(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】光コネクタ用フェルール及び光コネクタ用フェルール加工方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/40 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
G02B6/40
(21)【出願番号】P 2018204817
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三須 直樹
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-284150(JP,A)
【文献】特開2004-045966(JP,A)
【文献】特開2003-202457(JP,A)
【文献】特開平01-206305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0054523(US,A1)
【文献】特開平09-311246(JP,A)
【文献】特開平10-133061(JP,A)
【文献】特開平08-278426(JP,A)
【文献】特開2002-350681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側の光コネクタ用フェルールと対向する端面を備え、前記端面に一対のガイド穴が開口し、前記端面の前記一対のガイド穴の開口の間に光ファイバ挿入孔が配列して開口した光コネクタ用フェルールであって、
前記端面は、
前記一対のガイド穴の軸線と直交する垂直端面と、
前記一対のガイド穴及び前記光ファイバ挿入孔が開口し、かつ前記一対のガイド穴の軸線に対して傾斜した傾斜端面
と、
前記傾斜端面を挟んで前記垂直端面の反対側に設けられた、前記傾斜端面の成す平面よりも後退した後退部と
を有し、
前記傾斜端面は、前記一対のガイド穴の開口中心を結ぶ中心線分を挟んだ両側
の境界稜線によって画成され、
前記境界稜線の一方は、前記垂直端面と前記傾斜端面との境界を成す第1境界稜線であり、
前記境界稜線の他方は、前記傾斜端面と前記後退部との境界を成して前記中心線分と平行である第2境界稜線であり、
前記第2境界稜線と前記中心線分との距離は、前記第1境界稜線と前記中心線分との距離よりも短く、
前記一対のガイド穴の軸線方向から見て、前記中心線分を中心線として延在する、前記中心線分と前
記第2境界稜線との間隔の2倍の幅を有する帯状領域のうち、前記一対のガイド穴よりも前記中心線分の延在方向外側の領域の少なくとも一部分に、前記傾斜端面が成す平面よりも後退した後退領域を有する
ことを特徴とする、光コネクタ用フェルール。
【請求項2】
前記垂直端面の、前記第1境界稜線と反対側の端縁から前記第1境界稜線までの距離が、0.8mmより長く、かつ、前記端縁から前記光ファイバ挿入孔の開口までの距離よりも短い
ことを特徴とする、請求項
1記載の光コネクタ用フェルール。
【請求項3】
前記第1境界稜線が前記一対のガイド穴に接し、又は、前記第1境界稜線の延長線が前記一対のガイド穴を横断している
ことを特徴とする、請求項
1又は
2記載の光コネクタ用フェルール。
【請求項4】
前記第2境界稜線が前記一対のガイド穴に接し、又は、前記第2境界稜線の延長線が前記一対のガイド穴を横断している
ことを特徴とする、請求項
1乃至3の何れかに記載の光コネクタ用フェルール。
【請求項5】
請求項1に記載の光コネクタ用フェルールを製造するための光コネクタ用フェルール加工方法であって、
加工前の段階において、光コネクタ用フェルールは、前記一対のガイド穴の軸線と直交する垂直な端面を有し、
前記光コネクタ用フェルールの前記垂直端面を残して前記一対のガイド穴の軸線に対して傾斜した角度で前記
垂直な端面を研削して、
前記光コネクタ用フェルールの前記第1境界稜線と前記光コネクタ用フェルールの前記傾斜端面
を含む傾斜した端面とを形成する傾斜端面形成工程と、
前記光コネクタ用フェルールの前記傾斜端面を残して前記傾斜した端面を研削して、前記第2境界稜線と前記後退部とを形成する後退部形成工程と、
研削して前記後退領域を形成する後退領域形成工程と
