(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 1/08 20060101AFI20221018BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20221018BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F01N1/08 B
F01N3/24 C
F01N3/24 J
F01N3/24 K
F01N3/28 301G
F01N3/28 301U
F01N1/08 Z
(21)【出願番号】P 2018195720
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】村松 剛吉
(72)【発明者】
【氏名】武田 哲志
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4049388(US,A)
【文献】特開2018-76821(JP,A)
【文献】特開2009-41562(JP,A)
【文献】実開昭54-121131(JP,U)
【文献】実開平2-19815(JP,U)
【文献】国際公開第2017/104098(WO,A1)
【文献】特開2017-227128(JP,A)
【文献】特開2016-160914(JP,A)
【文献】特開2015-68204(JP,A)
【文献】特開2016-113927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0050618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/08
F01N 3/24
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のエンジンに接続される排気管と、
前記排気管の下流側に接続されるチャンバと、
前記チャンバ内で車両前後方向に配置される少なくとも2つの触媒と、
前記2つの触媒を接続する接続パイプと、を備え、
前記接続パイプには、パンチング孔が設けられ
、
前記チャンバ内で前側に位置する一方の触媒は、軸心が車両前後方向に向けられ、
前記チャンバ内で後側に位置する他方の触媒は、下流端が車両外側に向くように斜めに配置され、
前記接続パイプは、前記一方の触媒から前記他方の触媒に向かって曲げられていることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
車両用のエンジンに接続される排気管と、
前記排気管の下流側に接続されるチャンバと、
前記チャンバ内で車両前後方向に配置される少なくとも2つの触媒と、
前記2つの触媒を接続する接続パイプと、を備え、
前記接続パイプには、パンチング孔が設けられ、
前記接続パイプに配置される排気ガスセンサを更に備え、
前記排気ガスセンサは、前記パンチング孔の上流側に配置されることを特徴とする排気装置。
【請求項3】
一方の前記触媒は、前記軸心が前記チャンバの幅中心よりも車両内側に配置され、
他方の前記触媒は、少なくとも一部が前記チャンバの幅中心よりも車両外側に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の排気装置。
【請求項4】
前記一方の触媒の下流端と前記他方の触媒の上流端とは、近接して配置されることを特徴とする請求項1
又は請求項3に記載の排気装置。
【請求項5】
前記触媒は、軸方向に直交する断面が前記チャンバの厚み方向に短い楕円形状を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の排気装置。
【請求項6】
前記接続パイプは、前記触媒の楕円形状の長手方向に対応する上面部と下面部とを有し、
前記パンチング孔は、前記上面部及び/又は前記下面部に形成されることを特徴とする請求項5に記載の排気装置。
【請求項7】
前記パンチング孔は、
前記チャンバの中央に集中して複数配置されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の排気装置。
【請求項8】
前記排気ガスセンサは、前記接続パイプの曲げ部外側に配置されることを特徴とする請求項
