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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】シート面状支持体
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20221018BHJP
   A47C 7/28 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/28 A
A47C7/28 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019069675
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020168877
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 敦士
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-100974(JP,A)
【文献】特開2017-185880(JP,A)
【文献】特開2016-159007(JP,A)
【文献】特開2015-209079(JP,A)
【文献】特開2005-152482(JP,A)
【文献】実開昭55-025485(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0062758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/70 - 2/72
A47C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレーム間に架橋されて着座者を面状に支持するシート面状支持体であって、
面状の支持面を成す可撓性の面状部材と、
該面状部材の周縁部に取り付けられて前記シートフレームに引掛けられる引掛ワイヤと、を有し、
前記引掛ワイヤが、前記面状部材の周縁部に通される通し部と、該通し部の両端から折れ曲がり状に延びて前記シートフレームに着座表面側から引掛けられる一対のフック部と、当該一対のフック部のうちの一方のフック部の先端から他方のフック部の先端へ向けて延びる延長部と、をシームレスに有する1本のワイヤ部材から成り、前記延長部と前記他方のフック部との先端同士が互いに直接的に接合されない有端構造とされ
当該シート面状支持体が、更に、前記引掛ワイヤと前記シートフレームとの間に介在する樹脂部材を有し、
前記樹脂部材が、前記延長部と前記他方のフック部の先端とに跨って嵌合されてこれらを間接的に結合する結合部を有するシート面状支持体。
【請求項2】
シートフレーム間に架橋されて着座者を面状に支持するシート面状支持体であって、
面状の支持面を成す可撓性の面状部材と、
該面状部材の周縁部に取り付けられて前記シートフレームに引掛けられる引掛ワイヤと、を有し、
前記引掛ワイヤが、前記面状部材の周縁部に通される通し部と、該通し部の両端から折れ曲がり状に延びて前記シートフレームに着座表面側から引掛けられる一対のフック部と、当該一対のフック部のうちの一方のフック部の先端から他方のフック部の先端へ向けて延びる延長部と、をシームレスに有する1本のワイヤ部材から成り、前記延長部と前記他方のフック部との先端同士が互いに直接的に接合されない有端構造とされ、
前記引掛ワイヤが、前記面状部材の周縁部に沿って一対で設けられ、互いが並び方向に対称形状とされるシート面状支持体。
【請求項3】
請求項に記載のシート面状支持体であって、
各々の前記引掛ワイヤが、それぞれの前記他方のフック部が前記一方のフック部よりも外側に位置する形状とされるシート面状支持体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート面状支持体であって、
前記樹脂部材が、前記延長部と前記他方のフック部の先端との間に入り込む入り込み部を有するシート面状支持体。
【請求項5】
請求項から請求項4のいずれかに記載のシート面状支持体であって、
前記延長部が、シートカバーの周縁部に取り付けられた樹脂フックの引掛け部とされるシート面状支持体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート面状支持体であって、
当該シート面状支持体が、乗物用シートに適用されるシート面状支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート面状支持体に関する。詳しくは、シートフレーム間に架橋されて着座者を面状に支持するシート面状支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートにおいて、着座乗員を弾性的に支持するシートパッドが、枠状のシートフレーム間に架橋されたシート面状支持体によって裏側から面状に支持された構成が知られている(特許文献1)。具体的には、シート面状支持体は、布帛材等の可撓性の面状部材と、面状部材の周縁部をシートフレームに引掛ける引掛ワイヤと、を有する。上記引掛ワイヤは、面状部材の周縁部に沿って形成された筒状の通し口に通される通し部と、同通し部の通し口から出た先の両端部から折れ曲がってシートフレームの枠部に上側から引掛けられる一対の鉤状のフック部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-159007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、引掛ワイヤが1本の金属製のワイヤ部材を曲げ加工して両端部同士をかしめた構成とされるため、加工コストがかかる。