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特許7159858脈波情報処理装置、脈波情報処理システム、車両、脈波情報処理方法、および脈波情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】脈波情報処理装置、脈波情報処理システム、車両、脈波情報処理方法、および脈波情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20221018BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20221018BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61B5/02 310J
A61B5/02 310A
A61B5/0245 C
A61B5/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018243732
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020103461
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤彦
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504191(JP,A)
【文献】特開2018-50827(JP,A)
【文献】特開2018-69026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する脈波情報処理装置であって、
第1脈波情報取得装置により取得された第1脈波情報と、第2脈波情報取得装置により前記第1脈波情報取得装置とは異なる方法で取得された第2脈波情報とを、当該第2脈波情報の確からしさを示す信頼度情報とともに取得可能な情報取得部と、
記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する情報選択部と、を備え
前記第1脈波情報取得装置は、前記搭乗者に接触して脈波を検出する圧電センサを備え、
前記情報取得部は、前記圧電センサが振動しているかどうかについての情報である振動情報を取得し、
前記情報選択部は、前記信頼度情報および前記振動情報に基づいて、前記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択することを特徴とする脈波情報処理装置。
【請求項2】
前記情報選択部は、前記信頼度情報により示される前記確からしさが所定の回数連続して所定の値以上であった場合に、前記第2脈波情報を前記搭乗者の脈波情報として選択することを特徴とする請求項1に記載の脈波情報処理装置。
【請求項3】
記第2脈波情報取得装置は、前記搭乗者に接触せずに脈波を検出する非接触センサを備えるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の脈波情報処理装置。
【請求項4】
移動体の搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する脈波情報処理システムであって、
前記搭乗者の脈波情報としての第1脈波情報を取得する第1脈波情報取得装置と、
前記第1脈波情報取得装置とは異なる方法で前記搭乗者の脈波情報としての第2脈波情報を取得する第2脈波情報取得装置と、
前記第1脈波情報と、前記第2脈波情報とを、当該第2脈波情報の確からしさを示す信頼度情報とともに取得可能な情報取得部と、
記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する情報選択部と、を備え
前記第1脈波情報取得装置は、前記搭乗者に接触して脈波を検出する圧電センサを備え、
前記情報取得部は、前記圧電センサが振動しているかどうかについての情報である振動情報を取得し、
前記情報選択部は、前記信頼度情報および前記振動情報に基づいて、前記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択することを特徴とする脈波情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の脈波情報処理システムを備えることを特徴とする車両。
【請求項6】
移動体の搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する脈波情報処理方法であって、
第1脈波情報取得装置により取得された第1脈波情報と、第2脈波情報取得装置により前記第1脈波情報取得装置とは異なる方法で取得された第2脈波情報とを、当該第2脈波情報の確からしさを示す信頼度情報とともに取得する情報取得ステップと、
記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する情報選択ステップと、を含み、
前記第1脈波情報取得装置は、前記搭乗者に接触して脈波を検出する圧電センサを備え、
前記情報取得ステップにおいて、前記圧電センサが振動しているかどうかについての情報である振動情報を取得し、
