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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B60C15/06 C
B60C15/06 N
B60C15/06 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018207509
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020069991
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】西尾 好司
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特許第6594509(JP,B1)
【文献】特開2016-120832(JP,A)
【文献】特開2013-35407(JP,A)
【文献】特開2013-1223(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110643(WO,A1)
【文献】特開2017-114451(JP,A)
【文献】特開昭59-109406(JP,A)
【文献】特開2005-178618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に複数本のスチールコードを含むカーカス層が装架され、該カーカス層が各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、
各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記カーカス層の巻き上げ端部が前記ビードフィラーの外径側端部よりも内径側に配置され、前記カーカス層の巻き上げ端部が前記カーカス層の本体部から離間し、各ビード部に複数本のスチールコードを含むスチール補強層が前記カーカス層、前記ビードコア及び前記ビードフィラーを包み込むように配置され、前記サイドウォール部から前記ビード部にかけてタイヤ外表面に露出するサイドウォールゴム層が配置されると共に、
前記ビードフィラーと前記サイドウォールゴム層との間にゴム補強支持層が前記カーカス層の巻き上げ端部及び前記スチール補強層の端部を覆うように配置され、前記ゴム補強支持層が少なくとも前記ビードコアの側方位置から外径側に向かって延在して前記ビードフィラーの外径側端部よりも外径側の位置で前記カーカス層の本体部に当接し、前記ゴム補強支持層の100%モジュラスK M100 が4.5MPa~10.0MPaであり、かつ、前記ゴム補強支持層の100%モジュラスKM100がそれに隣接する前記ビードフィラーの100%モジュラスBFM100及び前記サイドウォールゴム層の100%モジュラスSM100に対してそれぞれ1.5倍以上であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカス層の巻き上げ端部から前記ビードフィラーの外径側端部までの領域における前記ゴム補強支持層の厚さTKが2.0mm~6.0mmであることを特徴とする請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム補強支持層が前記カーカス層の巻き上げ端部及び前記スチール補強層の端部に当接するクラック抑制層と該クラック抑制層に連なるゴム補強本体層とを含み、前記クラック抑制層の破断伸びKcEBが300%以上であり、前記ゴム補強本体層の100%モジュラスKmM100が前記クラック抑制層の100%モジュラスKcM100よりも大きいことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カーカス層の巻き上げ端部から前記ビードフィラーの外径側端部までの領域における前記クラック抑制層の長さIcが30mm以上であり、前記カーカス層の巻き上げ端部における前記クラック抑制層の厚さTcが3.0mm以上であることを特徴とする請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ビードコアの幅方向外側に最も突出した頂点を通り前記ビードコアの最長辺に平行な直線に沿って測定される距離であって前記頂点からビードヒール位置までの距離Aが2.5mm以上であり、前記カーカス層の巻き上げ端部から前記ビード部の外表面までの最短距離T1が10mm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記カーカス層の巻き上げ端部から前記カーカス層の本体部までの最短距離TBFと前記カーカス層の巻き上げ端部から前記ビード部の外表面までの最短距離T1とが0.50≦T1/TBF≦0.65の関係を満足することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ビードコアの中心から前記カーカス層の巻き上げ端部までの距離Phが26.0mm~40.0mmであり、前記カーカス層の巻き上げ端部から前記カーカス層の本体部までの最短距離TBFが11.0mm以上であり、前記カーカス層の巻き上げ端部から前記ビード部の外表面までの最短距離T1が7.0mm以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ビードコアの中心から前記カーカス層の巻き上げ端部までの距離Phと前記ビードコアの中心から前記スチール補強層の端部までの距離Shoとが5.0mm≦Ph-Shoの関係を満足することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ビードフィラーが内径側に位置する硬質フィラー層と外径側に位置する軟質フィラー層とを含み、前記硬質フィラー層の100%モジュラスB1M100が6.0MPa~18.0MPaであり、前記軟質フィラー層の100%モジュラスB2M100が1.0MPa~6.0MPaであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
