IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/191 20060101AFI20221018BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20221018BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/10
H04N1/401
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018248676
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020109892
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英和
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-125104(JP,A)
【文献】特開2002-199192(JP,A)
【文献】特開2010-074585(JP,A)
【文献】特開2007-166502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を支持する原稿支持面を有する透明板と、
前記透明板に対して前記原稿支持面側と反対側に配置され、読取位置で主走査方向に延びる1ラインを読み取り、前記読取位置を前記主走査方向と直交する副走査方向に移動可能に設けられた読取部と、
前記読取部による原稿の読み取りの妨げにならない位置に配置され、前記読取部により読み取られる白黒基準部と、
制御部と、を備え、
前記白黒基準部は、少なくとも前記主走査方向の両側の端部に、前記副走査方向に互いに隣接する白領域と黒領域とを有し、
前記制御部は、
前記白黒基準部の前記主走査方向の一方側の端部における前記白領域及び前記黒領域の境界点と前記白黒基準部の前記主走査方向の他方側の端部における前記白領域及び前記黒領域の境界点との間の前記副走査方向の距離を取得して、
取得した前記副走査方向の距離が第一所定値を超えるか否かを判断し、
前記副走査方向の距離が前記第一所定値を超える場合、前記主走査方向の一方側の前記境界点を基準とする第一データ読取位置と、前記主走査方向の他方側の前記境界点を基準とする第二データ読取位置とをそれぞれ前記読取位置に設定して、前記読取部により読み取られるデータを元に白基準データを作成し、
前記副走査方向の距離が前記第一所定値を超えない場合、前記第一データ読取位置を前記読取位置に設定して、前記読取部により読み取られるデータを元に白基準データを作成する、画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記副走査方向の距離が前記第一所定値を超える場合、前記第一データ読取位置と前記第二データ読取位置とをそれぞれ前記読取位置に設定して前記読取部により読み取られたデータのうち、前記白領域に存在する画素のデータを使って白基準データを作成する、画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、
前記副走査方向の距離が前記第一所定値を超えない場合、前記第一データ読取位置から第二所定値だけ離れた第三データ読取位置を設定し、
前記副走査方向の距離と前記第二所定値との和が前記第一所定値を超えるか否かを判断し、
前記和が前記第一所定値を超える場合、前記第二データ読取位置を基準に第四データ読取位置を設定し、前記第一データ読取位置と前記第三データ読取位置とをそれぞれ前記読取位置に設定して、前記読取部により読み取られるデータを元に第一白基準データを作成し、また、前記第二データ読取位置と前記第四データ読取位置とをそれぞれ前記読取位置に設定して、前記読取部により読み取られるデータを元に第二白基準データを作成し、さらに、前記第一白基準データ及び前記第二白基準データを元に白基準データを作成し、
前記和が前記第一所定値を超えない場合、前記第一データ読取位置と前記第三データ読取位置とをそれぞれ前記読取位置に設定して、前記読取部により読み取られるデータを元に白基準データを作成する、画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記和が前記第一所定値を超えない場合、前記第一データ読取位置と前記第三データ読取位置とをそれぞれ前記読取位置に設定して、前記読取部により読み取られたデータのうち、前記白領域に存在する画素のデータを使って白基準データを作成する、画像読取装置。
【請求項5】
請求項2または4に記載の画像読取装置であって、
