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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 16/04 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
H02K16/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018212792
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020080607
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】中井 英雄
(72)【発明者】
【氏名】相木 宏介
(72)【発明者】
【氏名】木戸岡 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】岡村 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小森 健裕
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-244643(JP,A)
【文献】特開2013-090531(JP,A)
【文献】特開2016-005412(JP,A)
【文献】特開平03-203538(JP,A)
【文献】特開2013-005563(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103178668(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/04
H02K 1/16
H02K 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコア及び永久磁石が周方向に交互に配置されて円環状に形成されたロータと、
前記ロータの第1の端面に対向し、前記ロータに対してエアギャップをあけて設けられた第1のステータと、
前記ロータの前記第1の端面の反対側の第2の端面に対向し、前記ロータに対してエアギャップをあけて設けられた第2のステータと、を備え、
前記永久磁石は前記ロータの周方向に磁化されて、隣り合う前記永久磁石の磁化の向きが逆であり、
前記第1のステータは、前記ロータの前記第1の端面に対向する面に周方向に等間隔に形成された複数の第1のスロットと、前記各第1のスロットに収められた第1の巻線とを有し、
前記第2のステータは、前記ロータの前記第2の端面に対向する面に周方向に等間隔に形成された複数の第2のスロットと、前記各第2のスロットに収められた第2の巻線とを有し、
前記第1のスロットの数と前記第2のスロットの数とが同一であり、
前記各第1のスロットと、前記各第2のスロットとは、対向した位置に配置されており、
前記第1の巻線と、前記第2の巻線には複数相の交流電流が供給され、
前記第1のスロットに収められた前記第1の巻線と、当該第1のスロットに対向した前記第2のスロットに収められた前記第2の巻線に供給される電流は、180度の位相差を有し、
前記ロータの前記永久磁石により形成される極対数Zと、前記第1のスロットの数nと、前記第1の巻線に電流を流すことにより形成される極対数pは、下記(1)式の関係を満たす、
Z=n±p・・・(1)
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記ロータの前記永久磁石により形成される極対数Zと、前記第1のスロットの数nは、下記(2)式の関係を満たす、
Z=n±1・・・(2)
ことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記第1の巻線と、前記第2の巻線は三相巻線であり、
前記第1のスロットに収められた前記第1の巻線と、当該第1のスロットに対向した前記第2のスロットに収められた前記第2の巻線は、同一相の巻線により構成される、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の回転電機であって、
前記第1のステータは、前記ロータの径方向外側に配置されており、
前記第2のステータは、前記ロータの径方向内側に配置されている、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項に記載の回転電機であって、
前記第1の巻線は、前記第1のステータに分布巻で巻回されており、
前記第2の巻線は、前記第2のステータに分布巻で巻回されている、
