液溜りを促進させる促進手段と、を有
し、前記促進手段は、前記液溜り部を冷却する冷却手段によって構成されることを特徴とする車両用の空調装置。
【請求項2】
前記液溜り部を走行風が当たる位置に配置したことを特徴とする請求項
1に記載の車両用の空調装置。
【請求項3】
前記液溜り部の表面積を、前記液配管の他の部位の表面積よりも大きく設定したことを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の車両用の空調装置。
【請求項4】
前記液溜り部の外周部または内周部に放熱フィンを設けたことを特徴とする請求項
3に記載の車両用の空調装置。
【請求項5】
前記液溜り部の径を、前記液配管の他の部位の径よりも大きく設定したことを特徴とする請求項
3に記載の車両用の空調装置。
【請求項6】
前記液配管を前記排気管に固定するための保持部を、前記開閉弁よりも上流側に配置したことを特徴とする請求項1から請求項
5の何れか一項に記載の車両用の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(エンジン)を駆動源とする車両の暖房の熱源には、エンジンの冷却水が専ら用いられている。
しかし、内燃エンジンの始動初期には冷却水の温度が低いため、暖房によって車室内の温度が所定温度に達するまでにはある程度の時間を要していた。
【0003】
特許文献1には、車両の暖房の熱源に排気ガスの熱を利用するためのヒートパイプシステムが開示されている。
また、特許文献2には、ループ型のヒートパイプを用いた給湯装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平2-127511号公報
【文献】特公平6-078871号公報
【0005】
特許文献1のヒートパイプシステムは、内燃機関の排気管に取り付けられた蒸発器と、空調用の空気が流れるダクトに設けられた凝縮器と、凝縮器で液化した作動媒体を蒸発器に送る液配管と、蒸発器で蒸発した作動媒体を凝縮器に送るガス配管と、を備えている。
【0006】
このヒートパイプシステムにおいては、蒸発器において作動媒体(液体)を、排気管を流れる高温の排気ガスによって加熱して気化させる。凝縮器では、ガス配管を介して供給された気体状態の作動媒体が、ダクトを流れる空調用の空気に熱(凝縮潜熱)を放出して液化する。これにより、空調用の空気が凝縮器で加熱され、加熱された空調用の空気によって車室内が暖房される。
【0007】
なお、凝縮器において液化した作動媒体は、液配管を経て蒸発器へと送られる。そして、蒸発器において液体状態の作動媒体は、排気管を流れる高温の排気ガスによって加熱されて、再び気化することになる。
ヒートパイプシステムでは、作動媒体が状態変化(サイクル)を繰り返しながら、蒸発器と凝縮器との間を循環することによって、排気ガスの熱の一部が、空調用の空気の加熱に有効利用(回収)される。
【0008】
特許文献2の給湯装置が備えるループ型のヒートパイプ(ヒートパイプシステム)では、凝縮器に接続された液配管の途中に開閉弁が設けられている。
【0009】
特許文献2に開示されたヒートパイプシステムにおいては、液配管の途中に設けられた開閉弁を閉じることによって、ヒートパイプシステムにおける作動媒体の循環を阻止できるようになっている。
これにより、ヒートパイプシステムにおける作動媒体を用いた熱輸送を、停止できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヒートパイプシステムにおいては、排気ガスなどの熱(排熱)を回収しないとき(排熱非回収時)には開閉弁が閉じられるが、開閉弁を閉じると、液配管の開閉弁と蒸発器との間の部位において液媒体が無くなる。
このような状態で開閉弁を開いてヒートパイプシステムの運転を再開すると、液配管から液媒体が蒸発器に素早く送り込まれないためにヒートパイプシステムの始動に時間遅れが生じ、ヒートパイプシステムの始動性が悪くなることがあった。
【0011】
ヒートパイプシステムの運転再開時の始動性を高められるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
内燃機関で発生する排気ガスが通流する排気管と、
前記排気ガスの熱を回収するヒートパイプシステムと、を備える車両用の空調装置において、
前記ヒートパイプシステムは、
前記排気管に取り付けられて、前記排気ガスとの熱交換で作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発した前記作動媒体を液化させる凝縮器と、
前記凝縮器で液化した前記作動媒体を前記蒸発器に送る液配管と、
前記蒸発器で蒸発した前記作動媒体を前記凝縮器に送るガス配管と、
前記液配管に設けられた開閉弁と、を有しており、
前記液配管の前記開閉弁と前記蒸発器との間の部位に設けられて、前記蒸発器の液配管入口高さよりも低い位置を経由する液溜り部と、