を有することを特徴とする、光コネクタ用フェルール加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ用フェルール及び光コネクタ用フェルール加工方法に係り、より詳細には、MPO(Multi-fiber Push-on)コネクタのような多心光ファイバコネクタを構成するのに好適なMT(Mechanically Transferable)フェルールのような光コネクタ用フェルールであって、特に、傾斜端面を有する光コネクタ用フェルール、及び、かかる光コネクタ用フェルールを形成する光コネクタ用フェルール加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光コネクタ用フェルールの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、ファイバ挿入孔が貫通する先端面を垂直面と傾斜面によって形成した光コネクタ用フェルールと、2以上の垂直面によって階段状に形成した光コネクタ用フェルールとが記載されている。特許文献1に記載されているこれらの光コネクタ用フェルールでは、かかる構成により先端面の一部だけを斜め研磨することで、研磨量を少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MTフェルールのような光コネクタ用フェルールを使用した光コネクタによって、光ファイバどうしを接続するにあたっては、互いの端面を付き合わせて物理的に接合させるPC(Physical Contact)接続が一般に採用されている。光ファイバどうしをPC接続する際には、光コネクタ用フェルールの端面どうしも当接し、又はわずかな隙間(例えば、2~3μm)を隔てて対向する。
【0005】
以下、光コネクタ用フェルールの端面のうち、PC接続時に相手の光コネクタ用フェルールと当接し、又は、わずかな隙間を隔てて互いに実質的に平行に対向する端面部分を便宜的に「接合端面」と称する。
一般に、
図7(a)左側に示す一対のガイド穴2と光ファイバ挿入孔3が開口した端面210を備えた光コネクタ用フェルール200どうしを付き合わせて、光ファイバどうしをPC接続する際には、反射戻り光を低減するため、
図7(a)右側に示すように、端面210を研磨して傾斜端面212を形成し、残りの端面部分を垂直端面211として残す。
そして、光コネクタ用フェルール200どうしを付き合わせて、光ファイバどうしをPC接続した場合、
図7(b)に示すように、端面210のうち、傾斜端面212どうしが対向する領域が接合端面206となる。
図7(b)では、接合端面206の領域を便宜的に太線で示す。
【0006】
ところで、光コネクタの接続作業を行う際に、光コネクタ用フェルールの接合端面206どうしの間に埃が挟み込まれてしまうことがある。埃が挟み込まれると、接合端面206の間の距離が長くなったり、接合端面206どうしが平行でなくなったりするため、接続損失が増大して光学特性が悪化してしまうことがある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、光コネクタどうしを接続する際に、光コネクタ用フェルール間の埃の挟込みの低減を図ることができる光コネクタ用フェルール及び光コネクタ用フェルール加工方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光コネクタ用フェルールは、相手側の光コネクタ用フェルールと対向する端面を備え、前記端面に一対のガイド穴が開口し、前記端面の前記一対のガイド穴の開口の間に光ファイバ挿入孔が配列して開口した光コネクタ用フェルールであって、前記端面は、前記光ファイバ挿入孔が開口し、かつ前記一対のガイド穴の軸線に対して傾斜した傾斜端面を有し、前記傾斜端面は、前記一対のガイド穴の開口中心を結ぶ中心線分を挟んだ両側の少なくとも一方の側が、前記中心線分と平行な境界稜線によって画成され、前記一対のガイド穴の軸線方向から見て、前記中心線分を中心線として延在する、前記中心線分と前記中心線分に直近の前記境界稜線との間隔の2倍の幅を有する帯状領域のうち、前記一対のガイド穴よりも前記中心線分の延在方向外側の領域の少なくとも一部分に、前記傾斜端面が成す平面よりも後退した後退領域を有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る第1の光コネクタ用フェルール加工方法は、相手側の光コネクタ用フェルールと対向する端面を備え、前記端面に一対のガイド穴が開口し、前記端面の前記一対のガイド穴の開口の間に光ファイバ挿入孔が配列して開口した光コネクタ用フェルールを加工する光コネクタ用フェルール加工方法であって、前記端面を研削して、前記光ファイバ挿入孔が開口し、前記一対のガイド穴の軸線に対して傾斜し、かつ、前記一対のガイド穴の開口中心を結ぶ中心線分を挟んだ両側の少なくとも一方の側が前記中心線分と平行な境界稜線によって画成された傾斜端面を形成する傾斜端面形成工程と、前記一対のガイド穴の軸線方向から見て、前記中心線分を中心線として延在する、前記中心線分と前記中心線分に直近の境界稜線との間隔の2倍の幅を有する帯状領域のうち、前記一対のガイド穴よりも前記中心線分の延在方向外側の領域の少なくとも一部分を研削して、前記傾斜端面が成す平面よりも後退した後退領域を形