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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】固体状口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20221018BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221018BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/34
A61Q11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018231321
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020093986
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城 隆太郎
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-125706(JP,A)
【文献】特開平07-067552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0251647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A23G 3/00,4/00
A23L27/00
Mintel GNPD
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リゾリン脂質、
(B)キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール及びイソマルトから選ばれる1種又は2種以上、及び
(C)メントール
を含有し、(A)リゾリン脂質の含有量が0.1~30質量%、(C)メントールの含有量が0.6~10質量%であることを特徴とする固体状口腔用組成物。
【請求項2】
(A)/(C)が質量比として0.05~15である請求項1記載の固体状口腔用組成物。
【請求項3】
(B)/(A)が質量比として0.5以上である請求項1又は2記載の固体状口腔用組成物。
【請求項4】
(A)リゾリン脂質が、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルイノシトール及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1~3のいずれか1項記載の固体状口腔用組成物。
【請求項5】
(B)成分の含有量が5質量%以上である請求項1~4のいずれか1項記載の固体状口腔用組成物。
【請求項6】
錠剤である請求項1~5のいずれか1項記載の固体状口腔用組成物。
【請求項7】
咀嚼により摂取されるものを除く、請求項1~6のいずれか1項記載の固体状口腔用組成物。
【請求項8】
舐めて摂取するものである、請求項1~6のいずれか1項記載の固体状口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メントールによる刺激が適度に抑制され、口腔内に高い爽快感を与える、外観安定性にも優れる固体状口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔用組成物では、香料として清涼感を与えるメントール等が一般的に配合され、口腔内に爽快な使用感を付与することが行われているが、このような付与効果は他の配合成分の影響で十分に発揮されなくなり、また、特に多く配合し過ぎたりするとメントールの刺激性が強くなって痛みを伴う刺激が生じるため、刺激を緩和しつつ配合効果を十分に与えることが必要であった(特許文献1;特開2018-95574号公報)。
【0003】
ところで、大豆、卵黄等に含まれるリン脂質やリゾリン脂質は、口腔用組成物に界面活性剤として用いられ、また、抗菌剤として応用できることや、口腔咽頭疾患、歯周病の予防又は改善に有効であることも知られている(特許文献2;特許第2794072号公報、特許文献3;特許第3407206号公報、特許文献4;特開2014-88333号公報)が、リン脂質は不飽和脂肪酸基を有するため、化学変化によって変色や独特な不快な風味を招くことがあった。また、酸性リン脂質又はそのリゾ体が苦味低減剤として、化粧料等の使用感改善に用いられることが提案されている(特許文献5;特許第2717509号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-95574号公報
【文献】特許第2794072号公報
【文献】特許第3407206号公報
【文献】特開2014-88333号公報
【文献】特許第2717509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、メントールによる刺激が適度に抑制され、口腔内に高い爽快感を与える、外観安定性にも優れる固体状口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、固体状口腔用組成物にメントールを特定量配合し、リゾリン脂質を特定量で併用して配合し、更に特定の糖アルコールを組み合わせて配合すると、製剤変色を抑制して外観安定性を維持しつつ、メントールによる刺激が適度に抑制され、口腔内で使用後に高い爽快感を付与することができることを知見した。即ち、本発明では、(A)リゾリン脂質、(B)キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール及びイソマルトから選ばれる1種又は2種以上、及び(C)メントールを含有し、(A)リゾリン脂質の含有量が0.1~30質量%、(C)メントールの含有量が0.6~10質量%であることによって、メントールによる刺激が適度に抑制され、口腔内に高い爽快感を与える、外観安定性にも優れ、味も良い固体状口腔用組成物を提供できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