単輪でのロードインデックスが121以上、又は、プライレーティングが10PR以上であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコードを含むカーカス層が各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ビード部の耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバス等に使用される重荷重用の空気入りタイヤにおいて、一対のビード部間には引き揃えられた複数本のスチールコードを含むカーカス層が装架され、該カーカス層が各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有するものがある。各ビード部には引き揃えられた複数本のスチールコードを含むスチール補強層がカーカス層、ビードコア及びビードフィラーを包み込むように配置されるのが一般的である。また、カーカス層の巻き上げ端部やスチール補強層の端部には、エッジセパレーションの防止を目的として、高硬度のゴム層が局所的に配置されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
このような構成を有する空気入りタイヤにおいて、空気圧充填による形状変化が少ないプロファイル、所謂平衡プロファイルを採用した場合、カーカス層の巻き上げ端部での歪振幅が抑制されるため、ビード部の耐久性が良好になることが一般的に知られている。また、平衡プロファイルを実現するためには、ビードコアをビードトウ側に寄せて、カーカス層の巻き上げ端部よりもタイヤ幅方向外側のゴムが厚くならないようにする必要がある。
【0004】
しかしながら、重荷重用空気入りタイヤで採用されているプライロック構造において、スチール製のカーカス層の巻き上げ端部が低く、その巻き上げ端部がカーカス層の本体部から離間している場合、加硫時のゴム流れに起因してカーカス層の巻き上げ端部近傍にゴム溜まりが生じ易く、カーカス層の巻き上げ端部よりもタイヤ幅方向外側のゴムが厚くなる傾向がある。これはビードコアの側方に存在するゴムが加硫時にタイヤ外径側に流れることに起因するものである。そのため、ビードコアの側方ではゴムが薄くなる傾向を示し、これが平衡プロファイルを阻害する要因となる。
【0005】
また、カーカス層の巻き上げ端部よりもタイヤ幅方向外側のゴムを薄くするために、当該部位に薄い押出物を用いてタイヤを成形すると、当該部位にタイヤ周方向に沿ってクラックが生じ易くなる。つまり、カーカス層の巻き上げ端部よりもタイヤ幅方向外側のゴムを薄くすると、ビードコアの側方に存在するゴムが加硫時にタイヤ外径側に向かって流れようとするゴムが多くなるため、そのゴム流れによって離型剤等がゴムと共に表層に巻き込まれ、これが走行初期におけるクラックの発生要因となるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-110006号公報
【文献】特開平6-183224号公報
【文献】特許第5319736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ビード部の耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に複数本のスチールコードを含むカーカス層が装架され、該カーカス層が各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、
各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記カーカス層の巻き上げ端部が前記ビードフィラーの外径側端部よりも内径側に配置され、前記カーカス層の巻き上げ端部が前記カーカス層の本体部から離間し、各ビード部に複数本のスチールコードを含むスチール補強層が前記カーカス層、前記ビードコア及び前記ビードフィラーを包み込むように配置され、前記サイドウォール部から前記ビード部にかけてタイヤ外表面に露出するサイドウォールゴム層が配置されると共に、