2に記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の排気ガス規制に対応するため、触媒の浄化性能を向上することが求められている。例えば特許文献1では、消音装置を構成する排気チャンバ内に複数の触媒が配置されている。またその他に、触媒を大型化する等して所望の浄化性能を担保することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように排気チャンバ内に触媒を配置すると、触媒を通過した後の排気ガスがチャンバ内の空間に全て開放されてしまい、特定のエンジン回転数(例えば低中回転域)において出力に谷ができやすくなってしまう。また、排気の流れを考慮して、排気ガスがマフラーに向かいやすくなるようにチャンバの容積を減らすことも考えられるが、消音性能が低下してしまうことが想定される。
【0005】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、消音性能の向上と出力の谷を回避することが可能な排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排気装置は、車両用のエンジンに接続される排気管と、前記排気管の下流側に接続されるチャンバと、前記チャンバ内で車両前後方向に配置される少なくとも2つの触媒と、前記2つの触媒を接続する接続パイプと、を備え、前記接続パイプには、パンチング孔が設けられる。
本発明の一態様では、前記チャンバ内で前側に位置する一方の触媒は、軸心が車両前後方向に向けられ、前記チャンバ内で後側に位置する他方の触媒は、下流端が車両外側に向くように斜めに配置され、前記接続パイプは、前記一方の触媒から前記他方の触媒に向かって曲げられている。
本発明の別の態様では、前記接続パイプに配置される排気ガスセンサを更に備え、
前記排気ガスセンサは、前記パンチング孔の上流側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消音性能の向上と出力の谷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施の形態に係る排気装置の上面図である。
【
図3】本実施の形態に係るチャンバの内部構造を示す斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係るチャンバの内部構造を示す上面図である。
【
図5】変形例に係るチャンバの内部構造を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明をスポーツタイプの二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を、他のタイプの車両、例えばバギータイプの三輪車、四輪車等の鞍乗型車両に適用してもよい。また、方向について、車両前方を矢印FR、車両後方を矢印RE、車両左方を矢印L、車両右方を矢印Rでそれぞれ示す。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
【0010】
図1を参照して、本実施の形態に係る車両の概略構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る排気装置周辺の右側面図である。
【0011】
図1に示すように、車両1は、スポーツタイプの自動二輪車であり、鋼製又はアルミ合金製の車体フレーム2にエンジン3を懸架(支持)して構成される。エンジン3は、例えば、並列4気筒エンジンで構成される。エンジン3は、クランクシャフト(不図示)等が収容されるエンジンケース30の上部に、シリンダヘッド31及びシリンダヘッドカバー32を取り付けて構成される。エンジンケース30の下部には、オイルパン33が設けられる。
【0012】
車体フレーム2は、アルミ鋳造で形成されるツインスパータイプのフレームであり、上記のようにエンジン3を懸架することで、車体全体として剛性が得られるように構成される。車体フレーム2は、全体として、前方から後方に向かって延在し、後端側で下方に向かって湾曲した形状を有している。
【0013】
具体的に車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から後方に向かって左右二股に分岐して延びるメインフレーム21と、メインフレーム21の後端から下方に延びるボディフレーム22とを備えている。メインフレーム21の上部には、燃料タンク(不図示)が配置される。ボディフレーム22の上下方向の略中央部分には、スイングアーム10が揺動可能に支持されている。スイングアーム10は、後方に向かって延びている。スイングアーム10の後端には後輪11が回転可能に支持されている。