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのステータを備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコア及び永久磁石が周方向に交互に配置されて円環状に形成されたロータと、ロータの外周側にエアギャップをあけて設けられた第1のステータと、ロータの内周側にエアギャップをあけて設けられた第2のステータとを備える回転電機が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記構成を備え、永久磁石が、ロータの周方向に磁化されて隣り合う永久磁石の磁化の向きが逆であり、第1のステータが、ロータに対向する面に周方向に等間隔に形成された複数の第1のスロットと、各第1のスロットに収められた巻線とを有し、第2のステータが、ロータに対向する面に周方向に等間隔に形成された複数の第2のスロットと、各第2のスロットに収められた巻線とを有するバーニアモータが開示されている。第1のスロットの数と第2のスロットの数が同一であり、スロットの周期をaとしたとき、第1のスロットの周方向の位置と第2のスロットの周方向の位置とが相対的にスロットの周期aの半分(a/2)ずれるように第1のステータに対して第2のステータを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-5412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータは、ステータが作る回転磁束成分と、ロータが作る磁束成分が同期して回転トルクを発生する。バーニアモータや分数スロットモータでは、ステータが作る回転磁束成分が複数存在し、トルクの発生に寄与する回転磁束成分が存在する一方で、トルクの発生に寄与しない回転磁束成分が存在する。トルクの発生に寄与しない回転磁束成分は、損失を発生しモータの回転効率の悪化を招く。
【0006】
上記特許文献1では、ロータの永久磁石による磁束を有効に利用して、各ステータの巻線の鎖交磁束数を増やすことを主眼にした構成となっているが、上記のトルクの発生に寄与しない回転磁束成分による損失の発生に関して対策がなされていない。
【0007】
本発明の目的は、2つのステータを備える回転電機であって、トルクの発生に寄与しない回転磁束成分による損失を抑制して高効率で回転する回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機は、上記の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明に係る回転電機は、ロータコア及び永久磁石が周方向に交互に配置されて円環状に形成されたロータと、前記ロータの第1の端面に対向し、前記ロータに対してエアギャップをあけて設けられた第1のステータと、前記ロータの前記第1の端面の反対側の第2の端面に対向し、前記ロータに対してエアギャップをあけて設けられた第2のステータと、を備え、前記永久磁石は前記ロータの周方向に磁化されて、隣り合う前記永久磁石の磁化の向きが逆であり、前記第1のステータは、前記ロータの前記第1の端面に対向する面に周方向に等間隔に形成された複数の第1のスロットと、前記各第1のスロットに収められた第1の巻線とを有し、前記第2のステータは、前記ロータの前記第2の端面に対向する面に周方向に等間隔に形成された複数の第2のスロットと、前記各第2のスロットに収められた第2の巻線とを有し、前記第1のスロットの数と前記第2のスロットの数とが同一であり、前記各第1のスロットと、前記各第2のスロットとは、対向した位置に配置されており、前記第1の巻線と、前記第2の巻線には複数相の交流電流が供給され、前記第1のスロットに収められた前記第1の巻線と、当該第1のスロットに対向した前記第2のスロットに収められた前記第2の巻線に供給される電流は、180度の位相差を有し、前記ロータの前記永久磁石により形成される極対数Zと、前記第1のスロットの数nと、前記第1の巻線に電流を流すことにより形成される極対数pは、下記(1)式の関係を満たす、
Z=n±p・・・(1)
ことを要旨とする。
【0011】
本発明の一態様では、前記ロータの前記永久磁石により形成される極対数Zと、前記第1のスロットの数nは、下記(2)式の関係を満たす、としてもよい。
Z=n±1・・・(2)
【0012】
本発明の一態様では、前記第1の巻線と、前記第2の巻線は三相巻線であり、前記第1のスロットに収められた前記第1の巻線と、当該第1のスロットに対向した前記第2のスロットに収められた前記第2の巻線は、同一相の巻線により構成される、としてもよい。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1のステータは、前記ロータの径方向外側に配置されており、前記第2のステータは、前記ロータの径方向内側に配置されている、としてもよい。
【0014】
本発明の一態様では、前記第1の巻線は、前記第1のステータに分布巻で巻回されており、前記第2の巻線は、前記第2のステータに分布巻で巻回されている、としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1のステータが作る回転磁束成分のうちトルクの発生に寄与しない基本波磁束成分と、第2のステータが作る回転磁束成分のうちトルクの発生に寄与しない基本波磁束成分とが互いに打ち消しあうことで、それらの磁束成分による損失が生じない、或いは抑制される。一方、第1のステータが作る回転磁束成分のうちトルクの発生に寄与する高調波磁束成分と、第2のステータが作る回転磁束成分のうちトルクの発生に寄与する高調波磁束成分とは互いに打ち消すことなく磁束を発生し、ロータにトルクを発生させる。これにより、回転電機が高効率で回転する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】回転電機の径方向断面図である。