前記ビードフィラーと前記サイドウォールゴム層との間にゴム補強支持層が前記カーカス層の巻き上げ端部及び前記スチール補強層の端部を覆うように配置され、前記ゴム補強支持層が少なくとも前記ビードコアの側方位置から外径側に向かって延在して前記ビードフィラーの外径側端部よりも外径側の位置で前記カーカス層の本体部に当接し、前記ゴム補強支持層の100%モジュラスK M100 が4.5MPa~10.0MPaであり、かつ、前記ゴム補強支持層の100%モジュラスKM100がそれに隣接する前記ビードフィラーの100%モジュラスBFM100及び前記サイドウォールゴム層の100%モジュラスSM100に対してそれぞれ1.5倍以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ビードフィラーとサイドウォールゴム層との間にカーカス層の巻き上げ端部及びスチール補強層の端部を覆うゴム補強支持層が配置され、そのゴム補強支持層が少なくともビードコアの側方位置から外径側に向かって延在してビードフィラーの外径側端部よりも外径側の位置でカーカス層の本体部に当接すると共に、ゴム補強支持層の100%モジュラスKM100がそれに隣接するビードフィラーの100%モジュラスBFM100及びサイドウォールゴム層の100%モジュラスSM100に対してそれぞれ1.5倍以上に設定されているので、ゴム補強支持層はビードコアの側方に存在するゴムが加硫時にタイヤ外径側に流れるのを効果的に抑制する。その結果、ビードコアの側方に存在するゴムの薄肉化とカーカス層の巻き上げ端部よりもタイヤ幅方向外側に存在するゴムの厚肉化を抑制し、空気入りタイヤのビード部のカーカスラインを目標とする平衡プロファイルに近付けることが可能になる。また、ゴム補強支持層がビード部におけるゴム流れを抑制するため、ゴム流れに起因する離型剤等の巻き込みを防止し、走行初期におけるビード部表面のクラックを抑制することができる。これにより、ビード部の耐久性を改善することができる。
【0010】
本発明において、ゴム補強支持層の100%モジュラスKM100は4.5MPa~10.0MPaであることが好ましい。これにより、加硫時のゴム流れを効果的に抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを抑制することができる。
【0011】
カーカス層の巻き上げ端部からビードフィラーの外径側端部までの領域におけるゴム補強支持層の厚さTKは2.0mm~6.0mmであることが好ましい。これにより、加硫時のゴム流れを効果的に抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを抑制することができる。
【0012】
ゴム補強支持層はカーカス層の巻き上げ端部及びスチール補強層の端部に当接するクラック抑制層と該クラック抑制層に連なるゴム補強本体層とを含み、クラック抑制層の破断伸びKcEBが300%以上であり、ゴム補強本体層の100%モジュラスKmM100がクラック抑制層の100%モジュラスKcM100よりも大きいことが好ましい。このようにカーカス層の巻き上げ端部及びスチール補強層の端部に当接するクラック抑制層の破断伸びKcEBを大きくすることでセパレーションを効果的に抑制する一方で、ゴム補強本体層の100%モジュラスKmM100を大きくすることで加硫時のゴム流れを抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを効果的に抑制することができる。
【0013】
カーカス層の巻き上げ端部からビードフィラーの外径側端部までの領域におけるクラック抑制層の長さIcは30mm以上であり、カーカス層の巻き上げ端部におけるクラック抑制層の厚さTcは3.0mm以上であることが好ましい。これにより、カーカス層の巻き上げ端部及びスチール補強層の端部からのセパレーションを効果的に抑制することができる。
【0014】
ビードコアの幅方向外側に最も突出した頂点を通りビードコアの最長辺に平行な直線に沿って測定される距離であって頂点からビードヒール位置までの距離Aが2.5mm以上であり、カーカス層の巻き上げ端部からビード部の外表面までの最短距離T1が10mm以下であることが好ましい。これにより、空気圧充填による形状変化が少ないカーカスライン(即ち、平衡プロファイル)を形成することができるので、カーカス層の巻き上げ端部における歪振幅を抑制し、カーカス層の巻き上げ端部からのセパレーションを効果的に抑制することができる。
【0015】
カーカス層の巻き上げ端部からカーカス層の本体部までの最短距離TBFとカーカス層の巻き上げ端部からビード部の外表面までの最短距離T1とは0.50≦T1/TBF≦0.65の関係を満足することが好ましい。これにより、カーカス層の巻き上げ端部からのセパレーションを効果的に抑制すると共に、カーカス層の巻き上げ端部の近傍におけるゴムの巻き込みを抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを効果的に抑制することができる。
【0016】
ビードコアの中心からカーカス層の巻き上げ端部までの距離Phは26.0mm~40.0mmであり、カーカス層の巻き上げ端部からカーカス層の本体部までの最短距離TBFは11.0mm以上であり、カーカス層の巻き上げ端部からビード部の外表面までの最短距離T1は7.0mm以上であることが好ましい。これにより、カーカス層の巻き上げ端部からのセパレーションを効果的に抑制することができる。
【0017】
ビードコアの中心から、カーカス層の巻き上げ端部までの距離Phとビードコアの中心からスチール補強層の端部までの距離Shoとは5.0mm≦Ph-Shoの関係を満足することが好ましい。これにより、カーカス層の巻き上げ端部及びスチール補強層の端部における応力集中を緩和し、これら端部からのセパレーションを効果的に抑制することができる。