白基準データの作成に使われるデータは、前記白領域に存在する画素のデータであって、前記白領域の所定範囲に存在する画素のデータである、画像読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像読取装置であって、
前記所定範囲は、前記白領域から前記白領域の前記副走査方向の一方側の端に沿った第一幅の領域及び他方側の端に沿った第二幅の領域を除いた残りの領域である、画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FB(Flat Bed:フラットベッド)方式により、原稿などの画像を読み取る画像読取装置が提供されている。
【0003】
FB方式の画像読取装置は、ガラス板からなる原稿載置板と、原稿載置板の下側に設けられたキャリッジと、キャリッジに保持された読取ユニットとを備えている。原稿の読み取りの際には、原稿載置板上に、原稿が読取対象の面を原稿載置板側に向けて載置される。その後、キャリッジがガイドに沿って一定速度で移動されながら、読取ユニットから原稿載置板上の原稿に光が照射される。原稿での反射光が読取ユニットのイメージセンサに受けられることにより、原稿の読み取りが達成される。
【0004】
キャリッジの移動を制御するため、キャリッジの原点位置の設定が必要となる。たとえば、キャリッジに検出子を設け、原稿載置板の周囲を取り囲むカバーに検出子の通過を検出するフォトインタラプタを設けて、フォトインタラプタにより検出子の通過を検出したときのキャリッジの位置から原点位置を設定するものがある。また、特許文献1の画像読取装置のように、白基準部と黒基準部とをキャリッジの移動方向である副走査方向に並べて設けて、白基準部及び黒基準部をイメージセンサで読み取り、その読み取った白基準部と黒基準部との境界の位置から原点位置を設定するものある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-65289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
部品コストや取付精度の面から、フォトインタラプタを設ける構成よりも、白基準部及び黒基準部を設ける構成が採用される傾向にある。しかも、コスト上の問題から、白基準部及び黒基準部は、たとえば、原稿載置板をその周縁を取り囲んで保持するFBカバーの下面に白テープ及び黒テープを貼り付けることにより形成される。そのため、白基準部及び黒基準部の正規の位置からのずれ(傾き)が生じるおそれがある。
【0007】
白基準部は、白基準データの取得にも使用される。たとえば、何らかの理由で白基準部に汚れやごみが付着することを考慮して、白基準部が副走査方向に異なる複数の位置でイメージセンサにより読み取られ、主走査方向に同じ位置の各画素について、その複数の位置で読み取られたデータのうちで最も大きい値のデータが白基準データとして取得される。白基準データは、原稿に照射される光の光量調整や光学系の特性による画素間の濃度むらを低減するためのシェーディング補正に用いられる。
【0008】
画像読取装置の小型化のため、白基準部及び黒基準部の副走査方向の幅が狭くなっており、白基準部及び黒基準部の位置が正規の位置からずれていると、白基準データを取得する際に、白基準部以外の部分、すなわち、黒基準部やFBカバーをイメージセンサで読み取ることがある。たとえば、FBカバーに白テープ及び黒テープを貼り付けるための凹みが形成されており、その凹みのエッジをイメージセンサにより読み取った場合、エッジでの反射光量が白基準部での反射光量よりも多くなるため、適切な白基準データを取得できないという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、適切な白基準データを取得できる、画像読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明に係る画像読取装置は、原稿を支持する原稿支持面を有する透明板と、透明板に対して原稿支持面側と反対側に配置され、読取位置で主走査方向に延びる1ラインを読み取り、読取位置を主走査方向と直交する副走査方向に移動可能に設けられた読取部と、読取部による原稿の読み取りの妨げにならない位置に配置され、読取部により読み取られる白黒基準部と、制御部と、を備え、白黒基準部は、少なくとも主走査方向の両側の端部に、副走査方向に互いに隣接する白領域と黒領域とを有し、制御部は、白黒基準部の主走査方向の一方側の端部における白領域及び黒領域の境界点と白黒基準部の主走査方向の他方側の端部における白領域及び黒領域の境界点との間の副走査方向の距離を取得して、取得した副走査方向の距離が第一所定値を超えるか否かを判断し、副走査方向の距離が第一所定値を超える場合、主走査方向の一方側の境界点を基準とする第一データ読取位置と、主走査方向の他方側の境界点を基準とする第二データ読取位置とをそれぞれ読取位置に設定して、読取部により読み取られるデータを元に白基準データを作成し、副走査方向の距離が第一所定値を超えない場合、第一データ読取位置を読取位置に設定して、読取部により読み取られるデータを元に白基準データを作成する。
