(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】スイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具
(51)【国際特許分類】
H02B 11/24 20060101AFI20221018BHJP
H02B 11/12 20060101ALI20221018BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H02B11/24 Z
H02B11/12 L
H02B3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019012948
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】上野 和弘
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-240088(JP,A)
【文献】特開2014-33590(JP,A)
【文献】特開2009-171774(JP,A)
【文献】特開2003-144247(JP,A)
【文献】登録実用新案第3105243(JP,U)
【文献】実開昭54-025627(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 11/24
H02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体の格納室内に引出し自在に格納され、前記箱体の格納室内に突出した固定接触端子に接続することが可能な可動接触端子を有する引出式の遮断器を具備するスイッチギヤの、前記遮断器が引き出された後の前記箱体の開口部を閉鎖するスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具であって、
山折りと谷折りとが交互に繰り返されたジグザク形状を成すと共に、隣り合う山部同士または谷部同士が遠近する方向に伸縮することが可能な第1の閉鎖用板状部材と、
山折りと谷折りとが交互に繰り返されたジグザク形状を成すと共に、隣り合う山部同士または谷部同士が遠近する方向に伸縮することが可能な第2の閉鎖用板状部材と、
伸縮自在な棒状部を有して構成され、前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材との双方に、前記第1、第2の閉鎖用板状部材の伸縮方向に沿って貫通させることで、前記第1、第2の閉鎖用板状部材が装着される支持部材とを有して構成され、
前記支持部材を前記箱体の開口部の周縁側面間に架設し、前記支持部材に装着された前記第1の閉鎖用板状部材及び前記第2の閉鎖用板状部材を、前記箱体の開口部の周縁側面から中央に向けて伸長させて連結手段により連結することで、前記箱体の開口部が前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材とにより閉鎖されていることを特徴とするスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具。
【請求項2】
前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材とは、前記第1の閉鎖用板状部材の前記第2の閉鎖用板状部材側縁近傍に設けた通孔と前記第2の閉鎖用板状部材の前記第1の閉鎖用板状部材側縁近傍に設けた通孔とに線状部材を挿通させて前記線状部材を環状に固定することで施錠され、
前記第1の閉鎖用板状部材又は前記第2の閉鎖用板状部材と前記箱体の開口部の周縁側面とは、前記第1の閉鎖用板状部材又は前記第2の閉鎖用板状部材の記箱体の開口部の周縁側に配置した固定器具を介して固定されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具。
【請求項3】
前記支持部材の両端部は、接着手段により前記箱体の開口部の周縁側面に着脱自在に接着された支持部材取付具の穴部に挿入されることで、前記箱体の開口部の周縁側面間に架設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具。
【請求項4】
前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材とを連結する連結手段は、
前記第1の閉鎖用板状部材の前記第2の閉鎖用板状部材側の端部に設けられた第1の磁石と、