【0014】
ボディフレーム22の上端には、後上方に向かって延びるシートレール23が設けられている。シートレール23には、ライダーシート及びピリオンシート(共に不図示)が設けられる。
【0015】
ヘッドパイプ20には、ステアリングシャフトを介して左右一対のフロントフォークが操舵可能に支持される(共に不図示)。フロントフォークの下部には前輪(不図示)が回転可能に支持される。
【0016】
また、シリンダヘッド31の各排気ポートには、排気装置4の一部としてエキゾーストパイプ40(排気管)が接続される。エキゾーストパイプ40は、各排気ポートから下方に向かって複数本(本実施の形態では4本)延び、エンジン3の前下方で後方に屈曲した後、1本にまとめられ、車両後方に向かって延びている。
【0017】
エキゾーストパイプ40の後端(下流側)には、消音器としてのチャンバ41が接続されている。チャンバ41内には、後述する触媒42、43(
図3及び
図4参照)が配置されている。チャンバ41の下流端には、後上方に向かって延びるマフラジョイントパイプ44が接続されており、マフラジョイントパイプ44の後端にはマフラ(不図示)が接続される。エンジン3からの排気ガスは、エキゾーストパイプ40を通じてチャンバ41内で触媒42、43により浄化された後、マフラジョイントパイプ44及びマフラを通じて外部に排出される。排気装置4の詳細については後述する。
【0018】
次に
図2から
図4を参照して、本実施の形態に係る排気装置について説明する。
図2は、本実施の形態に係る排気装置の上面図である。
図3は、本実施の形態に係るチャンバ周辺の構造を示す斜視図である。
図4は、本実施の形態に係るチャンバ周辺の構造を示す上面図である。
【0019】
図2から
図4に示すように、排気装置4は、車両用のエンジン3(
図1参照)に接続されるエキゾーストパイプ40と、エキゾーストパイプ40の下流側に接続されるチャンバ41と、チャンバ41内に配置される2つの触媒42、43と、チャンバ41の下流側に接続されるマフラジョイントパイプ44と、マフラ(不図示)等を含んで構成される。
【0020】
図2に示すように、エキゾーストパイプ40は、シリンダヘッド31(
図1参照)の各排気ポート(不図示)から下方に延出されている。便宜上、車幅方向左側からエキゾーストパイプ40a、40b、40c、40dと呼ぶことにする。
【0021】
4つのエキゾーストパイプ40a-40dは、エンジンケース30の前下方で後方に屈曲している。左側の2つのエキゾーストパイプ40a、40bは、第1集合パイプ45aに接続されて1つにまとめられ、左側の2つのエキゾーストパイプ40c、40dは、第1集合パイプ45bに接続されて1つにまとめられる。更に第1集合パイプ45a、45bはそれぞれ後方に延び、第2集合パイプ46に接続されて1つにまとめられる。第2集合パイプ46は、円形断面を有する。第2集合パイプ46の後端には、第1テーパパイプ47(コネクタパイプと呼ばれてもよい)を介してチャンバ41が接続される。
【0022】
第1テーパパイプ47は、第2集合パイプ46とチャンバ41とを接続する。第1テーパパイプ47は、軸方向断面が円形状から左右方向に長い楕円形状に変化するように、上流から下流に向かって左右方向に拡径する一方、上下方向に縮径している。第1テーパパイプ47は、短手方向に分けられた一対の分割体を溶接して筒状に形成される。第1テーパパイプ47の下流端は、チャンバ41の前端を貫通した後、チャンバ41内で楕円形状の触媒42に接続される。
【0023】
チャンバ41は、上面視矩形状の直方体形状を有し、前後左右方向に比べて上下(高さ)方向の寸法が小さい箱型に形成される。具体的にチャンバ41は、上下割の上半部41a及び下半部41bと、後端を塞ぐ蓋部材としてのテール部41cとによって構成される。また、チャンバ41は、二重箱構造を有しており、
図3及び
図4に示すように、内側部41dと外側部41eとを備えている。なお、
図3及び
図4では、説明の便宜上、上半部41aを省略しており、下半部41bの二重箱構造のみを示している。これらの構成により、チャンバ41内に排気ガスの開放空間Sが形成される。
【0024】
チャンバ41内には、2つの触媒42、43が配置されている。触媒42、43は、軸方向に直交する断面が左右方向又は前後方向に長い楕円形状を有し、外筒部内にハニカム部を収容して構成される。触媒42、43は、例えば三元触媒で構成され、排気ガス内の汚染物質(一酸化炭素、炭化水素や窒素酸化物等)を吸着して無害な物質(二酸化炭素、水、窒素等)に変換し浄化する。2つの触媒42、43は、略同一形状を有しており、チャンバ41内で車両前後方向に並んで配置される。