【0011】
この構成によれば、白基準データの作成のため、白黒基準部の主走査方向の両側の端部における白領域と黒領域との境界点の位置が求められ、それらの境界点の副走査方向のずれ量及び各位置に応じて読取部の読取位置が設定される。これにより、1ライン上の全画素について白領域を読取部で読み取ったデータを得ることができ、そのデータのみを用いて白基準データを作成することができる。よって、適切な白基準データを取得することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、適切な白基準データを取得することができるので、その白基準データを用いて、原稿に照射される光の光量を良好に調整でき、また、その白基準データを用いたシェーディング補正により、光学系の特性による画素間の濃度むらを良好に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る画像読取装置を備える複合機の斜視図であり、ADFが開かれた状態を示す。
図2】画像読取装置の図解的な平面図である。
図3】画像読取装置の図解的な断面図である。
図4A】白黒基準部の平面図であり、白黒基準部が正規の位置に配置された状態を示す。
図4B】白黒基準部の平面図であり、白黒基準部が正規の位置からずれて配置された状態を示す。
図5】画像読取装置の電気的構成の要部を示すブロック図である。
図6】白基準データ作成処理の流れを示すフローチャートである。
図7A図6に示される白基準データ作成処理で設定される読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置に配置されている場合の読取位置を示す。
図7B図6に示される白基準データ作成処理で設定される読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置からずれて配置されている場合の読取位置を示す。
図8A】所定範囲が設定される場合の読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置に配置されている場合の読取位置を示す。
図8B】所定範囲が設定される場合の読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置からずれて配置されている場合の読取位置を示す。
図9A】他の実施形態に係る白基準データ作成処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
図9B】他の実施形態に係る白基準データ作成処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
図10A図9A及び図9Bに示される白基準データ作成処理で設定される読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置に配置されている場合の読取位置を示す。
図10B図9A及び図9Bに示される白基準データ作成処理で設定される読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置からずれて配置されている場合の読取位置を示す。
図11A】所定範囲が設定される場合の読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置に配置されている場合の読取位置を示す。
図11B】所定範囲が設定される場合の読取位置について説明するための図であり、白黒基準部が正規の位置からずれて配置されている場合の読取位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
<複合機>
図1には、複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)1が示されている。複合機1は、プリント機能、スキャン機能及びコピー機能など、複数の機能を有する電子機器である。プリント機能(画像形成機能)は、画像データに係る画像をプリント用紙などのシートに印刷(プリント)する機能である。スキャン機能(画像読取機能)は、原稿の画像を読み取って画像データを生成する機能である。コピー機能は、スキャナ機能により原稿を読み取って、その読み取った原稿(画像)を画像形成機能によりシートに印刷する機能である。複合機1は、プリント機能のための画像形成装置2及びスキャナ機能のための画像読取装置3を備えている。
【0016】