【0018】
ビードフィラーは内径側に位置する硬質フィラー層と外径側に位置する軟質フィラー層とを含み、硬質フィラー層の100%モジュラスB1M100は6.0MPa~18.0MPaであり、軟質フィラー層の100%モジュラスB2M100は1.0MPa~6.0MPaであることが好ましい。これにより、カーカス層の巻き上げ端部からのセパレーションを効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明の空気入りタイヤは、単輪でのロードインデックスが121以上、又は、プライレーティングが10PR以上であることが好ましい。このようなロードインデックス又はプライレーティングを有する空気入りタイヤは一般的に重荷重用タイヤである。本発明は、重荷重用空気入りタイヤにおいて顕著な効果を期待することができる。
【0020】
本発明において、100%モジュラス及び破断伸びはJIS-K6251に準拠して測定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態からなる重荷重用の空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
図2図1の空気入りタイヤのビード部を示す断面図である。
図3図1の空気入りタイヤのビード部を示す他の断面図である。
図4図1の空気入りタイヤのビード部を示す更に他の断面図である。
図5】ビード部の変形例を示す断面図である。
図6】ビード部の他の変形例を示す断面図である。
図7】ビード部の更に他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる重荷重用の空気入りタイヤを示し、図2図4はそのビード部を示すものである。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0024】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本のスチールコードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有している。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0025】
トレッド部1におけるカーカス層4の外径側には4層のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコード(スチールコード)を含んでいる。これらベルト層7は、ベルトコードが互いに交差する中央2層の主ベルト層72,73と、これら主ベルト層72,73の内径側及び外径側に配置された補助ベルト層71,74とを有している。主ベルト層72,73を構成するベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば15°~35°の範囲に設定され、補助ベルト層71,74を構成するベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば15°~75°の範囲に設定されている。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、図2に示すように、カーカス層4の巻き上げ端部4eがビードフィラー6の外径側端部6eよりも内径側に配置され、即ち、カーカス層4の巻き上げ端部4eはビードフィラー6の中腹部分で終端している。その結果、カーカス層4の巻き上げ端部4eはカーカス層4の本体部から離間している。ここで、カーカス層4の巻き上げ端部4eはカーカス層4の本体部から離間しているとは、カーカス層4の巻き上げ端部4eからカーカス層4の本体部までの最短距離TBF図4参照)が8mm以上であることを意味する。各ビード部3には複数本のスチールコードを含むスチール補強層11がカーカス層4、ビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように配置されている。更に、サイドウォール部2からビード部3にわたる領域には、タイヤ外表面に露出するサイドウォールゴム層12が配置されている。
【0027】
また、カーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11のタイヤ幅方向外側の端部11eにはそれぞれゴム製のエッジテープ13が被覆されている。エッジテープ13は必ずしも必要ではないが、セパレーション防止の観点から有効である。エッジテープ13は厚さが0.5mm~1.8mmであり、カーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11の端部11eに露出するスチールコードの金属断面を被覆するものである。エッジテープ13は、破断伸びが300%以上であり、100%モジュラスが5.0MPa以上であることが望ましい。
【0028】
