(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20221018BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20221018BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20221018BHJP
H04N 1/113 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G02B26/10 B
G02B26/10 F
G02B26/12
B41J2/47 101D
H04N1/113
(21)【出願番号】P 2018233048
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤野 仁志
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-099315(JP,A)
【文献】特開2014-130314(JP,A)
【文献】特開平10-161048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 - 26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが円筒状のパッケージを有する複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザを支持する支持体と、
前記複数の半導体レーザから出射された光を光ビームに変換する入射光学系と、
軸を中心に回転し、前記複数の半導体レーザからの光ビームを反射して偏向する偏向器と、
前記偏向器によって偏向された光ビームを被走査面に結像する走査光学系と
を備え、
前記複数の半導体レーザのパッケージの周面が互いに接触することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記支持体は、貫通孔を有する壁面と、当該壁面から突出する突出部と、を有し、
前記突出部は、前記複数の半導体レーザのパッケージの周面を径方向に押圧することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記複数の半導体レーザのパッケージを、当該パッケージの周面が互いに接触する部分に向けて押圧することを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記壁面は、前記貫通孔を前記複数の半導体レーザに対応して複数有する、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記複数の半導体レーザのパッケージの周面は、凹部を有し、
前記支持体は、前記突出部から突出して前記凹部に係合する突起を有することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記複数の半導体レーザは、前記軸に平行な方向に並び、
前記入射光学系は、前記複数の半導体レーザからの光ビームを、前記偏向器に、前記軸に対してそれぞれ異なる角度で入射させ、
前記走査光学系は、前記複数の半導体レーザからの光ビームをそれぞれ異なる被走査面に結像することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記偏向器を固定する底壁と、当該底壁から直交して延びる側壁とをさらに有し、
前記支持体は前記側壁の一部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置等に用いられる光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる光走査装置は、半導体レーザから出射された光をカップリングレンズで光ビームに変換し、この光ビームを、回転する反射面を有する偏向器で主走査方向に偏向し、さらに走査レンズにより感光体等の被走査面上に結像する。半導体レーザから偏向器の反射面までの入射光学系は、光ビームを副走査方向に集光して反射面上に結像し、偏向器から感光体の間の走査光学系は、反射面で反射された光ビームを、主走査方向および副走査方向に集光して結像する。
【0003】
このような光走査装置において、複数の半導体レーザを用いるものが知られている(特許文献1)。半導体レーザは、円筒状パッケージを有し、パッケージの周面をベース(支持体)にそれぞれ設けられた嵌合孔に個別に圧入することで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、各半導体レーザを圧入する嵌合孔の位置や寸法のばらつきにより、複数の半導体レーザの間隔にばらつきが生じやすい。半導体レーザの間隔にばらつきがあると、光ビームの偏向器への入射位置が決まらず、被走査面への入射位置の制御が複雑化するおそれがある。