画像形成装置2は、略直方体形状のプリンタ筐体4を備えている。プリンタ筐体4の底部には、給紙トレイ5がプリンタ筐体4の一方側から抜き差し可能に設けられている。給紙トレイ5は、複数枚のプリント用紙などのシートを積み重なった状態で支持可能に構成されている。
【0017】
なお、以下の説明で使用するため、プリンタ筐体4の一方側、つまり給紙トレイ5をプリンタ筐体4から抜き出す側を「前側」とし、その反対側を「後側」と規定する。そして、複合機1を「前側」から見た状態を基準に左右を規定する。前後方向及び左右方向の両方向と直交する方向が「上下方向」であり、「上側」及び「下側」については、複合機1が水平面に設置された状態を基準とする。
【0018】
シートに画像が形成されるときには、給紙トレイ5からプリンタ筐体4内にシートが1枚ずつ送り出され、プリンタ筐体4内をそのシートが搬送される。シートがプリンタ筐体4内を搬送される間に、プリンタ筐体4内に収容されている画像形成部(図示せず)により、シートに画像(カラー画像またはモノクロ画像)が形成される。画像形成部による画像形成の方式は、電子写真方式であってもよいし、インクジェット方式であってもよい。画像が形成されたシートは、プリンタ筐体4の上面に形成された排紙トレイ6に排出される。
【0019】
<画像読取装置の構成>
画像読取装置3は、画像形成装置2の上側に配置されている。画像読取装置3は、スキャナ筐体7と、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)8とを備えている。スキャナ筐体7の上面には、透明板9が設けられている。ADF8は、開位置と閉位置とに開閉可能に設けられている。ADF8が閉位置に位置する状態では、透明板9がADF8によって被覆される。ADF8が開位置に位置する状態では、透明板9が露出する。すなわち、ADF8は、透明板9を開閉可能なカバーとして機能する。
【0020】
透明板9の左端部上には、図2及び図3に示されるように、透明板9の左端縁と間隔を空けて、前後方向に延びるガイド部材11が設けられている。ガイド部材11は、前後方向及び上下方向に延びる平面を右端面に有し、ガイド部材11の左上方に中心が位置する円弧面を上面に有している。画像読取装置3では、FB(フラットベッド)方式及びADF方式の両方式による原稿の読み取りが可能である。透明板9の上面におけるガイド部材11の右側の領域9Aは、FB方式による原稿の読み取りの際に原稿を支持する領域であり、原稿支持面の一例である。一方、透明板9の上面におけるガイド部材11の左側の領域9Bは、ADF方式による原稿の読み取りの際に原稿が通過する領域である。
【0021】
FB方式による原稿の読み取りの際には、ADF8が開位置に開かれて、原稿が透明板9の上面の領域9A上に載置される。このとき、原稿は、左端縁がガイド部材11の右端面に当接し、かつ、後端縁が領域9Aの後端縁と重なるように配置される。その後、ADF8が閉位置に閉じられて、原稿がADF8によって上側から覆われた状態で、原稿における透明板9との接触面が読み取られる。
【0022】
一方、ADF方式による原稿の読み取りの際には、ADF8の原稿セット部に原稿が載置される。そして、原稿セット部から原稿が1枚ずつ送り出され、その1枚の原稿が透明板9の上面の領域9B上を通過してADF8の原稿排出部に排出される。原稿が透明板9上を通過する際、原稿における透明板9との接触面が読み取られる。
【0023】
スキャナ筐体7内には、図3に示されるように、透明板9の下側に、読取デバイス12(読取部の一例)及び移動機構13が設けられている。
【0024】
読取デバイス12は、CIS(Contact Image Sensor)ユニット21と、CISユニット21を担持するキャリッジ22を含む。CISユニット21には、光源23、ロッドレンズアレイ24及びイメージセンサ25が内蔵されている。イメージセンサ25は、たとえば、複数の受光素子が主走査方向である前後方向に配列されたリニアイメージセンサからなる。
【0025】
透明板9上に載置された原稿の読取時には、光源23から透明板9に向けて光が出射される。透明板9上の原稿で反射された光は、ロッドレンズアレイ24に入射し、ロッドレンズアレイ24の機能によりイメージセンサ25で結像される。これにより、原稿が主走査方向(画像読取装置3の前後方向)に1ライン分読み取られる。このときのイメージセンサ25の位置が読取デバイス12による読取位置である。なお、以下では、読取デバイス12による読取位置での読取対象物(たとえば、原稿)の1ライン分の読み取りを単に「読み取り」という。
【0026】
