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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】成形条件決定支援装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20221018BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20221018BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20221018BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D46/00
B22D18/02 X
B22D17/32 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018182661
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020049843
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勇佐
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 正晴
(72)【発明者】
【氏名】馬場 紀行
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸治
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-237256(JP,A)
【文献】特開昭64-024719(JP,A)
【文献】特開2006-065598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B22D 46/00
B22D 17/32
B22D 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機において溶融材料を型に供給することにより成形品を成形する方法に適用され、
成形条件データベースと、
成形品品質データベースと、
前記成形条件データベースおよび前記成形品品質データベースから取得した学習データであって複数の成形条件要素と前記成形品の複数の品質要素とを前記学習データとする機械学習により、前記品質要素毎に前記品質要素と前記成形条件要素の影響度とに関する学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
確認対象の前記品質要素の入力を受け付ける入力部と、
前記学習モデルを用いて、前記確認対象の前記品質要素に対して前記影響度を有する複数の前記成形条件要素、および、複数の前記成形条件要素毎の前記影響度の値を出力する出力部と、
前記出力部から出力された、前記影響度を有する複数の前記成形条件要素、および、複数の前記成形条件要素毎の前記影響度の値を表示する表示部と、
を備え
前記成形条件データベースは、前記成形機の制御装置に入力される指令値である前記成形条件要素を、前記成形品のそれぞれに対応付けて記憶しており、
前記成形品品質データベースは、前記成形品の成形後に検査装置によって検査された前記成形品の前記品質要素を、前記成形品のそれぞれに対応付けて記憶しており、
前記学習モデル生成部は、それぞれの前記成形品に対応付けた状態で、前記成形条件データベースに記憶されている前記成形条件要素、および、前記成形品品質データベースに記憶されている品質要素を、前記学習データとして取得し、
前記学習モデルは、
グラフィカルモデルであって、
各前記品質要素が複数の前記成形条件要素において何れの複数の前記成形条件要素に前記影響度を有しているかを表すと共に、各前記品質要素が前記影響度を有している複数の前記成形条件要素のそれぞれに対してどの程度の前記影響度を有しているかを表すモデルである、成形条件決定支援装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記確認対象の前記品質要素に対して前記影響度高い複数の前記成形条件要素を出力する、請求項1に記載の成形条件決定支援装置。
【請求項3】
前記出力部は、予め出力される要素数が設定されており、前記確認対象の前記品質要素に対して前記影響度を有する複数の前記成形条件要素を、前記影響度の値が高い方から前記要素数の分だけ出力する、請求項1または2に記載の成形条件決定支援装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記確認対象の前記品質要素が目標値からずれている場合に、前記確認対象の前記品質要素、および、前記品質要素の前記目標値とのずれ量の入力を受け付け、