【0006】
複数の半導体レーザの間隔のばらつきを抑制することができる光走査装置を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の半導体レーザと、支持体と、入射光学系と、偏向器と、走査光学系とを備えた光走査装置を開示する。複数の半導体レーザはそれぞれが円筒状のパッケージを有する。支持体は、複数の半導体レーザを支持する。入射光学系は、複数の半導体レーザから出射された光を光ビームに変換する。偏向器は、軸を中心に回転し、複数の半導体レーザからの光ビームを反射して偏向する。走査光学系は、偏向器によって偏向された光ビームを被走査面に結像する。そして、複数の半導体レーザのパッケージの周面が互いに接触する。
【0008】
このような構成によれば、複数の半導体レーザのパッケージの周面が互いに接触するので半導体レーザ間の距離のばらつきの問題を解消することができる。
【0009】
前記した光走査装置において、支持体は、貫通孔を有する壁面と、当該壁面から突出する突出部とを有し、突出部は、複数の半導体レーザのパッケージの周面を径方向に押圧するように構成してもよい。このように構成することにより、半導体レーザの径方向の位置を精確に決めてずれないようにしっかりと固定することができる。
【0010】
また、突出部は、複数の半導体レーザのパッケージを、パッケージの周面が互いに接触する部分に向けて押圧するように構成するとよい。これにより、複数の半導体レーザの発光点の間隔を精確に決めることができる。
【0011】
また、壁面は、貫通孔を複数の半導体レーザに対応して複数有するものとしてもよい。支持体の壁面に複数の貫通孔を設けることで、貫通孔の間に支持体の一部が介在することになるので、複数の半導体レーザに対して壁面に単一の貫通孔がある場合に比べ、支持体の剛性を高め変形を抑制することができる。したがって、半導体レーザから入射光学系までの光路を確保しつつ、支持体によって半導体レーザを精度よく位置決め支持することができる。
【0012】
また、複数の半導体レーザのパッケージの周面は、凹部を有し、支持体は、突出部から突出して凹部に係合する突起を有するように構成してもよい。これにより、各半導体レーザの光軸を中心とした回転角を規定することができる。したがって、レーザ光の偏光方向を決めることができ、複数の発光点をもつマルチビームレーザの場合であれば、レーザ光のピッチを決めることができる。
【0013】
なお、複数の半導体レーザは、軸に平行な方向に並び、入射光学系は、複数の半導体レーザからの光ビームを、偏向器に、偏向器の軸に対してそれぞれ異なる角度で入射させ、走査光学系は、複数の半導体レーザからの光ビームをそれぞれ異なる被走査面に結像するように構成してもよい。このような構成においても、半導体レーザの発光点間の距離を精確に規定することができるので、光ビームを分離して異なる被走査面に結像させることが容易である。これにより、高精度のカラーレーザスキャナを実現することができる。
【0014】
前記した光走査装置は、偏向器を固定する底壁と、当該底壁から直交して延びる側壁とをさらに有するものとすることができる。その場合、支持体は側壁の一部に設けられていてもよい。このように、支持体を、偏向器が固定される底壁から直交して延びる側壁に設けることで、複数の半導体レーザを偏向器に対してより精確に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0015】
前記した光走査装置によれば、複数の半導体レーザの発光点の間隔のばらつきを抑制することができるので、光ビームの、偏向器への入射位置、ひいては、被走査面への入射位置を精確に規定することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラープリンタの概略構成を示す図である。
【
図4】光学系全体の副走査方向断面を示す図である。
【
図5】半導体レーザと、その支持構造の構造を示す斜視図である。
【
図6】支持体の(a)正面図、(b)垂直X-X線断面図、(c)水平Y-Y線断面図である。
【
図7】支持体に半導体レーザを圧入した状態を示す正面図である。
【
図8】半導体レーザを圧入した状態で支持体の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る光走査装置5は、カラープリンタ1に用いられるものである。カラープリンタ1は、本体筐体2内に、シートPを供給するシート供給部3と、供給されたシートPに画像を形成する画像形成部4とを主に備えている。そして、画像形成部4は、光走査装置5と、4つのプロセスユニット6(6Y,6M,6C,6K)と、転写ユニット7と、定着ユニット8とを主に備えている。