ビードフィラー6とサイドウォールゴム層12との間にはゴム補強支持層14が配置されている。ゴム補強支持層14は、カーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11の端部11eを覆うように配置されると共に、少なくともビードコア5の側方位置から外径側に向かって延在してビードフィラー6の外径側端部6eよりも外径側の位置でカーカス層4の本体部に当接している。ゴム補強支持層14は、少なくともビードコア5の側方位置に存在することが必要であるが、図2に示すようにビードコア5の内径側に回り込んでビードトウまで延在していても良い。ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100はそれに隣接するビードフィラー6の100%モジュラスBFM100及びサイドウォールゴム層12の100%モジュラスSM100に対してそれぞれ1.5倍以上、好ましくは1.7倍以上に設定されている。
【0029】
上述した空気入りタイヤによれば、ビードフィラー6とサイドウォールゴム層12との間にカーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11の端部11eを覆うゴム補強支持層14が配置され、そのゴム補強支持層14が少なくともビードコア5の側方位置から外径側に向かって延在してビードフィラー6の外径側端部6eよりも外径側の位置でカーカス層4の本体部に当接すると共に、ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100がそれに隣接するビードフィラー6の100%モジュラスBFM100及びサイドウォールゴム層12の100%モジュラスSM100の1.5倍以上に設定されているので、ゴム補強支持層14はビードコア5の側方に存在するゴムが加硫時にタイヤ外径側に流れるのを効果的に抑制する。その結果、ビードコア5の側方に存在するゴムの薄肉化とカーカス層4の巻き上げ端部4eよりもタイヤ幅方向外側に存在するゴムの厚肉化を抑制し、空気入りタイヤのビード部3のカーカスラインを目標とする平衡プロファイルに近付けることが可能になる。また、ゴム補強支持層14がビード部3におけるゴム流れを抑制するため、ゴム流れに起因する離型剤等の巻き込みを防止し、走行初期におけるビード部表面のクラックを抑制することができる。このようにビード部3のカーカスラインを適正化する共にゴム流れに起因するクラックを抑制することにより、ビード部の耐久性を改善することができる。
【0030】
上記空気入りタイヤにおいて、ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100は4.5MPa~10.0MPaであると良い。これにより、加硫時のゴム流れを効果的に抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを抑制することができる。ここで、ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100が4.5MPa未満であると、サイドウォールゴム層12を補強支持する効果が不十分になり、サイドウォールゴム層12やゴム補強支持層14のゴム流れを効果的に抑制することができない。また、ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100が10.0MPa超であると、ゴム補強支持層14の剛性が高くなり過ぎるため、接地時のカーカス層4の本体部の変位による巻き上げ端部4eでの歪が増加し、巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。特に、ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100は6.0MPa~9.0MPaであることが望ましい。なお、ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100を高くした場合、未加硫状態におけるムーニー粘度が高くなる傾向があるが、JIS-K6300-1で規定される未加硫状態におけるムーニー粘度は70~100[ML(1+4)100℃]であることが好ましい。
【0031】
上記空気入りタイヤにおいて、図3に示すように、カーカス層4の巻き上げ端部4eからビードフィラー6の外径側端部6eまでの領域Xにおけるゴム補強支持層14の厚さTKは2.0mm~6.0mmであると良い。これにより、加硫時のゴム流れを効果的に抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを抑制することができる。なお、ゴム補強支持層14の厚さTKはゴム補強支持層14の厚さ方向の中心位置を通る中心線に対して直交する方向に測定される厚さである。
【0032】
ここで、ゴム補強支持層14の厚さTKが2.0mm未満であると、サイドウォールゴム層12を補強支持する効果が不十分になり、サイドウォールゴム層12やゴム補強支持層14のゴム流れを効果的に抑制することができない。また、ゴム補強支持層14の厚さTKが6.0mm超であると、ゴム補強支持層14の剛性が高くなり過ぎるため、カーカス層4の巻き上げ端部4eにおけるタイヤ径方向の歪振幅が増加し、巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。特に、ゴム補強支持層14の厚さTKは2.5mm~5.0mmであることが望ましい。
【0033】