前記出力部は、前記確認対象の前記品質要素を前記ずれ量だけ調整することを目的とした場合に、前記影響度に応じて、調整する複数の前記成形条件要素を推薦する、請求項1-の何れか一項に記載の成形条件決定支援装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記影響度に応じて、調整する複数の前記成形条件要素、および、調整する複数の前記成形条件要素の調整量を推薦する、請求項に記載の成形条件決定支援装置。
【請求項6】
請求項1-の何れか一項に記載の成形条件決定支援装置を有する、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形条件決定支援装置および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形等の溶融材料を型に供給して成形品を成形する方法において、不良品が発生した場合には、作業者は、成形条件を変更する必要がある。そして、溶融材料および型を用いる成形方法であるため、設備が設置される工場の地域の環境、工場内の環境、工場内での設備の設置状態、設備の経年劣化度合、季節等、種々の要因が成形品の品質に影響を及ぼす。そのため、種々の要因を考慮した成形条件の変更には、熟練技術が要求される。未熟練者にとっては、どの成形条件をどの程度変更するべきかについて判断することが容易ではない。
【0003】
ところで、近年コンピュータの処理速度の向上に伴い、人工知能が急速に発展しており、例えば、特許文献1には、機械学習により、射出成形の操作条件の調整を短時間で行うことが可能となることが記載されている。すなわち、成形品に関する物理量データ(成形品の品質に相当)と機械学習における報酬条件とに基づいて報酬を計算し、報酬と操作条件調整と物理量データに基づいて操作条件調整を機械学習する。
【0004】
物理量データは、成形品の重量、寸法、成形品の画像データから算出される外観、長さ、角度、面積、体積、光学成形品の光学検査結果、成形品強度計測結果等であり、成形品の品質に相当する。また、操作条件(成形条件に相当する)が、型締条件、エジェクト条件、射出保圧条件、計量条件、温度条件、ノズルタッチ条件、樹脂供給条件、型厚条件、成形品取出条件、ホットランナ条件等である。つまり、特許文献1に記載の技術により、成形品に不良品が発生した場合に、成形条件を自動的に調整することが可能となる。従って、作業者による調整が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-30152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、作業者の教育、技術の継承等の観点から、成形条件の変更を全て自動で行うことが適切であるとは言えない。また、コンピュータが発展しているとしても、今後も、作業者が設備の操作を行うことが完全になくなるものではない。
【0007】
本発明は、不良品が発生した場合等に、作業者へ成形条件の決定を支援することができる装置および射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る成形条件決定支援装置は、
成形機において溶融材料を型に供給することにより成形品を成形する方法に適用され、
成形条件データベースと、
前記成形条件データベースから取得した学習データであって複数の成形条件要素と前記成形品の複数の品質要素とを前記学習データとする機械学習により、前記品質要素毎に前記品質要素と前記成形条件要素の影響度とに関する学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
確認対象の前記品質要素の入力を受け付ける入力部と、
前記学習モデルを用いて、前記確認対象の前記品質要素に対して前記影響度を有する複数の前記成形条件要素、および、複数の前記成形条件要素毎の前記影響度の値を出力する出力部と、
前記出力部から出力された、前記影響度を有する複数の前記成形条件要素、および、複数の前記成形条件要素毎の前記影響度の値を表示する表示部と、
を備え
前記成形条件データベースは、前記成形機の制御装置に入力される指令値である前記成形条件要素を、前記成形品のそれぞれに対応付けて記憶しており、
前記成形品品質データベースは、前記成形品の成形後に検査装置によって検査された前記成形品の前記品質要素を、前記成形品のそれぞれに対応付けて記憶しており、
前記学習モデル生成部は、それぞれの前記成形品に対応付けた状態で、前記成形条件データベースに記憶されている前記成形条件要素、および、前記成形品品質データベースに記憶されている品質要素を、前記学習データとして取得し、
前記学習モデルは、
グラフィカルモデルであって、
各前記品質要素が複数の前記成形条件要素において何れの複数の前記成形条件要素に前記影響度を有しているかを表すと共に、各前記品質要素が前記影響度を有している複数の前記成形条件要素のそれぞれに対してどの程度の前記影響度を有しているかを表すモデルである
【0009】
