(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】制動力回生システム
(51)【国際特許分類】
F15B 21/14 20060101AFI20221018BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20221018BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20221018BHJP
B66F 9/22 20060101ALI20221018BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20221018BHJP
B62D 5/065 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F15B21/14 B
B60T13/138 Z
B60T13/68
B66F9/22 X
B66F9/24 W
B62D5/065 B
(21)【出願番号】P 2019074844
(22)【出願日】2019-04-10
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小島 直己
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159131(JP,A)
【文献】特開平04-056615(JP,A)
【文献】特開2003-341505(JP,A)
【文献】特開平01-197166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/14
B60T 13/138
B60T 13/68
B66F 9/22
B66F 9/24
B62D 5/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧により動作する負荷機構に接続されるとともに作動油が流れる油路と、
前記負荷機構が前記油路の下流に設けられているとして、前記油路において前記負荷機構と反対側である前記油路の上流に設けられ、前記作動油が貯留されているタンクと、
前記油路の下流に設けられ、前記負荷機構と前記タンクとの間に設けられているアキュムレータと、
車輪に連結される駆動軸に対して連結されている状態において前記駆動軸の回転に応じて動作するとともに前記タンクに貯留されている前記作動油を前記油路の下流に向けて吐出するポンプを含み、且つ前記油路において前記タンクと前記アキュムレータとの間に設けられるとともに車輪へ制動力を発生させるときに前記アキュムレータに向けて流れる前記作動油の流量を、車輪へ制動力を発生させないときに前記アキュムレータに向けて流れる前記作動油の流量よりも増大させる流量調整部と、
前記油路において前記流量調整部と前記アキュムレータとの間に設けられ、前記アキュムレータから前記流量調整部に向けての前記作動油の逆流を防止する逆止弁と、を備え
、
前記流量調整部が前記アキュムレータに向けて流れる前記作動油の流量を増大させたとき、前記油路における前記流量調整部と前記アキュムレータとの間を流れる前記作動油の油圧が高くなり、前記ポンプが動作し難くなることに伴って前記駆動軸が回転し難くなることにより車輪へ制動力を発生させることを特徴とする制動力回生システム。
【請求項2】
前記流量調整部は、
前記駆動軸に連結されていることにより前記駆動軸の回転に応じて動作する前記ポンプとしての固定容量ポンプと、
前記固定容量ポンプから吐出された前記作動油の油圧に応じて前記作動油を前記タンクに返送するリリーフ弁と、を備え、
前記油路は、
前記タンク、前記固定容量ポンプ、前記逆止弁、前記アキュムレータ、及び前記負荷機構の順に前記作動油が流れるための送出油路と、
前記送出油路における前記固定容量ポンプと前記逆止弁との間の中間油路、及び前記タンクの間を接続するとともに前記リリーフ弁が設けられる返送油路と、を有し、
前記リリーフ弁は、
車輪へ制動力を発生させないときに前記返送油路を流れる前記作動油が前記タンクに返送されるように設定された第1設定圧と、車輪へ制動力を発生させないときと比較して前記返送油路を流れる前記作動油が前記タンクに返送され難くなるように前記第1設定圧よりも高い圧力で設定された第2設定圧とを切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の制動力回生システム。
【請求項3】
前記流量調整部は、
前記駆動軸に連結されていることにより前記駆動軸の回転に応じて動作する前記ポンプとしての可変容量ポンプにより構成され、
前記可変容量ポンプは、車輪へ制動力を発生させないときに前記タンクに貯留されている前記作動油を前記油路の下流に向けて吐出させず、車輪へ制動力を発生させるときに前記タンクに貯留されている前記作動油を前記油路の下流に向けて吐出させることを特徴とする請求項1に記載の制動力回生システム。
【請求項4】
前記流量調整部は、
前記ポンプとしての固定容量ポンプと、
車輪へ制動力を発生させないときに前記固定容量ポンプと前記駆動軸とを分離させる分離状態と、車輪へ制動力を発生させるときに前記固定容量ポンプと前記駆動軸とを連結させる連結状態とを切り替えるクラッチと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の制動力回生システム。
【請求項5】
前記油路は、
前記タンク、前記ポンプ、前記逆止弁、前記アキュムレータ、及び前記負荷機構の順に前記作動油が流れる送出油路と、
前記送出油路における前記ポンプと前記逆止弁との間の中間油路、及び前記タンクの間を接続する返送油路と、を有し、