【0019】
シート供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、シートPを収容する供給トレイ31と、供給トレイ31からシートPを画像形成部4に供給するシート供給機構32とを主に備えている。供給トレイ31内のシートPは、シート供給機構32によって1枚ずつ分離されて画像形成部4に供給される。
【0020】
光走査装置5は、本体筐体2内の上部に設けられ、印刷データに基づく光ビームB(BY,BM,BC,BK)を各感光体61の表面に照射することで、感光体61の表面を露光して静電潜像を形成するように構成されている。感光体61は、円筒形状で表面に感光層を有する感光体ドラムである。
【0021】
4つのプロセスユニット6は、供給トレイ31と光走査装置5の間で前後方向に沿って並列配置されており、それぞれ、感光体61(61Y,61M,61C,61K)と、帯電器62と、現像ローラ63と、供給ローラ64と、層厚規制ブレード65と、現像剤を収容する現像剤収容部66とを主に備えている。現像剤は、正帯電性の一成分乾式トナーを用いることができる。
【0022】
プロセスユニット6は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの現像剤が収容された6Y,6M,6C,6Kの符号で示すものがシートPの搬送方向上流側からこの順で並んで配置されている。なお、本明細書および図面において、現像剤の色に対応した感光体61などを特定する場合には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれに対応させて、Y、M、C、Kの記号を付することとする。
【0023】
転写ユニット7は、供給トレイ31とプロセスユニット6との間に設けられ、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、駆動ローラ71と従動ローラ72の間に張設された無端状の搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを主に備えている。搬送ベルト73は、外側の面が各感光体61に接しており、その内側には各転写ローラ74が各感光体61との間で搬送ベルト73を挟持するように配置されている。
【0024】
定着ユニット8は、プロセスユニット6および転写ユニット7の後方に設けられ、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置されて加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを主に備えている。
【0025】
画像形成部4では、感光体61の表面が、帯電器62により一様に正帯電された後、光走査装置5からの光ビームBの照射によって露光されることで、感光体61上に印刷データに基づく静電潜像が形成される。そして、現像ローラ63上に担持された現像剤が感光体61上に形成された静電潜像に供給されることで、静電潜像が可視像化され、感光体61上に現像剤像が形成される。
【0026】
シート供給部3から供給されたシートPは、搬送ベルト73上を各感光体61に接触しながら前から後ろに向けて移動する。この過程において、各感光体61上の現像剤像は、感光体61と、転写バイアスが印加された転写ローラ74との間でシートP上に順次重ね合わせて転写される。そして、現像剤像が転写されたシートPは、加熱ローラ81と加圧ローラ82の間を通過することで現像剤像が熱定着され、搬送ローラ23によって本体筐体2内から外部に排出されて排出トレイ22上に載置される。
【0027】
図2および
図3に示すように、光走査装置5は、筐体50内に、複数の半導体レーザLDと、入射光学系51と、偏向器54と、走査光学系53とを主に備えている。走査光学系53は、偏向器54を挟んで筐体50の長手方向の一方側に感光体61Y,61Mに対応する走査光学系53Y,53Mが、偏向器54を挟んで筐体50の長手方向の他方側に感光体61C,61Kに対応する走査光学系53C,53Kが配置されている。なお、
図2において筐体50の長手方向に並べて配置されている半導体レーザLDC,LDYの下には、半導体レーザLDK,LDMが配置されており、あわせて4つの半導体レーザLDY,LDM,LDC,LDKがある(
図4参照)。
【0028】