不良品が発生した場合に、作業者は、複数の品質要素の中で、どの品質要素について不良であるかを確認する。そして、作業者が不良である品質要素を入力することによって、入力部が、確認対象の品質要素の入力を受け付けることになる。そうすると、出力部は、当該確認対象の品質要素に対して影響度を有する成形条件要素を出力する。ここで、入力部が受け付ける品質要素と、当該品質要素に対して影響度を有する成形条件要素との関係は、機械学習を適用することにより、容易に把握することができる。従って、出力部は、機械学習により生成した学習モデルを用いることにより、容易に、確認対象の品質要素に対して影響度を有する成形条件要素を出力することができる。
【0010】
そして、作業者は、不良となった品質要素を良好にするために、どの成形条件要素を変更すればよいかを把握することができる。つまり、作業者は、品質要素と成形条件要素との関係性を把握しながら作業を繰り返すことにより、熟練度を向上することができる。
【0011】
本発明に係る射出成形機は、上述した成形条件決定支援装置を有する。これにより、射出成形機による成形品の品質を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】射出成形機を示す図である。
図2】第一例の成形条件決定支援装置を示すブロック図である。
図3】学習モデル生成部における学習データを示す図である。
図4】学習モデル生成部において生成される学習モデルを示す図である。
図5】表示部における第一表示態様を示す図である。
図6】表示部における第二表示態様を示す図である。
図7】表示部における第三表示態様を示す図である。
図8】第二例の成形条件決定支援装置を示すブロック図である。
図9】表示部における第四表示態様を示す図である。
図10】表示部における第五表示態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.適用対象)
成形条件決定支援装置50は、溶融材料を成形機の型に供給することにより成形品を成形する方法に適用される。適用対象の成形方法は、例えば、樹脂またはゴム等の射出成形、ダイキャスト等の金属鋳造である。以下においては、適用対象として、主に、射出成形を例にあげて説明する。
【0014】
射出成形を行う射出成形機1について図1を参照して説明する。ここで、成形条件決定支援装置50は、射出成形機1が備える一部構成としてもよいし、射出成形機1とは別構成としてもよい。射出成形機1は、ベッド2、射出装置3、型締装置4および制御装置5を備える。射出装置3は、ベッド2上に配置され、成形材料を加熱溶融して、高圧を加えて金型6のキャビティに流し込む装置である。加熱溶融された成形材料のことを、溶融材料と称する。
【0015】
射出装置3は、ホッパ31、加熱シリンダ32、スクリュ33、ノズル34、ヒータ35、駆動装置36、射出装置用センサ37等を備える。ホッパ31は、ペレット(粒状に成形材料)の投入口である。加熱シリンダ32:ホッパ31に投入されたペレットを加熱して溶融すると共に、溶融材料を加圧する。加熱シリンダ32は、ベッド2に対して軸方向に移動可能に設けられている。スクリュ33は、加熱シリンダ32の内部に配置され、回転可能且つ軸方向へ移動可能に設けられている。
【0016】
ノズル34は、加熱シリンダ32の先端に設けられた射出口であり、スクリュ33の軸方向移動によって、加熱シリンダ32の内部の溶融材料を、金型6のキャビティに供給する。ヒータ35は、例えば加熱シリンダ32の外側に設けられており、加熱シリンダ32の内部のペレットを加熱する。駆動装置36は、加熱シリンダ32の軸方向への移動、スクリュ33の回転および軸方向移動等を行う。射出装置用センサ37は、溶融材料の貯留量、保圧力、保圧時間、射出速度、駆動装置36の状態等を取得するセンサを総称する。ただし、当該センサ37は、上記に限られず、種々の情報を取得するようにしてもよい。
【0017】
型締装置4は、ベッド2上において射出装置3に対向配置されている。型締装置4は、装着された金型6の開閉動作を行うと共に、金型6を締め付けた状態において、金型6のキャビティに射出された溶融材料の圧力により金型6が開かないようにする。
【0018】
型締装置4は、固定盤41、可動盤42、タイバー43、駆動装置44、型締装置用センサ45を備える。固定盤41は、固定側の第一金型6aが固定されている。固定盤41は、射出装置3のノズル34に当接可能であって、ノズル34から射出される溶融材料を金型6のキャビティへ導く。可動盤42は、可動側の第二金型6bが固定されており、固定盤41に対して接近および離間可能である。タイバー43は、可動盤42の移動を支持する。駆動装置44は、例えば、シリンダ装置によって構成されており、可動盤42を移動させる。型締装置用センサ45は、型締力、金型温度、駆動装置44の状態等を取得するセンサを総称する。
【0019】
制御装置5は、成形条件に関する指令値に基づいて、射出装置3の駆動装置36および型締装置4の駆動装置44を制御する。特に、制御装置5は、射出装置用センサ37および型締装置用センサ45から各種情報を取得して、指令値に応じた動作を行うように、射出装置3の駆動装置36および型締装置4の駆動装置44を制御する。