図2】回転電機の軸方向断面図である。
図3】外側巻線と内側巻線の接続関係の一例を示す図である。
図4】回転電機のW相の外側巻線が作る回転磁束成分を簡略化して示す図である。
図5】回転電機のW相の内側巻線が作る回転磁束成分を簡略化して示す図である。
図6】実施形態の回転電機と従来技術のモータとの相電流-トルク特性を示す図である。
図7】別の実施形態の回転電機の径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。以下で述べる形状等は、説明のための例示であって、回転電機の仕様等に合わせて適宜変更が可能である。全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態における回転電機10の径方向断面図であり、180度分の断面を示している 。図2は、本発明の実施形態における回転電機10の軸方向断面図であり、上側半分の断面を示している。図1に示すように、回転電機10は、ロータコア30及び永久磁石32が周方向に交互に配置されて円環状に形成されたロータ12と、ロータ12の径方向外側にエアギャップ50をあけて設けられた外側ステータ14(第1のステータとも言う。以下同様に括弧書きで換言される用語を示す。)と、ロータ12の径方向内側にエアギャップ52をあけて設けられた内側ステータ16(第2のステータ)とを備える。
【0019】
永久磁石32はロータ12の周方向に磁化されて、隣り合う永久磁石32の磁化の向きが逆である。図1には、一部の永久磁石32の磁化の向きが矢印で示されており、例えば、永久磁石32aは、上側がN極に下側がS極に着磁されており、永久磁石32aに隣り合う永久磁石32bは、上側がS極に下側がN極に着磁されており、永久磁石32bに隣り合う永久磁石32cは、上側がN極に下側がS極に着磁されている。永久磁石32の数は合計46個あり、永久磁石32により形成される極対数Zは23である。
【0020】
外側ステータ14は、ロータ12の外側端面46(第1の端面)に対向して設けられており、外側ステータコア15(第1のステータコア)と外側巻線38(第1の巻線)を備える。外側ステータコア15は、環状の外側ヨーク33(第1のヨーク)と、外側ヨーク33の内周面から径方向内方へ突出し、周方向に間隔をあけて設けられた複数の外側ティース36(第1のティース)と、各外側ティース36の間に形成された外側スロット34(第1のスロット)を有する。図1に示すように、複数の外側スロット34は、ロータ12の外側端面46に対向する面に周方向に等間隔に形成されている。
【0021】
外側巻線38は、三相交流が流れる巻線(三相巻線)であり、各外側スロット34に挿通されて(収められて)外側ステータコア15に分布巻で巻回されている。図1には、各外側スロット34内の外側巻線38と、W相の外側巻線38wの一部が簡略化して示されている。各外側スロット34内の丸の中心に点を付した外側巻線38は、紙面の奥から手前に向かって電流が流れている巻線を示し、丸に×を付した外側巻線38は、紙面の手前から奥に向かって電流が流れている巻線を示している。なお、外側巻線38には交流電流が流れるので、当然、各外側スロット34内の外側巻線38の電流の方向は時間とともに変化する。
【0022】
内側ステータ16は、ロータ12の内側端面48(第2の端面)に対向して設けられており、内側ステータコア17(第2のステータコア)と内側巻線44(第2の巻線)を備える。内側ステータコア17は、環状の内側ヨーク39(第2のヨーク)と、内側ヨーク39の外周面から径方向外方へ突出し、周方向に間隔をあけて設けられた複数の内側ティース42(第2のティース)と、各内側ティース42の間に形成された内側スロット40(第2のスロット)を有する。図1に示すように、複数の内側スロット40は、ロータ12の内側端面48に対向する面に周方向に等間隔に形成されている。
【0023】
内側巻線44は、上記した外側巻線38と同様に、三相交流が流れる巻線(三相巻線)であり、各内側スロット40に挿通されて(収められて)内側ステータコア17に分布巻で巻回されている。図1には、各内側スロット40内の内側巻線44と、W相の内側巻線44wの一部が簡略化して示されている。各内側スロット40内の丸の中心に点を付した内側巻線44は、紙面の奥から手前に向かって電流が流れている巻線を示し、丸に×を付した内側巻線44は、紙面の手前から奥に向かって電流が流れている巻線を示している。なお、外側巻線38と同様に、内側巻線44には交流電流が流れるので、当然、各内側スロット40内の内側巻線44の電流の方向は時間とともに変化する。
【0024】
外側ステータ14の外側スロット34の数nと、内側ステータ16の内側スロット40の数nは同一であり、それぞれ24個である。各外側スロット34と、各内側スロット40とは対向した位置に配置されている。
【0025】