半導体レーザLDは、レーザ光を出射する半導体素子であり、半導体レーザLDから出射された光は、カップリングレンズCLと、シリンドリカルレンズ52とからなる入射光学系51により光ビームに変換される。本実施形態において、半導体レーザLDは、汎用の円筒状パッケージを有するいわゆるTO-CANタイプが採用されている。半導体レーザLDの構成については、後述する。入射光学系51は開口絞りAPを有する。開口絞りAPは、略矩形状の開口を有する板状の部材であり、光ビームBの径を規定する。
【0029】
なお、以下の説明において、主走査方向は、偏向器54により偏向される方向であり、副走査方向は、光ビームBの進行方向と主走査方向の両方に直交する方向、すなわち、偏向器54の回転軸54Xに平行な方向である。
【0030】
カップリングレンズCLは、半導体レーザLDから出射された発散性のレーザ光を集光して、焦点位置が無限遠となる光ビームBに変換する。シリンドリカルレンズ52は、光ビームBを屈折させて副走査方向に集光し、偏向器54の反射面54A上で主走査方向に長い線状に結像させる。半導体レーザLDと偏向器54の間に配置されたレンズであるカップリングレンズCLとシリンドリカルレンズ52は、入射光学系51である。
【0031】
カップリングレンズCLは、少なくとも一面に回折面を有することが望ましく、一例として、入射面に回折面を有することができる。また、カップリングレンズCLは、出射面に軸対称でない屈折面を有することができる。さらに、カップリングレンズCLおよびシリンドリカルレンズ52は、樹脂製であることが望ましい。カップリングレンズCLおよびシリンドリカルレンズ52が樹脂レンズであることによって、製造コストを抑えることができる。
【0032】
偏向器54は、回転軸54Xから等距離に設けられた6つの反射面54Aを有するポリゴンミラーであり、反射面54Aが回転軸54Xを中心に一定速度で回転することで、カップリングレンズCLを通過した光ビームBを反射して主走査方向に偏向する部材である。偏向器54は、
図3に示すように、筐体50の底壁50Bに固定されている。
【0033】
走査光学系53は、偏向器54と像面との間にある光学系であり、fθレンズ55および補正レンズ57を備えている。fθレンズ55は、偏向器54によって等角速度で走査された光ビームBを感光体61の表面で主走査方向に等速度で走査するfθ特性を有している。fθレンズ55は、樹脂製であることが望ましい。fθレンズ55を樹脂製とすることで、製造コストを抑えることができる。
【0034】
反射鏡56は、fθレンズ55を通過した光ビームBを補正レンズ57に向けて反射する部材である。
【0035】
補正レンズ57は、偏向器54の面倒れを補正するため、光ビームBを屈折させて副走査方向に収束し、感光体61の表面(被走査面S)の像面上に結像させるレンズである。補正レンズ57は、樹脂製であることが望ましい。補正レンズ57を樹脂製とすることで、製造コストを抑えることができる。
【0036】
光走査装置5では、
図2に示すように、半導体レーザLDY,LDM,LDC,LDKからの光ビームBY,BM,BC,BKは、偏向器54で主走査方向に偏向される。そして、
図3に示すように、偏向器54で偏向された光ビームBは、fθレンズ55を通過し、反射鏡56で反射され、補正レンズ57と筐体50の底壁50Bに形成された露光口50Aを通過した後、感光体61の表面(被走査面S)を走査露光する。
図4は、光学系全体の副走査方向断面を示す図である。
図4では、
図2に示した開口絞りAPY,APMは図示を省略した。
【0037】
図4に示すように、半導体レーザLDMと半導体レーザLDYは、上下(偏向器54の回転軸54Xに平行な方向)に並んでいる。入射光学系51Y,51Mは、副走査方向の断面において、偏向器54の反射面54Aに対して斜めに光ビームBを入射させるように配置されている。具体的に、カップリングレンズCLM,CLYをそれぞれ通過する半導体レーザLDMおよび半導体レーザLDYから出射される互いに平行な光ビームBM,BYは、共通のシリンドリカルレンズ52に入射し、副走査方向に集光されて、偏向器54の反射面54Aに対して同じ位置に結像される。したがって、光ビームBMは、偏向器54の反射面54Aに対して入射角γで下から斜めに入射し、光ビームBYは、偏向器54の反射面54Aに対して入射角γで上から斜めに入射する。このため、偏向器54の1つの反射面54Aに、複数の方向から(偏向器54の回転軸54Xに対して異なる角度で)光ビームBM,BYを入射し、さらに、反射面54Aから異なる方向に出射する(
図3参照)ことが可能となる。
【0038】
上述のように、入射光学系51Y,51M,51C,51Kは、4つの半導体レーザLDY,LDM,LDC,LDKからの光ビームBY,BM,BC,BKを、偏向器54の反射面54Aに、その回転軸54Xに対してそれぞれ異なる角度で入射させる。そして、走査光学系53Y,53M,53C,53Kは、