前記情報選択ステップにおいて、前記信頼度情報および前記振動情報に基づいて、前記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択することを特徴とする脈波情報処理方法。
【請求項7】
請求項1に記載の脈波情報処理装置としてコンピュータを機能させるための脈波情報処理プログラムであって、前記情報取得部および前記情報選択部としてコンピュータを機能させるための脈波情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する脈波情報処理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの移動体に搭乗している搭乗者の脈波を検出し、検出した脈波から搭乗者の生理状態や健康状態を推定する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の搭乗者の脈波を検出する技術が開示されている。特許文献1の技術では、車両用シートに着座した搭乗者が存在するときに、該着座の所定部位へ向けて照射光を照射する発光部と、反射光を受光して、該受光した反射光の強度に応じた信号を出力する受光部とを設けている。そして、車両用シートにおける発光部と受光部との間に、搭乗者の所定部位における体表面からの反射光が受光部により受光されることを抑制する仕切り部を設け、発光部が照射光を照射しているときに、受光部の出力信号から搭乗者の脈波を検出している。これにより、搭乗者に装置装着の負担をかけないようにしつつ、搭乗者の脈波を正確に検出できるようにするとともに、照射光の照射による電力の消費を出来る限り抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-147925号公報(2012年8月9日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、車両の振動、車両の設けられているマッサージ機能によるシートの振動、または搭乗者の体動などがある場合には、脈波を正確に検出できないという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、脈波を検出している状況に応じて、正確な搭乗者の脈波情報を出力することができる脈波情報処理装置、脈波情報処理システム、車両、脈波情報処理方法、および脈波情報処理プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る脈波情報処理装置は、移動体の搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する脈波情報処理装置であって、第1脈波情報取得装置により取得された第1脈波情報と、第2脈波情報取得装置により前記第1脈波情報取得装置とは異なる方法で取得された第2脈波情報とを、当該第2脈波情報の確からしさを示す信頼度情報とともに取得可能な情報取得部と、前記信頼度情報に基づいて、前記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する情報選択部と、を備える。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る脈波情報処理システムは、移動体の搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する脈波情報処理システムであって、前記搭乗者の脈波情報としての第1脈波情報を取得する第1脈波情報取得装置と、前記第1脈波情報取得装置とは異なる方法で前記搭乗者の脈波情報としての第2脈波情報を取得する第2脈波情報取得装置と、前記第1脈波情報と、前記第2脈波情報とを、当該第2脈波情報の確からしさを示す信頼度情報とともに取得可能な情報取得部と、前記信頼度情報に基づいて、前記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する情報選択部と、を備える。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る脈波情報処理方法は、移動体の搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する脈波情報処理方法であって、第1脈波情報取得装置により取得された第1脈波情報と、第2脈波情報取得装置により前記第1脈波情報取得装置とは異なる方法で取得された第2脈波情報とを、当該第2脈波情報の確からしさを示す信頼度情報とともに取得する情報取得ステップと、前記信頼度情報に基づいて、前記第1脈波情報および前記第2脈波情報のうちいずれを前記搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する情報選択ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、脈波を検出している状況に応じて、正確な搭乗者の脈波情報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両の要部構成を示すブロック図である。