前記返送油路には、オリフィス又はリリーフ弁が設けられている請求項3又は請求項4に記載の制動力回生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動力回生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるような産業車両が知られている。
上記の産業車両は、フォークリフトであり、フォークに載置された荷物をフォークとともに昇降するための荷役油圧機構と、車輪を操舵するためのステアリング油圧機構とが搭載されている。荷役油圧機構及びステアリング油圧機構は、油圧により動作する負荷機構の一例である。
【0003】
また、上記の産業車両は、ドラム式ブレーキを有している。一般的にドラム式ブレーキは、車輪に連結される車軸に連結されている円筒状のブレーキドラムと、ブレーキドラムの内部に配置されているブレーキシューとを有している。ドラム式ブレーキでは、車輪へ制動力を発生させるとき、ブレーキシューをブレーキドラムの内周面に接触させることによりブレーキドラムとブレーキシューとを摩擦させる。すなわち、ドラム式ブレーキでは、ブレーキドラムの回転による運動エネルギーをブレーキドラムとブレーキシューとの摩擦により発生する熱エネルギーに変換することにより車輪へ制動力を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、産業車両において制動力を発生させるとき、ドラム式ブレーキにて発生する熱エネルギーは大気中に放出され、産業車両の動作に対して有効な仕事をしない。このことに鑑みて、産業車両の制動時に発生するエネルギーを例えば上記負荷機構の動作の補助として使用する検討がなされている。
【0006】
本発明の目的は、車両の制動時に発生するエネルギーにより車両に搭載される負荷機構の動作を補助できる制動力回生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する制動力回生システムは、油圧により動作する負荷機構に接続されるとともに作動油が流れる油路と、前記負荷機構が前記油路の下流に設けられているとして、前記油路において前記負荷機構と反対側である前記油路の上流に設けられ、前記作動油が貯留されているタンクと、前記油路の下流に設けられ、前記負荷機構と前記タンクとの間に設けられているアキュムレータと、車輪に連結される駆動軸に対して連結されている状態において前記駆動軸の回転に応じて動作するとともに前記タンクに貯留されている前記作動油を前記油路の下流に向けて吐出するポンプを含み、且つ前記油路において前記タンクと前記アキュムレータとの間に設けられるとともに車輪へ制動力を発生させるときに前記アキュムレータに向けて流れる前記作動油の流量を、車輪へ制動力を発生させないときに前記アキュムレータに向けて流れる前記作動油の流量よりも増大させる流量調整部と、前記油路において前記流量調整部と前記アキュムレータとの間に設けられ、前記アキュムレータから前記流量調整部に向けての前記作動油の逆流を防止する逆止弁と、を備える。
【0008】
これによれば、車輪へ制動力を発生させるときに流量調整部によりアキュムレータに向けての作動油の流量が増大する。そして、アキュムレータには、作動油の油圧が蓄積され、流量調整部とアキュムレータとの間の油路を流れる作動油の油圧が高くなる。そのため、流量調整部のポンプは、作動油の油圧により動作し難くなる。車輪へ制動力を発生させるときにポンプと駆動軸とは連結されている状態であることから、作動油の油圧によりポンプが動作し難くなることで駆動軸が回転し難くなる。すなわち、流量調整部とアキュムレータとの間の油路に流れる作動油の油圧が高くなることで車輪へ制動力を発生させることができる。
【0009】
また、車輪へ制動力を発生させている状態から当該制動力を発生させない状態に移行したとき、アキュムレータに蓄積された作動油の油圧が流量調整部に向けて逆流する虞がある。しかし、流量調整部とアキュムレータとの間には、アキュムレータから流量調整部に向けての作動油の逆流を防止する逆止弁が設けられている。そのため、車輪へ制動力を発生させない状態においてポンプに向けて作動油が逆流してしまい、当該制動力を発生させない状態であるのに関わらず、当該制動力が発生してしまうことを防止できる。そして、アキュムレータは、車両の制動時に蓄積された油圧を維持することができる。すなわち、車両の制動時に発生する油圧エネルギーを蓄積した状態に維持できる。そして、油路の下流に設けられている例えば荷役油圧機構やステアリング油圧機構のように油圧により動作する負荷機構が動作するとき、アキュムレータに蓄積された作動油の油圧を負荷機構に放出することができる。したがって、車両の制動時に発生するエネルギーにより車両に搭載される負荷機構の動作を補助できる。
【0010】
上記の制動力回生システムにおいて、前記流量調整部は、前記駆動軸に連結されていることにより前記駆動軸の回転に応じて動作する前記ポンプとしての固定容量ポンプと、前記固定容量ポンプから吐出された前記作動油の油圧に応じて前記作動油を前記タンクに返送するリリーフ弁と、を備え、前記油路は、前記タンク、前記固定容量ポンプ、前記逆止弁、前記アキュムレータ、及び前記負荷機構の順に前記作動油が流れるための送出油路と、前記送出油路における前記固定容量ポンプと前記逆止弁との間の中間油路、及び前記タンクの間を接続するとともに前記リリーフ弁が設けられる返送油路と、を有し、前記リリーフ弁は、車輪へ制動力を発生させないときに前記返送油路を流れる前記作動油が前記タンクに返送されるように設定された第1設定圧と、車輪へ制動力を発生させないときと比較して前記返送油路を流れる前記作動油が前記タンクに返送され難くなるように前記第1設定圧よりも高い圧力で設定された第2設定圧とを切り替え可能に構成されているとよい。
【0011】