図2および
図3に示すように、光ビームBY,BM,BC,BKをそれぞれ異なる被走査面SY,SM,SC,SKに結像する。
【0039】
次に、半導体レーザLDとそれを支持する支持体100の構成およびその支持態様について、
図4~
図7を参照しつつ詳細に説明する。これらの図面には、本実施形態の4つの半導体レーザLDY,LDM,LDC,LDKのうち、上下に並んだ2つの半導体レーザLDY,LDMとそれらに対応する支持体100が図示されている。なお、他の2つの半導体レーザLDC,LDKの支持形態は、図示した半導体レーザLDY,LDMの支持形態と同様なので、図示および説明を省略する。
【0040】
半導体レーザLDY,LDMは、それぞれ、図示せぬ発光素子(LDチップ)等を収容するパッケージ200を有する。パッケージ200は、金属製のステム210と金属製のキャップ220とからなる。ステム210は、略円筒状で、発光素子等が固定されている。キャップ220はステム210より小径の略円筒状で、発光素子等を覆ってステム210に固定されている。ステム210に固定された発光素子からレーザ光がキャップ220を通過して出射される。
【0041】
図5に示すように、パッケージ200のステム210の外周面211には、3箇所に、レーザ光の出射方向に延びる溝状の凹部(第1凹部212,第2凹部213)が設けられている。ここで、パッケージ200の径方向の中心であってレーザ光の出射方向に平行な線をパッケージ200の軸線とする。パッケージ200の軸線に対して対称な位置に配置されている一対の第1凹部212は、半導体レーザLDY,LDMをそれぞれ支持体100に装着する際にパッケージ200を保持する治具が係合可能に構成されている。長方形断面の溝状の第2凹部213は、後述する支持体100から突出する突起123に係合して各半導体レーザLDY,LDMの軸線を中心とした向き(回転角)を規定するものである。
【0042】
半導体レーザLDY,LDMを支持する支持体100は、樹脂からなり、壁面110と、当該壁面110から突出する突出部120とを有する。支持体100は、光走査装置5の筐体50の底壁50Bから直交して延びる側壁の一部に設けられている。突出部120は壁面110からレーザ光の出射方向と反対側に突出している。
【0043】
図5および
図6に示すように、壁面110は、各半導体レーザLDY,LDMに対応して2つの円形の貫通孔125を有する。突出部120は、2つの貫通孔125の周囲に設けられている。
図6(a)は、半導体レーザLDを取り付ける側から見た図である。突出部120の内側の面(貫通孔125の中心を通り壁面110に垂直な軸線側を向く面)は、半導体レーザLDY,LDMを保持する円筒状の内周面121を構成する。2つの貫通孔125の間には突出部120は設けられていない。
【0044】
突出部120は、その端面の4箇所に、切り欠き122が設けられている。切り欠き122は、各貫通孔125の中心を通り壁面110に垂直な軸線を通る平面に対して対称な位置に配置されている。各貫通孔125に対応する一対の切り欠き122は、半導体レーザLDY,LDMをそれぞれ支持体100に装着する際にパッケージ200を保持する治具が通過可能に構成および配置されている。
【0045】
突出部120の内周面121には、上下に一つずつ、装着される半導体レーザLDY,LDMのステム210の第2凹部213に対応して、直方体形状の突起123が設けられている。突起123は、半導体レーザLDY,LDMをそれぞれ支持体100に装着する際に、パッケージ200を正しい向きで挿入すると第2凹部213に嵌合するように構成および配置されており、パッケージ200の向きが誤っていると半導体レーザLDY,LDMの装着ができない。
【0046】
半導体レーザLDY,LDMの装着時、パッケージ200(ステム210の外周面211の第1凹部212)を図示せぬ治具で挟持し、キャップ220側(光ビームBY,BMの出射側)を壁面110に向けて、第2凹部213を突起123に嵌め込みながら、突出部120の内側に圧入する。そして、パッケージ200のステム210の周縁部が突出部120の内周面121側に設けられている当接面124に当接したところで、治具を取り除く。
【0047】
圧入後、2つの半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200の周面、具体的には、ステム210の外周面211が互いに接触する。また、突出部120の内側の面、すなわち半導体レーザLDY,LDMに対面する内周面121は、2つの半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200(ステム210)の円筒状の周面(外周面211)に密着する。