前記第2の閉鎖用板状部材の前記第1の閉鎖用板状部材側の端部に設けられた、前記第1の磁石とは磁極の異なる第2の磁石とで成ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発明は、引出式の遮断器を有するスイッチギヤの保守、点検時に、遮断器をスイッチギヤの箱体の開口部から引き出した後に、当該箱体の開口部を閉鎖することができる閉鎖器具に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等における各種機器の運転を停止する際、電源系統の遮断を行う装置として、例えば特許文献1や特許文献2に示されるように、引出式の遮断器を有するスイッチギヤが知られている。特許文献1や特許文献2に示されるスイッチギヤは、可動接触端子を有する引出式の遮断器を箱体の内部に形成された格納室に格納し、引出式の遮断器の可動接触端子と格納室内に突出し主回路と接続された固定接触端子とを接続することで電源系統を接続状態とする。
【0003】
そして、特許文献1や特許文献2に示されるスイッチギヤは、かかるスイッチギヤの保守、点検を行う際には、格納室に格納された引出式の遮断器を箱体の開口部から箱体の外に引き出して可動接触端子と固定接触端子とを切り離すことで開放状態とする。
【0004】
もっとも、引出式の遮断器を箱体の格納室から箱体の外に引き出して保守、点検を行う場合には、格納室内にて固定接触端子が露出された状態となる。このため、箱体の開口部が開放されたままの状態では、スイッチギヤが充電中でありながら、スイッチギヤが停電中等と誤解して、箱体の格納室内に作業員が不用意に進入することにより、作業者が固定接触端子に接触して感電する等の事故が発生するおそれがある。
【0005】
この点、特許文献1では、遮断器が引き出された後に箱体の開口部をシャッタで閉鎖して格納室内に進入できないようにし、かつ、シャッタの箱体の外側の面に、スイッチギヤが充電中であり、格納室内に進入すると危険である旨の注意を促す文字を施すことにより、作業員がシャッタを開けて不用意に充電中のスイッチギヤの箱体の格納室内に進入しないようにしている。
【0006】
また、特許文献2では、遮断器が引き出された後に箱体の格納室内に、台車と、この台車から立設した遮蔽板とからなる遮蔽装置を配置して、遮蔽板により固定接触端子を覆い隠すことで、作業者が固定接触端子に接触して感電するのを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-33590号公報
【文献】特開2009-171774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
もっとも、特許文献1に示されるように、スイッチギヤの箱体の開口部を閉鎖するためにシャッタを用いると、シャッタ及びその開閉機構を必要とするのでスイッチギヤの全体構造が複雑となり、スイッチギヤの設置に要するコストが高くなるという不具合を有する。さらに、特許文献1に示されるスイッチギヤでは、上記したように、シャッタ及びその開閉機構を必要とするので、既存のスイッチギヤに付加するかたちで採用することが容易ではない。
【0009】
また、特許文献2に示される遮蔽装置のように、横幅を自在に変更することができない遮蔽板を用いたのでは、遮蔽板で固定接触端子を完全に覆い隠すことができないおそれがある。そして、箱体の開口部の横幅は一律ではないので、箱体の開口部の横幅よりも遮蔽装置の遮蔽板の横幅の方が大きいために、遮蔽装置をスイッチギヤの箱体の開口部から格納室内に入れることができないおそれもある。
【0010】
そこで、本発明は、設置コストの低い簡易な構造で且つ箱体の開口部に当該開口部の横幅にとらわれずに着脱自在に取り付けられ、しかも、施錠も可能なスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明に係るスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具は、箱体の格納室内に引出し自在に格納され、前記箱体の格納室内に突出した固定接触端子に接続することが可能な可動接触端子を有する引出式の遮断器を具備するスイッチギヤの、前記遮断器が引き出された後の前記箱体の開口部を閉鎖するスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具であって、山折りと谷折りとが交互に繰り返されたジグザク形状を成すと共に、隣り合う