成する後退領域形成工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る第2の光コネクタ用フェルール加工方法は、相手側の光コネクタ用フェルールと対向する端面を備え、前記端面に一対のガイド穴が開口し、前記端面の前記一対のガイド穴の開口の間に光ファイバ挿入孔が配列して開口した光コネクタ用フェルールを加工する光コネクタ用フェルール加工方法であって、前記光コネクタ用フェルールの前記端面のうち、前記一対のガイド穴の開口よりも、前記一対のガイド穴の開口中心を結ぶ中心線分の延在方向外側の領域の少なくとも一部分を研削して、研削部を形成する研削部形成工程と、前記端面を研削して、前記一対のガイド穴の軸線に対して傾斜し、かつ、前記中心線分を挟んだ両側の少なくとも一方の側が、前記中心線分と平行な境界稜線によって画成された傾斜端面を形成する傾斜端面形成工程とを有し、前記傾斜端面形成工程において、前記一対のガイド穴の軸線方向から見て、前記中心線分を中心線として延在する、前記中心線分と前記中心線分に直近の境界稜線との間隔の2倍の幅を有する帯状領域のうち、前記一対のガイド穴よりも前記中心線分の延在方向外側の領域の少なくとも一部分に、前記研削部の残存部分として、前記傾斜端面が成す平面よりも後退した後退領域を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光コネクタ用フェルール、及び光コネクタ用フェルール加工方法によれば、光コネクタ用フェルールの接合端面の面積を減少させることにより、接合端面に付着する埃の低減を図ることができる。その結果、光コネクタどうしを接続する際に、光コネクタ用フェルール間の埃の挟込みの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る光コネクタ用フェルールの説明図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のI-I断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る光コネクタ用フェルールの説明図であり、(a)は側面図であり、(b)は正面図であり、(c)はPC接合した光コネクタ用フェルールの側面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る光コネクタ用フェルールの説明図であり、(a)は側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は、PC接合した光コネクタ用フェルールの側面図である。
【
図4】(a)~(c)は、本発明の第4実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法の工程図ある。
【
図5】(a)~(d)は、本発明の第5実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法の工程図ある。
【
図6】(a)~(c)は、本発明の第6実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法の工程図ある。
【
図7】(a)は、従来例の光コネクタ用フェルールの端面研磨前後の斜視図であり、(b)はPC接合した光コネクタ用フェルールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る光コネクタ用フェルールとしてのMTフェルールを説明する。
図1(a)に、本実施形態のMTフェルールの端面をガイド穴の軸線方向からみた正面図を模式的に示し、
図1(b)に、
図1(a)に示したMTフェルールのI-I線に沿った断面図を模式的に示す。
【0015】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、MTフェルール100は、相手側の光コネクタ用フェルールであるMTフェルールと対向する端面1を備えている。端面1は、例えば、F13形多芯光ファイバコネクタ(MPOコネクタ)の「JIS C5982」規格に則り、高さH=2.5mm、横幅W=6.4mmの実質的に長方形の形状を有する。
なお、他の各実施形態におけるMTフェルールも、原則的に「JIS C5982」規格に則った寸法形状を有している。
【0016】
図1(a)に示すように、端面1には、一対のガイド穴2が開口している。一対のガイド穴2のピッチは、「JIS C5982」規格に則り、例えば、4.6mmであり、ガイド穴2の直径も、「JIS C5982」規格に則り、例えば、0.7mmである。
なお、MTフェルール100は、一対のガイド穴2にガイドピンが挿入されていないメス型であってもよいし、一対のガイド穴2にガイドピンが挿入されたオス型であってもよい。