更に詳述すると、本発明においては、(C)メントールと(A)リゾリン脂質とをそれぞれ特定量で併用することで、(A)リゾリン脂質が刺激抑制剤として特異的に作用し、(C)メントールの配合量が比較的多くてもその刺激性を適度に抑制することができ、更に、この(A)及び(C)成分の併用系に、(B)特定の糖アルコールを配合することで、上記併用系における製剤変色を経時においても抑制し、これにより、外観安定性を維持し、(A)成分由来の独特な異味の発現も防止しつつ、使用後の口腔内に高い爽快感を付与することができた。
この場合、メントールは、爽快感を高めるために配合量を増やすと刺激性が強くなり、その一方で、リゾリン脂質を添加するとこれが製剤中で経時的に化学変化して保存後に製剤変色が発生し、外観安定性が悪くなり、また、リゾリン脂質由来の風味(異味)が独特な異味として感じられて味も低下した。しかし、(A)、(B)及び(C)成分を組み合わせて配合すると、特に錠剤に調製して容器に収容して長期間保存しても、上記のように製剤変色を発生させることなく外観安定性を保ち、味を良好に維持しつつ高い爽快感を付与することができた。
本発明の作用効果は、(A)、(B)及び(C)成分の組み合わせに特異かつ格別な作用効果であり、(A)、(B)及び(C)成分のうちのいずれかの成分を欠くと劣るものであった。後述の比較例にも示すように、(A)成分を欠くか、又は(A)成分量が0.1質量%未満であると、(B)及び(C)成分を含み、更にリン脂質(ホスファチジルコリン)を含んでいても口腔粘膜への刺激性が強すぎて劣り、異味のなさが劣る場合もあった(比較例3、4、7)。(B)成分を欠くと、(A)及び(C)成分を含み、更に(B)成分以外の糖アルコール(ソルビトール又はラクトース)を含んでいても外観の変色抑制効果が劣り(比較例2、5、6)、糖アルコールを含まない比較例2は異味のなさも劣り、ラクトースを含む比較例6では、外観の変色抑制効果に加えて使用後の爽快感及び異味のなさも劣っていた。これに対して、後述の実施例に示すように、本発明の(A)、(B)及び(C)成分が適切に配合された固体状口腔用組成物は、外観の変色抑制効果(非密封容器に25℃で1ヶ月間保存後の変色のなさ)、口腔粘膜への刺激性及び異味のなさ(口腔内で舐めて使用時の刺激感のなさ及び異味のなさ)が優れると共に、使用後の爽快感(口腔内で舐めて使用後の爽快感の度合い)に優れていた。
【0008】
従って、本発明は、下記の固体状口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(A)リゾリン脂質、
(B)キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール及びイソマルトから選ばれる1種又は2種以上
及び
(C)メントール
を含有し、(A)リゾリン脂質の含有量が0.1~30質量%、(C)メントールの含有量が0.6~10質量%であることを特徴とする固体状口腔用組成物。
〔2〕
(A)/(C)が質量比として0.05~15である〔1〕に記載の固体状口腔用組成物。
〔3〕
(B)/(A)が質量比として0.5以上である〔1〕又は〔2〕に記載の固体状口腔用組成物。
〔4〕
(A)リゾリン脂質が、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルイノシトール及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の固体状口腔用組成物。
〔5〕
(B)成分の含有量が5質量%以上である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の固体状口腔用組成物。
〔6〕
錠剤である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の固体状口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メントールによる刺激が適度に抑制され、口腔内に高い爽快感を与える、外観安定性にも優れ、味も良い固体状口腔用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の固体状口腔用組成物は、(A)リゾリン脂質、(B)キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール及びイソマルトから選ばれる1種又は2種以上、及び(C)メントールを含有する。
【0011】
(A)リゾリン脂質は、(C)メントールによる口腔粘膜への刺激性を抑制する作用を奏する。
(A)リゾリン脂質としては、下記構造式(1)で表される化合物又はその塩を用いることができる。
【0012】
【化1】