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シート面状支持体のシートフレームに対する引掛構造の簡素化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシート面状支持体は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明は、シートフレーム間に架橋されて着座者を面状に支持するシート面状支持体である。このシート面状支持体は、面状の支持面を成す可撓性の面状部材と、面状部材の周縁部に取り付けられてシートフレームに引掛けられる引掛ワイヤと、を有する。引掛ワイヤが、面状部材の周縁部に通される通し部と、通し部の両端から折れ曲がり状に延びてシートフレームに着座表面側から引掛けられる一対のフック部と、一対のフック部のうちの一方のフック部の先端から他方のフック部の先端へ向けて延びる延長部と、をシームレスに有する1本のワイヤ部材から成り、延長部と他方のフック部との先端同士が互いに直接的に接合されない有端構造とされる。
【0007】
上記構成によれば、引掛ワイヤが、その着座者の荷重を受けやすい両フック部の基端同士が繋がる形状とされる一方、着座者の荷重を受けにくい両フック部の先端同士は繋がらない形状とされる。それにより、引掛ワイヤを端部同士をかしめない簡素な構成としながらも、高い構造強度を確保できる構成とすることができる。
【0008】
また、本発明は、更に次のように構成されていてもよい。シート面状支持体が、更に、引掛ワイヤとシートフレームとの間に介在する樹脂部材を有する。樹脂部材が、延長部と他方のフック部の先端とに跨って嵌合されてこれらを間接的に結合する結合部を有する。
【0009】
上記構成によれば、引掛ワイヤとシートフレームとの間に介在する樹脂部材を用いて、引掛ワイヤの互いに直接的に接合されない端部同士を間接的に結合することで、引掛ワイヤの構造強度を合理的に高めることができる。
【0010】
また、本発明は、更に次のように構成されていてもよい。引掛ワイヤが、面状部材の周縁部に沿って一対で設けられ、互いが並び方向に対称形状とされる。
【0011】
上記構成によれば、互いに並び方向の対称位置に非接合の各端部を持つ一対の引掛ワイヤによって、面状部材をバランス良く支持することができる。
【0012】
また、本発明は、更に次のように構成されていてもよい。各々の引掛ワイヤが、それぞれの他方のフック部が一方のフック部よりも外側に位置する形状とされる。
【0013】
上記構成によれば、各々の引掛ワイヤの非接合の各端部が着座者の荷重を受けにくい外側に位置することで、各引掛ワイヤにより着座者の荷重をより適切に支持することができる。
【0014】
また、本発明は、更に次のように構成されていてもよい。樹脂部材が、延長部と他方のフック部の先端との間に入り込む入り込み部を有する。
【0015】
上記構成によれば、樹脂部材を介した延長部と他方のフック部の先端との結合強度をより高めることができる。また、入り込み部により、引掛ワイヤの樹脂部材に対する誤組み付けを合理的に防止することができる。
【0016】
また、本発明は、更に次のように構成されていてもよい。延長部が、シートカバーの周縁部に取り付けられた樹脂フックの引掛け部とされる。
【0017】
上記構成によれば、着座者の荷重を受けにくい延長部を、シートカバーの周縁部を引掛けるための引掛け部として合理的に機能させることができる。
【0018】
また、本発明は、更に次のように構成されていてもよい。シート面状支持体が、乗物用シートに適用される。
【0019】
上記構成によれば、乗物用シートの着座者をシート面状支持体によって安定的に乗り心地良く支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係るシート面状支持体の概略構成を表した斜視図である。
図2】シート面状支持体をシートフレームから外した状態を表した分解斜視図である。
図3】シート面状支持体の分解斜視図である。
図4図3を後側から見た分解斜視図である。
図5】前側の引掛ワイヤの樹脂部材に対するセット方法を表した斜視図である。
図6】後側の引掛ワイヤの樹脂部材に対するセット方法を表した斜視図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8図1の要部を拡大して表した平面図である。
図9図8のIX部拡大図である。
図10図8のX部拡大図である。
図11図10のXI-XI線断面図である。
図12図8の側面図である。
図13図12のXIII部拡大図である。
図14図12のXIV部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
《第1の実施形態》
(シート面状支持体5の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシート面状支持体5の構成について、図1図14を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、後述するシート1の左右方向を指すものとする。
【0023】
本実施形態に係るシート面状支持体5は、図1に示すように、自動車の座席を成すシート1(乗物用シート)に適用されている。上記シート1は、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備える。シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、不図示のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に背凭れ角度の調節を行える状態に連結されている。シートクッション3は、車両のフロア上に、左右一対のスライドレール4を間に介して前後方向の位置調節を行える状態に連結されている。
【0024】