これによれば、車輪へ制動力を発生させないとき、リリーフ弁は第1設定圧に設定されている。そのため、駆動軸の回転に応じて固定容量ポンプから吐出される作動油は、送出油路における中間油路を介して返送油路に流れる。返送油路に流れる作動油は、リリーフ弁を通じてタンクに返送される。すなわち、車輪へ制動力を発生させないときには固定容量ポンプから吐出された作動油は、タンク、固定容量ポンプ、送出油路の中間油路、及び返送油路を循環する。
【0012】
車輪へ制動力を発生させるとき、リリーフ弁は第1設定圧から第2設定圧に切り替えられる。これにより、返送油路に流れる作動油がリリーフ弁を介してタンクに返送されるために必要な作動油の油圧が高くなる。そのため、固定容量ポンプから吐出された作動油は、送出油路から逆止弁及びアキュムレータに向けて流れやすくなる。すなわち、アキュムレータに向けて流れる作動油の流量を、車輪へ制動力を発生させないときにアキュムレータに向けて流れる作動油の流量よりも増大させることができる。そして、固定容量ポンプ、アキュムレータ、及びリリーフ弁の間の油路を流れる作動油の油圧が高くなることで固定容量ポンプが動作し難くなるため、車輪へ制動力を発生させることができる。また、逆止弁により車両の制動時に発生する油圧エネルギーをアキュムレータに蓄積した状態に維持できる。そして、油路の下流に設けられている例えば荷役油圧機構やステアリング油圧機構のように油圧により動作する負荷機構が動作するとき、アキュムレータに蓄積された作動油の油圧を負荷機構に放出することができる。したがって、車両の制動時に発生するエネルギーにより車両に搭載される負荷機構の動作を補助できる。
【0013】
上記の制動力回生システムにおいて、前記流量調整部は、前記駆動軸に連結されていることにより前記駆動軸の回転に応じて動作する前記ポンプとしての可変容量ポンプにより構成され、前記可変容量ポンプは、車輪へ制動力を発生させないときに前記タンクに貯留されている前記作動油を前記油路の下流に向けて吐出させず、車輪へ制動力を発生させるときに前記タンクに貯留されている前記作動油を前記油路の下流に向けて吐出させるとよい。
【0014】
これによれば、車輪へ制動力を発生させないときに可変容量ポンプからは作動油が吐出されず、車輪へ制動力を発生させるときに可変容量ポンプからは作動油が吐出される。すなわち、アキュムレータに向けて流れる作動油の流量を、車輪へ制動力を発生させないときにアキュムレータに向けて流れる作動油の流量よりも増大させることができる。そして、可変容量ポンプ及びアキュムレータの間の油路を流れる作動油の油圧が高くなることで可変容量ポンプが動作し難くなるため、車輪へ制動力を発生させることができる。また、逆止弁により車両の制動時に発生する油圧エネルギーをアキュムレータに蓄積した状態に維持できる。そして、油路の下流に設けられている例えば荷役油圧機構やステアリング油圧機構のように油圧により動作する負荷機構が動作するとき、アキュムレータに蓄積された作動油の油圧を負荷機構に放出することができる。したがって、車両の制動時に発生するエネルギーにより車両に搭載される負荷機構の動作を補助できる。
【0015】
上記の制動力回生システムにおいて、前記流量調整部は、前記ポンプとしての固定容量ポンプと、車輪へ制動力を発生させないときに前記固定容量ポンプと前記駆動軸とを分離させる分離状態と、車輪へ制動力を発生させるときに前記固定容量ポンプと前記駆動軸とを連結させる連結状態とを切り替えるクラッチと、を備えるとよい。
【0016】
これによれば、車輪へ制動力を発生させないとき、クラッチにより固定容量ポンプと駆動軸とを分離させる分離状態となる。すなわち、車輪へ制動力を発生させないとき、固定容量ポンプからは作動油が吐出されない。車輪へ制動力を発生させるとき、クラッチにより固定容量ポンプと駆動軸とを連結させる連結状態となる。すなわち、車輪へ制動力を発生させるとき、固定容量ポンプからは作動油が吐出される。よって、アキュムレータに向けて流れる作動油の流量を、車輪へ制動力を発生させないときにアキュムレータに向けて流れる作動油の流量よりも増大させることができる。そして、固定容量ポンプ及びアキュムレータの間の油路を流れる作動油の油圧が高くなることで固定容量ポンプが動作し難くなるため、車輪へ制動力を発生させることができる。また、逆止弁により車両の制動時に発生する油圧エネルギーをアキュムレータに蓄積した状態に維持できる。そして、油路の下流に設けられている例えば荷役油圧機構やステアリング油圧機構のように油圧により動作する負荷機構が動作するとき、アキュムレータに蓄積された作動油の油圧を負荷機構に放出することができる。したがって、車両の制動時に発生するエネルギーにより車両に搭載される負荷機構の動作を補助できる。
【0017】
上記の制動力回生システムにおいて、前記油路は、前記タンク、前記ポンプ、前記逆止弁、前記アキュムレータ、及び前記負荷機構の順に前記作動油が流れる送出油路と、前記送出油路における前記ポンプと前記逆止弁との間の中間油路、及び前記タンクの間を接続する返送油路と、を有し、前記返送油路には、オリフィス又はリリーフ弁が設けられているとよい。
【0018】
油路のおける返送油路が割愛され、車輪へ制動力を発生させるときを考える。ポンプから吐出される作動油によりポンプ及びアキュムレータの間の油路を流れる作動油の油圧を高くすることで車輪へ制動力を発生させると、ポンプとアキュムレータとの間の油路を流れる作動油の油圧が、アキュムレータが蓄積できる作動油の油圧より大きくなる。そして、アキュムレータに過剰な油圧が作用する虞がある。
【0019】
その点、これによれば、油路は返送油路を有している。返送油路には、オリフィス又はリリーフ弁が設けられている。そのため、ポンプとアキュムレータとの間の送出油路を流れる作動油の油圧が高くなり、アキュムレータに過剰な油圧が作用する状態になったとしても返送油路のオリフィス又はリリーフ弁によりタンクに作動油を逃がすことができる。よって、アキュムレータに過剰な油圧が発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、車両の制動時に発生するエネルギーにより車両に搭載される負荷機構の動作を補助できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】制動力回生システムの第1の実施形態の概略図。