移動機構13は、読取デバイス12を主走査方向と直交する副走査方向である左右方向に移動させる機構である。移動機構13は、正逆回転可能なステッピングモータからなるモータ26と、モータ26により回転駆動される駆動プーリ27と、駆動プーリ27と対をなす従動プーリ28と、駆動プーリ27及び従動プーリ28に巻き掛けられたベルト29とを備えている。駆動プーリ27は、スキャナ筐体7内に右端部に、回転軸線が前後方向に延びるように配置されている。従動プーリ28は、スキャナ筐体7内の左端部に、回転軸線が駆動プーリ27の回転軸線と同じ高さの位置で前後方向に延びるように配置されている。ベルト29には、キャリッジ22が取り付けられている。駆動プーリ27の回転によりベルト29が走行し、ベルト29の走行に伴ってキャリッジ22が副走査方向(画像読取装置3の左右方向)に移動する。
【0027】
スキャナ筐体7内において、透明板9の左側には、白黒基準部31が設けられている。白黒基準部31は、テープとして形成され、前後方向に延びるように、スキャナ筐体7の内側の上面に貼着されている。白黒基準部31は、図4A及び図4Bに示されるように、ほぼ全体が白領域32であり、その長手方向の両側の端部における透明板9側の角部に、矩形状の黒領域33を有している。これにより、白黒基準部31の長手方向の両側の端部では、白領域32と黒領域33とが副走査方向に互いに隣接している。なお、それぞれの黒領域33は、白黒基準部31の黒領域33が存在する側の端からの副走査方向(短手方向)長さが、同一となっている。
【0028】
白黒基準部31は、人手により、スキャナ筐体7の内側の上面に貼り付けられる。そのため、図4Aに示されるように、白黒基準部31は、白黒基準部31の長手方向が主走査方向、つまり画像読取装置3の前後方向に一致する正規の位置に上手く貼り付けられる場合もあれば、図4Bに示されるように、その正規の位置からずれて、白黒基準部31の長手方向が主走査方向に対して傾斜して貼り付けられる場合もある。後者の場合、白黒基準部31の一方側の端部の位置と他方側の端部の位置とが副走査方向にずれる。
【0029】
<画像読取装置の電気的構成の要部>
画像読取装置3は、図5に示されるように、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)41、ROM(Read Only Memory)42及びRAM(Random Access Memory)43を備えている。
【0030】
ASIC41は、CPU44(制御部の一例)を内蔵している。CPU44は、ASIC41に入力される情報に基づいて、各種の処理のためのプログラムを実行することにより、読取デバイス12及び移動機構13を含む画像読取装置3の各部を制御する。
【0031】
ROM42は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリからなる。ROM42には、CPU44によって実行されるプログラム及び各種のデータなどが記憶されている。
【0032】
RAM43は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリであり、CPU44がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。また、RAM43により、ステップ数カウンタが構成される。ステップ数カウンタは、モータ26が1ステップ駆動される度にステップ数をインクリメント(+1)する。CPU44は、ステップ数カウンタによりカウントされるステップ数に基づいてモータ26の駆動を制御することにより、読取デバイス12の位置を制御することができる。
【0033】
<白基準データ作成処理>
画像読取装置3における原稿の読み取りに際して、ASIC41のCPU44により、図6に示される白基準データ作成処理が実行される。
【0034】
白基準データ作成処理では、CPU44は、読取デバイス12による読取位置を透明板9の下側の位置から白黒基準部31側に移動させながら、読取デバイス12に読み取りを実行させる。CPU44は、読取デバイス12による読取位置が白黒基準部31の一方側の端部の白領域32と黒領域33との境界点(以下、単に「一方側の境界点」という。)を越えて、イメージセンサ25の出力信号の変化から境界点を検出すると、その検出時における読取位置を一方側の境界点の位置としてRAM43に記憶させる。また、CPU44は、読取デバイス12による読取位置が白黒基準部31の他方側の端部の白領域32と黒領域33との境界点(以下、単に「他方側の境界点」という。)を越えて、イメージセンサ25の出力信号の変化から境界点を検出すると、その検出時における読取位置を他方側の境界点の位置としてRAM43に記憶させる。そして、一方側の境界点の位置及び他方側の境界点の位置から、それらの境界点間の副走査方向の距離L、言い換えれば、一方側の境界点と他方側の境界点との副走査方向のずれ量Lを演算により取得する(S11)。
【0035】