【0017】
さらに、同図に示すように、端面1の一対のガイド穴2の間には、4本の光ファイバ挿入孔3が、一対のガイド穴2の開口中心を結ぶ中心線分C上に一列に配列している。
なお、光ファイバ挿入孔3の数は4本に限定されず、例えば、12本又は16本のような複数本であってもよい。また、光ファイバ挿入孔3の配列は、1列に限定されず、例えば、2列又は4列のような複数列であってもよい。
【0018】
図1(b)に示すように、端面1は、一対のガイド穴2の軸線Aと直交する垂直端面11と、この垂直端面11に対して傾斜した傾斜端面12とを有する。
傾斜端面12は、反射戻り光を防止するため、垂直端面11に対して、θ=8°傾斜している。即ち、傾斜端面12の法線hは、一対のガイド穴2を含む平面と直交する方向へ、一対のガイド穴2の軸線Aに対してθ=8°傾斜している。
【0019】
傾斜端面12は、中心線分Cを挟んだ両側のうちの図面上側で、垂直端面11と傾斜端面12との境界を成す、中心線分Cと平行な第1境界稜線13によって画成されている。一方、傾斜端面12の下側は、端面1の下端縁Bによって画成されている。
そして、
図1(a)に示すように、傾斜端面12には、光ファイバ挿入孔3が配列して開口している。
【0020】
MTフェルール100を相手側のMTフェルールと接合する際には、
図7(b)に示した従来例と同様に、相手側のMTフェルールが上下反転して、傾斜端面12の一部分どうしが接合する。
その結果、
図1(a)に示す傾斜端面12のうち、中心線分Cを中心線として延在する、中心線分Cと中心線分Cに直近の境界稜線である第1境界稜線13との間隔L1の2倍の幅(2×L1)の帯状領域4だけが、相手側のMTフェルール100と接合するPC接続時に相手側のMTフェルールと当接し、又は、わずかな隙間を隔てて互いに実質的に平行に対向する接合端面となり得る。
【0021】
そして、本実施形態のMTフェルール100では、
図1(a)に示すように、帯状領域4のうち、一対のガイド穴2よりも中心線分Cの延在方向外側の領域41を、傾斜端面が成す平面よりも後退した後退領域5としている。同図では、後退領域5にドットのハッチングを付して示す。したがって、帯状領域4のうち、一対のガイド穴2間の斜線のハッチングを付した領域のみが実質的に接合端面6となる。
なお、後退領域5は、外側の領域41のうちの一部分だけであってもよいし、全部であってもよい。また、後退領域5の形状は特に限定されず、例えば、切り欠き形状であってもよいし、MTフェルール100の両側端縁を面取りした形状であってもよい。
【0022】
これにより、接合端面6の面積を、帯状領域4の面積よりも後退領域5の面積だけ減少させることができる。その結果、光コネクタどうしを接続する際に、MTフェルール100間の接合端面における埃の挟込みの低減を図ることができる。
【0023】
(第2実施形態)
図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る光コネクタ用フェルールとしてのMTフェルールを説明する。
図2(a)は、本実施形態のMTフェルールの側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示したMTフェルールの端面をガイド穴の軸線方向から見た正面図であり、
図2(c)は、PC接合した光コネクタ用フェルールの側面図である。
【0024】
本実施形態におけるMTフェルール100aも、第1実施形態のMTフェルール100と同様に、原則的に「JIS C5982」規格に則った寸法形状を有している。
図2(a)に示すように、本実施形態のMTフェルール100aも、端面1aに、一対のガイド穴2の軸線Aと直交する垂直端面11aと、この垂直端面11aに対して傾斜した傾斜端面12aとを有する。
【0025】
傾斜端面12aは、中心線分Cを挟んだ両側のうちの図面上側で、垂直端面11と傾斜端面12との境界を成す、中心線分Cと平行な第1境界稜線13aによって画成されている。一方、傾斜端面12の下側は、端面1の下端縁Bによって画成されている。
【0026】
ただし、「JIS C5982」規格においては、垂直端面11の、第1境界稜線13と反対側の上端縁Uから第1境界稜線13までの距離Lは、0.8mm以下と規定されているが、本実施形態では、距離Lは、0.8mmより長い。また、
図2(a)に示すように、この距離Lは、光ファイバ挿入孔3の開口30が傾斜端面12aに開口するように、下端縁Bから光ファイバ挿入孔3の開口までの距離よりも短い。
より具体的には、
図2(b)に示すように、第1境界稜線13aの延長線が、一対のガイド穴2の開口を横断している。なお、第1境界稜線13が一対のガイド穴2に接していてもよい。
【0027】
これにより、