前記液溜り部への排熱非回収時の液溜りを促進させる促進手段と、を有し、前記促進手段は、前記液溜り部を冷却する冷却手段によって構成される車両用の空調装置とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒートパイプシステムの運転再開時の始動性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】車両用の空調装置の概略構成を説明する図である。
【
図2】車両用の空調装置の基本構成を説明する図である。
【
図3】車両用の空調装置における凝縮器と液配管とガス配管の配置を説明する図である。
【
図4】車両用の空調装置における排熱回収器と液配管とガス配管の配置を説明する図である。
【
図5】ヒートパイプシステムの液溜り部を説明する図である。
【
図6】液溜り部での液溜りを促進させる促進手段の変形例を説明する図である。
【
図7】液溜り部での液溜りを促進させる促進手段の変形例を説明する図である。
【
図8】液溜り部での液溜りを促進させる促進手段の変形例を説明する図である。
【
図9】液溜り部での液溜りを促進させる促進手段の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる車両用の空調装置1の概略構成を説明する図である。
図2は、車両用の空調装置1の基本構成を説明する図であって、ヒートパイプシステム4と、冷凍サイクル5と、冷却水循環サイクル6の回路構成を説明する図である。
図3は、車両用の空調装置1における凝縮器43と液配管42とガス配管41の配置を説明する図である。
図4は、車両用の空調装置1における排熱回収器35と液配管42とガス配管41の配置を説明する図である。
図5は、ヒートパイプシステム4の液溜り部46を説明する図である。
図5の(a)は、液溜り部46周りの拡大図であり、(b)は、(a)におけるA-A断面図である。
【0016】
[空調装置1の構成]
図1に示すように、車両Vの前部では、運転席71の前方(
図1の左方)に空調装置1が設置されている。
車両Vのファイアウォール72よりも前方のエンジンルームには、駆動源である内燃機関(ENG)2が収容されている。
内燃機関2は、ガソリンなどの燃料の燃焼によって発生する熱エネルギーを運動エネルギー(駆動力)に変換するものである。内燃機関2には、燃料の燃焼により発生した排気ガスの排気系として、排気管3が接続されている。
【0017】
排気管3は、フロア74の下面に沿って、車両後方(
図1の右方)に向かって延びている。内燃機関2での燃料の燃焼によって発生する高温の排気ガスは、排気管3を車両後方に向かって流れて大気中に排出される。
【0018】
排気管3の途中には、排気ガスを浄化するための触媒31と、排熱回収器35と、消音器である不図示のマフラーと、が設けられている。排気管3では、触媒31と、排熱回収器35と、マフラーとが、排気ガスの流れ方向に沿って設けられている。
【0019】
排熱回収器35は、排気ガスの熱の一部を回収するためのものである。排熱回収器35においては、
図1および
図4に示すように、排気管3が二股状に分岐して熱回収路32とバイパス路33とが形成されている。
【0020】
熱回収路32とバイパス路33は、排気ガスの流れ方向下流において合流して排気管3の排熱回収器35の下流側部分に接続されている。
図1に示すように、熱回収路32とバイパス路33の上流側の分岐部と、下流側の合流部には、切替ドア34a、34bが、それぞれ回動可能に設けられている。
【0021】
切替ドア34a、34bは、触媒31側から排熱回収器35に流入する排気ガスを、熱回収路32またはバイパス路33に選択的に流すために設けられている。
【0022】
ここで、
図1では、熱回収路32とバイパス路33が、上下に並んで配置されており、熱回収路32の方がバイパス路33よりも上側に位置している場合を例示している。
図4では、熱回収路32とバイパス路33が、水平方向に並んで配置されている場合を例示している。熱回収路32とバイパス路33の並びは、
図1と
図4の態様の何れでも良い。
【0023】
排熱回収器35の熱回収路32には、排気ガスとの熱交換により、排気ガスの熱の一部を回収する蒸発器44が設けられている。
蒸発器44は、排気ガスの熱を作動媒体R4に回収するヒートパイプシステム4の構成要素である。車両用の空調装置1では、ヒートパイプシステム4で回収した排気ガスの熱を、空調装置1における空調用の空気Airの加熱に利用する。
【0024】
図2に示すように、空調装置1は、ヒートパイプシステム4の他に、空調用の空気Airの冷却に用いられる冷凍サイクル5と、空調用の空気Airの加熱に用いられる冷却水循環サイクル6とを有している。
空調装置1の内部には、空調用の空気Airが通流するダクト11が形成されている。
ダクト11の内部には、ダクト11における空気Airの通流方向における上流側から順番に、シロッコファン12と、エバポレータ53と、ヒータコア63と、凝縮器43と、エア混合チャンバ14とが設けられている。
【0025】
シロッコファン12(送風機)は、空調装置1の作動時に駆動されて、車室70(