【0025】
具体的に触媒42は、チャンバ41内の前側で且つ車両内側である左側に偏って配置されている。チャンバ41内で前側に位置する一方の触媒42の軸心は、車両前後方向に向けられている。また、触媒42の軸心は、チャンバ41の左右方向の幅中心よりも車両内側(左側)に配置されている。
【0026】
触媒43は、触媒42より後方において、チャンバ41内で車両外側である右側に偏って配置されている。触媒43の少なくとも一部は、チャンバ41の左右方向の幅中心よりも車両外側(右側)に配置されている。チャンバ41内で後側に位置する他方の触媒43は、下流端が車両外側に向くように斜めに配置されている。より具体的に触媒43の軸心は、右後上方に向けて傾けられている。
【0027】
触媒42の下流端と触媒43の上流端は、接続パイプ48によって接続される。接続パイプ48は、触媒42、43間の排気流路を前後方向から車両外側の後上方に向かって曲げるように形成される。すなわち、接続パイプ48は、一方の触媒42から他方の触媒43に向かって曲げられている。より具体的に接続パイプ48は、車両内側に比べて車両外側の曲率半径が大きい上面視略扇型(やや三角形に近い形状)に形成される。また、接続パイプ48の軸方向断面は、触媒42、43と同様に水平方向に長い楕円形状を有する。
【0028】
接続パイプ48は、上半部と下半部(便宜上図示は省略)を溶接等で結合して筒状に形成される。このように、接続パイプ48を上下割の構造としたことで、急激な曲げRを有する扇状に接続パイプ48を形成することが可能となっている。また、接続パイプ48を急激な曲げRで形成したことで、その前後の2つの触媒42、43を近接配置することが可能である。具体的に一方の触媒42の下流端と他方の触媒43の上流端とは、接続パイプ48の外周側(曲げRの大きい側)よりも内周側(曲げRの小さい側)においてその対向間隔が小さくなっている。すなわち、触媒42の下流端と触媒43の上流端とは、接続パイプ48の外周側よりも内周側の方が互いに近くなるように配置されている。
【0029】
上記したように接続パイプ48は、軸方向に直交する断面が水平方向に長い楕円形状であり、短手方向に分けられた一対の分割体(上半部及び下半部)を溶接して筒状に形成されている。すなわち、接続パイプ48は、楕円形状の長手方向に対応する上面部48aと下面部(不図示)とを有している。なお、
図3及び
図4では、説明の便宜上、上面部48aのみ図示している。上面部48a及び下面部は、曲率半径が十分に大きい略平坦に近い外面形状を有している。すなわち、上面部48a及び下面部は、上下方向に僅かに凸となるように緩やかに湾曲した略平面形状となっている。
【0030】
上面部48a及び下面部には、厚み方向に貫通する複数のパンチング孔48b(下面部側は不図示)が形成されている。複数のパンチング孔48bは、上面部48aの平面視形状に対応して等間隔で三角格子を形成するように配置される。また、複数のパンチング孔48bは、チャンバ41の平面視中央に集中して配置される。下面部も同様である。なお、パンチング孔48bの形状、大きさ、配置数、配置間隔等は、要求される出力や消音性能に応じて適宜変更が可能である。
【0031】
触媒43の下流端には、第2テーパパイプ49を介してマフラジョイントパイプ44が接続される。第2テーパパイプ49は、触媒43とマフラジョイントパイプ44とを接続する。第2テーパパイプ49は、軸方向断面が楕円形状から円形状に変化するように、上流から下流に向かって楕円形状の短手方向に拡径する一方、長手方向に縮径している。第2テーパパイプ49は、短手方向に分けられた一対の分割体を溶接して筒状に形成される。触媒43の下流端側の一部及び第2テーパパイプ49は、チャンバ41の上半部41aから後上方に向かって突出している。第2テーパパイプ49の下流端には、マフラジョイントパイプ44が接続される。マフラジョイントパイプ44は、後輪11に向かって後上方に延びている。マフラジョイントパイプ44の下流端には、マフラ(不図示)が接続される。マフラは、側面視で後輪11と重なるように配置される。
【0032】
また、第1テーパパイプ47には、触媒42の上流側で排気流路内の排気ガス成分を検出する排気ガスセンサ50が設けられている。排気ガスセンサ50は、例えばジルコニア式酸素センサで構成され、所定長さの円柱形状を有する。排気ガスセンサ50の一端側は検出部を構成し、その先端が第1テーパパイプ47の内部に貫通するように取り付けられる。排気ガスセンサ50の他端側には配線(不図示)が接続される。排気ガスセンサ50の軸方向は、左右方向で他端側(配線側)が車両内側に向けられている。