【
図3】制動力回生システムの第2の実施形態の概略図。
【
図4】制動力回生システムの第3の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、制動力回生システムを具体化した第1の実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。本実施形態は、荷役油圧機構を有する産業車両に搭載されている。以下、先に産業車両の構成を説明した後に制動力回生システムの構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、産業車両100は、フォークリフトである。産業車両100の車体150には、荷役油圧機構101が装備されている。荷役油圧機構101は、マスト102を前後方向に前傾動作又は後傾動作させる機能と、フォーク106に載置される荷物をフォーク106とともに昇降させる機能とを有している。荷役油圧機構101のマスト102は、左右一対のアウタマスト102aとインナマスト102bを備えている。アウタマスト102aには油圧式のティルトシリンダ103が連結され、インナマスト102bには油圧式のリフトシリンダ104が連結されている。マスト102は、ティルトシリンダ103に対する作動油の給排によって車体150の前後方向に前傾動作又は後傾動作を行う。インナマスト102bは、リフトシリンダ104に対する作動油の給排によって車体150の上下方向に昇降動作を行う。また、インナマスト102bには、リフトブラケット105を介してフォーク106が設けられている。フォーク106は、リフトシリンダ104の作動によってインナマスト102bがアウタマスト102aに沿って昇降動作を行うことにより、リフトブラケット105とともに昇降動作を行う。
【0024】
車体150には、パワートレイン107が搭載されている。パワートレイン107は、例えばエンジンやモータである。パワートレイン107の駆動力によりパワートレイン107に連結されている駆動軸としての車軸108が回転する。これに伴い、車軸108に連結されている車輪としての前輪109が回転するため、産業車両100が走行する。
【0025】
荷役油圧機構101は、各シリンダ103,104への作動油の給排を制御する図示しないコントロールバルブと、当該コントロールバルブに作動油を供給する図示しない荷役ポンプ等とを有している。当該コントロールバルブは、各シリンダ103,104に図示しない油路を介して接続されており、各シリンダ103,104への作動油の供給量を調整している。荷役油圧機構101の荷役ポンプ及びコントロールバルブにより各シリンダ103,104に対して作動油が給排されることで、各シリンダ103,104の内部の作動油の油圧が変化するため、各シリンダ103,104が伸縮動作する。なお、荷役油圧機構101は、油圧により動作する負荷機構の一例である。
【0026】
図2に示すように、産業車両100は、制動力回生システム10を備えている。
制動力回生システム10は、産業車両100のブレーキペダル111が踏まれたときに前輪109へ制動力を発生させる機能を有している。また、制動力回生システム10は、ブレーキペダル111が踏まれ、前輪109へ制動力を発生させるときに発生するエネルギーを蓄積し、荷役油圧機構101の動作を補助する機能を有している。
【0027】
制動力回生システム10は、荷役油圧機構101に接続されるとともに作動油が流れる油路20を備えている。また、制動力回生システム10は、作動油が貯留されているタンク30と、アキュムレータ40と、流量調整部50と、逆止弁60とを備えている。タンク30は、荷役油圧機構101が油路20の下流に設けられているとして、油路20において荷役油圧機構101と反対側である油路20の上流に設けられている。アキュムレータ40は、油路20の下流に設けられている。アキュムレータ40は、荷役油圧機構101とタンク30との間に設けられている。流量調整部50は、油路20においてタンク30とアキュムレータ40との間に設けられている。流量調整部50は、タンク30に貯留されている作動油を油路20の下流に向けて吐出するポンプとしての固定容量ポンプ51を含んでいる。固定容量ポンプ51は、変換機構110を介して車軸108に連結されている。変換機構110は、車軸108の回転を固定容量ポンプ51の回転に変換するための機構である。そのため、固定容量ポンプ51は、車軸108に連結されている状態において車軸108の回転に応じて動作する。なお、本実施形態の固定容量ポンプ51は、変換機構110によって車軸108の回転方向に関わらず常に一定の方向に回転するように構成されている。
【0028】
逆止弁60は、油路20において流量調整部50とアキュムレータ40との間に設けられている。逆止弁60は、アキュムレータ40から流量調整部50に向けての作動油の逆流を防止する機能を有している。
【0029】
次に、油路20及び流量調整部50の構成について詳細に説明する。
油路20は、固定容量ポンプ51の動作によりタンク30、固定容量ポンプ51、逆止弁60、アキュムレータ40、及び荷役油圧機構101の順に作動油が流れるための送出油路20aと、送出油路20aにおける固定容量ポンプ51と逆止弁60との間の中間油路20c及びタンク30を接続する返送油路20bと、を有している。なお、送出油路20aは、荷役油圧機構101の例えばコントロールバルブと各シリンダ103,104とを接続する油路に接続されている。
【0030】