【0020】
ここで、射出成形機1による射出成形方法について説明する。計量工程、型締工程、射出充填工程、保圧冷却工程、離型取出工程が順次実行される。計量工程において、ヒータ35の加熱およびスクリュ33の回転に伴うせん断摩擦熱によってペレットが溶融されながら、溶融材料が加熱シリンダ32の先端とノズル34の間に貯留される。溶融材料の貯留量の増加に伴ってスクリュ33が後退するため、スクリュ33の後退位置から溶融材料の貯留量の計量が行われる。
【0021】
続いて、型締工程において、可動盤42を移動させて、第一金型6aと第二金型6bとを合わせることにより、型締めを行う。さらに、ノズル34を型締装置4の固定盤41に接続する。続いて、射出充填工程において、スクリュ33の回転を停止した状態において、スクリュ33をノズル34に向けて移動させることにより、溶融材料を高い圧力で金型6のキャビティに射出充填する。射出充填の後、保圧冷却工程において、金型6のキャビティの溶融材料が所定の圧力に保たれるように、ノズル34を固定盤41に押し当てたままにして保圧する。そして、金型6を冷却することで、金型6のキャビティにおける溶融材料を固化させる。最後に、離型取出工程において、第一金型6aと第二金型6bとを離間させて、成形品を取り出す。
【0022】
(2.第一例の成形条件決定支援装置50の構成)
第一例の成形条件決定支援装置50(以下、支援装置と称する)の構成について、図2図4を参照して説明する。支援装置50は、成形条件データベース51、成形品品質データベース52、学習モデル生成部53、学習モデル記憶部54、入力部55、出力部56、および、表示部57を備える。
【0023】
成形条件データベース51は、制御装置5に指令値として入力される多数の成形品の成形条件要素を、それぞれの成形品に対応付けられて記憶する。成形条件要素とは、例えば、図3に示すように、金型温度、保圧力、射出速度、保圧時間、型締力、加熱シリンダ32における溶融材料の貯留量等が含まれる。成形条件データベース51には、多数の成形品に関する成形条件要素が記憶されている。つまり、成形条件データベース51には、多数の成形品の形状、多数の成形品の材質に関する成形条件要素が記憶されている。
【0024】
成形品品質データベース52は、多数の成形品の品質要素を、それぞれの成形品に対応付けられて記憶する。品質要素には、図3に示すように、質量、寸法、ボイド状態、焼け状態等が含まれる。品質要素は、成形品の成形後に、検査装置(図示せず)等によって検査された情報である。また、品質要素は、各要素の検査数値そのものの値としてもよいし、各要素の検査数値を評価値に置換した値としてもよい。
【0025】
なお、成形条件データベース51と成形品品質データベース52とは、別々のデータベースである場合を例にあげるが、これらが一体となったデータベースとすることもできる。この場合、成形条件要素と成形品の品質要素とが、それぞれの成形品に対応付けられて記憶されることになる。
【0026】
学習モデル生成部53は、機械学習の学習フェーズにおいて機能し、学習モデルを生成する。学習モデルは、グラフィカルモデルを適用しており、すなわち確率変数間の条件付き依存構造を示しているような確率モデルである。学習モデル生成部53において適用する機械学習は、教師あり学習を例にあげるが、他の機械学習アルゴリズムを適用することもできる。機械学習は、例えば、ディープラーニング、グラフィカルラッソ、グラフィカル・ガウシアン・モデル、ベイジアンネットワーク等である。学習モデル生成部53により生成された学習モデルは、学習モデル記憶部54に記憶される。
【0027】
学習モデル生成部53は、図3に示すように、それぞれの成形品に対応付けた状態で、成形条件データベース51に記憶されている成形条件要素、および、成形品品質データベース52に記憶されている品質要素を、学習データとして取得する。つまり、学習モデル生成部53は、それぞれの成形品に関して、成形条件要素および品質要素を、学習データとする機械学習を行う。
【0028】
そして、学習モデル生成部53は、当該機械学習により、品質要素毎に、品質要素と成形条件要素の影響度とに関する学習モデルを生成する。学習モデルは、例えば、図4に示すようなグラフィカルモデルである。すなわち、学習モデルは、各品質要素がどの成形条件要件に依存しているか(影響度を有しているか)を表されている。さらには、学習モデルは、各品質要素がどの成形条件要件にどの程度の影響度(依存度)を有しているかも表されている。
【0029】
例えば、図4において、品質要素の1つである成形品の質量は、成形条件要素のうち、Aが40%、Bが20%、Eが6%、Fが5%、Gが5%の影響度を有していることが分かる。また、品質要素の1つである成形品の形状も、同様である。なお、図4において、A等の記号は、各成形条件要素を概念化簡略化して示し、例えば保圧力等である。
【0030】