【0033】
排気ガスセンサ50は、排気ガス内の酸素濃度に応じて出力(電流値)が変化し、その電流値は、配線を経由して不図示のECU(Electronic Control Unit)に出力される。なお、排気ガスセンサ50は、酸素センサに限らず、例えば、空燃比センサであってもよい。
【0034】
このように構成される排気装置4において、エンジン3から発生する排気ガスは、エキゾーストパイプ40を通じてチャンバ41内に流れ込む。排気ガスがチャンバ41に流れ込む際には、排気ガスセンサ50の先端に排気ガスが当たることで浄化前の排気ガス中の酸素濃度を検出することができる。チャンバ41内において、排気ガスは先ず、上流側の触媒42に流れ込み浄化される。浄化された後の排気ガスは、接続パイプ48を通じて触媒43に流れ込み更に浄化される。接続パイプ48を流れる排気ガスの一部は、複数のパンチング孔48bを通じてチャンバ41内の開放空間Sに拡散される。触媒43で更に浄化された排気ガスは、マフラジョイントパイプ44を通じてマフラにより消音され、外部に排出される。
【0035】
ところで、昨今の排気ガス規制に対応するために触媒の浄化性能を向上させる必要があり、触媒を大型化したり、触媒を複数設けたりして対応している。また、車両の外観やレイアウトを考慮すると、チャンバ内に触媒を配置することが望まれている。しかし、一般的にチャンバ内に触媒を配置すると、触媒通過後の排気ガスがチャンバ内の空間に全て開放されてしまい、所定のエンジン回転数(特に低中回転域)で出力の谷ができやすくなってしまう。この場合、排気の流れをマフラーに向いやすくするためにチャンバ容積を減らすと、消音性能が低下してしまう。また、そもそもチャンバの容積には制約があるため、チャンバ内に複数の触媒を配置することが難しい。
【0036】
そこで、本件発明者は、チャンバ内に複数の触媒を配置する場合の位置関係及びその接続構成に着目し、本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、チャンバ41内に2つの触媒42、43を車両前後方向に並べて配置し、2つの触媒42、43を接続パイプ48で接続した。更に、接続パイプ48に複数のパンチング孔48bを形成した。
【0037】
これらの構成によれば、排気ガスが複数のパンチング孔48bを通じてチャンバ41内に拡散される。すなわち、排気ガスがダイレクトにチャンバ41内に開放されることなく、パンチング孔48bを介して徐々に排気ガスをチャンバ41内に拡散(開放)することができる。このように、排気ガスの一部をパンチング孔48bから開放して消音効果を向上させつつも、排気ガスの他の一部は、接続パイプ48を通じて下流側に円滑に流れることができる。よって、特定のエンジン回転数域での出力変動(低下)を抑制することが可能である。すなわち、消音性能の向上と出力の谷を回避することを両立することが可能である。
【0038】
また、触媒42の軸心を車両前後方向に向ける一方、触媒43の下流端が車両外側に向くように配置し、接続パイプ48を触媒42から触媒43に向かって曲げる構成とした。更に、触媒42は、軸心がチャンバ41の幅中心よりも車両内側に配置され、触媒43は、少なくとも一部がチャンバ41の幅中心よりも車両外側に配置される構成とした。これらの構成によれば、チャンバ41内に2つの触媒42、43を配置した際の前後長を抑えることができ、車両におけるチャンバ41のレイアウト性を向上することができる。また、排気流路を曲げつつも排気ガスの流れを阻害することがないため、配置ガスを下流側に円滑に流すことができ、特定のエンジン回転数域での出力低下を抑制することが可能である。
【0039】
また、触媒42の下流端と触媒43の上流端とを近接配置したことで、触媒42、43間の排気流路を短くすることができる。この結果、排気上流側の触媒42だけでなく、排気下流側の触媒43も早期に温度活性化させることが可能である。
【0040】
また、触媒42、43が、軸方向に直交する断面がチャンバ41の厚み方向に短い楕円形状を有することで、触媒42、43を平面視で大型化しつつも、チャンバ41の高さ寸法を抑えることが可能である。
【0041】