流量調整部50は、リリーフ弁52を備えている。リリーフ弁52は、電磁切替弁付きリリーフ弁である。リリーフ弁52は、返送油路20bに設けられている。リリーフ弁52は、固定容量ポンプ51から吐出された作動油の油圧に応じて作動油をタンク30に返送する機能を有している。リリーフ弁52には、産業車両100のブレーキペダル111が踏まれたときにブレーキセンサ112から送信される信号が入力される。リリーフ弁52は、ブレーキセンサ112から送信される信号が入力されているか否かに応じて返送油路20bを介してタンク30に返送されるときの作動油の油圧を調整している。具体的には、リリーフ弁52は、ブレーキセンサ112から送信される信号が入力されているか否かに応じて第1設定圧P1と第2設定圧P2とを切り替え可能に構成されている。第1設定圧P1は、リリーフ弁52にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されていないとき、いわゆる前輪109へ制動力を発生させないときに設定される。第1設定圧P1は、前輪109へ制動力を発生させないときに返送油路20bを流れる作動油がタンク30に返送されるように設定されたリリーフ弁52の作動圧力である。第2設定圧P2は、リリーフ弁52にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されているとき、いわゆる前輪109へ制動力を発生させるときに設定される。第2設定圧P2は、第1設定圧P1よりも高い圧力である。そのため、第2設定圧P2は、前輪109を停止させるときに返送油路20bを流れる作動油が、前輪109へ制動力を発生させないときと比較してタンク30に返送され難くなるように設定されている。本実施形態のリリーフ弁52の第1設定圧P1は、送出油路20aを流れる作動油が逆止弁60を通過するときの作動油の油圧よりも小さく設定されている。そのため、産業車両100が走行中であり、且つ前輪109へ制動力を発生させないとき、固定容量ポンプ51によりタンク30から送出された作動油は、送出油路20aを通じて逆止弁60、アキュムレータ40、及び荷役油圧機構101に向けて流れるよりも優先的にリリーフ弁52を介してタンク30に返送される。すなわち、産業車両100が走行中であり、且つ前輪109へ制動力を発生させないとき、作動油は、タンク30、固定容量ポンプ51、送出油路20aの中間油路20c、及び返送油路20bを循環する。
【0031】
このように構成された流量調整部50は、前輪109へ制動力を発生させるときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量を、前輪109へ制動力を発生させないときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量よりも増大させる機能があるといえる。
【0032】
本実施形態の作用を説明する。
産業車両100が走行中であり、且つ制動力回生システム10が前輪109へ制動力を発生させないとき、上記したように作動油は、タンク30、固定容量ポンプ51、送出油路20aの中間油路20c、及び返送油路20bを循環する。
【0033】
また、制動力回生システム10が前輪109へ制動力を発生させるとき、リリーフ弁52にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されることによりリリーフ弁52で設定される作動油の油圧が第1設定圧P1から第2設定圧P2に切り替えられる。これにより、固定容量ポンプ51から吐出された作動油は、送出油路20aを通じて逆止弁60、アキュムレータ40、荷役油圧機構101に向けて優先的に流れる。ここで、アキュムレータ40は、一般的に図示しない給排油弁を有している。送出油路20aを通じてアキュムレータ40に流れる作動油は、給排油弁を介してアキュムレータ40に蓄積される。すなわち、アキュムレータ40には、送出油路20aを流れる作動油の油圧エネルギーが蓄積される。このとき、アキュムレータ40は、アキュムレータ40の内部に蓄積される作動油の油圧がリリーフ弁52の第2設定圧P2と同じ大きさとなるまで油圧エネルギーを蓄積する。アキュムレータ40に油圧エネルギーが蓄積されていくにつれて、固定容量ポンプ51、アキュムレータ40、及びリリーフ弁52の間の油路20を流れる作動油の油圧が徐々に高くなる。これに伴い、固定容量ポンプ51が逆止弁60及びアキュムレータ40に向けて作動油を吐出し難くなる。そして、固定容量ポンプ51が回転し難くなり、且つ変換機構110を介して接続されている車軸108が回転し難くなる。すなわち、前輪109へ制動力が発生する。よって、アキュムレータ40に油圧エネルギーが蓄積されるにつれて前輪109へ制動力が強くなり、アキュムレータ40に蓄積された作動油の油圧がリリーフ弁52の第2設定圧P2と同じになったときに前輪109へ制動力が最大となる。
【0034】
そして、前輪109へ制動力を発生させている状態から、再び前輪109へ制動力を発生させない状態に移行したとき、アキュムレータ40の給排油弁によりアキュムレータ40には油圧エネルギーが蓄積された状態で維持される。また、送出油路20aにおける逆止弁60よりも下流寄りにある作動油が流量調整部50に向けて逆流しようとしても逆止弁60により逆流が防止される。
【0035】
また、前輪109へ制動力を発生させない状態となると、リリーフ弁52にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されないため、リリーフ弁52で設定される作動油の油圧が第2設定圧P2から第1設定圧P1に切り替えられる。そのため、送出油路20aの中間油路20c及び返送油路20bに残留していた作動油がリリーフ弁52を介してタンク30に返送される。よって、固定容量ポンプ51が回転しやすくなるため、前輪109へ制動力が解除される。
【0036】