図3は、外側ステータ14の外側巻線38と、内側ステータ16の内側巻線44の接続関係の一例を示す図である。外側巻線38のU、V、W相のそれぞれの巻線38u,38v,38wと、内側巻線44のU、V、W相のそれぞれの巻線44u,44v,44wとが、相ごとに直列に接続されてU、V、W相の組巻線を構成し、それらがスター結線されている。なお、巻線38u,38v,38wと、巻線44u,44v,44wとは、相ごとに並列に接続されていてもよく、また、各相の組巻線は、デルタ結線されていてもよい。
【0026】
図1に示すように、外側スロット34に収められた外側巻線38と、当該外側スロット34に対向した内側スロット40に収められた内側巻線44は、同一相の巻線により構成されている。しかし、外側巻線38の外側ステータコア15への巻回方向と、内側巻線44の内側ステータコア17への巻回方向とが逆になっている。そのため、外側スロット34に収められた外側巻線38と、当該外側スロット34に対向した内側スロット40に収められた内側巻線44に供給される電流は180度の位相差を有する。すなわち、電気角位相で180度の差を有する。ここで、外側巻線38に電流を流すことにより形成される極対数pと、内側巻線44に電流を流すことにより形成される極対数pは同一であり、それぞれ1である。
【0027】
本実施形態の回転電機10は、バーニアモータとして機能し、バーニアモータの磁極関係を満たしている。すなわち、ロータ12の永久磁石32により形成される極対数Zと、外側スロット34または内側スロット40の数nと、外側巻線38または内側巻線44に電流を流すことにより形成される極対数pは、下記(1)式の関係を満たす。
【0028】
Z=n±p・・・(1)
【0029】
前述したように、本実施形態では、Z=23、n=24、p=1である。また、本実施形態では、p=1であるため、下記(2)式の関係を満たす。
【0030】
Z=n±1・・・(2)
【0031】
図2に示すように、ロータコア30は、回転軸18に接続された支持部20によって支持されている。回転軸18は、軸受24を介してケース22に回転可能に保持されて、ケース22の外側に突出し、ロータ12の回転力をケース22外部に出力する。外側ステータ14と内側ステータ16は、ケース22の内面に固着されて、ロータ12に対してエアギャップをあけて配置されている。外側ステータ14の外側巻線38と、内側ステータ16の内側巻線44に三相の交流電流が供給されて各ステータが回転磁束を作り、それとロータ12が作る磁束が同期して、ロータ12に回転トルクが発生する。
【0032】
次に、本実施形態の回転電機10の作用効果について説明する。図4は、回転電機10のW相の外側巻線38wが作る回転磁束成分MA1,MA2を簡略化して示す図であり、図5は、回転電機10のW相の内側巻線44wが作る回転磁束成分MB1,MB2を簡略化して示す図である。上記したように、外側スロット34に収められた外側巻線38と、当該外側スロット34に対向した内側スロット40に収められた内側巻線44に供給される電流は180度の位相差を有する。そのため、図4,5では、W相の外側巻線38wに紙面の奥から手前に向かった電流が流れている一方で、それらに対向したW相の内側巻線44wには紙面の手前から奥に向かった電流が流れている。
【0033】
図4に示すように、W相の外側巻線38wに紙面の奥から手前に向かった電流が流れると、右ねじの法則に従って、反時計回りの回転磁束成分MA1,MA2が発生する。回転磁束成分MA1は、ロータ12の回転トルクに寄与しない基本波磁束成分であり、外側ステータ14の外側ヨーク33を通り、ロータ12を渡って内側ステータ16の内側ヨーク39に達し、内側ヨーク39を通った後、再びロータ12を渡って外側ステータ14の外側ヨーク33へ戻る回転磁束成分である。一方、回転磁束成分MA2は、ロータ12の回転トルクに寄与する高調波磁束成分であり、外側ステータ14の外側ヨーク33と、外側ステータ14とロータ12の間のエアギャップ50付近とを通って回る回転磁束成分である。
【0034】
また、図5に示すように、W相の内側巻線44wに紙面の手前から奥に向かった電流が流れると、右ねじの法則に従って、時計回りの回転磁束成分MB1,MB2が発生する。回転磁束成分MB1は、ロータ12の回転トルクに寄与しない基本波磁束成分であり、内側ステータ16の内側ヨーク39を通り、ロータ12を渡って外側ステータ14の外側ヨーク33に達し、外側ヨーク33を通った後、再びロータ12を渡って内側ステータ16の内側ヨーク39へ戻る回転磁束成分である。一方、回転磁束成分MB2は、ロータ12の回転トルクに寄与する高調波磁束成分であり、内側ステータ16の内側ヨーク39と、内側ステータ16とロータ12の間のエアギャップ52付近とを通って回る回転磁束成分である。
【0035】
図4、5に示すように、外側ステータ14が作る基本波磁束成分MA1と、内側ステータ16が作る基本波磁束成分MB1とは、同じルートを通る逆方向の磁束成分であるため、互いに打ち消しあうことになる。それにより、基本波磁束成分MA1,MB1に起因する損失を生じない、或いは、損失を抑制することができる。一方、外側ステータ14が作る高調波磁束成分MA2と、内側ステータ16が作る高調波磁束成分MB2とは、互いに打ち消すことなく磁束を発生し、ロータ12に回転トルクを発生させる。これにより回転電機10が高効率で回転する。なお、ここでは、W相の外側巻線38wと内側巻線44wに着目して説明をしたが、U相の外側巻線と内側巻線、および、V相の外側巻線と内側巻線についても、同様の回転磁束成分が発生する。