(式(1)中、R1及びR2は、いずれか一方が-OH、他方が-OCOR(Rは、炭素数11~23の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基)であり、X1は-H、-C24+(CH33、-C23(N+3)COOH、-C24+3、-C66(OH)5、又は-C23(OH)CH2(OH)である。)
【0013】
上記式(1)中の-OCORにおいて、Rは炭素数11~23、好ましくは15~21の飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基である。-OCORの具体例としては、ラウリン酸残基(CH3(CH210COO-)、ミリスチン酸残基(CH3(CH212COO-)、パルミチン酸残基(CH3(CH214COO-)、ステアリン酸残基(CH3(CH216COO-)、アラキジン酸残基(CH3(CH218COO-)、ベヘン酸残基(CH3(CH220COO-)、リグノセリン酸残基(CH3(CH222COO-)、パルミトレイン酸残基(CH3(CH25CH=CH(CH27COO-)、オレイン酸残基(CH3(CH27CH=CH(CH27COO-)、リノール酸残基(CH3(CH24(CH=CHCH22(CH26COO-)、γリノレン酸残基(CH3(CH24(CH=CHCH23(CH23COO-)、αリノレン酸残基(CH3(CH2)(CH=CHCH23(CH26COO-)、エルカ酸残基(CH3(CH27CH=CH(CH211COO-)、エイコペンタエン酸残基(CH3CH2(CH=CHCH25(CH22COO-)、ドコサヘキサエン酸残基(CH3CH2(CH=CHCH26CH2COO-)が挙げられ、特にパルミチン酸残基(CH3(CH214COO-)、ステアリン酸残基(CH3(CH216COO-)、オレイン酸残基(CH3(CH27CH=CH(CH27COO-)、リノール酸残基(CH3(CH24(CH=CHCH22(CH26COO-)が好ましい。
【0014】
上記式(1)で表される化合物としては、具体的にリゾホスファチジン酸又はその誘導体が好ましく、例えばリゾホスファチジン酸(LPA、X1;-H)、リゾホスファチジルコリン(LPC、X1;-C24+(CH33)、リゾホスファチジルセリン(LPS、X1;-C23(N+3)COOH)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE、X1;-C24+3)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI、X1;-C66(OH)5)、リゾホスファチジルグリセリン(LPG、X1;-C23(OH)CH2(OH))等が挙げられる。これらは、1種単独でもよいが2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、特にリゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、とりわけリゾホスファチジルコリン(LPC)が、口腔粘膜への刺激性抑制の点で好ましい。
なお、上記化合物は塩であってもよく、塩としては、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩が挙げられる。
【0015】
本発明において、リゾリン脂質の製法は、特に限定されるものではないが、例えば、レシチン(リン脂質)のアシル基におけるエステル結合の酵素的加水分解等によって、通常、リン脂質混合物として得ることができる。
更に、リゾリン脂質は、酵素分解されなかった未反応のリン脂質を含む混合物を使用することもできるが、(C)メントールによる口腔粘膜への刺激抑制のためには、上記混合物中のリゾリン脂質の含量が高いほうが好ましく、(A)リゾリン脂質として上記混合物を使用する場合は、リゾリン脂質の含量が15%(質量%、以下同様)以上、特に20%以上がよい。リゾリン脂質のみ(100%品)のものでもよい。
【0016】
(A)リゾリン脂質としては、アヴァンティポーラリピッド社製、シグマアルドリッチ社製等の市販品を使用できる。また、キューピー社製の卵黄リゾレシチンLPL-1、卵黄レシチンLPL-20W、卵黄レシチンLPL-20Sや、辻製油社製のSLP-ホワイトリゾ、SLP-LPC70、SLP-ホワイトリゾH、SLP-LPC70H、H.Holstein社製のLIPOID R LPC20等の市販品を用いることもできる。
【0017】
(A)リゾリン脂質の配合量は、組成物全体の0.1~30%であり、好ましくは0.5~25%である。配合量が0.1%に満たないと、口腔粘膜への刺激性の抑制効果が劣る。配合量が多くなるほど製剤変色が強くなり、30%を超えると製剤変色が抑制されず、また、異味を抑えられなくなる。
【0018】
(B)成分は、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール及びイソマルトから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコールである。これら糖アルコールは、(A)リゾリン脂質による製剤変色を抑制する作用を奏し、また、(C)成分の異味抑制効果を増強し、使用後の爽快感付与効果を向上する作用も奏する。
(B)成分としては、特に使用後の爽快感付与の点から、キシリトール、エリスリトール、マンニトールが好ましく、中でもキシリトールがより好ましい。
(B)成分は、原料として固体状(粉末)、液体状を使用することができるが、固体状が好ましく、市販品を使用できる。
【0019】