図1参照)内の空気(内気)および/または車室70外の空気(外気)を吸引する。シロッコファン12は、吸引した空気を、シロッコファン12の下流側に配置されたエバポレータ53に向けて送出する。
【0026】
エバポレータ53では、熱媒体R5が蒸発する際の気化熱で、エバポレータ53を通過する空気Airを、冷却、除湿する。
【0027】
空気Airの通流方向におけるエバポレータ53の下流側には、冷却水循環サイクル6のヒータコア63が設けられている。
ヒータコア63では、内燃機関2の冷却水R6(熱媒体)との熱交換で、ヒータコア63を通過する空気Airを加熱する。
【0028】
空気Airの通流方向におけるヒータコア63の下流側には、ヒートパイプシステム4の凝縮器43が設けられている。
凝縮器43では、作動媒体R4との熱交換で、凝縮器43を通過する空気を加熱する。
【0029】
空調装置1において凝縮器43は、ダクト11内を通流する空気の通流方向で、エバポレータ53の下流側に設けられている。エバポレータ53と凝縮器43との間であって、凝縮器43から見た上流側には、ヒータコア63が配置されている。
空調装置1では、ヒータコア63を通過した空気Airが、そのまま凝縮器43を通過する。
【0030】
ヒータコア63とエバポレータ53との間には、ミックスドア13が設けられている。ミックスドア13は、エバポレータ53を通過した空気のヒータコア63側への流入量を調整するために設けられている。
【0031】
ミックスドア13が、エバポレータ53を通過した空気のヒータコア63側への流入を阻止する位置(
図3、仮想線参照)に配置されると、エバポレータ53を通過した空気がそのままエア混合チャンバ14に供給される。
【0032】
ミックスドア13が、エバポレータ53を通過した空気のエア混合チャンバ14側への流入を阻止する位置(
図3、実線参照)に配置されると、エバポレータ53を通過した空気Airが、ヒータコア63と凝縮器43側を通過する。ヒータコア63と凝縮器43側を通過した空気Airは、最終的にエア混合チャンバ14に供給される。
【0033】
空調装置1では、図示しない制御装置が、車室70内の設定温度等に応じてミックスドア13の位置を変更することで、ヒータコア63側を通過する空気の量が調整される。
【0034】
エア混合チャンバ14では、エバポレータ53を通過する際に冷却された空気Airと、ヒータコア63および凝縮器43を通過する際に加熱された空気Airと、が混合されて、所望の温度に調整される。
【0035】
エア混合チャンバ14には、デフダクト側の流入口15と、ベントダクト側の流入口16と、フットダクト側の流入口17と、が開口している。各流入口15、16、17には、図示しない制御装置により駆動される開閉弁が設けられている。
【0036】
流入口15に流入した空気Airは、図示しないデフ吹出口から、車両Vのフロントウインドウに向けて送出される。流入口16に流入した空気Airは、図示しないベント吹出口から、乗員の上半身に向けて送出される。流入口17に流入した空気Airは、図示しないフット吹出口から、乗員の足元に向けて送出される。
【0037】
エア混合チャンバ14で温度が調節された空気Air(空調用の空気Air)は、少なくともひとつの流入口15、16、17を通って、車室70に供給されて、車室70内を空調する。
【0038】
図2に示すように、空気Airの冷却に関与するエバポレータ53は、冷凍サイクル5が備える冷媒配管50上に設けられている。冷媒配管50は、気体状態の熱媒体R5が通流するガス配管51と、液体状態の熱媒体R5が通流する液配管52と、を有している。
冷凍サイクル5は、エバポレータ53の他に、膨張弁54と、コンプレッサ55と、コンデンサ56と、を有している。
【0039】
膨張弁54は、コンデンサ56とエバポレータ53とを連絡させる液配管52に設けられており、液配管52を通流する液体状態の熱媒体R5を減圧膨張させる。
エバポレータ53は、膨張弁54から供給された熱媒体R5を減圧下で蒸発させる。
【0040】
コンプレッサ55は、エバポレータ53とコンデンサ56とを連絡させるガス配管51に設けられており、エバポレータ53で蒸発した熱媒体R5を吸引して、高温高圧に圧縮する。
コンデンサ56は、ガス配管51を介してコンプレッサ55側から供給された高温高圧の熱媒体R5を、外気との熱交換で冷却して凝縮させる。
【0041】
冷凍サイクル5では、コンプレッサ55の動力によって、エバポレータ53とコンデンサ56との間を熱媒体R5が循環する。コンデンサ56で冷却された熱媒体R5が、エバポレータ53で蒸発する際に吸熱することにより、ダクト11を通流する空気Airが、冷却および除湿される。
【0042】
空気Airの加熱に関与するヒータコア63は、冷却水循環サイクル6が備える冷却経路60に、冷却水導入配管61と冷却水導出配管62を介して接続されている。
冷却経路60は、第1経路601と、第2経路602と、を有している。第1経路601は、内燃機関2と、ラジエータ67と、冷却水バルブ64と、ウォータポンプ66とが、冷却水の通流路に沿って設けられた循環路である。ラジエータ67には、冷却水タンク65が付設されている。