山部同士または谷部同士が遠近する方向に伸縮することが可能な第1の閉鎖用板状部材と、山折りと谷折りとが交互に繰り返されたジグザク形状を成すと共に、隣り合う山部同士または谷部同士が遠近する方向に伸縮することが可能な第2の閉鎖用板状部材と、伸縮自在な棒状部を有して構成され、前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材との双方に、前記第1、第2の閉鎖用板状部材の伸縮方向に沿って貫通させることで、前記第1、第2の閉鎖用板状部材が装着される支持部材とを有して構成され、前記支持部材を前記箱体の開口部の周縁側面間に架設し、前記支持部材に装着された前記第1の閉鎖用板状部材及び前記第2の閉鎖用板状部材を、前記箱体の開口部の周縁側面から中央に向けて伸長させて連結手段により連結することで、前記箱体の開口部が前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材とにより閉鎖されていることを特徴としている(請求項1)。第1、第2の閉鎖用板状部材や支持部材は、プラスチック、その他の合成樹脂などの絶縁素材で形成されている。さらに、第1、第2の閉鎖用板状部材は、支持部材に装着されたときに、支持部材の耐荷重を超えて支持部材が落下しないように、比較的軽いものであることが望まれる。
【0012】
第1の閉鎖用板状部材、第2の閉鎖用板状部材は、その構造から、板状のプラスチックダンボールなどの安価な板状部材を基に形成することができる。また、支持部材も、伸縮自在な棒状部を有する構造とすることで、突っ張り棒などの入手が容易な既製品を用いることができる。これにより、スイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具は、簡易な構造となるとともに設置コストの低廉化も図ることが可能である。そして、スイッチギヤの箱体の開口部に設置するにあたって、支持部材の全長は当該支持部材の棒状部を伸縮させることで調整することができ、第1の閉鎖用板状部材、第2の閉鎖用板状部材の全長も、隣り合う山部同士または谷部同士が遠近する方向に伸縮させることで調整することができる。このため、スイッチギヤの箱体の開口部の横幅がさまざまな寸法であっても、スイッチギヤの箱体の開口部の横幅にとらわれずに設置することが可能である。これに伴い、既存のスイッチギヤであっても本発明に係るスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具を適用することができる。
【0013】
請求項2の発明に係るスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具では、前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材とは、前記第1の閉鎖用板状部材の前記第2の閉鎖用板状部材側縁近傍に設けた通孔と前記第2の閉鎖用板状部材の前記第1の閉鎖用板状部材側縁近傍に設けた通孔とに線状部材を挿通させて前記線状部材を環状に固定することで施錠され、前記第1の閉鎖用板状部材又は前記第2の閉鎖用板状部材と前記箱体の開口部の周縁側面とは、前記第1の閉鎖用板状部材又は前記第2の閉鎖用板状部材の前記箱体の開口部の周縁側に配置した固定器具を介して固定されることを特徴としている。このような線状部材を環状に固定することが可能な器具としては、例えばワイヤ式の南京錠などの施錠器具が用いられる。固定器具は、例えば磁力の強い磁石を利用したものが考えられる。
【0014】
これにより、スイッチギヤの作業が終了して停電中などと作業員が誤解をして、第1の閉鎖用板状部材と第2の閉鎖用板状部材とを箱体の開口部の周縁側に向けて開いて、スイッチギヤの格納室内に進入してしまうのを抑止することができる。そして、スイッチギヤが充電中であり、格納室内に進入すると危険である旨の注意を促す文字が記されたボードに2つの通孔を設け、線状部材をこれらのボードの2つの通孔も挿通させることにより、第1の閉鎖用板状部材、第2の閉鎖用板状部材の前面に前記ボードを配置することも可能になる。更に、第1の閉鎖用板状部材又は第2の閉鎖用板状部材と箱体の開口部の周縁側面とが固定器具を介して固定されているので、第1の閉鎖用板状部材と第2の閉鎖用板状部材とを施錠していても、第1の閉鎖用板状部材及び第2の閉鎖用板状部材の全体を開口部のいずれかの周縁側面に向けて動かすことで開いてしまい、作業員がスイッチギヤの格納室内に進入してしまうのを抑止することができる。