(B)成分の配合量は、組成物全体の5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上であり、上限量は特に制限されないが90%以下が好ましい。配合量が多いほど製剤変色が抑制され、5%以上であると、製剤変色を十分に抑制できる。また、異味が十分に抑制され、使用後の爽快感が十分に向上する。
【0020】
(C)メントールは、爽快感付与作用を奏し、また、(A)リゾリン脂質由来の異味を抑制する作用を奏する。
(C)メントールは、例えば高砂香料工業社製、シムライズ社製等の市販品を使用し得る。
(C)メントールの配合量は、組成物全体の0.6~10%であり、好ましくは1~8%、更に好ましくは1~5%である。配合量が0.6%に満たないと、使用後の爽快感が劣り、また、異味が抑制できない。配合量が多いほど上記効果は高まるが、口腔粘膜への刺激性が強くなり、異味も強くなり、10%を超えると、口腔粘膜への刺激性が抑制されず、また、異味が抑制できなくなる。
【0021】
本発明において、(A)成分と(C)成分との量比を示す(A)/(C)は、質量比として0.05~15が好ましく、より好ましくは0.2~13である。(A)/(C)の質量比が上記範囲内であると、口腔粘膜への刺激性及び異味の抑制効果がより向上し、使用後の爽快感がより高まる。
【0022】
また、本発明において、(A)成分と(B)成分との量比を示す(B)/(A)は、質量比として0.5以上が好ましく、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは1.0以上、とりわけ好ましくは1.4以上であり、また、上限値は特に制限されないが、500以下が好ましく、より好ましくは100以下である。(B)/(A)の質量比が上記範囲内であると、製剤変色の抑制効果がより向上する。
本発明では、(A)/(C)の質量比と(B)/(A)の質量比がそれぞれ上記範囲を満たすと、作用効果の全てが更に向上し、とりわけ好ましい。
【0023】
本発明の固体状口腔組成物は、固体状の口腔用製剤であればよく、種々の剤型に調製できるが、例えば、粒状剤(散剤、顆粒剤、腸溶性顆粒剤等)、錠剤(素錠、糖衣錠、コーティング錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠等)、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、飴、グミ、顆粒、粉末、シート剤、ガム等が挙げられる。特に錠剤として好適である。なお、これらの形状、例えば錠剤の形状、大きさ等は、剤型に応じた通常の形状を採用できる。
ここで、「口腔用組成物」とは、「主として口腔内で使用することを目的にするもの」であり、(i)摂取可能なものと、(ii)使用後は口腔内から排出されるものが挙げられる。具体的には(i)摂取可能なものとしては、錠剤、トローチ、シート剤、飴、グミ等が挙げられ、これらは口腔内で舐め、必要により噛み砕いて適用することができる。(ii)使用後は口腔内から排出されるものとしては、洗口用錠剤、ガム等が挙げられ、これらは例えば使用時に水に溶かして液体製剤で口腔内に適用し、その後は排出される。本発明では、(i)、(ii)のどちらでもよい。
【0024】
本発明の固体状口腔用組成物には、上記成分に加えて、剤型等に応じてこれら成分以外の任意成分を必要に応じて配合し、通常の方法で調製することができる。例えば錠剤では、通常使用する成分、例えば賦形剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤、酸味剤、甘味剤、香料、流動化剤、着色剤等を配合することができる。
なお、本発明の組成物は、砂糖を添加しないシュガーレスの製剤に調製することができ、また、錠剤に糖衣は施さなくてもよい。
【0025】
具体的に、賦形剤としては、例えば乳糖、乳糖造粒物、コーンスターチ、L-システイン、トレハロース、マルチトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0026】
結合剤としては、例えば結晶セルロース、澱粉、ショ糖、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0027】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、タルク、微粒二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0028】
コーティング剤としては、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルフタレート、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等が挙げられる。また、Opadry(日本カラコン合同会社製)等の市販のプレミックス品を用いてもよい。
【0029】
崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(ナトリウム塩、カルシウム塩)や誘導体等が挙げられる。
【0030】
酸味剤としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸等が挙げられる。
【0031】
甘味剤としては、例えばアスパルテーム、サッカリンナトリウム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
【0032】