【0043】
冷却水バルブ64は、開位置および閉位置の何れか一方に切り替えるタイプ(いわゆる開閉弁)、または制御によってその開度の調整ができるタイプ(流量コントロール弁)の何れであってもよい。
【0044】
第2経路602は、第1経路601における冷却水の通流方向で、内燃機関2の下流側と、ウォータポンプ66の上流側に接続されている。第2経路602は、ラジエータ67と冷却水バルブ64を迂回する迂回路である。
ヒータコア63から延びる冷却水導入配管61と冷却水導出配管62は、第2経路602に接続されている。
【0045】
冷却水循環サイクル6では、冷却水バルブ64を開いた状態で、ウォータポンプ66が駆動されると、第1経路601側と、第2経路602側を冷却水R6が通流する。
冷却水バルブ64を閉じた状態で、ウォータポンプ66が駆動されると、第2経路602側を冷却水R6が通流する。
【0046】
第1経路601は、内燃機関2を通って設けられており、冷却水R6は、内燃機関2の領域を通過する際に、内燃機関2の排熱で加熱される一方で、内燃機関2を冷却する。
内燃機関2の排熱で加熱された冷却水R6のうち、第1経路601側を通過する冷却水R6は、ラジエータ67を通過する際に、外気との熱交換で冷却される。
【0047】
第2経路602側を通過する冷却水R6の一部は、ヒータコア63を通って、第1経路601に循環し、残りの一部は、ヒータコア63を通らずに第1経路601に循環する。
【0048】
ヒータコア63では、冷却経路60(第2経路602)側から供給された高温の冷却水R6と、空気Airとの熱交換を行って空気Airを加熱する。
空気Airとの熱交換で温度が低下した冷却水R6は、冷却水導出配管62を介して、冷却経路60(第2経路602)内に戻される。
【0049】
空気Airの加熱に関与する凝縮器43は、ヒートパイプシステム4が備える作動媒体R4の循環路40(ガス配管41と液配管42)上に設けられている。
循環路40は、金属材料からなる筒状管を環状に配置して、内部に作動媒体R4を減圧封入したものである。
【0050】
ヒートパイプシステム4は、前記した蒸発器44のほかに、凝縮器43(インターナルコンデンサI/C)を有している。蒸発器44と凝縮器43は、ガス配管41と液配管42で接続されている。液配管42には、開閉弁(電磁弁)45が設けられている。
【0051】
蒸発器44では、液体状態の作動媒体R4(例えば、水)が、排気ガスとの熱交換で加熱されて蒸発する。
ガス配管41は、蒸発器44で蒸発して気体状態になった作動媒体R4を、凝縮器43に供給する機能を果たす。
【0052】
凝縮器43では、気体状態の作動媒体R4が、凝縮器43を通過する空気Airとの熱交換で冷却されて凝縮する。
液配管42は、凝縮器43で凝縮して液体状態になった作動媒体R4を、蒸発器44に供給する機能を果たす。
【0053】
ヒートパイプシステム4では、作動媒体R4が、気体と液体との間での状態変化(サイクル)を繰り返しながら、蒸発器44と凝縮器43との間を循環する。
ヒートパイプシステム4では、排気ガスの排熱を利用して作動媒体R4を加熱することで、排気ガスの熱の一部を作動媒体R4に回収している。
そして、作動媒体R4に回収した熱を利用して、凝縮器43を通過する空気Airを加熱しているので、排気ガスの熱を有効に利用している。
【0054】
ヒートパイプシステム4では、液配管42に設けた開閉弁(電磁弁)45を閉じると、循環路40内での作動媒体R4の循環が停止する。これにより、排気ガスから作動媒体R4に回収した熱の凝縮器43側への輸送が停止する。
【0055】
図3に示すようにガス配管41は、配管接続部310を貫通してダクト11内に引き込まれており、ガス配管41の先端部は、凝縮器43の側縁部の上端部位に接続されている。
液配管42もまた、配管接続部310を貫通してダクト11内に引き込まれており、液配管42の先端部は、凝縮器43の側縁部の下端部位に接続されている。
【0056】
空調装置1から外部に延びるガス配管41および液配管42は、車両Vのファイアウォール72を貫通して、内燃機関2の収容部(エンジンルーム)内に達している。
エンジンルーム内においてガス配管41および液配管42は、ファイアウォール72に沿って、フロア74側の下方に延びたのち、フロア74の下面に沿って車両Vの後方側に延びている。
【0057】
そして、ガス配管41は、車両Vの前方側から排熱回収器35(蒸発器44)の上部に接続されている(
図4参照)。
【0058】
液配管42は、ガス配管41の下方を、フロア74の下面に沿って車両Vの後方側に延びている。液配管42は、車両Vの前方側から排熱回収器35の蒸発器44の下部に接続されている。
【0059】
液配管42は、ガス配管41よりも小さい内径で形成されている。液配管42とガス配管41は、排気管3における触媒31よりも車両前方側の領域に、ブラケット18を介して支持されている。
【0060】
液配管42では、ブラケット18で支持された領域よりも蒸発器44側に、開閉弁45が設けられている。開閉弁45から見てブラケット18は、液配管42における作動媒体R4の通流方向の上流側に位置している。