上記空気入りタイヤにおいて、図3に示すように、ビードコア5の幅方向外側に最も突出した頂点Eを通りビードコア5の最長辺に平行な直線Dに沿って測定される距離であって頂点Eからビードヒール位置までの距離Aが2.5mm以上であり、カーカス層4の巻き上げ端部4eからビード部3の外表面までの最短距離T1が10mm以下であると良い。これにより、空気圧充填による形状変化が少ないカーカスライン(平衡プロファイル)を形成することができるので、カーカス層4の巻き上げ端部4eにおける歪振幅を抑制し、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションを効果的に抑制することができる。
【0034】
なお、距離Aの具体的な求め方以下の通りである。ビードコア5はタイヤ子午線断面において複数本のワイヤが配列された積層構造を有する。頂点Eはビードコア5の最も幅方向外側に位置するワイヤの重心を通りビードコア5の最長辺に平行な直線が最も幅方向外側に位置するワイヤの輪郭と交わる点である。ここで、ビードコア5の幅方向外側に最も突出した頂点Eを通りビードコア5の最長辺に平行な直線Dと、ビード底面のプロファイルを形成する辺Pの延長線とビード背面のプロファイルを構成する曲線Gの延長線とが交差する仮想交点Hと、該仮想交点Hを通り直線Dに対して直交する直線Jと、頂点Eを通り直線Dに対して直交する直線Fとを求めたとき、距離Aは直線Jと直線Fとの間に区画される直線D上の線分の長さである。
【0035】
ここで、距離Aが2.5mm超であると、ビードコア5の位置がビードヒール側に位置するため、ビードコア5からカーカス層4の巻き上げ端部4eまでのカーカスラインがタイヤ径方向に立ったラインとなる。即ち、空気圧充填前後の形状変化が大きいカーカスラインとなる。特に、距離Aは3.0mm以上であることが望ましく、その上限値は8.0mmであると良い。一方、カーカス層4の巻き上げ端部4eからビード部3の外表面までの最短距離T1が10mm超である場合、カーカス層4の巻き上げ端部4eからカーカス層4の本体部までの最短距離TBFを最短距離T1と同等に維持するには、カーカス層4の本体部のカーカスラインがタイヤ内側に凸となるため、空気圧充填前後の形状変化が大きいカーカスラインとなる。特に、最短距離T1は9.0mm以下であることが望ましい。
【0036】
上記空気入りタイヤにおいて、図4に示すように、カーカス層4の巻き上げ端部4eからカーカス層4の本体部までの最短距離TBFとカーカス層4の巻き上げ端部4eからビード部3の外表面までの最短距離T1とは0.50≦T1/TBF≦0.65の関係を満足すると良い。これにより、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションを効果的に抑制すると共に、カーカス層4の巻き上げ端部4eの近傍におけるゴムの巻き込みを抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを効果的に抑制することができる。
【0037】
ここで、T1/TBFが0.5未満であると、カーカス層4の巻き上げ端部4eが加硫時においてビード部3の曲げ変形の中立軸よりも圧縮側に配置されるため、カーカス層4の巻き上げ端部4の近傍においてゴムの巻き込みを生じ易くなり、走行初期におけるビード部表面のクラックの発生が懸念される。逆に、T1/TBFが0.65超であると最短距離TBFに相当するビードフィラー6の厚さが薄くなることでカーカス層4の巻き上げ端部4eにおけるタイヤ径方向の歪振幅が増加し、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される
【0038】
上記空気入りタイヤにおいて、図4に示すように、ビードコア5の中心からカーカス層4の巻き上げ端部4eまでの距離Phは26.0mm~40.0mmであり、カーカス層4の巻き上げ端部4eからカーカス層4の本体部までの最短距離TBFは11.0mm以上であり、カーカス層4の巻き上げ端部4eからビード部3の外表面までの最短距離T1は7.0mm以上であると良い。これにより、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションを効果的に抑制することができる。なお、ビードコア5の中心とは、ビードコア5を構成するワイヤのうち4本のワイヤの中心点を結ぶ仮想四角形の面積が最大となるワイヤを選択したとき、その仮想四角形の対角線の交点である。
【0039】
ここで、ビードコア5の中心からカーカス層4の巻き上げ端部4eまでの距離Phが26.0mm未満であると、カーカス層4が引き抜ける恐れがあり、逆に40.0mm超であると、カーカス層4の巻き上げ端部4eがビード部3において変形が大きい領域に配置されることになるため、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。特に、ビードコア5の中心からカーカス層4の巻き上げ端部4eまでの距離Phは28.0mm~38.0mmであることが望ましい。また、カーカス層4の巻き上げ端部4eからカーカス層4の本体部までの最短距離TBFが11.0mm未満であるか、或いは、カーカス層4の巻き上げ端部4eからビード部3の外表面までの最短距離T1が7.0mm未満であると、ゴムボリュームの不足によりカーカス層4の巻き上げ端部4eにおけるタイヤ径方向の歪振幅が増加し、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。最短距離TBFの上限値は18.0mmであると良い。
【0040】