図2】上記車両における処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る車両1(移動体)および脈波情報処理装置30について、詳細に説明する。図1は、車両1の要部構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両1は、第1脈波情報取得装置10と、第2脈波情報取得装置20と、脈波情報処理装置30と、感情推定部40と、環境制御部50とを備える。なお、第1脈波情報取得装置10、第2脈波情報取得装置20、および脈波情報処理装置30は、脈波情報処理システムとして機能する。
【0013】
第1脈波情報取得装置10は、車両1の搭乗者の脈波を示す脈波情報(以降では、第1脈波情報と称する)を取得する装置である。第1脈波情報取得装置10は、圧電センサ11(接触センサ)と、第1脈波情報生成部12とを備えている。ここで、脈波とは、生体の部位における血管の脈動を示す時間波形である。また、脈波情報とは、当該時間波形に関する情報であり、例えば、脈波がピークを示すタイミングに関する情報である。
【0014】
圧電センサ11は、搭乗者に接触して搭乗者の脈波を検出するセンサである。圧電センサ11は、搭乗者が車両1のシートに着座したときに、車両1のシートにおける搭乗者に接触する位置に設置されている。例えば、ドライバの脈波情報を取得したい場合には、圧電センサ11は、運転席のシートに設置される。圧電センサ11は、検出した搭乗者の脈波を第1脈波情報生成部12に出力する。
【0015】
第1脈波情報生成部12は、圧電センサ11から出力された搭乗者の脈波を解析することにより脈波情報(すなわち、第1脈波情報)を生成する。圧電センサによって検出された脈波から脈波情報を生成する方法は公知のため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0016】
また、第1脈波情報生成部12は、搭乗者の脈波を取得しているときに、圧電センサ11が振動しているかどうかについての情報(以降では、振動情報と称する)を取得する。振動情報は、例えば加速度センサを用いて取得することができる。
【0017】
第1脈波情報生成部12は、生成した第1脈波情報および振動情報を、後述する脈波情報処理装置30(より詳細には、脈波情報取得部31)に出力する。
【0018】
第2脈波情報取得装置20は、搭乗者の脈波情報(以降では、第2脈波情報と称する)を取得する装置である。第2脈波情報取得装置20は、カメラ21(非接触センサ)と、第2脈波情報生成部22とを備えている。
【0019】
カメラ21は、搭乗者の映像を撮像するカメラである。カメラ21は、搭乗者における肌が露出している領域(例えば、顔領域)を撮像する。カメラ21は、撮像した映像を第2脈波情報生成部22に出力する。
【0020】
第2脈波情報生成部22は、カメラ21から出力された映像を解析することにより、搭乗者の脈波情報(すなわち、第2脈波情報)を生成する。ここで、生体の血液は、ヘモグロビンの濃度に応じて、光のRGB成分のうちG成分(緑色成分)の吸光特性が変化する。また、脈波は、血流量の変動に応じて変化する。第2脈波情報生成部22は、カメラ21から出力された映像におけるG成分の変動を解析することにより、第2脈波情報を生成する。このように、第2脈波情報取得装置20は、第1脈波情報取得装置10とは異なる方法で搭乗者の脈波情報(すなわち、第2脈波情報)を取得(生成)する。
【0021】
また、第2脈波情報生成部22は、第2脈波情報の確からしさを示す信頼度(信頼度情報)を生成する。具体的には、第2脈波情報生成部22は、カメラ21が映像を撮像しているときの照度(照度の変化)、生成した第2脈波情報が含む波形の形状などに基づいて、第2脈波情報の信頼度を算出する。本実施形態では、第2脈波情報生成部22は、第2脈波情報の信頼度として0~100の値(100がもっとも確からしい数値)を算出する。第2脈波情報生成部22は、所定の時間間隔ごと(例えば、5秒ごと)に、第2脈波情報の信頼度の値を算出する。
【0022】
第2脈波情報生成部22は、生成した第2脈波情報および上記信頼度の数値を後述する脈波情報処理装置30(より詳細には、脈波情報取得部31)に出力する。
【0023】
脈波情報処理装置30は、移動体としての車両に搭乗している搭乗者の脈波を示す脈波情報を処理する装置である。脈波情報処理装置30は、図1に示すように、脈波情報取得部31(情報取得部)と、脈波情報選択部32(情報選択部)とを備える。
【0024】
脈波情報取得部31は、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20からそれぞれ出力された搭乗者の第1脈波情報および第2脈波情報を取得する。また、脈波情報取得部31は、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20からそれぞれ出力された振動情報および第2脈波情報の信頼度の値を取得する。脈波情報取得部31は、取得した各情報を脈波情報選択部32に出力する。
【0025】
脈波情報選択部32は、脈波情報取得部31から出力された信頼度情報としての、振動情報および第2脈波情報の信頼度の値に基づいて、第1脈波情報および第2脈波情報のうちいずれを搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する。詳細については後述する。脈波情報選択部32は、第1脈波情報および第2脈波情報のうち選択した脈波情報を感情推定部40に出力する。