【0061】
液配管42における開閉弁45よりも蒸発器44側には、液配管42が屈曲させて形成した液溜り部46が設けられている。液溜り部46は、筒状のパイプを屈曲させて形成したものである。
【0062】
図5に示すように、液溜り部46は、蒸発器44の液配管入口44aから下方に延びる第1領域46aと、第1領域46aの下端から水平線方向に沿って車両の前方側に延びる第2領域46bと、第2領域46bの先端から上方に延びる第3領域46cと、を有している。
第3領域46cの上端には、開閉弁45から車両後方側に延びる液配管42が接続されている。
【0063】
液配管42の延長線上に、蒸発器44の液配管入口44aが位置しており、液溜り部46は、蒸発器44の液配管入口44aの地上からの高さhよりも低い位置を経由して設けられている。
蒸発器44の側方から見て液溜り部46は、第1領域46aから第3領域46cまでの範囲が、下方に窪んだ凹形状に形成されている。
【0064】
液溜り部46の第2領域46bには、円板状の放熱フィン471が、第2領域46bの長手方向に所定間隔で複数設けられている。
放熱フィン471は、空調装置1を搭載した車両の走行時に、走行風が通過する領域に設けられており、第2領域46b内の液体状の作動媒体R4を冷却するために設けられている。
【0065】
本実施形態では、第2領域46bに設けられた複数の放熱フィン471が、発明における「液溜りの促進手段」を構成している。
複数の放熱フィン471は、開閉弁45が閉じられて、ヒートパイプシステム4による排気ガスの排熱回収を行わないとき(排熱非回収時)に、液溜り部46内の作動媒体R4を冷却して、液体状態のままで保持するために設けられている。
【0066】
すなわち、複数の放熱フィン471は、排熱非回収時に液配管42の液溜り部46に溜まる作動媒体R4の気化を防ぐために設けられた冷却手段の一態様である。
【0067】
[車両用の空調装置1の作用]
次に、車両用の空調装置1の作用について説明する。
冬季などにおいて車両Vの車室70内を暖房する必要がある場合には、ミックスドア13が、
図3に実線にて示す位置に配置される。
さらに、排熱回収器35に設けられた切替ドア34a、34bが、
図1に実線にて示す位置に設定される。
【0068】
内燃機関2の始動初期においては、冷却水循環サイクル6の冷却水R6の温度が低い。そのため、冷却水R6がヒータコア63を通流しても、ヒータコア63は、暖房に殆ど寄与しない。
【0069】
一方、内燃機関2から排出される排気ガスの温度は、内燃機関2の始動初期においても十分に高い。そのため、ヒートパイプシステム4で回収した排気ガスの熱を、車室70内に供給する空気Airの加熱に用いることで、車室70内の暖房を、内燃機関2の始動初期から実施できる。
【0070】
すなわち、ヒートパイプシステム4においては、内燃機関2から排出される高温の排気ガスは、排熱回収器35の熱回収路32を通過する際に、熱回収路32に設置された蒸発器44において、液体状態にある作動媒体R4を加熱して蒸発(気化)させる。
【0071】
蒸発器44で蒸発して気体状態になった作動媒体R4(水蒸気)は、ガス配管41を通ってダクト11内の凝縮器43に流入する。
凝縮器43に流入した気体状態の作動媒体R4は、凝縮器43を通過する空調用の空気(内気または外気)との間での熱交換により凝縮する。
凝縮器43において気体状態の作動媒体R4は、空調用の空気に凝縮潜熱を放出して凝縮(液化)する。これにより、空調用の空気Airが加熱される。
【0072】
そして、凝縮器43において液化した作動媒体R4(水)は、液配管42を通って排熱回収器35に設けられた蒸発器44に流入する。
蒸発器44に流入した液体状態の作動媒体R4は、排熱回収器35内の熱回収路32を流れる排気ガスによって再び加熱されて蒸発(気化)することで、排気ガスの熱の一部を再び回収する。
【0073】
作動媒体R4が、状態変化(気化と液化)を繰り返しながら閉回路(循環路40)を循環することによって、内燃機関2から排出される排気ガスの熱の一部が回収され、回収された熱によって車室70内が暖房される。
【0074】
内燃機関2が始動されて、所定の時間が経過すると、内燃機関2は暖まって所定の温度状態で安定するようになる(いわゆる温間時)。
その時、冷却水R6の温度は高温(常温よりも高い温度、例えば60℃以上)になる。従って、そのような状態の下で、冷却水が循環しているヒータコア63を空気が通過すると、冷却水と熱交換することにより、ヒータコア63が放熱し、その空気は加熱される。
【0075】
そして、内燃機関2の始動後に冷却水R6の温度が高くなると、高温の冷却水R6が、冷却水導入配管61を通ってヒータコア63内に流入した後、冷却水導出配管62を通って、冷却経路60に戻される。
【0076】
ここで、ヒートパイプシステム4においては、排熱回収器35に設けられた切替ドア34a、34bの切り替えによって、排気ガスの熱の回収と非回収が選択される。
すなわち、切替ドア34a、34bが