上記シートクッション3は、その骨格を成す平面視略枠状に組まれた金属製のクッションフレーム3Fと、クッションフレーム3Fの上部にセットされて着座者の荷重を弾性的に支持する発泡ウレタン製のクッションパッド3Pと、クッションパッド3Pの表面全体に被覆されてシートクッション3の意匠面を成すファブリック製のクッションカバー3Cと、を有する。上記クッションフレーム3Fの前後の枠部間には、クッションパッド3Pを下方から面状に支持するシート面状支持体5が架橋されている。ここで、クッションフレーム3Fが本発明の「シートフレーム」に相当し、クッションカバー3Cが本発明の「シートカバー」に相当する。
【0025】
(クッションフレーム3Fの構成について)
上記クッションフレーム3Fは、図2に示すように、左右一対の前後方向に立板状に延びるサイドフレーム3Faと、各サイドフレーム3Faの前端部間に一体的に架橋されたフロントパネル3Fbと、フロントパネル3Fbの後下側の位置で各サイドフレーム3Fa間に一体的に架橋されたフロントパイプ3Fcと、各サイドフレーム3Faの後端部間に一体的に架橋されたリヤパイプ3Fdと、によって平面視略枠状の形に組まれている。
【0026】
各サイドフレーム3Faは、それぞれ、前後方向に長尺な立板状のフレーム材から成り、シートクッション3の左右両サイドの側部骨格を成す。フロントパネル3Fbは、高さ方向に面を向ける板状のフレーム材から成り、シートクッション3の前部骨格を成す。フロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとは、それぞれ、シート幅方向にストレート状に延びる丸パイプ材から成り、各サイドフレーム3Fa間に貫通する形に架橋されて一体的に結合されている。
【0027】
上記構成により、クッションフレーム3Fは、平面視略枠状となる形に組まれて、その上部にセットされたクッションパッド3Pの外周部を下側から強く支持する。上記フロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとには、それらの両端部に、各側のスライドレール4に組み付けられたかさ上げ用のレッグ3Feが溶着されている。
【0028】
(クッションパッド3Pの構成について)
図1を参照して、クッションパッド3Pは、上記クッションフレーム3Fに上側から覆い被さる形にセットされている。詳しくは、上記クッションパッド3Pは、その前後左右の各周囲部が、それぞれ、クッションフレーム3Fを外周側から巻き込むように下方へと巻き込まれた形にセットされている。上記組み付けにより、クッションパッド3Pは、その外周部が枠状のクッションフレーム3Fによって下側から強く支えられると共に、中央部がクッションフレーム3Fの枠内に架橋されたシート面状支持体5によって下側から面状に弾性支持された状態にセットされる。
【0029】
(クッションカバー3Cの構成について)
クッションカバー3Cは、上記クッションパッド3Pに上側から覆い被さる形にセットされている。詳しくは、上記クッションカバー3Cは、その前後左右の各周縁部が、それぞれ、クッションパッド3Pとクッションフレーム3Fとを外周側から巻き込むように下方へと引き込まれた形にセットされている。上記組み付けにより、クッションカバー3Cは、上記クッションパッド3Pの表面全体に広く密着した形に張設され、かつ、クッションパッド3Pをクッションフレーム3F上に位置固定した状態にセットされる。
【0030】
(シート面状支持体5の構成について)
シート面状支持体5は、図1図4に示すように、平面視略矩形状にカットされたファブリック製の面状部材10と、面状部材10の前後側の各縁部に取り付けられてこれらをフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとにそれぞれ引掛ける金属製の各一対の引掛ワイヤ20A,20Bと、を有する。更に、シート面状支持体5は、上記各一対の引掛ワイヤ20A,20B間に跨って装着される樹脂部材30を有する。
【0031】
上記樹脂部材30は、図2に示すように、その前後部に各一対の引掛ワイヤ20A,20Bがそれぞれ引掛けられてユニット化されてから、これら引掛ワイヤ20A,20Bと共にフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとにそれぞれ引掛けられる構成とされる。上記組み付けにより、樹脂部材30は、前側一対の引掛ワイヤ20Aとフロントパイプ3Fcとの間、及び後側一対の引掛ワイヤ20Bとリヤパイプ3Fdとの間にそれぞれ介在して、金属同士の接触を防止する。以下、シート面状支持体5の各部の具体的な構成について詳しく説明する。
【0032】
(面状部材10の構成について)
面状部材10は、緯糸が伸張性の低いPET樹脂から成り、経糸が緯糸よりは伸張性のあるPTT樹脂から成る略均一な組織を持つ織物から成る。なお、面状部材10は、編み物から成るものであっても良い。上記面状部材10には、図3図4に示すように、その前後側の各縁部に、各縁部に沿ってシート幅方向に筒状に延びる通し口11,12が形成されている。これら通し口11,12は、面状部材10の各側の縁部が裏側に折り返されて筒状に縫い付けられることにより形成されている。上記面状部材10の各側の縁部には、それらのシート幅方向の中央部に、各側の通し口11,12を左右に分離させる形に切り抜く略矩形状の開口部11A,12Aが形成されている。
【0033】
(引掛ワイヤ20A,20Bの構成について)
引掛ワイヤ20A,20Bは、それぞれ、左右一対の構成とされている。前側の左右一対の引掛ワイヤ20Aは、それぞれ、面状部材10の前側の縁部に形成された左右の通し口11にそれぞれ通されて横並び状に設けられている。また、後側の左右一対の引掛ワイヤ20Bも、それぞれ、面状部材10の後側の縁部に形成された左右の通し口12にそれぞれ通されて横並び状に設けられている。
【0034】