また、接続パイプ48が、触媒42、43の長手方向に対応する上面部48a及び下面部を有し、複数のパンチング孔48bは、上面部48a及び/又は下面部にのみ形成される構成とした。すなわち、接続パイプ48の側面には、パンチング孔が形成されていない。接続パイプ48の側面には上半部及び下半部の溶接箇所が位置するため、当該側面にパンチング孔を設けないことで、溶接箇所から必要以上に排気ガスが漏れることを防止できる。この結果、出力の谷を抑制することが可能である。特に接続パイプ48の外周側は、内周側に比べて流速が速く排気ガスが流れやすいので、より効果的である。また、接続パイプ48の側面にパンチング孔を設けなくても、略平坦な上面部48a及び下面部にパンチング孔48bを形成するために十分な面積を確保することができる。よって、上面部48a及び下面部でパンチング孔48bの数をかせぐことができ、チャンバ41の消音性能を確保することが可能である。
【0042】
次に、
図5を参照して変形例について説明する。
図5は、変形例に係るチャンバの内部構造を示す上面図である。変形例では、第1テーパパイプ47に設けられる排気ガスセンサ50に加え、接続パイプ48にも同じ排気ガスセンサ51を配置した点で本実施の形態と相違する。
【0043】
図5に示すように、接続パイプ48の上面部48aには、触媒42の下流側で排気流路内の排気ガス成分を検出する排気ガスセンサ51が設けられている。排気ガスセンサ51の基本構成は、上記した排気ガスセンサ50と同じである。
【0044】
排気ガスセンサ51の先端(検出部)は、接続パイプ48の内部に貫通するように取り付けられ、軸方向が鉛直方向に対して他端側(配線側)が車両内側且つ後方に向かって僅かに傾斜している。これにより、触媒42で浄化された後の排気ガスの酸素濃度を検出することが可能である。触媒42の前後の排気ガス成分を検出することで、触媒42の劣化診断を実施することが可能である。また、触媒42の状態から触媒43の劣化状態も予測することが可能である。
【0045】
特に排気ガスセンサ51は、接続パイプ48の曲げ部外側(外周側)で且つ排気上流側に配置されている。上記したように、接続パイプ48の外周側は、内周側に比べて流速が速く排気ガスが流れやすいので、排気ガスセンサ51の検出精度を高めることが可能である。
【0046】
また、排気ガスセンサ51は、パンチング孔48bの上流側に配置されている。すなわち、排気ガスセンサ51の排気下流側にパンチング孔48bが配置されている。この構成によれば、パンチング孔48bから排気ガスが拡散される前に排気ガスセンサ51に排気ガスを当てることができるため、排気ガスセンサ51の検出精度が損なわれることがない。なお、複数のパンチング孔48bは、要求される出力や消音性能に応じて形状、大きさ、配置数、配置間隔等を適宜変更可能である。例えば、接続パイプ48の内周側から外周側に向かうに従ってパンチング孔48bの個数や密度、大きさを徐々に小さくしたり大きくしたりすることで、出力や消音性能を調整することが可能である。
【0047】
なお、上記の実施形態では、並列4気筒のエンジン3を例にして説明したが、この構成に限定されない。例えば、エンジン3は、単気筒や2気筒、3気筒、更には5気筒以上のエンジンで構成されてもよく、各気筒の配置も適宜変更が可能である。
【0048】
また、上記の実施形態では、マフラが車両の右方に配置される構成としたが、この構成に限定されない。マフラは、エンジン3の左方に配置されてもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、2つの触媒42、43がチャンバ41内に配置される構成としたが、この構成に限定されない。触媒は、チャンバ41内に3つ以上配置されてもよい。
【0050】
また、複数の実施形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0051】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明は、消音性能の向上と出力の谷を回避することができるという効果を有し、特に、自動二輪車の排気装置に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 :車両
3 :エンジン
4 :排気装置
40 :エキゾーストパイプ
41 :チャンバ
41a :上半部
41b :下半部
41c :テール部
41d :内側部
41e :外側部
42 :触媒
43 :触媒
48 :接続パイプ
48a :上面部
48b :パンチング孔
50 :排気ガスセンサ
51 :排気ガスセンサ
S :開放空間