図1に実線にて示す位置にあるときには、前述のように排気ガスが排熱回収器35内の熱回収路32を流れ、排気ガスの熱の一部が蒸発器44において作動媒体R4によって回収される。
【0077】
これに対して、切替ドア34a、34bが
図1に破線にて示す位置に切り替えられると、内燃機関2から排気管3へと排出される排気ガスは、排熱回収器35において熱回収路32をバイパスしてバイパス路33へと流れる。このため、排気ガスの熱は、排熱回収器35において回収されない。
【0078】
本実施の形態の車両用の空調装置1においては、ヒータコア63とヒートパイプシステム4とが併用されているが、ヒータコア63だけで暖房を十分賄うことができる場合には、ヒートパイプシステム4の運転を停止するようにしている。
【0079】
具体的には、図示しない制御装置が、排熱回収器35の切替ドア34a、34bを、
図1において破線で示す位置に切り替えて、排気ガスが蒸発器44をバイパスして流れるようにする。さらに、開閉弁45を閉じて、作動媒体R4の循環路40内の循環を停止させる。
【0080】
しかしながら、ヒートパイプシステム4の運転を停止して排気ガスの熱を回収しない場合(排熱非回収時)であっても、蒸発器44の排気管3からの受熱を完全に遮断することは実際には難しい。
そのため、蒸発器44内の作動媒体(液媒体)が多少の受熱によって気化するために、ヒートパイプシステム4のサイクルが不安定になるという問題があった。
【0081】
また、排熱非回収時に開閉弁45を閉じると、液配管42の開閉弁45と蒸発器44との間の部位の作動媒体R4が受熱によって蒸発してしまい、液配管42の開閉弁45と蒸発器44との間の部位の作動媒体R4がなくなることがある。
このような状態で、開閉弁45を開いてヒートパイプシステム4の運転を再開すると、液配管42から作動媒体R4が蒸発器44に素早く送られないために、ヒートパイプシステム4の始動に時間遅れが生じることがある。
そのため、ヒートパイプシステム4の始動性が悪くなることがある。
【0082】
本実施の形態においては、
図4に示すように、液配管42の開閉弁45と蒸発器44との間の部位に、液配管42を屈曲させて形成した液溜り部46が設けられている。液溜り部46は、蒸発器44の液配管入口44aの高さhよりも低い位置を経由する凹形状を成している。
【0083】
そのため、排熱非回収時に開閉弁45を閉じた場合には、液配管42の液溜り部46に液体状態の作動媒体R4が貯留される。
そして、本実施の形態では、液溜り部46への作動媒体の貯留(液溜り)を促進させる促進手段(冷却手段)として、液溜り部46が走行風が当たる位置に配置されているので、液溜り部46が走行風によって効果的に冷却される。
【0084】
さらに、液溜り部46の第2領域46bに、円板状の放熱フィン471が設けられており、放熱フィン471もまた、空調装置1を搭載した車両の走行時に、走行風が通過する領域に設けられている。
よって、放熱フィン471によっても、液溜り部46が効果的に冷却される。
【0085】
このように、液溜り部46が走行風によって冷却されると、液溜り部46に貯留されている作動媒体R4も冷却されるために、液体状態の作動媒体R4が排熱回収器35周りからの受熱によって気化することが好適に抑制されている。
そのため、液溜り部46での作動媒体R4の貯留(液溜り)が促進されて、液溜り部46には、液体状態の作動媒体R4が保持されることになる。
【0086】
この状態において、開閉弁45を開けてヒートパイプシステム4の運転を再開した場合、液配管42の液溜り部46に残留する液体状態の作動媒体R4が、蒸発器44に素早く送られる。
これにより、蒸発器44における排気ガスと、液体状態の作動媒体R4との熱交換を速やかに開始することができるので、ヒートパイプシステム4が時間遅れなく始動する。
よって、ヒートパイプシステム4の始動性が高められることになる。
【0087】
本実施の形態では、
図4に示すように、液配管42では、開閉弁45よりも上流側(排気ガスと液冷媒の流れ方向上流側)にブラケット18が設けられている。液配管42は、ブラケット18を介して、排気管3で保持されている。
そのため、液配管42では、ブラケット18よりも蒸発器44側は、液溜り部46と蒸発器44の液配管入口44aまでの領域が、排気管3に直接接していない。さらに、液溜り部46は、ブラケット18から離れた位置に配置されている。
【0088】
よって、排気管3を通流する排気ガスの熱がブラケット18を介して液配管42の液溜り部46に伝わり難くなっている。そのため、液溜り部46に貯留されている作動媒体R4の気化が、より一層効果的に防がれている。これによって、液溜り部46への作動媒体R4の貯留(液溜り)が促進される。
【0089】
以上の通り、本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(1)空調装置1は、
内燃機関2で発生する排気ガスを排出する排気管3と、
排気ガスの熱を回収するヒートパイプシステム4と、を備える。
ヒートパイプシステム4は、
排気管3に取り付けられて、排気ガスとの熱交換で作動媒体R4を蒸発させる蒸発器44と、