【0015】
請求項3の発明に係るスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具では、前記支持部材の両端部は、接着手段により前記箱体の開口部の周縁側面に着脱自在に接着された支持部材取付具の孔に挿入されることで、前記箱体の開口部の周縁側面間に架設されることを特徴としている。接着手段は、スイッチギヤの箱体が鉄などの磁石が吸着することができる金属を素材として形成されていることから、例えば磁力の強い磁石が用いられる。
【0016】
これにより、支持部材の両端部は、接着手段により箱体の開口部の周縁側面に固定される支持部材取付具を介して箱体の開口部の周縁側面に取り付けられるので、支持部材を箱体の開口部の周縁側面に直接に取り付ける場合に比較して、より確実に且つずれることなく箱体の開口部の周縁側面に取り付けることが可能である。
【0017】
請求項4の発明に係るスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具では、前記第1の閉鎖用板状部材と前記第2の閉鎖用板状部材とを連結する前記連結手段は、前記第1の閉鎖用板状部材の前記第2の閉鎖用板状部材側の端部に設けられた第1の磁石と、前記第2の閉鎖用板状部材の前記第1の閉鎖用板状部材側の端部に設けられた、前記第1の磁石とは磁極の異なる第2の磁石とで成ることを特徴としている。
【0018】
これにより、第1の閉鎖用板状部材と第2の閉鎖用板状部材との連結は、第1の磁石と第2の磁石とを吸着することで行うので、簡易な構造でありながら確実に連結することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べたように、本発明によれば、第1の閉鎖用板状部材、第2の閉鎖用板状部材の構造から、板状のプラスチックダンボールなどの安価な板状部材を基に形成することができる。また、支持部材も、伸縮自在な棒状部を有する構造とすることで、入手が容易な既成品を用いることができる。これにより、スイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具は、簡易な構造となるとともに設置コストの低廉化も図ることが可能である。そして、スイッチギヤの箱体の開口部に設置するにあたって、支持部材の全長は当該支持部材の棒状部を伸縮させることで調整することができ、第1の閉鎖用板状部材、第2の閉鎖用板状部材の全長も、隣り合う山部同士または谷部同士が遠近する方向に伸縮させることで調整することができる。このため、スイッチギヤの箱体の開口部の横幅がさまざまな寸法であっても、スイッチギヤの箱体の開口部の横幅にとらわれずに設置することが可能である。これに伴い、既存のスイッチギヤであっても、この発明のスイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具を適用することができる。
【0020】
特に請求項2に記載の発明によれば、スイッチギヤの作業が終了して停電中などと作業員が誤解をして、第1の閉鎖用板状部材と第2の閉鎖用板状部材とを箱体の開口部の周縁側に向けて開いて、スイッチギヤの格納室内に進入してしまうのを抑止することができる。そして、スイッチギヤが充電中であり、格納室内に進入すると危険である旨の注意を促す文字が記されたボードに2つの通孔を設け、線状部材をこれらのボードの2つの通孔も挿通させることにより、第1の閉鎖用板状部材、第2の閉鎖用板状部材の前面に前記ボードを配置することも可能になる。更に、第1の閉鎖用板状部材又は第2の閉鎖用板状部材と箱体の開口部の周縁側面とが固定器具を介して固定されているので、第1の閉鎖用板状部材と第2の閉鎖用板状部材とを施錠していても、第1の閉鎖用板状部材及び第2の閉鎖用板状部材の全体を開口部のいずれかの周縁側面に向けて動かすことで開いてしまい、作業員がスイッチギヤの格納室内に進入してしまうのを抑止することもできる。
【0021】
特に請求項3に記載の発明によれば、支持部材の両端部を、接着手段により箱体の開口部の周縁側面に固定される支持部材取付具を介して箱体の開口部の周縁側面に取り付けるので、支持部材を箱体の開口部の周縁側面に直接に取り付ける場合に比較して、より確実に且つずれることなく箱体の開口部の周縁側面に取り付けることが可能である。
【0022】