具体的には、前側の左右一対の引掛ワイヤ20Aは、それぞれ、面状部材10の前側の対応する通し口11に通される通し部21Aと、通し部21Aの両端から前斜め上側へ折れ曲がり状に延びて下方へ鉤状に湾曲するフック部22Aと、をシームレスに有する1本のワイヤ部材から成る。各引掛ワイヤ20Aは、互いに左右対称な形状に形成されている。
【0035】
また、後側の左右一対の引掛ワイヤ20Bは、それぞれ、面状部材10の後側の対応する通し口12に通される通し部21Bと、通し部21Bの両端から後斜め上側へ折れ曲がり状に延びて下方へ鉤状に湾曲するフック部22Bと、シート幅方向の外側のフック部22Bの先端から内側のフック部22Bの先端へ向けて真っ直ぐ延びる延長部23Bと、をシームレスに有する1本のワイヤ部材から成る。上記延長部23Bと内側のフック部22Bの先端とは、互いに繋がっておらず、互いの間が開いた形状とされる。各引掛ワイヤ20Bは、互いに左右対称な形状に形成されている。
【0036】
(樹脂部材30の構成について)
図3図4に示すように、樹脂部材30は、前側の左右一対の引掛ワイヤ20Aがそれぞれ嵌合されるカラー部31と、後側の左右一対の引掛ワイヤ20Bがそれぞれ嵌合されるカラー部32と、これらカラー部31,32同士を一体に繋ぐ架橋部33と、を有する。上記樹脂部材30は、インジェクション成形により一体成形された樹脂成形品から成る。
【0037】
前側のカラー部31は、シート幅方向に延びる下向き開口の略半パイプ形状に形成されている。また、後側のカラー部32も、シート幅方向に延びる下向き開口の略半パイプ形状に形成されている。架橋部33は、上記前側のカラー部31の後側の縁部と後側のカラー部32の前側の縁部とを、平面略視梯子状の形で繋ぐ形状とされる。詳しくは、架橋部33は、図12に示すように側面視が略V字状に下方へ折れ曲がった形状とされ、前側のカラー部31と後側のカラー部32との間に架け渡される面状部材10との間に高さ方向の隙間を形成する形状とされる。
【0038】
図3図4に示すように、上記架橋部33には、その下部領域を通って配索される不図示のワイヤハーネスをクランプするための取付孔33Aが形成されている。また、上記架橋部33には、図1で前述したシートバック2の背裏面を被覆するバックカバーの下端側の縁部を不図示のゴムバンドにより引掛けて止着するための引掛部33Bが形成されている。
【0039】
(前側のカラー部31の構成について)
前側のカラー部31は、上記前側の左右一対の引掛ワイヤ20Aをそれぞれ左右対称状に引掛けて固定することのできる左右両縁側の受入凹部31Aと中央の受入凹部31Bとを有する。これら左右両縁側の受入凹部31A及び中央の受入凹部31Bは、それぞれ、半パイプ形状を成す前側のカラー部31の外周面上に各引掛ワイヤ20Aの鉤状のフック部22Aをそれぞれ側方から嵌め込んで装着することのできる凹形状を成す。
【0040】
具体的には、図5に示すように、左右両縁側の受入凹部31Aは、それぞれ、シート幅方向の外側に開口を向ける互いに左右対称な構成とされる。これら受入凹部31Aは、それぞれ、各引掛ワイヤ20Aの外側のフック部22Aをシート幅方向の外側から嵌め込むことで、それらの開口内に突出する爪部31Aaによって、各フック部22Aを抜け止めした状態に保持する構成とされる。これら受入凹部31Aは、各引掛ワイヤ20Aの外側のフック部22Aをシート幅方向の外側から嵌め込む構成とされることで、それらの天板を成す庇部31Abが各フック部22Aを上側から面状に覆う機能を果たす(図9参照)。
【0041】
それにより、各庇部31Abが、それらの上部にセットされるクッションパッド3P(図1参照)に下側から面状に当てられて、クッションパッド3Pを傷付けにくくなっている。また、図5に示すように、各受入凹部31Aには、それぞれ、内部に受け入れた各フック部22Aを上記爪部31Aaとの掛かり代を深める方向に詰める突起状のリブ31A3,31A4が形成されている。上記構成により、各受入凹部31Aは、それぞれ、内部に受け入れた各引掛ワイヤ20Aの外側のフック部22Aを外側に外さないように強く保持できるようになっている。上記爪部31Aa及びリブ31A3,31A4の具体的な構成については、後に図13を用いて詳しく説明することとする。
【0042】
また、図5に示すように、中央の受入凹部31Bは、シート幅方向の両外側に開口を向ける左右対称な一対の構成とされる。これら受入凹部31Bは、それぞれ、各引掛ワイヤ20Aの内側のフック部22Aをシート幅方向の外側から嵌め込むことで、それらの開口内に突出する爪部31Baによって、各フック部22Aを抜け止めした状態に保持する構成とされる。これら受入凹部31Bは、各引掛ワイヤ20Aの内側のフック部22Aをシート幅方向の外側から嵌め込む構成とされることで、それらの天板を成す庇部31Bbが各フック部22Aを上側から面状に覆う機能を果たす(図9参照)。
【0043】
それにより、各庇部31Bbが、それらの上部にセットされるクッションパッド3P(図1参照)に下側から面状に当てられて、クッションパッド3Pを傷付けにくくなっている。各庇部31Bbの間には、これらを互いに面一状の形に繋ぐように延びる天板部31B3が形成されている。同天板部31B3により、各庇部31Bbが互いの間に凹凸のない平坦な面形状とされて、それらの上部にセットされるクッションパッド3P(図1参照)をより傷付けにくくなっている。
【0044】
上記中央の各受入凹部31Bに形成された各爪部31Baは、詳しくは、各受入凹部31Bの下側(内周側)のガイド壁を成すカラー部31上の前後2箇所の位置から上側(外周側)に突出した形に形成されている。これら爪部31Baは、それらの周囲にU字状の切り込み31B1が入れられて、カラー部31に対して厚さ方向に単独で片持ち状に撓める構成とされている。それにより、各爪部31Baは、上記中央の各受入凹部31Bに各引掛ワイヤ20Aの内側のフック部22Aが側方から押し込まれる力により、比較的容易にカラー部31の下側(内周側)へ撓んでその力を逃がす。