蒸発器44で蒸発した作動媒体R4を液化させる凝縮器43と、
凝縮器43で液化した作動媒体R4を蒸発器44に送る液配管42と、
蒸発器44で蒸発した作動媒体R4を凝縮器43に送るガス配管41と、
液配管42に設けられた開閉弁45と、を有している。
液配管42の開閉弁45と蒸発器44との間の部位に設けられて、蒸発器44の液配管入口44aの高さhよりも低い位置を経由する液溜り部46と、
液溜り部46への排熱非回収時の液溜りを促進させる促進手段と、を有する。
【0090】
このように構成すると、排熱非回収時に開閉弁45を閉じると、液配管42の液溜り部46に液体状態の作動媒体R4が貯留される。
促進手段が、液溜り部46への作動媒体の貯留(液溜り)を促進させるので、液溜り部46に液体状態の作動媒体R4を確実に貯留できる。
この状態において、開閉弁45を開けてヒートパイプシステム4の運転を再開した場合、液配管42の液溜り部46に残留する液体状態の作動媒体R4が、蒸発器44に素早く送られる。
これにより、蒸発器44における排気ガスと、液体状態の作動媒体R4との熱交換を速やかに開始することができるので、ヒートパイプシステム4を時間遅れなく始動することができる。よって、ヒートパイプシステム4の始動性が高められることになる。
【0091】
本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(2)促進手段は、液溜り部46を冷却する冷却手段によって構成されている。
【0092】
このように構成すると、排気ガスが通流する排気管3からの受熱を完全に遮断することができない場合であっても、液溜り部46を冷却して、液溜り部に貯留された作動媒体R4の気化を抑制できる。
これにより、液溜り部46内に液体状態の作動媒体R4を保持できるので、開閉弁45を開けてヒートパイプシステム4の運転を再開した場合のヒートパイプシステム4の始動性を高めることができる。
【0093】
本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(3)液溜り部46を、空調装置1を搭載した車両の走行時に、走行風が当たる位置に配置したことより、液溜り部46を冷却する。
【0094】
このように構成すると、液溜り部46内に液体状態の作動媒体R4を保持できるので、ヒートパイプシステム4の始動性が高めることができる。
なお、車体の下部には、走行風の流れを整えるための整流板やアンダーカバーが設けられている。整流板やアンダーカバーは、車体下部での乱流の発生を抑制して、乱流による走行抵抗を抑制するために設けられている。
整流板やアンダーカバーを利用して、車体の下部を通過する走行風が、液溜り部46の領域を積極的に通過するようにすることで、液溜り部46をより効果的に冷却できる。
よって、車体の下部に設けた整流板やアンダーカバーによって、車体の下部に、液溜り部46に向かう空気の流れを形成しても良い。
【0095】
本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(4)液溜り部46(第2領域46b)の表面に複数の放熱フィン471を設けることによって、液溜り部46の表面積を、液配管42の他の部位(液溜り部46以外の部位)の表面積よりも大きく設定した。
【0096】
このように構成すると、液溜り部46の表面積が増えることによって、液溜り部46をより効果的に冷却できる。
なお、本実施形態では、液溜り部46の第2領域46bに、放熱フィン471を設けた場合を例示した。放熱フィン471は、液溜り部46の他の領域(第1領域46a、第3領域46c)にも設けられていても良い。
【0097】
なお、本実施の形態では、ヒートパイプシステム4を循環する作動媒体R4として、水を例示した。作動媒体R4には、水以外の任意の流体(例えば、HFCなどのフロン系冷媒)を使用することができる。
【0098】
図6から
図9は、液配管42の液溜り部46での液溜り(作動媒体R4の貯留)を促進させる促進手段(冷却手段)の変形例を説明する図である。
【0099】
図6は、液溜り部46Aに設けられた促進手段(冷却手段)の他の例を示す図である。
図6の(a)は、蒸発器44周りの部分側面図であり、(b)は、(a)における領域Aの拡大詳細図、(c)は、(b)におけるB-B断面を拡大した図である。
なお、
図6の(b)では、液溜り部46の第2領域46bにおける図中左側の一部の領域を切り欠いて、第2領域46bを断面で示している。
【0100】
図6に示す液溜り部46Aでは、第2領域46bの外周に、第2領域46bの長手方向に沿う放熱フィン471Aが設けられている。
放熱フィン471Aは、車両前後方向(走行風の流れ方向)に沿う向きで設けられている。第2領域46bの外周において放熱フィン471Aは、周方向の全周に亘って、適当な間隔をあけて複数設けられている。
【0101】
このように構成することによっても、液溜り部46(第2領域46b)の表面積(放熱面積)が拡大するため、液溜り部46が走行風によって一層効果的に冷却される。