特に請求項4に記載の発明によれば、第1の閉鎖用板状部材と第2の閉鎖用板状部材とが、第1の磁石と第2の磁石とにより吸着するので、第1の閉鎖用板状部材と第2の閉鎖用板状部材とを簡易な構造でありながら確実かつに連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明が適用されるスイッチギヤの箱体内の概略構成を示す断面図である。
【
図2】(a)から(c)は、本発明において、引出式の遮断器を箱体の格納室から箱体の外に引き出して保守、点検を行うための事前準備の手順を示した説明図である。
【
図3】本発明の閉鎖器具を構成する2つの閉鎖用板状部材のうちの第1の閉鎖用板状部材の構成を示す説明図であり、(a)は第1の閉鎖用板状部材の正面図、(b)は第1の閉鎖用板状部材の通孔を示すかたちでの断面図である。
【
図4】本発明の閉鎖器具を構成する2つの閉鎖用板状部材のうちの第2の閉鎖用板状部材の構成を示す説明図であり、(a)は第2の閉鎖用板状部材の正面図、(b)は第2の閉鎖用板状部材の通孔を示すかたちでの断面図である。
【
図5】(a)は第1、第2の閉鎖用板状部材をスイッチギヤの箱体の開口部の周縁側面に取り付けるための構造を示した概略図であり、(b)は第1の閉鎖用板状部材の端部と第2の閉鎖用板状部材の端部とを連結するための構造を示した概略図である。
【
図6】支持部材をスイッチギヤの箱体の開口部の周縁側面に取り付けるための支持部材取付器具の説明図であり、(a)は支持部材取付器具の側面図、(b)は支持部材取付器具の正面図、(c)は支持部材取付器具を介して支持部材の両端部がスイッチギヤの箱体の開口部の周縁側面に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の閉鎖器具をスイッチギヤの箱体の開口部に取り付け、かつ閉鎖器具を構成する第1、第2の閉鎖用板状部材を開口部の両側に収縮させた状態を示す説明図であり、(a)は閉鎖部材の第1、第2の閉鎖用板状部材を開口部の両側に収縮させた状態の正面図、(b)は閉鎖部材の第1、第2の閉鎖用板状部材を開口部の両側に収縮させた状態の断面図である。
【
図8】
図7の状態から閉鎖器具を構成する第1、第2の閉鎖用板状部材を開口部の中央に向けて伸長させた状態を示す説明図であり、(a)は閉鎖部材の第1、第2の閉鎖用板状部材を開口部の中央に伸長させた状態の正面図、(b)は閉鎖部材の第1、第2の閉鎖用板状部材を開口部の両側に伸長させた状態の断面図である。
【
図9】(a)は
図8の状態から閉鎖器具を構成する第1、第2の閉鎖用板状部材を注意喚起のプレートを介在させつつ施錠器具で施錠した状態を示す正面図であり、(b)は
図9(a)の閉鎖部材の第1、第2の閉鎖用板状部材を注意喚起のプレートを介在させつつ施錠器具で施錠した状態の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0025】
図1及び
図2において、この発明が適用されるスイッチギヤ100の一例が示されている。スイッチギヤ100は、例えば、発変電設備等に用いられるものであり、箱体101と、この箱体101内に形成された格納室102内に格納することが可能な引出式の遮断器(以下、遮断器)110とを有して構成されている。
【0026】
箱体101は、この実施例では、少なくとも格納室102の内側の側面102aを形成する部位が鉄などの磁石が吸着することができる金属で形成されている。格納室102は、箱体101の前面101a側に形成された開口部104により箱体101外と連通している。そして、箱体101は、背面101b側から格納室102内に突出した複数の固定接触端子105を有する。これらの固定接触端子105は、図示しない主回路と接続したもので、
図1に示されるように、下記する遮断器110の可動接触端子113の端子本体114に外装する凹部を有し、略水平に延びる端子本体106と、端子本体106の周囲を囲む筒状の保護カバー107とで構成されている。
【0027】
遮断器110は、遮断器本体111が台車112に載置、固定されたものとなっている。そして、遮断器110は、台車112の底面に回転自在に設けられた車輪112aが格納室102内の床面102bに敷設されたレール108上を回転することにより、開口部104から箱体101外に引き出されたり、開口部104から格納室102の奥側に引き入れられたりすることができる。遮断器本体111は、例えば真空遮断器(VCB)であり、かかる遮断器本体111の箱体101の背面101b側には、可動接触端子113を有する。可動接触端子113は、
図1に示されるように、略水平に延びて上記端子本体106に挿入される端子本体114と、端子本体114の周囲を囲む筒状の保護カバー115とで構成されている。