【0026】
感情推定部40は、脈波情報処理装置30から出力された脈波情報に基づいて、搭乗者の感情を推定する。脈波情報に基づく搭乗者の感情の推定方法は、公知の方法を用いることができる。感情推定部40は、推定した搭乗者の感情を環境制御部50に出力する。
【0027】
環境制御部50は、感情推定部40から出力された搭乗者の感情に基づいて、車両1の車内環境を制御する。具体的には、環境制御部50は、搭乗者の感情に基づいて、車両1の車内の光(照度)、香り、音(例えば、カーステレオから出力される音の種類、音量など)を制御する。
【0028】
(車両1における処理の例)
図2は、車両1における処理(脈波情報処理方法)の一例を示すフローチャートである。
【0029】
図2に示すように、車両1における処理では、まず、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20がそれぞれ搭乗者の脈波情報(第1脈波情報または第2脈波情報)を取得する(ステップS1)。また、このとき、第2脈波情報取得装置20の第2脈波情報生成部22が、第2脈波情報の信頼度を算出する。そして、第1脈波情報取得装置10が生成した第1脈波情報および振動情報を脈波情報処理装置30に出力し、第2脈波情報取得装置20が生成した第2脈波情報および第2脈波情報の信頼度を脈波情報処理装置30に出力する。
【0030】
次に、脈波情報取得部31が、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20からそれぞれ出力された搭乗者の第1脈波情報および第2脈波情報を取得する。また、脈波情報取得部31は、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20からそれぞれ出力された振動情報および第2脈波情報の信頼度の値を取得する(ステップS2、情報取得ステップ)。
【0031】
次に、脈波情報選択部32が、脈波情報取得部31から出力された振動情報および第2脈波情報の信頼度の値に基づいて、第1脈波情報および第2脈波情報のうちいずれを搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する(情報選択ステップ、下記のステップS3~7)。
【0032】
具体的には、まず、脈波情報選択部32が、脈波情報取得部31から出力された振動情報が圧電センサ11の振動が所定の幅以上であることを示しているかを確認する(ステップS3)。例えば、車両1のシートに設置されているマッサージ機能が駆動していたり、車両1が大きく振動したりしている場合には、圧電センサ11が大きく振動しており、圧電センサ11を用いて生成された第1脈波情報は、正確に取得されたものではないと判断できる。そのため、脈波情報取得部31から出力された振動情報が所定の幅以上であると判断した場合(ステップS3でYES)、脈波情報選択部32は、第2脈波情報を搭乗者の脈波情報として選択し、感情推定部40に出力する(ステップS4)。
【0033】
一方、脈波情報取得部31から出力された振動情報が所定の幅未満であると判断した場合(ステップS3でNO)、脈波情報選択部32は、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20の両方から脈波情報を取得できたかを確認する(ステップS5)。
【0034】
第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20の少なくとも一方から脈波情報を取得できていない場合(ステップS5でNO)、脈波情報選択部32は、第1脈波情報取得装置10から脈波情報を取得できたかを確認する(ステップS6)。第1脈波情報取得装置10から脈波情報を取得できたことを確認した場合(ステップS6でYES)、脈波情報選択部32は、第1脈波情報を搭乗者の脈波情報として選択し、感情推定部40に出力する(ステップS7)。一方、第1脈波情報取得装置10から脈波情報を取得できなかったことを確認した場合(すなわち、第2脈波情報取得装置20のみから脈波情報を取得できた場合、ステップS6でNO)、脈波情報選択部32は、第2脈波情報を搭乗者の脈波情報として選択し、感情推定部40に出力する(ステップS4)。
【0035】
ステップS5に戻り、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20の両方から脈波情報を取得できたことを確認した場合(ステップS5でYES)、脈波情報選択部32は、第2脈波情報の信頼度が所定の回数(本実施形態では5回)連続して所定の数値(本実施形態では70)以上であるかどうかを判断する(ステップS8)。なお、第2脈波情報の信頼度が所定の数値以上が連続する回数は5回に限定されず、使用する目的に応じて適宜変更することができる。例えば、脈波情報選択部32は、第2脈波情報の信頼度が1回のみ所定の数値以上であった場合に、第2脈波情報を搭乗者の脈波情報として選択してもよい。ただし、複数回連続して第2脈波情報の信頼度が所定の数値以上であった場合に、脈波情報選択部32は、第2脈波情報を搭乗者の脈波情報として選択することにより、第2脈波情報の検出結果がより正確なものであると判断することができるため好ましい。また、ステップS8において判断するために用いられる第2脈波情報の信頼度の値は70に限定されず、使用する目的に応じて適宜変更することができる。