【0048】
なお、突出部120の内周面121の直径D1(
図6(c)参照)は、圧入されるステム210の外周面211の直径D3(
図7参照)よりもわずかに小さい。したがって、半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200の周面(外周面211)は突出部120によって、径方向に押圧される。
【0049】
また、突出部120の内周面121の上下の間隔D2(
図6(b)参照)は、圧入されるステム210の直径D3(
図7参照)の2倍よりもわずかに小さい。また、突出部120は、上述のように一対の切り欠き120が設けられているので、突出部120が圧入により上下に広がる方向に弾性変形しやすい。したがって、突出部120によって、半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200の周面(外周面211)は、特に、互いに接触する部分に向けて押圧される。したがって、圧入後の半導体レーザLDY,LDMが互いに密着しやすい。
【0050】
以上に説明した本実施形態の光走査装置5によれば、半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200の周面(ステム210の外周面211)が互いに密着配置されているため、発光点間の距離のばらつきを抑制することが可能であり、光ビームBY,BMの間隔を精確に規定することができる。したがって、光ビームBY,BMの偏向器54の反射面54Aへの入射位置および副走査方向の入射角度γが精確に決まり、ひいては被走査面SY,SMへの入射位置が精確に規定される。
【0051】
また、副走査方向に並べて配置された半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200の周面(外周面211)が互いに接触するように装着されることで、支持体100の副走査方向の寸法を小さくすることができる。したがって、光走査装置5の小型化に寄与する。
【0052】
また、突出部120が、半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200の周面(外周面211)を径方向に押圧するので、半導体レーザLDY,LDMの径方向の位置を精確に決めてずれないようにしっかりと固定することができる。特に、突出部120に切り欠きを設けることで、突出部120が上下に広がる方向に弾性変形しやすく、パッケージ200の周面が互いに接触する部分に向けて押圧されるので、圧入後の半導体レーザLDY,LDMの発光素子間の距離を精確に決めることができる。
【0053】
また、前記実施形態では、2つの半導体レーザLDY,LDMを互いに接触させて一緒に保持する構成をとりつつ、レーザ光(光ビームBY,BM)が通過する(もしくはパッケージ200のキャップ220の出射側端部が配置される)貫通孔125は、2つの半導体レーザLDY,LDMに対応して2つ設けられている。このように構成することで、半導体レーザの出射側の壁面に単一の貫通孔を有する場合に比べ、支持体100の剛性を高めることができるので、半導体レーザLDY,LDMを精度良く位置決め支持することができる。
【0054】
また、支持体100には、突出部120から突出して、半導体レーザLDY,LDMのパッケージ200の周面(外周面211)に設けられた凹部(第2凹部213)に係合する突起123が設けられているので、各半導体レーザLDY,LDMの光軸を中心とした回転角を精確に定め、レーザ光の偏光の方向を適切に決めることができる。なお、半導体レーザが複数の発光点を有するマルチビームレーザの場合、レーザ光のピッチを精確に決めることができる。
【0055】
以上に本実施形態に係る光走査装置5について説明したが、本発明の光走査装置は、前記した実施形態に限られず、適宜変形して実施することができる。
【0056】
前記実施形態において、4つの半導体レーザLDを2つずつ上下(副走査方向)に並べてそれぞれ1つの支持体100で支持する構成を例示したが、3つ以上の半導体レーザを1つの支持体で支持するものであってもよく、複数の半導体レーザを横(主走査方向に)に並べて支持することで複数の光ビームを同一の被走査面に結像させるものであってもよい。
【0057】
前記実施形態において、支持体100は、光走査装置5の筐体50(側壁)の一部に設けられている例を示したが、支持体100は筐体50とは別部品としてもよく、半導体レーザLDのパッケージ200を、その周面が互いに接触するように支持する構造であれば、例示した態様に限定されない。