その後、CPU44は、距離Lが第一所定値を超えているか否かを判断する(S12)。第一所定値は、白領域32における黒領域33と副走査方向に隣接する部分の副走査方向の長さに等しい値に設定されている。
【0036】
距離Lが第一所定値を超えていない場合(S12:NO)、つまり距離Lが第一所定値以下である場合、CPU44は、図7Aに示されるように、一方側の境界点を基準とする第一データ読取位置P1を設定する(S13)。CPU44は、たとえば、一方側の境界点及び他方側の境界点のうちの透明板9に近い方の境界点から白領域32側に所定距離を空けた位置を第一データ読取位置P1に設定する。この場合、所定距離は、白領域32における黒領域33と副走査方向に隣接する部分の副走査方向の長さよりも小さい距離に設定される。
【0037】
第一データ読取位置P1の設定後、CPU44は、第一データ読取位置P1を読取位置に設定し、光量調整の後、読取デバイス12による読み取りを実行させることにより、第一読取データを取得する(S14)。
【0038】
そして、CPU44は、第一読取データを元に白基準データを作成する(S15)。たとえば、CPU44は、第一読取データに含まれる各画素のデータをそのまま白基準データに決定することにより、白基準データを作成する。これにより、白基準データ作成処理が終了となる。
【0039】
距離Lが第一所定値を超えている場合(S12:YES)、CPU44は、図7Bに示されるように、一方側の境界点及び他方側の境界点のうちの透明板9に近い方の境界点を基準とする第一データ読取位置P1を設定し、その反対側の境界点、つまり透明板9から遠い方の境界点を基準とする第二データ読取位置P2を設定する(S16)。CPU44は、たとえば、透明板9に近い方の境界点から白領域32側に第一距離を空けた位置を第一データ読取位置P1に設定し、透明板9から遠い方の境界点から白領域32側に第二距離を空けた位置を第二データ読取位置P2に設定する。この場合、第一距離の値は、第一所定値の1/2以上9/10未満の値に設定され、第二距離の値は、第一所定値の1/10以上1/2未満の値に設定される。第一距離は、距離Lが第一所定値を超えない場合における第一データ読取位置P1の設定に用いる所定距離と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
CPU44は、第一データ読取位置P1及び第二データ読取位置P2をそれぞれ読取位置に設定し、読取デバイス12による各読取位置での読み取りを実行させることにより、第一読取データ及び第二読取データを取得する(S17)。
【0041】
その後、CPU44は、距離Lに基づいて、第一読取データ及び第二読取データのそれぞれにおいて、白領域32に存在する画素のデータを特定する(S18)。CPU44は、距離Lから白黒基準部31の主走査方向に対する傾きが判るので、その傾き及び第一データ読取位置P1から第一データ読取位置P1での1ラインに含まれる画素のうち、白領域32に存在する画素を特定することができる。CPU44は、その白領域32に存在する画素のデータを第一読取データの中から特定する。また、白黒基準部31の主走査方向に対する傾き及び第二データ読取位置P2から第二データ読取位置P2での1ラインに含まれる画素のうち、白領域32に存在する画素を特定することができる。CPU44は、その白領域32に存在する画素のデータを第二読取データの中から特定する。
【0042】
そして、CPU44は、第一読取データ及び第二読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータを元に白基準データを作成する(S19)。たとえば、CPU44は、第一読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータのうち、白領域32における副走査方向の黒領域33側と反対側の端縁に最も近い画素から主走査方向に予め定める距離だけ離れた分割位置に位置する画素までの各画素のデータと、第二読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータのうち、主走査方向の分割位置に位置する画素から白領域32の副走査方向の黒領域33側の端縁に最も近い画素までの各画素のデータとをつなぎ合わせることにより、白基準データを作成する。これにより、白基準データ作成処理が終了となる。
【0043】
<作用効果>