【0045】
そして、各爪部31Baは、各受入凹部31Bに各フック部22Aが受け入れられることにより、それらの弾発力により初期状態に復元する。このように、各爪部31Baがそれらの周囲に入れられた切り込み31B1によって撓みやすい構成とされていることで、各フック部22Aを各受入凹部31B内に比較的軽い力で組み付けることができる。しかし、そのような構成であっても、各爪部31Baは、前側のカラー部31が各引掛ワイヤ20Aと共に図2で前述したフロントパイプ3Fcに引掛けられることにより、各フック部22Aを外側に外さない強い抜け止め力を発揮できるようになっている。
【0046】
その理由は、前側のカラー部31がフロントパイプ3Fcに引掛けられることにより、各爪部31Baがフロントパイプ3Fcの外周面上に底付きして、下側(内周側)への撓みが規制されるためである。上記各爪部31Baには、それらのフロントパイプ3Fcに当てられる底面上に突出形状のリブ31B2が形成されている。これらリブ31B2は、前側のカラー部31がフロントパイプ3Fcに引掛けられることで、フロントパイプ3Fcの外周面上に当たり、それによって各爪部31Baを底上げして各受入凹部31Bの開口を狭めた状態に保持するものとなっている。これらリブ31B2を備えた各爪部31Baの構成は、図6図7及び図11で後述する後側のカラー部32に形成された各爪部32Baの構成と同一となっている。
【0047】
(後側のカラー部32の構成について)
図3図4に示すように、後側のカラー部32も、上記前側のカラー部31と同様に、後側の左右一対の引掛ワイヤ20Bをそれぞれ左右対称状に引掛けて固定することのできる左右両縁側の受入凹部32Aと中央の受入凹部32Bとを有する。これら左右両縁側の受入凹部32A及び中央の受入凹部32Bは、それぞれ、半パイプ形状を成す後側のカラー部32の外周面上に各引掛ワイヤ20Bの鉤状のフック部22Bをそれぞれ側方から嵌め込んで装着することのできる凹形状を成す。
【0048】
具体的には、図6に示すように、左右両縁側の受入凹部32Aは、それぞれ、シート幅方向の外側に開口を向ける互いに左右対称な構成とされる。これら受入凹部32Aは、それぞれ、各引掛ワイヤ20Bの外側のフック部22Bをシート幅方向の外側から嵌め込むことで、それらの開口内に突出する爪部32Aaによって、各フック部22Bを抜け止めした状態に保持する構成とされる。また、各受入凹部32Aには、それぞれ、内部に受け入れた各フック部22Bを上記爪部32Aaとの掛かり代を深める方向に詰める突起状のリブ32A3,32A4が形成されている。上記構成により、各受入凹部32Aは、それぞれ、内部に受け入れた各引掛ワイヤ20Bの外側のフック部22Bを外側に外さないように強く保持できるようになっている。上記爪部32Aa及びリブ32A3,32A4の具体的な構成については、後に図14を用いて詳しく説明することとする。
【0049】
また、図6に示すように、中央の受入凹部32Bは、シート幅方向の両外側に開口を向ける左右対称な一対の構成とされる。これら受入凹部32Bは、それぞれ、各引掛ワイヤ20Bの内側のフック部22Bをシート幅方向の外側から嵌め込むことで、それらの開口内に突出する爪部32Baによって、各フック部22Bを抜け止めした状態に保持する構成とされる。これら受入凹部32Bは、各引掛ワイヤ20Bの内側のフック部22Bをシート幅方向の外側から嵌め込む構成とされることで、それらの天板を成す庇部32Bbが各フック部22Bを上側から面状に覆う機能を果たす(図10参照)。
【0050】
それにより、各庇部32Bbが、それらの上部にセットされるクッションパッド3P(図1参照)に下側から面状に当てられて、クッションパッド3Pを傷付けにくくなっている。各庇部32Bbの間には、これらを互いに面一状の形に繋ぐように延びる天板部32B3が形成されている。同天板部32B3により、各庇部32Bbが互いの間に凹凸のない平坦な面形状とされて、それらの上部にセットされるクッションパッド3P(図1参照)をより傷付けにくくなっている。
【0051】
図6に示すように、上記中央の各受入凹部32Bに形成された各爪部32Baは、詳しくは、各受入凹部32Bの下側(内周側)のガイド壁を成すカラー部32上の着座表面側に最も張り出す湾曲の頂点P付近の位置から上側(外周側)に突出した形に形成されている。これら爪部32Baは、それらの周囲にU字状の切り込み32B1が入れられて、カラー部32に対して厚さ方向に単独で片持ち状に撓める構成とされている。それにより、各爪部32Baは、図7に示すように、上記中央の各受入凹部32Bに各引掛ワイヤ20Bの内側のフック部22Bが側方から押し込まれる力により、比較的容易にカラー部32の下側(内周側)へ撓んでその力を逃がす。
【0052】
そして、各爪部32Baは、各受入凹部32Bに各フック部22Bが受け入れられることにより、それらの弾発力により初期状態に復元する。このように、各爪部32Baがそれらの周囲に入れられた切り込み32B1によって撓みやすい構成とされていることで、各フック部22Bを各受入凹部32B内に比較的軽い力で組み付けることができる。しかし、そのような構成であっても、各爪部32Baは、後側のカラー部32が各引掛ワイヤ20Bと共に図2で前述したリヤパイプ3Fdに引掛けられることにより、各フック部22Bを外側に外さない強い抜け止め力を発揮できるようになっている。
【0053】
その理由は、図11に示すように、後側のカラー部32がフロントパイプ3Fcに引掛けられることにより、各爪部32Baがリヤパイプ3Fdの外周面上に底付きして、下側(内周側)への撓みが規制されるためである。上記各爪部32Baには、それらのリヤパイプ3Fdに当てられる底面上に突出形状のリブ32B2が形成されている。これらリブ32B2は、後側のカラー部32がリヤパイプ3Fdに引掛けられることで、リヤパイプ3Fdの外周面上に当たり、それによって各爪部32Baを底上げして各受入凹部32Bの開口を狭めた状態に保持するものとなっている。