上記空気入りタイヤにおいて、図4に示すように、ビードコア5の中心から、カーカス層4の巻き上げ端部4eまでの距離Phとビードコア5の中心からスチール補強層11の端部11eまでの距離Shoとは5.0mm≦Ph-Shoの関係を満足すると良い。これにより、カーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11の端部11eにおける応力集中を緩和し、これら端部4e,11eからのセパレーションを効果的に抑制することができる。ここで、Ph-Shoの値が5mm未満であると、カーカス層4の巻き上げ端部4eでの歪が増加し、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。
【0041】
図5及び図6はそれぞれビード部の変形例を示すものである。図5及び図6において、ゴム補強支持層14は、カーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11のタイヤ幅方向外側の端部11eに当接するクラック抑制層14Aと、該クラック抑制層14Aに連なるゴム補強本体層14Bとから構成されている。クラック抑制層14Aとゴム補強本体層14Bとは互いに異なる種類のゴム組成物から構成されている。クラック抑制層14Aの破断伸びKcEBは300%以上であり、ゴム補強本体層14Bの100%モジュラスKmM100はクラック抑制層の100%モジュラスKcM100よりも大きくなっている。なお、ゴム補強支持層14がクラック抑制層14Aとゴム補強本体層14Bとから構成される場合、ゴム補強支持層14の100%モジュラスKM100はゴム補強本体層14Bの100%モジュラスKmM100と一致する値である。
【0042】
このようにゴム補強支持層14をクラック抑制層14Aとゴム補強本体層14Bとから構成することにより、カーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11の端部11eに当接するクラック抑制層の破断伸びKcEBを大きくすることでセパレーションを効果的に抑制することができる。その一方で、ゴム補強本体層14については破断伸びの低下を許容しながら100%モジュラスKmM100を大きくすることができ、それによって加硫時のゴム流れを抑制し、走行初期におけるビード部表面のクラックを効果的に抑制することができる。ここで、クラック抑制層14Aの破断伸びKcEBが300%未満であるとセパレーションを抑制する効果が低下する。クラック抑制層14Aの破断伸びKcEBの上限値は500%であると良い。
【0043】
図5及び図6の実施形態では、クラック抑制層14Aとゴム補強本体層14Bとのゴムボリュームの配分が相違するが、クラック抑制層14Aがカーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11のタイヤ幅方向外側の端部11eに当接する限りにおいてゴムボリュームの配分を任意に選択することができる。また、図5及び図6の実施形態では、スチール補強層11のタイヤ幅方向内側の端部11eにもエッジテープ13が被覆されているが、このようなエッジテープ13は任意に付加することができる。
【0044】
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の巻き上げ端部4eからビードフィラー6の外径側端部6eまでの領域におけるクラック抑制層14Aの長さIcは30mm以上であり、カーカス層4の巻き上げ端部4eにおけるクラック抑制層14Aの厚さTcは3.0mm以上であると良い。これにより、カーカス層4の巻き上げ端部4e及びスチール補強層11の端部11eからのセパレーションを効果的に抑制することができる。なお、クラック抑制層14Aの長さIc及び厚さTcは、エッジテープ13の厚さを含めた厚さとする。
【0045】
ここで、クラック抑制層14Aの長さIcが30mm未満であると、セパレーションを抑制する効果が低下する。また、カーカス層4の巻き上げ端部4eにおけるクラック抑制層14Aの厚さTcが3.0mm未満であると、セパレーションを抑制する効果が低下する。
【0046】
図7はビード部の更なる変形例を示すものである。図7において、ビードフィラー6は内径側に位置する硬質フィラー層61と外径側に位置する軟質フィラー層62とを含み、硬質フィラー層61の100%モジュラスB1M100は6.0MPa~18.0MPaの範囲に設定され、軟質フィラー層62の100%モジュラスB2M100は1.0MPa~6.0MPaの範囲に設定されている。より具体的には、カーカス層4の巻き上げ端部4eは軟質フィラー層62と隣接する位置で終端している。これにより、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションを効果的に抑制することができる。なお、ビードフィラー6が硬質フィラー層61と軟質フィラー層62とから構成される場合、ビードフィラー6の100%モジュラスBFM100は軟質フィラー層62の100%B2M100と一致する値である。
【0047】