ここで、荷役油圧機構101を動作させる場合を考える。この場合、荷役油圧機構101の各シリンダ103,104に作動油を供給したときに各シリンダ103,104の内部の油圧が足りないことがある。このような事象が発生したとき、本実施形態のアキュムレータ40には、油圧エネルギーが蓄積されているため、アキュムレータ40の給排油弁を開放して、内部に蓄積されている作動油を放出する。そして、放出された作動油は、荷役油圧機構101のコントロールバルブと各シリンダ103,104との間の油路に送出することができる。よって、荷役油圧機構101の動作を補助することができる。なお、前輪109へ制動力を発生させている状態において、送出油路20aを通じて荷役油圧機構101に向けても作動油が送出されているが、本実施形態で荷役油圧機構101に送出される作動油の油圧は、あくまで荷役油圧機構101を補助する程度の油圧である。そのため、本実施形態において荷役油圧機構101に流れる作動油の油圧は、荷役油圧機構101を制動力回生システム10単体で動作させることができない程度の油圧となっている。
【0037】
本実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1-1)本実施形態では、前輪109へ制動力を発生させるときに流量調整部50によりアキュムレータ40に向けての作動油の流量が増大する。そして、アキュムレータ40には、作動油の油圧が蓄積され、流量調整部50(固定容量ポンプ51)とアキュムレータ40との間の油路20(中間油路20c)を流れる作動油の油圧が高くなる。そのため、流量調整部50の固定容量ポンプ51は、作動油の油圧により動作し難くなる。前輪109へ制動力を発生させるときに固定容量ポンプ51と車軸108とは、連結されている状態であることから、作動油の油圧により固定容量ポンプ51が動作し難くなることで車軸108が回転し難くなる。すなわち、流量調整部50(固定容量ポンプ51)とアキュムレータ40との間の油路20(中間油路20c)に流れる作動油の油圧が高くなることで前輪109へ制動力を発生させることができる。
【0038】
また、前輪109へ制動力を発生させている状態から当該制動力を発生させない状態に移行したとき、アキュムレータ40に蓄積された作動油の油圧が流量調整部50に向けて逆流する虞がある。しかし、流量調整部50とアキュムレータ40との間には、アキュムレータ40から流量調整部50に向けての作動油の逆流を防止する逆止弁60が設けられている。そのため、アキュムレータ40は、産業車両100の制動時に蓄積された作動油の油圧が流量調整部に向けて逆流する虞がある。しかし、流量調整部50とアキュムレータ40との間には、アキュムレータ40から流量調整部に向けての作動油の逆流を防止する逆止弁60が設けられている。そのため、前輪109へ制動力を発生させない状態であるのに関わらず、当該制動力が発生してしまうことを防止できる。そして、アキュムレータ40は、産業車両100の制動時に蓄積された油圧を維持することができる。すなわち、産業車両100の制動時に発生する油圧エネルギーを蓄積した状態に維持できる。そして、油路20の下流に設けられている例えば荷役油圧機構101が動作するとき、アキュムレータ40に蓄積された作動油の油圧を荷役油圧機構101に放出することができる。したがって、産業車両100の制動時に発生するエネルギーにより産業車両100に搭載される荷役油圧機構101の動作を補助できる。
【0039】
(1-2)本実施形態では、前輪109へ制動力を発生させないとき、リリーフ弁52は第1設定圧P1に設定されている。そのため、車軸108の回転に応じて固定容量ポンプ51から吐出される作動油は、送出油路20aにおける中間油路20cを介して返送油路20bに流れる。返送油路20bに流れる作動油は、リリーフ弁52を通じてタンク30に返送される。すなわち、前輪109へ制動力を発生させないときには固定容量ポンプ51から吐出された作動油は、タンク30、固定容量ポンプ51、送出油路20aの中間油路20c、及び返送油路20bを循環するように流れる。
【0040】
前輪109へ制動力を発生させるとき、リリーフ弁52は第1設定圧P1から第2設定圧P2に切り替えられる。これにより、返送油路20bに流れる作動油がリリーフ弁52を介してタンク30に返送されるために必要な作動油の油圧が高くなる。そのため、固定容量ポンプ51から吐出された作動油は、送出油路20aから逆止弁60及びアキュムレータ40に向けて流れやすくなる。すなわち、アキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量を、前輪109へ制動力を発生させないときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量よりも増大させることができる。そして、固定容量ポンプ51、アキュムレータ40、及びリリーフ弁52の間の油路20を流れる作動油の油圧が高くなることで固定容量ポンプ51が動作し難くなるため、前輪109へ制動力を発生させることができる。また、逆止弁60により産業車両100の制動時に発生する油圧エネルギーをアキュムレータ40に蓄積した状態に維持できる。そして、油路20の下流に設けられている荷役油圧機構101が動作するとき、アキュムレータ40に蓄積された作動油の油圧を荷役油圧機構101に放出することができる。したがって、産業車両100の制動時に発生するエネルギーにより産業車両100に搭載される荷役油圧機構101の動作を補助できる。
【0041】
(1-3)本実施形態では、前輪109へ制動力を発生させるときに、背景技術に記載したドラム式ブレーキのように熱エネルギーが発生せず、固定容量ポンプ51を油圧エネルギーにより動作し難い状態にすることで制動力を発生させている。よって、油圧により動作する荷役油圧機構101の動作を補助するための油圧エネルギーを、当該制動力を発生させるために用いられた油圧エネルギーから直接取り込むことができる。したがって、荷役油圧機構101の動作を補助する油圧エネルギーを取り込むためにエネルギー変換をすることがないため、エネルギー効率を向上させることができる。