入力部55、出力部56および表示部57は、機械学習の推定フェーズ(推論フェーズとも称する)において機能する。ここで、推定フェーズにおいては、以下のように利用される。射出成形機1を使用する作業者が、成形品の品質要素を取得する。取得した成形品の品質要素が目標値からずれている場合に、作業者は、当該品質要素を目標値に近づけるために、どの成形条件要素を調整する必要がある。そこで、作業者は、支援装置50を用いて、目標値からずれている品質要素を入力する。そうすると、支援装置50が、当該品質要素に対して影響度を有する成形条件要素を自動的に出力する。従って、作業者は、目標値からずれている品質要素を入力することで、当該品質要素に影響度を有する成形条件要素を得ることができるため、影響度を有する成形条件要素を調整すればよいと判断できる。ここで、以下において、作業者が、支援装置50に入力する品質要素を、確認対象の品質要素と称する。
【0031】
入力部55は、作業者による確認対象の品質要素の入力を受け付ける。確認対象の品質要素は、上述したように、例えば、目標値からずれている品質要素である。さらに、入力部55は、確認対象の品質要素に対応する成形条件要素の影響度を出力する場合に、影響度を出力することを作業者による入力情報として受け付ける。さらに、入力部55は、後述する出力部56が出力する出力条件の入力を受け付ける。出力条件は、出力対象を、影響度降順と影響度昇順との何れとするか(表示順序)、全数と予め設定された出力される要素数との何れとするか(表示要素数)、影響度の値を出力するか否か等である。
【0032】
出力部56は、学習モデル記憶部54に記憶されている学習モデルを用いて、入力部55に入力された確認対象の品質要素に対して、影響度を有する成形条件要素を出力する。ただし、出力部56は、影響度の高い成形条件要素を出力するようにしてもよい。例えば、出力部56は、影響度の値が所定値よりも高い成形条件要素を出力するようにしてもよいし、影響度の高い順に上位からの予め設定された要素数の成形条件要素を出力するようにしてもよい。もちろん、出力部56は、影響度を有する全ての成形条件要素を出力するようにしてもよい。さらに、出力部56は、影響度を有する成形条件要素毎に、影響度の値も出力する。表示部57は、入力部55に入力された入力情報および出力条件、並びに、出力部56により出力された出力情報を表示する。表示部57の詳細は、後述する。
【0033】
(3.表示部57の第一表示態様)
表示部57の第一表示態様について図5を参照して説明する。本態様は、入力部55において、入力情報である確認対象の品質要素として質量が入力され、出力条件として、影響度降順、全数、影響度無しが入力されている。この場合、表示部57(図5の左欄)には、入力情報、出力条件が表示される。
【0034】
さらに、表示部57(図5の右欄)には、出力部56により出力された出力情報が表示される。図5に示すように、表示部57には、成形品の質量に対して影響度を有する成形条件要素の全てが、影響度が高い順に表示されている。すなわち、表示部57には、質量に最も影響度の高い「A」が最上段に表示され、順に、「C」、「E」、「F」、「G」が表示されている。
【0035】
作業者は、質量が目標値からずれている場合に、上記のように質量を入力部55にて入力しているとする。そうすると、図5に示すように、表示部57に表示されることで、作業者は、質量に影響を及ぼす成形条件要素を把握することができる。例えば、作業者は、影響度の高い順に、成形条件要素を調整し、成形品の品質が目標値となるようにすることができる。
【0036】
このように、不良品が発生した場合に、作業者は、複数の品質要素の中で、どの品質要素について不良であるかを確認する。そして、作業者が不良である品質要素を入力することによって、入力部が、確認対象の品質要素の入力を受け付けることになる。そうすると、出力部56は、当該確認対象の品質要素に対して影響度を有する成形条件要素を出力する。ここで、入力部55が受け付ける品質要素と、当該品質要素に対して影響度を有する成形条件要素との関係は、機械学習を適用することにより、容易に把握することができる。従って、出力部56は、機械学習により生成した学習モデルを用いることにより、容易に、確認対象の品質要素に対して影響度を有する成形条件要素を出力することができる。
【0037】
そして、作業者は、不良となった品質要素を良好にするために、どの成形条件要素を変更すればよいかを把握することができる。つまり、作業者は、品質要素と成形条件要素との関係性を把握しながら作業を繰り返すことにより、熟練度を向上することができる。
【0038】
(4.表示部57の第二表示態様)
表示部57の第二表示態様について図6を参照して説明する。本態様は、入力部55において、入力情報である確認対象の品質要素として質量が入力され、出力条件として、影響度降順、全数、影響度有りが入力されている。この場合、表示部57(図6の左欄)には、入力情報、出力条件が表示される。
【0039】