【0028】
このような構成のスイッチギヤ100とすることで、発変電設備の運転時には、
図1に示されるように、遮断器110は箱体101の格納室102内に格納された状態にあり、格納室102内に突出した固定接触端子105と遮断器本体111の可動接触端子113とが接続されている。そして、スイッチギヤ100の保守、点検時には、保守、点検の事前準備として、
図2(a)に示されるように、遮断器本体111の可動接触端子113を格納室102内に突出した固定接触端子105から外した後、
図2(b)に示されるように、遮断器110全体を開口部104から箱体101の外まで引き出す作業が行われる。
【0029】
もっとも、遮断器110全体を箱体101の外まで引き出した後では、固定接触端子105が格納室102内に露出した状態となる。このため、スイッチギヤ100が充電中であり、かつ箱体101の開口部104に「充電中」であり、格納室102に進入すると「危険」である旨を示すプレートが掛かっていても、作業員が、スイッチギヤ100が停電中などと誤解をしてしまい、格納室102内に進入して、固定接触端子105に接触し、感電してしまう事故が思慮される。
【0030】
そこで、この発明では、
図2(c)に示されるように、箱体101の固定接触端子105の前方となる開口部104に、スイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具(以下、閉鎖器具)1を配置して、作業員の格納室102内への進入を抑止している。本発明の閉鎖器具1の構成の一例について、
図3から
図9を用いて説明する。
【0031】
閉鎖器具1は、
図6(c)、
図7(a)、
図8(a)及び
図9(c)に示される支持部材2と、
図3に示される閉鎖用板状部材3と、
図4に示される閉鎖用板状部材4とで基本的に構成されている。
【0032】
支持部材2は、突っ張り棒や伸縮自在棒等とも称される公知のものを用いることができ、例えば、長手方向に伸縮自在な棒状部21と、棒状部21に内蔵されて、棒状部21の長手方向に沿って棒状部21の両端が離間する方向に付勢力を付与するコイルバネ等の付勢力付与機構(図示せず)とで少なくとも構成されている。更に、棒状部21は、径が大きく円筒状である大径部22と、大径部22よりも径が小さく大径部22の内方側にその一部が収容可能な小径部23と、大径部22、小径部23のそれぞれ外側端に装着されたキャップ24、25とを有する。これにより、支持部材2は、例えば、小径部23を所定の方向に回転させることで棒状部21を伸長させることができ、小径部23を所定の方向とは逆方向に回転させることで棒状部21を収縮あるいは伸長を解除させることができる。よって、スイッチギヤ100の箱体101の開口部104の周縁側面間の寸法(横幅)がさまざまな寸法であってもとらわれることなく、かかるスイッチギヤ100の箱体101の開口部104の周縁側面間に支持部材2を架設することが可能である。なお、支持部材2の棒状部21を構成する大径部22、小径部23は、プラッスッチック等の絶縁素材で形成され、キャップ24、25は、プラスッチックやゴム等の絶縁素材で形成されている。
【0033】
閉鎖用板状部材3は、
図7から
図9に示されるように、箱体101の外側から見て開口部104の左側の空域を閉鎖するためのものである。閉鎖用板状部材3は、例えば、板状のプラスチックダンボール等の絶縁素材で成る板状部材31に対し、上下方向に並行して延びる複数の折目L1からL4を形成して、最も左側(開口部104の周縁側)の折目L1では箱体101の外側から見て山折りにし、折目L1よりも右側(閉鎖用板状部材4側)の折目L2では箱体101の外側から見て谷折りにし、折目L2よりも右側(閉鎖用板状部材4側)の折目L3では箱体101の外側から見て山折りにすると共に、最も右側(閉鎖用板状部材4側)の折目L4では箱体101の外側から見て谷折りにすることで、山折りと谷折りとが交互に繰り返されたジグザク形状となっている。
【0034】
すなわち、閉鎖用板状部材3は、開口部104の周縁側面側から閉鎖用板状部材4側にかけて、平板状の端部31aと、V字状の山部31bと、平板状の連接部31cと、逆V字状の谷部31dと、平板状の連接部31eと、V字状の山部31fと、平板状の連接部31gと、逆V字状の谷部31hと、平板状の端部31iとが連接したものとなっている。端部31aは、山部31bから箱体101内に向かって斜めに延び、端部31iは、谷部31hから箱体101外に向かって斜めに延びたかたちとなっている。