図2(a)に示す傾斜端面12aのうち、中心線分Cを中心線として延在する、中心線分Cと中心線分Cに直近の境界稜線である第1境界稜線13aとの間隔L2の2倍の幅(2×L2)である帯状領域4aの幅を狭くすることができる。
【0028】
そして、本実施形態のMTフェルール100aでは、
図2(b)に示すように、帯状領域4aのうち、一対のガイド穴2よりも中心線分Cの延在方向外側の領域に、傾斜端面が成す平面よりも後退した後退領域5aを形成している。
特に、本実施形態では、第1境界稜線13aを一対のガイド穴よりも外側へ延長した稜線部分を含む領域が研削されて、後退領域5aが形成されている。
その結果、帯状領域4aのうち、一対のガイド穴2間の領域のみが接合端面6aとなる。
なお、後退領域5aは、
図2(b)に示すような切り欠き形状であってもよいし、MTフェルール100aの両側端縁を面取りした形状であってもよい。
【0029】
図2(b)では、MTフェルール100aどうしを接合したときに接合端面6aとなる領域に、ハッチングを付して示している。また、
図2(c)に、上下反転した相手側のMTフェルール100aと接合したMTフェルール100aの側面図を示す。同図では、接合端面6aの領域を便宜的に太線で示している。
【0030】
このように、本実施形態では、後退領域5aが形成されているうえ、帯状領域4aの幅を第1実施形態のものよりも狭くしているため、接合端面6aの面積をより一層減少させることができる。
これにより、光コネクタどうしを接続する際に、MTフェルール100aの接合端面6aにおける埃の挟込みの一層の低減を図ることができる。
【0031】
(第3実施形態)
図3を参照して、本発明の第3実施形態に係る光コネクタ用フェルールとしてのMTフェルールを説明する。
図3(a)は、本実施形態のMTフェルールの側面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示したMTフェルールの端面をガイド穴の軸線方向から見た正面図であり、
図3(c)は、PC接合したMTフェルールの側面図である。
【0032】
本実施形態におけるMTフェルール100bも、第1実施形態のMTフェルール100と同様に、原則的に「JIS C5982」規格に則った寸法形状を有している。
図3(a)に示すように、本実施形態のMTフェルール100bも、端面1bに、一対のガイド穴2の軸線Aと直交する垂直端面11bと、この垂直端面11bに対して傾斜した傾斜端面12bとを有する。
【0033】
傾斜端面12bは、中心線分Cを挟んだ両側のうちの図面上側で、垂直端面11bと傾斜端面12bとの境界を成す、中心線分Cと平行な第1境界稜線13bによって画成されている。
そして、
図3(a)に示すように、傾斜端面12bには、光ファイバ挿入孔3が配列して開口している。
【0034】
さらに、MTフェルール100bの端面1bは、中心線分Cを挟んで第1境界稜線13bの反対側に、傾斜端面12bの成す平面Pよりも後退した後退部7を有する。このため、傾斜端面12bの下側は、傾斜端面12bと後退部7との境界を成す第2境界稜線14で画成されている。
【0035】
図3(a)に示すように、本実施形態では、後退部7を傾斜平面としているが、後退部7の形状はこれに限定されず、例えば、側面から見て切り欠き形状であってもよいし、側面から見て湾曲形状であってもよい。
【0036】
図3(b)に示すように、第2境界稜線14の、延長線が、一対のガイド穴2の開口を横断している。このため、本実施形態では、第2境界稜線14が、第1境界稜線13bよりも中心線分Cに近いため、第2境界稜線14が直近の境界稜線となる。
なお、第1境界稜線13bは、一対のガイド穴2の開口20に接していてもよい。
【0037】
これにより、
図3(a)に示す傾斜端面12bのうち、中心線分Cを中心線として延在する、中心線分Cと中心線分Cに直近の境界稜線である第2境界稜線14との間隔L3の2倍の幅(2×L3)である帯状領域4bの幅を狭くすることができる。
【0038】
そして、本実施形態のMTフェルール100bでは、
図3(b)に示すように、帯状領域4bのうち、一対のガイド穴2よりも中心線分Cの延在方向外側の領域に、傾斜端面が成す平面Pよりも後退した後退領域5bを形成している。
特に、本実施形態では、第2境界稜線14を一対のガイド穴2よりも外側へ延長した稜線部分を含む領域が研削されて、後退領域5bが形成されている。
その結果、帯状領域4bのうち、一対のガイド穴2間の領域のみが接合端面6bとなる。
【0039】
図3(b)では、MTフェルール100bどうしを接合したときに接合端面6bとなる領域に、ハッチングを付して示している。また、
図3(c)に、上下反転した相手側のMTフェルール100bと接合したMTフェルール100bの側面図を示す。同図では、接合端面6bの領域を便宜的に太線で示している。