さらに、表示部57(図6の右欄)には、出力部56により出力された出力情報が表示される。図6に示すように、表示部57には、成形品の質量に対して影響度を有する成形条件要素の全てが、影響度が高い順に表示されている。すなわち、表示部57には、質量に最も影響度の高い「A」が最上段に表示され、その影響度が40%であることが合わせて表示されている。さらに、表示部57には、順に、「C:20%」、「E:6%」、「F:5%」、「G:5%」が表示されている。
【0040】
作業者は、質量が目標値からずれている場合に、上記のように質量を入力部55にて入力しているとする。そうすると、図6に示すように、表示部57に表示されることで、作業者は、質量に影響を及ぼす成形条件要素を把握することができる。さらに、作業者は、質量に影響を及ぼす成形条件要素の影響度を把握することができる。例えば、作業者は、目標値とのずれ量を考慮して、どの程度の影響度の成形条件要素を調整するかを判断することができる。例えば、作業者は、影響度が最も高い成形条件要素ではなく、影響度20%の成形条件要素を調整することを選択することができる。
【0041】
このように、作業者は、成形条件要素の影響度の値を考慮することで、どの程度の影響度を有する成形条件要素をどのように調整するかを検討することができる。例えば、品質要素が目標値から僅かにずれている場合や、品質要素が目標値から大きくずれている場合に、どの成形条件要素を調整するかを検討することができる。
【0042】
(5.表示部57の第三表示態様)
表示部57の第三表示態様について図7を参照して説明する。本態様は、入力部55において、入力情報である確認対象の品質要素として質量が入力され、出力条件として、影響度降順、設定された要素数として上位4個、影響度有りが入力されている。この場合、表示部57(図7の左欄)には、入力情報、出力条件が表示される。
【0043】
さらに、表示部57(図7の右欄)には、出力部56により出力された出力情報が表示される。図7に示すように、表示部57には、成形品の質量に対して影響度を有する成形条件要素のうち上位4個が、影響度が高い順に表示されている。すなわち、表示部57には、質量に最も影響度の高い「A」が最上段に表示され、その影響度が40%であることが合わせて表示されている。さらに、表示部57には、順に、「C:20%」、「E:6%」、「F:5%」が表示されている。
【0044】
作業者は、質量が目標値からずれている場合に、上記のように質量を入力部55にて入力しているとする。そうすると、図7に示すように、表示部57に表示されることで、作業者は、質量に影響を及ぼす成形条件要素を把握することができる。さらに、作業者は、質量に影響を及ぼす成形条件要素の影響度を把握することができる。例えば、作業者は、目標値とのずれ量を考慮して、どの程度の影響度の成形条件要素を調整するかを判断することができる。例えば、作業者は、影響度が最も高い成形条件要素ではなく、影響度20%の成形条件要素を調整することを選択することができる。また、概ね影響度が上位の所定数となる成形条件要素を調整することで十分であるため、所定の要素数の分のみを出力情報として表示することで、表示部57の表示内容をより見やすくすることができる。
【0045】
(6.第二例の成形条件決定支援装置150の構成)
第二例の成形条件決定支援装置150(以下、支援装置と称する)の構成について、図8を参照して説明する。支援装置150は、成形条件データベース51、成形品品質データベース52、学習モデル生成部53、学習モデル記憶部54、品質目標値記憶部158、入力部155、出力部156、表示部157を備える。なお、第一例の支援装置50と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
入力部155は、確認対象の品質要素、出力条件(表示順序、表示要素数、影響度を出力するか否かに関する情報)の入力を受け付ける。さらに、入力部155は、確認対象の品質要素が目標値からずれている場合に、確認対象の品質要素、および、品質要素の目標値とのずれ量の入力を受け付けることができる。または、入力部155は、確認対象の品質要素の値そのものの入力を受け付けることができる。
【0047】
品質目標値記憶部158は、対象の成形品に関する品質要素の目標値が記憶されている。品質要素の目標値は、入力部155に成形品の品質要素の値が入力された場合に、比較するための情報として用いられる。
【0048】
出力部156は、学習モデルを用いて、確認対象の品質要素に対して、影響度を有する成形条件要素を出力する。出力部156は、上述した第一例の支援装置50における出力部56と同様の機能を有する。さらに、出力部156は、確認対象の品質要素をずれ量だけ調整することを目的とした場合に、影響度に応じて、調整する成形条件要素を推薦する機能を有する。つまり、出力部156は、学習モデルを用いて、確認対象の品質要素において、影響度およびずれ量に基づいて、調整する成形条件要素を推薦する。さらに、出力部156は、影響度に応じて、調整する前記成形条件要素を推薦することに加えて、調整する成形条件要素の調整量を推薦する機能をも有する。