これにより、液溜り部46における液溜り(液媒体の気化防止)が促進される。
【0102】
図7は、液溜り部46Bに設けられた促進手段(冷却手段)の他の例を示す図である。
図7の(a)は、蒸発器44周りの部分側面図であり、
図7の(b)は、(a)におけるA-A断面を拡大した図である。
【0103】
図7に示す液溜り部46Bでは、第2領域46bの内周に、第2領域46bの長手方向に沿う放熱フィン471Bが設けられている。
放熱フィン471Bは、車両前後方向(走行風の流れ方向)に沿う向きで設けられている。第2領域46bの内周において放熱フィン471Bは、周方向の全周に亘って、適当な間隔をあけて複数設けられている。
放熱フィン471Bは、第2領域46bを通流する作動媒体R4の流れを妨げないようにするために、作動媒体R4の通流方向に沿って設けられている。
【0104】
このように構成すると、液溜り部46(第2領域46b)内の作動媒体R4との接触面積が拡大するため、液溜り部46が走行風によって冷却されると、液溜り部46内の作動媒体R4が効率的に冷却される。
これにより、液溜り部46における液溜り(液媒体の気化防止)が促進される。
なお、
図7の態様と、
図5の放熱フィン471や
図6の放熱フィン471Aとを組み合わせた構成としても良い。
【0105】
図8は、液溜り部46Cに設けられた促進手段(冷却手段)の他の例を示す図である。
図8では、蒸発器44周りを側方から見た状態が拡大して示されている。
【0106】
図8に示す液溜り部46Cでは、第1領域46aから第3領域46cまでの範囲の外径φD1が、液配管42(液配管42における液溜り部46Cでない領域)の外径φD2よりも大きくなっている(φD1>φD2)。
【0107】
このように構成すると、液溜り部46Cにおける作動媒体R4の表面積(放熱面積)が、液配管42の部分よりも大きくなるため、液溜り部46が走行風によって冷却されると、液溜り部46内の作動媒体R4を効率的に冷却される。
これにより、液溜り部46における液溜り(液媒体の気化防止)が促進される。
なお、
図8の態様と、
図5の放熱フィン471、
図6の放熱フィン471A、
図7の放熱フィン471Bとを組み合わせた構成としても良い。
【0108】
図9は、変形例にかかる液溜り部46Dを説明する図であり、蒸発器44周りを側方から見た状態を拡大して示している。
【0109】
図9に示す液溜り部46Dは、蒸発器44の液配管入口44aから斜め下方に延びる第1領域46aと、第1領域46aの下端から斜め上方に延びる第2領域46bと、を有している。
第2領域46bの上端には、開閉弁45から車両後方側に延びる液配管42が接続されている。
【0110】
液配管42の延長線上に、蒸発器44の液配管入口44aが位置しており、液溜り部46Dは、蒸発器44の液配管入口44aの高さhよりも低い位置を経由して設けられている。
蒸発器44の側方から見て液溜り部46は、第1領域46aと第2領域46bとで、屈曲点Pを下方に向けたV形状に形成されている。
【0111】
液溜り部46Dもまた、空調装置1を搭載した車両の走行時に、走行風が通過する領域に設けられており、液溜り部46D(第1領域46a、第2領域46b)内の液体状の作動媒体R4が冷却されるようになっている。
【0112】
このように構成することによっても、液溜り部46Dが走行風によって冷却されると、液溜り部46D内の作動媒体R4が効率的に冷却される。
これにより、液溜り部46Dにおける液溜り(液媒体の気化防止)が促進される。
【0113】
なお、この液溜り部46Dを、前記した放熱フィン471、471A、471Bとを組み合わせた構成としても良い。また、液溜り部46Dの部分の外径を、液配管42の外径よりも大きくしても良い。
【0114】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0115】
1 空調装置
11 ダクト
12 シロッコファン
13 ミックスドア
14 エア混合チャンバ
15、16、17 流入口
18 ブラケット
2 内燃機関
3 排気管
31 触媒
310 配管接続部
32 熱回収路
33 バイパス路
34a、34b 切替ドア
35 排熱回収器
4 ヒートパイプシステム
40 循環路
41 ガス配管
42 液配管
43 凝縮器
44 蒸発器
44a 液配管入口
45 開閉弁
46、46A、46B、46C、46D 液溜り部
46a 第1領域
46b 第2領域
46c 第3領域
471、471A、471B 放熱フィン
5 冷凍サイクル
50 冷媒配管
51 ガス配管
52 液配管
53 エバポレータ
54 膨張弁
55 コンプレッサ
56 コンデンサ
6 冷却水循環サイクル
60 冷却経路
601 第1経路
602 第2経路
61 冷却水導入配管
62 冷却水導出配管
63 ヒータコア
64 冷却水バルブ
65 冷却水タンク
66 ウォータポンプ
67 ラジエータ
70 車室
71 運転席
72 ファイアウォール
74 フロア
Air 空気
P 屈曲点
R4 作動媒体
R5 熱媒体
R6 冷却水(熱媒体)
V 車両
h 高さ
φD1 外径
φD2 外径