【0054】
ところで、図4に示すように、上記左右両縁側の受入凹部32Aには、各引掛ワイヤ20Bの内側のフック部22Bの先端から外側へ延びる延長部23Bの先端を下方からスナップフィット嵌合させて固定することのできる結合部32Abが形成されている。上記各結合部32Abに各引掛ワイヤ20Bの延長部23Bを固定することにより、各引掛ワイヤ20Bは、それらの互いに離間した延長部23Bと外側のフック部22Bとが後側のカラー部32を介して間接的に結合されている。上記結合により、有端状に形成された各引掛ワイヤ20Bの構造強度が適切に高められている。
【0055】
上記各結合部32Abに結合された各引掛ワイヤ20Bの延長部23Bには、図12に示すように、図1で前述したクッションカバー3Cの後側の縁部に取り付けられた樹脂フック3Ca(Jフック)が後側から引き込まれて引掛けられる。同引掛けにより、クッションカバー3Cの後側の縁部が、高い構造強度を持つ各引掛ワイヤ20Bの延長部23Bにより安定して支えられるようになっている。
【0056】
また、図4及び図14に示すように、上記左右両縁側の受入凹部32Aの後端には、各受入凹部32Aに嵌合される各引掛ワイヤ20Bの外側のフック部22Bの先端と結合部32Abに下側から嵌合される延長部23Bの先端との間に入り込む形に突出する入り込み部32Acが形成されている。これら入り込み部32Acは、図4に示す左側の引掛ワイヤ20Bと右側の引掛ワイヤ20Bとがそれぞれ間違った側の受入凹部32Aに組み付けられることがあった場合に、フック部22Bと延長部23Bとが繋がっている部分が左右両縁側の受入凹部32Aに誤って嵌め込まれることを阻止する誤組付け防止部として機能する。
【0057】
(前側のカラー部31の爪部31Aa及びリブ31A3,31A4の構成について)
次に、図13を参照しながら、前述した前側のカラー部31の左右両縁側の受入凹部31Aに形成された爪部31Aa及びリブ31A3,31A4の構成について説明する。すなわち、爪部31Aaは、鉤状に湾曲した受入凹部31Aの外周部を成す庇部31Abから開口内に突出する第1突起31A1と、受入凹部31Aの内周部を成すカラー部31から開口内に突出する第2突起31A2と、を有する。第1突起31A1は、鉤状に湾曲した受入凹部31Aの着座表面側に最も張り出す頂点Pにおいて庇部31Abから開口内に突出する形状とされる。また、第2突起31A2は、鉤状に湾曲した受入凹部31Aの湾曲の基端を越えた直線部分においてカラー部31から開口内に突出する形状とされる。
【0058】
リブ31A3は、鉤状に湾曲した受入凹部31A内の湾曲の先端付近においてカラー部31上から受入凹部31A内に膨出する形状とされる。また、リブ31A4は、鉤状に湾曲した受入凹部31A内の湾曲の基端を越えた直線部分、詳しくは第2突起31A2よりも後側の領域において庇部31Ab上から受入凹部31A内に膨出する形状とされる。
【0059】
前者のリブ31A3は、受入凹部31A内にセットされたフック部22Aの先端を内周側から外周側へ押し上げて、フック部22Aの湾曲の頂点Pから先の部分と第1突起31A1とのラップ量(掛かり代)を深めるように作用する。また、後者のリブ31A4は、受入凹部31A内にセットされたフック部22Aの基端側の領域を外周側から内周側へ押し下げて、フック部22Aの湾曲の頂点Pから基側の部分と第2突起31A2とのラップ量(掛かり代)を深めるように作用する。
【0060】
上記フック部22Aは、上記前側のカラー部31を介してフロントパイプ3Fcに引掛けられた状態から面状部材10に着座者の荷重が掛けられると、同フック部22Aを下側から支えるフロントパイプ3Fcを支点に、その基端側の部分が下方に押し込まれるように力を受け、先端側の部分が鉤形状を前側に押し開かれるように力を受ける。しかし、フック部22Aは、上記の各力によって前側のカラー部31に対して鉤形状を広げる形を変形しても、第1突起31A1及び第2突起31A2と深く掛かり合った状態を維持して、外側に抜けないようになっている。
【0061】
上記第1突起31A1及び第2突起31A2は、それぞれ、上記のような作用をするものであるから、次のような位置に形成されていれば良い。すなわち、第1突起31A1は、鉤状に湾曲した受入凹部31Aにおけるフック部22Aの着座表面側に最も張り出す頂点Pと先端との間の第1湾曲部R1を受け入れる第1領域A1内であれば、どの位置の外周部たる庇部31Abから開口内に張り出すように形成されていても良い。また、第2突起31A2は、鉤状に湾曲した受入凹部31Aにおけるフック部22Aの着座表面側に最も張り出す頂点Pから基側の領域である第2湾曲部R2を受け入れる第2領域A2内であれば、どの位置の内周部たるカラー部31から開口内に張り出すように形成されていても良い。
【0062】
上記各引掛ワイヤ20Aは、図9に示すように、面状部材10に着座者の荷重が掛けられた際、両フック部22Aが互いにシート幅方向に開かれる力を受ける。しかし、上記の力に対して、各引掛ワイヤ20Aは、それらのシート幅方向の内側のフック部22Aが中央の各受入凹部31Aによりシート幅方向の内側から適切に支えられる。また、各引掛ワイヤ20Aのシート幅方向の内側のフック部22Aは、左右両縁側の受入凹部31Aに形成された爪部31Aaによりシート幅方向の外側から適切に支えられる。したがって、各引掛ワイヤ20Aは、上記の荷重を受けても、各フック部22Aがシート幅方向に開かれないよう保持される。
【0063】
(後側のカラー部32の爪部32Aa及びリブ32A3,32A4の構成について)