【0049】
表示部157は、入力部155に入力された入力情報および出力条件、並びに、出力部156により出力された出力情報を表示する。表示部157の詳細は、後述する。
【0050】
(7.表示部157の第四表示態様)
表示部157の第四表示態様について図9を参照して説明する。本態様は、入力部155において、入力情報である確認対象の品質要素として質量、および、当該確認対象の品質要素の値と目標値のずれ量が入力される。また、本態様は、入力部155において、出力条件として、調整推薦順、設定された要素数として上位4個、影響度有りが入力されている。この場合、表示部157(図9の左欄)には、入力情報、出力条件が表示される。
【0051】
さらに、表示部157(図9の右欄)には、出力部156により出力された出力情報が表示される。図9に示すように、表示部157には、成形品の質量に対して影響度を有する成形条件要素のうち調整推薦順の上位4個が、推薦順の高い順に表示されている。すなわち、表示部157には、質量のずれ量を調整するために、最も推薦順の高い「C」が最上段に表示され、その影響度が20%であること、および、その調整量の値が合わせて表示されている。さらに、表示部157には、推薦順に、「E:6%(影響度)、○○(調整量)」、「F:5%(影響度)、○○(調整量)」、「G:5%(影響度)、○○(調整量)」が表示されている。
【0052】
作業者は、質量が目標値からずれている場合に、上記のように質量およびずれ量を入力部155にて入力しているとする。そうすると、図9に示すように、表示部157に表示されることで、作業者は、質量に影響を及ぼす成形条件要素を把握することができる。さらに、作業者は、質量をずれ量分だけ調整するために、どの成形条件要素をその程度調整するかを把握することができる。
【0053】
ここで、確認対象の品質要素をずれ量分だけ調整する場合において、推薦対象は1つとは限られず、複数の推薦対象が出力されることがある。この場合に、推薦順に複数の推薦対象が表示部157に表示されることで、作業者は、複数の推薦対象を把握することができる。これにより、作業者は、成形品の品質要素が目標値となるように調整することが可能となる。
【0054】
(8.表示部157の第五表示態様)
表示部157の第五表示態様について図10を参照して説明する。本態様は、入力部155において、入力情報である確認対象の品質要素として質量、および、当該確認対象の品質要素の値が入力される。また、本態様は、入力部155において、出力条件として、調整推薦順、設定された要素数として上位4個、影響度有りが入力されている。この場合、表示部157(図10の左欄)には、入力情報、出力条件が表示される。
【0055】
さらに、表示部157(図10の右欄)には、出力部156により出力された出力情報が表示される。図10に示すように、表示部157には、成形品の質量に対して影響度を有する成形条件要素のうち調整推薦順の上位4個が、推薦順の高い順に表示されている。ここで、出力部156は、入力部155に入力された確認対象の品質要素の値と、品質目標値記憶部158に記憶されている目標値とを比較することにより、ずれ量を得ることができる。そして、出力部156は、当該ずれ量に基づいて、調整推薦順が決定されている。
【0056】
そして、表示部157には、質量のずれ量を調整するために、最も推薦順の高い「C」が最上段に表示され、その影響度が20%であること、および、その調整量の値が合わせて表示されている。さらに、表示部157には、推薦順に、「E:6%(影響度)、○○(調整量)」、「F:5%(影響度)、○○(調整量)」、「G:5%(影響度)、○○(調整量)」が表示されている。
【0057】
作業者は、確認対象の品質要素が目標値からずれている場合に、ずれ量を計算することなく、確認対象の品質要素の値そのものを入力している。そうすると、図10に示すように、表示部157に表示されることで、作業者は、質量のずれ量を調整するために、どの成形条件要素をどの程度調整すればよいかを把握することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:射出成形機、 2:ベッド、 3:射出装置、 4:型締装置、 5:制御装置、 6:金型、 6a:第一金型、 6b:第二金型、 31:ホッパ、 32:加熱シリンダ、 33:スクリュ、 34:ノズル、 35:ヒータ、 36:駆動装置、 37:射出装置用センサ、 41:固定盤、 42:可動盤、 43:タイバー、 44:駆動装置、 45:型締装置用センサ、 50,150:成形条件決定支援装置、 51:成形条件データベース、 52:成形品品質データベース、 53:学習モデル生成部、 54:学習モデル記憶部、 55,155:入力部、 56,156:出力部、 57,157:表示部、 158:品質目標値記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10