【0035】
更に、端部31a、連接部31c、連接部31e、連接部31g及び端部31iに、それぞれ支持部材2の棒状部21が挿通可能な通孔32が同軸線上となるように形成されている。端部31iには下記する施錠器具10の線状部材12が挿通する通孔33が形成されている。
【0036】
そして、閉鎖用板状部材3は、折目L1から折目L4の形成にあたって切り込みを入れる等して、隣り合う山部31bと山部31f、隣り合う谷部31dと谷部31hとが遠近する方向に伸縮することが可能になっている。
【0037】
閉鎖用板状部材4は、閉鎖用板状部材3と対となるもので、
図7から
図9に示されるように、箱体101の外側から見て開口部104の右側の空域を閉鎖するために用いられる。閉鎖用板状部材4は、例えば、板状のプラスチックダンボール等の絶縁素材で成る板状部材41に対し、上下方向に並行して延びる複数の折目L5からL8を形成して、最も右側(開口部104の周縁側)の折目L5では箱体101の外側から見て山折りにし、折目L5よりも左側(閉鎖用板状部材3側)の折目L6では箱体101の外側から見て谷折りにし、折目L6よりも左側(閉鎖用板状部材3側)の折目L7では箱体101の外側から見て山折りにすると共に、最も左側(閉鎖用板状部材3側)の折目L8では箱体101の外側から見て谷折りにすることで、山折りと谷折りとが交互に繰り返されたジグザク形状となっている。
【0038】
すなわち、閉鎖用板状部材4は、開口部104の周縁側面側から閉鎖用板状部材3側にかけて、平板状の端部41aと、V字状の山部41bと、平板状の連接部41cと、逆V字状の谷部41dと、平板状の連接部41eと、V字状の山部41fと、平板状の連接部41gと、逆V字状の谷部41hと、平板状の端部41iとが連接したものとなっている。端部41aは、山部41bから箱体101内に向かって斜めに延び、端部41iは、谷部41hから箱体101外に向かって斜めに延びたかたちとなっている。すなわち、閉鎖用板状部材4の端部41iと閉鎖用板状部材3の端部31iとが合わさることでV字状の山部が形成される。
【0039】
更に、端部41a、連接部41c、連接部41e、連接部41g及び端部41iに、それぞれ支持部材2の棒状部21が挿通可能な通孔42が同軸線上(通孔32とも同軸線上)となるように形成されている。端部41iには下記する施錠器具10の線状部材12が挿通する通孔43が形成されている。
【0040】
そして、閉鎖用板状部材4は、折目L5から折目L8の形成にあたって切り込みを入れる等して、隣り合う山部41bと山部41f、隣り合う谷部41dと谷部41hとが遠近する方向に伸縮することが可能になっている。
【0041】
なお、閉鎖用板状部材3、4の山部、谷部の数は、2つずつとして図示し、且つ説明してきたが、端部31a、41aが山部31b、41bから箱体101内に向かって斜めに延び、端部31i,41iが谷部31h、41hから箱体101外に向かって斜めに延びたかたちとなっていれば、その数を特に問わない。
【0042】
閉鎖用板状部材3、4は、箱体101の開口部104の周縁側面に対し、
図5(a)に示されるように、固定器具6を介して着脱可能でありながら強固に固定されている。固定器具6は、この実施例では、鉄などの磁石が吸着することができる金属でなる箱体101に吸着することができる磁力の強い磁石62を有する基部61と、閉鎖用板状部材3、4の端部31a、41aに取り付けるための取付部63と、基部61と取付部63とを、取付部63が端部31a、41aの支持部材2に対する傾斜の変化に対応して揺動することが可能なように、揺動自在に連結する軸部64とでなる蝶番状のものとなっている。なお、固定器具6は、取付部63が基部61に対し折れ曲がりが可能な可撓性を有する素材で形成されている場合には、図示しないが、軸部64がなくてもよい。また。
図5(a)では、取付部63に閉鎖用板状部材3、4の端部31a、41aがワイヤ65で取り付けられている状態が示されているが、必ずしもこれに限定されず、磁石や接着剤等により取り付けられるようにしても良い。
【0043】
また、閉鎖用板状部材3の端部31iと閉鎖用板状部材4の端部41iとは、