次に、図14を参照しながら、前述した後側のカラー部32の左右両縁側の受入凹部32Aに形成された爪部32Aa及びリブ32A3,32A4の構成について説明する。すなわち、爪部32Aaは、鉤状に湾曲した受入凹部32Aの外周部を成す庇部32Bbから開口内に突出する第1突起32A1と、受入凹部32Aの内周部を成すカラー部32から開口内に突出する第2突起32A2と、を有する。第1突起32A1は、鉤状に湾曲した受入凹部32Aの先端の庇部32Bbから開口内に突出する形状とされる。また、第2突起32A2は、鉤状に湾曲した受入凹部32Aの湾曲の基端を越えた直線部分においてカラー部32から開口内に突出する形状とされる。
【0064】
リブ32A3は、鉤状に湾曲した受入凹部32A内の湾曲の先端付近においてカラー部32上から受入凹部32A内に膨出する形状とされる。また、リブ32A4は、鉤状に湾曲した受入凹部32A内の湾曲の基端を越えた直線部分、詳しくは第2突起32A2よりも前側の領域において庇部32Bb上から受入凹部32A内に膨出する形状とされる。
【0065】
前者のリブ32A3は、受入凹部32A内にセットされたフック部22Bの先端を内周側から外周側へ押し上げて、フック部22Bの湾曲の頂点Pから先の部分と第1突起32A1とのラップ量(掛かり代)を深めるように作用する。また、後者のリブ32A4は、受入凹部32A内にセットされたフック部22Bの基端側の領域を外周側から内周側へ押し下げて、フック部22Bの湾曲の頂点Pから基側の部分と第2突起32A2とのラップ量(掛かり代)を深めるように作用する。
【0066】
上記フック部22Bは、上記後側のカラー部32を介してリヤパイプ3Fdに引掛けられた状態から面状部材10に着座者の荷重が掛けられると、同フック部22Bを下側から支えるリヤパイプ3Fdを支点に、その基端側の部分が下方に押し込まれるように力を受け、先端側の部分が鉤形状を後側に押し開かれるように力を受ける。しかし、フック部22Bは、上記の各力によって後側のカラー部32に対して鉤形状を広げる形を変形しても、第1突起32A1及び第2突起32A2と深く掛かり合った状態を維持して、外側に抜けないようになっている。
【0067】
上記第1突起32A1及び第2突起32A2は、それぞれ、上記のような作用をするものであるから、次のような位置に形成されていれば良い。すなわち、第1突起32A1は、鉤状に湾曲した受入凹部32Aにおけるフック部22Bの着座表面側に最も張り出す頂点Pと先端との間の第1湾曲部R1を受け入れる第1領域A1内であれば、どの位置の外周部たる庇部32Bbから開口内に張り出すように形成されていても良い。また、第2突起32A2は、鉤状に湾曲した受入凹部32Aにおけるフック部22Bの着座表面側に最も張り出す頂点Pから基側の領域である第2湾曲部R2を受け入れる第2領域A2内であれば、どの位置の内周部たるカラー部32から開口内に張り出すように形成されていても良い。
【0068】
上記各引掛ワイヤ20Bは、図10に示すように、面状部材10に着座者の荷重が掛けられた際、主として、面状部材10に通された通し部21Bと、リヤパイプ3Fdに引掛けられた各フック部22Bと、に引張り方向の荷重が掛けられる。詳しくは、各フック部22Bには、それらのリヤパイプ3Fdにより支えられた頂点Pより基側の領域に主として引張り方向の荷重が大きく掛けられ、頂点Pから先の領域には特段大きな荷重は掛けられない。したがって、上記先側の領域に各引掛ワイヤ20Bの有端部(延長部23Bの先端と外側のフック部22Bの先端)が位置する構成とされることで、各引掛ワイヤ20Bの強度を確保しつつ、各引掛ワイヤ20Bをかしめのない簡素な構成とすることができる。
【0069】
より詳しくは、各引掛ワイヤ20Bは、面状部材10に着座者の荷重が掛けられた際、主として、シート幅方向の内側のフック部22Bに外側のフック部22Bよりも大きな荷重が掛けられる。したがって、上記各引掛ワイヤ20Bの有端部(延長部23Bの先端と外側のフック部22Bの先端)がシート幅方向の外側に位置する構成とされることで、各引掛ワイヤ20Bの強度をより適切に確保することができる。
【0070】
また、上記各引掛ワイヤ20Bは、上記着座者の荷重を受けた際、両フック部22Bが互いにシート幅方向に開かれる力を受ける。しかし、上記の力に対して、各引掛ワイヤ20Bは、それらのシート幅方向の内側のフック部22Bが中央の各受入凹部32Aによりシート幅方向の内側から適切に支えられる。また、各引掛ワイヤ20Bのシート幅方向の内側のフック部22Bは、左右両縁側の受入凹部32Aに形成された爪部32Aaによりシート幅方向の外側から適切に支えられる。したがって、各引掛ワイヤ20Bは、上記の荷重を受けても、各フック部22Bがシート幅方向に開かれないよう保持される。
【0071】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシート面状支持体5は、次のような構成となっている。すなわち、シートフレーム(3F)間に架橋されて着座者を面状に支持するシート面状支持体(5)であって、面状の支持面を成す可撓性の面状部材(10)と、面状部材(10)の周縁部に取り付けられてシートフレーム(3F)に引掛けられる引掛ワイヤ(20B)と、を有する。
【0072】
引掛ワイヤ(20B)が、面状部材(10)の周縁部に通される通し部(21B)と、通し部(21B)の両端から折れ曲がり状に延びてシートフレーム(3F)に着座表面側から引掛けられる一対のフック部(22B)と、一対のフック部(22B)のうちの一方のフック部(22B)の先端から他方のフック部(22B)の先端へ向けて延びる延長部(23B)と、をシームレスに有する1本のワイヤ部材から成り、延長部(23B)と他方のフック部(22B)との先端同士が互いに直接的に接合されない有端構造とされる。
【0073】
上記構成によれば、引掛ワイヤ(20B)が、その着座者の荷重を受けやすい両フック部(22B)の基端同士が繋がる形状とされる一方、着座者の荷重を受けにくい両フック部(22B)の先端同士は繋がらない形状とされる。それにより、引掛ワイヤ(20B)を端部同士をかしめない簡素な構成としながらも、高い構造強度を確保できる構成とすることができる。