【0040】
このように、本実施形態では、後退領域5bが形成されているうえ、帯状領域4bの幅を第1実施形態のものよりも狭くしているため、接合端面6bの面積を一層減少させることができる。
これにより、光コネクタどうしを接続する際に、MTフェルール100bの接合端面6bにおける埃の挟込みの一層の低減を図ることができる。
【0041】
(第4実施形態)
図4を参照して、本発明の第4実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法を説明する。
図4(a)~
図4(c)は、本実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法の工程図ある。
【0042】
本実施形態では、
図4(a)に示す、相手側の光コネクタ用フェルールと対向する端面10を備え、端面10に一対のガイド穴2が開口し、端面1の一対のガイド穴2の間に光ファイバ挿入孔3が配列して開口した光コネクタ用フェルールとしてのMTフェルール300を加工して、第2実施形態で説明したMTフェルール100aを形成するための加工方法を説明する。
図4(a)に示すように、本実施形態では、加工対象のMTフェルール300の当初の端面10全体が、一対のガイド穴2の軸線A(
図2参照)と直交する垂直端面となっている。
【0043】
<傾斜端面形成工程>
まず、垂直端面となっている当初の端面10を研削して、光ファイバ挿入孔3が開口し、一対のガイド穴2の軸線Aに対して傾斜した傾斜端面12aを形成する(
図2(a)参照)。
本実施形態では、
図4(b)に示すように、傾斜端面形成工程において、垂直端面11aと傾斜端面12aとの境界に、一対のガイド穴2の開口中心を結ぶ中心線分Cと平行な第1境界稜線13aが形成される。傾斜端面12aの上側は、直近の境界稜線である第1境界稜線13aによって画成される。
【0044】
<後退領域形成工程>
次に、一対のガイド穴2の軸線A方向から見て、中心線分Cを中心線として延在する、中心線分Cと中心線分Cに直近の第1境界稜線13aとの間隔の2倍の幅を有する帯状領域4aのうち、一対のガイド穴2よりも中心線分Cの延在方向外側の領域の少なくとも一部分を研削して、傾斜端面12が成す平面Pよりも後退した後退領域5aを形成する(
図2(b)及び
図2(c)参照)。
【0045】
本実施形態では、
図4(c)に示すように、後退領域形成工程において、第1境界稜線13aのうち一対のガイド穴2よりも外側の稜線部分を含む領域を研削して、後退領域5aを形成する。
このようにして、第2実施形態において説明したMTフェルール100aが形成される。
【0046】
(第5実施形態)
図5を参照して、本発明の第5実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法を説明する。
図5(a)~
図5(d)は、本実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法の工程図ある。
【0047】
本実施形態では、
図5(a)に示す、相手側の光コネクタ用フェルールと対向する端面10を備え、端面10に一対のガイド穴2が開口し、端面10の一対のガイド穴2の間に光ファイバ挿入孔3が配列して開口した光コネクタ用フェルールとしてのMTフェルール300を加工して、第3実施形態で説明したMTフェルール100bを形成するための加工方法を説明する。
図5(a)に示すように、本実施形態では、加工対象のMTフェルール300の当初の端面10全体が、一対のガイド穴2の軸線Aと直交する垂直端面となっている。
【0048】
<傾斜端面形成工程>
まず、垂直端面となっている当初の端面10を研削して、光ファイバ挿入孔3が開口し、一対のガイド穴2の軸線Aに対して傾斜した傾斜端面12bを形成する(
図3(a)参照)。
図5(b)に示すように、本実施形態では、傾斜端面形成工程において、垂直な端面10の研削残存部分である垂直端面11bと傾斜端面12bとの境界に、一対のガイド穴2の開口中心を結ぶ中心線分Cと平行な第1境界稜線13bが形成される。この第1境界稜線13bによって、傾斜端面12bの上側が画成される。
【0049】
<後退部形成工程>
次に、端面10のうちの傾斜端面12の、中心線分Cを挟んで第1境界稜線13bの反対側に、傾斜端面12bの成す平面Pよりも後退した後退部7を形成する(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
図5(c)に示すように、本実施形態では、後退部形成工程において、傾斜端面12bと後退部7との境界に、直近の境界稜線として、中心線分Cと平行な第2境界稜線14が形成される。
【0050】
<後退領域形成工程>