図5(b)に示されるように、それぞれ端部31i、41iに設けられた磁石7、8により着脱自在に連結することができるようになっている。磁石7は、例えば磁極が正極のもので、閉鎖用板状部材3の端部31iの格納室102側の内側面に、磁石8の幅ほど谷部31h側に後退した位置にて配置されている。磁石8は、例えば磁極が負極のもので、閉鎖用板状部材4の端部41iの格納室102側の内側面に、閉鎖用板状部材3の厚みほど谷部41h側に後退した位置にて配置されている。磁石7、8の磁力は、閉鎖用板状部材3と閉鎖用板状部材4とを開閉するときの支障にならないように。固定器具6の磁石62よりも磁力が小さいことが好ましい。なお、磁石7を磁極が負極のものとし、磁石8を磁極が正極のものとしても良いことはもちろんである。
【0044】
そして、支持部材2は、箱体101の開口部104の周縁側面に対し、
図6に示されるように、支持部材取付具9を介して着脱可能でありながら強固に固定されている。支持部材取付具9は、この実施例では、鉄などの磁石が吸着することができる金属でなる箱体101に吸着することができる磁力の強い磁石92を有する基部91と、この基部91から突出した有底孔93aを有する円筒状の保持部93とで構成されている。有底孔93aの内径は、例えば支持部材2のキャップ25が圧入可能なようにキャップ25の外径よりも若干小さくなっていると共に、保持部93は、支持部材2のキャップ24が圧入可能なように可撓性を有する素材で形成されている。これにより、支持部材2は、棒状部21の両端が箱体101の開口部104の周縁側面に直接に当接して箱体101の開口部104の周縁側面間に架設する場合よりも、ずれたり落下したりすることなく、より確実かつ強固に架設することができる。
【0045】
上記した閉鎖器具1及び固定器具6、支持部材取付具9を用いて、箱体101の開口部104を閉鎖し、更に施錠する手順の一例について、
図7から
図9を用いて説明する。
【0046】
まず、
図7に示されるように、箱体101の開口部104の周縁側面の所望の高さの位置に支持部材取付具9、9を吸着させた後、閉鎖用板状部材3、4が予め挿通した状態の支持部材2の棒状部21の両端を、当該棒状部21を伸縮させてその全長を調整しつつ、支持部材取付具9、9の有底孔93aに圧入して、支持部材2を箱体101の開口部104の周縁側面間に架設する。
【0047】
次に、
図8に示されるように、閉鎖用板状部材3を、箱体101の開口部104の中央に向けて、隣り合う山部31bと山部31f、隣り合う谷部31dと谷部31hとが離れる方向に伸長させると共に、閉鎖用板状部材4を、箱体101の開口部104の中央に向けて、隣り合う山部41bと山部41f、隣り合う谷部41dと谷部41hとが離れる方向に伸長させる。ことのき、閉鎖用板状部材3、4の端部31a、41aは、開口部104の周縁側面に固定器具6により固定されているので、閉鎖用板状部材3及び閉鎖用板状部材4が全体的に開口部104側に寄ってしまうことが防止される。
【0048】
最後に、
図9に示されるように、施錠器具10の一方端が開放された状態のワイヤ状の線状部材12を端部31iの通孔33と端部41iの通孔43とに挿通させた後、線状部材12の開放端部を施錠器具10の本体11に挿入させて環状に固定することで、閉鎖用板状部材3と閉鎖用板状部材4が施錠される。なお、このとき、
図9に示されるように、例えば「この奥充電中」等の作業員に対する注意を促す語句が記載されたボード13の通孔14、14にも、線状部材12を通すことで、閉鎖用板状部材3、閉鎖用板状部材4の前面に前記注意を促す語句が記載されたボード13を配置することもできる。そして、閉鎖用板状部材3、4の端部31a、41aは、開口部104の周縁側面に固定器具6の強力な磁石62により強固に固定されているので、作業員が閉鎖用板状部材3、4の全体を開けてしまうことも抑制される。
【0049】
以上のように、閉鎖器具1で箱体101の開口部104が閉鎖され、更に施錠器具10で施錠されると共に、ボード13で作業員に対する注意も促すこともできるので、作業員が格納室102に誤って進入し、格納室102に露出した固定接触端子105に接触して、感電するのを抑止することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 スイッチギヤの箱体の開口部の閉鎖器具
2 支持部材
21 棒状部
3 閉鎖用板状部材(第1の閉鎖用板状部材)
31b、31f 山部
31d、31h 谷部
4 閉鎖用板状部材(第2の閉鎖用板状部材)
41b、41f 山部
41d、41h 谷部
6 固定器具
7 磁石
8 磁石
9 支持部材取付具
93a 有底孔(孔)
10 施錠器具
11 施錠器具の本体
12 線状部材
100 スイッチギヤ
101 箱体
102 格納室
104 開口部
105 固定接触端子
110 遮断器(引出式の遮断器)
113 可動接触端子