【0074】
また、シート面状支持体(5)が、更に、引掛ワイヤ(20B)とシートフレーム(3F)との間に介在する樹脂部材(30)を有する。樹脂部材(30)が、延長部(23B)と他方のフック部(22B)の先端とに跨って嵌合されてこれらを間接的に結合する結合部(32Ab)を有する。上記構成によれば、引掛ワイヤ(20B)とシートフレーム(3F)との間に介在する樹脂部材(30)を用いて、引掛ワイヤ(20B)の互いに直接的に接合されない端部同士を間接的に結合することで、引掛ワイヤ(20B)の構造強度を合理的に高めることができる。
【0075】
また、引掛ワイヤ(20B)が、面状部材(10)の周縁部に沿って一対で設けられ、互いが並び方向に対称形状とされる。上記構成によれば、互いに並び方向の対称位置に非接合の各端部を持つ一対の引掛ワイヤ(20B)によって、面状部材(10)をバランス良く支持することができる。
【0076】
また、各々の引掛ワイヤ(20B)が、それぞれの他方のフック部(22B)が一方のフック部(22B)よりも外側に位置する形状とされる。上記構成によれば、各々の引掛ワイヤ(20B)の非接合の各端部が着座者の荷重を受けにくい外側に位置することで、各引掛ワイヤ(20B)により着座者の荷重をより適切に支持することができる。
【0077】
また、樹脂部材(30)が、延長部(23B)と他方のフック部(22B)の先端との間に入り込む入り込み部(32Ac)を有する。上記構成によれば、樹脂部材(30)を介した延長部(23B)と他方のフック部(22B)の先端との結合強度をより高めることができる。また、入り込み部(32Ac)により、引掛ワイヤ(20B)の樹脂部材(30)に対する誤組み付けを合理的に防止することができる。
【0078】
また、延長部(23B)が、シートカバー(3C)の周縁部に取り付けられた樹脂フック(3Ca)の引掛け部とされる。上記構成によれば、着座者の荷重を受けにくい延長部(23B)を、シートカバー(3C)の周縁部を引掛けるための引掛け部として合理的に機能させることができる。
【0079】
また、シート面状支持体(5)が、乗物用シート(1)に適用される。上記構成によれば、乗物用シート(1)の着座者をシート面状支持体(5)によって安定的に乗り心地良く支持することができる。
【0080】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
【0081】
1.本発明のシート面状支持体は、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、シート面状支持体は、乗物用シートの他、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の各施設に設置される観覧席や、マッサージシート等の様々なシートにも広く適用することができるものである。また、シート面状支持体は、着座部となるシートクッションの他、背凭れ部となるシートバックにも適用可能である。
【0082】
2.シート面状支持体は、シートフレーム間に縦方向(シートクッションにおける前後方向、シートバックにおける上下方向)に架橋されるものの他、シート幅方向に架橋されるものであってもよい。面状の支持面を成す可撓性の面状部材は、皮革材等のファブリック材以外の可撓性の面材から成るものであってもよい。また、引掛ワイヤは、面状部材の周縁部に沿って一対で設けられるものの他、1つ又は3つ以上で設けられるものであっても良い。その場合、各々の引掛ワイヤは互いに並び方向に対称形状となるものでなくても構わない。
【0083】
3.引掛ワイヤの引掛けられるシートフレームは、角パイプや板材等の丸パイプ以外のフレーム材から成るものであってもよい。また、シートフレームは、例えば、シートリフタを構成するリフタリンク同士を連結する丸パイプとして構成されていて、引掛ワイヤに対して回転するように構成されたものであっても良い。引掛ワイヤの非接合の端部同士は、必ずしも樹脂部材によって間接的に結合されていなくても良く、それぞれが自由端となって設けられる構成であっても良い。
【0084】
4.樹脂部材は、引掛ワイヤに一体成形されて形成されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0085】
1 シート(乗物用シート)
2 シートバック
3 シートクッション
3F クッションフレーム(シートフレーム)
3Fa サイドフレーム
3Fb フロントパネル
3Fc フロントパイプ
3Fd リヤパイプ
3Fe レッグ
3P クッションパッド
3C クッションカバー(シートカバー)
3Ca 樹脂フック
4 スライドレール
5 シート面状支持体
10 面状部材
11 通し口
11A 開口部
12 通し口
12A 開口部
20A 引掛ワイヤ
21A 通し部
22A フック部
20B 引掛ワイヤ
21B 通し部
22B フック部
23B 延長部
30 樹脂部材
31 カラー部
31A 受入凹部
31Aa 爪部
31A1 第1突起
31A2 第2突起
31A3 リブ
31A4 リブ
31Ab 庇部
31B 受入凹部
31Ba 爪部
31B1 切り込み
31B2 リブ
31Bb 庇部
31B3 天板部
32 カラー部
32A 受入凹部
32Aa 爪部
32A1 第1突起
32A2 第2突起
32A3 リブ
32A4 リブ
32Ab 結合部
32Ac 入り込み部
32B 受入凹部
32Ba 爪部
32B1 切り込み
32B2 リブ
32Bb 庇部
32B3 天板部
33 架橋部
33A 取付孔
33B 引掛部
P 頂点
A1 第1領域
A2 第2領域
R1 第1湾曲部
R2 第2湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14