【0058】
例えば、前記実施形態では、支持体100は壁面110を有し、壁面110に2つの円形の貫通孔125を有する構成を例示したが、貫通孔は、各半導体レーザLDからの光ビームBが偏向器54に向かって通過する経路を妨げない限り、その形状および数は任意である。
【0059】
また、前記実施形態において、支持体100は、樹脂製の突出部120の円筒状の内周面121に半導体レーザLDのパッケージ200の周面(外周面211)を圧入することで、パッケージ200の周面を径方向に押圧する構成を例示したが、突出部の支持部分はパッケージの周面を囲む円筒状でなくてもよい。
【0060】
図8に示す変形例では、突出部420は、正面視長円形であり、その内周面421の上下のみが円筒状でその間は平面状に形成されている。
【0061】
なお、前記実施形態において、半導体レーザLDY,LDMは、円筒状のパッケージ200の周面(ステム210の外周面211)が、圧入時に利用する第1凹部212,第2凹部213が設けられている部分以外が円筒形状を有する例を示した。
図8の変形例においては、半導体レーザLDY,LDMのパッケージ500の周面の互いに接触する部分は、それぞれ平面215で構成されている。これによって、各半導体レーザLDY,LDMの光軸を中心とした向き(回転角)が決まるとともに、その発光点間の距離を精確に規定することができる。したがって、この変形例では、パッケージ500の周面(外周面211)の第2凹部213や支持体100の突起123はなくてもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、突出部120に切り欠き122を設け、パッケージ200の圧入時に、特に、上下からパッケージ200の周面が互いに接触する部分に向けて押圧する形態を例示したが、切り欠き122の配置は図示した水平方向両側(各貫通孔125の中心を通り壁面110に垂直な軸線を通る平面に対して対称な位置)でなくてもよく、突出部は切り欠きがなくてもよい。さらに、支持体としては、パッケージを圧入する構成は必ずしも必要ではなく、支持体はパッケージを押圧していなくてもよい。したがって、支持体は、突出部を持たないものであってもよい。すなわち、パッケージの周面が互いに接触するように支持する構成であれば、パッケージを接着などの手段で支持するものであってもよい。
【0063】
また、前記実施形態において、支持体100は、各半導体レーザLDに対応して、パッケージ200の周面(ステム210の外周面211)に設けられた第2凹部213に係合する直方体状の突起123を有するものであったが、パッケージ周面の凹部や支持体の突起の形状や数は任意であり、パッケージ周面の凹部や支持体の突起を設けなくてもよい。
【0064】
前記実施形態において、各半導体レーザLDのパッケージ200の周面同士が直接接触する構成となっていたが、パッケージ200間を絶縁するための絶縁シート等を挟んで接触するよう構成してもよい。
【0065】
前記実施形態においては、走査光学系53Y,53M,53C,53Kが、複数の半導体レーザLDY,LDM,LDC,LDKからの光ビームBY,BM,BC,CKをそれぞれ異なる被走査面SY,SM,SC,SKに結像するように構成することで、カラープリンタ1に適用される光走査装置5を例示したが、モノクロプリンタに本発明を適用することもできる。また、複合機やコピー機など他の画像形成装置に本発明を適用することもできる。
【0066】
前記実施形態では、各レンズは樹脂製であったが、ガラス製であってもよい。また、入射光学系および走査光学系は、それぞれ1枚のレンズから構成されていてもよい。
【0067】
前記実施形態においては、偏向器54の一例として、ポリゴンミラーを示したが、偏向器としては、回転軸を有する振動ミラー(ガルバノミラー)を採用することもできる。また、被走査面は円筒形状で表面に感光層を有する感光体ドラムの表面であったが、ベルト状の感光体の表面であってもよい。
【0068】
前記実施形態および各変形例における要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
5 光走査装置
50 筐体
51 入射光学系
52 シリンドリカルレンズ
53 走査光学系
54 偏向器
55 fθレンズ
57 補正レンズ
61 感光体
100 支持体
110 壁面
120 突出部
121 内周面
122 切り欠き
123 突起
124 当接面
125 貫通孔
200 パッケージ
210 ステム
211 外周面
212 第1凹部
213 第2凹部
220 キャップ
B 光ビーム
S 被走査面
CL カップリングレンズ
LD 半導体レーザ