ここで、硬質フィラー層61の100%モジュラスB1M100が6.0MPa未満であると、荷重負荷時のビード部3の倒れ込みが過度になるため、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。また、硬質フィラー層61の100%モジュラスB1M100が18.0MPa超であると、カーカス層4の本体部と硬質フィラー層61との間でのセパレーションが懸念される。特に、硬質フィラー層61の100%モジュラスB1M100は8.0MPa~16.0MPaであることが望ましい。
【0048】
一方、軟質フィラー層62の100%モジュラスB2M100が1.0MPa未満であると、荷重負荷時のビード部3の倒れ込みが過度になるため、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。また、軟質フィラー層62の100%モジュラスB2M100が6.0MPa超であると、カーカス層4の巻き上げ端部4eでの歪が増大するため、カーカス層4の巻き上げ端部4eからのセパレーションが懸念される。特に、軟質フィラー層62の100%モジュラスB2M100は2.0MPa~5.0MPaであることが望ましい。
【0049】
上述した実施形態からなる空気入りタイヤは、単輪でのロードインデックスが121以上、又は、プライレーティングが10PR以上であると良い。このようなロードインデックス又はプライレーティングを有する空気入りタイヤにおいてビード部の耐久性を改善することは極めて有意義である。
【実施例
【0050】
タイヤサイズ275/70R22.5で、トレッド部と一対のサイドウォール部と一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に複数本のスチールコードを含むカーカス層が装架され、該カーカス層が各ビード部のビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた構造を有する空気入りタイヤにおいて、ビード部の構造だけを異ならせた従来例、比較例1~2及び実施例1~17のタイヤを製作した。なお、本明細書において、実施例2,3は参考例である。
【0051】
これら従来例、比較例1~2及び実施例1~17のタイヤにおいて、ゴム補強支持層のカーカス層本体部への接触の有無、ゴム補強支持層の100%モジュラスKM100とビードフィラーの100%モジュラスBFM100との比KM100/BFM100、ゴム補強支持層の100%モジュラスKM100とサイドウォールゴム層の100%モジュラスSM100との比KM100/SM100、ゴム補強支持層の100%モジュラスKM100、ゴム補強支持層の厚さTK、クラック抑制層の破断伸びKcEB、ゴム補強本体層の100%モジュラスKmM100、クラック抑制層の100%モジュラスKcM100、クラック抑制層の長さIc、クラック抑制層の厚さTc、ビードコアの距離A、カーカス層の巻き上げ端部からビード部の外表面までの最短距離T1、T1/TBF、ビードコアの中心からカーカス層の巻き上げ端部までの距離Ph、カーカス層の巻き上げ端部からカーカス層の本体部までの最短距離TBF、ビードコアの中心からスチール補強層の端部までの距離Sho、Ph-Sho、硬質フィラー層の100%モジュラスB1M100、軟質フィラー層の100%モジュラスB2M100を表1及び表2のように設定した。
【0052】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、ビード部の耐久性を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0053】
ビード部の耐久性:
各試験タイヤをそれぞれJATMAの規定リムに装着して、JATMAの規定空気圧の75%とし、JATMAの規定荷重の1.4倍を負荷し、走行速度49km/hの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した。40,000km走行後、両ビード部の表面に形成されたクラックの周方向長さを測定した。また、試験タイヤをタイヤ周方向に等間隔となる8箇所でタイヤ子午線に沿って切断し、両ビード部の8箇所の切断面(合計16箇所)においてカーカス層の巻き上げ端部を起点とするクラックの断面方向長さを測定した。そして、ビード部表面におけるクラックの周方向長さとビード部断面におけるクラックの断面方向長さとの総和を求めた。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、ビード部の耐久性が優れていることを意味する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び表2から判るように、実施例1~17のタイヤは、従来例に比べてビード部の耐久性が改善されていた。一方、比較例1~2のタイヤは、ビード部の耐久性を改善する効果を十分に得られなかった。
【符号の説明】
【0057】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4e 巻き上げ端部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
6e 外径側端部
7 ベルト層
11 スチール補強層
11 端部
12 サイドウォールゴム層
13 エッジテープ
14 ゴム補強支持層
14A ゴム補強本体層
14B クラック抑制層
61 硬質フィラー層
62 軟質フィラー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7