以上のように、白基準データの作成のため、白黒基準部31の主走査方向の両側の端部における白領域32と黒領域33との境界点の位置が求められ、それらの境界点間の副走査方向の距離(ずれ量)L及び各境界点の位置に応じて読取デバイス12の読取位置が設定される。具体的には、距離Lが第一所定値を超えていない場合は、一方側の境界点を基準とする第一データ読取位置P1が読取位置として設定される。距離Lが第一所定値を超えている場合は、一方側の境界点及び他方側の境界点のうちの透明板9に近い方の境界点を基準とする第一データ読取位置P1が読取位置として設定され、また、その反対側の境界点、つまり透明板9から遠い方の境界点を基準とする第二データ読取位置P2が読取位置として設定される。これにより、1ライン上の全画素について白領域32を読取デバイス12で読み取ったデータを得ることができ、そのデータのみを用いて白基準データを作成することができる。よって、適切な白基準データを取得することができる。
【0044】
その結果、白基準データを用いて、原稿に照射される光の光量を良好に調整でき、また、その白基準データを用いたシェーディング補正により、光学系の特性による画素間の濃度むらを良好に低減することができる。
【0045】
<所定範囲の設定>
第一所定値は、白領域32における黒領域33と副走査方向に隣接する部分の副走査方向の長さに等しい値に設定されるとしたが、これに限らない。たとえば、図8A及び図8Bに示されるように、白領域32から白領域32における副走査方向の透明板9側の端に沿った第一幅の領域及びその反対側の端に沿った第二幅の領域を除いた残りの領域が所定範囲とされて、その所定範囲の副走査方向の長さが第一所定値に設定されてもよい。
【0046】
そして、一方側の境界点と他方側の境界点との副走査方向の距離Lが第一所定値を超えていない場合には、図8Aに示されるように、第一データ読取位置P1を設定するための所定距離の値が第一幅よりも大きく、かつ第一幅と第一所定値とを足した値よりも小さい値に設定される。
【0047】
また、一方側の境界点と他方側の境界点との副走査方向の距離Lが第一所定値を超えている場合には、図8Bに示されるように、第一距離の値が第一幅と第一所定値の1/2とを足した値よりも大きく、かつ第一幅と第一所定値とを足した値よりも小さい値に設定され、第二距離の値が第一幅よりも大きく、かつ第一距離の値が第一幅と第一所定値の1/2とを足した値よりも小さい値に設定される。
【0048】
これにより、白基準データの作成のための読取デバイス12の読取位置(第一データ読取位置P1及び第二データ読取位置P2)が所定範囲内に設定され、白領域32における副走査方向の透明板9側の端に沿った第一幅の領域及びその反対側の端に沿った第二幅の領域に設定されないので、白基準データが白領域32の周囲の色の影響を受けることを抑制でき、より適切な白基準データを取得することができる。
【0049】
<白基準データ作成処理の他の例>
図6に示される白基準データ作成処理に代えて、図9A及び図9Bに示される白基準データ作成処理が実行されてもよい。
【0050】
図9A及び図9Bに示される白基準データ作成処理では、CPU44は、図6のステップS11と同様に、一方側の境界点の位置及び他方側の境界点の位置から、それらの境界点間の副走査方向の距離Lを演算により取得する(S21)。
【0051】
その後、CPU44は、距離Lが第一所定値を超えているか否かを判断する(S22)。第一所定値は、白領域32における黒領域33と副走査方向に隣接する部分の副走査方向の長さに等しい値に設定されている。
【0052】
距離Lが第一所定値を超えていない場合(S22:NO)、つまり距離Lが第一所定値以下である場合、CPU44は、図10A及び図10Bに示されるように、一方側の境界点及び他方側の境界点のうちの透明板9に近い方の境界点を基準とする第一データ読取位置P1を設定する(S23)。
【0053】
第一データ読取位置P1の設定後、CPU44は、第一データ読取位置P1から透明板9側と反対側に第二所定値だけ離れた位置を第三データ読取位置P3を設定する(S24)。
【0054】
その後、CPU44は、距離Lと第二所定値との和が第一所定値を超えている否かを判断する(S25)。
【0055】
距離Lと第二所定値との和が第一所定値を超えていない場合(S25:NO)、CPU44は、第一データ読取位置P1及び第三データ読取位置P3をそれぞれ読取位置に設定し、読取デバイス12による各読取位置での読み取りを実行させることにより、第一読取データ及び第三読取データを取得する(S26)。
【0056】
その後、CPU44は、距離Lに基づいて、第一読取データ及び第三読取データのそれぞれにおいて、白領域32に存在する画素のデータを特定する(S27)。そして、CPU44は、第一読取データ及び第三読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータを元に白基準データを作成する(S28)。たとえば、CPU44は、第一読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータのうち、白領域32における副走査方向の黒領域33側と反対側の端縁に最も近い画素から主走査方向に予め定める距離だけ離れた分割位置に位置する画素までの各画素のデータと、第二読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータのうち、主走査方向の分割位置に位置する画素から白領域32の副走査方向の黒領域33側の端縁に最も近い画素までの各画素のデータとをつなぎ合わせることにより、白基準データを作成する。これにより、白基準データ作成処理が終了となる。