【0036】
第2脈波情報の信頼度が5回連続して70以上であった場合(ステップS8でYES)、脈波情報選択部32は、第2脈波情報を搭乗者の脈波情報として選択し、感情推定部40に出力する(ステップS4)。一方、第2脈波情報の信頼度が5回連続して70以上でなかった場合(例えば、5回のうち1回において信頼度が70未満であった場合、ステップS8でNO)、脈波情報選択部32は、第1脈波情報を搭乗者の脈波情報として選択し、感情推定部40に出力する(ステップS7)。
【0037】
以降、図2には図示していないが、感情推定部40が脈波情報処理装置30から出力された脈波情報に基づいて搭乗者の感情を推定し、環境制御部50が感情推定部40から出力された搭乗者の感情に基づいて車両1の車内環境を制御する。
【0038】
以上のように、脈波情報処理装置30では、脈波情報取得部31が第1脈波情報取得装置10により取得された第1脈波情報と、第2脈波情報取得装置20により取得された第2脈波情報とを、第2脈波情報取得情報の信頼度情報とともに取得する。そして、脈波情報選択部が、第2脈波情報の信頼度情報に基づいて、第1脈波情報および第2脈波情報のうちいずれを搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する。
【0039】
上記の構成によれば、圧電センサ11の振動およびカメラ21の撮像環境などに合わせて、第1脈波情報および第2脈波情報のうちより正確に脈波を検出したと想定される脈波情報を感情推定部40に出力することができる。すなわち、脈波を検出している状況に応じて、正確な搭乗者の脈波情報を出力することができる。換言すれば、搭乗者の脈波情報を安定して出力することができる。
【0040】
また、脈波情報処理装置30では、第1脈波情報取得装置10が搭乗者に接触して脈波を検出する圧電センサ11を備えるものであり、第2脈波情報取得装置20が搭乗者に接触せずに脈波を検出するカメラ21を備えるものである。
【0041】
上記の構成によれば、接触式で脈波情報を取得する第1脈波情報取得装置10が取得した第1脈波情報、および、非接触式で脈波情報を取得する第2脈波情報取得装置20が取得した第2脈波情報から脈波を検出している状況に応じて出力する脈波情報を出力することができる。そのため、例えば、第1脈波情報取得装置および第2脈波情報取得装置がともに接触式または非接触式である場合に比べて、より様々な状況に応じてより正確な脈波情報を出力することができる。
【0042】
また、脈波情報処理装置30では、脈波情報の信頼度情報としての、圧電センサ11の振動情報および第2脈波情報の信頼度に基づいて、第1脈波情報および第2脈波情報のうちいずれを搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する態様であったが、本発明はこれに限られるものではない。本発明の一態様では、圧電センサ11の振動情報および第2脈波情報の信頼度のいずれかに基づいて、第1脈波情報および第2脈波情報のうちいずれを搭乗者の脈波情報として出力するかを選択する態様であってもよい。例えば、第2脈波情報の信頼度のみに基づく場合、図2におけるステップS3を省略する態様であってもよい。
【0043】
また、脈波情報処理装置30では、第1脈波情報取得装置10および第2脈波情報取得装置20がそれぞれ圧電センサ11およびカメラ21を用いて、搭乗者の脈波情報を取得するものであったが、本発明はこれに限られるものではない。本発明の一態様では、第1脈波情報取得装置および第2脈波情報取得装置が、ドップラーセンサを用いる装置、ウェアラブル端末を用いる装置、モーションセンサを用いる装置、ミリ波を用いる装置、放電式センサを用いる装置などの他の方式で搭乗者の脈波情報を取得する装置であってもよい。
【0044】
なお、本実施形態では、脈波情報処理装置30が車両1に搭載される態様であったが、本発明は、これに限られるものではない。本発明の脈波情報処理装置が搭載される移動体は、人が搭乗可能であり、かつ搭乗した人(搭乗者)が或る場所から別の場所へと移動するために用いられる乗り物であれば特に限定されるものではなく、例えば、航空機、船舶などであってもよい。
【0045】
〔ソフトウェアによる実現例〕
脈波情報処理装置30の制御ブロック(特に脈波情報取得部31および脈波情報選択部32)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0046】
後者の場合、脈波情報処理装置30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラム(脈波情報処理プログラム)の命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0047】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 車両(移動体)
10 第1脈波情報取得装置
11 圧電センサ(接触センサ)
20 第2脈波情報取得装置
21 カメラ(非接触センサ)
30 脈波情報処理装置
31 脈波情報取得部(情報取得部)
32 脈波情報選択部(情報選択部)
図1
図2