【0042】
<第2の実施形態>
以下、制動力回生システムを具体化した第2の実施形態を
図3にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明は割愛する。
【0043】
図3に示すように、制動力回生システム10の流量調整部は、可変容量ポンプ70により構成されている。可変容量ポンプ70は、タンク30に貯留されている作動油を油路20の下流に向けて吐出するポンプの一例である。可変容量ポンプ70は、変換機構110を介して車軸108に連結されている。そのため、可変容量ポンプ70は、車軸108に連結されている状態において車軸108の回転に応じて動作する。なお、本実施形態の可変容量ポンプ70は、車軸108の回転方向に関わらず常に一定の方向に回転するように構成されている。また、可変容量ポンプ70には、産業車両100のブレーキペダル111が踏まれたときにブレーキセンサ112から送信される信号が入力される。可変容量ポンプ70は、ブレーキセンサ112から送信される信号が入力されているか否かに応じて油路20の下流に向けて吐出する作動油の吐出量を調整している。具体的には、可変容量ポンプ70は、可変容量ポンプ70にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されていないとき、いわゆる前輪109へ制動力を発生させないときにタンク30に貯留されている作動油を油路20の下流に向けて作動油を吐出させない。また、可変容量ポンプ70は、可変容量ポンプ70にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されているとき、いわゆる前輪109へ制動力を発生させるときにタンク30に貯留されている作動油を油路20の下流に向けて作動油を吐出させる。
【0044】
このように構成された流量調整部(可変容量ポンプ70)は、前輪109へ制動力を発生させるときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量を、前輪109へ制動力を発生させないときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量よりも増大させる機能があるといえる。なお、タンク30に貯留されている作動油は、油路20の下流に向けて、すなわちアキュムレータ40及び荷役油圧機構101に向けて流れるが、タンク30から荷役油圧機構101に到達した作動油は、図示しない油路によりタンク30に戻される。
【0045】
本実施形態によれば以下の作用及び効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態では、前輪109へ制動力を発生させないときに可変容量ポンプ70からは作動油が吐出されず、前輪109へ制動力を発生させるときに可変容量ポンプ70からは作動油が吐出される。すなわち、アキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量を、前輪109へ制動力を発生させないときにアキュムレータに向けて流れる作動油の流量よりも増大させることができる。そして、可変容量ポンプ70及びアキュムレータ40の間の油路20を流れる作動油の油圧が高くなることで可変容量ポンプ70が動作し難くなるため、前輪を停止させる制動力を発生させることができる。また、逆止弁60により産業車両100の制動時に発生する油圧エネルギーをアキュムレータ40に蓄積した状態に維持できる。そして、油路20の下流に設けられている荷役油圧機構101が動作するとき、アキュムレータ40に蓄積された作動油の油圧を荷役油圧機構101に放出することができる。したがって、産業車両100の制動時に発生するエネルギーにより産業車両100に搭載される荷役油圧機構101の動作を補助できる。
【0046】
<第3の実施形態>
以下、制動力回生システムを具体化した第3の実施形態を
図4にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明は割愛する。
【0047】
図4に示すように、制動力回生システム10の流量調整部80は、ポンプとしての固定容量ポンプ51と、固定容量ポンプ51と車軸108とを分離させる分離状態と、固定容量ポンプ51と車軸108とを連結させる連結状態とを切り替えるクラッチ82とを備えている。クラッチ82は、固定容量ポンプ51と変換機構110との間に設けられている。クラッチ82は、産業車両100のブレーキペダル111が踏まれたときにブレーキセンサ112から送信される信号が入力される。クラッチ82は、ブレーキセンサ112から送信される信号が入力されているか否かに応じて分離状態と連結状態とを切り替える。具体的には、クラッチ82は、クラッチ82にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されていないとき、いわゆる前輪109へ制動力を発生させないときにクラッチ82を分離状態とする。また、クラッチ82は、クラッチ82にブレーキセンサ112から送信される信号が入力されているとき、いわゆる前輪109へ制動力を発生させるときにクラッチ82を連結状態とする。そのため、固定容量ポンプ51は、クラッチ82が連結状態となり車軸108に連結されている状態において車軸108の回転に応じて動作する。そして、固定容量ポンプ51は、クラッチ82が分離状態となり車軸108に連結されていない状態において車軸108の回転に応じて動作することができない。
【0048】