次に、一対のガイド穴2の軸線A方向から見て、中心線分Cを中心線として延在する、中心線分Cと中心線分Cに直近の第2境界稜線14との間隔の2倍の幅を有する帯状領域4bのうち、一対のガイド穴2よりも中心線分Cの延在方向外側の領域41の少なくとも一部分を研削して、傾斜端面12が成す平面Pよりも後退した後退領域5bを形成する(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
【0051】
本実施形態では、
図5(d)に示すように、後退領域形成工程において、第2境界稜線14の一対のガイド穴2よりも外側の稜線部分を含む領域を研削して、後退領域5bを形成する。
このようにして、第3実施形態において説明したMTフェルール100bが形成される。
【0052】
(第6実施形態)
図6を参照して、本発明の第6実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法を説明する。
図6(a)~
図6(c)は、本実施形態に係る光コネクタ用フェルール加工方法の工程図ある。
【0053】
本実施形態では、
図6(a)に示す、相手側の光コネクタ用フェルールと対向する端面10を備え、端面10に一対のガイド穴2が開口し、端面1の一対のガイド穴2の間に光ファイバ挿入孔3が配列して開口した光コネクタ用フェルールとしてのMTフェルール300を加工して、MTフェルール100cを形成するための加工方法を説明する。
図6(a)に示すように、本実施形態では、加工対象のMTフェルール300は、当初の端面10全体が、一対のガイド穴2の軸線Aと直交する垂直端面となっている。
【0054】
<研削部形成工程>
まず、
図6(b)に示すように、MTフェルール300の端面10のうち、一対のガイド穴2よりも、一対のガイド穴2の開口中心を結ぶ中心線分Cの延在方向外側の領域の少なくとも一部分を研削して、研削部8を形成する。本実施形態では、同図に示すように、MTフェルール300の両側端縁を面取りして、研削部8を形成する。
【0055】
<傾斜端面形成工程>
次に、
図6(c)に示すように、垂直端面10を研削して、一対のガイド穴2の軸線Aに対して傾斜し、かつ、中心線分Cを挟んだ両側のうちの図面上側が、中心線分Cと平行な第1境界稜線13cによって画成された傾斜端面12cを形成する。垂直端面10のうち、研削されなかった部分が垂直端面11cとして残存する。
【0056】
また、傾斜端面形成工程において、一対のガイド穴2の軸線A方向から見て、中心線分Cを中心線として延在する、中心線分Cと中心線分に直近の境界稜線との間隔の2倍の幅を有する帯状領域4cのうち、一対のガイド穴2よりも中心線分Cの延在方向外側の領域の少なくとも一部分に、研削部8の残存部分として、傾斜端面12cが成す平面Pよりも後退した後退領域5cが形成される。このようにして、MTフェルール100cが形成される。
なお、研削部8の形状は、面取り形状に限定されず、例えば、MTフェルール100cの両側端縁が、両側端縁に沿って延在する切り欠き形状となっていてもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、端面に垂直端面を有する光コネクタ用フェルールの例を説明したが、本発明は、これに限定されず、垂直端面のない光コネクタ用フェルールにも適用することができる。
また、上述した第1~第3実施形態では、光ファイバ挿入孔2に光ファイバを挿入していない形態を示したが、本発明では、光ファイバ挿入孔に光ファイバが挿入され固定されていてもよい。
また、上述した第4~第6実施形態では、光ファイバ挿入孔に光ファイバを挿入していない状態で、光ファイバ用フェルールの端面を研削した例を説明したが、本発明では、光ファイバ挿入孔に光ファイバを挿入して固定した状態で、光ファイバ用フェルールの端面を研削してもよい。
また、光ファイバ挿入孔に挿入される光ファイバは、光ファイバの先端にロッド状の屈折率分布(Gradient Index,GRIN)レンズを同軸に融着したレンズ付き光ファイバであることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、MPOコネクタ構成するMTフェルールを初めとして、多心光ファイバコネクタを構成する種々の光コネクタ用フェルールに適用して好適である。
【符号の説明】
【0059】
1,1a,1b,10 端面
2 ガイド穴
3 光ファイバ挿入孔
4,4a,4b 帯状領域
5,5a,5b 後退領域
6,6a,6b 接合端面
7 後退部
8 研削部
11,11a,11b 垂直端面
12,12a,12b 傾斜端面
13,13a,13b 第1境界稜線
41 外側の領域
100,100a,100b,200,300 MTフェルール
A ガイド穴の軸線
C 中心線分