【0036】
図6は、本実施形態の回転電機10における相電流に対するトルクの変化(トルク特性TC1)と、従来技術のモータにおける相電流に対するトルクの変化(トルク特性TC2)を示すグラフである。ここで、従来技術のモータは、特許文献1に記載のモータである。従来技術のモータでは、トルク特性TC2に示すように、三相巻線の各相に流す電流の実効値を大きくしていくと、途中でトルク値が飽和し、大きな回転トルクを得ることができない。これは、三相巻線の各相に流す電流の実効値を大きくしていくと、途中で、外側ステータ(第1のステータ)が作る基本波磁束成分と内側ステータ(第2のステータ)が作る基本波磁束成分により、特に外側ステータの外側ヨークと内側ステータの内側ヨークの部分に磁気飽和を生じることに起因している。磁気飽和により、損失を生じ、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換効率が悪化している。
【0037】
一方、本実施形態の回転電機10は、外側ステータ14が作る基本波磁束成分と内側ステータ16が作る基本波磁束成分が互いに打ち消しあうので磁気飽和が抑制される。そのため、トルク特性TC1に示すように、三相巻線の各相に流す電流の実効値を大きくしていくと、トルク値が飽和せずに、大きな回転トルクを得ることができる。
【0038】
次に、別の実施形態の回転電機について説明する。図7は、別の実施形態の回転電機80の径方向断面図である 。図7の回転電機80と、図1の回転電機10の違いは、ロータ12の永久磁石32の数と、外側ステータ14の外側巻線38により形成される極対数と、内側ステータ16の内側巻線44により形成される極対数であり、その他は同じである。つまり、回転電機80は、上記した回転電機10と同様に、外側ステータ14の外側スロット34の数nと、内側ステータ16の内側スロット40の数nが、それぞれ24個である。また、上記した回転電機10と同様に、外側巻線38が外側ステータコア15に分布巻で巻回されており、内側巻線44も内側ステータコア17に分布巻で巻回されている。
【0039】
しかし、回転電機80は、上記した回転電機10と異なり、永久磁石32の数が44個であり、永久磁石32により形成される極対数Zが22である。また、回転電機80は、上記した回転電機10と異なり、外側巻線38に電流を流すことにより形成される極対数pと、内側巻線44に電流を流すことにより形成される極対数pは、それぞれ2である。このように、回転電機80は、Z=22、n=24、p=2であり、上記した回転電機10と同様に、上記(1)式のバーニアモータの磁極関係を満たし、バーニアモータとして機能する。回転電機80においても、回転電機10と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
以上説明した各実施形態の回転電機は、外側巻線38が外側ステータコア15に分布巻で巻回されており、内側巻線44も内側ステータコア17に分布巻で巻回されていた。しかし、外側巻線38が外側ステータコア15に集中巻で巻回されて、内側巻線44も内側ステータコア17に集中巻で巻回されてもよい。
【0041】
また、以上説明した各実施形態の回転電機は、ロータ12の径方向両側にエアギャップをあけて外側ステータ14(第1のステータ)と内側ステータ16(第2のステータ)を配置したラジアルギャップモータであった。しかし、ロータ12の軸方向両側にエアギャップをあけて第1のステータ14と第2のステータ16を配置したアキシャルギャップモータであってもよい。
【0042】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこうした各実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10,80 回転電機、12 ロータ、14 外側ステータ(第1のステータ)、15 外側ステータコア(第1のステータコア)、16 内側ステータ(第2のステータ)、17 内側ステータコア(第2のステータコア)、18 回転軸、20 支持部、22 ケース、24 軸受、30 ロータコア、32,32a,32b,32c 永久磁石、33 外側ヨーク(第1のヨーク)、34 外側スロット(第1のスロット)、36 外側ティース(第1のティース)、38,38u,38v,38w 外側巻線(第1の巻線,巻線)、39 内側ヨーク(第2のヨーク)、40 内側スロット(第2にスロット)、42 内側ティース(第2のティース)、44,44u,44v,44w 内側巻線(第2の巻線,巻線)、46 外側端面(第1の端面)、48 内側端面(第2の端面)、50,52 エアギャップ、MA1,MA2,MB1,MB2 回転磁束成分、TC1,TC2 トルク特性。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7