香料としては、メントール以外の香料、例えばリモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
流動化剤としては、二酸化ケイ素、無水ケイ酸、酸化チタン等が挙げられる。
【0033】
着色剤としては、例えば食用着色剤、食用着色剤以外の有機顔料及び無機顔料、動植物抽出物等が挙げられる。食用着色剤としては、例えばオレンジエッセンス、カラメル、カルミン、β-カロテン、食用青色1号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が挙げられる。有機顔料としては、例えば銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、リボフラビン等が挙げられる。無機顔料としては、例えば三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化亜鉛、金箔、薬用炭等が挙げられる。動植物抽出物としては、例えばカンゾウエキス、アセンヤクタンニン末、ウコン抽出液、緑茶末等が挙げられる。これらの中でも、保存後も固形製剤が退色しにくく、製造機への付着性を低減できる点から、無機顔料が好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等の鉄を主成分とする無機顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタンがより好ましく、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄が更に好ましい。
【0034】
これら任意の添加成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、それぞれの添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量である。
【0035】
また、本発明の固体状口腔用組成物は、剤型に応じた方法で口腔内に適用することができ、通常の方法で使用できる。
【実施例
【0036】
以下、実験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0037】
[実施例、比較例]
下記方法で固体状口腔用組成物(錠剤)を調製し、下記方法によって評価した。
表1~3に示す組成の粉体混合物を、油圧式単発打錠機(FY-TP-10、富士薬品機械社製)にて直接打錠法によって打錠し、1,000mg/1錠の錠剤を得た。これらの錠剤を口腔用組成物として、下記評価に用いた。結果を表1~3に併記した。
【0038】
<外観の変色抑制効果(変色のなさ)の評価方法>
口腔用組成物(錠剤)を非密封のプラスチックケースに入れ、室温(25℃)で1ヶ月間保存後に取り出し、4℃で1ヶ月間保存品と比較した室温保存品の色を下記の評価基準に基づき評価した。
外観の変色抑制効果の評価基準
◎:変色がない
○:ほとんど変色がない
△:やや変色がある
×:明らかな変色がある
【0039】
<使用感(口腔粘膜への刺激性、異味のなさ、使用後の爽快感の評価方法>
被験者8名が、口腔用組成物(錠剤)1錠を口に含み、舐めて摂取した後、口腔粘膜への刺激性(刺激感のなさ)及び異味のなさ(以下、「異味抑制」ともいう)と、使用直後の爽快感の度合いについて、それぞれ下記の評点基準で判定した。8名の平均点を算出し、それぞれ下記の判定基準に基づき評価した。
口腔粘膜への刺激性の評点基準
4:刺激感がない
3:刺激感がほとんどない
2:刺激感がややある
1:刺激感がある
口腔粘膜への刺激性の判定基準
◎:平均値が3.5点以上4.0点以下
○:平均値が3.0点以上3.5点未満
△:平均値が2.0点以上3.0点未満
×:平均値が1.0点以上2.0点未満
異味のなさの評点基準
4:異味がない
3:異味がほとんどない
2:異味がややある
1:異味がある
異味のなさの判定基準
◎:平均値が3.5点以上4.0点以下
○:平均値が3.0点以上3.5点未満
△:平均値が2.0点以上3.0点未満
×:平均値が1.0点以上2.0点未満
使用後の爽快感の評点基準
4:かなり爽快感を感じる
3:やや爽快感を感じる
2:ほとんど爽快感を感じない
1:全く爽快感を感じない
使用後の爽快感の判定基準
◎:平均値が3.5点以上4.0点以下
○:平均値が3.0点以上3.5点未満
△:平均値が2.0点以上3.0点未満
×:平均値が1.0点以上2.0点未満
【0040】
使用原料の詳細(原料名、製造元等)を下記に示す。
(A)リゾリン脂質:SLP-LPC70(辻製油社製、リゾリン脂質(リゾホスファチジルコリン)の含量70%、リン脂質の含量6%)
リン脂質(比較品):L-α-Phosphatidylcholine from soybean(シグマアルドリッチ社製、リン脂質(ホスファチジルコリン)の含量99%以上)
(B)成分
(B1)キシリトール:キシリトール(物産フードサイエンス社製)
(B2)エリスリトール:エリスリトール(物産フードサイエンス社製)
(B3)ラクチトール:ラクチトールLC-0(物産フードサイエンス社製)
(B4)イソマルト:イソマルト900P(物産フードサイエンス社製)
(B5)マンニトール:マンニトール(物産フードサイエンス社製)
ソルビトール(比較品):ソルビトールFP 100M(物産フードサイエンス社製)
ラクトース(比較品):乳糖グラニュー(フロイント産業社製)
(C)メントール:L-メントール(高砂香料工業社製)
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】