【0057】
距離Lと第二所定値との和が第一所定値を超えている場合(S25:YES)、CPU44は、図9Bに示されるように、一方側の境界点及び他方側の境界点のうちの透明板9から遠い方の境界点を基準とする第二データ読取位置P2を設定し、第二データ読取位置P2を基準に第四データ読取位置P4を設定する(S29)。
【0058】
また、距離Lが第一所定値を超えている場合(S22:YES)、CPU44は、図9Bに示されるように、一方側の境界点及び他方側の境界点のうちの透明板9に近い方の境界点を基準とする第一データ読取位置P1を設定し、その反対側の境界点、つまり透明板9から遠い方の境界点を基準とする第二データ読取位置P2を設定する(S30)。さらに、CPU44は、第一データ読取位置P1から透明板9側と反対側に第二所定値だけ離れた位置を第三データ読取位置P3を設定し、第二データ読取位置P2を基準に第四データ読取位置P4を設定する(S31)。
【0059】
こうして、第一データ読取位置P1、第二データ読取位置P2、第三データ読取位置P3及び第四データ読取位置P4を設定した場合、CPU44は、第一データ読取位置P1、第二データ読取位置P2、第三データ読取位置P3及び第四データ読取位置P4をそれぞれ読取位置に設定し、読取デバイス12による各読取位置での読み取りを実行させることにより、第一読取データ、第二読取データ、第三読取データ及び第四読取データを取得する(S32)。
【0060】
その後、CPU44は、距離Lに基づいて、第一読取データ及び第三読取データのそれぞれにおいて、白領域32に存在する画素のデータを特定し、第一読取データ及び第三読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータを元に第一白基準データを作成する(S33)。
【0061】
また、CPU44は、距離Lに基づいて、第二読取データ及び第四読取データのそれぞれにおいて、白領域32に存在する画素のデータを特定し、第二読取データ及び第四読取データから特定した白領域32に存在する画素のデータを元に第二白基準データを作成する(S34)。
【0062】
そして、CPU44は、第一白基準データ及び第二白基準データを比較して、各画素のデータの値のばらつきが小さい方を白基準データに決定することにより、白基準データを作成して(S35)、白基準データ作成処理を終了する。
【0063】
このように、第一読取データ及び第三読取データの組から白基準データが作成されるか、第一読取データ及び第三読取データの組または第二読取データ及び第四読取データの組から白基準データが作成されることにより、それらの組の一方のデータを読み取ったラインに塵埃が付着していた場合に、その塵埃の影響が排除された白基準データを作成することができる。
【0064】
<所定範囲の設定>
図9に示される白基準データ作成処理が採用される場合にも、第一所定値は、白領域32における黒領域33と副走査方向に隣接する部分の副走査方向の長さに等しい値に限らず、たとえば、図11A及び図11Bに示されるように、白領域32から白領域32における副走査方向の透明板9側の端に沿った第一幅の領域及びその反対側の端に沿った第二幅の領域を除いた残りの領域が所定範囲とされて、その所定範囲の副走査方向の長さが第一所定値に設定されてもよい。
【0065】
これにより、白基準データの作成のための読取デバイス12の読取位置(第一データ読取位置P1、第二データ読取位置P2、第三データ読取位置P3及び第四データ読取位置P4)が所定範囲内に設定され、白領域32における副走査方向の透明板9側の端に沿った第一幅の領域及びその反対側の端に沿った第二幅の領域に設定されないので、白基準データが白領域32の周囲の色の影響を受けることを抑制でき、より適切な白基準データを取得することができる。
【0066】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
3:画像読取装置
9:透明板
9A:領域
12:読取デバイス
13:移動機構
31:白黒基準部
32:白領域
33:黒領域
44:CPU
L:距離
P1:第一データ読取位置
P2:第二データ読取位置
P3:第三データ読取位置
P4:第四データ読取位置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B