このように構成された流量調整部80は、前輪109へ制動力を発生させるときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量を、前輪109へ制動力を発生させないときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量よりも増大させる機能があるといえる。
【0049】
また、第1の実施形態と同様に、油路20は、送出油路20aと返送油路20bとを有している。そして、制動力回生システム10は、返送油路20bにオリフィス90が設けられている。
【0050】
本実施形態では以下の作用及び効果が得られる。
(3-1)本実施形態では、前輪109へ制動力を発生させないとき、クラッチ82により固定容量ポンプ51と車軸108とを分離させる分離状態となる。すなわち、前輪109へ制動力を発生させないとき、固定容量ポンプ51からは作動油が吐出されない。前輪109へ制動力を発生させるとき、クラッチ82により固定容量ポンプ51と車軸108とを連結させる連結状態となる。すなわち、前輪109へ制動力を発生させるとき、固定容量ポンプ51からは作動油が吐出される。よって、車輪へ制動力を発生させるときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量を、車輪へ制動力を発生させないときにアキュムレータ40に向けて流れる作動油の流量よりも増大させることができる。そして、固定容量ポンプ51及びアキュムレータ40の間の油路20(中間油路20c)を流れる作動油の油圧が高くなることで固定容量ポンプ51が動作し難くなるため、前輪109へ制動力を発生させることができる。また、逆止弁60により産業車両100の制動時に発生する油圧エネルギーをアキュムレータ40に蓄積した状態に維持できる。そして、油路20の下流に設けられている荷役油圧機構101が動作するとき、アキュムレータ40に蓄積された作動油の油圧を荷役油圧機構101に放出することができる。したがって、産業車両100の制動時に発生するエネルギーにより産業車両100に搭載される荷役油圧機構101の動作を補助できる。
【0051】
(3-2)油路20のおける返送油路20bが割愛され、前輪109へ制動力を発生させるときを考える。ポンプ(固定容量ポンプ51)から吐出される作動油によりポンプ及びアキュムレータ40の間の油路20を流れる作動油の油圧を高くすることで前輪109へ制動力を発生させると、ポンプとアキュムレータ40との間の油路20を流れる作動油の油圧が、アキュムレータ40が蓄積できる作動油の油圧より大きくなる。そして、アキュムレータ40に過剰な油圧が作用する虞がある。
【0052】
その点、本実施形態では、油路20は返送油路20bを有している。返送油路20bには、オリフィス90が設けられている。そのため、固定容量ポンプ51とアキュムレータ40との間の送出油路20aを流れる作動油の油圧が高くなり、アキュムレータ40に過剰な油圧が作用する状態になったとしても返送油路20bのオリフィス90によりタンク30に作動油を逃がすことができる。よって、アキュムレータ40に過剰な油圧が発生することを抑制できる。
【0053】
(3-3)また、固定容量ポンプ51とアキュムレータ40との間の送出油路20aを流れる作動油の油圧が高くなり過ぎると、前輪109を停止させる制動力が強くなり過ぎてしまう虞があるが、オリフィス90により作動油をタンク30に逃がすことができる。よって、前輪109を停止させる制動力が大きくなり過ぎることを抑制できる。
【0054】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
〇 第3の実施形態において、オリフィス90を割愛してもよい。この場合、例えば第2の実施形態と同様に、タンク30から荷役油圧機構101に到達した作動油は、図示しない油路によりタンク30に戻されるように変更することが好ましい。また、第3の実施形態において、オリフィス90をリリーフ弁に変更してもよい。
【0055】
〇 第2の実施形態において、第3の実施形態のオリフィス90や、第1の実施形態のリリーフ弁を設けるように変更してもよい。この場合、油路20に返送油路20bを設けるように変更するとよい。
【0056】
〇 第1の実施形態において、リリーフ弁52の第2設定圧P2は、前輪109へ制動力を発生させるときにリリーフ弁52から作動油がタンク30に返送されないように設定されていてもよい。このようにすることで、アキュムレータ40に蓄積される作動油の油圧(油圧エネルギー)をより蓄積することができる。
【0057】
〇 車輪の一例として前輪109を挙げて説明したが、車輪の一例は後輪であってもよい。また、車輪の一例として前輪109及び後輪の双方であってもよい。
〇 駆動軸の一例として前輪109に連結されている車軸108を挙げていたが、これに限らない。例えば、駆動軸はプロペラシャフトであってもよい。すなわち、車輪に連結されている駆動軸とは、車輪の回転に伴って同時に回転するように連結されているものを含む。
【0058】
〇 負荷機構として荷役油圧機構101を挙げていたが、例えば油圧により産業車両100のステアリングの操作を補助するステアリング油圧機構であってもよい。
〇 制動力回生システム10は、産業車両100に適用されていたが、これに限らない。例えば、荷役油圧機構101及びステアリング油圧機構のように油圧により動作する負荷機構を搭載している車両であれば適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…制動力回生システム、20…油路、20a…送出油路、20b…返送油路、20c…中間油路、30…タンク、40…アキュムレータ、50,80…流量調整部、51…固定容量ポンプ、52…リリーフ弁、60…逆止弁、70…流量調整部としての可変容量ポンプ、82…クラッチ、90…オリフィス、101…負荷機構としての荷役油圧機構、108…駆動軸としての車軸、109…車輪としての前輪、P1…第1設定圧、P2…第2設定圧。